説明

IP−10に基づく免疫学的モニタリング

本発明は、IP−10の産生に基づく免疫学的方法、とりわけ哺乳動物における細胞性免疫反応(CMI)の測定方法に関する。さらに、本発明は、全血又は他の適切な性打つ学的サンプルを用いて抗原に対するCMIを測定するためのアッセイ及びキットを開示する。本発明の方法は、ヒトについての治療及び診断プロトコル、家畜についての治療及び診断プロトコル、並びに獣医学的応用及び野生生物への応用において有用であるため、本発明は哺乳動物における感染を診断するための方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、免疫学的アッセイ、とりわけ細胞性免疫反応(CMI)の測定のためのアッセイに関する。さらに、とりわけ、本発明は、全血又は他の適切な生物学的サンプルを用いて抗原に対する細胞性反応を測定するためのアッセイ及びキットを提供する。前記アッセイは、ヒトについての治療及び診断プロトコル、家畜についての治療及び診断プロトコル、並びに獣医学的応用及び野生生物への応用において有用である。
【0002】
細胞性免疫反応の測定は、免疫能力のためのマーカー並びに内生及び外生的な抗原(すなわち、感染及びワクチン)に対するT細胞反応の検出のためのマーカーとして、多数の感染症及び自己免疫疾患の免疫診断にとって重要である。
【0003】
本発明は、T細胞又は免疫系の他の細胞を含む哺乳動物由来のサンプルを抗原とインキュベートすることによる、哺乳動物におけるCMIの測定方法を提供する。次いで、IP−10の生産を検出する。免疫エフェクターの存在又は免疫エフェクターのレベルが、次いで、対象の細胞介在性反応のレベルの指標となる。
【背景技術】
【0004】
結核
ヒト結核菌(MTB)特異的な免疫優性抗原の発見によって、結核(TB)の診断のための重要な新たな道が導き出された。初期の研究によって、所定のMTB抗原に対する反応におけるT細胞によるインターフェロンγ(IFN−γ)のin vitroにおける生産をアッセイする試験は、ツベルクリン皮膚試験(TST)と置き換わる可能性が示された。ほぼ同時期においては、高度に免疫原性の抗原であり、特異性を顕著に改善する、早期分泌抗原標的−6(ESAT−6)、培養濾過液タンパク質(CFP−10)、及びTB7.7の発見が大きな進歩であった。これらの抗原は、病原体の相違領域(Region of Difference) 1(RD1)内にコードされており、そのため、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)ワクチン株及び大多数の非結核性マイコバクテリア(例外としてはマイコバクテリウムカンサシ、マイコバクテリウムマリナム、マイコバクテリウムツルガイが含まれる)には存在しない。RD1にコードされる抗原であるESAT−6、CFP−10、TB7.7のオーバーラップペプチドに対するIFN−γ反応は、2種類の認可された市販の試験におけるMTB感染の検出の基礎をなす。
【0005】
QuantiFERON−TB Gold(Cellestis Limited,Carnegie,Victoria,Australia)は、全血酵素結合免疫測定法(ELISA)であり、欧州CEマークを受けており、最近では潜伏TB感染及びTB感染症の双方の検出についてアメリカの食品医薬品局(FDA)の認可を受けている。
【0006】
T−SPOT.TB(Oxford Immunotec,Oxford,UK)は、末梢血単核球を使用する酵素結合免疫スポットアッセイ(ELISPOT)であり、欧州CEマークの認可を受けており、2005年にはカナダにおいて認可を受けた。T−SPOT.TBは、ESAT−6及びCFP10のみを使用する。
【0007】
しかしながら、現在の利用可能な試験には下記のような制限がある。
1)免疫抑制された対象(例えば、HIV陽性であるか又は免疫抑制剤を服用している患者)において、感度が弱められる可能性がある;
2)ある場合においては、比較的大容量の血液が必要であり(QuantiFERON試験では3mlであり、T−SPOT.TBでは8ml)、乳幼児並びに重症の子供及び貧血の子供における使用が制限される;
3)試験によって、活動性感染、潜伏感染、及び最近の感染が区別されない;
4)試験が実施されて、最近の感染又は潜伏感染から活動性感染へと進行している患者を予測し得ていない。
【0008】
大多数の試験における制限は、非常に低レベルにおける効果的なパラメータであるIFN−γのためであり、最も感度の良い方法であっても限界に近い(QuantiFERON試験では0.35IU/ml(17.5pg/ml)までであり、T−SPOT.TBでは5スポット/領域)からである。カットオフを低下させて感度を向上させると、試験の特異性の低下を生じさせる。QuantiFERON試験に基づく最近の刊行物は、より低い範囲のIFN−γにおける試験結果を用いてヒトを反復して試験することを、QuantiFERON(QFT)試験の擬陽性及び偽陰性の結果の潜在的なリスクを明確に示すカットオフレベル付近で変化させることを示している(Pai,M.et al)。
【0009】
前記試験の明らかな脆弱性を克服するために、追加のヒト結核菌特異的抗原を使用することによって感度を改善させ得るであろう。これは第三世代のQuantiFERON試験(OFT)である、追加の抗原であるTB7.7(p4)を含むQuantiFERON In tube test(QFT−IT)において実施され、潜在的に感度が改善されるであろうが、依然として非常に低いIFN−γレベルにおける測定に依存する。
【0010】
この手法は、他のものにも試みられており、すなわち、IFN−γによって誘導されるモノカイン(MIG/CXCL9)が、ヒト結核菌特異的抗原(ESAT−6/CFP10)及びPPDで刺激した後にin vitroで特異的に発現した。しかしながら、CXCL9の特異性は非常に低く、IFN−γ未満である。ESAT−6刺激後のCD4+T細胞における細胞内サイトカインサイトメトリーに基づく他の少数の試験は、IFN−γ、IL−2、IL−4、IL−10、又は活性化マーカーであるCD40Lの発現が非TB疾患からTBを区別し得るかどうか試験した。これらのマーカーのいずれも、IFN−γと同等又はそれよりも優れたものではなかった(Abramo C,et al)(Hughes,A.et al)。
【0011】
TB感染の診断のための、IFN−γに置き換わる、感度が良好で特異性のあるマーカーは、現在公開されている文献において同定されていない。各種の文献が、感染に関連してIP−10を開示しているが、事前の抗原刺激を用いる感染の診断におけるマーカーとしては開示されていない。
【0012】
クラミジア
生殖器のクラミジア感染の診断は、1990年段の初期に考案された。核酸増幅試験(NAAT)、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、転写介在増幅(TMA)、及びDNA鎖置換アッセイ(SDA)が現在では中心である。米国及び多数の他の先進国において最も一般的に使用されており広く試験されているクラミジアNAATは、Aptima(Gen−Probe)、Probe−tec(Becton−Dickinson)、及びAmplicor(Roche)である。Aptima Combo IIアッセイは、クラミジアトラコマティス及び淋病の原因である淋菌を同時に試験する。クラミジアのためのNAATは、子宮頸部(女性)又は尿道(男性)から回収したスワブ検体に対して実施してよい。
【0013】
現在では、NAATは、尿生殖器の検体を試験するためにのみ行政に認可されている。NAATは、クラミジア診断のための培養、すなわち歴史的な究極の基準及び非増幅プローブ試験、例えばPace II(Gen−Probe)と置き換わっている。後者の試験は、比較的感度が低く、無症候性の女性における感染の60から80%のみを成功裏に検出し、擬陽性の結果を与える場合がある。培養は、所定の場合においては依然として有用であるが、現在では非生殖器検体を試験するために認可されているアッセイにすぎない。
【0014】
かくして、クラミジア診断は複雑な供給源要求技術(Resource demanding technology)、例えば、PCRであり、発展途上国では容易に利用できるものではない。より迅速且つ簡便な技術が、この重大な疾患の診断的測定を改善するであろう。
【0015】
CA 2,478,138は、ケモカインであるCXCL10ポリペプチドの血中レベルの上昇が、呼吸器疾患(例えば、SARS、インフルエンザ、及び地域感染型肺炎)と関連しており、患者の診断に有用であることを開示している。呼吸器疾患に罹患している患者の診断及び治療のための方法が提供されている。
【0016】
WO 05/091969は、検出可能な病原性プリオンタンパク質の形成前に存在し、臨床的兆候の前に当該感染を検出するために有用なTSE(伝染性海綿状脳症)のマーカーを開示している。IP−10は、幾つかの開示されているマーカーの1つにすぎず、当該文献は抗原刺激については全く開示していない。
【0017】
US2004−038201は、マクロファージでの異なる病原体に対する反応において活性化される、異なる遺伝子発現プログラムを開示している。ここでも、IP−10は、言及されている多数のマーカーの1つにすぎず、当該文献は抗原刺激については全く開示していない。
【0018】
Annalisa Azzurri et alは、IFN−γ誘導タンパク質10及びペントラキシン3の血漿レベルが、ヒト結核菌感染における炎症及び疾患の活性をモニタリングするためのツールであることを開示している。当該文献は、IP−10血漿レベルがTB患者において自然に増大してことを示し、ここでも、抗原刺激については全く開示されていない。
【0019】
WO 03/063759は、診断又は治療に有用なヒートショックプロテイン(Hsp)に由来するペプチドを同定する方法を開示している。この発明の化合物の効果は、その後に続くLPS刺激に対する反応においてIP−10レベルを測定することによって、末梢血単核球に対して試験された。後に続くLPS刺激なしで試験化合物で直接刺激することによっては、IP−10レベルが増大されなかった。
【0020】
WO 07/039400は、結核に感染した患者並びにHIV/TBに共感染した患者における結核関連免疫回復症候群(TB−IRS)の診断のための方法及びキットを開示している。TB−IRSを診断するために、発明者は、ESAT−6、CFP−10、85B(陰性対照)に対するTh1反応との比較において、PPD及び16kDaタンパク質に対するTh1反応のレベルを検出し、TB−IRSの指標としてTh1反応における上昇を使用した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】CA 2,478,138
【特許文献2】WO 05/091969
【特許文献3】US2004−038201
【特許文献4】WO 03/063759
【特許文献5】WO 07/039400
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
抗原刺激を使用して現在利用可能な試験によって、感度の低下及び低レベルの検出可能なIFN−γの問題を克服するために、本発明者は、IFN−γに対する代替的なバイオマーカーの使用を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、新規な診断のための原理を提案する。例えば結核、リーシュマニア、又はクラミジアの感染を検出し得る試験システムは、抗原タンパク質/ペプチドで免疫細胞を刺激した後にケモカインであるIP−10を測定することに基づく。
【0024】
IP−10に基づく前記試験システムは、効果的なパラメータとしてIFN−γに基づく試験よりも感度がよく、試験及び診断を改善する。前記試験は、サンプルをインキュベーション時又は分析前に希釈し得るため、より少量の血液を使用して実施することが可能である。前記試験は、より短いインキュベーション時間で実施することが可能である。さらに、試験システムは、例えば、活動性結核感染、最近の結核感染、及び潜伏結核感染などの感染の各種の段階の間を区別することを可能にし得る。
【0025】
簡潔には、本発明は、哺乳動物から得られたサンプルを少なくとも1つの抗原とともにインキュベートする工程、前記サンプル中のIP−10レベルを測定する工程、並びに前記測定したIP−10レベルを基準レベルと比較することによって、哺乳動物が、前記抗原に対する免疫反応を生じさせる抗原と過去に遭遇しているかどうか或いは前記抗原に対する免疫交差反応を生じさせる他の抗原と過去に遭遇しているかどうかを決定する工程を含む、免疫学的方法として説明されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】血漿IFN−γ、IP−10、及びIFN−γの間の関係、全血を20から24時間に亘って生理食塩水(非刺激)(1a)、ヒト結核菌特異的抗原(1b)、又はマイトジェン(1c)のいずれかを用いて刺激した。サイトカイン生産は、ELISA(IFN−γ)又はmultiplex(IP−10)によって血漿上清において測定した。
【図2】Quantiferon ELISA及びルミネックスの各々によって測定した抗原特異的IFN−γ及びIP−10サイトカイン生産(すなわち、Ag−ニル)の比較。値はpg/mlである。直線は、中央値を表す。範囲は表2を参照のこと。
【図3】IP−10アッセイの感度及び特異性を表すROC曲線。x軸は1−特異性を表わし、y軸は感度を表わす。
【図4】抗原特異的IP−10及びIFN−γ生産の比較。IFN−γは未希釈で試験し、IP−10は1:8の希釈で試験している。
【図5】Quantiferon試験が未確定又は陰性であった患者における抗原特異的IFN−γ及びIP−10/CXCL10生産6人のQuantiferon in tube(GFT−IT)陰性及び1人のQFT−IT未確定の患者の全血を、20から24時間に亘って、生理食塩水又はヒト結核菌特異的抗原で刺激した。サイトカイン生産は、ELISA(IFN−γ)及びmultiplex技術(IP−10)によって血漿上清で測定した。抗原特異的生産は、抗原刺激サンプルから未刺激サンプルを差し引いたものである。直線は中央値を表わす(Wilcoxon signed rank test)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、CMI反応を開始する対象の潜在能力又は能力のアッセイを提供する。前記アッセイは、抗原刺激に対する反応における免疫系の細胞による免疫エフェクター分子の生産を測定することに基づく。前記免疫エフェクターは、前記エフェクターに特異的な抗体などのリガンドを使用するか、又は前記エフェクターをコードする遺伝子の発現レベルを測定することによって、検出されてよい。
【0028】
したがって、本発明は、対象におけるCMIの反応性を測定する手段を提供し、同様に、感染症、疾患状態、免疫能力、及び内生若しくは外生の抗原に対するT細胞反応性の診断のための手段を提供する。
【0029】
本発明の1つの態様は、IP−10反応を開始する対象の潜在能力又は能力のアッセイに関する。アッセイは、抗原刺激に対する反応における免疫系の細胞によるIP−10生産の測定に基づく。IP−10生産は、IP−10に特異的な抗体などのリガンドを使用するか、又はIP−10をコードする遺伝子の発現レベルを測定することによって検出してよい。本発明者は、2つの異なるタイプの感染:結核及びクラミジアを用いて試験原理を実証した。結核の場合には、ヒト結核菌に特異的な刺激及びその後のIP−10測定に基づく試験によって、ヒト結核菌感染患者を同定することが可能である。クラミジアの場合には、クラミジアトラコマティス抽出物刺激に基づく試験によって、クラミジア感染患者を同定することが可能である。
【0030】
前記試験システムは、現在利用可能なアッセイにおけるマーカーであるIFN−γのレベルよりも、高レベルのIP−10をバイオマーカーとして測定する。IP−10に基づく試験システムは、効果的なパラメータとして例えばIFN−γに基づく試験よりも感度がよく、同様に特異的であり、免疫障害を持つ患者の試験及び診断を改善し(実施例10)、前記試験は、インキュベーション時又は分析前にサンプルを希釈し得るため、より少量の血液を用いて実施することが可能である(実施例9及び13)。IP−10は実施例11で示すようにインキュベーションの数時間後においても顕著な量で生産されるため、診断の速度も改善する。結核の場合では、試験システムは、活動性結核感染、最近の結核感染、及び潜伏結核感染の区別を可能にし得るものであり、加えて、前記試験システムは、潜在的に、活動性TBに進行するリスクがある患者を同定することが可能である。前記試験システムは、免疫アッセイ(すなわち、ELISA又はルミネックス)を用いるIP−10検出に基づくものであり、前記試験システムは、潜在的に、資源の乏しい環境において免疫クロマトグラフィー試験が適用可能である分野に発展可能であり、試験結果が目視で検出可能な呈色反応によって提示される。
【0031】
本発明において開示されるアッセイは、一連の問題を解決する。現在利用可能なアッセイは、効果的なパラメータとして非常に低レベルであり、最も感度の良い検出方法であっても限界に近いIFN−γを測定する(結核試験では、QuantiFERON試験が0.355国際単位/ml(17.5pg/ml)の陽性試験のカットオフレベルを有し、T−SPOT.TB試験では、5スポット形成単位/領域である)。カットオフを低下させて感度を向上させると、試験の特異性の低下を生じさせるであろう。Quantiferon試験に基づく刊行物は、低い範囲のIFN−γにおける試験結果を用いる患者の反復試験を、Quantiferon(QFT)試験の擬陽性及び偽陰性の結果の潜在的なリスクを明確に示すカットオフレベル付近で変化させることを示している。加えて、現在の試験は、カットオフレベルを超えるIFN−γ反応を開始することができない免疫抑制された患者において偽陰性の結果を与える可能性がある。TFN−γと比較して、IP−10放出の量は抗原刺激後に非常に多いため、感度がより高く、より少ない試験が偽陰性であるとみなされ、試験結果はより再現性があり、免疫抑制された患者においてより少ない測定不能な試験結果が得られることが予測される。
【0032】
さらに、抗原に誘導されるIP−10は、その様な高い濃度で分泌されるため、インキュベーション工程の前又は後にサンプルを希釈することが可能である。これは、試験を実施するために必要なサンプル材料(例えば、全血)の量を、例えば、全血の場合に、0.25ml、0.20ml、0.15ml、0.1ml、又は0.05ml以下まで低減し得ることを意味する。好ましい実施態様では、試験は0.1ml以下で実施することが可能である。かくして、低い血液容量の患者(例えば、子供/乳幼児又は貧血)に適切な「ミニアッセイ」が開発され得る。さらに、例えば指に針を刺して得られた血液を使用して、静脈に傷をつけること無く、よりユーザーフレンドリーにミニアッセイを実施することが可能である。
【0033】
さらに、結核の場合では、現在利用可能な試験は、活動性感染及び潜伏感染の間を区別することができない。驚くべきことに、本発明者は、刺激していないがインキュベートしたサンプル材料、すなわちニルサンプル(nil sample)(例えば、全血)におけるIP−10の濃度が、潜在疾患を有する健康な個体と比較して、活動性疾患を有する患者でより高いことを見出した。本発明者は、抗原特異的試験との組み合わせにおいて、不活性溶液(Nil)とインキュベートしたサンプル材料におけるIP−10濃度が、潜伏感染(例えば、結核)に対する活動性感染(例えば、結核)のマーカーとして使用可能であることを提案する。
【0034】
アッセイ
かくして、本発明の1つの態様は、
a)哺乳動物から得られたサンプルを少なくとも1つの試験抗原とともにインキュベートする工程;
b)前記サンプル中のIP−10のレベルを測定する工程;
c)前記測定したIP−10のレベルを基準レベルと比較することによって、哺乳動物が試験抗原に対する免疫反応を生じさせる試験抗原と過去に遭遇していたかどうか、又は試験抗原に対する免疫交差反応を生じさせる他の抗原と過去に遭遇していたかどうかを決定する工程
を含む、免疫学的方法に関する。
【0035】
本発明において開示する任意の方法は、プラットホームに依存するものではないと解されるべきである。したがって、ELISA、ルミネックス、Multiplex、免疫ブロッティング、TRFアッセイ、免疫クロマトグラフィー側方流動アッセイ、競合的酵素免疫分析、RAST試験、放射免疫アッセイ、免疫蛍光、及び各種の免疫学的なドライスティックアッセイ(例えば、クロマトグラフィースティックアッセイ)などであるが、それらに限らない任意の免疫学的方法が、本発明に利用可能であってよい。
【0036】
第二の態様では、本発明は、感染の診断方法であって、
a)哺乳動物から得られたサンプルを少なくとも1つの試験抗原(ただし、前記試験抗原はPPD又はLPSではない)とともにインキュベートする工程;
b)前記サンプル中のIP−10レベルを測定する工程;
c)測定したIP−10レベルを基準レベルと比較することによって、測定したIP−10レベルが基準レベルを超える場合に、前記哺乳動物が微生物に感染しているかどうかを決定する工程
を含む、方法に関する。
【0037】
本発明者は、評価のために選択される試験抗原又は抗原を用いた直接刺激によって、サンプルが、試験抗原に対する免疫反応を生じさせる試験抗原と遭遇していたかどうか、又は試験抗原に対する免疫交差反応を生じさせる他の試験抗原と過去に遭遇していたかどうかを、当業者が結論付けることが可能な結果が十分に得られることを実証した。
【0038】
かくして、1つの実施態様では、本発明は、任意の更なる又は後に続く刺激が排除されている、本明細書に記載の免疫学的方法にも関する。
【0039】
後に続く又は更なる刺激は、任意のタイプの刺激、例えば、生物学的に不活性の物質を用いるか、或いはマイトジェン、細菌生産物、又は生物学的活性タンパク質などであるが、それらに限らない炎症反応に関連する生物学的な効果を有する物質を用いるサンプルのプライミング又は刺激であってよい。
【0040】
かくして、1つの実施態様では、本発明は、任意の更なる又は後に続くLPSを用いる刺激が排除されている、本明細書に開示する免疫学的方法に関する。
【0041】
したがって、前記方法は、結核、クラミジア、リーシュマニア、トリパノソーマ、及びスキストソーマなどであるが、それらに限らない、例えば、感染症を発症する高いリスクを有するヒトにおける感染の検出に利用可能である。
【0042】
本発明は、サンプルを少なくとも2つの画分に分け、
a)サンプルの第一の画分を試験抗原とインキュベートして、反応サンプルを作り出し、
b)サンプルの第二の画分を不活性溶液とインキュベートして、ニルサンプルを作り出し、
c)前記2つの画分におけるIP−10レベルを測定し、
d)反応サンプルにおいて測定したIP−10からニルサンプルにおいて測定したIP−10レベルを差し引くことによって、前記サンプルの抗原依存的なIP−10反応を決定し、
e)試験抗原依存的なIP−10反応又はそれに由来する値を基準レベル又はそれに由来する値と比較することによって、
哺乳動物が試験抗原と過去に遭遇し、それによって試験抗原に対する免疫反応を生じていたかどうか、若しくは試験抗原に対して免疫交差反応を生じさせる他の抗原と過去に遭遇していたかどうか、及び/又は感染症を発症していたかどうかを決定する、
本発明に係る方法にも関する。
【0043】
1つの実施態様では、前記アッセイの性能は、評価のために選択される抗原とともに免疫刺激分子を同時に添加することによって向上されてよく、前記免疫刺激分子は、IL−2、IL−12、TNF−α、及びIFN−γからなる非制限的な群から選択されるサイトカインである。
【0044】
他の実施態様では、前記免疫刺激分子は、可溶性受容体(例えば、B7分子(CD80/CD86)の二量体又はポリマー)又は抗体(例えば、CD28結合抗体)である。
【0045】
他の実施態様では、前記免疫刺激分子は、共刺激シグナル(当業者にはシグナル2としても知られている)をT細胞に提供する特性を有し、前記共刺激シグナルは、単独では、IP−10反応を誘導することができないが、細胞が評価のために選択される抗原に対するCMI反応を生じる場合にはIP−10反応を増大させるであろう。
【0046】
他の実施態様では、前記アッセイの増強は、インキュベーション工程の間に生じる抗炎症過程を阻害することによって達成され得る。1つの実施態様では、アッセイは、IL−4、IL−10、及びTGF−βを含むが、それらに限らない抗炎症分子に結合する抗体又は可溶性受容体を阻害することによって増強され得る。
【0047】
他の実施態様では、前記アッセイの増強は、制御性T細胞などのCMI反応に対して阻害的に作用する細胞集団の阻害又は排除を介して影響する抗炎症の阻害によって達成され得る。
【0048】
