説明

IL−12及びIL−23の効率的な共同発現方法

本発明は、(a)p35サブユニットコーディングヌクレオチド配列、p40サブユニットコーディングヌクレオチド配列及びp19サブユニットコーディングヌクレオチド配列のモノシストロン方式の発現コンストラクト(expression construct)を含むベクターを製作する段階、またはp35サブユニットコーディングヌクレオチド配列、p40サブユニットコーディングヌクレオチド配列及びp19サブユニットコーディングヌクレオチド配列のポリシストロン方式の発現コンストラクトを含むベクターを製作する段階と、(b)前記発現コンストラクトを宿主細胞に形質転換させる段階と、(c)前記形質転換された宿主細胞を培養して、IL−12及びIL−23を収得する段階とを含むIL(interleukin)−12及びIL−23の共同発現方法、前記共同発現方法に利用されるIL−12及びIL−23の共同発現用ベクター、及びこのベクターを含む薬剤学的抗腫瘍組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IL(interleukin)−12及びIL−23の共同発現方法、IL−12及びIL−23の共同発現用組み換えベクター、及び薬剤学的抗腫瘍組成物に関する
【背景技術】
【0002】
癌は、人体をなしている正常細胞が、様々な発癌因子による遺伝子変異により、正常的な細胞周期の統制から外れ非正常的に無限増殖して、その結果、周囲にある組織に浸潤し、血管とリンパ管などを通じて他の臓器に転移する疾患である。大部分の癌は、明らかな自覚症状無しに既に他の臓器に転移が進行した状態で発見されるため、現在標準治療法により行われている外科的な手術療法、放射線療法、そして抗癌化学療法のみでは数多い限界を有している。したがって、現在の治療法よりもっと効果的な新しい治療法が切実に要求されている実情である。そのため、現在、各種癌疾患に遺伝子治療法と免疫治療法のような新しい治療法を適用しようとする治療技術開発研究が活発に進行されている1-3
【0003】
癌に対する免疫治療法は、人間の体の免疫体系を活性化させることにより、癌細胞のみを特異的に除去することにその目的がある。20世紀初、Paulは、人間の体の免疫体系が腫瘍を認識して除去できると主張し、抗腫瘍免疫治療の可能性を最初に示唆し4、20世紀中盤に入っては、Grossが動物モデルを利用して、Paulの仮説を初めて立証した5
【0004】
その後、BurnetとThomasにより、免疫監視体系(immune surveillance)理論の基盤が始めて構築された6-8。そして引き続いた急速な遺伝工学と分子細胞免疫学の発達により、抗腫瘍免疫反応を誘導する免疫細胞とその作用メカニズムが明かされつつ、抗腫瘍免疫治療分野に新しい転機を迎えるようになって、現在まで多い関心と研究が進行されている。
【0005】
しかしながら、このような急速な発展と努力にもかかわらず、免疫治療法により癌を完全に治療するにはまだ数多い限界点がある。即ち、癌細胞は、様々な戦略を使用して免疫体系を巧妙に避けていき、仮に免疫体系が活性化されたしても、活性化された抗腫瘍免疫反応から逃避できる能力をも有しているため、結果的に癌細胞は増殖し続けるようになる。したがって、このような限界点を克服する一つの方案として、免疫増進サイトカイン遺伝子を直接癌細胞に導入し、癌細胞からサイトカインを生成して分泌し、抗腫瘍免疫反応を誘導することにより、癌細胞のみを特異的に除去しようとする研究が活発に進行されている。
【0006】
現在まで抗腫瘍効果が報告された免疫増進サイトカイン遺伝子としては、IL-29-10, IL-411-12, IL-713, IL-1214, G-CSF(granulocyte colony-stimulating factor)15, GM-CSF(granulocyte macroghage colony-stimulating factor)16, インターフェロン(IFN)―γ17などがある。これらの中、特にp35とp40がヘテロダイマーをなしているIL−12は主に、活性化された単核球細胞(monocytes)、大食細胞(macrophages)、そして樹状細胞(dendritic cell)などのような抗原提示細胞(APC)から分泌されて、癌細胞を効果的に除去できる細胞毒性Tリンパ球(CTL)とNK(natural killer)細胞に直接作用して、これらを活性化させて、IFN-γの分泌を誘導するだけではなく、癌細胞に対する殺傷能力も増強させると知られている。また、naive CD4+ リンパ球に作用し、Tヘルパー1細胞(Th1)への分化を促進し、結局抗癌免疫反応に中枢的な役割をする細胞媒介免疫反応(cell-mediated immune response)を誘導して増強させることにより、抗癌免疫反応を活性化するに重要な役割をして、また、癌転移の抑制にも重要な役割をすると知られている。これに基づいて、本研究室でもE1B 55 kDa遺伝子が消失された腫瘍選択的殺傷アデノウイルスであるYKL-1(Ad-ΔE1B55)を利用して、IL-12の抗腫瘍効果を報告したことがある。
【0007】
また、IL-12と構造的に類似したIL-23は、IL-12ファミリーの一メンバーとして、P40とp19からなっており、IL-12と同様に主に、活性化された単核球細胞18、大食細胞19、及び樹状細胞20などのようなAPCから分泌される。IL-23は、APCに作用することによりこれらを活性化させて、IFN-γとIL-12の分泌を誘導するだけではなく20、メモリT細胞に作用し、増殖とIFN-γの分泌を誘導すると知られている20。特にIL-12とIL-23により誘導されるIFN-γは、APCのMHC(major histocompatibility complex)分子の発現を増加させると同時に、抗原提示能力を強化させることにより、癌細胞に免疫原性を付与し、CTL及びヘルパーTリンパ球の活性を誘導して、さらにNK細胞の癌細胞殺傷能力も増加させる。そして、現在までの報告からみると、構造的な面だけではなく、機能的な面で類似性を有しているIL-12とIL-23とが同時に作用する時、抗腫瘍効果が上昇されると期待される。即ち、IL-12とIL-23が同時にAPCに作用し、その各々が作用する時に比べ、APCをさらに活性化させ、IL-12とIL-23の分泌だけではなく、IFN-γの分泌をさらに強力に誘導することにより、IL-12とIL-23に係わる全ての抗腫瘍効果メカニズムをさらに強く誘導する21
【0008】
一方、アデノウイルスを利用した癌遺伝子治療法が実質的に臨床に効果的に適用されるためには、周辺の正常細胞にはいかなる副作用も与えず、癌細胞のみを選択的に殺傷できる特異性と同時に、癌細胞を効果的に死滅できる殺傷能の高いアデノウイルスの開発が必須的である。しかしながら、複製に必須的なE1A遺伝子が消失された1世代複製不能アデノウイルスは、一回性の感染のみがなされるため、感染された細胞とその周辺組織において制限された抗癌効果を誘導し、これにより、癌治療効率が低いことが短所と指摘された。したがって、これを克服するための一つの方案として、本研究室では、E1B 55 kDa遺伝子が完全に欠損され、p53腫瘍抑制タンパク質が不活性化された癌細胞でのみ選択的に増殖できる腫瘍選択的殺傷アデノウイルスであるYKL-1(Ad-ΔE1B55)を開発して、癌細胞特異的増殖及び殺傷効果を報告したことがある24。癌細胞でのみ選択的に増殖して癌細胞のみを殺傷できる腫瘍選択的殺傷アデノウイルスは、一次感染細胞で治療効果を示すだけではなく、増殖されたウイルスが周辺の腫瘍細胞を二次的にそして三次的に連鎖感染して、癌細胞を殺傷することにより、その治療効果がドミノ現象のように広がり続けるため、癌治療効果を著しく増大させて、また周辺の正常細胞では、腫瘍選択的殺傷アデノウイルスの増殖が抑制されるため、正常細胞に対する副作用が減少する利点もある。しかしながら、YKL-1アデノウイルスは、野生型アデノウイルスに比べ、相対的にウイルスの増殖が制限されて起こることにより、野生型アデノウイルスに比べ、細胞殺傷能が著しく減少し、結果的に低い抗腫瘍効果を誘導した25。このようなYKL-1アデノウイルスの低い細胞殺傷能を増大させるために、本研究室では、YKL-1アデノウイルスのE1B 19 kDa遺伝子部位を欠損させて細胞殺傷能を増大し、且つE1A遺伝子のCR1部位の45番目アミノ酸であるGlu(E)をGly(G)で置換させて、CR2部位の7個のアミノ酸(DLTCHEA)をGlyで置換させることにより、腫瘍細胞特異的殺傷能をより改善させたAd-ΔB7アデノウイルスを開発して、優れた生体外及び生体内抗腫瘍効果を報告したことがある。即ち、Ad-ΔB7アデノウイルスは、細胞枯死抑制機能をするE1B 19 kDa遺伝子部位を欠損させることにより、細胞枯死を誘導して、癌細胞殺傷能を増大させるだけではなく、E1A遺伝子のRb結合部位を共に欠損及びGlyで置換させて、Rb遺伝子が変異された癌細胞でのみ依存的に複製が起こるようになって、改善された腫瘍細胞選択的殺傷効果を誘導することができる。
【0009】
本明細書全体にかけて多数の特許文献及び論文が参照されて、その引用が表示されている。引用された特許文献及び論文の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、抗腫瘍効能のあるサイトカインであるIL-12及びIL-23を効率的且つ高い収率で共同発現できて、抗腫瘍効能が改善された遺伝子治療剤を開発するために鋭意研究した結果、IL-12及びIL-23を構成するサブユニットをコーディングする遺伝子を適切な組み合わせで組み換えて発現させる場合、IL-12及びIL-23を効率的且つ高い収率で共同発現できて、これを遺伝子治療剤に利用すると、抗腫瘍効能が大きく改善されるという事実を見出し、本発明を完成した。
【0011】
したがって、本発明の目的は、IL(interleukin)-12及びIL-23の共同発現方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、IL-12及びIL-23の共同発現用組み換えベクターを提供することにある。
【0013】
本発明のまた他の目的は、薬剤学的抗腫瘍組成物を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面により、さらに明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一様態によると、本発明は、次の段階を含むIL(interleukin)−12及びIL−23の共同発現方法を提供する:
(a)p35サブユニットコーディングヌクレオチド配列、p40サブユニットコーディングヌクレオチド配列及びp19サブユニットコーディングヌクレオチド配列のモノシストロン方式の発現コンストラクト(expression construct)を含むベクターを製作する段階、またはp35サブユニットコーディングヌクレオチド配列、p40サブユニットコーディングヌクレオチド配列及びp19サブユニットコーディングヌクレオチド配列のポリシストロン方式の発現コンストラクトを含むベクターを製作する段階と、
(b)前記発現コンストラクトを宿主細胞に形質転換させる段階と、
(c)前記形質転換された宿主細胞を培養して、IL−12及びIL−23を収得する段階。
【0016】
本発明の他の様態によると、本発明は、次の発現コンストラクトを含むIL(interleukin)−12及びIL−23の共同発現用組み換えベクターを提供する:
(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(ii)(ii-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−IRES−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(ii-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(iii)(iii-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(iii-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(iv)(iv-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−IRES−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(iii-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(v)(v-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(v-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;または(vi)(vi-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−IRES−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(vi-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト。
【0017】
