説明

IL8阻害剤

【課題】IL8レセプター結合に対する阻害剤(抗体を包含する)であって、IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインと相互作用し、そしてレセプター結合についてIL8および他の関連する天然のリガンドと競合する、阻害剤を提供すること。
【解決手段】IL8レセプター1のアミノ末端細胞外ドメインと相互作用し得、かつ該レセプターへの結合についてIL8と競合し得る抗体またはそのフラグメントを含む、IL8レセプター1結合に対する阻害剤であって、
ここで、該抗体は、アミノ酸配列M-S-N-I-T-D-P-Q-M-W-D-F-D-D-Lを含むポリペプチドからなる免疫原で哺乳動物を免疫することによって獲得され得、
ここで、該免疫原が、アミノ酸配列


を有さない、
阻害剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般にサイトカイン阻害剤に関する。さらに特定的には、本発明は、IL8レセプター結合に対する阻害剤(抗体を包含する)に関するが、この阻害剤は、IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインと相互作用し、そしてレセプター結合についてIL8および他の関連する天然のリガンドと競合する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
サイトカインは、白血球により生産されるホルモン様仲介物質の群である。この因子は、内因性の生物学的シグナルとして働くが、このシグナルは、マクロファージ、リンパ球、および他の細胞型を含む、局所ならびに全身の両宿主防御機構を増幅するように抗原と協同して作用する。代表的なサイトカインは、種々のインターロイキン、インターフェロン、GROα、GROβおよびGROγ、好中球活性化ペプチド-2(NAP-2)、およびENA-78を包
含する。サイトカインは、免疫応答を刺激するこれらの分子の能力に基づいて、広範な障害を治療および予防するのに使用されている。
【0003】
インターロイキン8(IL8)は本来、ヒトマクロファージ由来のサイトカインである(Suzuki,K.ら(1989) J.Exp.Med.169:1895-1901;SchRodeR,J.M.ら(1987)J.Immunol.139:3474-3483;SchRodeR,J.M.ら(1988)J.Immunol.140:3534-3540;SchRodeR,J.M.ら(1989)J.Exp.Med.170:847-861;LaRson,C.G.ら(1989)Science243:1464-1466)。この因子はまた、多形核(PMN)走化性因子、単球由来好中球活性化ペプチド(MONAP)、単球由来好中球走化性因子(MDNCF)、Tリンパ球走化性因子(TCF)、リンパ球由来好中球活性化ペプチド(LYNAP)、および好中球活性化ペプチド-1(NAP-1)と呼ばれた。
【0004】
IL8分子は、リポ多糖類およびミリスチン酸ホルボール・エステル、植物性血球凝集素、コンカナバリンA、または他の分裂促進性の調製物およびサイトカインのような因子(
例えば、インターロイキン1(IL1)および腫瘍壊死因子(TNF))によって刺激されたとき、広範な組織および細胞(単核貧食細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、上皮細胞、および肺胞マクロファージを包含する)により生産される。ヒトIL8をコードする遺伝子はクローン化されている。Matsushima,K.らJ.Exp.Med.(1988)167:1883-1893;Mukaida,N.らJ.Immunol.(1989)143:1366-1371。この遺伝子は、99残基のアミノ酸を有する前駆体タンパク質をコードするが、このタンパク質は、約8000ダルトンの分子量を有する種々の長さの分泌型IL8ポリペプチド(例えば、69、72、または77アミノ酸残基を含有するポリペプチド)にタンパク分解的に開裂される。
【0005】
ヒトIL8は実験動物において、好中球に対する化学誘引物質として作用し、そして全身注入すると顆粒球増加症を、局所注入すると皮膚反応を誘発する。Bazzoni,F.ら(1991)173:771-774;VanDamme,J.ら(1988)J.Exp.Med.167:1364-1376;RibeiRo,R.A.ら(1991)Immunology73:472-477。この分子はまた、スーパーオキシド・アニオンの遊離を活性化し、
そして好中球の主要顆粒成分(骨髄ペルオキシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、およびエ
ラスターゼを包含する)の放出を誘起する。IL8は、そのレセプターに結合し、そしてシグナル変換を誘発することにより、これらの活性を仲介し、反応のカスケードは最終的に生物学的応答に至る。
2種類のヒトIL8レセプターの配列(本明細書では「IL8R1」および「IL8R2」と呼ぶ)が報告されている。例えば、国際公開第WO93/06229号(1993年4月1日公開)およびHolmesらScience(1991)253:1278-1280を参照。これらのレセプターは、IL8に対して類似の
親和性を有し、そして7本のヘリックスの膜に及ぶロドプシンスーパーファミリーの一員である。これらレセプター分子は、3本の細胞内ループおよび3本の細胞外ループにより連結された7個の膜貫通領域を含有し、そして細胞外のアミノ末端尾部および細胞内のカルボキシ末端尾部を有する。他の天然に存在するサイトカインは、IL8とレセプターを共有することが知られている。例えば、GROα、GROβ、GROγ、NAP-2、およびENA-78はす
べて、ヒト好中球のIL8レセプターに結合するが、これは、Baggioliniら,FEBSLett.(1992)307:97-101;Walzら,J.Exp.Med.(1991)174:1355;MoseRら,J.Biol.Chem.(1991)266:10666;GeiseRら,J.Biol.Chem.(1993)268:15419-15424に記載されている通りである。
【0006】
Gayleら,J.Biol.Chem.(1993)268:7283-7289およびLaRosaら,J.Biol.Chem.(1992)267:25402-25406は、天然のIL8R2アゴニスト、GROα/MGSAおよびNAP-2の結合に対する重要な決定基について述べているが、この決定基はアミノ末端細胞外ドメインおよび第1番目の膜貫通領域部分を含有するレセプター領域中に存在する。
【0007】
IL8レセプターの配列に基づくペプチドは、IL8結合におけるIL8レセプターの種々の領域の役割を決定しようとして構築された。Gayleら,J.Biol.Chem.(1993)268:7283-7289は、IL8レセプターのアミノ末端配列に基づいたペプチドについて述べておりそして、国際公開第WO92/04372号(1992年3月19日公開)は、レセプターのカルボキシ末端に基づい
てペプチドおよびそれに対する抗体を記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
IL8レセプター結合に対する阻害剤(抗体を包含する)であって、IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインと相互作用し、そしてレセプター結合についてIL8および他の関連する天然のリガンドと競合する、阻害剤を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0009】
項1. IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインと相互作用し得、そして該レセプタ
ーについてIL8と競合し得る分子を包含する、IL8レセプター結合に対する阻害剤。
項2. 前記IL8レセプターがIL8レセプター1である、項目1に記載の阻害剤。