具体的には、本明細書で使用するように、用語「精製タンパク質誘導体」(PPD又はツベルクリン)は、種に非特異的な分子の沈殿である。PPD又はツベルクリンは、ヒト結核菌又はマイコバクテリウムアビウムなどの他のマイコバクテリアからタンパク質を抽出して得られる。PPDは、一般的には、BCG又はヒト結核菌のいずれかに対して生じるTh1反応又は細胞性免疫の存在についての試験に利用される。例えば、Connaught Tuberculin(CT68)の大きなマスターバッチから調製されるConnaught Laboratories LimitedのTubersolBに由来するか、又はStatens Serum Institute(SSI,Copenhagen Denmark)から得られるRT23の形態で得られる可能性がある。
【0049】
ESAT−6タンパク質(早期分泌抗原標的6)は、ヒト結核菌の短期間培養の濾過液から精製された主要な分泌性抗原である。本明細書で参照されるように、ESAT−6、CFP−10(培養濾過液タンパク質10)、及び85Bは、細胞溶解物から精製して得ることが可能であり、組換え技術によって得ることが可能であり、又は合成ペプチドとして製造することが可能である。例えば、ESAT6は、Statens Serum Instituteから組換えタンパク質として得ることが可能である。
【0050】
ツベルクリン又はPPD(精製タンパク質誘導体)は、ヒト結核菌ゲノム内にのみ位置し、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)には含まれない(RD−1領域の)遺伝子によってコードされるESAT−6(早期分泌抗原標的6)、CFP−10(培養濾過液タンパク質10)、及びTB7.7とは異なる。PPDはBCG亜株及び病原性が低いか又は有しない複数の非結核性マイコバクテリア種と共通の他の抗原も含有するため、それはPPDとは異なる。
【0051】
任意に、前記方法は、サンプルを3つの画分に分け、サンプルの第三の画分をT細胞アクチベーターと共にインキュベートして、陽性対照を作製する工程を更に含んで良い。ここで、免疫細胞は、例えば、3つに分けられた集団:ニル対照(例えば、生理食塩水)、Ag刺激(例えば、クラミジア又は結核特異的タンパク質又はその誘導体)、並びに陽性対照(例えば、フィトヘマグルチニン)においてインキュベートされてよい。免疫細胞は、全血の形態、希釈された全血、又は末梢血単核球、単球、若しくはT細胞のような細胞集団の各種の精製物であってよい。前記細胞は、血液、尿、胸膜液、気管支液、口腔洗浄液、組織生検、腹水、膿、脳脊髄液、吸引物、及び/又は卵胞液から得られてよい。免疫細胞は、例えば4から24時間に亘って37℃でインキュベートする。
【0052】
1つの実施態様では、前記サンプルは、少なくとも2つの画分に分けられ、
a)サンプルの第一の画分を抗原と共にインキュベートして、反応サンプルを作り出し、
b)サンプルの第二の画分を不活性溶液と共にインキュベートして、ニルサンプルを作り出し、
c)前記2つの画分中のIP−10レベルを測定し、
d)前記反応サンプルで測定したIP−10から前記ニルサンプルで測定したIP−10レベルを差し引くことによって、サンプルの抗原依存的なIP−10の反応を決定し、
e)抗原依存的なIP−10反応又はそれに由来する値を基準レベル又はそれに由来する値と比較し、
f)抗原に依存しない自然発生的なIP−10反応又はそれに由来する値を基準レベル又はそれに由来する値と比較し、
それによって、哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇し、かくして前記抗原に対する免疫反応を生じていたかどうか、或いは前記抗原に対する免疫交差反応を生じる他の抗原と過去に遭遇していたかどうかを決定し、それによって、哺乳動物が活動性感染、最近の感染、又は潜伏感染を有するかどうか、或いは、哺乳動物が治療に対して反応しているか又は感染症を発症しているかを決定する。
【0053】
より具体的には、前記サンプルは、少なくとも3つの画分に分けられ、
a)前記サンプルの第一の画分を抗原と共にインキュベートして、反応サンプルを作り出し、
b)前記サンプルの第二の画分を不活性溶液と共にインキュベートして、ニルサンプルを作り出し、
c)前記サンプルの第三の画分を刺激溶液(例えば、PHA)とインキュベートして、マイトジェンサンプルを作り出し、
c)前記3つの画分中のIP−10レベルを測定し、
d)前記反応サンプルで測定したIP−10から前記ニルサンプルで測定したIP−10レベルを差し引くことによって、前記サンプル中の抗原依存的なIP−10反応を決定し、
e)前記抗原依存的なIP−10反応又はそれに由来する値を基準レベル又はそれに由来する値と比較し、
f)前記マイトジェンサンプルで測定したIP−10から前記ニルサンプルで測定したIP−10レベルを差し引くことによって、前記サンプルのマイトジェン依存的なIP−10反応を決定し、
g)前記マイトジェン依存的なIP−10反応又はそれに由来する値を基準レベル又はそれに由来する値と比較し、
h)抗原に依存せず自然発生的なIP−10反応又はそれに由来する値を基準レベル又はそれに由来する値と比較し、
それによって、哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇し、かくして、前記抗原に対する免疫反応を生じていたかどうか、或いは、前記抗原に対する免疫交差反応を生じる他の抗原に過去に遭遇していたかどうかを決定し、それによって、哺乳動物が活動性感染、最近の感染、又は潜伏感染を有するかどうか、或いは、哺乳動物が治療に対して反応しているか、感染症を発症しているか、又は免疫抑制されているかを決定する。
【0054】
用語「マイトジェン」は、細胞分裂を促進する任意の化合物又は化合物の組成物を示す。マイトジェンは、T細胞及びB細胞の双方に別々又は同時のいずれかにおいて作用し得る。したがって、マイトジェンという用語は、T細胞アクチベーター及びB細胞アクチベーターも含み、かくして、本明細書では互換可能なように使用される。本発明のマイトジェンは、フィトヘマグルチニン(PHA)、コンカナバリンA(conA)、リポポリサッカリド(LPS)、及びヤマゴボウマイトジェン(PWM)などであるが、それらに限らない当業者に既知の全てのマイトジェンを含む。本発明の好ましい実施態様では、前記マイトジェンはT細胞アクチベーターであり、更に好ましくは、前記マイトジェンはPHAである。本発明の他の好ましい実施態様では、前記マイトジェンは単球/マクロファージアクチベーターである。IP−10生産は、次いで、抗体に基づく技術、たとえば、xMAP、multiplexing、ルミネックス、ELISA、ELISPOT、lateral stick assay、又はmRNAにもとづく技術、例えば、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)若しくは細胞内フローサイトメトリー(IC−FACS)などであるが、それらに限らない当業者に既知の任意のサイトカイン又はケモカイン検出方法によって測定される。
【0055】
抗原(例えば、クラミジア抽出抗原又は結核特異的タンパク質或いはそれらの誘導体)に対する反応におけるIP−10の量は、IP−10のバックグラウンドにおける生産を差し引くことによって決定されてよく、例えばヒト結核菌の感染の可能性が、抗原特異的IP−10反応に基づいて解釈される。
【0056】
本願における結核のデータは、既存の技術:生理食塩水(ニル)、TB特異的ペプチド抗原(Ag)、又はマイトジェン(PHA)で事前にコーティングされたバキュテナー管に全血を直接入れるQuantiFERON(登録商標)TB−Gold In−Tube test(Cellestis,Carnegie,Australia)を使用して得た。前記チューブは、本発明において好ましい実施態様において、18時間、37℃でインキュベートされ、その後に、Biosource reagent(Biosource Camarillo USA)を使用するルミネックスプラットホーム(Luminex Corporation,USA)におけるxMAP技術によってサイトカイン濃度を測定し、かくして、効果的なパラメータを従来のパラメータであるIFN−γからより高濃度で発現し且つ良好な性能を有するIP−10へと変更することが可能となった。
【0057】
本発明の高い感度は、この方法を、活動性感染、潜伏感染、最近の感染、子供/新生児の感染、及び/又は両期間の潜伏感染の間を区別するための優れたツールとする。かくして、1つの実施態様では、本発明は、基準レベルを超える抗原依存的なIP−10反応が、ニルと共に、哺乳動物が活動性感染、潜伏感染、最近の感染、及び/又は長期間の潜伏感染を有することを示す方法に関する。
【0058】
他の実施態様では、本発明は、試験に使用するサンプル材料(例えば、全血)の量が低減されている方法に関する。全血の場合には3から0.1mの範囲までであり、PBMC細胞の場合には1×10から0.05×10の範囲の細胞数である。ドナーの血行動態に対して影響を与えずに疾患(例えば、結核)を診断することが可能であり、又は非常に少ないサンプル材料、例えば、髄液、胸膜液、又は臍帯血に由来する細胞に対して実施することが可能であるため、低い血液容量を有する患者(特に、子供/乳幼児又は貧血患者)に適切なこの「ミニアッセイ」は革新的である。
【0059】
他のマーカーとの組み合わせ
1つ又は複数の以下のマーカーと共にIP−10を測定することは、擬陽性の数を低減し、識別力を増大させ得る。かくして、1つの実施態様では、前記方法は、
a)抗原刺激に対する反応においてIP−10及びMCP−1のレベルを測定し、
b)前記測定したIP−10及びMCP−1のレベルを組み合わせ、且つ
c)前記組み合わせたレベルを組み合わせた基準レベルと比較すること
をさらに含む。
【0060】
当業者に理解されるように、組み合わせた基準レベルは、IP−10レベル並びに健康な集団におけるMCP−1レベルなどであるが、それらに限らない所定の組み合わせマーカーを測定し、測定したIP−10及びMCP−1を加算などであるがそれに限らない計算手段によって組み合わせることによって決定される。組み合わせた基準レベルは、健康な集団における組み合わせた基準レベルの分布、例えば、平均+2標準偏差に関連する選択されたカットオフポイントで決定されるか、又は当業者に既知の他の方法によって決定される。
【0061】
さらに別の組み合わせマーカーは、IL−2及びIFN−γを含む。
【0062】
1つの実施態様では、本発明は、
a)抗原刺激に対する反応におけるIFN−γ並びに任意にMCP−1及び/又はIL−2のレベルを測定し、
b)IP−10並びにIFN−γ及び任意にMCP−1及び/又はIL−2の測定したレベルを組み合わせ、且つ
c)前記組み合わせたレベルを組み合わせた基準レベルと比較すること
をさらに含む方法を開示する。
【0063】
1つの実施態様では、前記方法は、
a)抗原刺激に対する反応におけるIP−10のレベルを測定し、
b)IP−10のレベルを基準レベル又はそれに由来する値に対して比較し、
c)前記哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇し、かくして、前記抗原に対するIP−10反応を生じていたかどうかを決定し、
d)前記抗原刺激に対する反応におけるMCP−1のレベルを測定し、
e)MCP−1レベルを基準レベル又はそれに由来する値に対して比較し、
f)前記哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇し、かくして、前記抗原に対するMCP−1反応を生じていたかどうかを決定し、
g)測定したIP−10反応性及びMCP−1反応性を組み合わせ、
それによって、前記哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇し、かくして、少なくとも1つのバイオマーカーとともに抗原に対する免疫反応を生じていたかどうかを決定すること
を含む。
【0064】
1つの実施態様では、前記方法は、
a)抗原刺激に対する反応におけるIP−10のレベルを測定し、
b)IP−10のレベルを基準レベル又はそれに由来する値と比較し、
c)前記哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇し、かくして、前記抗原に対するIP−10反応を生じていたかどうかを決定し、
d)抗原刺激に対する反応におけるIL−2のレベルを測定し、
e)IL−2のレベルを基準レベル又はそれに由来する値に対して比較し、
f)前記哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇し、かくして、前記抗原に対するIL−2反応性を生じていたかどうかを決定し、
g)測定したIP−10反応及びIL−2反応を組み合わせ、
それによって、前記哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇し、かくして、少なくとも1つのバイオマーカーとともに抗原に対する免疫反応を生じていたかどうかを測定すること
を含む。
【0065】
1つの実施態様では、前記方法は、
a)抗原刺激に対する反応におけるIP−10のレベルを測定し、
b)IP−10のレベルを基準レベル又はそれに由来する値と比較し、
c)前記哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇し、かくして、前記抗原に対するIP−10反応を生じていたかどうかを決定し、
d)抗原刺激に対する反応におけるIFN−γのレベルを測定し、
e)IFN−γのレベルを基準レベル又はそれに由来する値に対して比較し、
f)前記哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇し、かくして、前記抗原に対するIFN−γ反応を生じていたかどうかを決定し、
g)測定したIP−10反応及びIFN−γ反応を組み合わせ、
それによって、前記哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇し、かくして、少なくとも1つのバイオマーカーとともに抗原に対する免疫反応を生じていたかどうかを決定すること
を含む。
【0066】
1つの実施態様では、前記方法は、
a)抗原刺激に対する反応におけるIP−10のレベルを測定し、
b)IP−10レベルを基準レベル又はそれに由来する値に対して比較し、
c)前記哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇し、かくして、前記抗原に対するIP−10反応を生じていたかどうかを決定し、
d)抗原刺激に対する反応におけるIFN−γ及び/又はMCP−1及び/又はIL−2のレベルを測定し、
e)IFN−γ及び/又はMCP−1及び/又はIL−2のレベルを各バイオマーカーの基準レベル又はそれに由来する値に対して比較し、
f)前記哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇し、かくして、前記抗原に対するIFN−γ及び/又はMCP−1及び/又はIL−2反応を生じていたかどうかを決定し、
d)測定したIP−10反応及び/又はIFN−γ反応及び/又はMCP−1反応及び/又はIL−2反応を組み合わせ、
それによって、前記哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇し、かくして、少なくとも1つの試験したバイオマーカーとともに抗原に対する免疫反応を生じていたかどうかを決定すること
を含む。
【0067】
診断
1つの実施態様では、既に記載したように、IP−10は、各種の免疫学的状態、例えば、感染の疑いがある対象の診断に使用してよい。診断において使用される際に、本発明に係る方法は、免疫学的状態、例えば、通常は臨床症状の評価及び更なる臨床検査によって達成される感染の存在の決定に役立つ可能性がある。前記試験は、感染の各種の段階、すなわち、何れの症状も有しない最近罹った感染、感染の症状を有しない個体における数年前から罹っている感染、患者が感染による症状を有する活動性感染を診断する可能性がある。
【0068】
他の実施態様では、IP−10は、結核(例えば、活動性結核感染、潜伏結核感染、又は最近の結核感染)の疑いがある対象、特に潜伏結核から活動性結核に進行するリスクが増大した患者、すなわち免疫抑制薬(すなわち、モノクローナル抗体治療(抗CD20抗体(例えば、Rituximab(登録商標)又はTNF−α阻害治療(例えば、Remicade(登録商標)、Enbrel(登録商標)、Humira(登録商標)))若しくはステロイド、又はガンの化学療法を受けている患者;或いは、免疫抑制疾患(例えば、HIV感染、ガン、IDDM、又は非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)、自己免疫疾患、栄養失調症、加齢、静脈麻薬の使用(IVDU)、又は先天性免疫障害)を罹患している患者の診断、並びに最近感染した個体の診断のために使用されてよい。事実、標準指針に従って、これらの患者は、治療を開始する前に、活動性結核、潜伏結核、又は最近の結核についてスクリーニングされるべきである。
【0069】
最近では、TNF−α阻害剤治療の候補である患者又はTST若しくはヒト結核抗原特異的IFN−γ試験のいずれかでHIV陽性である患者をスクリーニングすることが、強力に推奨されている。複数の研究によって、これらの試験が上述の患者の分類において信頼できない可能性があることが示されており、IP−10はその高い感度のため、より良好な候補である。
【0070】
他の実施態様では、IP−10は、クラミジア感染(例えば、秘尿生殖器感染、骨盤感染、及び/又は眼内感染)の疑いがある個体をスクリーニングするために使用してよい。
【0071】
本発明は、同一の器官又は解剖領域に定着するか或いは症状が共通の群を生じさせる各種の感染体に由来する抗原を組み合わせることを可能にする。各種の特異的な抗原を組み合わせることによって、リスクがある患者をスクリーニングするか、又は臨床的には区別できない疾患、例えば秘尿生殖器感染を生じる共通の病原体を排除するか、又は同一の治療、例えば抗生物質の作用を受けやすい患者をスクリーニングすることが可能である可能性がある。
【0072】
かくして、1つの実施態様では、本発明は、
a)その必要がある患者から1つのサンプルを得て、前記サンプルを少なくとも2つの画分に分け、
b)評価のために選択された特異的な感染体に関連する抗原で1つの画分を刺激し(反応画分)、前記サンプルの第二の画分を不活性溶液とインキュベートし(ニル画分)、
c)双方の画分中のIP−10レベルを測定し、
d)前記反応画分で測定したIP−10からニル画分で測定したIP−10レベルを差し引くことによって、前記サンプルの抗原依存的なIP−10レベルを測定し、
e)前記測定した抗原依存的なIP−10レベルを前記選択された感染体の少なくとも1つについての基準レベルに対して比較し、並びに
f)抗原依存的なIP−10レベルが基準画分中のIP−10レベルよりも高い場合に、その必要がある前記患者を、選択された感染体の少なくとも1つに感染しているとすること
を含む、少なくとも2つの感染症の同時スクリーニング方法に関する。
【0073】
したがって、本発明の方法は、感染症の高いリスクがあるヒト、例えば、疾患の流行地に滞在又は旅行したヒトをスクリーニングするために利用可能であってよい。
【0074】
かくして、本発明の1つの実施態様では、感染症は、マラリア、結核、髄膜炎、日本脳炎、コレラ、リーシュマニア、デング熱、及びポリオからなる群から選択される。
【0075】
本発明の他の実施態様では、感染症は、軟性下疳、クラミジア感染、淋病、性病性リンパ肉芽腫、ウレアプラズマウレアリティカム、マイコプラズマホミニス、トレポネマパリダム、B型肝炎、単純疱疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、軟属腫、ケジラミ、ヒゼンダニ、及びトリモコナスバジナリス(Trichomonas vaginalis)からなる性感染症から選択される。
【0076】
本発明の更なる実施態様では、感染症は、治療可能な胃腸感染体、例えば、赤痢菌属、大腸菌、キャンピロバクター、コレラ菌、クリプトスポリジウムパルバム、サルモネラ菌、及びチフス菌からなる群から選択される。
【0077】
本発明の更なる実施態様では、感染症は、抗生物質では治療不可能な胃腸感染体、例えば、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、サポウイルス、及びアストロウイルスからなる群から選択される。
【0078】
本発明の更に別の実施態様では、感染症は、例えば血液バンクにおいてスクリーニングの対照となっている血液関連疾患、例えば、A型肝炎、E型肝炎、マラリア、シャーガス病、バベシア症、リーシュマニア、サル泡沫状ウイルス、クロイツフェルトヤコブ病(vCJD)、クロイツフェルトヤコブ病(CJD)、サイトメガロウイルス(CMV)、及びエプスタインバーウイルスからなる群から選択される。
【0079】
本発明の1つの実施態様では、感染症は、細菌性髄膜炎を生じさせることが可能な細菌、肺炎連鎖球菌、リステリア菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス・アガラクチア、及びインフルエンザ菌からなる群から選択される。
【0080】
したがって、本発明の目的は、特異的な抗原の選択によって当業者がマイコバクテリアの各種の種を区別することが可能であるため、種特異的診断をすることにある。
【0081】
予後
1つの実施態様では、IP−10は、各種の免疫学的状態、例えば、感染を有すると診断した患者の予後を予測するために使用されてよい。患者の予後に使用する際に、本発明に係る方法は、免疫学的状態、例えば、感染の経過及び可能性がある結末を予測するために役立ち、かくして、適当な治療方法の選択及び前記状態の所定の治療の効果の予測において当業者の役に立つ可能性がある。
【0082】
モニタリング
1つの実施態様では、IP−10は、感染を有すると診断された対象のモニタリングに使用されてよい。患者のモニタリングに使用する際に、本発明に係る方法は、治療の間の効果及び治療後の効果の評価、例えば、モニタリング及び感染の再発の可能性を予測するために役立つ。
【0083】
本発明によって治療効果をモニターすることの実現性は、
a)現在利用可能な方法、例えば、唾液の顕微鏡検査、マイコバクテリアの培養、X線、又は他の方法の代わりに、単純な採血による実施が簡単である、
b)唾液の顕微鏡検査、マイコバクテリアの培養、X線、又は他の方法と比較してより再現性がある、
c)唾液の顕微鏡検査、マイコバクテリアの培養、X線、又は他の方法、例えば肺結核が疑われる場合の生検を利用する非侵襲性外科的手法、患者が唾液では陰性であった場合の気管支鏡検査と比較して、安価である、
d)RD1オーバーラップペプチドに基づく結核のIFN−γアッセイと比較して、より感度が良好である;
e)他の免疫アッセイは感染又は非感染を区別するのみであるのに対し、活動性結核と潜伏結核との間を区別し得る
ため、妥当である。
【0084】
スクリーニング
1つの実施態様では、本発明に係る方法は、スクリーニング目的に使用される。すなわち、本発明に係る方法は、本発明によってIP−10を測定し、事前に特定したレベルと測定したレベルとを関連付け、各種の感染(例えば、ヒト結核菌感染)の存在又は非存在を示すことによって、感染の事前の診断なしで、対象を評価するために使用される。別の実施態様では、本発明に係る方法はスクリーニング目的ために使用する。すなわち、本発明に係る方法は、本発明によってIP−10を測定し、事前に特定したレベルと測定したレベルとを関連付け、各種の感染(例えば、ヒト結核菌感染)の存在又は非存在を示すことによって、感染の事前の診断はないが潜伏疾患の再活性化のリスクがある対象を評価するために使用される。
【0085】
既に記載したように、本発明は、少なくとも2つの感染症について同時にスクリーニングするための方法を開示する。
【0086】
本発明の他の実施態様では、前記方法は、例えば寄生虫又はウイルスによって生じる感染などであるが、それらに限らない各種の疾患について、血液提供者に由来する血液をスクリーニングするために使用されてよい。
【0087】
接触者追跡
好ましい実施態様では、IP−10は、各種の感染体、例えば、ヒト結核菌に曝露された対象の診断に使用されてよい。接触者追跡に使用される際に、本発明に係る方法は、ヒト結核菌による感染などの感染の存在を決定するために役立つ可能性がある。
【0088】
他の実施態様では、IP−10は、結核、コロナウイルス(例えば、重症後天性呼吸器症候群)、インフルエンザ、エボラウイルス、又はマールブルグウイルスなどであるが、それらに限らない高度に接触感染性の感染の発生において、接触感染のケースに曝露された対象の診断のために使用されてよい。結核の場合には、接触者追跡において使用する際に、本発明に係る方法は、通常はTST又は現在利用可能なTFN−γ放出アッセイによって評価されて達成される感染の存在を決定するために役立つ可能性がある。
【0089】
症例発見の促進
好ましい実施態様では、IP−10は、感染などの各種の疾患の診断のために使用されてよい。症例発見の促進に使用される際に、本発明に係る方法は、感染の微生物学的な証拠がないために本発明に係る方法でなければ診断することが困難であるが、通常は臨床症状を評価すること、治療に対する効果、及び代替的な診断方法の欠如によって、或いは唾液培養などの時間がかかるアッセイ(数週間)によって達成される、顕微鏡では陰性であったTBなどであるが、それらに限らない感染の存在を決定するために役に立つ可能性がある。