本発明者らは、抗腫瘍効能のあるサイトカインであるIL-12及びIL-23を効率的且つ高い収率で共同発現できて、抗腫瘍効能が改善された遺伝子治療剤を開発するために鋭意研究した結果、IL-12及びIL-23を構成するサブユニットをコーディングする遺伝子を適切な組み合わせで組み換えて発現させる場合、IL-12及びIL-23を効率的且つ高い収率で共同発現できて、これを遺伝子治療剤に利用すると、抗腫瘍効能が大きく改善されるという事実を見出した。
【0018】
本発明の基本的な戦略は、IL-12及びIL-23がp40サブユニットを共有するということであり、ひいては、p40ホモダイマーを相対的に少なく生成するようにすると、IL-12及びIL-23を効率的に、そして高い収率で製造することができるということである。このような戦略のために、IL-12及びIL-23の共通的なサブユニットであるp40サブユニット−コーディングヌクレオチド配列を共通的に利用して、IL-12及びIL-23の共同発現システムを構築した。通常的に量論(stoichiometric)的な観点から見ると、IL-12及びIL-23を共同発現させてIL-12及びIL-23を効率的に生産するためには、IL-12の二つのサブユニット、即ち、p35サブユニットコーディングヌクレオチド配列とp40サブユニットコーディングヌクレオチド配列、そしてIL-23の二つのサブユニット、即ち、p19サブユニットコーディングヌクレオチド配列とp40サブユニットコーディングヌクレオチド配列を全て利用して発現システムを構築しなければならない。しかし、本発明によると、共同発現システムにおいて、二つのp40サブユニットコーディングヌクレオチド配列から一つを省いて発現させると、より効率的に且つ高い発現率でIL-12及びIL-23を得ることができる。
【0019】
本発明は、IL-12及びIL-23の共同発現方法及び共同発現用組み換えベクターに関する。用語‘共同発現’は、一つの発現システム、好ましくは、一つの発現ベクターにIL-12及びIL-23のヌクレオチド配列を含ませて同時に発現させることを意味する。
【0020】
本発明は、p35サブユニットコーディングヌクレオチド配列、p40サブユニットコーディングヌクレオチド配列及びp19サブユニットコーディングヌクレオチド配列を利用する。本明細書において、用語‘p35サブユニット’、‘p40サブユニット’及び‘p19サブユニット’は、実施例に例示されたサブユニットだけではなく、それぞれのサブユニットの固有の機能が果たせるサブユニットのあらゆる類似体(analogues)を含む。
【0021】
本発明で利用できるp35、p40及びp19のアミノ酸配列は、それぞれ GenBank接近番号AAD56385、AAD56386及びAAH67511に記載された配列である(仮に、マウスp35, p40及びp19アミノ酸配列を発現しようとする場合は、それぞれGenBank接近番号AAA39292, AAA39296及びAAG37231に記載された配列を参照)。本発明で利用できるp35, p40及びp19のヌクレオチド配列は、前記アミノ酸配列をコーディングする配列であって、好ましくは、それぞれGenBank接近番号AF180562, AF180563及びBC067511に記載された配列の中、CDS(coding sequence)に該当するヌクレオチド配列である(仮に、マウスp35, p40及びp19ヌクレオチド配列を利用している場合は、それぞれGenBank接近番号M86672, M86671及びAF301619に記載された配列の中、CDS配列参照)。
【0022】
本発明の方法によると、p35サブユニットコーディングヌクレオチド配列、p40サブユニットコーディングヌクレオチド配列及びp19サブユニットコーディングヌクレオチド配列のモノシストロン方式の発現コンストラクト(expression construct)を含むベクターを製作するか、またはp35サブユニットコーディングヌクレオチド配列、p40サブユニットコーディングヌクレオチド配列及びp19サブユニットコーディングヌクレオチド配列のポリシストロン方式の発現コンストラクトを含むベクターを製作する。
【0023】
本明細書で使用される用語‘発現コンストラクト’は、発現目的のヌクレオチド配列及びこの配列の発現を誘導する発現配列(例えば、プロモーター)を含む発現のための最小限のエレメント(elements)を意味する。このような発現コンストラクトは、好ましくは、転写調節配列−発現目的のヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含む。
【0024】
本明細書で使用される用語‘モノシストロン(monocistron)方式の発現コンストラクト’は、一つの発現コンストラクトで発現される遺伝子が一つであるコンストラクトを意味する。一方、用語‘ポリシストロン(polycistron)方式の発現コンストラクト’は、一つの発現コンストラクトで発現される遺伝子が二つ以上であるコンストラクトを意味する。
【0025】
本発明の方法によると、p35、p40及びp19の配列の発現を個別的な発現コンストラクトでなされるようにベクターを製作することができる。例えば、プロモーター−p35ヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列、プロモーター−p40ヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列及びプロモーター−p19ヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列、三つの発現コンストラクトを含むベクターを製作することができる。
【0026】
前記モノシストロン方式の発現コンストラクトは、(i)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35サブユニットコーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列、(ii)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40サブユニットコーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列、及び(iii)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19サブユニットコーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列である。
【0027】
本明細書において、用語‘真核細胞で作動可能なプロモーター’は、真核細胞で目的遺伝子の転写を誘発できる転写調節配列を意味する。それぞれのサブユニットコーディングヌクレオチド配列は、プロモーターに作動的に結合されている。本明細書において、用語‘作動的に結合された’は、核酸発現調節配列(例えば、プロモーター、シグナル配列、または転写調節因子結合位置のアレイ)と他の核酸配列間の機能的な結合を意味し、これにより前記調節配列は、前記他の核酸配列の転写及び/または解読を調節するようになる。
【0028】
また、p35、p40及びp19の配列の発現をポリシストロン発現コンストラクトでなされるようにベクターを製作することができる。このようなポリシストロン方式の発現コンストラクトは、多様な方法により構築することができ、最も好ましくは、IRES(internal ribosomal entry site)をサブユニットそれぞれのヌクレオチド配列間に位置させて構築される。
【0029】
本発明の好ましい具現例によると、前記ポリシストロン発現コンストラクトは、真核細胞で作動可能なプロモーター−前記3種のサブユニットの中の一つをコーディングするヌクレオチド配列−IRES−前記3種のサブユニットの中の他の一つをコーディングするヌクレオチド配列−IRES−前記サブユニットの中のまた他の一つをコーディングするヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列である。例えば、‘プロモーター−p35配列−IRES−p40配列−IRES−p19配列−ポリアデニル化配列’のように、スリーシストロン方式で発現コンストラクトを製作することができる。このようなポリシストロン方式の発現コンストラクトにおいて、p35、p40及びp19配列の順序は、特に制限されない。
【0030】
また、二つの配列をバイシストロン方式で発現コンストラクトを製作し、他の一つの配列は、モノシストロン方式で製作することができる。
【0031】
より好ましくは、前記段階(a)のベクターは、(i)真核細胞で作動可能なプロモーター−(i-1)前記3種のサブユニットの中の一つをコーディングするヌクレオチド配列−IRES−(i-2)前記3種のサブユニットの中の他の一つをコーディングするヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト及び(ii)真核細胞で作動可能なプロモーター−(ii-1)前記3種のサブユニットの中のまた他の一つをコーディングするヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトを含む。例えば、‘プロモーター−p19配列−IRES−p40配列−ポリアデニル化配列’バイシストロン発現コンストラクトと‘プロモーター−p35配列−ポリアデニル化配列’モノシストロン発現コンストラクトを製作することができる。このようなポリシストロン方式の発現コンストラクトにおいて、p35、p40及びp19配列の順序及び位置は、特に制限されない。
【0032】
本発明の好ましい具現例によると、前記発現コンストラクトは、ポリシストロン方式で製作されて、最も好ましくは、二つの配列をバイシストロン方式で発現コンストラクトを製作し、他の一つの配列は、モノシストロン方式で製作することである。
【0033】
本発明の好ましい具現例によると、前記段階(a)のベクターは、(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(ii)(ii-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−IRES−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(ii-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(iii)(iii-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(iii-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(iv)(iv-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−IRES−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(iii-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(v)(v-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(v-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;または(vi)(vi-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−IRES−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(vi-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトを含む。
【0034】
本発明のより好ましい具現例によると、 前記段階(a)のベクターは、(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び (i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;または(ii)(ii-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−IRES−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び (ii-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトを含む。
【0035】
本発明の最も好ましい具現例によると、前記段階(a)のベクターは、(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び (i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトを含む。
【0036】
