説明

IL−17媒介性トランスフェクション法

本発明は、細胞生存及びタンパク質産生の優れた、向上した特性をもたらすIL−17媒介トランスフェクションのための組成物及び方法を含む。本発明は、IL−17組成物を用いて細胞株の特性を向上させ、細胞、細胞株又は細胞集団のサブクローニングを強化し、細胞株の選択を改善し、及び/又は選択された細胞株内における1種以上の外因性遺伝子の発現を向上させるための組成物及び方法を提供する。本発明により包含される方法及び組成物は、IL−17を用いて細胞及び/又は細胞株の1つ以上の特徴及び/又は生物学的効果を向上させる新規な方法となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2008年10月7日に出願された米国仮出願第61/195,436号(この内容は、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、全体として細胞生物学、細胞培養及び分子生物学の分野に関する。本発明は、インターロイキン17(IL−17:interleukin 17)及び関連タンパク質を使用して遺伝子送達、細胞生存、コロニー成長及びタンパク質産生の優れた、改善された特性をもたらすための組成物及び方法を含む。
【背景技術】
【0003】
細胞生物学、細胞培養及び分子生物学の分野では、例えば増殖速度、生成クローン数、産生能などの特定の特徴を有する細胞株を選択することが望まれる。細胞株を生成させ、選択するための多くの方法が開発されているが、細胞株の性能、選択及び他の諸特性を改良することが現在もなお必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、IL−17組成物を用いて細胞株の特性を向上させ、細胞、細胞株又は細胞集団のサブクローニングを強化し、細胞株の選択を改善し、及び/又は選択された細胞株内における1種以上の外因性遺伝子の発現を向上させるための組成物及び方法を提供する。本発明により包含される方法及び組成物は、IL−17を用いて細胞及び/又は細胞株の1つ以上の特徴及び/又は生物学的効果を向上させる新規な方法となる。こうしたIL−17を媒介させた方法及び組成物は、1つ以上の望ましい特性、特徴又は他の生物学的効果を示す細胞及び/又は細胞株を作製、サブクローニング及び/又は選択するのに有用である。さらに、IL−17を既知の方法と組み合わせて用いると、細胞株の発現、選択、サブクローニング及び/又は有効性の中の1つ以上の特性が意外にも首尾良く改善される。例えば、本発明に包含される組成物及び方法は、必要とする患者に投与されることになる医薬組成物に使用されるモノクローナル抗体の収量の増大をもたらす。さらに、本方法によって、治療用組成物の開発研究において以前はトランスフェクション抵抗性であった細胞株を使用することが可能となる。最後に、本方法により、選択された細胞の大規模かつ迅速で効率的なスクリーニングが可能となる。何故なら、IL−17の使用によって効率、産生能及び/又は細胞選択速度、サブクローニング及び/又は単一細胞クローニング、外因性遺伝子発現並びに他の望ましい特性が向上するからである。従って、本発明によって提供される方法は、大がかりな薬剤開発に適用することができる。また、本明細書に提供された組成物及び方法は、細胞及び組織培養補助剤及び誘導体においても用いられる。
【0005】
本明細書において提供された方法及び組成物により、細胞及び/又は細胞株、細胞選択、サブクローニング及び/又は細胞改変(例えば、細胞トランスフェクション)の1つ以上の特性が向上する。IL−17の使用により向上する特性の例としては、増大した効率、向上した選択率(selection rate)、増大した細胞増殖、選択した細胞の増大した出現速度(即ち、選択細胞の最初の出現までに要する時間)、選択した細胞株の増大した数、選択した細胞の増強した倍加時間、増大した細胞生存度、培地枯渇に対する低下した感受性及び/又は増大した細胞株の安定性が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一部の実施態様では、本明細書において提供される方法及び組成物により、上記特性の2つ以上の任意の組合せが向上する。
【0006】
具体的には、本発明は、IL−17を用いて細胞及び/又は細胞株産生、細胞及び/細胞株選択、サブクローニング、及び/又は核酸による細胞及び/又は細胞株トランスフェクションの特性を向上させる方法であって、細胞をIL−17と接触させる工程を含む方法を提供する。外因性IL−17を作用させることによって、IL−17を接触させない細胞の場合に比し、細胞の産生、選択、サブクローニング及び/又は上記核酸の発現を向上させることが好ましい。この外因性IL−17は、例えば、IL−17を発現するように形質転換された細胞からのものである。
【0007】
本発明は、IL−17を用いて細胞の産生、サブクローニング、単一細胞クローニング及び/又は選択の効果を向上させる組成物及び方法であって、培地中で1以上の細胞又は細胞株を培養する工程並びにこうした細胞(単数又は複数)及び/又は細胞株(単数又は複数)をIL−17含有組成物と接触させて、例えば増大した効率、向上した選択率、増大した細胞増殖、選択した細胞の増大した出現速度 (即ち、選択細胞の最初の出現までに要する時間)、選択した細胞株の増大した数、選択した細胞の増強した倍加時間、増大した細胞生存度、培地枯渇に対する低下した感受性及び/又は増大した細胞株の安定性など、細胞及び/又は細胞株の特性を向上させる工程を含む組成物及び方法を提供する。任意選択的に、こうした細胞(単数又は複数)及び/又は細胞株(単数又は複数)は、核酸と接触させて培地中で培養することによりこの核酸によりコードされたポリペプチドを発現させることで、トランスフェクションの向上した特性を示す、1種以上のポリペプチドを発現する1以上の細胞及び/又は細胞株が生成される。こうした細胞(単数又は複数)及び/又は細胞株(単数又は複数)は、これらが目的とするポリペプチドをコードしている上記核酸と接触させる前に、又は接触中にIL−17を作用させる。
【0008】
さらに、本発明は、細胞改変の効果を向上させる方法であって、(a)培地中で1以上の細胞又は細胞株を培養する工程、(b)1以上の細胞(単数又は複数)又は細胞株(単数又は複数)を核酸と接触させる工程、(c)改変細胞を培地中で培養してこの核酸によりコードされているポリペプチドを発現させ、細胞は上記接触工程の前又は接触工程中にIL−17を作用させるものとする工程を含み、トランスフェクションの向上した特性を示す、1種以上のポリペプチドを発現する1以上の細胞株が生成される方法を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、1以上の形質転換細胞又は細胞株を培地中で培養し、IL−17と接触させるなどして作用させるサブクローニング及び/又は単一細胞クローニングの効果及び/又は産生能を向上させる方法であって、こうした接触させた細胞(単数又は複数)又は細胞株(単数又は複数)はサブクローニング及び/又は単一細胞クローニング向上した特性を示す方法を提供する。上記の組成物及び方法を用いることにより、例えば、増大した効率、向上した選択率、増大した細胞増殖、選択した細胞の増大した出現速度(即ち、選択細胞の最初の出現までに要する時間)、選択した細胞株の増大した数、選択した細胞の増強した倍加時間、増大した細胞生存度、培地枯渇に対する低下した感受性及び/又は増大した細胞株の安定性など、サブクローニング及び/又は単一細胞クローニング特性が向上する。例えば、この方法を用いることによって1種以上の真核細胞、例えばヒト細胞のサブクローニング及び/又は単一細胞クローニングの効果、効率、産生能及び/又は選択が向上する。一部の実施態様では、こうした細胞(単数又は複数)は無血清培地、好ましくは既知組成培地中で培養する。本明細書において提供される方法は、極めて低い細胞株密度でも、例えば、1個/mL乃至10,000個/mLの範囲、1個/mL乃至5,000個/mLの範囲、1個/mL乃至500個/mLの範囲、1個/mL乃至250個/mLの範囲、1個/mL乃至100個/mLの範囲、1個/mL乃至50個/mLの範囲、1個/mL乃至25個/mLの範囲、1個/mL乃至12.5個/mLの範囲、1個/mL乃至6.25個/mLの範囲、又は1個/mL乃至3.125個/mLの範囲でも真核細胞株をサブクローニングするのに有用である。
【0010】
一実施態様では、こうした細胞及び/又は細胞株をIL−17サイトカイン、好ましくはIL−17Fをコードしている第一の核酸及び目的とするペプチド、ポリペプチド又はタンパク質をコードしている第二の核酸でトランスフェクションし、この細胞をこれらの第一及び第二の核酸の発現に適した条件下に培養する。或いは、IL−17サイトカイン、好ましくはIL−17Fをコードしている上記第一の核酸及び目的とするペプチド、ポリペプチド又はタンパク質をコードしている上記第二の核酸を2種の細胞及び/又は細胞株にトランスフェクションし、これらの細胞を上記第一及び第二の核酸の発現に適した条件下に一緒に培養する。これらのIL−17トランスフェクトした細胞及び/又は細胞株では、IL−17サイトカインを目的とするペプチド、ポリペプチド又はタンパク質と共に同時発現させることによって、1種以上のトランスフェクション特性の向上、例えば、増大した効率、向上した選択率、増大した細胞増殖、選択した細胞の増大した出現速度、選択した細胞株の増大した数、選択した細胞の増強した倍加時間、増大した細胞生存度、培地枯渇に対する低下した感受性及び/又は増大した細胞株の安定性などがもたらされる。
【0011】
さらに好ましい実施態様では、こうした細胞及び/又は細胞株をIL−17サイトカイン、好ましくはIL−17Fをコードしている第一の核酸及び目的とするペプチド、ポリペプチド又はタンパク質をコードしている第二の核酸でトランスフェクションし、この場合、IL−17をコードしている核酸の発現は、例えば、誘導プロモーターの使用、CreLoxPもしくはこれと同等物による不活化又は選択及び/又はサブクローニングプロセスの下流における亜鉛フィンガー不活化を含む当該技術分野において認知されている各種方法のいずれかによって調節するものとする。或いは、IL−17サイトカイン、好ましくはIL−17Fをコードしている上記第一の核酸及び目的とするペプチド、ポリペプチド又はタンパク質をコードしている上記第二の核酸を2種の細胞及び/又は細胞株にトランスフェクションし、これらの細胞を上記第一及び第二の核酸の発現に適した条件下に一緒に培養する。次に、これらの細胞及び/又は細胞株を上記第一及び第二の核酸の発現に適した条件下に培養する。
【0012】
これらのIL−17トランスフェクトした細胞及び/又は細胞株では、IL−17サイトカインを目的とするペプチド、ポリペプチド又はタンパク質と共に同時調節発現させることによって、1種以上のトランスフェクション特性の向上、例えば、増大した効率、向上した選択率、増大した細胞増殖、選択した細胞の増大した出現速度、選択した細胞株の増大した数、選択した細胞の増強した倍加時間、増大した細胞生存度、培地枯渇に対する低下した感受性及び/又は増大した細胞株の安定性などがもたらされる。
【0013】
本明細書において提供される組成物及び方法では、IL−17の発現を、例えば、誘導プロモーターの使用、CreLoxPもしくはこれと同等物による不活化又は選択及び/又はサブクローニングプロセスの下流における亜鉛フィンガー不活化を含む当該技術分野において認知されている各種方法のいずれかによって調節する。好適な誘導プロモーターとしては、例えば、ラパマイシン誘導性二量体化技術を用いるシステム、ステロイドホルモン受容体を利用するシステム、TETシステムなどのテトラサイクリンシステム、PIPシステムなどのストレプトグラミンシステム、E.EREXシステムなどのマクロライドシステムなどの異種遺伝子発現調節システムが挙げられる。これらの異種遺伝子発現調節システムでは、調節配列は、hCMVプロモーター又はEf1アルファプロモーターのような強力なプロモーターの部分配列に融合させる。
【0014】
IL−17は、細胞選択及び/又は改変の前、中又は後に細胞と接触させる。或いは、又はさらに、IL−17は細胞と連続的に接触させる。IL−17を細胞に接触させるいくつかの手段が上記方法の内に想定されている。一実施態様では、IL−17は、培養培地中に存在させることによって細胞と接触させる。別の実施態様では、IL−17は細胞によって外因性に産生させる、例えば、このIL−17は、IL−17を発現するように形質転換された細胞(単数又は複数)によって産生させる。関連の実施態様では、上記方法の核酸は、IL−17サイトカインをコードしている1種以上の配列を含む。さらに、IL−17はこの核酸と同時的又は逐次的に産生させる。
【0015】
上記方法は、選択圧下の細胞又は細胞株を含む。一実施態様では、この選択圧は、トランスフェクトした細胞は生存するが非トランスフェクトした細胞は死に至る、特異的グルタミン合成酵素阻害剤を含む培地中でトランスフェクトした細胞を増殖させることによって加える。好ましい実施態様では、上記特異的グルタミン合成酵素阻害剤はメチオニンスルホキシミン(MSX:methionine sulphoximine)である。この細胞選択において、例えば、IL−17サイトカイン、好ましくはIL−17Fの存在下に培地中のMSXの濃度を(例えば、50μM超に)増大させることで、選択圧を増大させると、産生能が増大した。IL−17サイトカイン、好ましくはIL−17Fの非存在下に選択圧を増大させると、クローンが存在しなくなった。従って、IL−17Fを添加して選択圧を増大させることにより、本明細書において提供される方法の生産性が増大する。
【0016】
選択圧を加える場合、上記改変は準安定的である。或いは、選択圧を加える場合、上記改変は安定的である。別の実施態様では、上記改変細胞は選択圧の非存在下に増殖し、従って、その改変は一過性なものである。
【0017】
上記方法及び組成物は、本明細書においてIL−17サイトカインとも称するIL−17ポリペプチドを用いることによって細胞トランスフェクションの1種以上の特性を向上させる。本発明によって包含されるIL−17ポリペプチド類又はサイトカイン類の例としては、IL−17A、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17EもしくはIL−17F及びこれらIL−17ポリペプチド類のヘテロダイマー、例えばIL−17A/IL−17Fヘテロダイマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい実施態様では、IL−17Fサイトカインを用いる。IL−17ポリペプチド類は、例えば、本明細書に示したヒトIL−17配列類を含むヒトIL−17配列類である。一部の実施態様では、IL−17ポリペプチド類及びIL−17組成物として、例えばラットIL−17配列などの非ヒト哺乳動物の配列を含む真核生物の配列が挙げられる。一実施態様では、細胞又は細胞株(単数又は複数)として、IL−17ポリペプチドを分泌するTh17細胞が挙げられる。一部の実施態様では、上記方法の細胞又は細胞株(単数又は複数)は少なくとも1種のIL−17受容体を発現する。IL−17受容体類(IL−17Rs)の例としては、IL−17RA、IL−17RB、IL−17RC、IL−17RD及びIL−17REが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明の方法は、1種以上のDNA及び/又はIL−17組成物を受け入れ、選択圧下の培養で増殖してこれらの組成物を保持する細胞を含む。一実施態様では、この選択圧は、上記DNA組成物を受け入れているトランスフェクトした細胞は生存するが非トランスフェクトした細胞は死に至る、特異的グルタミン合成酵素阻害剤を含む培地中でトランスフェクトした細胞を増殖させることによって加える。好ましい実施態様では、上記特異的グルタミン合成酵素阻害剤はメチオニンスルホキシミン(MSX)である。別の実施態様では、ヒポキサンチン及びチミジンを欠く培養培地(HT培地:culture medium deficient in hypoxanthine and thymidine)を用いることでDHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素:dihydrofolate reductase)欠損トランスフェクトした細胞を選択する。一部の実施態様では、選択及び遺伝子増幅のための系においてメトトレキサート(MTX:methotrexate)を用いる。
【0019】