【0090】
有病率研究
好ましい実施態様では、IP−10は、子供などの興味ある集団における感染、HIV陽性の移民、難民、医療従事者、学童、囚人、検査技師などであるが、それらに限らない各種の免疫学的状態の有病率を研究するために使用されてよい。有病率研究において使用する際に、本発明に係る方法は、通常はTSTによって達成される、集団における潜伏TB及び活動性TBなどの感染の存在を決定するために役に立つ可能性がある。
【0091】
研究目的
1つの実施態様では、IP−10は、マイコバクテリア、グラム陽性菌、グラム陰性菌、リステリア菌、腸球菌、ナイセリア、ビブリオ、トレポネーマ(梅毒)、ボレリア菌、レプトスピラ、クラミジア、レトロウイルス(SIV、HIV−1、及びHIV−2)、重症急性呼吸器症候群(SARS)及びNL−63などのコロナウイルス、サイトメガロウイルス、ロタウイルス、メタ肺炎ウイルス(RSV)、ポックスウイルス、エブスタインバーウイルス、エンテロウイルス、麻疹ウイルス、ラブドウイルス(狂犬病)、ルビウイルス(風疹)、フラビウイルス(デング、黄熱)、ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、C型及びB型肝炎ウイルス、リーシュマニア、トキソプラズマ原虫、トリパノソーマ、プラスモディウム(熱帯性マラリア、三日熱マラリア、卵形マラリア、マラリア)、カリニ肺炎菌(PCP)、及び各種の線虫、吸虫、並びに例えば、脂質、ポリサッカリド分子、タンパク質、及びペプチドであってよいこれらの抗原からなる群から選択される微生物に由来する潜在的な新規抗原をスクリーニングする際に研究機関によって使用されてよい。研究目的に使用される際に、本発明に係る方法は、ワクチンの開発及び診断試験に応用可能な試験した抗原、タンパク質、又はペプチドに対する免疫反応を測定するために役立つ可能性がある。
【0092】
例えばペプチドなどの複数の抗原分子は、種特異的又は疾患特異的なものとして同定されているが、感度の良好なマーカーが存在しないため、in vivoでT細胞反応を誘導するそれらの機能を測定することは困難である。その様な候補抗原で刺激した後に測定されるIP−10は、潜在的に興味深い新規抗原又は分子をスクリーン及び同定するために使用されてよい。より具体的には、ヒト結核菌、クラミジアトラコマティス、HIV−1、又はHCVに由来する抗原の場合には、IP−10は、これらの抗原の免疫原性を試験する際に、すなわち例えばワクチンの開発のためのT細胞反応の測定として、研究機関によって使用されてよい。
【0093】
治療効果
本発明者は、治療の間における、インキュベーションの間の自然発生的な放出(ニルサンプル)及び抗原誘導IP−10(Agサンプル)の反復試験が、治療効果のマーカーとして使用し得ることを提案する。自然発生的なIP−10反応が治療の間に低下した場合には、治療は成功していると解され、一方、低下が観察されない場合には、治療の失敗を推測しなければならない。
【0094】
本発明者は、例えばTB治療の間における自然発生的なIP−10及び抗原誘導IP−10の反復試験が、治療効果のマーカーとして使用可能であることを提案する。抗原刺激IP−10反応が治療の間に低下した場合には、治療が成功していると解され、一方、低下が観察されない場合には、治療の失敗を推測しなければならない。
【0095】
本発明による測定と関連して本明細書で議論している任意の特徴及び/又は態様が、同様に、本発明による「診断」、「予後」、「モニタリング」、「スクリーニング」、「研究目的」、「接触者追跡」、「症例発見の促進」、及び「有病率研究」に適用可能であり、その逆も可能であることが理解されるべきである。
【0096】
インキュベーション工程
CMI系の細胞は、対象から採血してから長期間たった後の全血ではCMI反応を開始する能力を失っており、10℃超の温度で保存するなどであるが、それらに限らない細胞の寿命を持続させる様式で処理していない場合には、介入しないと反応が採血の24時間後に極度に低下するか又は失われる。
【0097】
1つの実施態様では、労力削減によって、抗原でサンプルを刺激することを医師のオフィス、クリニック、外来患者用施設、及び獣医クリニック又は牧場などの治療を実施する場所において実施することが可能である。抗原刺激を完了すると、もはや新しい活性細胞を必要としない。IP−10及びサイトカイン又は免疫エフェクター分子などの他のバイオマーカーは血漿中で安定しているため、他の感染症又は他の疾患の診断に使用される標準的な血漿サンプルと同様に特別な条件又は迅速にする必要なく、サンプルを保存、凍結、又は輸送することが可能である。
【0098】
インキュベーション工程は5から144時間、より好ましくは5から120時間、更により好ましくは12から24時間、又はそれらの間であってよい。かくして、本発明の1つの実施態様では、インキュベーション時間は、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、26時間、30時間、36時間、42時間、48時間、72時間、96時間、120時間、又は144時間である。
【0099】
IP−10はその様な高濃度で分泌されるため、前記サンプルはインキュベーターの外、すなわち研究室の机の上又は安定した温度の水浴中又は輸送可能な輸送容器中でインキュベートすることが可能である。これは特に、基本的な実験器具を有する発展途上国又は外来患者向け診療所において有用である。
【0100】
インキュベーション工程は、20から43℃の範囲の温度で実施してよい。かくして、本発明の1つの実施態様では、インキュベーション温度は、16℃、18℃、20℃、22℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、35℃、37℃、38℃、39℃、40℃、又は41℃であってよい。
【0101】
インキュベーション工程は、15から40℃、好ましくは18から37℃、更に好ましくは30から37℃の間であるが、それらに限らない固定されない温度で実施してよい。
【0102】
本発明の1つの実施態様は、培養培地を細胞培養物に加えて希釈物においてサンプルの刺激を実施してよい。
【0103】
本発明の他の実施態様は、不活性希釈液体(例えば、生理食塩水)を細胞培養物に添加してサンプルの刺激を実施してよい。
【0104】
サンプル
本発明の1つの実施態様は、対象におけるCMI反応を測定するための方法であって、前記方法は、抗原刺激後に免疫エフェクター分子を生産し得る免疫系の細胞を含むサンプルを前記対象から回収する工程、前記サンプルを抗原とインキュベートする工程、次いで、免疫エフェクター分子の存在又はそのレベルにおける上昇を測定する工程であって、前記免疫エフェクター分子の存在又はレベルが前記対象が細胞性免疫反応を開始する能力の指標である工程を含む方法を意図する。
【0105】
1つの実施態様では、前記サンプルは、血液、尿、胸膜液、気管支液、口腔洗浄液、組織生検、腹水、膿、脳脊髄液、吸引物、及び卵胞液からなる群に由来する。
【0106】
好ましい実施態様では、前記サンプルは血液に由来する。
【0107】
しかしながら、前記サンプルは、全血、胸膜液に由来する単核球、末梢血単核球(PBMC)、T細胞、CD4T細胞、CD8T細胞、γ−δT細胞、単球、マクロファージ、及びNK細胞からなる群から選択される細胞も含んでよい。
【0108】
簡便には、サンプルが全血である際は、血液回収チューブが、抗凝固剤(例えば、ヘパリン)で処理されている。全血が好ましく、最も簡便なサンプルであるにもかかわらず、本発明は、胸膜液、腹水、リンパ液、髄液又は脳脊髄液、組織液、並びに鼻及び肺の流動体を含む呼吸器液などであるが、それらに限らない免疫細胞を含有する他のサンプルまで拡張する。
【0109】
1つの実施態様では、本発明は、かくして、サンプルが血液、尿、胸膜液、気管支液、口腔洗浄液、組織生検、腹水、膿、膿脊髄液、吸引物、及び/又は卵胞液に由来する、方法に関する。
【0110】
他の実施態様では、本発明は、かくして、前記サンプルが末梢血単核球、T細胞、CD4T細胞、CD8T細胞、γ−δT細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、及びNK細胞からなる群から選択される、方法に関する。
【0111】
1つの実施態様では、前記サンプルは全血であり、抗原、マイトジェン、又は「ニル」が存在する3つの適切な容器に回収されてよい。他の実施態様では、抗原、マイトジェン、又は「ニル」が、サンプル、例えば全血を含有するアリコートに後で添加してよい。
【0112】
他の実施態様では、前記サンプルは、抗原、マイトジェン、又は「ニル」を含有する回収チューブに回収する全血であるか、或いは全血のアリコートに抗原、マイトジェン、又はニルを添加する全血である。
【0113】
一般的には、血液は、抗凝固剤(好ましくは、ヘパリン、代替的には、例えばクエン酸又はEDTA)の存在下において維持する。前記抗凝固剤は、血液を添加する際に血液回収チューブに存在する。血液回収チューブの使用は、必須ではないが好ましくは、標準的な自動実験システムに適合するものであり、これらは大スケールの分析及びランダムアクセスサンプリングに従う。血液回収チューブは、取扱費用を最小限にし、全血及び血漿の実験室曝露を低減するため、ヒト免疫不全ウイルスなどであるが、それらに限らない病原体に罹る実験室内のヒトのリスクを低減する。
【0114】
全血のアリコートは、10μlから4000μl、例えば、50μl、100μl、200μl、300μl、400μl、500μl、600μl、700μl、800μl、900μl、1000μl、1100μl、1200μl、1300μl、1400μl、1500μl、1600μl、1700μl、1800μl、1900μl、2000μl、2100μl、2200μl、2300μl、2400μl、2500μl、2600μl、2700μl、2800μl、2900μl、又は3000μlなどであるがそれらに限らない範囲の容量であってよい。
【0115】
サンプルはチューブ、組織培養ウェル、又は他の容器の中でインキュベートしてよく、抗原、マイトジェン、及び「ニル」を関連の濃度で添加してよい。
【0116】
血液回収チューブは、Vaccutainerチューブ又は他の同様の容器を含むが、血液は、開管又はキャピラリー管に直接採血されてもよい。
【0117】
キット
本発明は、さらに、細胞性反応を開始する対象の能力を評価するためのキットを意図する。前記キットは、簡便には、全血、精製細胞、生検、又は他の材料などの対象由来のサンプルを受け取るのに適合した1つ又は複数の区画を有する区画に分かれた形態にある。その区画又は他の区画は、サンプルが全血である場合にはヘパリンを含有するのにも適合していてよい。
【0118】
一般的には、前記キットは、一連の説明書と共に販売用に包装された形態である。前記説明書は、一般的には、対象におけるCMI反応を測定するための方法の形態にあり、前記方法は、抗原刺激後に免疫エフェクター分子を生産することが可能な免疫系の細胞を含むサンプルを前記対象から回収する工程、前記サンプルをキットで供給された抗原とインキュベートする工程、次いで、IP−10の存在又はそのレベルの上昇を測定する工程を含み、前記免疫エフェクター分子の存在又はレベルが、細胞性免疫反応を開始する前記対象の能力を示す。
【0119】
1つの実施態様では、前記キットは、診断薬として使用する、免疫アッセイにおいてIP−10と特異的に反応するモノクローナル若しくはポリクローナル抗体又は前記抗体の特異的な結合断片及び抗原を含有する。
【0120】
本発明の意図するキットは、第一の区画が多数の血液回収チューブを含み、第二の区画が免疫エフェクター分子のための抗体に基づく検出手段を含み、第三の区画が(i)血液回収チューブに血液を回収する;(ii)前記チューブを混合する;(iii)前記チューブをインキュベートする;(iv)前記チューブを遠心分離して、血漿を回収する;並びに(v)血漿中の免疫エフェクター分子を検出することの説明を含む一連の説明書を含む、多数の区画を有する形態であってよい。
【0121】
前記アッセイは自動又は半自動であってもよく、自動化された態様はコンピュータソフトによって制御されてよい。
【0122】
本発明のアッセイは、ハイスループットスクリーニング又は1つの対象に由来する多数の免疫エフェクターのスクリーニングのために自動化又は半自動化されてよい。コンピュータソフトによって簡便に自動化は制御される。本発明は、コンピュータプログラム製品を意図しており、そのため、IP−10のレベルの存在又は非存在を評価するために、前記製品は、
(1)インプット値として、標識した抗体又はmRNAと結合したレポーター分子のアイデンティティーを受け取るコード;
(2)前記インプット値と基準値とを比較して、レポーター分子及び/又はレポーター分子が結合した分子のアイデンティティーのレベルを測定するコード;
(3)前記コードを保存するコンピュータにより読取り可能な媒体
を含む。
【0123】
本発明の更に別の態様は、
(1)標識した抗体又はmRNAと結合したレポーター分子を同定するインプット値を含む機械読取り可能なデータをコードするデータ記憶材からなる機械読取り可能なデータ記憶媒体;
(2)前記機械読取り可能なデータを処理するための命令を保存するためのワーキングメモリ;
(3)前記機械読取り可能なデータを処理し、前記値を比較し、レポーター分子又はそれらが結合した分子の同定又はレベルの評価を提供するための、前記ワーキングメモリ及び前記機械読取り可能なデータの記憶媒体に結合した中央処理装置;並びに
(4)比較結果を受け取るための、前記中央処理装置に結合したアウトプットハードウェア
を含む、IP−10の存在若しくは非存在又はレベルを評価するためのコンピュータにまで及ぶ。
【0124】
特異性及び感度
任意の所定の診断試験の感度は、その試験によって正確に同定又は診断された陽性反応を有する固体の割合を規定する。例えば、感度が100%の場合は、所定の疾患にある全ての個体が陽性である試験である。所定のスクリーニング試験の特異性は、その試験によって正確に同定又は診断される、疾患を有しない個体の割合を反映する。例えば、100%の特異性は、疾患を有しない全ての個体が陰性の試験結果を有する。
【0125】
感度は、本発明の上記の方法によって正確に同定される(例えば、陽性のIP−10試験結果を有する)所定の疾患(例えば、活動性TB感染)を有する個体の割合として規定される。
【0126】
本明細書において使用する特異性は、本発明の上記の方法によって正確に同定される(例えば、陰性のIP−10試験結果を有する)疾患(例えば、活動性TB感染)を有しない個体の割合として規定される。
【0127】
受信者動作特性
診断試験の正確性は、受動者動作特性(ROC)によって最も良好に説明される(特に、Zweig,M.H.,and Campbell,G.,Clin.Chem.39(1993)561−577)。ROCグラフは、観察したデータの範囲全体に亘って識別閾値を連続的に変化させて得られた感度/特異性ペアの全てのプロットである。
【0128】
臨床検査の臨床成績は、診断の正確性又は臨床的に関連する亜群に対象を正確に分類する能力に依存する。診断の正確性は、調査する対象の2つの異なる状態を性格に区別する試験の能力の単位となる。その様な状態は、例えば、健康と疾患、潜伏性疾患又は最近の感染と無感染、或いは良性と悪性疾患である。
【0129】
各々の場合において、ROCプロットは、識別閾値の全範囲について1−特異性に対して感度をプロットすることによって2つの分布の間の重複を表す。y軸が感度であるか又は真の陽性の画分である[(真の陽性の試験結果の数)(真の陽性の数+偽陰性の試験結果の数)と規定される]。これは、病気又は疾患の存在における陽性として示される。それは、罹患している亜群からのみ算出される。x軸は擬陽性の画分であるか又は1−特異性である[(偽陽性の結果の数)/(真の陰性の数+偽陽性の結果の数)と規定される]。それは、特異性の指標であり、罹患していない亜群の全体から算出される。
【0130】
真の陽性の画分及び偽陽性の画分は、2つの異なる亜群からの試験結果を使用するため全く別々に算出されるので、ROCプロットはサンプルの疾患の有病率からは独立している。ROCプロットの各点は、特定の識別閾値に相当する感度−特異性ペアを表す。完全に区別された(結果の2つの分布に重複がない)試験は、真の陽性の画分が1.0又は100%(完璧な感度)であり、偽陽性の画分が0(完璧な特異性)である、左上部を通過するROCプロットを有する。区別されていない(2つの群の結果の分布が同一である)試験の理論的なプロットは、左下部から右上部への45°の斜めの線である。大半のプロットは、これら2つの極端なケースの間にある(ROCプロットが45°の斜め線よりも完全に下になった場合には、「陽性」についての基準を「より大きい」から「未満」又はその逆にすることによって改善する)。質的には、プロットが左上部に近いほど、試験全体の正確性が高い。
【0131】
臨床検査の診断の正確性を定量するための1つの簡便な目安は、1つの数によってその性能を表現することである。最も一般的な国際的な測定単位はROCプロットの面積である。慣例により、この面積は0.5以上である(そうでない場合には、そのようにする決定基準を変更することができる)。値は1.0(2つの群の試験値の完全な分離)から0.5(2つの群の試験値の間の明確に区別可能な差がない)の間の範囲である。前記面積は、対角線又は90%の特異性の感度に最も近い点などのプロットの特定の部分だけでなく、プロット全体にも依存する。これは、ROCプロットが完全な1(面積=1)にどれほど近いかという、定量的で記述的な表現である。
【0132】
新規マーカーであるIP−10の臨床的有用性は、所定の感染のための他の診断ツールと比較し、組み合わせて評価してよい。ヒト結核菌感染の場合には、新規マーカーであるIP−10の臨床的有用性は、既知のマーカーであるIFN−γを用いる既知の診断ツール又は受信者動作曲線分析を用いるTSTと比較して評価されてよい。実施例5を参照のこと。
【0133】
かくして、本発明の好ましい実施態様の主題は、哺乳動物が抗原に遭遇していたかどうかを検出するための免疫学的方法であって、
a)前記哺乳動物のサンプル中の抗原特異的なIP−10生産レベルを測定し、
b)健康な集団から得られたIP−10レベルの百分率のプロットを作成し、
c)健康な集団において測定したIP−10レベル及び問題の抗原に対する免疫反応を生じていた集団において測定したIP−10レベルに基づくROC(受信者動作特性)曲線を作成し、
d)所望の特異性を選択し、
e)前記所望の特異性に対応する感度をROC曲線から決定し、
f)前記所望の感度に対応するIP−10レベルを百分率のプロットから決定し、並びに
g)前記サンプル中のIP−10レベルが、決定した特異性に対応するIP−10レベル以上である場合に、個体が抗原に対する免疫反応を有すると予測し、前記サンプル中のIP−10レベルが、決定した特異性に対応する前記IP−10レベル全体よりも低い場合に、抗原に対する免疫反応を有しないか又は有しない可能性があると予測すること
を含む方法を提供することである。
【0134】
かくして、本発明の好ましい実施態様の他の主題は、哺乳動物が抗原に遭遇していたかどうかを検出するための免疫学的方法であって、
a)前記哺乳動物のサンプル中の抗原特異的なIP−10生産レベルを測定し、
b)健康な集団から得られたIP−10レベルの百分率のプロットを作成し、
c)健康な集団において測定したIP−10レベル及び問題の抗原に対する免疫反応を生じていた集団において測定したIP−10レベルに基づくROC(受信者動作特性)曲線を作成し、
d)所望の感度を選択し、
e)前記所望の感度に対応する特異性をROC曲線から決定し、
f)前記決定した感度に対応するIP−10レベルを百分率のプロットから決定し、
g)前記サンプル中のIP−10レベルが、決定した感度に対応する前記IP−10レベル以上である場合に、個体が抗原に対する免疫反応を有すると予測し、前記サンプル中のIP−10レベルが、決定した感度に対応する前記IP−10レベル全体よりも低い場合に、抗原に対する免疫反応を有しないか又は有しない可能性があると予測すること
を含む方法を提供することである。
【0135】
本発明に係る方法の特異性は、70%から100%、より好ましくは80%から100%、更に好ましくは90%から100%であってよい。かくして、本発明の1つの実施態様では、本発明の特異性は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。
【0136】
本発明に係る方法の感度は、70から100%、より好ましくは80%から100%、更に好ましくは90%から100%であってよい。かくして、本発明の1つの実施態様では、本発明の感度は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。実施例5を参照のこと。
【0137】
IP−10のレベルは、カットオフ値などの一連の基準データ又は基準値と比較して、対象に例えば感染のリスク又は可能性の増大があるかどうかを決定する。
【0138】
検出効率を増大するために、IP−10の血中レベルを、一連の基準データと比較して、対象が感染している可能性があるか又は例えば感染症を発症するリスクの増大があるかどうかを決定する。
【0139】
検出効率を増大するために、PHA誘導IP−10レベル及び抗原刺激されたIP−10レベルを一連の基準データと比較して、対象が感染を有するかどうか或いは感染又は疾患を発症するリスクが増大しているかどうかを決定する。
【0140】
例えば感染症を発症する患者のリスクが増大しているかどうかを決定するために、カットオフが確立される必要がある。前記カットオフは、実験室、医療従事者、又は場合によっては各患者によって確立されてよい。
【0141】
代替的に、カットポイントは、ネガティブコントロールの群の平均値、中央値、又は幾何平均値((例えば、TB感染のない、未感染で健康な曝露されていない患者)+/−1以上の標準偏差又は標準偏差に由来する値)として決定されてよい。
【0142】
抗原による攻撃の後に、複数の個体がバイオマーカーに対して強く反応するが、他のものには反応しない。例えば、複数の個体は、低レベルのIP−10又はIFN−γのみを生産するため、IP−10又はIFN−γのいずれかの反応を示さない可能性がある。これらの場合において、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のバイオマーカーの同時測定は、アッセイの感度を増大させ、陽性反応の数を増大させるであろう。そのため、IP−10と、IFN−γ、IL−2、又はMCP−1などであるが、それらに限らない1つ又は複数のバイオマーカーとを組み合わせることによって、単独のバイオマーカーアネルギーに対してより脆弱性ではない診断的予測をすることが可能である。
【0143】
他の好ましい実施態様では、IP−10測定は、一つ又は複数の他のバイオマーカーの測定と組み合わせ、組み合わせた基準レベルと比較する。測定したバイオマーカーのレベルは、加減乗除などの数学的処理並びに百分率、ルート、累乗、及び対数関数といった数学的操作によって組み合わせてよい。各種のバイオマーカーの組み合わせ及び組み合わせた基準値を算出する各種の手段は、当業者に既知の手段によって実施されてよい。
【0144】
他の好ましい実施態様では、バイオマーカー(例えば、IP−10とIFN−γ及び/又はIL−2との組み合わせであるが、それらに限らない)の個々の測定は、個々のバイオマーカー濃度が基準レベル、例えば、カットオフポイントと比較した後に組み合わせてよい。この手法は、複数の抗原だけでなく、複数のバイオマーカーも一度で網羅する試験結果を生じさせる。各種のバイオマーカーの組み合わせ及び組み合わせた基準値を算出する各種の手段は、当業者に既知の手段によって実施されてよい。
【0145】
本発明の1つの実施態様では、バイオマーカーであるIP−10並びにMCP−1、IL−2、及びINF−γからなる群から選択されるバイオマーカーの1つの組み合わせは、感度及び/又は特異性に関して相乗効果を提供する。
【0146】
本発明の更に別の実施態様では、バイオマーカーであるIP−10、MCP−1、及びIL−2の組み合わせが、感度及び/又は特異性に関して相乗効果を提供する。
【0147】
本発明の更なる実施態様では、バイオマーカーであるIP−10、MCP−1、及びIFN−γの組み合わせは、感度及び/又は特異性に関して相乗効果を提供する。
【0148】
本発明の他の実施態様では、バイオマーカーであるIP−10、IL−2、及びIFN−γの組み合わせが、感度及び/又は特異性に関して相乗効果を提供する。
【0149】
具体的には、本明細書で使用する相乗的という用語は、複数のバイオマーカーの作用が一緒になって、別々のバイオマーカーの感度又は特異性のみを知ることで予測されるよりも、診断に関して大きな感度又は特異性を有し、かくして偽陽性の数を低減し且つ識別力を増大させる「組み合わされたバイオマーカーシグナル」を生じるという現象を意味する。
【0150】