項3. 前記IL8レセプターがIL8レセプター2である、項目1に記載の阻害剤。
項4. 阻害剤前記阻害剤が抗体である、項目1に記載の阻害剤。
項5. 前記抗体が、免疫原で哺乳動物を免疫することによって獲得され、そして該免疫
原が、前記IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメイン中に見出されるアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、項目4に記載の阻害剤。
項6. 前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列M-S-N-I-T-D-P-Q-M-W-D-F-D-D-Lと実質的に同じアミノ酸配列を含む、項目5に記載の阻害剤。
項7. 前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列M-E-S-D-S-F-E-D-F-W-K-G-E-D-Lと実質的に同じアミノ酸配列を含む、項目5に記載の阻害剤。
項8. 前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列F-E-D-F-W-K-G-E-D-L-S-N-Y-S-Yと実質的に同じアミノ酸配列を含む、項目5に記載の阻害剤。
項9. 前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列S-S-T-L-P-P-F-L-L-D-A-A-P-Cと実質的に同じアミノ酸配列を含む、項目5に記載の阻害剤。
項10. 前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列F-L-L-D-A-A-P-C-E-P-E-S-L-E-Iと実質的に同じアミノ酸配列を含む、項目5に記載の阻害剤。
項11. 項目5に記載の阻害剤であって、前記免疫原が、少なくとも4つのポリペプチ
ドを含み、ここで、
(i)第1のポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列M-E-S-D-S-F-E-D-F-W-K-G-E-D-Lと実質的に同じアミノ酸配列を含む;
(II)第2のポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列F-E-D-F-W-K-G-E-D-L-S-N-Y-S
-Yと実質的に同じアミノ酸配列を含む;
(IIi)第3のポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列S-S-T-L-P-P-F-L-L-D-A-A-P-Cと実質的に同じアミノ酸配列を含む;そして
(iv)第4のポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列F-L-L-D-A-A-P-C-E-P-E-S-L-E-Iと実質的に同じアミノ酸配列を含む、阻害剤。
項12. IL8のそのレセプターへの結合を阻害する方法であって、
(a)IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインに結合し得、そして該レセプターについてIL8と競合し得る、IL8レセプター結合に対する阻害剤を提供する工程;および
(b)有効阻害量の該阻害剤と、該レセプターとを接触させる工程
を包含する、方法。
項13. 前記レセプターがIL8レセプター1である、項目12に記載の方法。
項14. 前記レセプターがIL8レセプター2である、項目12に記載の方法。
項15. 前記阻害剤が抗体である、項目12に記載の方法。
項16. 前記抗体が、免疫原で哺乳動物を免疫することによって獲得され、そして該免
疫原が、IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメイン中に見出されるアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、項目15に記載の方法。
項17. 前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列M-S-N-I-T-D-P-Q-M-W-D-F-D-D-Lと実本質的に同じアミノ酸配列を含む、項目16に記載の方法。
項18. 前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列M-E-S-D-S-F-E-D-F-W-K-G-E-D-Lと実質的に同じアミノ酸配列を含む、項目16に記載の方法。
項19. 前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列F-E-D-F-W-K-G-E-D-L-S-N-Y-S-Yと実質的に同じアミノ酸配列を含む、項目16に記載の方法。
項20. 前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列S-S-T-L-P-P-F-L-L-D-A-A-P-Cと実質的に同じアミノ酸配列を含む、項目16に記載の方法。
項21. 前記ポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列F-L-L-D-A-A-P-C-E-P-E-S-L-E-Iと実質的に同じアミノ酸配列を含む、項目16に記載の方法。
項22. 項目16に記載の方法であって、前記免疫原が、少なくとも4つのポリペプチ
ドを含み、ここで、
(i)第1のポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列M-E-S-D-S-F-E-D-F-W-K-G-E-D-Lと実質的に同じアミノ酸配列を含む;
(II)第2のポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列F-E-D-F-W-K-G-E-D-L-S-N-Y-S-Yと実質的に同じアミノ酸配列を含む;
(IIi)第3のポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列S-S-T-L-P-P-F-L-L-D-A-A-P-Cと実質的に同じアミノ酸配列を含む;そして
(iv)第4のポリペプチドのアミノ酸配列が、アミノ酸配列F-L-L-D-A-A-P-C-E-P-E-S-L-E-Iと実質的に同じアミノ酸配列を含む、方法。
項23. IL8レセプター仲介生物学的応答を調節する方法であって、
(a)IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインに結合し得、そして該レセプターについてIL8と競合し得る、IL8レセプター結合に対する阻害剤を提供する工程;および
(b)有効調節量の該阻害剤と、IL8レセプターを産生する細胞とを接触させる工程
を包含する、方法。
項24. IL8レセプター仲介生物学的応答を調節するための薬学的組成物であって、項
目1に記載のIL8レセプター結合に対する阻害剤を、薬学的に許容される触媒と併用して含む、薬学的組成物。
項25. IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインと相互作用し得、そして該レセプ
ターについてIL8、GROα、GROβ、GROγ、NAP-2、およびENA-78からなる群から選択さ
れる分子と競合し得る分子を含む、IL8レセプター結合に対する阻害剤。
発明の要旨
本発明は、IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインとの相互作用を介してそのレセプターへのIL8結合を阻害する物質を提供する。この阻害剤は、IL8レセプター仲介生物
学的活性の有用なモジュレーターである。
【0010】