本発明において、前記サブユニット配列に結合されたプロモーターは、好ましくは動物細胞、より好ましくは、哺乳動物細胞で作動し、サブユニット配列の転写を調節できるものであって、哺乳動物ウイルス由来のプロモーター及び哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーターを含み、例えば、CMV(cytomegalo virus)プロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSVのtkプロモーター、RSVプロモーター、EF1アルファプロモーター、メタロチオネインプロモーター、β−アクチンプロモーター、ヒトIL−2遺伝子のプロモーター、ヒトIFN遺伝子のプロモーター、ヒトIL−4遺伝子のプロモーター、ヒトリンホトキシン遺伝子のプロモーター、ヒトGM−CSF遺伝子のプロモーターを含むが、これらに限定されるものではない。最も好ましくは、CMVプロモーターである。
【0037】
本発明において、前記サブユニット配列に結合されたポリアデニル化配列は、牛成長ホルモンターミネーター(Gimmi, E. R., et al., Nucleic Acids Res. 17:6983-6998(1989))、SV40由来のポリアデニル化配列(Schek, N, et al., Mol. Cell Biol. 12:5386-5393(1992))、HIV-1 polyA(Klasens, B. I. F., et al., Nucleic Acids Res. 26:1870-1876(1998))、β-グロビンpolyA(Gil, A., et al, Cell 49:399-406(1987))、HSV TK polyA(Cole, C. N. and T. P. Stacy, Mol. Cell. Biol. 5:2104-2113(1985))、またはポリオマーウイルスpolyA(Batt, D. B and G. G. Carmichael, Mol. Cell. Biol. 15:4783-4790(1995))を含むが、これらに限定されるものではない。本発明の実施例に利用されたポリアデニル化配列は、SV40由来ポリアデニル化配列であって、その具体的な配列は、配列目録の配列番号2に記載されている。
【0038】
前記ポリシストロン発現コンストラクトで利用するIRESは、CAP−非依存的解読開始のできる配列を意味する。本発明で利用できるIRESは、数種のウイルス及び細胞のRNAsで発見される調節配列である(McBratney et. al. Current Opinion in Cell Biology 5:961(1993))。例えば、ポリオミエリィティスウイルス(Pelletier et al., Mol. Cell. Biol. 8: 1103-1112(1988))、EMCV(Encephalomyocarditis virus; Jang et al., J. Virol. 62: 2636-2643(1988))、ヒトライノウイルス、コクサッキー、エコーウイルス、ポリオウイルス、及びFMDV(foot and mouth disease virus)のようなピコルナウイルスのmRNAsの5’または3’-UTRにあるIRES; そしてマウス白血病ウイルス及び細網内皮症ウィルスのようなレトロウイルスのUTRにあるIRESが本発明で利用できる。また、IRES配列を有する細胞mRNAsが発見されて、例えば、BIPタンパク質(Macejak and Sarnow, 1991, Nature 353, 90-94)、成長因子(Teerink et al., 1995, Biochem. Biophy. Acts 1264, 403-408; Vagner et al., 1995, Mol. Cell. Biol. 15, 35-44)、解読開始因子eIF4G(Gan and Rhoads, 1996, J. Biol. Chem. 271, 623-626)、二種のイースト転写因子TFIID及びHAP4 (Iizuka et al., 1994, Mol. Cell. Biol., 14, 7322-7330)、Drosophila Antennapaedia(Oh, S. K., et al., Genes Dev, 6:1643-53, 1992)、Ultra bithorax(Ye, X., et al., Mol. Cell Biol., 17:1714-21, 1997)、プロト−発癌遺伝子c-myc (Nanbru, et al., J. Biol. Chem., 272:32061-6, 1995; Stoneley, M., Oncogene, 16:423-8, 1998)、そしてVEGF(vascular endothelial growth factor )(Stein, I., et al., Mol. Cell Biol., 18:3112-9, 1998)のmRNAsでIRESが発見されて、この配列も本発明に利用できる。また、IRESは、VL30型Murine retrotrans- poson(Berlioz et al., 1995, J. Virol. 69, 6400-6407)とフレンド(FMLV)及びモロニー(MoMLV)マウス白血病ウイルスのgag前駆体をコーディングするmRNAsで発見され、この配列も本発明に利用できる。その他に、XIAP IRES(米国特許第6,171,821号)も本発明で利用できる。本発明の実施例に利用されたIRESは、配列目録の配列番号1に記載されている。
【0039】
本発明のベクターは、多様な形態に製作できるが、代表的に(i)プラスミドまたは(ii)ウイルスベクターに製作できる。
【0040】
サイトカイン−コーディングヌクレオチド配列は、通常的な全てのベクターに適用できて、好ましくは、プラスミド、アデノウイルス(Lockett LJ, et al., Clin. Cancer Res. 3:2075-2080(1997))、アデノ−関連ウイルス(Adeno-associated viruses: AAV, Lashford LS., et al., Gene Therapy Technologies, Applications and Regulations Ed. A. Meager, 1999)、レトロウイルス(Gunzburg WH, et al., Retroviral vectors. Gene Therapy Technologies, Applications and Regulations Ed. A. Meager, 1999)、レンチウイルス(Wang G. et al., J. Clin. Invest. 104(11):R55-62(1999))、単純ヘルペスウイルス(Chamber R., et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 92:1411-1415(1995))及びワクシニアウイルス(Puhlmann M. et al., Human Gene Therapy 10:649-657(1999))に適用できる。最も好ましくは、本発明のベクターは、サイトカイン−コーディングヌクレオチド配列をアデノウイルスに適用して製造される。
【0041】
i.アデノウイルス
アデノウイルスは、中間程度のゲノムサイズ、操作の便宜性、高いタイター、広範囲のターゲット細胞、及び優れた感染性から、遺伝子伝達ベクターとしてよく利用されている。ゲノムの両末端は、100〜200bpのITR(inverted terminal repeat)を含み、これは、DNA複製及びパッケージングに必須的なシスエレメントである。アデノウイルスゲノムの小さい部分のみがcisで必要であると知られているため(Tooza, J. Molecular biology of DNA Tumor viruses, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.(1981))、アデノウイルスは、大量の外来DNA分子を運搬できる能力があり、これは、特に293のような特定細胞株を利用する場合にそうである。このような側面で、本発明の組み換えアデノウイルスにおいて、サイトカイン遺伝子以外に、他のアデノウイルスの配列は、少なくともITR配列を含む。
【0042】
ゲノムのE1領域(E1A及びE1B)は、転写及び宿主細胞遺伝子の転写を調節するタンパク質をコーディングする。E2領域(E2A及びE2B)は、ウイルスDNA複製に関与するタンパク質をコーディングする。
【0043】
現在開発されたアデノウイルスベクターの中で、E1領域の欠如された複製不能アデノウイルスがよく利用されている。一方、E3領域は、通常的なアデノウイルスベクターから除去され、外来遺伝子が挿入される座を提供する(Thimmappaya, B. et al., Cell, 31:543-551(1982); 及びRiordan, J. R. et al., Science, 245:1066-1073(1989))。
【0044】
したがって、本発明のp19、p40及びp35配列は、欠損されたE1領域(E1A領域及び/またはE1B領域、好ましくは、E1B領域)及び/またはE3領域に挿入されることが好ましい。
【0045】
本発明のより好ましい具現例によると、前記(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクトは、欠損されたE1B領域またはE3領域に挿入されており、(i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトは、欠損されたE1B領域またはE3領域に挿入される。
【0046】
本発明の他の変形例によると、前記(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクトは、欠損されたE1B領域に挿入されており、(i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトは、欠損されたE3領域に挿入される。

【0047】
本発明のより好ましい具現例によると、本発明の組み換えアデノウイルスは、E1B遺伝子が欠損されて、E1A遺伝子配列にRb結合部位をコーディングするヌクレオチド配列(即ち、CR1, CR2またはCR1とCR2をコーディングするヌクレオチド配列)に変異が発生し、Rbとの結合能が喪失されているアデノウイルスである。より好ましくは、ElAタンパク質の45番目のGlu残基がGlyで置換されて、121-127番目アミノ酸配列が全体的にGlyで置換されており、124番目のCys残基がGlyで置換されたものである。このようなRB結合能が喪失された組み換えアデノウイルスの詳細な内容は、本発明者らの特許出願第2004-0032638号に開示されている(KCCM-10569)。
【0048】
本発明のベクターの具体的な構造は、図1d乃至図1gに記載されている。
【0049】
一方、前記挿入配列は、欠損されたE4領域にも挿入できる。本明細書において、ウイルスゲノム配列と関連して使用される用語、“欠損”は、該当配列が完全に欠損されたものだけではなく、部分的に欠損されたものも含む意味を有する。
【0050】
また、アデノウイルスは、野生型ゲノムの約105%までパッケージングすることができるため、約2kbを追加的にパッケージングすることができる(Ghosh-Choudhury et al., EMBO J., 6:1733-1739(1987))。したがって、アデノウイルスに挿入される上述の外来配列は、アデノウイルスのゲノムに追加的に結合させることもできる。
【0051】
アデノウイルスは、42個の相異なる血清型及びA〜Fのサブグループを有する。この中で、サブグループCに属するアデノウイルスタイプ5が、本発明のアデノウイルスベクターを得るための最も好ましい出発物質である。アデノウイルスタイプ5に対する生化学的及び遺伝的情報は、よく知られている。
【0052】
アデノウイルスにより運搬される外来遺伝子は、エピソームと同一な方式により複製されて、そのため、宿主細胞に対して遺伝的毒性が非常に低い。したがって、本発明のアデノウイルスベクターを利用した遺伝子治療が非常に安全であると判断される。
【0053】
ii.レトロウイルス
レトロウイルスは、自分の遺伝子を宿主のゲノムに挿入させて、大量の外来遺伝物質を運搬することができ、感染できる細胞のスペクトルが広いため、遺伝子伝達ベクターとしてよく利用されている。
【0054】
レトロウイルスベクターを構築するために、サイトカイン遺伝子は、レトロウイルスの配列の代わりにレトロウイルスゲノムに挿入されて、複製不能のウイルスを生産する。ビリオンを生産するために、gag、pol及びenv遺伝子を含むが、LTR(long terminal repeat)とΨ配列は含まないパッケージング細胞株を構築する(Mann et al., Cell, 33:153-159(1983))。サイトカイン遺伝子、LTR及びΨ配列を含む組み換えプラスミドを前記細胞株に移入すると、Ψ配列は、組み換えプラスミドのRNA転写体の生産を可能にして、この転写体は、ウイルスにパッケージングされて、ウイルスは、培地に排出される(Nicolas and Rubinstein "Retroviral vectors," In: Vectors: A survey of molecular cloning vectors and their uses, Rodriguez and Denhardt (eds.), Stoneham: Butterworth, 494-513(1988))。組み換えレトロウイルスを含有する培地を収集して濃縮し、遺伝子伝達システムに利用する。
【0055】