ELISA又は免疫クロマトグラフィースティック試験などであるが、それらに限らない抗体に基づく読み取りでは、2以上の異なる抗体結合バイオマーカーが、全量のバイオマーカーの結合の増大を可能にし、それによって相乗的に作用し、試験においてより強力な反応及び感度の増大を生じるであろう。組み合わせた読み取りは、本明細書に教示に従って実施してよい。
【0151】
リスク評価
本発明者は、抗原に対する細胞性反応を測定するための新規マーカーを同定することに成功した。そのマーカーであるIP−10の濃度は、抗原に対する細胞性免疫反応を有する対象において増大している。そして、IP−10は、例えばヒト結核菌感染の検出のための効率的なマーカーであるようである。
【0152】
感度は任意の他の既知のマーカーよりも高く、特異性は任意の他の既知のマーカーと同等であるか又は良好である。実施例4、5、及び10を参照のこと。
【0153】
統計学的な根拠は、例えば、年齢、職業、汚染、遺伝的背景、HLAタイプに依存する疾患を有するリスクに基づく。
【0154】
カットオフポイントは、疾患を有するリスク、職業、地理的居住地、又は汚染などであるが、それらに限らない、試験された個体の特定の条件に基づいて変化してよい。
【0155】
カットオフポイントは、年齢、性別、遺伝的背景(すなわち、HLAタイプ)、後天性又は先天性の免疫機能不全(例えば、HIV感染、糖尿病、腎不全又は肝不全を有する患者、コルチコステロイド、ケモセラピー、TNF−αブロッカー、有糸分裂阻害薬などであるが、それらに限らない免疫修飾薬で治療されている患者)などであるが、それらに限らない試験された個体の特定の条件に基づいて変化してよい。
【0156】
かくして、決定又はカットオフの境界を調節して、存在する場合に感染を検出するための試験感度、或いは当該境界未満である場合に感染又は疾患排除するための特異性が決定されるであろう。そして、原理として、カットオフポイントを超える値はリスクの増大を示し、カットオフポイント未満の値はリスクの低減を示す。
【0157】
加えて、測定不能の結果を有する試験サンプルは、別々に解釈する必要がある。測定不能の結果は、マイトジェンで刺激したサンプル(PHA)における予想外に低いIP−10レベルを有する結果であると規定する。測定不能のIP−10の結果についての最終的なカットポイントは、試験群によって決定してよく、特に免疫抑制されている場合には、カットオフレベルはより低いレベルで選択されてよい。
【0158】
カットオフレベル
当業者に一般的に理解されるように、細胞性免疫反応のスクリーニング方法は、比較することによって結論を導き出す方法である。任意の結論を導き出す方法について、興味ある病気又は疾患を有する対象並びに/或いは疾患、感染、又は興味ある状態を有しない対象に基づく基準値が必要とされる。
【0159】
カットオフレベル(又はカットオフポイント)は、更なる侵襲的診断試験を受け始める対象の数、更なる診断試験を受け始める全ての対象に対する、例えば、感染を有する及び/又は発症する平均のリスク、患者に特異的なリスクが例えば1:400又は1:250(組織又は個々の対象のスクリーニングによって規定される)などのリスクレベルよりも大きい任意の対象が、更なる侵襲的な診断試験を受け始めるべきであるという決定を含む複数の基準又は当業者に既知の他の基準に基づいてよい。
【0160】
カットオフレベルは、ある試験する個体の群などであるが、それらに限らない複数の基準に基づいて調節されてよい。例えば、カットオフレベルは、免疫不全である個体及び活動性疾患に進行するリスクの大きい患者においてより低く設定され、そうではない活動性疾患を発症するリスクが低い健康な個体においてより高くてよい。
【0161】
1つの実施態様では、本発明は、患者が感染を有するかどうかを決定するための方法であって、
a)対象からサンプルを得て、
b)前記サンプル中に存在するIP−10の濃度を定量測定し、選択したカットオフ以上の濃度である前記サンプル中に存在するIP−10ポリペプチドの存在によって、対象が感染を有する可能性があることを示すこと
を含む方法を開示する。
【0162】
より具体的には、本発明の1つの態様は、
a)哺乳動物から得られたサンプルを少なくとも1つの抗原とインキュベートする工程、
b)前記サンプル中のIP−10レベルを測定する工程、
c)前記測定したIP−10レベルを基準レベルと比較し、それによって、哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇して前記抗原に対する免疫反応を生じていたかどうか、又は前記抗原に対する免疫交差反応を生じる他の抗原と過去に遭遇していたかどうかを決定する工程
を含む、免疫学的方法に関する。
【0163】
更に具体的には、本発明の他の態様は、
a)後に続く刺激がなく、且つ、抗原がPPDではないという条件において、哺乳動物から得られたサンプルを少なくとも1つの抗原とインキュベートする工程、
b)前記サンプル中のIP−10レベルを測定する工程、
c)測定したIP−10レベルを基準レベルと比較し、それによって、前記哺乳動物が前記抗原に対する免疫反応を生じる少なくとも1つの前記抗原と過去に遭遇していたかどうか、又は前記抗原に対する免疫交差反応を生じる他の抗原と過去に遭遇していたかどうかを決定する工程、
を含む、免疫学的方法に関する。
【0164】
1つの実施態様では、本発明は、前記サンプルを少なくとも2つの画分に分け、
a)後に続く刺激がなく、且つ、抗原がPPDではないという条件下において、哺乳動物から得られたサンプルを少なくとも1つの抗原と共にインキュベートし、反応サンプルを作り出し、
b)前記サンプルの第二の画分を不活性溶液と共にインキュベートして、ニルサンプルを作り出し、
c)前記2つの画分中のIP−10レベルを測定し、
d)前記反応サンプルにおいて測定したIP−10から前記ニルサンプルにおいて測定したIP−10レベルを差し引くことによって、前記サンプルの抗原依存的なIP−10反応を決定し、
e)前記抗原依存的なIP−10反応又はそれに由来する値を基準レベル又はそれに由来する値と比較し、
それによって、哺乳動物が前記抗原と過去に遭遇することで、前記抗原に対する免疫反応を生じているか、又は前記抗原に対する免疫交差反応を生じる他の抗原と過去に遭遇しているかどうか、並びに/或いは感染症を発症しているかどうかを決定する、
本発明に係る方法に関する。
【0165】
識別値は、本明細書の実施例における詳述から明らかなように、健康な対照の集団及び既知の感染を有する集団の双方においてパラメータを測定し、それによって、パラメータ値と健康な対照集団及び感染患者集団の既知の臨床データとの間の関係の分析に基づく所定の特異性又は所定の感度のいずれかを用いて、感染した集団を同定する識別値を決定することによって決定された値である。この様式で決定された識別値は、将来の個々の試験における同一の実験設定については有効である。
【0166】
本明細書に記載の特定の実験設定(実施例5)においては、カットオフ値として有用なIP−10の閾レベルが、14pgから1000pg/mlの範囲であるが、それに限らない範囲であることが認められた。好ましくは、カットオフ値は、100pg/mlから800pg/mlの葉に、例えば、100から600pg/mlの範囲、例えば、150から400の範囲、例えば、150から300の範囲、例えば、150から250の範囲、例えば、175から215の範囲である。
【0167】
好ましいカットオフ値は、180pg/ml、181pg/ml、182pg/ml、183pg/ml、184pg/ml、185pg/ml、186pg/ml、187pg/ml、188pg/ml、189pg/ml、190pg/ml、191pg/ml、192pg/ml、193pg/ml、194pg/ml、195pg/ml、196pg/ml、197pg/ml、198pg/ml、199pg/ml、200pg/ml、201pg/ml、202pg/ml、203pg/ml、204pg/ml、205pg/ml、206pg/ml、207pg/ml、208pg/ml、209pg/ml、210pg/ml、211pg/ml、212pg/ml、213pg/ml、214pg/ml、215pg/ml、216pg/ml、217pg/ml、218pg/ml、219pg/ml、220pg/ml、221pg/ml、222pg/ml、223pg/ml、224pg/ml、225pg/mlである。
【0168】
サンプルを希釈し、インターロイキン−2、インターフェロンγ、及び/又はマクロファージ走化性タンパク質1或いは他のパラメータなどであるが、それらに限らない他のパラメータとの測定の組み合わせは、他のカットオフ値を生じさせ、それは本明細書の教示に従って決定可能である。他の実験設定、他のサンプル、他の抗原、及び他のパラメータは、言うまでもなく、他のカットオフ値を生じさせ、それは通常の設計の手法及び日常的な実験で当業者によって本明細書の教示に従って決定可能である。
【0169】
誘導された抗原特異的バイオマーカーのレベルは、刺激について選択された抗原にも依存する。幾つかの抗原は他のものよりも強力なインデューサーであるが、異なる各種の利用可能な抗原、すなわちペプチドの数は、反応細胞の数を増大させ、バイオマーカーの生産をより高度にするであろう。したがって、カットオフポイントは、抗原依存的でもあり、疾患依存的でもある。さらに、他の種は、他の主要な組織適合性抗原レパートリーを有し、そのため、異なる種において試験する同一の抗原が、種特異的なカットオフを生じさせるであろう。
【0170】
バイオマーカーの濃度の測定は、国際単位(IU)に変換されてよい。IUは、バイオマーカーの生物学的活性に関連し、各種の測定方法の間の基準に言及する。本発明の他の実施態様では、決定したカットオフ値は、刺激指数(抗原刺激IP−10濃度を非刺激の血漿濃度によって除算したものとして規定される)と組み合わされてよい。
【0171】
刺激指数値は、1から6以上であるが、それらに限らない範囲であると見出された。好ましくは、前記刺激指数は、少なくとも1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.25、3.5、3.75、又は4である。本発明は、数百倍の範囲にある刺激指数値さえ開示する。かくして、少なくとも10、20、50、75、100、200、300、又は1000もの刺激指数値が意図される。
【0172】
カットオフ及び刺激指数は、潜伏感染、最近の感染、無症状感染、又は活動性感染によって異なるものであってよい。更に具体的には、ヒト結核菌感染の場合には、カットオフ値及び刺激指数は、例えば、肺外TB、肺TB、又はそれらの双方、治療された感染症、潜伏TBによって異なるものであってよい。カットオフ及び刺激指数の変化のレベルは、感染がHIV、他の重感染、免疫抑制の存在下で認められる場合に異なるものであってよい。
【0173】
疾患の有病率又は予測される有病率に依存して、カットオフレベル及び/又は刺激指数が、疾患の重度及び患者が試験について陽性であるか又は試験について陰性であるかどうか決定した結果に依存して、望ましいように、少ない偽陽性又は少ない偽陰性の結果が得られるように調節されてよい。結核の場合には、本発明によって提供されるアッセイは、現在利用可能な他のin vitro試験に対して明確な利点を有する。抗原特異的IP−10生産は生産されるIFN−γよりも多いため(例えば、実施例4及び17)、カットオフ及び刺激指数を広い範囲で調節することが可能であり、かくして、診断の機会が広がる。
【0174】
複数の症状を有する単独の患者を診断しなければならない場合又は1つの集団における多数の個体のスクリーニングで使用する場合に、カットオフレベルが異なってよい。
【0175】
カットオフ及び刺激指数は、IP−10測定とインターロイキン−2、インターフェロンγ(INF−γ)、及び/又は単球/マクロファージ走化性タンパク質1(MCP−1)などであるが、それらに限らない他のバイオマーカーの測定の組み合わせに基づいてよい。化合物のカットオフ及び/又は刺激指数は、他の値を生じさせ、それは本明細書の教示に従って決定することが可能である。
【0176】
当業者には明らかなように、これらの検体のレベルを測定するための任意の既知の分析方法が本発明で機能するであろうが、各マーカーに使用する分析方法は、特定のマーカーの基準データを得るために使用するものと同一の方法でなければならない。新しい分析方法を特定のマーカー又はマーカーの組み合わせに使用する場合には、基準データの新しいセットを、前記方法で得られたデータに基づいて、得る必要がある。
【0177】
多変数のDISCRIMINANT分析及び他のリスク評価は、市販のコンピュータプログラム統計パッケージStatistical Analysis System(SAS Instutute Inc.社製)で実施するか、又は多変量統計分析の他の方法若しくは他の統計ソフトウェアパッケージ或いは当業者に既知のスクリーニングソフトウェアによって実施してよい。
【0178】
当業者には明らかなように、上述の実施態様の任意のものにおいて、陽性試験のリスクカットオフレベルを変更するか又は集団の他の亜群にも適用し得る推測的なリスクを用いることは、各患者の識別分析の結果を変化させるであろう。
【0179】
本明細書に記載する安定性試験は、日常的な取扱い(すなわち、凍結又は室温及び10℃以下での長期間の保存)でIP−10が高度に安定であることを提案しており;かくして、本発明者は、IP−10が臨床的な使用に有用な検体であると結論付けている。本明細書で提示するデータは、IP−10が、予後、診断、モニタリング、及び感染症のスクリーニングにおいて使用するための潜在的に価値のあるマーカーであることを示している。
【0180】
細胞性免疫反応の臨床的な重症度を測定するために、測定されるIP−10の検出可能なシグナルを評価するための手段は、基準又は基準手段を含む。
【0181】
前記基準は、アッセイ及び方法の変形例、キットの変形例、取扱いの変形例、IP−10と他のバイオマーカーとを組み合わせることに関する変形例、並びにIP−10レベルに直接的又は間接的に関連しない他の変形例を含めて考えることができる。
【0182】
本発明の背景において、用語「基準」は、例えば標準曲線などの、他の値又は特性と比較し得る量、質、及びタイプに関する標準を意味する。
【0183】
基準データは、細胞性免疫反応を有する(罹患しているか、曝露されているか、ワクチン接種されているか、感染しているか、又は疾患に罹っているとも称される)対象についてのIP−10のレベル並びに/或いは正常な(罹患しておらず、曝露されておらず、ワクチン接種されておらず、又は健康であるとも称される)対象についてのIP−10レベルを反映する。
【0184】
本発明の更なる実施態様では、アッセイ、免疫アッセイ、スティック、ドライスティック、電気装置、電極、読取機(分光光度読取機、IR読取機、同位体読取機、及び同様の読取機)、組織化学、並びに基準、濾紙、目視可能な呈色反応を含む同様の手段からなる群から装置が選択される。
【0185】
IP−10
IFN−γ誘導タンパク質10(IP−10)又はCXCL10はケモカインである。IP−10遺伝子は、in situハイブリダイゼーションによって4q21にマッピングされている。IP−10発現は、インターフェロン(IFN、すなわち、インタフェロンγ(IFN−γ))及び炎症刺激によってアップレギュレートされ、多数のTh1型炎症疾患において各種の器官及び細胞種で発現している。
【0186】
ヒトの遺伝子配列は、Gene Bankにアクセッション番号BC010954()gi 15012099)で見ることができる。
【0187】
ケモカインは、小さな(約8から14kDa)、ほとんどが塩基性の、構造的に関連した分子の一群であり、7回膜貫通Gタンパク質結合受容体のサブセットとの相互作用によって、各種のタイプの白血球の細胞輸送を調節する。ケモカインは、発生、ホメオスタシス、並びに免疫系の機能においても基本的な役割を担っており、中枢神経系の細胞並びに血管新生又は血管静止(angiostasis)に関与する内皮細胞に対する効果を有する。ケモカインは、最初の2又は4の保存されたシステイン残基の配置によって、2つの主要なサブファミリー、CXC及びCCに分類される;2つのシステインが、CXCケモカインでは1つのアミノ酸で分離されており、CCケモカインでは隣接している。CXCケモカインは、CXCモチーフに隣接し且つN末端側のglu−leu−arg配列の存在又は非存在に基づいて、ELR及び非ELRタイプに更に分類される。ELRタイプは好中球走化性であり、非ELRタイプはリンパ球走化性である。
【0188】
IP−10は、骨髄コロニー形成を阻害し、in vivoにおける抗ガン活性を有し、ヒト単球及びT細胞化学走化性であり、T細胞の内皮細胞への接着を促進する。IP−10は、in vivo血管新生の強力なインヒビターである。IP−10は、炎症及び腫瘍形成の間の血管新生の制御に関わっている。IP−10は、RAS標的遺伝子でもあり、大半の結腸直腸ガンにおいて過剰発現している。核磁気共鳴分光法を用いて、IL8などの他のケモカインの相互作用表面と類似の、IP−10の40sループ領域及びN−ループ領域によって形成される疎水性の裂け目を介して、IP−10がCXCR3のN末端と相互作用することが示された。IP−10の30sループ及びN末端によって形成される疎水性の裂け目からなる、相互作用の更に別の領域が見出された。30sループ及びβストランド2の構造を伴う機構が、CCR3とのIP−10の相互作用及びアンタゴニスト作用の主な原因となり得ることが示唆されている。
【0189】
結核の場合に、IP−10の高いレベルが、免疫再構成症候群を経験しているTB−HIV共感染患者及びTB患者のリンパ節及び肺結核肉芽腫、胸水、並びに血清又は血漿において認められている。
【0190】
IP−10レベル測定
免疫エフェクター分子は、好ましくは、IP−10などであるが、それらに限らないサイトカインである。免疫エフェクターの存在又はレベルが、その分子自体のレベル又は遺伝子が発現している程度において測定されてよい。IP−10のレベルは、当該技術分野において既知の免疫学的方法などの従来の分析方法によって測定される。
【0191】
前記免疫エフェクターの測定は、本明細書の教示にしたがって、遺伝子、RNA、又はタンパク質レベルにおいて他の免疫エフェクターの測定と組み合わせされてよい。
【0192】
上述のように、免疫エフェクター分子の検出は、タンパク質又は核酸レベルで実施されてよい。したがって、前記免疫エフェクター分子の存在又はレベルの参照は、直接的又は間接的なデータを含む。例えば、高レベルのIP−10mRNAは、IP−10レベルの増大を間接的に示すデータである。免疫エフェクターに対するリガンドは、これらの分子の検出及び/又は定量に特に有用である。
【0193】
免疫エフェクターに対する抗体は、特に有用である。本明細書において意図されるアッセイについての技術は当該技術分野において既知であり、例えば、サンドイッチアッセイ、xMAP多重化、ルミネックス、ELISA、及びELISpotを含む。抗体は、抗体の一部、哺乳動物化(例えば、ヒト化)抗体、組換え又は合成抗体、並びにハイブリッド及び単鎖抗体を含む。
【0194】
ポリクローナル及びモノクローナル抗体の双方が、免疫エフェクター又はその抗原性断片で免疫することによって得ることが可能であり、いずれかのタイプが免疫アッセイに使用可能である。双方のタイプの血清を得る方法は、当該技術分野においてよく知られている。
【0195】
ポリクローナル血清は、それほど好ましいものではないが、有効量の免疫エフェクターで適切な実験動物を注射し、前記動物から血清又は血漿を回収し、任意の既知の免疫吸着技術によって特異的な血清を単離することによって比較的容易に調製される。当該方法によって調製される抗体は任意のタイプの免疫アッセイに実際に使用可能であるが、それらは、生産物の潜在的な不均一性のために一般的にはそれほど好ましいものではない。
【0196】
免疫アッセイにおけるモノクローナル抗体の使用は、大量の抗体を生産する能力及び生産物の均一性のために、特に好ましい。不死化細胞株と免疫原性の調製物で感作されたリンパ球とを融合して得られた、モノクローナル抗体生産のためのハイブリドーマ細胞株の調製は、当業者によく知られている技術によって実施されてよい。
【0197】
検出は、競争的蛍光偏光免疫測定法(CFIPA)において特異的な抗体を用いてIP−10の直接的な測定をするか、又は二量体化誘導蛍光偏光(DIFP)によってインターフェロンγのホモ二量体の検出をすることのいずれかによって得られてもよい。いずれかの場合において、検出及び定量は6pg/ml以下であろう。
【0198】
提供された例示的な材料で前記方法を使用すると、アッセイの検出限界は6pg/mlであり、改変することによって、これがより低くなる。
【0199】
サンプル材料が希釈される場合には、前記サンプル中のIP−10濃度はより低いが、依然として検出可能である(実施例9参照のこと)。他の実験設定及び他のパラメータは他の値を生じさせ、それは本明細書の教示にしたがって決定することができる。
【0200】
IP−10などの生物学的マーカーの測定についての複数の技術が、当業者には既知である。免疫エフェクターの存在又はレベルが、ELISA、ルミネックス、ELISPOT、mRNAに基づく技術、例えば、RT−PCR、又は細胞内フローサイトメトリーであってよい。
【0201】
ルミネックス
インターフェロンγ(IFN−γ)は、感染症免疫学、特にTB免疫学におけるTh1反応についての優れた標準であった。ルミネックスによって測定されるIFN−γは、Quantiferon試験について開発された市販のELISAと比較して感度が低いため良好なマーカーではない(実施例10参照のこと)。しかしながら、IP−10は、ルミネックスで容易に検出され、そのため、ルミネックスシステムにおける研究ツール又はスクリーニングツールとしてIFN−γと置き換わる可能性がある。
【0202】
下記の幾つかの実施例において提供したデータは、ルミネックスを使用して得られておりフローサイトメトリーを用いて溶液中の検体の多重化を可能にしている。妥当な技術を使用して、ルミネックスは、異なる比率の2つの蛍光染料を組み合わせることによって、xMAPミクロスフェアを内部で色分けする。各ビーズのセットは、異なる各種の捕捉抗体に接合される。R−フィコエリスリン標識検出抗体を使用することによって、相対蛍光強度の測定により、ミクロスフェア表面で生じる抗原−抗体反応の定量が可能になる。
【0203】
前記システムは、少量において多数のサンプルを測定することが可能であり、100までの異なる検体を単独の50μlサンプルにおいて同時に測定することが可能である。
【0204】
現在のデータはBiosourceプロトコルによって得られた。簡潔には、個々のIP−10に由来するビーズ懸濁物及びIFN−γキットを、事前に湿潤させたフィルター96プレートウェルにおいて組み合わせた。ビーズを洗浄溶液で2回洗浄して、インキュベーション緩衝液を添加した。
【0205】
サンプル(ここでは、4から50μl)は、アッセイ希釈液で1:32、1:10、1:8、又は1:1に希釈して、プレートに添加した。プレートは、2時間、室温、600rpmでタイタープレートシェーカーにおいてインキュベートした。二回の洗浄後に、100μlの検出抗体カクテルをウェル毎に添加して、プレートを室温で1時間に亘ってプレートシェーカーでインキュベートした。二回の洗浄後に、100μlのストレプトアビジン−RPE溶液をウェル毎に添加した。最後に、30分のインキュベーション及び三回の洗浄後に、100μlの洗浄溶液を各ウェルに添加して、プレートをルミネックスのXYプラットホームに配置した。
【0206】
各ウェルから、最低でも100検体の特異的なビーズを、ビーズ及びRPE蛍光の双方について分析した。
【0207】
ELISA
下記の実施例の幾つかについて提供したデータは、BiosourceプロトコルによってELISAを用いて得られている。サンプル(5μlから50μl)は、IP−10抗体を事前に積載した96平底プレートのウェルに添加した。50μlのビオチン接合体を全てのウェルに添加した。プレートを覆って、3時間に亘って室温でインキュベートした後に、ウェルの内容物を吸い取り、4×Working Wash Bufferで洗浄した。次いで、100μlの希釈したストレプトアビジン−HRPを全てのウェルに添加して、プレートを覆い、室温で30分に亘ってインキュベートした。次いで、ウェルの内容物を吸い取り、4×Working Wash Bufferで洗浄した後に、50μlの安定化クロモゲンを各ウェルに添加し、プレートを室温で30分に亘ってインキュベートし、光から保護した。最後に、100μlの停止溶液を各ウェルに添加して、プレートをELISA読取機で450nmにおいて読み取った。
【0208】
免疫クロマトグラフィー試験(ICT)
試験原理:ICT(例えば、lateral stick)は、一次抗体(Ab)及び1から4の二次抗体の全てのIP−10への特異性を利用するin vitro免疫診断試験である。一次抗体は、金コロイドに結合させ、固定したラインで1つの二次抗体を含有するレーンを有するサンプルパッドに含浸させる。
【0209】