従って、一つの実施態様において、本発明は、IL8レセプター結合に対する阻害剤に関するが、この阻害剤は、下記に定義されるように、IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインと相互作用し得、そしてレセプターについてIL8と競合し得る分子を含む。
【0011】
好ましい実施態様において、阻害剤は、IL8R1あるいはIL8R2のアミノ末端細胞外ドメイン由来のポリペプチドに対して生じた抗体であり、このポリペプチドは、アミノ酸配列M-S-N-I-T-D-P-Q-M-W-D-F-D-D-L、M-E-S-D-S-F-E-D-F-W-K-G-E-D-L、F-E-D-F-W-K-G-E-D-L-S-N-Y-S-Y、S-S-T-L-P-P-F-L-L-D-A-A-P-C、あるいはF-L-L-D-A-A-P-C-E-P-E-S-L-E-Iのいずれかの一つと実質的に同一のアミノ酸配列を含む。
【0012】
もう一つの好ましい実施態様において、本発明は、IL8R2のアミノ末端細胞外ドメイ
ン由来の少なくとも4種類のポリペプチドに対して生じた抗体の混合 物を包含し、ここ
で、
(i)第1番目のポリペプチドのアミノ酸配列は、アミノ酸配列M-E-S-D-S-F-E-D-F-W-K-G-E-D-L と実質的に同一のアミノ酸配列を含む;
(II)第2番目のポリペプチドのアミノ酸配列は、アミノ酸配列F-E-D-F-W-K-G-E-D-L-S-N-Y-S-Y と実質的に同一のアミノ酸配列を含む;
(IIi)第3番目のポリペプチドのアミノ酸配列は、アミノ酸配列S-S-T-L-P-P-F-L-L-D-A-A-P-C と実質的に同一のアミノ酸配列を含む;そして
(iv)第4番目のポリペプチドのアミノ酸配列は、アミノ酸配列F-L-L-D-A-A-P-C-E-P-E-S-L-E-I と実質的に同一のアミノ酸配列を含む。
【0013】
もう一つの好ましい実施態様において、本発明は、IL8レセプターへのIL8の結合を阻害する方法に関するが、この方法は次の工程を包含する:
(a)IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインに結合し得、そしてまたレセプターについてIL8と競合し得る、IL8レセプター結合に対する阻害剤を提供する工程;および
(b)有効阻害量の阻害剤とIL8レセプターとを接触させる工程。
【0014】
さらにもう一つの好ましい実施態様において、本発明は、IL8レセプター仲介生物学的応答を調節する方法に関するが、この方法は次の工程を包含する:
(a)IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインに結合し得、そしてレセプターについてIL8と競合し得る、IL8レセプター結合に対する阻害剤を提供する工程;および
(b)有効調節量の阻害剤とIL8レセプターを生産する細胞とを接触させる工程。
【0015】
もう一つの好ましい実施態様において、本発明は、IL8レセプター結合に対する阻害剤に関するが、この阻害剤は、IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインと相互作用し得、そしてレセプターについてIL8、GROα、GROβ、GROγ、NAP-2、およびENA-78からな
る群から選択される分子と競合し得る分子を含む。
【0016】
本発明のこれらおよび他の実施態様は、本明細書中の開示を考慮すると当業者に容易に理解される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、IL8レセプター結合に対する阻害剤(抗体を包含する)であって、IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインと相互作用し、そしてレセプター結合についてIL8および他の関連する天然のリガンドと競合する、阻害剤を提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明の実施は、別に指示されない限り、当該分野の技術範囲内のウイルス学、微生物学、分子生物学、および組換えDNA技術の従来法を使用する。これらの技術は、文献に十
分に説明されている。例えば、SambRookら「MoleculaR Cloning:ALaboRatoRy Manual」(第2版,1989);Maniatisら「MoleculaRCloning:A LaboRatoRy Manual」(1982);
「DNACloning:A PRactical AppRoach」,IおよびII巻(D.GloveR編);「Oligonucleotide Synthesis」(N.Gait編,1984);「NucleicAcidHybRidization」(B.HamesおよびS.Higgins編,1985);「TRanscRiption and TRanslation」(B.HamesおよびS.Higgins編,1984);「AnimalCellCultuRe」(R.FReshney編,1986);PeRbal,「A PRactical Guide to MoleculaR Cloning」(1984)を参照。
【0019】
本明細書中に記載のすべての刊行物、特許、および特許出願は、上記または下記のいずれにせよ、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0020】
本明細書および、添付の請求の範囲において用いられるとき、内容が他のことを明らかに指示しない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は複数の指示内容を含む。
【0021】

A.定義
本発明を記載するに際して、次の用語が用いられ、そして以下のように定義されることが意図される。
【0022】
「IL8レセプター結合に対する阻害剤」は、直接的または間接的のいずれかでIL8レセプターと相互作用し、そしてこのレセプターへの結合についてIL8または、GROα,β,γ,NAP-2,およびENA-78のような他の天然のリガンドと競合する物質(天然IL8または、GROα,β,γ,NAP-2,およびENA-78のような他の天然に存在する内因性の好中球IL8レセプターリガンド以外)である。IL8レセプター結合の相互作用は、阻害剤とIL8レセプターとの間の共有および非共有会合の両者を包含する。それゆえに、阻害剤はIL8レセプターをアミノ末端細胞外ドメインのIL8結合部位で結合し、そしてIL8結合を遮断し得る。あるいは、阻害剤は結合部位以外の部位でIL8レセプターと相互作用し、そしてIL8結合に影響を及ぼすレセプター分子の高次構造変化を引き起こし得る。同様に、阻害剤は、IL8とレセプター結合部位かまたは分子の他の部分のいずれかで直接相互作用し、そしてIL8のレセプターへの結合を阻害し得る。阻害剤、レセプター、および/またはIL8間の他の可能な相互作用は、当業者に容易に理解され、そしてまたこの定義により包含される。
【0023】
IL8レセプターに結合し、そしてレセプター結合についてIL8と競合する分子の能力は、従来のレセプター結合アッセイにより決定され得る。例えば、レセプターに結合する阻害剤の能力は、阻害剤を標識し、そして好中球のようなレセプター生産細胞への結合を実証することによって、直接評価され得る。阻害剤の結合はまた以下によっても実証され得る。その実証は、化学的架橋のような方法、実施例中に記載されるようなレセプター保持細胞に結合した阻害剤の存在の抗阻害剤抗体による認識、阻害剤/レセプター複合体のNMRまたはX線結晶構造解析、および/あるいは当業者によって通常知られている既知の阻害剤の使用についていくつかの他の適当な方法により行なわれる。レセプター結合についてIL8と競合する本発明の阻害剤の能力は、標準的な競合アッセイを用いて決定され得る。例えば、Gayleら,J.Biol.Chem.(1993)268:7283-7289;およびLaRosaら,J.Biol.Chem.(1992)267:25402-25406、および本明細書中の実施例に記載されているラジオイムノアッセイが用いられる。分子はIL8の結合を完全に阻害する必要はなく、阻害剤が存在しないときに通常起こる結合の量を減少させることだけが必要である。さらにIL8結合の阻害剤は、アゴニスト、即ちIL8と通常関連する少なくとも1つの生物学的応答を促進し得る分子、あるいはアンタゴニスト、即ちIL8の効果の少なくとも一つに対抗し、それによってIL8