本発明の方法及び組成物はトランスフェクション特性を向上させる。本発明の方法及び組成物は細胞産生特性を向上させる。本発明の方法及び組成物は選択特性を向上させる。本発明の方法及び組成物はサブクローニング及び/又は単一細胞クローニング特性を向上させる。本方法によって向上する特性の例としては、トランスフェクション効率の増大、向上した選択率、トランスフェクション増大した細胞増殖、選択した細胞の増大した出現速度、選択した細胞株の増大した数、選択した細胞の増強した倍加時間、増大した細胞生存度、又は増大した細胞株の安定性が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明の方法は、1種以上の外因性遺伝子の発現を増強する。発現が増強されるメカニズムの例としては、モノクローナル抗体(MAb)の増大した比産生速度(specific production rate)、上昇したMAb力価、向上した産物の品質、IL−17発現のMAb力価との相関、トランスフェクション抵抗性細胞株の一過性トランスフェクション後の発現増大、増大した導入遺伝子生産能、ゲノム配列への外因性DNAの増大した組込み、外因性DNAの増大した保持、DNAの増大した取り込み又は外因性DNAの増大した発現が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明は、準安定的トランスフェクションの選択率を向上させる方法であって、(a)無血清懸濁物適応チャイニーズハムスター卵巣(CHO:Chinese Hamster Ovary)細胞株をグルタミン枯渇培地で培養する工程、(b)このCHO細胞株をヒトIL−17F及びグルタミン合成酵素遺伝子をコードしている配列を含むDNA組成物と混合する工程、(c)1種以上のDNA組成物を電気穿孔法により少なくとも1種の細胞株の形質膜を横切って輸送させる工程、(d)MSXを、例えば50μM MSXもしくは100μM MSXの濃度、50μM MSX乃至100μM MSXの範囲の濃度、又は100μM MSX超の濃度で培地に添加することによる選択圧下のグルタミン枯渇培地で、トランスフェクトした細胞を培養する工程、並びに(e)トランスフェクトした細胞に選択圧下トランスフェクトされたDNA組成物によりコードされているポリペプチドを発現させる工程を含み、トランスフェクションの向上した特性を示す、1種以上のポリペプチドを発現する細胞株の混合物が生成されるものとする方法を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、安定的トランスフェクションの選択率を向上させる方法であって、(a)無血清懸濁物適応チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株をグルタミン枯渇培地で培養する工程、(b)このCHO細胞株をヒトIL−17F及びグルタミン合成酵素遺伝子をコードしている配列を含むDNA組成物と混合する工程、(c)1種以上のDNA組成物を電気穿孔法により少なくとも1種の細胞株の形質膜を横切って輸送させる工程、(d)MSXを、例えば50μM MSXもしくは100μM MSXの濃度、50μM MSX乃至100μM MSXの範囲の濃度、又は100μM MSX超の濃度で培地に添加することによる選択圧下のグルタミン枯渇培地で、トランスフェクトした細胞を培養する工程、並びに(e)トランスフェクトした細胞に選択圧下トランスフェクトされたDNA組成物によりコードされているポリペプチドを発現させる工程を含み、トランスフェクションの向上した特性を示す、1種以上のポリペプチドを発現する単離された細胞株を生成させるものとする方法を提供する。
【0023】
本発明は、準安定的トランスフェクションの選択した細胞の数を増大させる方法であって、(a)無血清懸濁物適応チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株をグルタミン枯渇培地で培養する工程、(b)このCHO細胞株をヒトIL−17F及びグルタミン合成酵素遺伝子をコードしている配列を含むDNA組成物と混合する工程、(c)1種以上のDNA組成物を電気穿孔法により少なくとも1種の細胞株の形質膜を横切って輸送させる工程、(d)MSXを、例えば50μM MSXもしくは100μM MSXの濃度、50μM MSX乃至100μM MSXの範囲の濃度、又は100μM MSX超の濃度で培地に添加することによる選択圧下のグルタミン枯渇培地で、トランスフェクトした細胞を培養する工程、並びに(e)トランスフェクトした細胞に選択圧下トランスフェクトされたDNA組成物によりコードされているポリペプチドを発現させる工程を含み、トランスフェクションの向上した特性を示す、1種以上のポリペプチドを発現する細胞株の混合物を生成させるものとする方法を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、安定的トランスフェクションの選択した細胞の数を増大させる方法であって、(a)無血清懸濁物適応チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株をグルタミン枯渇培地で培養する工程、(b)このCHO細胞株をヒトIL−17F及びグルタミン合成酵素遺伝子をコードしている配列を含むDNA組成物と混合する工程、(c)1種以上のDNA組成物を電気穿孔法により少なくとも1種の細胞株の形質膜を横切って輸送させる工程、(d)MSXを、例えば50μM MSXもしくは100μM MSXの濃度、50μM MSX乃至100μM MSXの範囲の濃度、又は100μM MSX超の濃度で培地に添加することによる選択圧下のグルタミン枯渇培地で、トランスフェクトした細胞を培養する工程、並びに(e)トランスフェクトした細胞に選択圧下トランスフェクトされたDNA組成物によりコードされているポリペプチドを発現させる工程を含み、トランスフェクションの向上した特性を示す、1種以上のポリペプチドを発現する単離された細胞株を生成させるものとする方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、ヒトIL−17Fと抗RANTESモノクローナル抗体(国際公開第09/054873号に記載されており、本明細書ではNI−0701と称す)との間で、安定的トランスフェクションをコロニー出現の速度及び率について比較したグラフである。エラーバーは2つの独立した実験の標準偏差を表す。
【図2】図2Aは、ヒトIL−17Fを用いた安定的トランスフェクションをウェル当たりの複数のトランスフェクタントの存在について比較したグラフである。図2Bは、NI−0701を用いた安定的トランスフェクションをウェル当たりの複数のトランスフェクタントの存在について比較したグラフである。
【図3】図3は、ヒトIL−17Fを発現する準安定的トランスフェクションプールの目視検査結果を示す一連の写真である。写真は各々の示された時点で100倍の倍率の蛍光顕微鏡を用いて撮られたものである。
【図4】図4Aは、組換えヒトIL−17Fを補充し、又は補充しなかったA6VL構築体の準安定的トランスフェクションをGFP発現について比較したグラフである。図4Bは、組換えヒトIL−17Fを補充し、又は補充しなかったA6VL構築体の準安定的トランスフェクションを細胞生存率について比較したグラフである。
【図5】図5は、ヒトIL−17F、ヒトIL−17A及びA6VL構築体との間で、安定的トランスフェクションをコロニー出現の速度及び率について比較したグラフである。エラーバーは2つの独立した実験の標準偏差を表す。
【図6A】図6Aは、ヒトIL−17F、ラットIL−17F及びA6VL構築体との間で安定的トランスフェクションを比較したグラフである。安定的トランスフェクションはコロニー出現の速度及び率について評価した。エラーバーは2つの独立した実験の標準偏差を表す。
【図6B】図6Bは、ヒトIL−17F、ラットIL−17F及びA6VL構築体との間で準安定的トランスフェクションを比較したグラフである。準安定的トランスフェクションはGFP発現について評価した。エラーバーは2つの独立した実験の標準偏差を表す。
【図6C】図6Cは、ヒトIL−17F、ラットIL−17F及びA6VL構築体との間で準安定的トランスフェクションを比較したグラフである。準安定的トランスフェクションは細胞生存率について評価した。エラーバーは2つの独立した実験の標準偏差を表す。
【図7A】図7Aは、CHO−S細胞株(Invitrogen)においてヒトIL−17F及びA6VL構築体との間でコロニー出現の速度及び率について評価して安定的トランスフェクションを比較したグラフである。
【図7B】図7Bは、CHO−S細胞株においてヒトIL−17F及びA6VL構築体との間でGFP発現について評価して準安定的トランスフェクションを比較したグラフである。
【図7C】図7Cは、CHO−S細胞株においてヒトIL−17F及びA6VL構築体との間で細胞生存率について評価して準安定的トランスフェクションを比較したグラフである。
【図8】図8Aは、ピューロマイシン選択を利用した発現ベクター系(pEAK8、Edge Biosystems)を用いたCHO細胞中へのIL−17 IRES GFP変異体間の安定的トランスフェクションを比較したグラフである。GFP発現分析結果はPEAK細胞においてトランスフェクション後24時間にフローサイトメトリーを用いて測定した。図8Bは、図8Aの説明に記載したトランスフェクション手順に続くピューロマイシンによる選択の3週間後のCHO細胞におけるGFP発現を比較したグラフである。
【図9A】図9Aは、IL−17F発現ベクターと15C1 MAb二重遺伝子発現ベクターとの組合せ又は15C1 MAb二重遺伝子発現ベクター単独を用いたCHO細胞のトランスフェクション後1乃至4週間における抗CD3モノクローナル抗体(国際公開第05/118635号に記載されており、本明細書では15C1 MAbと称する)の産生を比較したグラフである。
【図9B】図9Bは、IL−17F発現ベクターと15C1 MAb二重遺伝子発現ベクターとの組合せ又は15C1 MAb二重遺伝子発現ベクター単独を用いたCHO細胞のトランスフェクション後22及び26日における96−穴プレート当たり1個以上のコロニーを含むウェルの数を比較したグラフである。
【図9C】図9Cは、IL−17F発現ベクターと15C1 MAb二重遺伝子発現ベクターとの組合せ又は15C1 MAb二重遺伝子発現ベクター単独を用いたCHO細胞のトランスフェクション後の20クローンの各々の上清における15C1 MAbの発現レベル(μg/mL)を比較したグラフである。
【図10】図10は、pEE14.4 LSCD33HIS AVI hIL−17F n 1−7発現ベクターの模式図、即ち、マップである。
【図11】図11Aは、2種のCHOK1SV細胞株、即ちIL−17F−IRES−GFPを発現する8E11及び無関連のmAbを発現するC6C5からの細胞をプレートした後3日に採取した単離クローンの定量結果を示すグラフである。図11Bは、図11Aにおいて採取したサブクローンを示す図である。図11Cは、図11Aにおいて採取したサブクローンを示す図である。
【図12】図12は、IL−17F−IRES−GFP発現カセットでトランスフェクションし、50μM又は100μM MSX選択圧下にプレートした細胞からのクローンにおけるGFP発現を示すグラフである。
【図13】図13は、本明細書に記載した実施例に用いたベクター構築体を示す一連のグラフである。
【図14】図14は、トランスフェクション後の種々の時間における安定的CHODG44細胞クローンの出現を示したグラフである。
【図15】図15は、MTX圧下選択の5週間後のCHODG44細胞におけるクローンGFP発現のレベルを示したグラフである。
【図16】図16は、トランスフェクション後の種々の時間における安定的CHO細胞クローンの出現を示したグラフを示したグラフである。
【図17】図17は、トランスフェクション後4週における個々のクローンのIgG発現の平均レベルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
本発明は、IL−17組成物を用いてトランスフェクション特性を向上させ、トランスフェクトした細胞株内における1種以上の外因性遺伝子の発現を増強するための組成物及び方法を提供する。本発明によって包含される方法は、IL−17によって媒介される新規なトランスフェクション方法となる。さらに、IL−17を既知の方法と組み合わせて用いると、トランスフェクション効果の1種以上の特性、例えば、生存、増殖及び/又は導入遺伝子発現が意外にも首尾良く改善される。
【0027】
IL−17組成物
IL−17組成物は、IL−17サイトカインをコードしている1種以上のポリヌクレオチド配列を含む。包含されるIL−17サイトカイン類としては、IL−17A、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17E及びIL−17F(イソ型1及び2、ML−1とも呼ばれる)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましいIL−17サイトカイン類としては、IL−17Fの2つのイソ型が挙げられる。IL−17組成物は、IL−17サイトカインを含む1種以上のポリペプチド配列を含む。さらに、IL−17組成物は、IL−17サイトカイン受容体(IL−17R)を含む1種以上のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列を含む。包含されるIL−17サイトカイン受容体類としては、IL−17RA、IL−17RB、IL−17RC、IL−17RD及びIL−17REが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、IL−17組成物は、本明細書に記載したIL−17サイトカイン類及び/又はIL−17R受容体類の中の1種以上に類似の構造を有するポリペプチド類及びタンパク質類を含む。また、IL−17組成物は、本明細書に記載したIL−17サイトカイン類及び/又はIL−17R受容体類の中の1種以上の断片又はその他のプロセッシングされた部分、例えば、IL−17サイトカイン、IL−17R受容体及びこれらの任意のホモ二量体又はヘテロ二量体の細胞内プロセッシングに由来する断片を含む。本発明の一実施態様では、少なくとも1種のIL−17サイトカインを含む組成物を少なくとも1種のIL−17Rを発現し、過剰発現し、又はその発現を抑制する細胞又は細胞株に投与する。この実施態様では、組成物中に存在するIL−17サイトカインの適用量を増やすか減らして変更し、IL−17Rの発現レベルを補償する。例えば、IL−17Rの発現レベルが高い場合、組成物にはより低いレベルのIL−17サイトカインを少なくとも1種含める。逆に、少なくとも1種のIL−17Rの発現が低い場合、組成物にはより高いレベルのIL−17サイトカインを少なくとも1種含める。
【0028】
包含されるヒトIL−17配列を以下に示したが、IL−17組成物は非ヒト哺乳動物の配列を含む真核生物の配列を含む。さらに、IL−17組成物はこれらの配列に沿った任意の点における1種以上の突然変異を含む。想定されている突然変異はIL−17サイトカインの1種以上の機能を妨害するものである。例えば、想定されている突然変異によってIL−17のIL−17受容体への結合又はIL−17受容体からの遊離が阻止される。或いは、又はさらに、想定されている突然変異によってIL−17の発現、翻訳、分泌、二量体化又は分解が阻止される。IL−17の突然変異は細胞外又は細胞内にIL−17の集合体をもたらす。ポリヌクレオチドレベルにおける突然変異はサイレントであるか、読み枠シフト、置換、欠失、逆転、ミスセンス突然変異又は終結を含むポリヌクレオチド又はアミノ酸配列の変化をもたらす。ポリペプチドレベルにおける突然変異はサイレントであるか、アミノ酸配列の変化、翻訳の阻止もしくは終結、三次構造の崩壊、誤った折り畳み、凝集、二量体化の崩壊、分解の中断、タンパク質の不安定性、他のポリペプチドとの相互作用の崩壊、又はポリペプチドとの新規な会合をもたらす。
【0029】
好ましい実施態様では、IL−17組成物は、ヒトcDNA又はラットサイトカイン・インターロイキン17F(rIL−17F:rat cytokine interleukin F)から単離した後、hCMVプロモーターの制御下に発現ベクター中にサブクローニングしたヒトサイトカイン・インターロイキン17F(IL−17F又はhIL−17F:human cytokine interleukin 17F)を含む。この発現ベクターにおいて、同じCMVプロモーターの制御下に第二のシストロンとしてhIL−17F cDNAの下流にGFPをクローニングする。これら2種のシストロン(IL−17F及びGFP)をウイルスの内部リボソーム侵入部位(IRES:internal ribosome entry site)によって隔てることにより上記第二の(GFP)シストロンの翻訳が可能となる。また、このベクターは、MSXを用いた無グルタミン培地中でのトランスフェクトした細胞の選択のためにSV40プロモーター制御下のグルタミン合成酵素(GS:glutamine synthase)遺伝子を含む。
【0030】
一部の実施態様では、本明細書に記載したベクターはタグその他のマーカ(又はタグもしくはマーカをコードしている核酸配列)、例えば、Aviタグ又はHisタグなども含む。他の実施態様では、こうしたベクターはタグ又はタグをコードしている核酸配列を含まない。
【0031】
想定されているヒトIL−17サイトカインとして、例えば以下の配列を記載したが、これらに限定されるものではない。以下のmRNA又はアミノ酸配列に沿った1箇所以上に突然変異が設計される。
【0032】
IL−17Aは以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_002190及び配列番号1)によってコードされている:
【0033】
【化1】