第一の工程では、インキュベートしたサンプルは、サンプルパッドの残部に添加する。血漿又は血清を前記レーンに流し、任意のIP−10の存在を金コロイド標識一次抗体に結合させる。二次抗体は、レーンの膜を横切るラインに固定化される。カードが閉じられている際には、前記パッドのレーン上のサンプル及び標識した一次抗体は、膜の端に接触する。前記サンプル及び前記標識した一次抗体を、次いで、膜のレーンに沿って移動させて、固定化した二次抗体のラインを横切らせる。試験の解釈:金標識一次抗体と複合体形成した任意のIP−10は、膜上で二次抗体によって捕捉され、ラインにおいて色の変化が生じる。次いで、試験は、a.色の強度に基づくか又はb.1つは反応サンプル(例えば、全血のような試験物質で刺激した血漿又は血清)で実施し、1つはニルサンプルで実施して、抗体試験における色の変化における強度からニル試験における色の変化の強度を差し引いて、これを基準と比較する、2つの試験を比較するかのいずれかで解釈される。
【0210】
前記試験の読み取りは、コンピュータインターフェースを用いて自動化又は半自動化されてもよい。この設定は、自動化インターフェースが前記ラインの色の変化の強度を測定するように為されてよい。
【0211】
感染
本発明の1つの態様は、基準レベルを超える抗原特異的IP−10反応が、例えば、感染の段階、例えば、活動性疾患、活動性無症状感染、最近の感染若しくは潜伏感染、又はワクチン接種のために、哺乳動物が抗原と過去に遭遇していたか又は抗原に対する交差反応を生じる他の抗原と過去に遭遇していたことを示す方法に関する。
【0212】
微生物
本発明によれば、感染は、細菌、寄生虫、真菌、ウイルス、プリオン、及び/又はウイロイドなどであるが、それらに限らない微生物によって引き起こされる可能性がある。
【0213】
本発明の好ましい実施態様では、微生物は、マイコバクテリア、グラム陽性菌、グラム陰性菌、リステリア菌、腸球菌、ナイセリア、ビブリオ、トレポネーマ(梅毒)、ボレリア菌、レプトスピラ、クラミジア、レトロウイルス(SIV、HIV−1、及びHIV−2)、サイトメガロウイルス、ポックスウイルス、エブスタインバーウイルス、エンテロウイルス、麻疹ウイルス、ラブドウイルス(狂犬病)、ルビウイルス(風疹)、フラビウイルス(デング、黄熱)、ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、C型及びB型肝炎ウイルス、リーシュマニア、トキソプラズマ原虫、トリパノソーマ、プラスモディウム(熱帯性マラリア、三日熱マラリア、卵形マラリア、マラリア)、カリニ肺炎菌(PCP)、コロナウイルス(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS))、エボラ若しくはマールブルグ、並びに各種の線虫、吸虫からなる群から選択される。
【0214】
更により好ましい実施態様では、微生物は、マイコバクテリア、リーシュマニア、クラミジア、トリパノソーマ、及び住血吸虫症からなる群から選択される。
【0215】
感染がマイコバクテリアによって生じているか又は生じた場合には、前記マイコバクテリアは、ヒト結核菌複合生物(ヒト結核菌、ウシ結核菌、及びマイコバクテリウムアフリカナム)、相違領域(RD1)を欠失していないマイコバクテリア(マイコバクテリウムカンサシ、マイコバクテリウムツルガイ、マイコバクテリウムマリナム、マイコバクテリウムフラベセンス、マイコバクテリウムガストリ)、ヒトに対して病原性であるマイコバクテリア(マイコバクテリウムアビウム及びマイコバクテリウムレプラ)並びに他の非結核性マイコバクテリアに属する。
【0216】
かくして、本発明の1つの好ましい実施態様では、マイコバクテリアはヒト結核菌である。
【0217】
感染がクラミジアによって生じる又は生じた場合には、前記クラミジアは、クラミジアトラコマティス、クラミジアムリダルム、及びクラミジアスイス、クラミジアニューモニア、及びクラミジアシッタシからなる群から選択されてよい。
【0218】
本発明の好ましい実施態様では、クラミジアはクラミジアトラコマティスである。
【0219】
ワクチン接種
本発明の1つの態様は、基準レベルを超える抗原依存的IP−10反応が、本明細書で挙げる任意の微生物に対するワクチン接種のために、哺乳動物が抗原と過去に遭遇していたか又は抗原に対して交差反応を生じる他の抗原と過去に遭遇していたことを示す方法に関する。
【0220】
非生材料に基づくワクチンに対する反応は、低レベルの抗原特異的なIFN−γ放出を生じさせ、IP−10が高レベルで放出されるため、前臨床、臨床試験、及びその後の日常的な設定におけるワクチン反応の検出に使用されてよい。
【0221】
結核
結核(一般的には、TBと略される)は、細菌であるヒト結核菌によって生じる感染症であり、最も一般的には肺に影響が及ぶが(肺TB)、身体の全ての他の器官、例えば、中枢神経系(髄膜炎)、リンパ系、循環系(粟粒結核症)、非尿生殖器系、骨、及び関節にも影響が及ぶ可能性がある。ヒト結核菌感染は、一般的には潜伏TB感染、休止TB感染、又は無症状TB感染として知られている無症状の段階のままであってもよい。
【0222】
本発明の好ましい実施態様では、本発明は、各種の、例えば、異なる結核の症状:活動性結核症、顕微鏡陽性又は顕微鏡陰性の活動性TB感染、潜伏結核感染、及び最近の結核感染を診断及びモニタリングする方法に関する。
【0223】
前記免疫アッセイは、MTBの分泌タンパク質の所定のペプチド配列に応答する抗原提示細胞(例えば、単球/マクロファージ)との相互作用における抗原特異的なTリンパ球によるIP−10の生産の評価に基づく。潜在的には、これらのペプチド配列は、それらの免疫原性及び特異性によって選択され、潜在的には他のペプチドが同様に使用されてよい。
【0224】
前記方法及びキットが、活動性結核症の診断、唾液陽性の肺結核を有する患者と接触した健康な対象における最近の感染の診断、潜伏感染を有する健康な対象の診断、肺及び肺外結核の場合における治療に対する反応のモニタリング、潜伏感染と活動性結核症状態との間の区別をするために使用されてよい。
【0225】
クラミジア
クラミジアは、クラミジア門に属する任意の細菌による感染についての一般的な用語である。クラミジアトラコマティスは、ヒトの眼及び生殖器感染の主要な感染源である。クラミジアトラコマティスは、天然では、ヒト細胞内でのみ生きているのが認められており、世界中のヒトにおいて最も一般的な性感染症の1つであり、米国では一年に約400万のクラミジア感染が起こっている。感染したヒトの全てが、感染の症状を示すわけではない。クラミジアを有する全ての男性の約半分及び全ての女性の四分の三に症状がなく、感染していることも知らない。それは深刻ではあるが、検出された場合には抗生物質で容易に治癒される。同様に重要なことに、眼のクラミジア感染は、世界中の予防可能な失明の最も一般的な原因である。
【0226】
好ましい実施態様では、本発明は、クラミジア感染の診断及びモニタリングの方法に関する。
【0227】
前記免疫アッセイは、ペプチドなどであるが、それらに限らない粗抗原又は精製抗原に応答する抗原提示細胞(例えば、単球/マクロファージ)との相互作用における抗原特異的なTリンパ球によるIP−10の生産の評価に基づく。潜在的には、ペプチド配列がそれらの免疫原性及び特性で選択され、潜在的には他のペプチドが同様に使用されてよい。
【0228】
抗原
評価するために選択される試験抗原とも称される、本発明に適切な抗原の選択は、当業者が評価することを望む感染のタイプに依存するため、選択した抗原は疾患に関連する。例えば、MTB感染をモニタリングする際は、任意の利用可能なMTB抗原が必要な反応を生じ、その逆でもあろう。幾つかの抗原が、既存の市販のアッセイにおいて既に使用されている。本発明に係る試験抗原と関連して上述又は下述する任意の特徴及び/又は態様が、評価のために選択される抗原の同様に適用されると解されるべきである。
【0229】
感染が結核と関連すると解される場合には、抗原又は少なくとも1つの抗原が、RD−1抗原、ESAT−6、CFP10、TB7.7、Ag85、HSP−65、Ag85A、Ag85B、MPT51、MPT64、TB10.4、Mtb8.4、hspX、Mtb12、Mtb9.9、Mtb32A、PstS−1、PstS−2、PstS−3、MPT63、Mtb39、Mtb41、MPT83、71kDa、PPE68、及びLppXからなる群から選択される。
【0230】
本発明の好ましい実施態様では、抗原又は少なくとも1つの抗原が、ESAT−6、CFP−10、TB7.7、Ag85、HSP65、及びRD−1抗原からなる群から選択される。
【0231】
本発明の更なる実施態様では、前記抗原がESAT−6である。
【0232】
本発明の他の実施態様では、前記抗原がCFP−10である。
【0233】
本発明の更なる実施態様では、前記抗原がTB7.7である。
【0234】
本発明の好ましい実施態様では、前記抗原がRF−1抗原である。
【0235】
幾つかの研究機関が、個々の感染体によって発現される抗原、いわゆる、微生物特異的抗原又は疾患特異的抗原の同定をすすめている。ヒト結核菌の場合には、特異的な抗原は、休止、潜伏、活動性、最近、肺、肺外、局所、又は治癒期などであるが、それらにかぎらない感染の異なる各種の段階で発現している。
【0236】
本発明は、その様な抗原を使用して実施されて、特定の段階(例えば、ヒト結核菌の潜伏感染)の同定のためのツールを提供する。
【0237】
好ましい実施態様では、同じ微生物に由来する幾つかの抗原が、反応サンプルを作り出す際に添加されてよい。各種の組織タイプ選択性を有する幾つかの抗原を添加することによって、前記アッセイがより強固なものとなる。結核の場合には、ESAT−6、CFP−10、及びTB7.7タンパク質の抗原ペプチドを組み合わせることによって、試験が最も広範な組織タイプを網羅する可能性を増大させ、かくして、各種の患者集団においてより強力で、より信頼できる試験結果が得られる。
【0238】
感染がクラミジアに関連すると解される場合には、抗原又は少なくとも1つの抗原が、Serovar D抽出物、主要外膜タンパク質(MOMP)、システインリッチ外膜タンパク質(OMP)、OMP2、OMP3、多型OMP(POMP)、クラミジアニューモニアのアデノシンジホスフェート/アデノシントリホスフェートトランスロカーゼ、ポリン(porin)Bタンパク質(PorB)、及びCT521からなる群から選択される。
【0239】
本発明から明らかなように、感染源は変化してよい。本発明の1つの実施態様では、抗原又は少なくとも1つの抗原が、固定化上鞭毛型、固定化錐鞭毛型、破壊上鞭毛型、破壊錐鞭毛型、上鞭毛型由来の精製抗原断片、上鞭毛型由来の半精製抗原断片、錐鞭毛型排出−分泌抗原(TESA)、優性可変抗原型(VAT)、可変表面糖タンパク質(VSG)、トランスシアリダーゼ(TS)、例えば、TS13、無鞭毛型表面タンパク質−2(ASP2)、KMP−11m、CRA、Ag30、JL8、TCR27、Ag1、JL7、H49、TCR39、PEP−2、Ag36、JL9、MAP、SAPA、TCNA、Ag13、TcD、B12、TcE、JL5、A13、1F8、Tc−24、Tc−28、Tc−40、Cy−hsp70、MR−HSP70、Grp−hsp78、CEA、CRP、SA85−1.1、RCaBP(鞭毛Ca2+結合タンパク質)、FL−160(160kDaの鞭毛表面タンパク質)、並びにFRA(鞭毛反復抗原)(前記抗原はトリパノソーマに関連する)からなる群から選択される。
【0240】
本発明の好ましい実施態様では、抗原又は少なくとも1つの抗原が、固定化上鞭毛型、固定化錐鞭毛型、破壊上鞭毛型、破壊錐鞭毛型、上鞭毛型に由来する精製抗原断片、上鞭毛型に由来する半精製抗原断片、錐鞭毛型排泄−分泌抗原(TESA)、優性可変抗原型(VAT)可変表面糖タンパク質(VSG)、トランスシアリダーゼ(TS)、例えば、TS13、無鞭毛型表面タンパク質−2(ASP2)、FCaBP(鞭毛Ca2+結合タンパク質)、FL−160(160kDaの鞭毛表面タンパク質)、並びにFRA(鞭毛反復抗原)からなる群から選択される。
【0241】
感染が住血吸虫に関連する場合には、抗原又は少なくとも1つの抗原が、破壊住血吸虫の卵、排泄/分泌糖タンパク質(ES)、表層(TG)糖タンパク質、可溶性卵抗原(SEA)、マンソン住血吸虫(SWAP)の可溶性抽出物、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、RP26、Sj31、Sj32、パラミオシン、Sm62−IrV5、Sm37−SG3PDH、Sm28−GST、Sm14−FABP、PR52−フラミン、PL45−ホスホグリセレートキナーゼ、PN18−シクロフィリン、MAP3、Sm23、MAP4、Sm28−TPI、Sm97、CAA、CCA、及びマンソン住血吸虫ヒートショックプロテイン70からなる群から選択される。
【0242】
本発明の好ましい実施態様では、抗原又は少なくとも1つの抗原は、排泄/分泌糖タンパク質(ES)、表層(TG)糖タンパク質、可溶性卵抗原(SEA)、マンソン住血吸虫(SWAP)の可溶性抽出物、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、及びRP26からなる群から選択される。
【0243】
リーシュマニアに関しては、抗原又は少なくとも1つの抗原が、破壊前鞭毛型、リーシュマニン、rGBP、rORFF、rgp63、rk9、rK26、rK39、PN18−シクロフィリン、MAP3、Sm23、MAP4、Sm28−TPI、Sm97、CAA、及びCCAからなる群から選択される。
【0244】
事実、分析しようとする種に特異的な任意の抗原が、本発明に有用であろう。
【0245】
他の好ましい実施態様では、異なる疾患に由来する広範な各種の抗原を組み合わせて、個々の疾患には低い特異性を有するが、「感染」に高い感度を有するスクリーニングツールとすることが可能である。例えば任務の間に曝露される微生物(例えば、マラリア、結核、リーシュマニア、住血吸虫、及び/又はトリパノソーマ)に由来する各種の抗原を組み合わせるキットは、広範な各種の異なる試験の変わりに1つの迅速なスクリーニング試験を医師が実施することを可能にする。
【0246】
他の好ましい実施態様では、組み合わせのキットが、器官に感染する各種の微生物(例えば、骨盤炎症性疾患を生じさせるナイセリア及びクラミジア種)に由来する抗原、又は共通の症状を生じさせる感染体に由来する抗原を含んでよい(例えば、カンピロバクター及びシゲラ感染によって生じる治療可能な下痢が、ウイルス、例えば、ロタウイルスによって生じる治療不可能な下痢とは区別されるであろう)。
【0247】
対象
「対象」には、ヒト、又は霊長類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、ウマ、ロバ、ヤギ)、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター)、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ)、鳥類(例えば、家禽、飼い鳥)、爬虫類、及び両生類を含む非ヒトの種が含まれる。本発明は、したがって、ヒトの医療に適用可能であると同時に、家畜及び獣医及び野生への応用も可能である。
【0248】
一般
本明細書に記載の任意の先行技術文献は、前記先行技術文献が任意の国における一般的な共通の知識の一部を形成すると任意の形態で示唆又は既知であってとは解されず、解されるべきではない。
【0249】
本願に引用した特許文献又は非特許文献は、その全体における参照によって本明細書に取り込む。
【0250】
明らかなように、本発明の1つの態様の好ましい特徴及び特性は、本発明の他の態様にも応用されてよい。本発明は、本発明の精神及び必須の特徴を逸脱すること無く、他の特定の形態が具体化されてよい。上述の実施態様は、したがって、本明細書に記載の発明に限定するよりはむしろ、各々が全て、具体例であると解されるべきである。本発明の範囲は、かくして、本明細書の記載よりもむしろ、添付の特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の意味の範囲及び均等の範囲内における全ての変形例が、特許請求の範囲に参照することによって包含されるべきであると解される。
【0251】
本発明に係る方法と関連して上述した任意の特徴及び/又は態様が、診断方法に同様に適用されると解されるべきである。
【0252】
本明細書全体に亘って、用語「含む」は、記載した要素、数字、又は工程、或いは要素、数字、又は工程の群を包含し、任意の他の要素、数字、又は工程、或いは要素、数字、又は工程の群を排除しないことを意図すると解されるであろう。
【0253】
本発明は、以下の限定しない図面及び実施例によって説明する。
【実施例】
【0254】
以下の実施例では、ヒト結核菌及びクラミジアトラコマティス感染を試験原理の例として用いて、IP−10アッセイの性能を実証する。
【0255】
一般的な方法
実施例1から17では、本発明者は、全血刺激を用いて前記原理を実証しており、実施例18では精製血単核球(PBMC)を用いて前記原理を実証した。
【0256】
全血刺激
1.1mLの容量のヘパリン処理血液を、
a.未刺激サンプル又はニルサンプル(互換的に使用される)を作り出すための生理食塩水、
b.抗原サンプル(Ag)を作り出すためのタンパク質であるESAT−6、CFP−10、及びTB−7.7に由来するペプチド、
c.マイトジェンサンプルを作り出すためのフィトヘマグルチニン(PHA)、
で被覆した3つの真空管(Cellestis,Australia)に入れた、
2.管を20から24時間、37度でインキュベートした、
3.管を10分間、2000rpmで遠心分離した、
4.血漿を回収して、−40℃以下で凍結させた。
【0257】
末梢血単核球(PBMC)の単離
1.PBMCを密度勾配遠心分離(Lymphoprep;Nycomed)によって全血から回収し、使用するまで凍結させた、
2.PBMCを融解し、1%のペニシリン/ストレプトマイシン、1%の非必須アミノ酸、1%のグルタミン、1%のPyrovat、1%のHEPES、及び10%のヒトAB血清(local blood bank、Rigshospitalet、Copenhagen)を添加したRPMI 1640に再懸濁した、
3.細胞の生存率及び数をニグロシン染色によって測定した、
4.その細胞を、丸底マイクロタイタープレート(Nunc)で1.25×10細胞/ウェル、100μLの全容量において3つに分けて培養した。
【0258】
クラミジアトラコマティス血清型D抽出抗原の調製
1.クラミジアトラコマティス血清型D(UW−3/Cx)をHeLa229細胞中で繁殖させて、マルチ溶出技術を用いて30の狭い分子量画分に分画した、
2.SPG緩衝液中のクラミジアトラコマティス血清型Dを、30.000gで30分間に亘って遠心分離した、
3.沈殿物を滅菌水及びlaemmle還元サンプル緩衝液と1:1で再懸濁し、その後に5分間に亘って煮沸した、
4.超音波処理を繰り返した後に、懸濁物を30.000gで30分間に亘って遠心分離した、
5.上清にある粗クラミジアトラコマティス血清型D抽出物を抗原として用いた。
【0259】
血清型D抗原を用いたPBMC刺激
1.PBMCを上述のように播種して、
a.抗原サンプルを作り出すための2μg/mLの血清型D抗原、
b.未刺激サンプルを作り出すために抗原なし
で細胞を刺激した、
2.その細胞を37℃で加湿空気(5%CO2及び95%空気)中でインキュベートした、
3.IP−10の定量のために5日後に上清を回収した、
4.血清を回収し、−40℃以下で凍結させた。
【0260】
バイオマーカー測定
ルミネックス:
IP−10及び/又はMCP−1及び/又はIL−2をルミネックスプラットホームで測定し、Biosourceのプロトコルに従って実施した。
1.各々IP−10、IL−2、MCP−2、及び/又はIFN−γキットからのビーズ懸濁物を、事前に湿潤させたフィルター96プレートウェルにおいて組み合わせた、
2.前記ビーズを洗浄用液で二回洗浄し、インキュベーション緩衝液を添加した、
3.サンプルを1:1、1:8、1:10、又は1:20にアッセイ希釈液で希釈し、100μlをプレートに添加した、
4.そのプレートを2時間、室温、600rpmでタイタープレートシェーカーにおいてインキュベートした、
5.二回洗浄した後に、100μlの検出抗体カクテルをウェル毎に添加し、プレートを室温で1時間に亘ってタイタープレートシェーカーにおいてインキュベートした、
6.二回洗浄した後に、100μlのストレプトアビジン−RPE溶液をウェル毎に添加した、
7.30分インキュベートして三回洗浄した後に、100μLの洗浄溶液を各ウェルに添加して、プレートをルミネックスのXYプラットホームに配置した、
8.各ウェルから、少なくとも100検体の特異的なビーズをビーズ及びRPE蛍光の双方について分析した。
【0261】
IP−10 ELISA
IP−10測定は、Biosource(Invitrogen,USA)の一段階型のELISAを用いて実施した。
【0262】
IFN−γ ELISA
IFN−γ測定は、一段階サンドイッチ型のELISA;Quantiferon IFN−γ ELISA(Cellestis,Australia)を用いて実施した。IFN−γのレベルは、製造業者によって提供されたソフトウェア(ヴァージョン2.50)を用いて分析した。Cellestis ELISAキットは、国際単位(1単位/mLは50pg/mLに相当する)で動作する。本実施例では、ELISA IFN−γの結果はpg/mlで与える。
【0263】
Quantiferon試験(QFT−IT試験)
IFN−γ生産は、Quantiferon ELISAで測定する。製造業者のガイドラインに従って、未刺激サンプルのIFN−γ反応を、ヒト結核菌特異的抗原で刺激したサンプル及びマイトジェンサンプルにおけるIFN−γ反応から差し引いた。特異的な抗原に対する反応が17.5pg/ml(0.35 IU/ml)以上であり、未刺激の値の25%以上であった場合に、マイトジェン刺激IFN−γ反応にかかわらず、QFT−ITの結果は「陽性」であると解した;特異的な抗原に対する反応が17.5pg/ml(0.35 IU/ml)未満であり、マイトジェン刺激IFN−γ反応が25pg/ml(0.51 IU/ml)以上である場合に、「陰性」であると解した。特異的な抗原に対する反応が17.5pg/ml(0.35 IU/ml)未満であり、マイトジェン刺激IFN−γ反応が25pg/ml(0.51 IU/ml)以下であるか、又は抗原特異的若しくはマイトジェン刺激反応にかかわらず未刺激サンプルにおけるIFN−γ反応が400pg/ml(8 IU/ml)以上である場合に、試験は「測定不能」であると解した。
【0264】
(実施例1)
高レベルの血漿IP−10を、ヒト結核菌感染患者に由来するヒト結核菌特異的抗原で全血を刺激することによって誘導した。
【0265】
本発明者は、デンマーク(n=2)及びギアナビサウ共和国(n=9)からの唾液陽性肺結核を有する12人の患者並びに11人の健康な非TB曝露デンマーク人の対照(ヴィドーヴェホスピタルの感染症科及び臨床試験ユニットの若い医師、研究者、及び学生)由来の全血を試験した。全ての患者はHIV陽性ではなかった。試験は、コペンハーゲン及びフレゼリクスベアコミューンの倫理委員会並びにギアナビサウ共和国の倫理委員会によって承認された。
【0266】
結果
ルミネックスIP−10、ルミネックスIFN−γ、又は市販のQuantiferon−IFN−γ ELISAによって測定した、ニル、Ag、又はマイトジェンとインキュベートした全血サンプルの血漿中のIFN−γ及びIP−10のレベル(中央値及び範囲)を表1に提示する。
【0267】
ヒト結核菌特異的抗原とインキュベートした後のIP−10生産は、患者におけるヒト結核菌感染の存在と強く関連している;全血培養物の非常に高レベルの血漿中IP−10である1025pg/ml(497.3−2080.4pg/mlの範囲)が、ヒト結核菌に感染した患者中のヒト結核菌特異的抗原を用いた刺激の間に誘導され、一方、非常に低レベルのIP−10である40.4pg/ml(19.7から158.8の範囲)が、ヒト結核菌に曝露されていることが既知ではないか又は感染の兆候を有しない11人の健康なデンマーク人の個体の全血培養物中において認められた。前記2つの群の間の違いは非常に有意なものであり、p<0.0001は、IP−10放出が実際に抗原に誘導されたものであることを示す。
【0268】
1024pg/ml(497から2080pg/mlの範囲)である抗原刺激IP−10の量は、ELISAで測定すると223.5(99から1283pg/ml)であり、且つ、ルミネックスで測定すると90.7pg/ml(p=0.01及び0.001)であるIFN−γのレベルよりも有意に高いものであった。
【0269】
IP−10と比較して、有意に低い血漿レベルのIFN−γがQuantiferon−ELISAによって測定されたが、TB感染と非IB感染との間の差は依然として有意であった。ルミネックスで測定したIFN−γは、QFT−IFN−γELISAによって測定したIFN−γよりもかなり低いものであったため、以下に更に議論していない。
【0270】
結論:感染したヒトに由来する全血がヒト結核菌特異的抗原で刺激されている際において、IP−10はヒト結核菌感染のための非常に特異的なマーカーである。IP−10は、より容易に測定され、且つ、高レベルで放出されるため、より感度の良好なマーカーとして大きな潜在能力を有する。
【0271】
【表1】