2世帯レトロウイルスベクターを利用した遺伝子伝達が発表された。Kasaharaら(Science, 266:1373-1376(1994))は、モロニーマウス白血病ウイルス(moloney-murine leukemia virus)の変異体を製造して、ここで、EPO(erythropoietin)配列をエンベロープ部位に挿入して、新しい結合特性を有するキメリックタンパク質(Chimeric proteins)を生産した。本発明のベクターも、このような2世帯レトロウイルスベクターの構築戦略により製造することができる。
【0056】
iii.AAVベクター
アデノ関連ウイルス(AAV)は、非分裂細胞を感染させることができて、多様な種類の細胞に感染できる能力を有しているため、本発明の遺伝子伝達システムに適している。AAVベクターの製造及び用途に対する詳細な説明は、米国特許第5,139,941号及び第4,797,368号に詳細に開示されている。
【0057】
遺伝子伝達システムとしてのAAVに対する研究は、LaFace et al, Viology, 162:483486(1988), Zhou et al., Exp. Hematol. (NY), 21:928-933(1993), Walsh et al, J. Clin. Invest., 94:1440-1448(1994)、及びFlotte et al., Gene Therapy, 2:29-37(1995)に開示されている。最近、AAVベクターは、嚢胞性線維症の治療剤として臨床Iを施している。
【0058】
典型的に、AAVウイルスは、二つのAAV末端リピートが両側に位置されている目的の遺伝子配列(サイトカイン遺伝子)を含むプラスミド(McLaughlin et al., J. Virol., 62:1963-1973(1988);及びSamulski et al., J. Virol., 63:3822-3828(1989))及び末端リピートのない野生型AAVコーディング配列を含む発現プラスミド(McCarty et al., J. Virol., 65:2936-2945( 1991))を同時形質転換させて製造される。
【0059】
iv.他のウイルスベクター
他のウイルスベクターも、本発明の遺伝子伝達システムとして利用することができる。ワクシニアウイルス(Puhlmann M. et al., Human Gene Therapy 10:649-657(1999); Ridgeway, "Mammalian expression vectors," In: Vectors: A survey of molecular cloning vectors and their uses. Rodriguez and Denhardt, eds. Stoneham: Butterworth, 467-492(1988); Baichwal and Sugden, "Vectors for gene transfer derived from animal DNA viruses: Transient and stable expression of transferred genes," In: Kucherlapati R, ed. Gene transfer. New York: Plenum Press, 117-148( 1986)及びCoupar et al., Gene, 68:1-10(1988))、レンチウイルス(Wang G. et al., J. Clin. Invest. 104(11):R55-62(1999))、または単純ヘルペスウイルス(Chamber R., et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 92:1411-1415(1995))由来のベクターも、サイトカイン遺伝子配列を細胞内に運搬できる運搬システムとして利用することができる。
【0060】
上述のように、組み換えベクターを製造した後、この組み換えベクターを適した宿主細胞に形質転換させる。ベクターの宿主細胞への導入は、当業界に公知された多様な方法を通じて実施でき、例えば、微細注入法(Capecchi, M.R., Cell, 22:479(1980);及びHarlandとWeintraub, J. Cell Biol. 101:1094-1099(1985))、カルシウムフォスフェート沈殿法(Graham, F.L. et al., Virology, 52:456(1973);及びChenとOkayama, Mol. Cell. Biol. 7:2745-2752(1987))、電気穿孔法(Neumann, E. et al., EMBO J., 1:841(1982);及びTur-Kaspa et al., Mol. Cell Biol., 6:716-718(1986))、リポソーム−媒介形質感染法(Wong, T.K. et al., Gene, 10:87(1980); Nicolau及びSene, Biochim. Biophys. Acta, 721:185-190(1982);及びNicolau et al., Methods Enzymol., 149:157-176(1987))、DEAE−デキストラン処理法(Gopal, Mol. Cell Biol., 5:1188-1190(1985))、及び遺伝子ボンバードメント(Yang et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 87:9568-9572(1990))方法により、ベクターを細胞内に移入させることができる。
【0061】
その後、形質転換された宿主細胞を培養し、IL-12及びIL-23を収得する。宿主細胞の培養は、当業界に公知された多様な方法を通じて実施できる(参照: Sambrook, J. et al., Molecular Cloning. A Laboratory Manual, 3rd ed. Cold Spring Harbor Press(2001))。
【0062】
本発明によると、IL−12及びIL−23を共同発現することにおいて、IL−12とIL−23の中で一つのp40コーディングヌクレオチド配列を使用せず、ただp19、p35及びp40コーディングヌクレオチドを量的に1:1:1の比率で使用し、IL−12及びIL−23の発現量を大きく増加させることができる。このような効率的な発現は、本発明のベクターがIL−12及び/またはIL−23により媒介される多様な治療学的効能を奏するようにする。例えば、本発明のベクターは、非常に優れた抗腫瘍効能を発揮する。
【0063】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、(a)上述の本発明のベクターの治療学的有効量、及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的抗腫瘍組成物を提供する。
【0064】
本発明の薬剤学的組成物は、上述の本発明のベクターを有効成分として含むため、本明細書の不要な重複記載による過度なる複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【0065】
組み換えアデノウイルスを利用した効果的な抗腫瘍効果を誘導するためには、速い速度で成長する癌細胞に比べ、より速いウイルスの増殖と隣接細胞への拡散を通じて、効果的な細胞殺傷効果を誘発することができなければならない。また、アデノウイルスを利用した癌遺伝子治療が成功的になされるためには、高い治療効果と共に、安全性を高めるための方案が開発されなければならない。本発明で開発された組み換えアデノウイルスは、ウイルス組織内拡散増大と細胞アポトーシス促進を通じて抗腫瘍効果が著しく増大されて、特に、E1B 55遺伝子が消失された場合は、癌細胞特異的に細胞殺傷能を示す。これは、結果的に癌治療に必要なウイルス投与量を減少させることができ、ウイルスによる生体内毒性と免疫反応を大きく減らすことができる。
【0066】
本発明の組成物に含まれる組み換えアデノウイルスは、上述のように、多様な腫瘍細胞に対して殺傷効能を示すため、本発明の薬剤学的組成物は、腫瘍に係る様々な疾病または疾患、例えば、胃癌、肺癌、乳房癌、卵巣癌、肝癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、膵臓癌、膀胱癌、結腸癌、子宮頸部癌、脳癌、前立腺癌、骨癌、皮膚癌、甲状腺癌、副甲状腺癌及び尿管癌などの治療に利用できる。本明細書において、“治療”は、(i)腫瘍細胞形成の予防;(ii)腫瘍細胞の除去による、腫瘍に係る疾病または疾患の抑制;及び(iii)腫瘍細胞の除去による、腫瘍に係る疾病または疾患の軽減を意味する。したがって、本明細書における用語“治療学的有効量”は、上記した薬理学的効果を達成するに十分な量を意味する。
【0067】
本発明の組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に利用されるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。
【0068】
本発明の薬剤学的組成物は、非経口投与が好ましく、例えば、静脈内投与、 腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、または、局部投与を利用して投与することができる。卵巣癌で腹腔内に投与する場合及び肝癌で門脈に投与する場合は、注入方法により投与することができて、乳房癌の場合は、腫瘍塊に直接注射して投与することができ、結腸癌の場合は、浣腸で直接注射して投与することができて、膀胱癌の場合は、カテーテル内に直接注射して投与することができる。
【0069】
本発明の薬剤学的組成物の適合した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、疾病症状の程度、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって様々であり、普通に熟練した医者は、目的する治療に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。一般に、本発明の薬剤学的組成物は、1×105〜1×1015pfu/mlのウイルスベクター(好ましくは、組み換えアデノウイルスベクター)を含み、より好ましくは、1×1010pfuを二日に一回、2週間注射する。
【0070】
本発明の薬剤学的組成物は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造されるか、または多用量容器内に入れて製造する。この際、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、エリキシル剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤の形態でもよく、分散剤または安定化剤をさらに含むことができる。
【0071】
本発明の薬剤学的組成物は、単独療法として利用してもよいが、他の通常的な化学療法または放射療法と共に利用してもよく、このような並行療法を実施する場合は、より効果的に癌治療をすることができる。本発明の組成物と共に利用できる化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ビスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド、タモキシフェン、タキソール、トランスプラチニウム(transplatinum)、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、及びメトトレキサートなどを含む、本発明の組成物と共に利用できる放射療法は、X−線照射及びγ−線照射などである。
【発明の効果】
【0072】
本発明の特徴及び利点を要約すると、以下のようである:
(i)本発明は、IL−12及びIL−23を構成するサブユニットをコーディングするヌクレオチド配列を、適したモノシストロンまたはポリシストロン方式で製作して、非常に高い効率でIL−12及びIL−23を共同発現させる。
(ii)本発明により製作されたIL−12及びIL−23の共同発現用ベクターで形質転換された細胞は、非常に高いレベルのIL−12及びIL−23タンパク質の量を示す。
(iii)本発明のIL−12及びIL−23の共同発現用ベクター、特にIL−12及びIL−23の共同発現用アデノウイルスは、優れた抗腫瘍効能を示し、癌に対する遺伝子治療剤として優れた効能を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1a】図1a〜1gは、本発明に利用された組み換えアデノウイルス及びこれを用いて構築されたIL-12及び/またはIL-23発現組み換えアデノウイルスの具体的な実施例を示す。“★”は、E1AのRb(retinoblastoma)結合位置であるCR1において45番目アミノ酸のグルタミン酸(Glu)がグリシン(Gly)に置換されたものと、CR2において7個のアミノ酸(DLTCHEA)が7個のグリシン(GGGGGGG)で置換された変異を示す。Δは、該当配列が欠損されたものを示し、ITRは、inverted terminal repeatの略語であり、Ψは、パッケージシグナルを含む配列を示して、記号Adは、アデノウイルスの略語であって、CMVは、CMVプロモーターを示し、IXは、Adタンパク質IX遺伝子、polAは、SV40由来ポリアデニル化配列である。