IL−17Aは以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NP_002181.1及び配列番号2)によってコードされている:
【0034】
【化2】

IL−17Bは以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号AF152098及び配列番号3)によってコードされている:
【0035】
【化3】

IL−17Bは以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号AAF28104.1及び配列番号4)によってコードされている:
【0036】
【化4】

IL−17Cは以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_013278及び配列番号5)によってコードされている:
【0037】
【化5】

IL−17Cは以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NP_037410.1及び配列番号6)によってコードされている:
【0038】
【化6】

IL−17Dは以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_138284及び配列番号7)によってコードされている:
【0039】
【化7】

IL−17Dは以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NP_612141.1及び配列番号8)によってコードされている:
【0040】
【化8】

IL−17Eは以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号AF305200及び配列番号9)によってコードされている:
【0041】
【化9】

IL−17Eは以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号AAG40848.1及び配列番号10)によってコードされている:
【0042】
【化10】

IL−17F、転写産物1、は以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号NM_052872及び配列番号11)によってコードされている:
【0043】
【化11】

IL−17F、転写産物1、は以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号NP_443104.1及び配列番号12)によってコードされている:
【0044】
【化12】

ML−1、IL−17F転写産物2、は以下のmRNA配列(NCBIアクセッション番号AF332389及び配列番号13)によってコードされている:
【0045】
【化13】

ML−1、IL−17F転写産物2、は以下のアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号AAL14427.1及び配列番号14)によってコードされている:
【0046】
【化14】