【0272】
(実施例2)
活動性TB感染を有する患者に由来する未刺激の全血培養物(ニルサンプル)の血漿中の自然発生的に上昇したIP−10放出;活動性疾患のマーカーとしてのIP−10
表1において認められるように、活動性結核を有する患者は、健康な対照(27.1pg/ml(17.7から140.6))と比較して、未刺激の全血サンプル(ニル)において5.6倍大きいIP−10の血漿レベル(150.9pg/ml(61.1から991.9))を有していた(p=0.0005)。ギアナビサウ共和国とデンマークの活動性結核を有する患者の間では、血漿ニルIP−10における有意な差はなかった(p=0.67)。
【0273】
結論:このことは、抗原刺激IP−10放出との組み合わせにおける、自然発生的なIP−10放出の測定は、活動性TBを有する患者を健康な個体と区別するために使用することが可能であることを示す。
【0274】
(実施例3)
IFN−γとIP−10放出との間の相互関係
全血培養物中のIFN−γとIP−10放出との間の強い相互関係が存在するが、IP−10放出がより大きい。ニル、抗原、又はマイトジェン刺激後のIP−10放出並びに対応するELISA IFN−γは、図1a−cに示している。抗原刺激全血の血漿中のIP−10及びELISA IFN−γレベル(スピアマンr=0.87、95% C.I 0.71から0.95、p<0.0001)(図1b)と、マイトジェン刺激全血中の血漿中のIP−10及びELISA IFN−γレベル(r=0.54、95% C.I 0.15から0.78、p=0.008)(図1c)との間の強い相関関係が存在したが、同じレベルではなかった。
【0275】
結論:全血培養物中のIP−10の放出とIFN−γの放出とに相互関係があるが、IP−10の放出はより大きい。このことは、IP10を、in vitro TB試験においてIFN−γよりも良好なマーカーとする。
【0276】
(実施例4)
抗原特異的なIP−10生産は、抗原特異的なIFN−γ生産よりも大きい
培養物中に存在する抗原に反応(抗原特異的(Ag)サイトカイン放出)して放出したサイトカインの量を測定する。抗原特異的サイトカイン反応は、デルタ値(=非刺激全血培養物の血漿に放出した量を差し引いた抗原刺激全血培養物中のサイトカイン生産)として算出した。デルタ値は、抗原特異的IFN−γとIP−10サイトカイン生産とを比較することを可能にする。図2に示すように、IP−10アッセイは、Ag特異的IFN−γ(216.5pg/ml(80.5から1273.0pg/ml))と比較して、Ag特異的IP−10(870.4pg/ml(260.5から1575.9pg/ml))のより大きい値を測定する(p=0.006(Mann−Whitney))。中央値及び範囲は表2に提示する。
【0277】
結論:IP−10は、より大量に放出されるため(p=0.006)、より容易に測定され、且つ、IFN−γよりも良好なマーカーのようである。
【0278】
【表2】