【図1b】図1a〜1gは、本発明に利用された組み換えアデノウイルス及びこれを用いて構築されたIL-12及び/またはIL-23発現組み換えアデノウイルスの具体的な実施例を示す。“★”は、E1AのRb(retinoblastoma)結合位置であるCR1において45番目アミノ酸のグルタミン酸(Glu)がグリシン(Gly)に置換されたものと、CR2において7個のアミノ酸(DLTCHEA)が7個のグリシン(GGGGGGG)で置換された変異を示す。Δは、該当配列が欠損されたものを示し、ITRは、inverted terminal repeatの略語であり、Ψは、パッケージシグナルを含む配列を示して、記号Adは、アデノウイルスの略語であって、CMVは、CMVプロモーターを示し、IXは、Adタンパク質IX遺伝子、polAは、SV40由来ポリアデニル化配列である。
【図1c】図1a〜1gは、本発明に利用された組み換えアデノウイルス及びこれを用いて構築されたIL-12及び/またはIL-23発現組み換えアデノウイルスの具体的な実施例を示す。“★”は、E1AのRb(retinoblastoma)結合位置であるCR1において45番目アミノ酸のグルタミン酸(Glu)がグリシン(Gly)に置換されたものと、CR2において7個のアミノ酸(DLTCHEA)が7個のグリシン(GGGGGGG)で置換された変異を示す。Δは、該当配列が欠損されたものを示し、ITRは、inverted terminal repeatの略語であり、Ψは、パッケージシグナルを含む配列を示して、記号Adは、アデノウイルスの略語であって、CMVは、CMVプロモーターを示し、IXは、Adタンパク質IX遺伝子、polAは、SV40由来ポリアデニル化配列である。
【図1d】図1a〜1gは、本発明に利用された組み換えアデノウイルス及びこれを用いて構築されたIL-12及び/またはIL-23発現組み換えアデノウイルスの具体的な実施例を示す。“★”は、E1AのRb(retinoblastoma)結合位置であるCR1において45番目アミノ酸のグルタミン酸(Glu)がグリシン(Gly)に置換されたものと、CR2において7個のアミノ酸(DLTCHEA)が7個のグリシン(GGGGGGG)で置換された変異を示す。Δは、該当配列が欠損されたものを示し、ITRは、inverted terminal repeatの略語であり、Ψは、パッケージシグナルを含む配列を示して、記号Adは、アデノウイルスの略語であって、CMVは、CMVプロモーターを示し、IXは、Adタンパク質IX遺伝子、polAは、SV40由来ポリアデニル化配列である。
【図1e】図1a〜1gは、本発明に利用された組み換えアデノウイルス及びこれを用いて構築されたIL-12及び/またはIL-23発現組み換えアデノウイルスの具体的な実施例を示す。“★”は、E1AのRb(retinoblastoma)結合位置であるCR1において45番目アミノ酸のグルタミン酸(Glu)がグリシン(Gly)に置換されたものと、CR2において7個のアミノ酸(DLTCHEA)が7個のグリシン(GGGGGGG)で置換された変異を示す。Δは、該当配列が欠損されたものを示し、ITRは、inverted terminal repeatの略語であり、Ψは、パッケージシグナルを含む配列を示して、記号Adは、アデノウイルスの略語であって、CMVは、CMVプロモーターを示し、IXは、Adタンパク質IX遺伝子、polAは、SV40由来ポリアデニル化配列である。
【図1f】図1a〜1gは、本発明に利用された組み換えアデノウイルス及びこれを用いて構築されたIL-12及び/またはIL-23発現組み換えアデノウイルスの具体的な実施例を示す。“★”は、E1AのRb(retinoblastoma)結合位置であるCR1において45番目アミノ酸のグルタミン酸(Glu)がグリシン(Gly)に置換されたものと、CR2において7個のアミノ酸(DLTCHEA)が7個のグリシン(GGGGGGG)で置換された変異を示す。Δは、該当配列が欠損されたものを示し、ITRは、inverted terminal repeatの略語であり、Ψは、パッケージシグナルを含む配列を示して、記号Adは、アデノウイルスの略語であって、CMVは、CMVプロモーターを示し、IXは、Adタンパク質IX遺伝子、polAは、SV40由来ポリアデニル化配列である。
【図1g】図1a〜1gは、本発明に利用された組み換えアデノウイルス及びこれを用いて構築されたIL-12及び/またはIL-23発現組み換えアデノウイルスの具体的な実施例を示す。“★”は、E1AのRb(retinoblastoma)結合位置であるCR1において45番目アミノ酸のグルタミン酸(Glu)がグリシン(Gly)に置換されたものと、CR2において7個のアミノ酸(DLTCHEA)が7個のグリシン(GGGGGGG)で置換された変異を示す。Δは、該当配列が欠損されたものを示し、ITRは、inverted terminal repeatの略語であり、Ψは、パッケージシグナルを含む配列を示して、記号Adは、アデノウイルスの略語であって、CMVは、CMVプロモーターを示し、IXは、Adタンパク質IX遺伝子、polAは、SV40由来ポリアデニル化配列である。
【図2a】図2a-2bは、本発明の一実施例により製作されたAd-ΔB7/IL23-p35組み換えアデノウイルスベクターによるIL-12(図2a)及びIL-23(図2b)タンパク質の発現程度を測定したELISA結果である。
【図2b】図2a-2bは、本発明の一実施例により製作されたAd-ΔB7/IL23-p35組み換えアデノウイルスベクターによるIL-12(図2a)及びIL-23(図2b)タンパク質の発現程度を測定したELISA結果である。
【図2c】図2cは、Ad-ΔB7/IL23-p35組み換えアデノウイルスにより感染されたU343細胞において、p19, p35及びp40のmRNA発現程度を示すRT-PCR結果である。レーン1-6はそれぞれ、非感染のU343細胞、Ad-ΔB7感染細胞、Ad-ΔB7/IL12感染細胞、Ad-ΔB7/IL23感染細胞、Ad-ΔB7/IL23-p35感染細胞及びAd-ΔB7/IL12とAd-ΔB7/IL23の同時感染細胞に対するものである。
【図2d】図2d-2eは、Ad-ΔB7/IL23-p35によるIL-12とIL-23の発現増加が遺伝子容量(gene dose)によるものであるかを試験した実験結果である。
【図2e】図2d-2eは、Ad-ΔB7/IL23-p35によるIL-12とIL-23の発現増加が遺伝子容量(gene dose)によるものであるかを試験した実験結果である。
【図3a】図3a-3bは、本発明の一実施例により製作されたAd-ΔB7/IL23-p35組み換えアデノウイルスベクターによるIL-12及びIL-23タンパク質の発現程度を測定したウェスタンブロッティング結果である。括弧内の数字は、希釈程度を示す。
【図3b】図3a-3bは、本発明の一実施例により製作されたAd-ΔB7/IL23-p35組み換えアデノウイルスベクターによるIL-12及びIL-23タンパク質の発現程度を測定したウェスタンブロッティング結果である。括弧内の数字は、希釈程度を示す。
【図4a】図4aは、腫瘍細胞が移植されたマウスにおいて、本発明の一実施例により製作されたAd-ΔB7/IL23-p35組み換えアデノウイルスの抗腫瘍効果を示すインビボ(in vivo)実験結果である。
【図4b】図4bは、腫瘍細胞が移植されたマウスに、本発明の一実施例により製作されたAd-ΔB7/IL23-p35組み換えアデノウイルスを注射した後、マウスの生存率を調べた結果である。
【図5】図5は、本発明の一実施例により製作されたAd-ΔB7/IL23-p35組み換えアデノウイルスがIFN-γを分泌する腫瘍細胞特異的免疫細胞頻度に及ぼす影響を分析した結果である。
【図6】図6は、本発明の一実施例により製作されたAd-ΔB7/IL23-p35組み換えアデノウイルス(IL-12とIL-23を発現する腫瘍特異的殺傷アデノウイルス)を、腫瘍移植されたマウスに投与して、これによる腫瘍組織の変化を観察したH & E染色結果である。
【図7】図7は、本発明の一実施例により製作されたAd-ΔB7/IL23-p35組み換えアデノウイルス(IL-12とIL-23を発現する腫瘍特異的殺傷アデノウイルス)を、腫瘍移植されたマウスに投与して、これによる腫瘍組織の変化を観察したIHE(immunohistochemical)染色(抗-CD4及び抗-CD8抗体利用)結果である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0074】
実験材料及び実験方法
1.対象細胞株及び細胞の培養
実験に使用された細胞株は、人体脳癌細胞株(U343)、肺癌細胞株(A549)、マウス黒色腫(B16-F10)、及びアデノウイルス初期発現遺伝子であるE1部位が宿主遺伝体内に内在されている293細胞株であり、B16−F10を除いた全ての細胞株は、ATCC(American Type Culture Collection; Manassas, VA, USA)から購入した。B16−F10マウス黒色腫細胞株は、大韓民国のソウル大学校の細胞株銀行で購入して使用した。また、B16−F10を除いた全ての細胞株は、10%の牛胎児血清(Gibco BRL, Grand Island, NY)の含有されたDMEM培地(Gibco BRL)を培養液とし、抗生剤ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco BRL)を添加して、5% CO2の存在下、37℃恒温培養器で培養した。B16−F10細胞株は、5%の牛胎児血清とペニシリン/ストレプトマイシンとを含むRPMI 1640(Gibco BRL)を使用して、5% CO2の存在下、37℃恒温培養器で培養した。
【0075】
2.実験動物
生体内抗腫瘍実験は、6〜8週齢のC57BL/6雄マウスをSLC(Japan SLC, Inc., Japan)から購入して行った。動物飼育室の温度は、22±2℃、湿度は、55〜60%に維持して、明暗循環が12時間単位で調節されるようにし、放射線照射で滅菌した固形飼料(中央実験動物, Seoul, Korea)と滅菌された給水を自由に摂取するようにした。
【0076】
3. IL-12とIL-23を発現する組み換えアデノウイルスの製作、生産及び力価算出
IL-12とIL-23遺伝子を発現するアデノウイルスを製作するために、まずマウスIL-12遺伝子を発現するアデノウイルスを製作した。pcDNA3.1-IRESベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)をEcoRI制限酵素で処理して得た800 bp大きさのIRES遺伝子を、pcDNA3.1-p35ベクター(サイトカイン銀行、ジョンブク大学校)のp35遺伝子のすぐ後ろにEcoRI制限酵素を利用して挿入して、pcDNA3.1-p35/IRESベクターを製作した。本実験で利用されるIRESは、配列番号1に記載されている。そして、pcDNA3.1-p40(サイトカイン銀行、ジョンブク大学校)をPmeIとXhoI制限酵素で処理して得た約1007 bp大きさのp40遺伝子を、pcDNA3.1-p35/IRESベクターのIRESのすぐ後ろにEcoRV制限酵素を利用して挿入し、pcDNA3.1-IL12ベクターを製作した。利用されたp40遺伝子及びp35遺伝子の配列は、それぞれGenBank接近番号M86671及びM86672に記載されている。
【0077】
製作されたpcDNA3.1-IL12ベクターをSnaBIとSalI制限酵素で処理して得た約2.5 kb大きさのIL-12(p35/IRES/p40)を、pXC1/ΔB7ベクター(参照:キムゼソン, E1A及びE1B突然変異様相による腫瘍選択的複製可能アデノウイルスの細胞殺傷効果比較、ヨンセ大学校(2005))に挿入して、pXC1/ΔB7-IL12アデノウイルスE1シャトルベクターを製作した。製作されたpXC1/ΔB7-IL12シャトルベクターをNdeI制限酵素で処理して線形化させて、BstBIを処理して線形化されたトータルベクターであるvmdl324BstB(S. B. Verca, University of Fribourg, Switzerland; Heider, H. et al., Biotechniques, 28(2):260-265, 268-270(2000))と共に、大腸菌BJ5183(S. B. Verca, University of Fribourg, Switzerland)に同時形質転換させて、相同組み換えを誘導し、E1部位にIL-12遺伝子が挿入された腫瘍特異的殺傷アデノウイルスであるAd-ΔB7/IL12を製作した(参照:図1の(b))
【0078】
また、マウスIL-23遺伝子を発現するアデノウイルスを製作するために、まず6〜8週齢のC57BL/6雄マウスの骨髄から大食細胞と樹状細胞を分離して、p19遺伝子を、プライマーセット(センス: 5'-ccgctcgagatgctggattgcagagcagtaat-3',アンチセンス: 5'-ccggaattcttaagctgttggcactaagggc-3')を利用してRT-PCRで合成した。このように得られた590 bp大きさのp19遺伝子をXhoI, EcoRI 制限酵素で処理した後、pCA14ベクター(Microbix, Ontario, Canada)に挿入して、pCA14-p19を製作した。利用されたp19遺伝子の配列は、GenBank接近番号AF301619に記載されている。