DNA組成物
本発明のDNA組成物は全てのポリヌクレオチド又はこれらの断片を含む。上記方法の想定されているDNA組成物は線状化DNA配列を含む。さらに、DNA組成物は組換えDNA配列を含む。好ましい実施態様では、DNA組成物は環状又は線状化組換えDNA配列を含む。或いは、又はさらに、DNA組成物はMAb組成物を含む。DNA組成物は内因性又は外因性配列を含む。好ましい実施態様では、DNA組成物は導入遺伝子、例えば、IL−17導入遺伝子を含む。
【0047】
本方法のDNA組成物に含まれるDNA配列の例としては、ポリヌクレオチドをコードしている配列、一本鎖RNA、二本鎖RNA、干渉又はサイレンシングRNA、マイクロRNA、ポリジオキシリボヌクレオチド、一本鎖DNA、二本鎖DNA、モルホリノ、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、シグナルタンパク質、Gタンパク質、酵素、サイトカイン、ケモカイン、神経伝達物質、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、細胞内発現抗体、ホルモン、受容体、細胞質タンパク質、膜結合タンパク質、分泌タンパク質及び/又は転写因子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
好ましい実施態様では、上記DNA組成物は少なくとも1種のモノクローナル抗体(MAb)を含む。本発明のMAb組成物はNI−0701発現ベクター又は15C1抗体を含む発現ベクターを含む。この発現ベクターは、ヒトIgG1及びヒト・ラムダ2定常領域カセットとそれぞれ融合した抗体NI−0701の重及び軽鎖可変領域を含む「二重遺伝子」ベクターである。各抗体鎖の発現は強力なhCMVプロモーターによって駆動される。また、上記NI−0701ベクターはSV40プロモーターの制御下にグルタミン合成酵素(GS)遺伝子をも含む。GSはグルタミン酸、アンモニア及びATPからの必須アミノ酸グルタミンの合成を触媒する。従って、内因性GS活性を示す細胞株、例えばCHOK1SVに対してグルタミンの非存在下、ひいては特異的GS阻害剤メチオニンスルホキシミン(MSX)の存在下に選択制限を適用する。
【0049】
方法
本発明は核酸での細胞の改変の特性を向上させるためにIL−17を使用する方法であって、細胞をIL−17と接触させる工程を含む方法を提供する。この方法の別の実施態様では、IL−17を作用させることがIL−17に接触させない細胞の場合に比し、核酸の発現を増強する。
【0050】
さらに、本発明は、細胞改変の効果を向上させる方法であって、(a)培地中で1以上の細胞又は細胞株を培養する工程、(b)1以上の細胞又は細胞株を核酸と接触させる工程、(c)改変細胞を培地中で培養して該核酸によりコードされているポリペプチドを発現させる工程を含み、細胞は上記接触工程の前又は接触工程中にIL−17を作用させるものとし、トランスフェクションの向上した特性を示す、1種以上のポリペプチドを発現する1以上の細胞株が生成される方法を提供する。
【0051】
上記方法は、選択圧下の細胞又は細胞株を含む。一実施態様では、この選択圧は、トランスフェクトした細胞は生存するが非トランスフェクトした細胞は死に至る、特異的グルタミン合成酵素阻害剤を含む培地中でトランスフェクトした細胞を増殖させることによって加える。好ましい実施態様では、上記特異的グルタミン合成酵素阻害剤はメチオニンスルホキシミン(MSX)である。この細胞選択において、例えば、IL−17サイトカイン、好ましくはIL−17Fの存在下に培地中のMSXの濃度を(例えば、50μM超に)増大させることで、選択圧を増大させると、産生能が増大した。IL−17サイトカイン、好ましくはIL−17Fの非存在下に選択圧を増大させると、クローンが存在しなくなった。従って、IL−17Fを添加して選択圧を増大させることにより、本明細書において提供された方法の生産性が増大する。
【0052】
選択圧を加える場合、上記改変は準安定的である。或いは、選択圧を加える場合、上記改変は安定的である。別の実施態様では、上記改変細胞は選択圧の非存在下に増殖し、従って、その改変は一過性なものである。
【0053】
上記方法の細胞又は細胞株(単数又は複数)は少なくとも1種のIL−17受容体を発現する。IL−17受容体類(IL−17R)の例としては、IL−17RA、IL−17RB、IL−17RC、IL−17RD及びIL−17REが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施態様では、細胞又は細胞株(単数又は複数)として、IL−17ポリペプチドを分泌するTh17細胞が挙げられる。本発明によって包含されるIL−17ポリペプチド類又はサイトカイン類の例としては、IL−17A、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17EもしくはIL−17Fが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい実施態様では、IL−17Fサイトカインを用いる。
【0054】
本発明の想定されている細胞又は細胞株(単数又は複数)としては、例えば哺乳動物細胞を初めとする真核細胞が挙げられる。一部の実施態様では、上記細胞又は細胞株(単数又は複数)はヒト細胞を含む。別の実施態様では、本発明は幹細胞、全能細胞、多分化能細胞又は多能性細胞を含む。別の実施態様では、本発明は不死化細胞を含む。別の実施態様では、培養に一次細胞を用いる。さらに別の実施態様では、培養にハイブリドーマ細胞を用いる。本発明は、上記の諸細胞型又は諸細胞集団を単独又は混合物として用いることを含む。上記諸細胞型は同時に又は逐次的に使用する。上記の諸細胞型又は諸細胞集団の組合せは任意の組合せが想定されており、こうした組合せは本発明に包含される。
【0055】
上記方法は多数の細胞改変方法を含む。細胞改変方法の例としては、電気穿孔法、熱ショック法、マグネットフェクション法、微量注入法、遺伝子銃法、エンドサイトーシス法、小胞融合法、及びリポフェクション法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。或いは、又はさらに、細胞改変は、例えばパルボウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス及びヘルペスウイルスをベースとしたベクターを含む種々のウイルスをベースとした遺伝子送達システムのいずれかを用いて行う。或いは、又はさらに、本発明の核酸は、この核酸の細胞又は細胞株内への輸送を促進する化合物に結合、連結、動作可能なように連結、融合又は係留させる。一実施態様では、カチオン性ポリマーに核酸を結合させる。別の実施態様では、ナノ粒子に核酸を連結させる。第三の実施態様では、リン酸カルシウムに核酸を結合させる。
【0056】
上記方法は、細胞改変の1種以上の特性を向上させる。向上する特性の例としては、増大した効率、向上した選択率、増大した細胞増殖、選択した細胞の増大した出現速度、選択した細胞株の増大した数、選択した細胞の増強した倍加時間、増大した細胞生存度、培地枯渇に対する低下した感受性又は増大した細胞株の安定性が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
上記方法は、細胞をIL−17と接触させることにより上記核酸の発現を増強する。核酸発現特性の例としては、モノクローナル抗体(MAb)の増大した比産生速度、上昇したMAb力価、向上した産物の品質、IL−17発現のMAb力価との相関、トランスフェクション抵抗性細胞株の一過性改変後の増大した発現、又は増大した導入遺伝子生産能、ゲノム配列への外因性DNAの増大した組込み、外因性DNAの増大した保持、DNAの増大した取り込み、もしくは外因性DNAの増大した発現が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
本発明は、第1のプロモーター配列の制御下の1種以上のIL−17サイトカインポリヌクレオチド配列及び第1のプロモーター配列の制御下のIL−17サイトカイン配列の下流のレポータ遺伝子配列を含有する少なくとも1種の発現ベクターを含むIL−17組成物であって、上記のIL−17サイトカインとレポータ遺伝子配列とはウイルスの内部リボソーム侵入部位(IRES)配列によって隔てられているものとし、上記発現ベクターは第2のプロモーター配列の制御下の選択遺伝子をさらに含むものとするIL−17組成物を提供する。
【0059】
上記IL−17サイトカイン配列は哺乳動物の配列である。IL−17配列の哺乳動物供給源の例としては、マウス、ハムスター、モルモット、ラット、ブタ、ネコ、イヌ、ウマ及び非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい実施態様では、このIL−17サイトカイン配列はラットの配列又はヒトの配列である。IL−17A、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17E又はIL−17Fを含むIL−17サイトカインファミリーの全てのメンバーが想定されている。好ましい実施態様では、このIL−17サイトカイン配列はIL−17Fの1種以上のイソ型である。
【0060】
一部の実施態様では、IL−17組成物はレポータ遺伝子をも含む。想定されているレポータ遺伝子は検出可能なシグナルとなるポリペプチドをコードしている。或いは、又はさらに、レポータシグナルはDNA組成物に結合させる。例となる検出可能なシグナルは、ルシフェラーゼ(ルシフェリンとの反応を触媒する酵素)、蛍光タンパク質(緑、青、赤、黄又はシアン色)、β−ガラクトシダーゼ、磁性もしくは常磁性分子又は親油性色素(例えば、DiI、DiDもしくはDiO)によって生じる。上記レポータ遺伝子は、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP:green fluorescent protein)である。レポータ遺伝子を含むこうしたIL−17組成物は、例えば診断及び/又は研究のツールとして有用である。
【0061】
さらに、本発明は、抗体重鎖(可変及び定常ドメイン)をコードしているポリヌクレオチド配列並びに抗体軽鎖(可変及び定常ドメイン)をコードしているポリヌクレオチド配列をそれぞれに特有のプロモーター配列の制御下に含む少なくとも1種の発現ベクターを含むモノクローナル抗体(MAb)組成物であって、この発現ベクターは第3のプロモーター配列の制御下に選択遺伝子をさらに含むものとする組成物を提供する。好ましい実施態様では、これら重鎖及び軽鎖配列は15C1抗体(米国特許出願公開第2008−0050366号として公開された米国特許出願第11/151,916号及び米国特許出願公開第2006/0165686号として公開された米国特許出願第11/301,373号に記載されており、その各々の内容は全体として本明細書に組み込まれている)をコードしているものである。さらに、本発明は、ヒト化、キメラ及び組換えモノクローナル抗体とこれらの断片並びにスキャフォールド分子及びIgG又はIgG様ドメインを含む他の分子を提供する。想定されているモノクローナル抗体としては、一本鎖又は二本鎖及びこれらの断片が挙げられる。或いは、又はさらに、本発明のモノクローナル抗体は細胞内発現抗体類及びこれらの断片である。
【0062】
本発明のIL−17及びMAb組成物はDNA配列の発現を調節するためのプロモーターエレメントを含む。こうしたプロモーターエレメントは野生型である。或いは、又はさらに、プロモーターエレメントは特定の機能を果たすように設計又は選択される。例えば、あるプロモーターはDNA組成物の強力な発現を誘導するように設計又は選択される。別の例では、プロモーターは培養培地にある化学物質又は化合物を添加することで誘導可能となるように設計又は選択される。例えば、培養培地へのテトラサイクリンの添加及びこの培地からのテトラサイクリンの除去によって誘導可能なレポータをそれぞれ活性化及び抑制する。別の例では、プロモーターは構成的に活性である。好ましい一実施態様では、上記第1のプロモーター配列はhCMVである。別の実施態様では、この第1のプロモーターは細胞のプロモーターである。好ましい一実施態様では、この第1のプロモーターは延長因子1アルファ(EF−1α)である。別の好ましい実施態様では、上記第2のプロモーター配列はシミアンウイルス40である(SV40)。当該技術分野において認知されている他の哺乳動物発現ベクター及びウイルスプロモーター配列も本発明によって想定されており、包含される;Sambrookほか、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL. 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989年の16及び17章参照。
【0063】
本発明のIL−17及びMAb組成物は、少なくとも1種の選択遺伝子を含む。本発明の選択遺伝子は特定の培養条件下での生存に必要なエレメントをコードしているものである。選択遺伝子の例としては、その産物が抗生物質耐性、必須栄養素、必須酵素、代謝酵素及び抗アポトーシス/オートファジーエレメントをもたらす遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい実施態様として、この選択遺伝子はグルタミン合成酵素をコードしている。
【0064】
また、本発明は、IL−17組成物を用いてトランスフェクション特性を向上させ、1種以上の外因性遺伝子の1以上の細胞株内における発現を増強する方法であって、DNA組成物を1以上の細胞株内に挿入することを含み、IL−17組成物は1以上の細胞と接触させるものとする方法を提供する。
【0065】
一実施態様では、上記方法のIL−17組成物は上記DNA組成物の挿入前に1以上の細胞と接触させる。或いは、又は上記第1の実施態様に加えて、IL−17組成物は上記DNA組成物の挿入時に1以上の細胞と接触させる。別の実施態様では、また、さらにこれまでの実施態様に加えて、IL−17組成物は上記DNA組成物の挿入後に1以上の細胞と接触させる。別の実施態様では、IL−17組成物は連続的に1以上の細胞と接触させる。
【0066】
上記方法のIL−17組成物は1以上の細胞と細胞の細胞外表面で接触させる。或いは、又はさらに、このIL−17組成物は1以上の細胞と細胞の細胞内表面で接触させる。別の実施態様では、本発明のDNA組成物はIL−17サイトカインをコードしている1種以上の配列を含む。
【0067】
好ましい実施態様では、上記方法の細胞株は選択圧下にあり、そのトランスフェクションは準安定的又は安定的である。或いは、細胞株は選択圧下になく、そのトランスフェクションは一過性である。本発明に包含されるトランスフェクション方法としては、電気穿孔法、熱ショック法、マグネットフェクション法、微量注入法、遺伝子銃法、ウイルス性形質導入法、エンドサイトーシス法、小胞融合法、リン酸カルシウム法、リポソーム法及びカチオン性ポリマーを媒介させる方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
上記IL−17組成物は1以上の細胞株にトランスフェクションする。さらに、このIL−17組成物は上記DNA組成物と同時に又は逐次的にトランスフェクションする。さらに、このIL−17組成物は、1種以上の外因性遺伝子と同時発現される外因性性配列である。
【0069】
或いは、又はさらに、上記IL−17組成物はトランスフェクション前、中又は後のトランスフェクション培地中に存在させる。このIL−17組成物は1種以上の外因性遺伝子を発現する細胞と関連づけられる1種以上の細胞外タンパク質と結合させる。このIL−17組成物は1種以上の外因性遺伝子を発現する細胞と関連づけられる1種以上の膜貫通タンパク質と結合させる。一実施態様では、このIL−17組成物は、1種以上の外因性遺伝子を発現する1以上の細胞株によって取り込ませる。従って、このIL−17組成物は1種以上の外因性遺伝子を発現する細胞と関連づけられる1種以上の細胞内タンパク質と結合させる。
【0070】
さらに、本発明は、準安定的トランスフェクションの効果を向上させる方法であって、(a)培地中で1以上の細胞株を培養する工程、(b)この細胞株(単数又は複数)を1種以上のDNA組成物と混合する工程、(c)少なくとも1種の細胞株の形質膜を横切らせて1種以上のDNA組成物を輸送する工程、(d)選択圧下の培地中でトランスフェクトした細胞を培養する工程及び(e)トランスフェクトした細胞に、選択圧下にトランスフェクションDNA組成物によりコードされているポリペプチドを発現させる工程を含み、トランスフェクションの向上した特性を示す、1種以上のポリペプチドを発現する細胞株の混合物が生成されるものとする方法を提供する。
【0071】
また、本発明は、安定的トランスフェクションの効果を向上させる方法であって、(a)培地中で1以上の細胞株を培養する工程、(b)この細胞株(単数又は複数)を1種以上のDNA組成物と混合する工程、(c)少なくとも1種の細胞株の形質膜を横切らせて1種以上のDNA組成物を輸送する工程、(d)選択圧下の培地中でトランスフェクトした細胞を培養する工程及び(e)トランスフェクトした細胞に、選択圧下にトランスフェクションDNA組成物によりコードされているポリペプチドを発現させる工程を含み、トランスフェクションの向上した特性を示す、1種以上のポリペプチドを発現する単離された細胞株が生成されるものとする方法を提供する。
【0072】
上記準安定的及び安定的トランスフェクション方法のDNA組成物はIL−17をコードしている少なくとも1種の配列を含む。別の実施態様では、上記培養培地は少なくとも1種のIL−17ポリペプチドを含む。別の実施態様では、上記細胞株(単数又は複数)は少なくとも1種のIL−17受容体を発現する。本発明及び本方法により包含されるIL−17受容体(IL−17R)の例としては、IL−17RA、IL−17RB、IL−17RC、IL−17RD及びIL−17REが挙げられるが、これらに限定されるものではない。別の実施態様では、上記細胞株は、IL−17ポリペプチドを分泌するTh17、好中球、マクロファージ及びγ−T細胞を含む
上記方法のIL−17組成物は野生型又は変異体型であるIL−17ポリペプチドを含む。機能的には、上記方法のIL−17組成物は活性又は不活性であるIL−17ポリペプチドを含む。或いは、上記方法のIL−17組成物は不活性なIL−17変異体を含む。IL−17ポリペプチドの例としては、IL−17ファミリーの全てのメンバーが挙げられる。IL−17サイトカインファミリーとしては、IL−17A、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17E又はIL−17Fが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい実施態様では、上記方法のIL−17組成物はIL−17Fポリペプチドを含有する。IL−17Fは2種のイソ型のうちの1つとして存在するが、これらのイソ型のいずれも本発明の組成物及び方法によって想定され、包含されている。IL−17Fのイソ型2はML−1とも呼ばれ、本発明によって包含されている。
【0073】
上記方法の細胞株(単数又は複数)は、例えば哺乳動物細胞を初めとする真核細胞を含む。一部の実施態様では、上記細胞又は細胞株(単数又は複数)はヒト細胞を含む。細胞株(単数又は複数)は、ヒト化細胞、ハイブリドーマ及び、例えばBリンパ球などの不死化一次細胞を含む。一実施態様では、細胞株は幹細胞、全能細胞、多分化能細胞又は多能性細胞を含む。細胞株(単数又は複数)は胚、胎児、新生児、周産期、小児期又は成人細胞を含む。別の実施態様では、細胞株は不死化細胞を含む。細胞株は内皮、間葉又は中胚葉由来である。別の実施態様では、細胞株は培養物中の初代細胞を含む。さらに、細胞株は培養物中のハイブリドーマ細胞を含む。
【0074】
細胞株(単数又は複数)は平滑又は横紋筋細胞を含む。一実施態様では、細胞株(単数又は複数)は心臓細胞を含む。
【0075】
包含される細胞株としては、造血細胞、リンパ系細胞、骨髄系細胞、リンパ球前駆細胞、B前駆細胞、T前駆細胞、リンパ球、B細胞、T細胞、形質細胞、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞又は樹状細胞である免疫細胞が挙げられる。
【0076】
包含される細胞株として、ニューロン、かご細胞、ベッツ細胞、中型有棘ニューロン、プルキンエ細胞、錐体細胞、投射神経細胞、レンショー細胞、顆粒状細胞、運動ニューロン、興奮性ニューロン、抑制性ニューロン、紡錘形ニューロン、神経前駆細胞、神経幹細胞、介在ニューロン、グリア細胞、放射状グリア細胞、アストロサイト/アストログリア(タイプ1又はタイプ2)、乏突起膠細胞、シュワン細胞又はバーグマングリア細胞である神経系細胞が挙げられる。また、想定されている細胞株として全ての型の上皮及び内皮細胞も挙げられる。
【0077】
また、本発明の細胞株(単数又は複数)は全ての種類の癌細胞を含む。本発明によって包含される癌細胞としては、以下の例示的な状態に由来するものである。即ち、このような状態としては急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、副腎皮質癌、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌、小児小脳星細胞腫、小児大脳星細胞腫、基底細胞癌、皮膚癌(非メラノーマ)、肝外胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、脳腫瘍、脳幹グリオーマ、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍、視経路及び視床下部グリオーマ、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、消化管、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、大腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞性リンパ腫、菌状息肉腫、セザリー症候群、子宮内膜癌、食道癌、頭蓋外胚細胞腫、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、眼球内メラノーマ、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃(胃(stomach))癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍グリオーマ、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼球内メラノーマ、島細胞腫瘍(膵臓内分泌腺)、カポジ肉腫、腎(腎細胞)癌、腎癌、喉頭癌、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリー細胞白血病、口唇癌及び口腔癌、肝臓癌、非小細胞肺癌、肺小細胞癌、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、中枢神経系原発リンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、髄芽腫、メラノーマ、眼球内(眼)メラノーマ、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、中皮腫、転移性扁平上皮頸部癌、口腔癌、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性疾患、鼻咽腔癌、神経芽細胞腫、口腔癌(oral cancer)、口腔癌(oral cavity cancer)、口腔咽頭癌、卵巣癌、上皮性卵巣癌、境界悪性卵巣腫瘍、膵臓癌、島細胞膵臓癌、副鼻腔癌及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体芽細胞種及びテント上方未分化神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞腫/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎盂及び尿管、移行細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ewing family of sarcoma tumors)、カポジ肉腫、軟部組織肉腫、皮膚癌(非メラノーマ)、皮膚癌(メラノーマ)、メルケル細胞皮膚癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃(胃(gastric))癌、松果体芽細胞種及びテント上方未分化神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行細胞癌、妊娠性絨毛腫瘍、尿道癌、子宮内子宮癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌及びウィルムス腫瘍が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