と通常関連する生物学的応答を仲介するIL8の能力を減少させる物質、のいずれかであり得る。
【0024】
本明細書中で用いられる場合、用語「IL8レセプター」は、数種類の脊椎動物IL8レセプター、またはIL8結合ドメインを包含するそのフラグメントのいずれかを指していう。例えば、ヒトIL8R1およびIL8R2は両者ともこの用語により包含される。
【0025】
用語「IL8レセプター結合」または「IL8結合」は、IL8、GROα、GROβ、GROγ、NAP-2、およびENA-78、これらのフラグメントならびに他の天然に存在するリガンドのいず
れかが、IL8レセプターのいずれかの一つに結合することを指していう。
【0026】
「IL8レセプター仲介生物学的応答を調節する」とは、IL8がそのレセプターに結合することによって通常誘発される一つまたはそれ以上の細胞活性の発生率を増加あるいは減少させることを意味する。この活性の性質は、生物化学的または生物物理的であり得る。例えば、阻害剤がIL8レセプターに結合したとき、ある物質がIL8と同じシグナル導入活性を刺激しないならば、この物質は、「IL8レセプター仲介生物学的応答を調節する」といえる。増加または減少は、種々のアッセイを用いてモニターされ得るが、このアッセイはまた、以降で記載されるように、対照としてIL8レセプター分子を利用する。
【0027】
さらに特定的には、生物化学的反応のカスケードは、IL8がそのレセプターに結合したときに誘発される。従って、IL8阻害剤は、これらの反応のいずれか一つにおいて増加または減少を生じるとき、「IL8レセプター仲介応答を調節する」。例えば、IL8レセプターはG結合タンパク質であり、これは、適切なシグナル導入活性が生じたとき、細胞内のCa2+、IP3、およびDAGレベルの増加を誘発する。標準的なアッセイが、これらの物質の細
胞内レベルを測定し、そしてそれによりIL8レセプター仲介生物学的応答が調節されたか否かを決定するのに使用され得る。遊離の細胞質ゾルCa2+レベルを測定するためのアッセイは既知であり、次の文献に記載されている。例えば国際公開第WO93/06229号(1993年4
月1日公開);Bazzoni,F.ら(1991)J.Exp.Med.173:771-774およびPeveRi,P.ら(1988)J.Exp.Med.167:1547-1559が挙げられる。細胞内IP3濃度およびDAGレベルもまた、既知の方法によって測定され得る。
【0028】
調節を決定するために測定され得るIL8に起因する他の生物学的活性は、例えば好中球走化性活性を包含するが、この活性は、例えば当該分野において通常知られているアッセイ(例えば、SchRodeR,J.M.ら(1987)J.Immunol.139:3474-3483;Fincham,N.J.ら(1988)J.Immunol.140:4294-4299;LaRson,C.G.ら(1989)Science243:1464-1466;GRob,P.M.ら(1990)J.Biol.Chem.265:8311-8316;StRieteR,R.M.ら(1989)J.Biol.Chem.264:10621-10626
を参照);PMNペルオキシダーゼ放出活性アッセイ、β-グルクロニダーゼ放出アッセイ、チトクロームCにより決定されるO2-放出アッセイ、およびエラスターゼ放出アッセイの
ような酵素放出アッセイ(例えば、SchRodeR,J.M.ら(1987)J.Immunol.139:3474-3483;PeveRi,P.ら(1988)J.Exp.Med.167:1547-1559を参照)を用いて測定される。
【0029】
少なくとも約50%、通常少なくとも約60%、さらに代表的には少なくとも約75%、そして好ましくは少なくとも約90〜95%のアミノ酸が分子の一定の長さにわたって一致するとき、2つのペプチドは「実質的に同じ」あるいは「実質的に同一」である。本明細書中で用いられる場合、「実質的に同じ」はまた、特定されたポリペプチドの配列に同一であることを表わす配列を指していう。
【0030】
「天然IL8」とは、天然にIL8を産生する供給源から発見された配列と同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。天然IL8は、それぞれ69、72、および77アミノ酸残基を含有するような種々の長さであり得る。
【0031】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指して言い、そして最小の長さの産物に限定されない。それゆえ、ペプチド、オリゴペプチド、2量体、多量体などは、この定義内に包含される。全長タンパク質およびそのフラグメントは、両方ともこの定義によって包含される。この用語はまた、ポリペプチドの発現後の修飾(例えば、糖鎖形成、アセチル化、リン酸化など)を包含する。
【0032】
用語「抗体」は、ポリクローナルおよびモノクローナルの抗体調製物を包含し、そしてハイブリッド抗体、改変抗体、F(ab’)2フラグメント 、F(ab)フラグメント、FVフラグメント、単ドメイン抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、そしてそれらの機能的フラグメントを包含する調製物をも包含し、これらはアミノ末端細胞外ドメインのIL8結合部位に対する特異性を保持する。例えば、ある抗体は、IL8レセプター分子のアミノ末端細胞外ドメインに対する特異性を保持する可変領域、または可変領域のフラグメントを含み得る。抗体の残りの部分は、抗体が用いられる種に由来し得る。それゆえ、もし抗体がヒトに用いられるものであれば、その抗体は免疫原性を低減し、一方活性を保持するように「ヒト化」され得る。キメラ抗体の記述については、例えばWinteR,G.およびMilstein,C.(1991)NatuRe349:293-299;Jones,P.T.ら(1986)NatuRe 321:522-525;Riechmann,L.ら(1988)332:323-327;およびCaRteR,P.ら(1992)PRoc.Natl.Acad.Sci.USA89:4285-4289を参照。このようなキメラ抗体は、単にIL8レセプターに対する結合部位だけでなく、また他のタンパク質に対する結合部位をも含有し得る。このように、二価性試薬は、外部抗原および内部抗原の両者を標的にした特異性を有するように生成され得る。
【0033】
「抗原」あるいは「免疫原」は、宿主免疫系を刺激して分泌性の体液性および/または細胞性の抗原特異的応答を生じさせる一つまたはそれ以上のエピトープを含む分子を指していう。
【0034】
IL8阻害剤の「有効阻害量」は、IL8のIL8レセプターへの結合を全体または部分的に遮断するに十分な阻害剤の量を指していう。正確な有効阻害量は、当該の特定細胞の表面に存在するIL8レセプターの数および型に依存する。このような量は、規定の実験法、および実施例中に記載される標準的な好中球結合アッセイのようなIL8結合アッセイを用いて、当業者により容易に決定され得る。
【0035】
IL8阻害剤の用語「有効調節量」は、上述のように、IL8レセプター仲介生物学的活性に変化を生じさせるに十分な阻害剤の量を指していう。この量もまた、当該の特定細胞の表面に存在するIL8レセプターの数および型に依存し、そして標的にされる生物学的活性に依存して変動する。IL8レセプター仲介活性の変化を決定するためのアッセイは、上記に記載される。
【0036】

B.一般的方法
本発明の中心は、IL8レセプターに対する種々のリガンド(IL8、GROα、GROβ、GRO