【0079】
そして、pcDNA3.1-IRESベクターをEcoRI 制限酵素で処理して得た約800 bp大きさのIRES遺伝子を、pCA14-p19ベクターのp19遺伝子の直ぐ後ろにEcoRI 制限酵素を利用して挿入し、pCA14-p19/IRESベクターを製作した。また、製作されたpCA14-p19/IRESベクターをSnaBIとSalI 制限酵素で処理して得たp19/IRESをpXC1/ΔB7ベクターに挿入して、pXC1/ΔB7-p19/IRESベクターを製作した。最後に、pcDNA3.1-p40ベクターをHindIII 制限酵素で処理して得たp40をpXC1/ΔB7-p19/IRESベクターに挿入して、pXC1/ΔB7-IL23(p19/IRES/p40)アデノウイルスE1シャトルベクターを製作した。製作されたpXC1/ΔB7-IL23(p19/IRES/p40)シャトルベクターをNruI 制限酵素で処理して線形化させた後、BstBIを処理して線形化されたトータルベクターであるvmdl324BstB(S. B. Verca, University of Fribourg, Switzerland)と共に大腸菌BJ5183で同時形質転換させて、相同組み換えを誘導し、E1部位にIL-23遺伝子が挿入されたアデノウイルス(Ad-ΔB7/IL23)を製作した(参照:図1の(c))
【0080】
IL-12とIL-23遺伝子を同時に発現するアデノウイルスを製作するために、pSP72ΔE3-p35 E3シャトルベクターとAd-ΔB7/IL23トータルベクターとを同時に大腸菌BJ5183に形質転換させて、Ad-ΔB7/IL23-p35アデノウイルスを製作した(参照:図1の(d))。一方、前記pSP72ΔE3-p35 E3シャトルベクターは、次のように製作した。pcDNA3.1-p35(サイトカイン銀行、ジョンブク大学校)ベクターをHindIIIとEcoRI制限酵素で処理して得た約644 bp大きさのp35遺伝子を、pSP72(Promega, Madison, WI)ベクターにHindIIIとEcoRI制限酵素を利用して挿入し、pSP72-p35ベクターを製作した。そしてpSP72-p35ベクターをXhoIとEcoRI 制限酵素で処理して得たp35遺伝子を、pCA14(Microbix, Ontario, Canada) ベクターにXhoIとEcoRI制限酵素を利用して挿入し、pCA14-p35ベクターを製作した。製作されたpCA14-p35ベクターをBglII制限酵素で処理し、p35遺伝子をCMVプロモーターにより発現できるCMV-p35-polA発現カセットを切り出して、これを、アデノウイルスE3シャトルベクターであるpSP72ΔE3にBamHI制限酵素を利用して挿入し、pSP72ΔE3-p35アデノウイルスE3シャトルベクターを製作した。
【0081】
製作された全てのウイルスベクターは、293細胞株に形質転換して生産した。
【0082】
4. IL-12とIL-23タンパク質発現様相の究明
Ad-ΔB7/IL12またはAd-ΔB7/IL23-p35アデノウイルス感染によるIL-12の発現程度を測定するために、ELISAを行った。U343人体脳癌細胞株(1.5 x 106個)とA549肺癌細胞株(1.5 x 106個)を100Φディッシュに分株した翌日、1-5 MOIのAd-ΔB7-IL12またはAd-ΔB7/IL23-p35をそれぞれ感染させて、48時間後に培地を収得した。収得された細胞培養液または順次的に希釈したIL-12組み換えタンパク質を、IL-12を特異的に認知する抗体(Endogen, Woburn, MA, USA)でコーティングされた96-ウェルプレートにそれぞれ入れて、室温で1時間反応した後、洗浄した。その後、バイオチンが付着された二次抗体(Endogen)をプレートに入れた後、室温で1時間反応して、ストレプトアビジン-HRP溶液(Endogen)を、洗浄したプレートに入れて30分間発色させた後、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices Corporation, Sunnyvale, CA)で吸光度値を求めた。吸光度は、450 nmと540 nmでそれぞれ測定し、標準容量曲線によって、培養液中に発現されたIL-12の量を算出した。
【0083】
さらに、Ad-ΔB7/IL23またはAd-ΔB7/IL23-p35アデノウイルス感染によるIL-23の発現程度を調べるために、ELISAを行った。ELISAの全過程は、マウスIL-23 ELISAキット(eBioscience, San Diego, CA, USA)の説明書にしたがって、上記と同様な方法により行った。
【0084】
また、Ad-ΔB7/IL12, Ad-ΔB7/IL23またはAd-ΔB7/IL23-p35アデノウイルス感染によるIL-12及びIL-23の発現程度を調べるために、ウェスタンブロッティングを行った。U343人体脳癌細胞株(1.5 x 106個)を100Φディッシュに分株した翌日、5 MOIのAd-ΔB7-IL12, Ad-ΔB7-IL23またはAd-ΔB7/IL23-p35をそれぞれ感染させて、48時間後に培地を収得し、非変性SDS-PAGE(Sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis)電気泳動を行った。電気泳動後、ゲルにあるタンパク質をPVDF膜に電気-転移した後、p40またはp19タンパク質を特異的に認知する抗体(R & D Systems, Minneapolis, MN)を一次抗体で反応して、一次抗体に対する二次抗体(Cell Signaling Technology, Beverly, MA, USA)を再び反応した後、ECL(Amersham., Buckinghamshire, UK)方法を利用してタンパク質の発現様相を確認した。
【0085】
5. RT-PCR(reverse transcriptation-polymerase chain reaction)
Ad-ΔB7/IL12, Ad-ΔB7/IL23, Ad-ΔB7/IL23-p35またはAd-ΔB7/IL23 + Ad-ΔB7-p35アデノウイルス感染によるp19, p35またはp40遺伝子の転写発現程度を測定するために、RT-PCRを行った。U343人体脳癌細胞株(5 × 105個)を6Φディッシュに分株した翌日、5 MOIのAd-ΔB7/IL12, Ad-ΔB7/IL23, Ad-ΔB7/IL23-p35またはAd-ΔB7/IL23 + Ad-ΔB7-p35をそれぞれ感染させて、48時間後に細胞を収得した。収得された細胞から、RNeasy mini kit(Qiagen, Valencia, CA)を利用してtotal RNAを抽出した後、M-MLV reverse transcriptaseを利用して、total RNAからcDNAを合成した。最後に、p19 primer set(sense : 5'-cctggctgtgcctaggagta-3', antisense : 5'-aggctcccctttgaagatg-3'), p35 primer set(sense : 5'-gccagggtcattccagtctc-3', antisense : 5'-ggcacagggtcatcatcaaa-3'), またはp40 primer set(sense : 5'-agcagttcccctgactctcg-3', antisense : 5'-cagggtactcccagctgacc-3')を利用して、cDNAを、まず94℃で10分間danaturation して、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で30秒のcycleを28回繰り返して、最後に72℃で10分間extentionをした。このようにRT-PCRを行った後、mRNA量を比較検証した。
【0086】
6.生体内抗腫瘍効果と生存率の検証
Ad-ΔB7/IL12, Ad-ΔB7/IL23及びAd-ΔB7/IL23-p35アデノウイルスの生体内抗腫瘍効果を比較検証するために、約6-8週齢のC57BL/6マウス(Charles River Laboratories International, Inc., Wilmington, MA, USA)の腹壁に、B16-F10細胞(5 x 105個)を50μlのHanks' balanced salt solution(HBSS)(Gibco BRL)に浮遊して皮下注射した。腫瘍が約120-150mm3程度成長した時、5 x 109 VPのアデノウイルスを陰性対照群のPBSと共に、それぞれ二日間隔で3回腫瘍に直接注射した後、腫瘍の成長と生存率を観察した。腫瘍の容積は、バーニヤキャリパスを利用して、腫瘍の長軸と短軸を測定した後、次の数学式で算出した:
腫瘍の容積=(短軸mm)2×長軸mm×0.523
【0087】
7.マウス生体内の脾臓細胞の調製
C57BL/6マウスの腹壁に形成されたマウス黒色腫に、"生体内抗腫瘍効果及び生存率検証"実験と同一な方法により、アデノウイルスをそれぞれ投与した後、最後のウイルス注射後、3-5日頃にマウスを頚椎脱骨して、腹部を切開し、脾臓を無菌的に摘出して、滅菌されたスライドの粗い部分を利用して均質化した。均質化された脾臓細胞を10%牛胎児血清が入っているRPMI 1640培地で浮遊させた後、2000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を除去し、赤血球溶血液(ACK lysing buffer; 0.15 M NH4Cl, 1 mM KHCO3, 0.1 mM Na2 EDTA, pH 7.2)を入れて4℃で5分間放置し、赤血球を除去した。その後、2000 rpmで10分間遠心分離した後、細胞沈殿物を10%牛胎児血清が入っているRPMI 1640培地で2回洗浄して、トリパンブルー(Gibco BRL)で細胞を希釈して細胞数を測定した。
【0088】
8. IFN-γ ELISpot分析
アデノウイルスを投与したマウスで腫瘍細胞特異的免疫細胞活性度を検証するために、ELISpot(enzyme-linked immune spot)分析を行った。上記の"マウス生体内の脾臓細胞の調製"方法で製造された脾臓細胞を、1.5 x 106細胞/mlとなるように培地で希釈した後、IL-2(100 U/ml)と放射線が照射されたB16-F10細胞株と共に、37℃, 5% CO2培養器で5日間培養した。培養後5日頃に遠心分離して細胞を沈殿させて、10%牛胎児血清が入っているRPMI 1640培地で2回洗浄した。それぞれの分析プレートは、抗-IFN-γ抗体(Millipore, Bedford, MA, USA)で24時間コーティングし、翌日1 x 104, 3 x 104, 9 x 104, 2 x 105及び6 x 105個の脾臓細胞をプレートに分株して、15時間反応した。その後、バイオチン化抗-IFN-γ抗体(Millipore, Bedford, MA, USA)を入れて2時間反応して、ストレプトアビジン-アルカリフォスファターゼ接合体(Pharmingen, San Diego, CA, USA)を入れて1時間反応した。基質としてAEC(3-amino-9-ethylcarbazol, Pharmingen, San Diego, CA, USA)溶液を入れて反応を持続させた後、それぞれのIFN-γを分泌する細胞(赤色)の数を立体顕微鏡を使用して測定した。
【0089】
9.IL-12とIL-23を発現する腫瘍特異的殺傷アデノウイルス投与による腫瘍組織の変化観察
C57BL/6マウスの腹壁に形成されたマウス黒色腫に、"生体内抗腫瘍効果及び生存率検証"実験と同様な方法により、アデノウイルスをそれぞれ投与した後、最後のウイルス注射後5日頃に腫瘍を摘出した。そして、O.C.T. compoundで凍結薄片した後、10μm厚に切断して、ゼラチンがコーティングされたスライドガラス上に付着し、組織免疫染色を行った。スライドに付着された組織を0.3% H2O2 溶液で10分間反応して、内因性過酸化酵素の作用を遮断した後、一次抗体のラット抗マウスCD4単クローン抗体(PharMingen)または、ラット抗-マウスCD8単クローン抗体(PharMingen)を入れて、室温で2時間反応した。その後、HRPが結合された二次抗体のヤギ抗-ラットIgG-HRP抗体(PharMingen)を入れて、室温で1 時間反応して、DABを添加して発色程度を見守ってから、100%, 90%及び70%エタノールとキシレン溶液に沈殿させて、カバーガラスを覆って観察した。
【0090】
実験結果
1. IL-12とIL-23を発現するアデノウイルスの製作及びIL-12とIL-23の発現様相の究明
IL-12とIL-23遺伝子の各々または同時発現による抗腫瘍効果の改善を比較分析するために、IL-12遺伝子がアデノウイルスのE1部位に挿入されたアデノウイルスであるAd-ΔB7/IL12と、IL-23遺伝子がE1部位に挿入されたアデノウイルスであるAd-ΔB7/IL23、そしてE1部位にIL-23、E3部位にp35遺伝子が同時に挿入されたアデノウイルスであるAd-ΔB7/IL23-p35をそれぞれ製作した(図1)。Ad-ΔB7/IL12, Ad-ΔB7/IL23及びAd-ΔB7/IL23-p35は、アデノウイルスの初期遺伝子であるE1B遺伝子が消失されて、E1A遺伝子が変異された癌細胞特異的殺傷アデノウイルスである。Ad-ΔB7は、本発明者の大韓民国特許出願第2004-0032638号に開示されており、韓国微生物保存センターにKCCM-10569番号として寄託されている。