上記方法に用いられる好ましい細胞は任意の齧歯動物の細胞株であり、例えばCHOK1SV細胞又はCHO−S細胞が挙げられる。CHOK1SV細胞又はCHO−S細胞を用いる実施態様では、上記方法における好ましい培養培地は6mMのL−グルタミンを補充したCD−CHOである。他の細胞及び細胞株としては、例えばCHO−DG44細胞を含む、Boehringer IngelheimのHigh Expression System(BI−HEX(登録商標))に用いられる細胞及び細胞株が挙げられる。
【0079】
上記方法のDNA組成物は、電気穿孔法、熱ショック法、マグネットフェクション法又は遺伝子銃法によって細胞膜を横切らせて輸送するか、挿入する。或いは、上記方法のDNA組成物は、ウイルス性形質導入法によって細胞膜を横切らせて輸送するか、挿入する。さらに、上記方法のDNA組成物は、エンドサイトーシ法、小胞融合法又はリポソーム法によって細胞膜を横切らせて輸送するか、挿入する。上記方法のDNA組成物は、1以上の細胞株による取込みの確率が増大するようにカチオン性ポリマーに結合させた1種以上のDNA配列を含む。カチオン性ポリマーの例としては、ポリリシン、ポリアミドアミン及びポリエチレンイミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。或いは、上記方法のDNA組成物は、ナノ粒子に連結させた1種以上のDNA配列を含む。想定されているナノ粒子としては遺伝子銃によるトランスフェクションを可能にする不活性固体物質が挙げられ、このようなものとしては金が挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに、上記方法のDNA組成物は、1以上の細胞株による取込みを可能にするリン酸カルシウムに結合させた1種以上のDNA配列を含む。さらに、DNA組成物は、ウイルス性形質転換を可能にするウイルスに封入した1種以上のDNA配列を含む。さらに、DNA組成物は、リポフェクション用のリポソームに取り込ませ、又は結合させた1種以上のDNA配列を含む。例えば、Lipofectamine(Invitrogen)を用いてリポフェクションが遂行される。
【0080】
上記方法のDNA組成物は線状化DNA配列を含む。さらに、DNA組成物は組換えDNA配列を含む。好ましい実施態様では、DNA組成物は線状化組換えDNA配列を含む。或いは、又はさらに、DNA組成物はMAb組成物を含む。DNA組成物は内因性又は外因性配列を含む。好ましい実施態様では、DNA組成物は導入遺伝子、例えば、IL−17導入遺伝子を含む。
【0081】
本方法のDNA組成物に含有されるDNA配列の例としては、ポリリボヌクレオチドをコードしている配列、一本鎖RNA、二本鎖RNA、干渉又はサイレンシングRNA、マイクロRNA、ポリジオキシリボヌクレオチド、一本鎖DNA、二本鎖DNA、モルホリノ、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、シグナルタンパク質、Gタンパク質、酵素、サイトカイン、ケモカイン、神経伝達物質、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、細胞内発現抗体、ホルモン、受容体、細胞質タンパク質、膜結合タンパク質、分泌タンパク質又は転写因子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
定義
本発明に関連して用いた科学技術用語は、別に定義しない限り、当業者により一般に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈によって必要とされない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形は単数を含むものとする。一般に、本明細書に記載した、細胞及び組織培養、分子生物学並びにタンパク質及びオリゴ/ポリヌクレオチド化学及びハイブリダイゼーションに関連して、またこれらの技術において用いた術語は、当該分野において公知であり、常用されているものである。組換えDNA及びオリゴヌクレオチド合成並びに組織培養及び形質転換(例えば、電気穿孔法、リポフェクション法)には標準的な技術を用いている。酵素反応及び精製技術は、メーカーの仕様に従い、又は当該分野で一般に実施されているように、又は本明細書に記載した方法で実施している。以上の技術及び手順は、概ね、当該分野で公知の常法に従い、また、本明細書全体にわたって引用し検討している各種の一般的及びより具体的な文献に記載されているのと同様にして実施している。例えば、Sambrookほか、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989年))を参照されたい。本明細書に記載している分析化学、合成有機化学及び医薬品/製薬化学に関連して用いている術語並びにこれらの実験法及び技術は、当該分野で公知であり常用されているものである。化学合成、化学分析、製剤、処方、送達(delivery)及び患者の治療には標準的な方法が用いられている。
【0083】
本開示に従って利用される場合、下記の用語は、特に示さない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0084】
本明細書において触れている「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチドであれデオキシリボヌクレオチドであれ少なくとも10塩基長のヌクレオチドのポリマー性ボロン又はいずれかの種類のヌクレオチドの改変形態を意味する。この用語はDNAの一本鎖及び二本鎖形態を含む。
【0085】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書ではポリペプチド配列の天然のタンパク質、断片又は変異体を指す総称として用いている。従って、天然タンパク質の断片及び変異体はそのポリペプチド属の種である。本発明による好ましいポリペプチドとしてはサイトカイン及び抗体が挙げられる。
【0086】
本明細書で用いている「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン(Ig:immunoglobulin)分子の免疫学的に活性な部分、即ち、抗原と特異的に結合する(免疫反応を行う)抗原結合部位を含む分子のことをいう。そのような抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ及び一本鎖抗体並びにFab発現ライブラリにおけるFab、Fab’及びF(ab’)2断片が挙げられるが、これらに限定されるものではない。「特異的に結合する」又は「〜と免疫反応を行う」とは、抗体が所望の抗原の1箇所以上の抗原決定基と反応するが、他のポリペプチドとは反応(即ち、結合)しないか、他のポリペプチドとは極めて低い親和性(K>10−6)で結合することを意味する。
【0087】
基本的な抗体構造単位は四量体を含むことが知られている。各四量体は2つの同一対のポリペプチド鎖で構成され、各対は1本の「軽」鎖(約25kDa)及び1本の「重」鎖(約50乃至70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主として抗原認識に関与する約100個乃至110個以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は主としてエフェクター機能に関与する定常領域を規定している。ヒトの軽鎖はカッパ及びラムダ軽鎖に分類される。重鎖はミュー、デルタ、ガンマ、アルファ又はイプシロンに分類され、抗体のイソ型をそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEとして規定している。軽鎖及び重鎖内では、可変領域と定常領域とは約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって結合しており、重鎖は約10個以上のアミノ酸「D」領域をさらに含む。一般的には、Fundamental Immunology Ch.7(Paul, W.編、第2版、Raven Press、N.Y.(1989年))を参照されたい。各軽/重鎖対の可変領域は抗体の結合部位を形成している。
【0088】
本明細書で用いている「モノクローナル抗体(MAb)」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、特有の軽鎖遺伝子産物と特有の重鎖遺伝子産物とからなる1つの分子種の抗体のみを含む抗体分子の集団のことをいう。特に、このモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR:complementarity determining region)はこの集団の全ての分子で同一である。従って、MAbは、抗原に対する特有の結合親和性により特徴付けられる抗原の特定のエピトープと免疫反応し得る抗原結合部位を含む。
【0089】
一般に、ヒトから得られる抗体分子はIgG、IgM、IgA、IgE及びIgDクラスのいずれかと関連があり、これらは分子中に存在する重鎖の性質によって互いに異なる。特定のクラスには、IgG、IgGなどのサブクラスも存在する。さらに、ヒトでは軽鎖はカッパ鎖又はラムダ鎖とすることができる。
【0090】
本明細書で用いている「細胞内発現抗体(intrabody)」という用語は細胞内抗体を含むポリペプチドを意味するものとする。細胞内発現抗体は分泌されない。細胞内発現抗体はポリヌクレオチド及びポリペプチド配列を含む細胞内標的に結合する。細胞内発現抗体は全ての細胞コンパートメントに入る。
【0091】
本明細書で用いている「これらの断片」という用語は、配列全体の長さより短いポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列のセグメントを意味する。本明細書で用いている断片は機能的及び非機能的領域を含む。種々のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列からの断片を交換又は組合せることによりハイブリッド又は「キメラ」分子が創出される。また、断片は、ポリペプチドのポリヌクレオチド配列又は他のポリペプチドへの結合特性を調節するのに用いられる。
【0092】
本明細書で用いている「プロモーター配列」という用語は、そこで転写の開始又は速度が制御される遺伝子の領域を含むポリヌクレオチド配列を意味する。プロモーター配列は、RNAポリメラーゼ結合部位並びに他の正及び負調節エレメントの結合部位を含む。正調節エレメントはそのプロモーター配列の制御下の遺伝子の発現を促進する。負調節エレメントはそのプロモーター配列の制御下の遺伝子の発現を抑制する。本明細書で用いているプロモーター配列は、調節対象の遺伝子に対して上流又は内部に存在する。特に、「第2のプロモーター配列」に対する「第1のプロモーター配列」という用語は発現ベクター内のプロモーター配列の相対的な位置のことをいう。上記第1のプロモーター配列は上記第2のプロモーター配列の上流にある。
【0093】
本明細書で用いている「選択遺伝子」という用語は、所与の培養条件における細胞の生存に必要なポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列を意味するものとする。細胞が選択遺伝子と共に目的とする遺伝子を有する発現ベクターをうまく取り入れると、その細胞は不利な培養条件下で選択的に生存することを可能にするエレメントを産生することになる。「選択された」細胞とは、選択圧下に生存し、上記発現ベクターを取り入れたに違いない細胞である。本明細書で用いている「選択圧」という用語は、上記DNA組成物を受容しない細胞の生存を阻害する細胞培養培地へのエレメントの添加を意味するものとする。
【0094】
本明細書で用いている「内在性遺伝子」という用語は、細胞のゲノム配列内に含まれている遺伝子を意味するものとする。本明細書で用いている「外因性遺伝子」とは、細胞のゲノム配列内に含まれていない遺伝子を意味するものとする。外因性遺伝子は本方法によって細胞内に導入される。本明細書で用いている「導入遺伝子」という用語は1つの生物から別の生物に移された遺伝子を意味するものとする。
【0095】
本明細書で用いている「トランスフェクション」という用語は、細胞内への1種以上のDNA組成物の細胞膜を横切る輸送又は挿入を意味するものとする。本明細書で用いている「安定的トランスフェクション」とは、選択圧下における単離タンパク質発現細胞株の生成を意味するものとする。本明細書で用いている「準安定的トランスフェクション」とは、選択圧下におけるタンパク質発現細胞株の混合物の生成を意味するものとする。本明細書で用いている「一過性トランスフェクション」とは、選択圧が加わらないでタンパク質発現細胞株が生成されることを意味するものとする。安定的及び準安定的トランスフェクションは選択圧によるゲノム内へのトランスフェクション配列の組込みをもたらす。一過性トランスフェクションはトランスフェクション配列のゲノムへの組込みをもたらさず、通常短期間こうした配列を保持させる。本明細書で用いている「トランスフェクション抵抗性」という用語は、既知の方法を用いて低い効率又は成功率でトランスフェクションされることを意味するものとする。
【0096】
本明細書で用いている「向上した特性(enhanced property)」という用語は、IL−17の非存在下に測定された場合の同じパラメータに対して優れた特性のことを意味するものとする。
【0097】
本明細書で用いている「レポータ遺伝子」という用語は、上記発現ベクター、従って目的とする遺伝子を取り込んだ細胞において物理的変化をもたらすポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列を意味するものとする。物理的変化とは色変化又は蛍光発光である場合が多い。
【0098】
本明細書で用いている「内部リボソーム侵入部位(IRES)」という用語は、メッセンジャーRNA(mRNA)配列の内部からの翻訳開始という自然界の真核細胞では起こらないプロセスを可能にするポリヌクレオチド配列を意味するものとする。IRESが真核細胞mRNA分子内の2つの読み取り枠の間に配置されている(二シストロン性mRNAと呼ばれる)と、このmRNA分子の5’末端に結合している5’キャップ構造とは関係なく下流のタンパク質コード領域の翻訳が駆動される。その結果、その細胞内で両タンパク質が産生される。
【0099】
本明細書で用いている20種の通常のアミノ酸及びそれらの略語は慣用の語法に従っている。Immunology − A Synthesis (第2版、E.S.Golub及びD.R.Gren編、Sinauer Associates、Sunderland Mass.(1991年))を参照されたい。これら20種の通常アミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)、α−,α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸などの非天然アミノ酸及び他の特殊アミノ酸も本発明のポリペプチドに適したアミノ酸であり得る。特殊アミノ酸の例としては、4ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、σ−N−メチルアルギニン及び他の同様なアミノ酸並びにイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)が挙げられる。本明細書で用いているポリペプチド表記法では、標準的な用法及び規則に従って、左手方向をアミノ末端方向、右手方向をカルボキシ末端方向としている。
【0100】
同様に、特に他に明記されていない限り、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左側末端は5’末端、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側末端は5’方向と称する。新生RNA転写産物の5’から3’への付加の方向は転写方向と称し、このRNAと同じ配列を有し、このRNA転写産物の5’末端に対して5’側にあるDNA鎖上の配列領域は「上流配列」と称し、同RNAと同じ配列を有し、同RNA転写産物の3’末端に対して3’側にあるDNA鎖上の配列領域は「下流配列」と称する。
【0101】
サイレント又は保存的アミノ酸置換とは、類似の側鎖を有する残基が交換可能であることをいう。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループはグリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンであり、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループはセリン及びスレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループはアスパラギン及びグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループはフェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループはリジン、アルギニン及びヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループはシステイン及びメチオニンである。好ましい保存的なアミノ酸間の置換グループは、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0102】
サイレント又は保存的置換とは、側鎖が関連しているアミノ酸のファミリー内で生じる置換である。遺伝的にコードされているアミノ酸は一般に以下のファミリーに分類される:(1)酸性アミノ酸はアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩であり、(2)塩基性アミノ酸はリジン、アルギニン、ヒスチジンであり、(3)非極性アミノ酸はアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンであり、(4)非荷電極性アミノ酸はグリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシンである。親水性アミノ酸としてはアルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸塩、グルタミン、グルタミン酸塩、ヒスチジン、リジン、セリン及びスレオニンが挙げられる。疎水性アミノ酸としてはアラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン及びバリンが挙げられる。他のファミリーのアミノ酸としては、(i)脂肪族ヒドロキシファミリーであるセリン及びスレオニン、(ii)アミド含有ファミリーであるアスパラギン及びグルタミン、(iii)脂肪族ファミリーであるアラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン並びに(iv)芳香族ファミリーであるフェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン、が挙げられる。例えば、ロイシンのイソロイシン又はバリンによる、アスパラギン酸塩のグルタミン酸塩による、スレオニンのセリンによる単一置換、或いはあるアミノ酸の構造上関連のあるアミノ酸による同様な置換では、特にフレーム部位内のアミノ酸がその置換に関与していない場合には、得られる分子の結合又は性質に大きな影響はないであろうと考えるのは理にかなっている。アミノ酸の変化が機能性ペプチドをもたらすかどうかはこのポリペプチド誘導体の比活性をアッセイすることで容易に判定することができる。アッセイについては本明細書に詳細に記載されている。抗体又は免疫グロブリン分子の断片又はアナログは当業者が容易に調製することができる。断片又はアナログのアミノ又はカルボキシ末端は機能ドメインの境界付近に存在することが好ましい。構造及び機能ドメインはヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列データを公共又は企業の配列データベースと比較することによって特定することができる。コンピュータ化された比較方法を用いて、既知の構造及び/又は機能の他のタンパク質に存在する配列モチーフ又は予測タンパク質立体配座ドメインを特定することが好ましい。既知の3次元構造に折り畳まれるタンパク質配列を特定する方法は公知である。Bowieほか、Science 253:164(1991年)。従って、前記の例から、当業者は本発明に従って構造及び機能ドメインを明確にするために用いることができる配列モチーフ及び構造の立体配座を認識することができることが分かる。
【0103】
サイレント又は保存的アミノ酸置換は親配列の構造上の特徴を実質的に変化させてはならない(例えば、置換アミノ酸は親配列に存在するヘリックスを壊したり、親配列を特徴付ける他のタイプの二次構造を乱したりしやすくなってはならない)。当該技術分野において認知されているポリペプチドの二次及び三次構造の例については、Proteins, Structures and Molecular Principles(Creighton編、W.H.Freeman and Company、New York (1984年));Introduction to Protein Structure (C.Branden及びJ.Tooze編、Garland Publishing、New York、N.Y.(1991年));並びにThorntonほか、Nature 354:105(1991年)に記載されている。
【0104】
本明細書中の他の化学用語は、The McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms (Parker,S.編、McGraw−Hill、San Francisco(1985年))に例示されているような、当該分野における慣用的用法に従って用いている。
【実施例】
【0105】
実施例1:NI−0701二重遺伝子発現ベクター
NI−0701発現ベクターは、ヒトIgG1及びヒト・ラムダ2の定常領域カセットとそれぞれ融合した抗体NI−0701の重鎖及び軽鎖可変領域を含む「二重遺伝子」ベクターである。各抗体鎖の発現は強力なhCMVプロモーターによって駆動される。また、NI−0701ベクターはSV40プロモーター制御下のグルタミン合成酵素(GS:Glutamine Synthetase)遺伝子をも含有する。GSはグルタミン酸、アンモニア及びATPからの必須アミノ酸グルタミンの合成を触媒する。従って、内因性GS活性を示す細胞株、例えばCHOK1SVに対してグルタミンの非存在下、ひいては特異的GS阻害剤メチオニンスルホキシミン(MSX)の存在下に選択制限を適用する。
【0106】
NI−0701重鎖可変ドメインは以下の核酸配列(配列番号15)によってコードされている:
【0107】
【化15】