γ、NAP-2および、ENA-78を包含する)の結合を抑制し得、それによりこのような結合によって誘発される生物学的応答を調節し得るIL8阻害剤の発見である。従って、これらの阻害剤は、走化性および好中球の活性化を遮断または調節し得る。この阻害剤は、好中球が疾患(関節リュウマチおよび炎症性腸疾患のような炎症性疾患を包含する)の病変を引き起こすもととなる広範な障害の治療および予防に対して有用であり、そして敗血症性ショックおよび急性呼吸不全症候群(ARDS)のような疾患において起こる組織損傷の治療お
よび/または予防に対して有用である。本発明の阻害剤はまた、癌疾患、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、および原虫感染症の治療における好中球仲介炎症応答の刺激に対する用途が見出され、そしてAIDSならびに他の後天性および遺伝性免疫障害のような
、免疫系が弱められた状態の治療に対する用途が見出される。
【0037】
本発明の阻害剤は、IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインで作用し、そして次のような物質を包含する。例えば、抗アミノ末端細胞外ドメイン抗体、ペプチド、非ペプチド性小分子阻害剤、またはIL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインとの相互作用によりIL8の働きを調節する任意の分子が挙げられる。
【0038】
ヒトIL8レセプター1および2(それぞれIL8R1およびIL8R2と称する)のアミノ末
端細胞外ドメインの配列は、図1および2に示される。本発明に使用される阻害剤は、この領域に広がる連続した配列に由来する単離されたペプチド配列に対して生じさせた抗体を包含し、そしてその類似体(即ち、アミノ酸置換、付加、または欠失を有する配列)に対して生じさせた抗体をも包含する(これらは、上記に定義されたように、IL8レセプターに結合して、それにIL8が結合することを阻害する能力を保持している)。驚くべきことに、IL8R1およびIL8R2両者のアミノ末端細胞外ドメイン領域由来のペプチドに対し
て生成した抗体および抗体の混合物は、これらレセプターへのIL8の結合を遮断し得る。それゆえに、これらの抗体に対する認識部位(エピトープ)は、IL8認識部位と重複するか、あるいはその部位に近接しているようである。これらの抗体は、標準的な技術を用いて作成される、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、あるいはこれらの機能的フラグメントであり得る。さらに、有用な抗体調製物は、もっと後で詳述されるような、数種類の異なる抗体の混合物を包含し得る。
【0039】
抗体阻害剤を生じさせるために有用なペプチドは、通常少なくとも約5アミノ酸長、好ましくは7〜10アミノ酸長、そして最も好ましいのは少なくとも約10〜15アミノ酸長である。フラグメントの長さに対する決定的な上限はなく、フラグメントは、ほとんど全体の細胞外ドメイン配列、あるいはこの領域由来の2個またはそれ以上のペプチドのまたは他のタンパク質配列に融合された1個またはそれ以上のペプチドのフラグメントを含む融合タンパク質さえ包含し得る。
【0040】
特に、数多くのペプチドが、IL8R1およびIL8R2のアミノ末端細胞外結合ドメインの
アミノ酸配列に基づいて合成される。これらのペプチドは、実施例の表1および2中に示される。これらおよび他のペプチドは、ペプチド分野における当業者に公知のタンパク質合成技術により合成され得る。一般的にこれらの方法は、当該分野において周知の固相あるいは液相合成法のいずれかを利用する。例えば、固相ペプチド合成技術について、J.M.StewaRtおよびJ.D.Young,SolidPhasePeptide Synthesis,第2版,PieRce Chemical Co.,RockfoRd,IL(1984)ならびにG.BaRanyおよびR.B.MeRRifield,ThePeptides:Analysis,Synthesis,Biology,E.GRossおよびJ.MeienhofeR編、第2編、AcademicPRess,NewYoRk,(1980),3-254頁;そして古典的な液相合成について、M.Bodansky,PRinciples of PeptideSynthesis,SpRingeR-VeRlag,BeRlin(1984)ならびにE.GRossおよびJ.MeienhofeR編、ThePeptides:Analysis,Synthesis,Biology,上記、第1巻を参照。
【0041】
ペプチドはまた、当該分野においては既知の遺伝子組換え技術により製造され得る。例えば、当該のペプチドをコードするDNA配列は、標準法によって合成され得る。例えば、Edge(1981)NatuRe292:756;NambaiRら(1984)Science223:1299;Jayら(1984)J.Biol.Chem.259:6311を参照。通常、配列が発現される意図する宿主に対して好ましいコドンを選択し得る。あるいは配列はゲノムDNAまたはcDNAから得られ得る。DNAは適当な発現ベクター中にクローン化され、従来の方法を用いて原核あるいは真核宿主細胞のいずれかがそれにより形質転換され、そして当該タンパク質の発現を可能にする条件下で培養される。
【0042】
ペプチドはまた、精製されたIL8レセプターあるいは所望の配列を有するポリペプチドを酵素的または化学的に切断することによって製造され得る。このような手順は、規格通
りであり、そして当該分野において周知である。
【0043】
一つの実施態様において、本発明の阻害剤は、インビトロまたはインビボで作成され得るポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体であり得る。このような抗体の製造法は、当該分野において公知である。
【0044】
これらのペプチドに対するポリクローナル抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、またはヤギのような適切な動物に目的のペプチドで免疫することにより生成される。免疫原性を高めるために、ペプチドは、免疫を行う前にキャリアーに連結され得る。適切なキャリアーは、代表的には大きくて代謝の遅い巨大分子であり、例えばタンパク質、多糖体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集物(例えば油滴またはリポソーム)、および不活性ウイルス粒子が挙げられる。このようなキャリアーは、当業者にとって周知である。さらに、ペプチドは、その免疫原性を高めるために、ジフテリア、破傷風、コレラなどの類毒素のような細菌類毒素に結合され得る。
【0045】
ウサギ、ヒツジ、およびヤギは、大量の血清が望まれるとき、ポリクローナル血清の調製に対して好適である。これらの動物は、標識された抗ウサギ、抗ヒツジ、および抗ヤギ抗体の入手性のためにも、目的に適した選択である。免疫は通常、タンパク質を生理食塩水中に、好ましくはフロイント完全アジュバントのようなアジュバント中に混合するかまたは乳濁し、そして混合物またはエマルジョンを非経口的に注入(通常皮下または筋肉内注射)することにより実施される。動物は通常2〜6週後に、食塩水中の、好ましくはフロイント不完全アジュバントを用いて、タンパク質を1回またはそれ以上注入することによって追加免疫される。抗体はまた、当該分野において既知の方法を用いてインビトロ免疫によって生成され得る。次いでポリクローナル抗血清が、免疫された動物から得られる。
【0046】
モノクローナル抗体は、一般にKohleRおよびMilstein,NatuRe(1975) 256:495-96,、あるいはその変法を用いて調製される。代表的には、マウスまたはラットが、上述したように免疫される。しかしながら、血清を抽出するために動物から採血するよりはむしろ、脾臓(および必要に応じて大リンパ節)を摘出し、そして単細胞に分離する。所望であれば、脾臓細胞は、(非特異的に粘着する細胞を除去した後)細胞懸濁液をタンパク質抗原で被覆したプレートまたはウェルに加えることによって選別され得る。抗原に特異的な膜結合性免疫グロブリンを発現しているB細胞はプレートに結合し、残りの懸濁液によって