【0091】
製作されたアデノウイルスによるIL-12またはIL-23の発現程度を調べるために、U343人体脳癌細胞株にアデノウイルス(Ad-ΔB7/IL12, Ad-ΔB7/IL23, Ad-ΔB7/IL23-p35及びAd-ΔB7/IL12 + Ad-ΔB7/IL23)をそれぞれ感染させて、48時間後に培地を回収してELISAを行った。図2a及び2bに示されたように、それぞれのウイルスを感染させることにより、IL-12またはIL-23が発現されることを確認して、特にAd-ΔB7/IL12(1 MOI: 216 ± 9 pg/mg)またはAd-ΔB7/IL12とAd-ΔB7/IL23ウイルスをそれぞれ1 MOIで同時に処理した場合(Ad-ΔB7/IL12 + Ad-ΔB7/IL23: 279 ± 16 pg/mg)より、Ad-ΔB7/IL23-p35(1 MOI : 3854 ± 155 pg/mg)を感染させた時のIL-12の発現量がそれぞれ14倍、18倍増加して、IL-23の発現量は、Ad-ΔB7/IL23(5 MOI : 376 ± 3 pg/mg)またはAd-ΔB7/IL12とAd-ΔB7/IL23ウイルスをそれぞれ5 MOIで同時に処理した場合(Ad-ΔB7/IL12 + Ad-ΔB7/IL23: 327 ± 31 pg/mg)より、Ad-ΔB7/IL23-p35(5 MOI : 17155 ± 258 pg/mg)を処理した場合の発現量がそれぞれ46倍、52倍増加することを観察することができた。
【0092】
また、製作されたアデノウイルスによるp19, p35またはp40のmRNA発現程度をRT-PCRで調べるために、U343人体脳癌細胞株にAd-ΔB7/IL12, Ad-ΔB7/IL23, Ad-ΔB7/IL23-p35アデノウイルスを5 MOIでそれぞれ感染させて、また、Ad-ΔB7/IL12とAd-ΔB7/IL23アデノウイルスをそれぞれ5 MOIずつmixした(Ad-ΔB7/IL12 + Ad-ΔB7/IL23)ウイルスを感染させた後、48時間頃に、細胞を回収してRT-RCRを行った。図2cに示されたように、それぞれのウイルスを感染させることにより、p19, p35及びp40遺伝子の発現をそれぞれ確認することができて、IL-12, IL-23 ELISA結果と同様に、タンパク質発現程度だけではなく、転写発現程度においても同様に、Ad-ΔB7/IL12, Ad-ΔB7/IL23またはAd-ΔB7/IL12 + Ad-ΔB7/IL23に比べ、Ad-ΔB7/IL23-p35のp19, p35またはp40遺伝子の転写発現量が著しく増加することを観察することができた。
【0093】
Ad-ΔB7/IL12, Ad-ΔB7/IL23またはAd-ΔB7/IL12 + Ad-ΔB7/IL23に比べ、Ad-ΔB7/IL23-p35によるIL-12とIL-23の発現が大きく増加する理由が、遺伝子容量(gene dose)のためかを調べるために、U343人体脳癌細胞株にアデノウイルス(Ad-ΔB7, Ad-ΔB7/IL23-p35, Ad-ΔB7/IL12 + Ad-ΔB7/IL23, Ad-ΔB7/IL23 + Ad-ΔB7-p35, Ad-ΔB7-p35)をそれぞれ感染させて、48時間後に培地を回収してELISAを行った。Ad-ΔB7-p35は、Ad-ΔB7のE3部位にp35遺伝子が挿入されたアデノウイルスである。図2d-2eに示されたように、Ad-ΔB7/IL12 + Ad-ΔB7/IL23(5 MOI : 1074 ± 46 pg/mg)またはAd-ΔB7/IL23 + Ad-ΔB7-p35(5 MOI : 365 ± 10 pg/mg)より、Ad-ΔB7/IL23-p35(5 MOI : 7170 ± 250 pg/mg)を感染させた時にIL-12の発現量がそれぞれ7倍及び20倍増加して、IL-23の発現量は、Ad-ΔB7/IL12 + Ad-ΔB7/IL23(5 MOI : 144 ± 29 pg/mg)またはAd-ΔB7/IL23 + Ad-ΔB7-p35(5 MOI : 218 ± 31 pg/mg)より、Ad-ΔB7/IL23-p35(5 MOI : 1944 ± 96 pg/mg)によりそれぞれ9倍、14倍増加することを観察することができた。このような結果により、IL-23とp35をそれぞれ異なるアデノウイルスベクターで発現させる場合に比べ、これらを一つのアデノウイルスベクターで発現させる場合に、IL-12とIL-23の発現量が大きく増加することを確認することができた。
【0094】
また、製作されたアデノウイルスによるIL-12またはIL-23の発現程度を調べるために、U343人体脳癌細胞株にアデノウイルス(Ad-ΔB7/IL12, Ad-ΔB7/IL23及びAd-ΔB7/IL23-p35)をそれぞれ感染させて、48時間後に培地を回収し、ウェスタンブロッティングを行った。図3aのパネルA及びBから分かるように、それぞれのウイルスを感染させることにより、70 kDaのIL-12の発現と59 kDaのIL-23の発現をそれぞれ確認することができて、IL-12とIL-23 ELISA結果と同様に、Ad-ΔB7/IL12またはAd-ΔB7/IL23に比べ、Ad-ΔB7/IL23-p35のIL-12とIL-23発現量が著しく増加することを観察することができた。特に、IL-12の発現量は、Ad-ΔB7/IL12に比べ、Ad-ΔB7/IL23-p35が約20倍程度増加した。また、図3bのパネルA及びBに示されたように、Ad-ΔB7/IL12とAd-ΔB7/IL23をそれぞれ5 MOIずつ同時に感染させた群に比べ、Ad-ΔB7/IL23-p35を5 MOI感染させた群でIL-12及びIL-23の発現量が著しく増加していることが分かった。
【0095】
2. IL-12とIL-23を発現するアデノウイルスの生体内抗腫瘍効果の検証
IL-12またはIL-23をそれぞれ発現する腫瘍選択的殺傷ウイルスであるAd-ΔB7/IL12とAd-ΔB7/IL23、またはIL-12とIL-23を同時に発現する腫瘍特異的殺傷ウイルスであるAd-ΔB7/IL23-p35の生体内抗腫瘍効果を比較検証するために、B16-F10マウス黒色腫細胞株をC57BL/6マウスの皮下に注射した後、形成された腫瘍にそれぞれのウイルスを5 x 109 VP/30μlで腫瘍内に注射した後、腫瘍の成長を観察した。
【0096】
陰性対照群であるPBSを投与したマウスの場合は、腫瘍が急速な速度で成長し、ウイルス投与後9日頃には、腫瘍の大きさが3318.8 ± 396.2mm3であって、11日以後には、生存したマウスがいなかった。また、対照群腫瘍選択的殺傷アデノウイルスであるAd-ΔB7を投与したマウスでは、PBSに比べ、腫瘍成長が少し抑えられた傾向を示したが、PBSと等しく腫瘍が急速な速度で成長し、ウイルス投与後9日頃には、腫瘍の大きさが2586.9 ± 405.5mm3であった。そして、Ad-ΔB7/IL12とAd-ΔB7/IL23を投与した群では、ウイルス投与後9日頃に腫瘍の大きさがそれぞれ290.7 ± 32.4mm3と623.3 ± 83.3mm3であって、Ad-ΔB7/IL23に比べ、Ad-ΔB7/IL12が処理された群で腫瘍の成長が著しく抑制されることを観察した(図4a)。特に、IL-12とIL-23が同時に挿入されたAd-ΔB7/IL23-p35を処理した群では、ウイルス投与後9日頃に、腫瘍の大きさが79.2 ± 19.6mm3であって、IL-12またはIL-23をそれぞれ発現するアデノウイルスを投与した場合に比べ、腫瘍の成長がさらに抑制され、増大された抗腫瘍効果を確認することができた。
【0097】
また、マウスの生存率を調べた結果、図4bから分かるように、PBSまたはAd-ΔB7を投与したマウスは、それぞれ11日と12日後に全部死んだ反面、Ad-ΔB7/IL23を投与したマウスは、18日後に全部死んで、対照群であるPBSまたはAd-ΔB7に比べ、生存率が増加されることを観察した。Ad-ΔB7/IL12を投与したマウスは、30日まで生存率が25%であって、Ad-ΔB7/IL23を投与したマウスに比べ、向上された生存率を確認することができた。また、Ad-ΔB7/IL23-p35を処理したマウスは、30日まで生存率が100%であることを観察することができた。このように、抗腫瘍効果と同様に、IL-12とIL-23が同時に発現されるAd-ΔB7/IL23-p35アデノウイルスを投与した場合のマウス生存率においても、明らかな改善効果を確認することができた。
【0098】
3. 癌細胞特異的免疫反応活性の検証
活性化された免疫細胞により主に分泌されるサイトカインであるIFN-γを分泌する腫瘍細胞特異的免疫細胞の頻度を調べるために、IFN-γ ELISpot分析を行った(図5)。それぞれのアデノウイルスを投与したマウスの脾臓細胞を分離し、1 x 104, 3 x 104, 9 x 104, 2 x 105及び6 x 105個ずつ、抗-IFN-γ抗体でコーティングされた96-ウェルプレートに分株した後、IFN-γを分泌する細胞の数を算出した。図5から分かるように、全ての実験群において、脾臓細胞の数が増加するにつれて、IFN-γを分泌する細胞である褐色spotの数も増加されることを観察し、特にAd-ΔB7/IL23-p35を投与したマウスの場合、Ad-ΔB7, Ad-ΔB7/IL12またはAd-ΔB7/IL23を投与したマウスより、褐色spotの数が大きく増加されることを観察することができた。特に、1 x 104個の脾臓細胞を入れたすべてのウェルで観察された褐色spot数を定量的に比較してみた時、Ad-ΔB7/IL23-p35を投与したマウスの場合に観察された褐色spot数(216)が、Ad-ΔB7/IL12またはAd-ΔB7/IL23を投与したマウスの場合に観察された褐色spot数(Ad-ΔB7/IL12;91,Ad-ΔB7/IL23;156)より増加されていることを確認することができた。このような結果は、Ad-ΔB7/IL12またはAd-ΔB7/IL23を投与したマウスに比べ、Ad-ΔB7/IL23-p35を投与したマウスで誘導される抗腫瘍免疫反応が大きく増加されたことを意味する。
【0099】
4.IL-12とIL-23を発現する複製可能アデノウイルス投与による腫瘍組織の変化の観察
IL-12とIL-23発現による腫瘍組織内の変化を調べるために、腫瘍内に浸潤したリンパ球を調べた。それぞれのウイルスまたはPBSを投与した腫瘍組織をH & E染色した結果、PBSを投与した場合は、腫瘍組織内にリンパ球がほとんど浸潤されなかったが、Ad-ΔB7/IL12またはAd-ΔB7/IL23を投与した実験群では、腫瘍周囲にリンパ球が浸潤されたことを確認した。また、Ad-ΔB7/IL12またはAd-ΔB7/IL23に比べ、Ad-ΔB7/IL23-p35を投与した腫瘍組織の場合では、腫瘍の周囲だけではなく、腫瘍組織内部にも著しく多いリンパ球が浸潤されたことを確認することができ、大部分の癌細胞が枯死されていることを観察した(図6)。腫瘍組織内に浸潤されたリンパ球の細胞群をより綿密に調査するために、CD4+とCD8+ Tリンパ球を特異的に認知できる抗体を使用して、IHCを行った結果、Ad-ΔB7/IL12またはAd-ΔB7/IL23に比べ、Ad-ΔB7/IL23-p35を投与した実験群において、著しく増加されたCD4+ とCD8+ Tリンパ球を腫瘍組織の内部と周囲で観察することができて、他の実験群に比べ、Tリンパ球の数が明らかに増加したことを確認した(図7)。
【0100】
以上詳細に説明したように、本発明は、IL(interleukin)−12及びIL−23の共同発現方法、前記共同発現方法に利用されるIL−12及びIL−23の共同発現用組み換えベクター、及びこのベクターを含む薬剤学的抗腫瘍組成物を提供する。本発明は、IL−12及びIL−23を構成するサブユニットをコーディングするヌクレオチド配列を、適したモノシストロンまたはポリシストロン方式で製作して、非常に高い効率でIL−12及びIL−23を共同発現させる。本発明により製作されたIL−12及びIL−23の共同発現用ベクターで形質転換された細胞は、非常に高いレベルのIL−12及びIL−23タンパク質の量を示す。本発明のIL−12及びIL−23の共同発現用ベクター、特にIL−12及びIL−23の共同発現用アデノウイルスは、優れた抗腫瘍効能を示し、癌に対する遺伝子治療剤として優れた効能を奏する
【0101】
以上、本発明の望ましい具現例を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。
【0102】
参考文献
1. Paillard F. Cancer gene therapy annual conference 1997: trends and news. Human Gene Ther 1998;9:283-286.
2. Grill J, Geoerger B, Lamfers M, Dirven C, Van Beusechem V, Gerritsen W, et al. Conditionally replicative adenoviruses: a second wind for cancer gene therapy. Bull Cancer 2003;90:1039-1048.