NI−0701重鎖可変ドメインは以下のアミノ酸配列(配列番号:16)によってコードされている:
【0108】
【化16】

NI−0701軽鎖可変ドメインは以下の核酸配列(配列番号17)によってコードされている:
【0109】
【化17】

NI−0701軽鎖可変ドメインは以下のアミノ酸配列(配列番号:18)によってコードされている:
【0110】
【化18】

NI−0701重鎖は以下のアミノ酸配列(配列番号19)によってコードされている:
【0111】
【化19】

NI−0701軽鎖は以下のアミノ酸配列(配列番号20)によってコードされている:
【0112】
【化20】

実施例2:IL−17発現ベクターの作製
ヒト・インターロイキン17F(IL−17F又はhIL−17F)及び17A(IL−17A又はhIL−17A)並びにラット・インターロイキンIL−17F(ラットIL−17F又はrIL−17F)をヒト又はラットcDNAから単離し、次いでhCMVプロモーター制御下に発現ベクターにサブクローニングした。第2のシストロンとしてGFPを同じCMVプロモーターの制御下にhIL−17cDNAの下流にクローニングした。これら2種のシストロン(IL−17及びGFP)をウイルスの内部リボソーム侵入部位(IRES)によって隔てることにより上記第2(GFP)のシストロンの翻訳を可能にした。また、このベクターに、MSXを用いた無グルタミン培地におけるトランスフェクトした細胞の選択のためにSV40プロモーター制御下のGS遺伝子を含有させた。図10はIL−17発現ベクターのマップである。
【0113】
上記IL−17発現ベクターは以下の核酸配列(配列番号21)によってコードされている:
【0114】
【化21−1】