洗い流されることはない。次いで、このようにして得られたB細胞またはすべての分離さ
れた脾臓細胞は、誘導してミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを形成させ、そして選択培地(例えば、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地、「HAT」)中で培養する。生じたハイブリドーマを限定希釈により平板培養し、そして免疫抗原に対して特異的に結合する(そして無関係な抗原に結合しない)抗体の産生についてアッセイする。次いで、選択されたモノクローナル抗体分泌型ハイブリドーマを、インビトロ(例えば、組織培養瓶あるいは中空繊維反応槽)またはインビボ(マウス腹水のような)のいずれかで培養する。
【0047】
抗体阻害剤の機能的フラグメントもまた、本発明で用途が見出され、そして抗体分子から抗原結合に寄与しない不変領域を切断することによって作成され得るが、例えばペプシンを用いて、F(ab’)2フラグメントを作成する。これらのフラグメントは、2個の抗
原結合部位を含有するが、それぞれの重鎖に由来する定常領域の部分を欠く。同様に、所望であれば、例えばパパインでのポリクローナルまたはモノクローナル抗体の消化により、単一の抗原結合部位を含有するFabフラグメントが作成され得る。重鎖および軽鎖の可
変領域だけを含有する機能的フラグメントもまた、標準技術を用いて作成され得る。これらのフラグメントは、FVとして知られる。
【0048】
キメラまたはヒト化抗体もまた、本発明において使用するために作成され得る。これらの抗体は、好ましくない免疫反応を最小限に抑えるよう設計され得るが、この反応はモノクローナルおよびポリクローナル抗体中に典型的に存在する異種定常領域および種特異的フレームワーク可変領域に起因する。例えば、抗体がヒト被験者においてIL8阻害剤として使用される場合には、当該分野で一般に知られている技術を用いて、重鎖および軽鎖の、またはその両者のいずれかの非ヒト型定常領域をヒト定常領域と置換することによって、キメラ抗体が創製され得る。例えば、WinteR,G.およびMilstein,C.(1991)NatuRe349:293-299;Jones,P.T.ら(1986)NatuRe321:522-525;Riechmann,L.ら(1988)332:323-327;およびCaRteR,P.ら(1992)PRoc.Natl.Acad.Sci.USA89:4285-4289を参照。
【0049】
IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインと相互作用し、そしてこのレセプターへの結合についてIL8と競合する小分子およびペプチド阻害剤もまた、本発明によって意図される。例えば、ペプチドライブラリーが構築され、そしてIL8レセプターと結合し、それへのIL8結合を阻害する能力を有するペプチドについて選別され得る(例えば、ペプチドライブラリーの作製の記述については、ZuckeRmannらJ.Mol.Biol.(1992)227:711-718を
参照)。同様に、ペプチド、ペプチド混合物、およびペプトイドが合成され得るか、あるいは生物学的手段により生成され得、そしてレセプターへのIL8結合を阻害する能力についてテストされ得る(例えば、ZuckeRmannらPRoc.Natl.Acad.Sci.USA,(1992)89:4505-4509;SimonらPRoc.Natl.Acad.Sci.USA,(1992)89:9367-9371;CwiRla,S.E.らPRoc.Natl.Acad.Sci.USA,(1990)87:6378-6382;Devlin,J.J.らScience,(1990)249:404-406を参照)
。合成または天然供給源由来の小分子(すなわち、可能性のある模擬物)もまた、レセプターへのIL8結合を阻害する能力について選別され得る。このような模擬物を設計しそして同定するための戦略は、当該分野において周知である。例えば、FaucheRe,J.L.「AdvancesinDRug ReseaRch」,第15巻,28-69頁(1986);MoRganら,Ann.Rep.Med.Chem.(1989)24:243-252;HRubyら,Biochem.J.(1990)268:249-262を参照。
【0050】
上記の調製物は、IL8レセプターに結合し、そしてIL8レセプター仲介活性を調節する能力について、既知のアッセイを用いてテストされ得る。この物質は、レセプター結合についてIL8と競合する能力について、競合アッセイを用いてテストされ得るが、この競合アッセイには、Gayleら,J.Biol.Chem.(1993)268:7283-7289;およびLaRosaら,J.Biol.Chem.(1992)267:25402-25406、および本明細書中の実施例に記載されたラジオイムノアッセイがある。IL8と競合する化合物は、上記に略述した方法によりレセプターと相互作用することが示され得る。これらの分子がレセプターのアミノ末端細胞外ドメインと相互作用する能力もまた、例えばIL8に結合することが示されているキメラレセプターを用いて、上述した方法によって実証され得る。このキメラレセプターは、IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメインおよび別個の関係のないレセプターから成る。
【0051】
さらに、阻害剤がIL8レセプター仲介活性を調節する能力は、上記に説明されたように、例えば、遊離の細胞質ゾルCa2+レベル、細胞内IP3濃度、およびDAGレベルの測定によりテストされ得る(例えば、国際公開第WO93/06229号(1993年4月1日公開);Bazzoni,F.ら(1991)J.Exp.Med.173:771-774;PeveRi,P.ら(1988)J.Exp.Med.167:1547-1559を参照)。IL8仲介活性の他の測定は、好中球走化性アッセイ(例えば、SchRodeR,J.M.ら(1987)J.Immunol.139:3474-3483;Fincham,N.J.ら(1988)J.Immunol.140:4294-4299;LaRson,C.G.ら(1989)Science243:1464-1466;GRob,P.M.ら(1990)J.Biol.Chem.265:8311-8316;StRieteR,R.M.ら(1989)J.Biol.Chem.264:10621-10626を参照);PMNペルオキシダーゼ放出活性アッセイ、β-グルクロニダーゼ放出アッセイ、チトクロームCにより決定されるO2-放出
アッセイ、およびエラスターゼ放出アッセイのような酵素放出アッセイ(例えば、SchRodeR,J.M.ら(1987)J.Immunol.139:3474-3483;PeveRi,P.ら(1988)J.Exp.Med.167:1547-1559を参照)を包含する。
【0052】
本発明の抗体阻害剤は、単にIL8活性のモジュレーターとして有用であるだけでなく、他の脊椎動物種中の相同的なIL8レセプター遺伝子を同定して、このレセプターを産生する供給源からIL8レセプターを免疫精製するために使用され得る。最後に、この抗体はまた、IL8結合部位に他のIL8アゴニストおよびアンタゴニストを送達するための標的因子として使用され得る。このようにするために、抗体がこれらの因子と結合され得るか、あるいは少なくともIL8阻害剤の機能的活性部分に連結された少なくとも抗体の活性結合領域を含む融合タンパク質が、当該分野において周知の組換えDNA技術を用いて構築され得
る。
【0053】
本発明の阻害剤は、そのレセプターへのIL8結合を阻害し、そしてIL8レセプター仲介生物学的応答を調節するための薬学的組成物において提供され得る。この組成物は通常、一つまたはそれ以上の「薬学的に許容され得る賦形剤または媒体(vehicle)」(例えば水、生理食塩水、グリセロール、エタノールなど)を含む。さらに、湿潤剤または乳化剤、およびpH緩衝化剤などのような補助剤が、このような媒体中に存在し得る。