3. Verma IM, Somia N. Gene therapy-promises, problems and prospects. Nature 1997;389:239-240.
4. Ehrlich P. Ueber den jetzigen stand der karzinomforschung. Ned Tijdschr Geneeskd 5 1909.
5. Gross L. Intradermal immunisation of C3H mice against a sarcoma that originated in an animal of the same line. Cancer Res 1943;3:326.
6. Burnet FM. Cancer-a biological approach. BMJ 1957;I:841.
7. Burnet FM. The concept of immunological surveillance. Prog Exp Tumor Res 1970;13:1.
8. Thomas L. Cellular and humoral aspects of the hypersensitive states. New York: Hoeber-Harper; 1959.
9. Fearon ER, Pardoll DM, Itaya T, Golumbek P, Levitsky HI, Simons JW, et al. Interleukin-2 production by tumor cells bypasses T helper function in the generation of an antitumor response. Cell 1990;60:397-403.
10. Gansbacher B, Zier K, Daniels B, Cronin K, Bannerji R, Gilboa E. Interleukin 2 gene transfer into tumor cells abrogates tumorigenicity and induces protective immunity. J Exp Med 1990;172:1217-1224.
11. Tepper RI, Pattengale PK, Leder P. Murine interleukin-4 displays potent anti-tumor activity in vivo. Cell 1989;57:503-512.
12. Golumbek PT, Lazenby AJ, Levitsky HI, Jaffee LM, Karasuyama H, Baker M, et al. Treatment of established renal cancer by tumor cell engineered to secrete interleukin-4. Science 1991;254:713-716.
13. Schmidt-Wolf IG, Huhn D, Neubauer A, Wittig B. Interleukin-7 gene transfer in patients with metastatic colon carcinoma, renal cell carcinoma, melanoma, or with lymphoma. Hum Gene Ther 1994;5:1161-1168.
14. Tahara H, Zitvogel L, Storkus WJ, Zeh HJ 3rd, Mckinney TG, Schreiber RD, et al. Effective eradication of established murine tumors with IL-12 gene therapy using a polycistronic retroviral vector. J Immunol 1995;154:6466-6474.
15. Colombo MP, Ferrari G, Stoppacciano A, Parenza M, Rodolfo M, Mayilio F, et al. Granulocyte colony-stimulating factor gene transfer suppresses tumorigenicity of a murine adenocarcinoma in vivo. J Exp Med 1991;173:889-897.
16. Dranoff G, Jaffee E, Lazenby A, Golumbek P, Levitsky H, Brose K, et al. Vaccination with irradiated tumor cells engineered to secrete murine granulocyte-macrophage colony-stimulating factor stimulates potent, specific, and long-lasting anti-tumor immunity. Proc Natl Acad Sci USA 1993;90:3539-3543.
17. Restifo NP, Spiess PJ, Karp SE, Mule JJ, Rosenberg SA. A nonimmunogenic sarcoma transduced with the cDNA for interferon gamma elicits CD8+ T cells against the wild-type tumor: correlation with antigen presentation capability. J Exp Med 1992;175:1423-1431.
18. Lee E, Trepicchio WL, Oestreicher JL, Pittman D, Wang F, Chamian F, et al. Increased expression of interleukin 23 p19 and p40 in lesional skin of patients with psoriasis vulgaris. J Exp Med 2004;199:125-130.
19.Pirhonen J, Matikainen S, Julkunen I. Regulation of virus-induced IL-12 and IL-23 expression in human macrophages. J Immunol 2002;169:5673-5678.
20. Oppmann B, Lesley R, Blom B, Timans JC, Xu Y, Hunte B, et al. Novel p19 protein engages IL-12p40 to form a cytokine, IL-23, with biological activities similar as well as distinct from IL-12
Immunity 2000;13:715-725.
21. Belladonna ML, Renauld JC, Bianchi R, Vacca C, Fallarino F, Orabona C, et al. IL-23 and IL-12 have overlapping, but distinct, effects on murine dendritic cells. J Immunol 2002;168:5448-5454.
22. Mattner F, Fischer S, Guckes S, Jin S, Kaulen H, Schmitt E, et al. The interleukin-12 subunit p40 specifically inhibits effects of the interleukin-12 heterodimer. Eur J Immunol 1993;23:2202-2208.
23. Gillessen S, Carvajal D, Ling P, Podlaski FJ, Stremlo DL, Familletti PC, et al. Mouse interleukin-12 (IL-12) p40 homodimer: a potent IL-12 antagonist. Eur J Immunol 1995;25:200-206.
24. Lee H, Kim J, Lee B, Chang JW, Ahn J, Park JO, et al. Oncolytic potential of E1B 55kDa-deleted YKL-1 recombinant adenovirus: correlation with p53 functional status. Int J Cancer 2000;88:454-463.
25. Kim J, Cho JY, Kim JH, Jung KC, Yun CO. Evaluation of E1B gene-attenuated replicating adenoviruses for cancer gene therapy. Cancer Gene Ther 2002;9:725-736.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の段階を含むIL(interleukin)−12及びIL−23の共同発現方法:
(a)p35サブユニットコーディングヌクレオチド配列、p40サブユニットコーディングヌクレオチド配列及びp19サブユニットコーディングヌクレオチド配列のモノシストロン方式の発現コンストラクト(expression construct)を含むベクターを製作する段階、またはp35サブユニットコーディングヌクレオチド配列、p40サブユニットコーディングヌクレオチド配列及びp19サブユニットコーディングヌクレオチド配列のポリシストロン方式の発現コンストラクトを含むベクターを製作する段階と、
(b)前記発現コンストラクトを宿主細胞に形質転換させる段階と、
(c)前記形質転換された宿主細胞を培養して、IL−12及びIL−23を収得する段階。
【請求項2】
前記モノシストロン方式の発現コンストラクトは、(i)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35サブユニットコーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列、(ii)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40サブユニットコーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列、及び(iii)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19サブユニットコーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記段階(a)のベクターは、ポリシストロン発現コンストラクトを含むベクターであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリシストロン発現コンストラクトは、真核細胞で作動可能なプロモーター−前記3種のサブユニットの中の一つをコーディングするヌクレオチド配列−IRES(internal ribosomal entry site)−前記3種のサブユニットの中の他の一つをコーディングするヌクレオチド配列−IRES−前記3種のサブユニットの中のまた他の一つをコーディングするヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記段階(a)のベクターは、(i)真核細胞で作動可能なプロモーター−(i-1)前記3種のサブユニットの中の一つをコーディングするヌクレオチド配列−IRES−(i-2)前記3種のサブユニットの中の他の一つをコーディングするヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト及び(ii)真核細胞で作動可能なプロモーター−(ii-1)前記3種のサブユニットの中のまた他の一つをコーディングするヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトを含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記段階(a)のベクターは、(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(ii)(ii-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−IRES−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(ii-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(iii)(iii-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(iii-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(iv)(iv-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−IRES−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(iii-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(v)(v-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(v-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;または(vi)(vi-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−IRES−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(vi-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトを含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記段階(a)のベクターは、(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び (i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;または(ii)(ii-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−IRES−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び (ii-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトを含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記段階(a)のベクターは、(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び (i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトを含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ベクターは、組み換えアデノウイルス、アデノ−関連ウイルス(Adeno-associated viruses: AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、またはワクシニアウイルス由来であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ベクターは、組み換えアデノウイルス由来であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組み換えアデノウイルスは、E1B領域及びE3領域が欠損されたことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクトは、欠損されたE1B領域またはE3領域に挿入されており、(i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトは、欠損されたE1B領域またはE3領域に挿入されていることを特徴とする、請求項8または11に記載の方法。
【請求項13】
前記(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクトは、欠損されたE1B領域に挿入されており、(i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトは、欠損されたE3領域に挿入されていることを特徴とする、請求項8または11に記載の方法。
【請求項14】
前記ベクターは、図1d乃至図1gから構成された群から選択される遺伝子地図を有することを特徴とする、請求項8または11に記載の方法。
【請求項15】
次の発現コンストラクトを含むIL(interleukin)−12及びIL−23の共同発現用組み換えベクター:
(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(ii)(ii-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−IRES−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(ii-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(iii)(iii-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(iii-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(iv)(iv-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−IRES−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(iii-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;(v)(v-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(v-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;または(vi)(vi-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−IRES−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び(vi-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト。
【請求項16】
前記ベクターは、(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び (i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクト;または(ii)(ii-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p40コーディングヌクレオチド配列−IRES−p19コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び (ii-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトを含むことを特徴とする、請求項15に記載のベクター。
【請求項17】
前記ベクターは、(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクト、及び (i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトを含むことを特徴とする、請求項16に記載のベクター。
【請求項18】
前記ベクターは、組み換えアデノウイルス、アデノ−関連ウイルス(Adeno-associated viruses: AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、またはワクシニアウイルス由来であることを特徴とする、請求項15に記載のベクター。
【請求項19】
前記ベクターは、組み換えアデノウイルス由来であることを特徴とする、請求項18に記載のベクター。
【請求項20】
前記組み換えアデノウイルスは、E1B領域及びE3領域が欠損されたことを特徴とする、請求項19に記載のベクター。
【請求項21】
前記ベクターは、(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクトは、欠損されたE1B領域またはE3領域に挿入されており、(i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトは、欠損されたE1B領域またはE3領域に挿入されていることを特徴とする、請求項20に記載のベクター。
【請求項22】
前記ベクターは、(i)(i-1)真核細胞で作動可能なプロモーター−p19コーディングヌクレオチド配列−IRES−p40コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むポリシストロン発現コンストラクトは、欠損されたE1B領域に挿入されており、(i-2)真核細胞で作動可能なプロモーター−p35コーディングヌクレオチド配列−ポリアデニル化配列を含むモノシストロン発現コンストラクトは、欠損されたE3領域に挿入されていることを特徴とする、請求項20に記載のベクター。
【請求項23】
前記ベクターは、図1d乃至図1gから構成された群から選択される遺伝子地図を有することを特徴とする、請求項20に記載のベクター。
【請求項24】
(a)請求項15乃至23のいずれかに記載のベクターの薬剤学的有効量、及び(b)薬剤学的に許容される担体を含む薬剤学的抗腫瘍組成物。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図1c】
image rotate

【図1d】
image rotate

【図1e】
image rotate

【図1f】
image rotate

【図1g】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図2d】
image rotate

【図2e】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2009−544310(P2009−544310A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521709(P2009−521709)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際出願番号】PCT/KR2008/000301
【国際公開番号】WO2008/140173
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(507283193)インダストリー−ユニバーシティ コオペレーション ファウンデーション ヨンセイ ユニバーシティ (2)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRY−UNIVERSITY COOPERATION FOUNDATION YONSEI UNIVERSITY
【Fターム(参考)】