【0279】
(実施例5)
IP−10アッセイの非常に高い感度及び特異性
IP−10アッセイの非常に高い感度及び特異性を、試験原理の例としてTBを用いて実証している。本発明に記載するIP−10アッセイ非常に高い感度及び特異性は、抗原特異的IP−10(ニルを差し引いた抗原刺激)値のレベルに基づくROC曲線分析を用いて測定する。本実施例のROC曲線分析は、実施例1に記載の12人のTb患者及び11人の健康な対照に基づき、図3に、本発明者は、IP−10試験が活動性結核患者と健康な対照との間を完璧に区別することを示した。本実験では、IP−10試験は、1.0の曲線下面積(AUC)を有する。
【0280】
結論:ヒト結核菌感染の診断において使用するIP−10アッセイは、in vitro TB試験において現在使用されているものよりも良好な性能である、100%の感度及び100%の特異性であることが示された。本発明のIP−10試験は、結核感染を有する患者と有しない患者との間を明確に区別することが可能である。この限られた材料に基づいて、27.6pg/mlと260.5pg/mlの間のカットオフ値を設定して、完璧な区別を達成することが可能である。
【0281】
(実施例6)
IP−10は、免疫抑制されている潜伏TBのための効率的なマーカーである
コルチコステロイド及びメトトレキサート(登録商標)を服用している関節リウマチ(RA)を有する6人の患者からの全血を、ニル、1つのヒト結核菌特異的抗原(ESAT6)、又はマイトジェン(PHA)で刺激した。IP−10濃度は、上述のようにルミネックスを使用して上清において測定した。患者1から3は、既知のQuantiferon試験で陰性であり、患者4から6は、Quantiferon試験で陽性であった。
【0282】
表3に示すように、全ての患者は、免疫抑制されているにもかかわらず、陽性のマイトジェン対照に対する反応において高レベルのIP−10を有していた。高レベルのESAT6刺激IP−10(668から2900pg/mlの範囲)が、潜伏TB(陽性のQuantiferon試験)を有する全ての患者において観察された。結論として、IP−10に基づく試験は、免疫抑制された患者における潜伏TB感染の診断のために使用されてよい。
【0283】
【表3】