【0054】
薬学的組成物は、上記に定義されたような、有効阻害量または調節量のIL8阻害剤を含有する。組成物は、慣例的には非経口的に、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、または腹腔内のいずれかの注射によって投与される。他の投与様式に適したさらなる処方は、経口および経肺(pulmonaly)処方、坐剤、および経皮適用を包含する。投薬処置は、単回投薬スケジュールまたは反復投薬スケジュールであり得る。
C. 実験
次の記載は、本発明を実施するための特定の実施態様の例である。本実施例は、説明目的のためにのみ提供され、決して本発明の範囲の限定を意図しない。
【0055】
用いられた数値(例えば、量、温度など)に関する精度を確実にする試みがなされたが、多少の実験上の誤差および偏差は、もちろん許容されるべきである。
【実施例】
【0056】
実施例1
ペプチドおよび抗血清の調製
ペプチド合成、類毒素との結合、マウスおよびヒツジの免疫、ならびにピンに結合されたペプチドおよびプレート上に被覆されたペプチドに対するELISA反応性の測定は、ChiRonMimotopes Pty.Ltd.(Clayton,VictoRia 3168,オーストラリア)により、標準的な手順を利用して実施した。特に、ヒトIL8レセプターのIL8R1およびIL8R2のアミノ末端細胞外領域部分とかなりの相同性を有するペプチド(表1および2に示す)を、標準技術を使用して合成した。いくつかのペプチド(表中に示される)を、その抗原性を高めるために、内部システイン残基を介してトキシンと結合させた。N末端のアセチル基またはC末端のβアラニン-ジケトピペラジン基は、タンパク質内のペプチド配列の環境を模擬す
る遮断基である。
【0057】
抗血清は、ペプチド#1および#3に対してマウスで、そしてペプチド#1に対してヒツ
ジで生じさせた(図1、表1)。IL8R2のアミノ末端細胞外ドメインに対する抗血清を
、ペプチド#6および#7に対してマウスで、そしてペプチド#10、#11、#12、#13の混合物に対してヒツジで生じさせた(図1、表2)。免疫血清は、ピン上のペプチドおよび/またはプレート上に被覆されたペプチドに対してELISAにより測定されたとき、免疫された
ペプチドに対して高力価を示したが、免疫前血清ならびにペプチド#6および#7に対する抗血清は示さなかった。免疫ペプチド#6および#7に対する抗血清の免疫活性の欠乏についての説明として、技術上の困難性が製造会社により述べられている。この特定の抗血清は続行されず、そしてペプチド#10〜13に対する抗血清を代わりに使用した。
【0058】
抗血清は、処理せずに使用するか、PRotein G AgaRose(PhaRmacia)のクロマトグラフィー、あるいはペプチド#1SephaRose(抗IL8R1免疫血清について)、またはペプチド#10SephaRose(抗IL8R2免疫血清について)のアフィニティークロマトグラフィーのいずれかを用いて精製するかのいずれかであった。SephaRose結合ペプチドは、ChiRonMimotopesにより調製された。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
実施例II
好中球IL8レセプター認識アッセイ
抗体を、好中球を認識する能力について下記のようにテストした。好中球は、本質的には製造者の方法に従い、下記のように改変して、好中球単離培地(NIM)(CaRdinal)を用いて全血より単離した。50mlの試験管にNIM20mlおよび血液30mlを入れて50分間遠心分離した。混入している赤血球を氷冷水中で溶血により除去した。得られた好中球を、ハンクス生理緩衝液(HBS)中に懸濁し、氷冷保存した。
【0062】
好中球をインキュベートし、下記のようにしてFACS分析に供した。好中球は、1×10個の細胞を、それぞれPBS+1%BSAに1:150に希釈したヒツジ免疫前IgG(図2Aおよび2C)、抗IL8R1ペプチドIgG(図2B)、または抗IL8R2ペプチドIgG(図2D)の溶液50μl中に
再懸濁し、FACS分析用に染色した。細胞は氷上で2時間インキュベートし、1000RPMで5
分間遠心分離し、さらにPBS+1%BSAで2回洗浄した。洗浄した細胞を、FITC結合F(ab’)2 フラグメントのウサギ抗ヒツジIgG(H+L)抗体(PBS+1%BSA中1:100、JacksonImmu
noReseaRchLaboRatoRies)50μl中に再懸濁した。細胞は氷上で1時間インキュベート
し、1000RPMで5分間遠心分離し、PBS+1%BSAで洗浄し、さらにPBSで洗浄した。直ちに
分析に供する細胞は、PBS500mlに懸濁した。生細胞の染色としてヨウ化プロピジウムを2.5ng/mlの割合で添加した。好中球は1%パラホルムアルデヒド中に固定し、最高72時間後まで分析され得る。標識した細胞をFACSCAN(BectonDickonson)で分析した。
【0063】
図2から分かるように、アミノ末端細胞外ドメインIL8R1ペプチド#1(図2B)またはIL8R2ペプチド#10〜13(図2D)に対する抗血清は好中球を認識したが、免疫前血清(図2Aおよび2C)は認識しなかった。このことは、IL8レセプターのアミノ末端細胞外ドメイ
ン由来のペプチドに対して生じた抗血清が、天然レセプターを認識し得ることを示す。IL8R1ペプチド#3に対して生じた抗血清は、免疫ペプチドに対する力価は高いが、好中球
を認識しなかった(データは示していない)。この結果は、リガンド認識におけるIL8R
1ペプチド#3配列の役割については何も示していないが、ペプチド#3は、抗ペプチド抗体とは反対に、抗レセプター抗体を惹起するレセプター模倣性立体構造で十分量存在していなかったということのみを意味している。IL8R2ペプチド#6または#7のいずれに対して
生じた抗血清も免疫ペプチドに対して低い力価しか示さず、検討は続行しなかった。
実施例III
レセプター結合アッセイ
抗体を、IL8のそのレセプターへの結合を遮断する能力について、下記のようにテストした。IL8R1およびIL8R2を、レセプター結合アッセイに用いるために、遺伝子組換えにより生成した。IL8R1およびIL8R2をコードするDNAを、IL8R1(HolmesらScience(1991)253:1278)およびIL8R2(MuRphyおよびTiffany,Science(1991)253:1280)についての公開されている配列に基づくオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCRにより、ヒ
トゲノムDNAから単離した。単離した遺伝子のヌクレオチド配列をジデオキシ配列分析に
より確認した。
【0064】
IL8R1(バキュロウイルス導入ベクターpVL1392(InvitRogen)中)または、IL8R2(MunemitsuらMol.Cell.Biol.(1990)10:5977に記載されたpAcC13導入ベクター中)をコードする配列を、既報(KittsらNuc.Acids.Res.(1991)18:5667) のように、線状化した野性型ウイルスのDNA 0.5μgとともに組換えレセプター導入ベクター2μgをSf9細胞に共トランスフェクトすることにより、AutogRaphacalifoRniaバキュロウイルス(AcNPV)中に組み入れた。組換えバキュロウイルスをプラーク精製(SmithらMol.Cell.Biol.(1983)3:2156)により単離した。約1.5×10個/mlのSf9細胞懸濁培養液を、2〜10のMOIで関連バキュロウイルス株に40〜48時間感染させた後、分析のため無血清培地(MaioRellaらBio
tech.(1988)6:1406)中に採取した。
【0065】
Sf9昆虫細胞を、組換えIL8R1またはIL8R2バキュロウイルスに感染させ、ExCell400培地中で96ウェルRemova-well培養プレートに蒔いた。感染40〜48時間後培地を除き、単