【0115】
【化21−2】

【0116】
【化21−3】

【0117】
【化21−4】

実施例3:A6 VL発現ベクターの作製
IL−17サイトカインと同様な分子量の対照タンパク質を作製するために、NI−0501モノクローナル抗体(国際公開第06/109191号に開示されている抗IFNγモノクローナル抗体)の軽鎖(可変領域及び定常領域)をhCMVプロモーターの制御下に発現ベクターにサブクローニングした。第2のシストロンとしてGFPを同じCMVプロモーターの制御下にA6 VL cDNAの下流にクローニングした。これら2種のシストロン(A6 VL及びGFP)をウイルスの内部リボソーム侵入部位(IRES)によって隔てることにより上記第2(GFP)のシストロンの翻訳を可能にした。また、このベクターに、MSXを用いた無グルタミン培地におけるトランスフェクトした細胞の選択のためにSV40プロモーター制御下のGS遺伝子を含有させた。
【0118】
実施例4:天然ヒトIL−17Fに対するNI−0701ベクターのトランスフェクション
Lonza Biologics,plcのCHOK1SV細胞株を用いてヒトIL−17F及びNI−0701の産生のための準安定的トランスフェクションによるプール又は安定的トランスフェクションによる細胞株を作製した。本明細書で用いている「トランスフェクション」という語は線状化DNAを電気穿孔法によって細胞内に導入することを述べたものである。「準安定的トランスフェクション」という表現は、選択圧下に組換えタンパク質発現プール、即ち、細胞株の混合物を作製することを意味する。「安定的トランスフェクション」という表現は、選択圧下に単離組換えタンパク質産生細胞株を作製することを意味する。
【0119】
つまり、6mMのL−グルタミンを補充した培地CD−CHO(Invitrogen)中の指数関数的に増殖している細胞を以下の条件下に電気穿孔した:0.4cmキュベットにおいて、700μLの新鮮CD−CHO中の1.0×10個の生細胞をpH7.4のトリスEDTA緩衝溶液100μL中40μgのDNAと穏やかに混合した後、直ちに300ボルト、900μFの単一パルスを与えた。
【0120】
各DNA構築のために、直ちに4個のキュベットの内容物を予熱した新鮮なCD−CHO200mL中に移した。次に、この細胞懸濁物を3個の組織培養処理T75フラスコに分配して3つの50mL準安定的プールを作製し、残りの細胞懸濁物50mLを用いて10枚の96−穴プレート(ウェル当たり50μL)における限界希釈によって安定的細胞株を作製した。その後、上記のT75フラスコ及び96−穴プレートを空気中CO10%及び温度37℃に設定した加湿インキュベータ内に設置した。
【0121】
トランスフェクションの約24時間後に、安定的及び準安定的トランスフェクションの両方に(50μMのMSX補充により)選択圧を加え、T75フラスコにはPBS中MSXの100mM原液25μLを添加し、96−穴プレートには66.6μMのMSXを補充した予熱したCD−CHOをウェル当たり150μL分注した。最後に、プレート及びフラスコを速やかにインキュベータに戻した。
【0122】
安定的トランスフェクションのプレートでは、細胞株の出現は、プレートの底を都合良く表示するために鏡を用いて頻繁に目視観察することにより評価した。「陽性のウェル」は、1個以上のトランスフェクタントコロニーを示すウェルと定義する。図1から、ヒトIL−17Fを用いて安定的にトランスフェクションさせた細胞を接種したウェルプレートは、トランスフェクション後2週目に始まり、5週目まで持続する1個以上のトランスフェクタントコロニーを示す一貫してより高い割合の陽性ウェルを有することが分かる。IL−17Fトランスフェクトした細胞の成功は、対照のNI−0701トランスフェクトした細胞に対しておよそ16倍の向上を示している。
【0123】
図2から、IL−17Fトランスフェクトした細胞を接種したウェルプレートはNI−0701トランスフェクトした細胞の場合に比し、ウェル当たりの単一種コロニーよりもウェル当たりの複数コロニーの割合が大きいことが分かる。百分率値は2回の独立した実験の平均を示したものである。「複数コロニー」ウェルは2個以上のいくつかのコロニーを示す陽性ウェルと定義され、これに対して、「単一種コロニー」ウェルは一つの単離されたトランスフェクタントコロニーを示す陽性ウェルからなる。
【0124】
図1及び図2のデータを総合すると、IL−17F媒介トランスフェクションはNI−0701媒介安定的トランスフェクションよりも効果的であることが分かる。IL−17Fの発現は選択圧に抵抗性のトランスフェクトした細胞の出現速度及び数を大きく増加させる。
【0125】
準安定プールでは、細胞増殖及びGFP導入遺伝子発現は蛍光顕微鏡を用いた目視検査により周期的に観察される。選択圧に抵抗性の細胞の大部分は、明視野照明の場合に比し、トランスフェクション後6、15及び23日にGFP発現に関して陽性であり、抵抗性細胞株はヒトIL−17Fを発現していることが示唆される(図3)。
【0126】
実施例5:トランスフェクション効果に対する外因性ヒトIL−17Fの影響の評価
外因性組換えヒトIL−17Fを含有又は非含有の培養培地の存在下にA6 VL構築体(A6VL−IRES−GFP)のCHOK1SV細胞内への準安定的トランスフェクションを行った。7、14、17及び21日目にFACS分析により準安定的プールのGFP発現について分析した。準安定的プール内の細胞の全体的生存率をトリパンブルー染色後自動血球計数器により測定した。得られたデータから、14、17及び21日目において、IL−17Fを作用させた細胞はIL−17Fを作用させなかった細胞よりも高いレベルのGFPを発現したことが分かる(図4A)。さらに、IL−17Fの添加により全体的な細胞生存率が特に17日目に増大した(図4B)。
【0127】
実施例6:IL−17サイトカインファミリーの他のメンバーのトランスフェクション
IL−17ファミリーとしては、IL−17A、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17E及びIL−17Fが挙げられるが、これらに限定されるものではない。評価すべき最初のIL−17ファミリーメンバーはIL−17Aである。何故なら、IL−17FとIL−17Aとはアミノ酸配列の最も高い相同性及び同一性を共有しているからである。A6 VL、IL−17F及びIL−17A構築体はCHOK1SV細胞において安定的にトランスフェクトされた。トランスフェクトした細胞はトランスフェクションの14、22、28及び35日後に陽性ウェルの数について評価した。図5から、22、28及び35目では、96−穴プレート当たりの陽性ウェルの平均数はA6VLトランスフェクトした細胞の場合よりもIL−17A又はIL−17Fトランスフェクトした細胞でより大きいことが分かる。従って、IL−17A及びIL−17Fはいずれも陽性ウェルの出現時間を短縮(即ち、出現速度を増大)させ、その数を増加させた。
【0128】
実施例7:ヒト及びラットIL−17Fの比較
ラットIL−17Fはそのヒト相同体と高い配列相同性を有する。そこで、ラット及びヒトIL−17Fのトランスフェクション能に対する個々の効果を測定した。ヒトIL−17F、ラットIL−17F及びA6VL構築体をCHOK1SV細胞中に安定的又は準安定的にトランスフェクションした。安定的トランスフェクションについては、トランスフェクションの14、22、28及び35日後に陽性ウェルの数を評価した。準安定的プールについてはFACS分析によりGFPの発現を分析した。準安定的プール内の細胞の全体的生存率をトリパンブルー染色後自動血球計数器により測定した。図6Aから、22、28及び35日後では96−穴プレート当たりの陽性ウェルの平均数はA6VLトランスフェクトした細胞の場合よりもヒトIL−17F及びラットIL−17Fトランスフェクトした細胞でより大きいことが分かる。図6Bからは、14、17及び21日目ではヒト又はラットIL−17Fを用いてトランスフェクションした細胞はA6VLを用いてトランスフェクションした細胞よりも高いレベルのGFPを発現した。さらに、ヒトIL−17F又はラットIL−17Fを用いてトランスフェクションした細胞は同じ日にA6VLを用いてトランスフェクションした細胞よりも14及び17日目に高い生存率を示している(図6C)。従って、ヒト及びラットIL−17Fを用いてトランスフェクションすると、安定的トランスフェクションにおいて陽性ウェルの出現時間が短縮(即ち、出現速度を増大)し、その数が増加した。さらに、ヒト及びラットIL−17Fを用いてトランスフェクションすると、GFP発現のレベルで評価される組換えタンパク質発現のレベルが増大した。
【0129】
実施例8:他のCHO細胞株におけるIL−17Fのトランスフェクション
CHOK1SV細胞に対してみられる効果がこの細胞株に特有のものでないかどうかを明らかにするために、最初の実験をCHO−S細胞株(Invitrogen)を用いて再現した。ヒトIL−17F及びA6VL構築体をCHO−S細胞中に安定的又は準安定的にトランスフェクションした。安定的トランスフェクションについては、トランスフェクションの22、28、35日及び42日後に陽性ウェルの数を評価した。準安定的プールについては1、2、3、4及び6週後にFACS分析によりGFPの発現を分析した。準安定的プール内の細胞の全体的生存率をトリパンブルー染色後自動血球計数器により測定した。図7Aから、陽性ウェルの数は、A6VLを用いてトランスフェクションした細胞の場合に比し、IL−17Fを用いてトランスフェクションした細胞では5倍増加したことが分かる。準安定的トランスフェクションに関しては、図7Bから、3、4及び6週後の平均GFP発現レベルはA6VLを用いてトランスフェクションした細胞の場合に比し、IL−17Fを用いてトランスフェクションした細胞では4倍増加した。さらに、IL−17Fを用いてトランスフェクションした細胞の生存率はA6VLを用いてトランスフェクションした細胞に比し、4週後に有意に増加した。従って、IL−17FはCHO−S及びCHOK1SV細胞に対して同様な効果を示した。
【0130】
実施例9:ピューロマイシン選択を利用した発現ベクター系を用いたIL−17F IRES GFP変異体によるCHO細胞の安定的トランスフェクション
ヒト・ランテス、ラットIL−17A、ヒトIL−17A及びヒトIL−17FをEF1−アルファプロモーターの制御下に発現ベクター中にサブクローニングした。GFPは第2のシストロンとして同じEF1−アルファプロモーターの制御下にヒト・ランテス、ラットIL−17A、ヒトIL−17A及びヒトIL−17F配列の下流にサブクローニングした。これら2種のシストロンをウイルスの内部リボソーム侵入部位(IRES)によって隔てることにより上記第2(GFP)のシストロンの翻訳を可能にした。このベクターにはピューロマイシン耐性遺伝子も含有させた。CHO細胞又はPEAK細胞を6穴培養皿中に4.0×10個/ウェルの密度において37℃で一夜プレートした。翌日、Mirius bio社製TransIT−LT1トランスフェクション試薬をメーカーのガイドラインに従って用い、ウェル当たり2μgのDNAをトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後に、DNA/Mirius複合体の品質管理としてPEAK細胞のGFP発現をフローサイトメトリー(FACS)によって分析した(図8A)。この実験において各構築体のGFP発現を確認した。
【0131】
並行して、CHOトランスフェクトした細胞をピューロマイシン(10μg/mL)選択下の静置培養状態に置いた。必要に応じて新鮮培地を補充し、目視検査によりクローンの出現をモニターした。この実験期間中を通じて、試験した各種発現ベクターでクローンの出現率又はクローンの増殖に差は認められなかった。トランスフェクションの3週後に、クローンをプールし、図8Bに示したように、細胞をフローサイトメトリー(FACS)によって分析した。IL−17(ヒト又はラット、A又はFイソ型)の発現はGFPの発現レベルに著しい影響を及ぼしている。
【0132】
実施例10:15C1 MAb二重遺伝子発現ベクター
15C1発現ベクターは、ヒトIgG1及びヒト・カッパの定常領域カセットとそれぞれ融合した抗体15C1の重鎖及び軽鎖可変領域を含む「二重遺伝子」ベクターである。各抗体鎖の発現は強力なhCMVプロモーターによって駆動される。また、15C1ベクターはSV40プロモーター制御下のグルタミン合成酵素(GS)遺伝子をも含有する。GSはグルタミン酸、アンモニア及びATPからの必須アミノ酸グルタミンの合成を触媒する。従って、内因性GS活性を示す細胞株、例えばCHOK1SVに対してグルタミンの非存在下、ひいては特異的GS阻害剤メチオニンスルホキシミン(MSX)の存在下に選択制限を適用する。
【0133】
マウス15C1抗体の可変軽鎖配列は以下の核酸配列、NCBIアクセッション番号CS645163及び配列番号22によってコードされている:
【0134】
【化22】