【0284】
実施例7
青年時代におけるTB曝露が既知の健康なヒトにおける潜伏TBのためのマーカーとしてのIP−10
青年時代におけるTB曝露が既知であり、PPD変化が立証されており、且つ、結核の化学的予防及び並存疾患を有しない、二人の被験者(RV及びAKA)を、上述の方法を用いて各々IP−10について試験した。ドナーは、Quantiferonで陽性であることが過去の試験から既知である。双方の被験者は、強力な抗原(ESAT−6)特異的なIP−10反応を有していた(302.9pg/ml及び916.1pg/ml)。表9参照のこと。被験者RVは、2ヶ月毎に二回試験して、良好な結果の再現性があった(データは示さず)。
結論:IP−10は、潜伏結核感染についてのマーカーとして強力である。
【0285】
【表4】

【0286】
(実施例8)
抗原特異的なIP−10の放出と組み合わせて、サンプル中の自然発生的なIP−10のレベルは、活動性TBを有する患者から潜伏TB感染を有するか又は有しない健常人を区別することが可能である
実施例6(表3)では、本発明者は、自然発生的な(ニル)IP−10レベルは、関節リウマチを有する潜伏結核感染患者(34pg/ml(31から63pg/ml))及び非感染患者(38pg/ml(35から87pg/ml))の双方において低いことを示した。これらのレベルは、未感染の健康なドナーにおいて認められるレベル(27.1pg/ml(17.7から140.6pg/ml)、表1)及び潜伏感染ドナー(22.5及び10.4pg/ml、表4)と同様の低いレベルであった。本発明者が活動性結核を有しない全ての患者をプールし、これらの低いレベルを、活動性TBを有する患者において認められる高レベルの自然発生的なIP−10放出(150.9pg/ml(61.1から991.9の範囲)、表1)と比較する場合には、より有意な差(p<0.0001、Mann Whitney)が認められる。
結論:自然発生的なIP−10放出及び抗原特異的なIP−10放出の組み合わせは、活動性結核感染と潜伏結核感染との間を区別するために使用してよい。
【0287】
(実施例9)
血漿サンプルの希釈は、IP−10試験の感度を失うことなく実施することが可能である
サンプルの希釈は、希釈溶液の添加による濃度の段階的な低下である。本発明者は、インキュベーション後の血漿サンプルの希釈が、高いIP−10濃度と低いIP−10濃度を有する血漿サンプルの間で数倍も妨げるものであるかどうかを試験し、且つ、当該基尺がIP−10アッセイの感度を妨げるものであるかを試験した。サンプルは、Biosource Luminex Kitで提供されているアッセイ希釈液で希釈した。
【0288】
表5から認められるように、サンプルの希釈は、抗原刺激及びマイトジェン刺激した全血の血漿並びに未刺激(ニル)全血の血漿におけるIP−10レベルの段階的な低下を生じさせる。
【0289】
【表5】

【0290】
図4は、抗原特異的なIFN−γ及びIP−10反応について試験した7人の対照と8人の結核患者からのデータを示す。抗原特異的IP−10生産は、サンプルの1:8倍の希釈後に測定し、IFN−γ反応は未希釈サンプルで測定している。ここでも、本発明者は、高い特異的なIP−10値を認め、これは、1:8の希釈であっても、IP−10がヒト結核菌感染の強力なマーカーであることを示す(p=0.0003)。さらに、1:8希釈におけるIP−10の値(中央値1097pg/ml(225から3045pg/mlの範囲))は、未希釈サンプル材料で分析したIFN−γ(中央値269pg/ml(81から1273pg/mlの範囲))と比較しても高い(p=0.014(Wilcoxon matched pair test))。
【0291】
これらの結果は、IP−10は診断アッセイにおける非常に強力なマーカーであり、IP−10試験は、サンプル材料が非常に乏しい場合の試験設定において使用することが可能であることを示す。このことは、非常に少量のサンプル材料のみが利用可能である場合において、(インキュベーションの前又は後に)サンプルを希釈することが可能である際に、IP−10試験の適用の範囲全体を広げる(例えば、非常に低い血液容量を有する乳幼児について市販製品を直接適用可能である)。
【0292】
結論:血漿サンプルは、IP−10試験において感度を失うこと無く希釈し得ることを示されている。
【0293】
(実施例10)
IP−10はIFN−γよりも感度が良好であり、結核感染のin vitro診断を改善する
IP−10が現在のQFT−IT試験の感度を改善する潜在能力を有するかどうかを調べるために、本発明者は、陰性又は測定不能のQFT−IT試験結果を有する結核患者におけるIP−10反応を試験した(患者の特性及び個々の測定については表6を参照のこと)。すなわち、これらの患者は、IFN−γ試験において偽陰性であった。図5は、陰性又は測定不能のQFT試験結果を有する7人のTB患者における抗原特異的なIP−10及びIFN−γ反応を示す。QFT−IT ELISAによって測定された抗原特異的なIFN−γ反応は、0から12.8pg/mlの範囲であり、一方、抗原特異的なIP−10反応は0から532pg/mlの範囲であった。7人の患者のうち、3人は、10pg/ml未満の抗原特異的な反応を有し、IP−10反応しなかったが、他の4人の患者は318pg/ml(196から532pg/mlの範囲)のIP−10レベルの中央値で反応した。陰性のQFT−IT試験及び陽性のIP−10反応を有する4人の患者のうち、2人は、32細胞/μl及び300細胞/μlの各々のCD4細胞数でHIVに共感染していた。マイトジェン特異的なIP−10放出は全てのドナーにおいて非常に高く、394から2800pg/mlの範囲の値であった。これらの驚くべき発見は、IFN−γに基づく試験と比較して、IP−10に基づくin vitro試験の感度の増大を明示するものである。
【0294】
【表6】

【0295】
(実施例11)
強力な抗原特異的IP−10反応が短いインキュベーション及び長いインキュベーションで生じ得る
表7では、本発明者は、6から120時間のインキュベーションで試験した典型的なTB患者からの未刺激反応及び抗原刺激反応を示している。表7から認められるように、非常に短いインキュベーション時間で、抗原刺激によってIP−10反応を誘導することが可能である。1ng未満が6時間で生産され、非常に大きな反応である3から6ngが120時間のインキュベーションの間に維持される。これらの発見は、IP−10試験の性能が、非常に強力であり、非常に短いインキュベーション時間(6時間未満)及び非常に長いインキュベーション時間で実施できることを示す。
【0296】
【表7】

【0297】
(実施例12)
強力な抗原特異的IP−10反応が、広範なインキュベーション温度で生じ得る
表8から認められるように、広範な温度で抗原刺激によるIP−10反応を誘導することが可能である。200pg/ml超の抗原特異的なIP−10が30℃で生産され、これは30℃未満でインキュベートすることも可能であることを示唆しており、例えば30から37℃の範囲の温度におけるインキュベートが、強力な抗原特異的反応を生じさせるであろう。
【0298】
【表8】

【0299】
(実施例13)
少量の全血をインキュベーション前に希釈してよく、依然として強力なIP−10反応を生じる
1ml(1:0)、0.5ml(1:1)、及び0.1ml(1:10)の全血のサンプルを、RPMI−1640で1mlの終容量まで希釈した。希釈した全血は、QFT−IT管で24時間に亘って刺激した。希釈係数について値を修正していない。表9から認められるように、インキュベーション前にRPMI−1640で全血を希釈することが可能であり、依然として80pg/mlを超える抗原特異的なIP−10反応を生じる。このことは、更なる希釈が可能であり、非常に少量の血液及び細胞を使用する試験キットが開発可能であることを示す。
【0300】
【表9】

【0301】
(実施例14)
25℃におけるIP−10安定性
4人のドナーからのPHA刺激した全血に由来する血漿のアリコートを、25℃で、30分間、1時間、2時間、4時間、8時間、又は24時間に亘って分析前に保存した。IP−10が、25℃で24時間経っても分解しない非常に安定な分子であることが、表10から明らかである。
【0302】
【表10】

【0303】
(実施例15)
5℃におけるIP−10の安定性
4人のドナーからのPHA刺激全血に由来する血漿のアリコートを、5℃で、12時間、24時間、72時間、144時間、又は216時間(9日間)に亘って分析前に保存した。IP−10が、5℃で216時間(9日間)経っても分解しない非常に安定な分子であることが、表11から明らかである。
【0304】
【表11】

【0305】
(実施例16)
凍結融解サイクルにおけるIP−10の安定性
4人のドナーからのPHA刺激全血に由来する血漿のアリコートを凍結(−80℃)し、融解することを分析前に5回繰り返した。IP−10は、5回の凍結融解サイクルを経ても分解しない非常に凍結融解に対して安定な分子であることが、表12から明らかである。
【0306】
【表12】

【0307】
(実施例17)
診断バイオマーカーとしてのIP−10はプラットホーム非依存的である
IP−10レベルは、ルミネックスを使用して測定可能なだけでない。実施例17では、本発明者は、ELISA技術(Biosource)を用いて4人の活動性TB患者及び4人の健康な対照に由来するサンプルを測定した。
【0308】
表13から理解されるように、4人の患者全員が、457pg/mlを超える抗原特異的IP−10を生産するが、対照の全員が13pg/ml未満のIP−10を生産している。
【0309】
【表13】

【0310】
(実施例18)
IP−10及び他の既知のバイオマーカーの測定を組み合わせて、より強力な併用マーカーを創出し、陽性反応の数を増大させる
未知の理由から、数人の個体は、抗原刺激後に1つのバイオマーカーには強力に反応するが、他のバイオマーカーには反応しない。例えば、数人の個体は、IP−10又はIFN−γ反応のいずれかを示さない可能性があり、或いは、低レベルのみのIP−10又はIFN−γを生じる可能性がある。この場合に、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のバイオマーカーの同時測定が、アッセイの感度を増大させ、陽性反応の数を増大させるであろう。そのため、IP−10の測定と、例えば、INF−γの測定とを組み合わせることによって、単独のバイオマーカーのアネルジーに対して、より脆弱ではない診断的予測をすることが可能である。
【0311】
このバイオマーカーを併用するストラテジーの1つの手法が表15に認められ、そこでは、IP−10と表6からのQuantiferonの結果とを以下のマトリックスに組み合わせている:
患者が少なくとも1つの試験に陽性に反応した場合には、その患者は感染していると解する。本実施例では、IP−10試験で陽性であってQFT−ITに陰性に反応する者は存在しなかった。
【0312】
【表14】

【0313】
バイオマーカーを組み合わせることからなる他のより複雑な方法が、表16に認められる。抗原特異的なIP−10及びIFN−γ反応を、加算及び乗算によって組み合わせている。7人の曝露されていない対照及び8人の活動性TB患者を評価した。抗原特異的なIP−10及びIFN−γ反応の中央値及び範囲、並びに加算及び乗算したIP−10及びIFN−γ反応の中央値及び範囲が表14から認められる。加算によって、最も反応する対照と最も反応しない患者との間の差が、IFN−γについては62pg/ml及びIP−10については1727pg/mlから1863pg/mlまで増大し、乗算によって164642(pg/ml)まで増大する。乗算による差におけるこの驚くべき明確な増大は、平均に基づく相対的な数倍の差を膨大な379274倍にまで増大させ、これは、患者と対象の間で619倍の差を有する抗原特異的なIP−10又は1074倍の差を有するIFN−γと比較される。
【0314】
【表15】

【0315】
(実施例19)
IP−10アッセイを用いるクラミジアトラコマティス感染の診断
PBMCを、クラミジアトラコマティス感染を有する7人の患者、及びクラミジア感染が記録されていない7人のドナーから単離した。PBMCを、5日間培養して刺激し、ルミネックスを使用してIP−10生産について上清を分析し、ELISAを使用してIFN−γ生産について上清を分析した。高レベル(0.5ng/ml超)のPBMC培養上清IP−10が、クラミジアトラコマティス性感染症患者におけるクラミジアトラコマティス血清型D抽出物抗原で刺激することによって誘導されることが、表16から認められる。数人の対象が非特異的な刺激に反応するが、より低いレベルであることが明らかである。0.5ng/ml超という大きな抗原特異的IP−10生産が存在する。
【0316】
結論:IP−10は、クラミジア感染の新規な診断用バイオマーカーである。
【0317】
【表16】

[参考文献]



【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)哺乳動物から得られたサンプルを少なくとも1つの試験抗原と共にインキュベートする工程、
b)前記サンプル中のIP−10レベルを測定する工程、
c)前記測定したIP−10レベルを基準レベルと比較し、それによって、前記哺乳動物が前記試験抗原に対する免疫反応を生じさせる前記少なくとも1つの試験抗原と過去に遭遇していたか、又は前記試験抗原に対する免疫交差反応を生じさせる他の抗原と過去に遭遇していたかどうかを決定する工程
を含む、免疫学的方法。
【請求項2】
a)哺乳動物から得られたサンプルを少なくとも1つの試験抗原と共にインキュベートする工程であって、前記試験抗原がPPDではないことを条件とする工程、
b)前記サンプル中のIP−10レベルを測定する工程、
c)前記測定したIP−10レベルを基準レベルと比較し、それによって、前記哺乳動物が微生物に感染しているかどうかを決定する工程、
d)前記測定したIP−10レベルが基準レベルを超える場合に、前記哺乳動物が感染しているかどうかを決定する工程
を含む、感染の診断方法。
【請求項3】
前記サンプルが少なくとも2つの画分に分けられ、
a)前記サンプルの第一の画分を前記試験抗原と共にインキュベートして、反応サンプルを作り出し、
b)前記サンプルの第二の画分を不活性溶液と共にインキュベートして、ニルサンプルを作り出し、
c)前記2つの画分中のIP−10レベルを測定し、
d)前記反応サンプルで測定したIP−10から前記ニルサンプルで測定したIP−10レベルを差し引いて、前記サンプルの抗原依存的なIP−10反応を決定し、
e)前記抗原依存的なIP−10反応又はそれに由来する値を基準レベル又はそれに由来する値と比較し、
それによって、前記哺乳動物が、前記試験抗原と過去に遭遇し、かくして、前記試験抗原に対する免疫反応を生じているか、又は前記抗原に対する免疫交差反応を生じさせる他の抗原と過去に遭遇していたかどうかを決定する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルを3つの画分に分けて、前記サンプルの第三の画分をT細胞アクチベーターと共にインキュベートし、陽性対照を作り出すことを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
基準レベルを超える抗原依存的なIP−10反応がニルと共に、哺乳動物が活動性感染、潜伏感染、最近の感染、及び/又は長期間の潜伏感染を有することを示す、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記感染が微生物によって引き起こされるか又は引き起こされた、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記微生物が、マイコバクテリア、リーシュマニア、クラミジア、トリパノソーマ、及びスキストソーマからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記マイコバクテリアが、ヒト結核菌複合生物(ヒト結核菌、ウシ結核菌、及びマイコバクテリウムアフリカナム)、及び相違領域(RD1)が欠失していないマイコバクテリア(マイコバクテリウムカンサシ、マイコバクテリウムツルガイ、マイコバクテリウムマリナム、マイコバクテリウムフラベセンス、マイコバクテリウムガストリ)、又はヒトに対して病原性であるマイコバクテリア(マイコバクテリウムアビウム、マイコバクテリウムレプラ、又は他の非結核性マイコバクテリア)に属する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マイコバクテリアがヒト結核菌である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの試験抗原が、ESAT−6、CFP−10、TB7.7、Ag85、HSP65、及びRD−1抗原からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
微生物がクラミジアである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記クラミジアが、クラミジアトラコマティス、クラミジアニューモニア、クラミジアシッタシ、クラミジアムリダルム、及びクラミジアスイスからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗原が、血清型D抽出物、主要外膜タンパク質(MOMP)、システインリッチ外膜タンパク質(OMP)、OMP2、OMP3、多型OMP(POMP)、クラミジアニューモニアのアデノシンジホスフェート/アデノシントリホスフェートトランスロカーゼ、ポリンBタンパク質(PorB)、及びCT521からなる群から選択される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
微生物がリーシュマニアである、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
微生物がトリパノソーマである、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
微生物がスキストソーマである、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプルが血液に由来する、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
a)抗原刺激に対する反応におけるMCP−1のレベルを測定し、
b)測定したIP−10のレベルと測定したMCP−1のレベルとを組み合わせ、且つ
c)前記組み合わせたレベルを組み合わせた基準レベルと比較すること
を更に含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
a)前記抗原刺激に対する反応におけるIL−2のレベルを測定し、
b)測定したIP−10のレベルと測定したIL−2のレベルとを組み合わせ、且つ
c)前記組み合わせたレベルを組み合わせた基準レベルと比較すること
を更に含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
a)前記抗原刺激に対する反応におけるIFN−γ並びに任意にMCP−1及び/又はIL−2のレベルを測定し、
b)測定したIP−10のレベルと測定したIFN−γ並びに任意にMCP−1及び/又はIL−2のレベルとを組み合わせ、且つ
c)前記組み合わせたレベルを組み合わせた基準レベルと比較すること
を更に含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−502200(P2010−502200A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527015(P2009−527015)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【国際出願番号】PCT/DK2007/000399
【国際公開番号】WO2008/028489
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(509062952)
【Fターム(参考)】