層細胞を、Hepes-BSA結合緩衝液(25mMHepes,pH7.5,150mM NaCl,5mM CaCl2,5mM MgCl2,1mg/mLウシ血清アルブミン)中、室温で1時間抗体で前処理した。125IIL8を最終濃度が0.2nMとなるよう添加し、室温で3時間インキュベートした。細胞はHepes-BSA結合緩衝液で1回洗浄し、結合125IIL8をガンマ計数器で測定した。非特異的結合は、非
標識IL81μg/mlの存在下で測定した。データは2回繰り返し測定の平均である。
【0066】
IL8R1ペプチド#1に対する抗血清は、組換えバキュロウイルス感染Sf9細胞で発現されるIL8R1レセプターへの125IIL8の結合を遮断したが、免疫前抗血清は遮断しなかった(図3)。IL8R1ペプチド#1に対する抗血清は、IL8のIL8R2への結合を阻害しなかった(図5)。従って、この抗血清は、IL8R1へのIL8の結合を特異的に中和した。抗IL8R1ペプチド#1抗体により認識されるIL8R1のエピトープは、IL8R1上のIL8認識
部位の近傍にあるか、または重なっている。
【0067】
抗IL8R1ペプチド#1抗体がIL8のそのレセプターへの結合を中和する能力は、過剰のIL8R1ペプチド#1により無力化され、このことによりその抗血清の特異性が確認される(図4)。このように、IL8結合の中和に対応するエピトープは、IL8R1の対応する領域
、すなわちアミノ末端細胞外ドメインのアミノ酸残基1〜15内に含まれている。これらの結果は、IL8R1アミノ末端細胞外ドメインがIL8の認識に関係していることを示唆して
いる。
【0068】
IL8R2ペプチドプール#10〜13に対する抗血清は、組換えバキュロウイルス感染Sf9細
胞で発現されるIL8R2レセプターへの125IIL8の結合を遮断したが、免疫前抗血清は遮断しなかった(図5)。IL8R2ペプチド#10〜13に対する抗血清は、IL8のIL8R1へ
の結合を阻害しなかった(図3)。従って、この抗血清はIL8R2へのIL8の結合を特異
的に中和し、そしてIL8R2のIL8認識配列の近傍にあるかまたは重なっているエピトー
プを認識した。
【0069】
ペプチド#10〜13に対する抗血清を、ペプチド#10アフィニティークロマトグラフィーにより分画した。IL8R2ペプチド#10に対する抗体は、Sf9 細胞で発現されるIL8R2レセ
プターへのIL8の結合を阻害した(図6)。遊離のペプチド#10はこの抗体による中和を
阻止し、このことから、ペプチド#10は、IL8R2上のIL8認識部位における、またはその近傍にあるエピトープを含むことが確認された(図6)。これはIL8R2のアミノ酸残基
1〜15の領域内の中和エピトープに対応する。抗ペプチド#10抗体が涸渇しても、抗IL8R2ペプチド抗血清がIL8R2へのIL8の結合を阻害する能力はなくならなかった(データ
は示していない)。このことは、IL8R2のアミノ末端細胞外領域の残りの部分、即ちア
ミノ酸残基16〜41内に別のエピトープがあり、これもまた抗IL8R2ペプチド抗血清の中
和活性に寄与していることを示している。これらの結果は、IL8R2のアミノ末端細胞外
ドメインのアミノ酸1〜41がIL8の認識に関係する配列を含むことを示唆している。
【0070】
このように、新規のIL8阻害剤およびそれを用いる方法が開示される。本発明の好ましい実施態様を幾分詳細に述べたが、添付した請求の範囲により定義される本発明の意図および範囲から逸脱することなく、明白な改変が行われ得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、ヒトIL8R1およびヒトIL8R2のアミノ末端細胞外ドメインのアミノ酸配列を示し、そして抗血清を生じさせるために使用されるペプチドを表す。
【図2】図2は、実施例に記載されるように、IL8R1およびIL8R2のアミノ末端ペプチドに対する抗血清を用いる好中球のFACS分析の結果を示す。好中球は、下述するように、各々PBS+1%BSA中1:150に希釈したヒツジの免疫前IgG(図2Aおよび2C)、抗IL8R1ペプチドIgG(図2B)、または抗IL8R2ペプチドIgG(図2D)とインキュベートした後、螢光標識ウサギ抗ヒツジ抗体(PBS+1%BSA中1:100)で処理し、そしてFACS分析に供した。
【図3】図3は、実施例に記載されるように、IL8R1についてのレセプター結合アッセイの結果を表す。Sf9細胞を、IL8R1を発現させるために組換え型バキュロウイルスで感染させ、そしてIL8または抗体と1時間プレインキュベートした後に、125IIL8結合を記載通りにアッセイした:1672p,IL8R1ペプチド#1血清についての免疫前血清対照からのIgG画分;1672i,ペプチド#1に対する抗血清からのIgG画分;アフィニティー精製1672IIL8R1ペプチド#1に対するアフィニティー精製抗体;1673p,IL8R2ペプチド#10〜13血清についての免疫前血清対照からのIgG画分;1673IIL8R2ペプチド#10〜13に対する抗血清からのIgG画分。各エフェクターの最終濃度が示される。
【図4】図4は、Sf9細胞上のIL8R1へのIL8結合の抗IL8R1ペプチド#1による阻害を示す。Sf9細胞を、IL8R1についてバキュロウイルスで感染させ、抗体とプレインキュベートし、そして125IIL8結合について上述通りにアッセイした。(アフィニティー精製+ペプチド#1)と示している場合、IL8R1ペプチド#1に対するアフィニティー精製抗体を、使用する前に50mg/mlのペプチド#1で予め吸着した。データは、1mg/mlの非標識IL8の存在下で測定された非特異的結合に対して補正される。
【図5】図5は、上述および実施例に記載されるように、IL8R2についてのレセプター結合アッセイの結果を表す。
【図6】図6は、Sf9細胞上のIL8R2へのIL8結合の抗IL8R2ペプチド#10による阻害を示す。Sf9細胞を、IL8R2についてバキュロウイルスで感染させ、抗体とプレインキュベートし、そして125IIL8結合に対して上述通りにアッセイした。抗体の添加は次の通りである:免疫前IgG,免疫前血清対照からのIgG画分;抗R2ペプチドIgG,IL8R2ペプチド#10〜13に対する抗血清からのIgG画分;アフィニティー精製抗ペプチド#10またはアフィニティー精製−ペプチド#10,ペプチド#10に対するアフィニティー精製抗体;アフィニティー精製+ペプチド#10,50mg/mlのペプチド#10で予め吸着したペプチド#10に対するアフィニティー精製抗体。データは、1mg/mlの非標識IL8の存在下で測定された非特異的結合に対して補正される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL8レセプター1のアミノ末端細胞外ドメインと相互作用し得、かつ該レセプターへの結合についてIL8と競合し得る抗体またはそのフラグメントを含む、IL8レセプター1結合に対する阻害剤であって、
ここで、該抗体は、アミノ酸配列M-S-N-I-T-D-P-Q-M-W-D-F-D-D-Lを含むポリペプチドからなる免疫原で哺乳動物を免疫することによって獲得され得るものである、阻害剤。
【請求項2】
本明細書に記載の方法によって生産される抗体。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−169227(P2008−169227A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66818(P2008−66818)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【分割の表示】特願2004−261714(P2004−261714)の分割
【原出願日】平成6年9月13日(1994.9.13)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】