マウス15C1抗体の可変重鎖配列は以下の核酸配列、NCBIアクセッション番号CS645158及び配列番号23によってコードされている:
【0135】
【化23】

実施例11:15C1二重遺伝子発現ベクター及びヒトIL−17F発現ベクターの共トランスフェクション(cotransfection)
IgG発現レベルに対するIL−17Fの効果を判定するために、15C1 MAb二重遺伝子発現ベクターとヒトIL−17F発現ベクターとの共トランスフェクションを行った。
【0136】
ヒトIL−17F及び15C1構築体は電気穿孔法によって共トランスフェクションした。細胞は、安定的クローンを得るために96−穴プレート中でプレートするか、T75フラスコ中に細胞のポリクローナルプールとして保持した。参照基準として、15C1 MAb二重遺伝子発現ベクターを単独でもトランスフェクションし、得られたトランスフェクトした細胞を同様に処理した。
【0137】
96−穴プレートにおいてプレートしたトランスフェクションCHO細胞に関して、単一の増殖コロニーの存在をトランスフェクションの22及び28日後に目でみることができるウェルの数を評価した。各トランスフェクション条件について、同様なサイズ及び健全な出現を示した20個のコロニーの上清を採取し、ヒトIgG/Kの濃度を酵素免疫測定法(ELISA)により測定した。トランスフェクションプールに関しても、ヒトIgG/Kの濃度をトランスフェクションの7、14、21及び28日後にELISAにより測定した。簡単に言うと、上記上清中に存在する全ヒトIgG/Kの捕獲のためのヤギ抗ヒトIgG Fcγ特異的ポリクローナル抗体(Jackson immunoresearch、109−005−098)及び検出のためのHRP結合ヤギ抗ヒトκ軽鎖ポリクローナル抗体(Sigma、A−7164)を用いたELISAによって15C1抗体の濃度を評価した。
【0138】
図9Aは、トランスフェクション後1、2、3又は4週のトランスフェクションプールからの上清における15C1ヒトIgG1/カッパ濃度を示したものである。このデータから、トランスフェクション後4週では15C1 MAbの濃度は15C1単独のトランスフェクションの場合に比し、上記共トランスフェクション状態では2倍高いことが分かる。従って、このデータから、IL−17Fは15C1産生に対して明白な効果を示したことが分かる。
【0139】
図9Bは、共トランスフェクション(15C1 MAb及びヒトIL−17F)又は単一トランスフェクション(15C1 MAb)後22及び28日の96−穴プレート当たりの1個以上のコロニーを含むウェルの数を示したものである このデータから、トランスフェクション後22及び28日において、共トランスフェクション状態で得られたクローンの数は単一トランスフェクション状態の場合に比し、それぞれ5及び10倍増加したことが分かる。
【0140】
図9Cは、各20個の個々のクローンの上清における15C1 MAbの発現レベルを示したものである。このデータから、高産生クローン(ELISAにおける領域信号の範囲外のもの)の数は15C1単独状態の場合よりも共トランスフェクション状態の場合で2.5倍高くなることが分かる。さらに、20クローン全ての平均抗体価は15C1単独の場合に比し、共トランスフェクション状態で2倍高い。共トランスフェクション状態では、20個のクローンの全てが、蛍光顕微鏡による評価においてバラツキはあるが強いレベルでGFPを発現した。GFP染色の存在は全てのクローンによるヒトIL−17Fの強力な発現の正確な指標である。何故なら、IL−17FベクターはIL−17Fの下流にIRES−GFP配列を含み、二シストロン性発現を行うからである(実施例2参照)。
【0141】
実施例12:IL−17Fの存在は細胞のよりしっかりとしたサブクローニングをもたらす。
【0142】
図11A乃至12に示したように、IL−17Fの存在によって細胞のサブクローニングのプロセスはよりしっかりしたものになる。図11A乃至11Cでは、2種のCHOK1SV細胞株、即ち、IL−17F−IRES−GFPを発現する8E11及び無関連のmAbを発現するC6C5を6−穴プレートの半固形培地(OptiCHO及び馴化CHO上清を含む酢酸セルロース)中でプレートした。プレート後3日に直径>0.2umのクローンを採取し、単離したクローンをClonePixFLにより分析し、定量した。
【0143】
実施例13. IL−17Fの存在はトランスフェクトした細胞に対する選択圧の増大とそれによる導入遺伝子の生産能の上昇を可能にする。
【0144】
図12では、細胞をIL−17F IRES GFP発現カセットを用いてトランスフェクションし、96−穴プレートにおいて図に示したように50μM又は100μMのMSX選択圧下にプレートした。クローンがトランスフェクションの3乃至5週後に出現したので、次いでFACS分析によりGFP発現を分析した。
【0145】
実施例14. DHFR選択を利用した発現系を用いた、IL−17F IRES GFPによるCHODG44の安定的トランスフェクション
ヒトIL−17F遺伝子又は適切でないタンパク質及びGFP遺伝子からなる2種のシストロンをhCMVプロモーターの制御下に発現ベクター中にサブクローニングした。これら2種のシストロンはウイルスの内部リボソーム侵入部位(IRES)によって隔てた。上記ベクター(Invitrogen pOptiVEC)には上記クローニング部位の下流にIRES配列とこれの後にDHFR遺伝子をも含有させた。従って、この構築により三シストロン性mRNAからのIL−17F、GFP及び選択マーカ(DHFR)の発現が可能となる(図13)。
【0146】
DHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)は、DNA合成に必須である5,6−ジヒドロ葉酸塩の5,6,7,8−テトラヒドロ葉酸塩への還元を触媒する。CHODG44細胞株はDHFR活性を欠くため、プリン前駆体ヒポキサンチン及びチミジン(HT)を補充した培地で培養しなければならない。メトトレキサート(MTX)はDHFR活性を阻害する葉酸拮抗剤である。選択条件としてはHTを含有せず、MTXを補充した培地を使用した。CHODG44細胞は、HTを含む培地(00124/00125)で標準的な電気穿孔法プロトコルを用いてトランスフェクションした。トランスフェクションの48時間後に、培養培地を、HTを含有せず、500又は1000nMのMTXを含有する培地で置換した。トランスフェクトした細胞は4倍希釈して96−穴プレートにプレートした。クローン出現率は目視観察により評価し、単離クローンのGFP発現をFACS分析により評価した。
【0147】
図14は、トランスフェクション後3、4及び5週目における96−穴プレート当たり1個以上のコロニーを含むウェルの数を示したものである。このデータから、IL−17Fは対照に比し、1個以上のトランスフェクタントコロニーを呈示するウェルの数を5倍増加させることが分かる。また、IL−17Fはより高い(2倍の)レベルの選択剤での選択を可能にすることも分かる。
【0148】
図15は、トランスフェクション後5週目における個々のクローンのGFP発現レベルを示したものである。このデータから、500nMのMTXでは高度及び極めて高度のGFP産生クローンの割合が高くなることが分かる。選択圧を(500nMから1,000nMのMTXへ)上げることで、IL−17Fは低度のGFP産生クローンの割合の低下を可能にし、極めて高度のGFP産生クローンの割合を高める。
【0149】
実施例15:CHO細胞におけるIL−17F及び完全なIgGの同時発現
同時二シストロン性発現カセットを含有するプラスミドを作製した。第1の発現カセットは、IgG軽鎖配列に続いてIRESとこれの後にGFP遺伝子を有する二重シストロン性遺伝子で構成した。第2の発現カセットは、IgG重鎖配列に続いてIRESとこれの後にヒトIL−17F遺伝子又は適切でないタンパク質遺伝子で構成した。こうした構築により、単一プラスミドで組立IgGタンパク質、GFP及びヒトIL−17F又は無関連タンパク質の産生が可能となる。これらの「二重二重(double double)遺伝子」ベクターを標準的な電気穿孔法プロトコルを用いてCHOK1SV中にトランスフェクションした。
【0150】
図16は、トランスフェクション後3、4及び5週目における96−穴プレート当たりの1個以上のコロニーを含むウェルの数を示したものである。このデータから、IL−17Fはクローンの出現を高めることが分かる。
【0151】
図17は、トランスフェクション後4週目における個々のクローンのIgGの平均レベルを示したものである。このデータから、完全なIgGタンパク質と共にヒトIL−17Fを発現させると、高度IgG産生クローンの選択が強化されることが分かる。
【0152】
実施例16:ClonePixFL技術を用いたクローン選択に対するIL−17Fの効果
種々のレベル(おおよそのIL−17F発現レベルに対応して適宜「高」、「中」及び「低」と呼ぶ)のヒトIL−17Fタンパク質を安定的に発現するCHO細胞株を選択した。(馴化培地を含むか、含まない)半固形培地を含有する6−穴プレートに種々の濃度(50、500及び5,000個/mL)の細胞を接種した。細胞は9日間培養した。単一増殖コロニーの数は、ClonePixFLイメージングステーションを用いた白色光学顕微鏡により5及び9日目に評価した。
【0153】
3濃度のIL−17F発現CHO細胞を接種した3ウェルからの増殖コロニーの総数を測定した。このデータから、IL−17Fは馴化培地ではなく補充培地において単一増殖クローンの数を増加させることが分かった。クローン数に対するIL−17Fの効果は用量依存性であった。
他の実施態様
本発明についてその詳細な記述と併せて記載したが、前述の記載は例示することを意図したものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、その範囲は添付した「特許請求の範囲」の範囲によって決定される。他の態様、利点及び変形は添付の「特許請求の範囲」内にある。
【0154】
本明細書において参照された特許及び科学文献は、当業者にとって入手可能な知識を確立する。本明細書において引用された全ての米国特許及び公開又は未公開の米国特許出願は、参照により本明細書に組み込まれている。本明細書において引用された公開された外国の特許及び特許出願は全て、参照により本明細書に組み込まれている。本明細書において引用されたアクセッション番号で示されたジェンバンク及びNCBI提出物は参照により本明細書に組み込まれている。本明細書において引用された他の全ての公開された参考文献、文書、原稿、及び科学文献は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0155】
本発明を、その好ましい実施態様を参照して詳細に図示して説明してきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱することなく、形態及び細部のさまざまな変更が可能なことは理解されるであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸での細胞の改変の特性を向上させるためにIL−17を使用する方法であって、該細胞を該IL−17と接触させる工程を含む、方法。
【請求項2】
前記IL−17への曝露が、IL−17に接触させない細胞と比べて、前記核酸の増強された発現を引き起こす請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記IL−17が前記改変前、該改変中、該改変後及びこれらの組合せから選択される時期に細胞と接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記IL−17が細胞と連続的に接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記IL−17が培養培地中に存在することによって細胞と接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
IL−17がIL−17を発現するように形質転換された細胞によって産生される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記核酸がIL−17サイトカインをコードしている1種以上の配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記IL−17がIL−17A、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17E又はIL−17Fである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記IL−17がIL−17Fである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞が選択圧下にある、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記改変が準安定的又は安定的である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記IL−17が前記核酸と同時又は逐次的に産生される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記IL−17が誘導プロモーターの制御下にある、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞又は細胞株(単数又は複数)が哺乳動物細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞又は細胞株(単数又は複数)がヒト細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞又は細胞株(単数又は複数)が培養物中の初代細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞又は細胞株(単数又は複数)が培養物中のハイブリドーマ細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞又は細胞株(単数又は複数)がCHO細胞、CHO細胞株であるか、又はCHO細胞もしくはCHO細胞株に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記改変の増強した特性が、増大した効率、向上した選択率、増大した細胞増殖、選択した細胞の増大した出現速度、選択した細胞株の増大した数、選択した細胞の増強した倍加時間、増大した細胞生存度、増大した細胞株の安定性、培地枯渇に対する低下した感受性及びこれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
1種以上の外因性遺伝子の増強した発現が、モノクローナル抗体(MAb)の増大した比産生速度、上昇したMAb力価、向上した産物の品質、IL−17発現のMAb力価との相関、トランスフェクション抵抗性細胞株の一過性改変後の増大した発現、又は増大した導入遺伝子生産能、ゲノム配列への外因性DNAの増大した組込み、外因性DNAの増大した保持、DNAの増大した取り込み、もしくは外因性DNAの増大した発現である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
細胞改変の効果を向上させる方法であって、
(a)培地中で1以上の細胞又は細胞株を培養する工程、
(b)1以上の細胞又は細胞株を核酸と接触させる工程、
(c)改変細胞を培地中で培養して該核酸によりコードされているポリペプチドを発現させる工程であって、細胞は、該接触工程の前又は接触工程中にIL−17に曝露される、工程
を含み、
トランスフェクションの向上した特性を示す、1種以上のポリペプチドを発現する1以上の細胞株が生成される、方法。
【請求項22】
前記IL−17への曝露が、IL−17に接触させない細胞と比べて、前記核酸の増強された発現を引き起こす、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記IL−17が前記改変前、該改変中、該改変後及びこれらの組合せから選択される時期に細胞と接触する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記IL−17が細胞と連続的に接触する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記IL−17が前記培養培地中に存在することによって細胞と接触する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
IL−17がIL−17を発現するように形質転換された細胞によって産生される、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記核酸がIL−17サイトカインをコードしている1種以上の配列を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記IL−17がIL−17A、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17E又はIL−17Fである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記IL−17がIL−17Fである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞が選択圧下にある、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記改変が準安定的又は安定的である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記改変が一過性である、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記IL−17が該核酸と同時又は逐次的に産生される、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞又は細胞株(単数又は複数)が哺乳動物細胞を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞又は細胞株(単数又は複数)がヒト細胞を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞又は細胞株(単数又は複数)が培養物中の初代細胞を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞又は細胞株(単数又は複数)が培養物中のハイブリドーマ細胞を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞又は細胞株(単数又は複数)がCHO細胞、CHO細胞株であるか、又はCHO細胞もしくはCHO細胞株に由来する、請求項21に記載の方法。
【請求項39】
前記改変の増強した特性が、増大した効率、向上した選択率、増大した細胞増殖、選択した細胞の増大した出現速度、選択した細胞株の増大した数、選択した細胞の増強した倍加時間、増大した細胞生存度、増大した細胞株の安定性、培地枯渇に対する低下した感受性及びこれらの組合せから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項40】
1種以上の外因性遺伝子の増強した発現が、モノクローナル抗体(MAb)の増大した比産生速度、上昇したMAb力価、向上した産物の品質、IL−17発現のMAb力価との相関、トランスフェクション抵抗性細胞株の一過性改変後の増大した発現、又は増大した導入遺伝子生産能、ゲノム配列への外因性DNAの増大した組込み、外因性DNAの増大した保持、DNAの増大した取り込み、もしくは外因性DNAの増大した発現である、請求項21に記載の方法。
【請求項41】
サブクローニング又は単一細胞クローニングの特性を向上させる方法であって、
(a)培地中で1以上のクローン化細胞又は細胞株を培養する工程、
(b)該1以上のクローン化細胞又は細胞株をIL−17組成物と接触させる工程
を含み、
該1以上のクローン化細胞又は細胞株が該IL−17組成物との接触後に向上した特性を示す、方法。
【請求項42】
前記IL−17組成物が細胞と連続的に接触する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記IL−17が前記培養培地中に存在することによって細胞と接触する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
IL−17がIL−17を発現するように形質転換された細胞によって産生される、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記IL−17がIL−17A、IL−17B、IL−17C、IL−17D、IL−17E及びIL−17Fから選択されるIL−17サイトカインを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記IL−17組成物がIL−17Fを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞が選択圧下にある、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記クローン化細胞又は細胞株が哺乳動物細胞を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記クローン化細胞又は細胞株がヒト細胞を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
前記クローン化細胞又は細胞株が培養物中の初代細胞を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
前記クローン化細胞又は細胞株が培養物中のハイブリドーマ細胞を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞又は細胞株がCHO細胞、CHO細胞株であるか、又はCHO細胞もしくはCHO細胞株に由来する、請求項41に記載の方法。
【請求項53】
前記向上した特性が、増大した効率、向上した選択率、増大した細胞増殖、選択した細胞の増大した出現速度、選択した細胞株の増大した数、選択した細胞の増強した倍加時間、増大した細胞生存度、増大した細胞株の安定性、培地枯渇に対する低下した感受性及びこれらの組合せから選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項54】
準安定的トランスフェクションの選択率を向上させる方法であって、
(a)無血清懸濁物適応チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株をグルタミン枯渇培地で培養する工程、
(b)該CHO細胞株をヒトIL−17F及びグルタミン合成酵素遺伝子をコードしている配列を含むDNA組成物と混合する工程、
(c)1種以上のDNA組成物を電気穿孔法により少なくとも1の細胞株の形質膜を横切って輸送させる工程、
(d)MSXを該培地に添加することによる選択圧下の該グルタミン枯渇培地でトランスフェクトした細胞を培養する工程、並びに
(e)トランスフェクトした細胞に選択圧下トランスフェクトされた該DNA組成物によりコードされているポリペプチドを発現させる工程を含み、
トランスフェクションの向上した特性を示す、1種以上のポリペプチドを発現する細胞株の混合物が生成される、方法。
【請求項55】
前記トランスフェクションが安定的であり、かつ、トランスフェクションの向上した特性を示す、1種以上のポリペプチドを発現する単離された細胞株が生成される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
準安定的トランスフェクションの選択した細胞の数を増大させる、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記トランスフェクションが安定的であり、かつ、トランスフェクションの向上した特性を示す、1種以上のポリペプチドを発現する単離された細胞株が生成される、請求項56に記載の方法。

【図8】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2012−504953(P2012−504953A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530589(P2011−530589)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【国際出願番号】PCT/IB2009/007235
【国際公開番号】WO2010/041145
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(506198562)
【Fターム(参考)】