説明

IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークにおける障害回復

IPマルチメディア・サブシステム(IMS)・ネットワーク内のサービング呼セッション制御機能(S−CSCF)における障害からの回復を容易にする方法が提供される。この方法は、プロキシ呼セッション制御機能(P−CSCF)において、IMSネットワークに以前登録されたアイデンティティを有するユーザ機器(UE)であって、当該UEに対して所与のS−CSCFが選択されているUEから送信された、SIPリクエストを受信する工程を有する。P−CSCFにおいて、所与のS−CSCFに障害が生じたこと、または、所与のS−CSCFに到達不可能であることが判定される。S−CSCFに障害が生じたかS−CSCFに到達不可能である場合は、P−CSCFからUEへ再登録メッセージが送信され、UEにおける再登録メッセージの受信に応じて、当該UEは、IMSネットワークへの登録手順を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はIPマルチメディア・サブシステム・ネットワークにおける障害回復に関し、特に、サービング呼セッション制御機能の障害からの回復を可能にする方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IPマルチメディア・サービスは、音声、動画、メッセージング、データ等の動的な結合を同一セッション内で提供する。結合することが可能な基本アプリケーションやメディアの数の増大に伴い、エンドユーザに提供されるサービスの数は増大し、個人間の通信体験はより豊かなものになるだろう。これは、いわゆる「結合(combinational)IPマルチメディア」サービスを含む、新世代のパーソナライズされたリッチなマルチメディア通信サービスにつながるだろう。
【0003】
UMTS(Universal Mobile Telecommunications System:ユニバーサル移動電気通信システム)は、より高いデータレートと高度なサービスを加入者に提供するために設計された第三世代無線システムである。UMTSはGSM(Global System for Mobile Communications:移動通信用グローバル・システム)の後継であり、GSMとUMTSとの間にはGPRS(General Packet Radio Service:汎用パケット無線サービス)という重要な発展の歩みが存在する。GPRSは、GSMコア・ネットワークにパケット交換を導入し、パケット・データ・ネットワーク(PDN)への直接のアクセスを可能にする。これは、GSM呼ネットワークを介したISDNが有する64kbpsの限界をはるかに超えた高データレートのパケット交換転送を可能にし、2MbpsまでのUMTSデータ転送レートに必要不可欠である。UMTSは、ETSI(European Telecommunication Standards Institute:欧州電気通信標準化機構)、ARIB(Association of Radio Industry Businesses:電波産業会)その他のような、地域の標準化団体のコングロマリットである第三世代パートナーシップ・プロジェクト(3GPP)によって標準化されている。ネットワーク・アーキテクチャの詳細については非特許文献1を参照のこと。
【0004】
UMTSのアーキテクチャには、新しいIPマルチメディア・サービスだけでなく従来の電話通信もサポートする、IPマルチメディア・サブシステム(IMS)として知られているサブシステムが含まれる(非特許文献2〜8)。IMSは、標準化されているIMSサービス・イネーブラを使用して、エンドユーザのパーソン対パーソン(人対人)の通信体験を豊かにするための鍵となる特性を提供する。ここで、IMSサービス・イネーブラは、IPベース・ネットワーク越しのパーソン対コンテンツ(クライアント対サーバ)のサービスと同様に、新しい豊かなパーソン対パーソン(クライアント対クライアント)の通信サービスを容易にする。IMSは、インターネットと同様に、PSTN/ISDN(Public Switched Telephone Network(公衆交換電話網)/Integrated Services Digital Network(統合サービスデジタル網))の両方に接続することが可能である。
【0005】
IMSは、ユーザ端末間(または、ユーザ端末とアプリケーション・サーバの間)における呼又はセッションをセットアップし、または、制御するために、SIP(Session Initiation Protocol:セッション開始プロトコル)を使用する。SIPシグナリング(信号伝達)によって伝達されるSDP(Session Description Protocol:セッション記述プロトコル)は、セッションのメディア・コンポーネントを記述し、ネゴシエーションするために用いられる。SIPはユーザ対ユーザのプロトコルとして作成されたが、IMSは、これに従って、オペレータ及びサービス・プロバイダが、サービスへのユーザ・アクセスを制御し、ユーザに課金することを可能にしている。3GPPは、IMS内の構成要素間だけでなく、UE(User Equipment:ユーザ機器)とIMSとの間のシグナリングにSIPを選択した(ただし、Diameter等の他のプロトコルもネットワークのシグナリングに使用されている)。
【0006】
UMTS通信ネットワークやこのようなネットワーク内での様々な構成要素の動作の具体的な詳細は、インターネット〈http://www.3gpp.org〉から利用可能なUMTSの技術仕様書から知ることが可能である。UMTS内でのSIPの使用のさらなる詳細は、非特許文献4から知ることができる。
【0007】
添付図面の図1は、GPRS/PSアクセス・ネットワークの場合に、移動ネットワーク・アーキテクチャにIMSがどのように適合しているかを模式的に示している(もちろん、IMSが他のアクセス・ネットワーク越しに動作することは可能である)。CSCF(Call/Session Control Function:呼セッション制御機能)は、IMS内でSIPプロキシとして動作する。3GPPアーキテクチャは、3種類のCSCFを規定している。すなわち、SIP端末にとって、IMS内での最初のコンタクト・ポイントとなるプロキシCSCF(P−CSCF)と、ユーザが加入しているサービスをそのユーザに提供するサービングCSCF(S−CSCF)と、正しいS−CSCFを識別し、そのS−CSCFに対して、SIP端末からP−CSCFを介して受信したSIPリクエスト(要求)を転送する役割を有するインテロゲーティングCSCF(I−CSCF)とである。
【0008】
ユーザは、特定のSIP REGISTER法を用いてIMSに登録(レジストレーション、レジスタ)する。これは、IMSに参加し、SIPユーザ・アイデンティティが到達可能なアドレスをIMSにアナウンスするための手法である。3GPPにおいて、SIP端末が登録を行う場合、IMSは、ユーザの真正を検証し、そのユーザに対して、利用可能なS−CSCFの集合の中から一つのS−CSCFを割り当てる。S−CSCFを割り当てる基準は3GPPで定められていないが、これには、負荷分配やサービス要件が含まれるかもしれない。なお、S−CSCFの割り当ては、IMSベース・サービスへのユーザ・アクセスを制御する(そして課金する)上でキーとなることに留意すべきである。
【0009】
登録プロセスの間、S−CSCFがまだ選択されていないときに、S−CSCFを選択するのはI−CSCFの責任である。I−CSCFは、ホーム・ネットワークのHSS(Home Subscriber Server:ホーム加入者サーバ)から必要なS−CSCFの性能を受信し、受信した性能に基づいて適切なS−CSCFを選択する。SIP REGISTERメッセージは選択されたS−CSCFへ転送され、そのS−CSCFは、そのアイデンティティを、200 OK応答のSIPサービス・ルート・ヘッダの中に追加する。P−CSCFがS−CSCFから200 OKを受信すると、P−CSCFは、サービス・ルート・ヘッダからそのS−CSCFのアイデンティティを知る。その後、登録済みのユーザがSIPリクエストをIMSへ送信した場合、P−CSCFは、そのSIPリクエストを選択されたS−CSCFへ転送することができる。なお、ユーザが他のパーティに呼び出されたが、そのユーザが現在S−CSCFで割り当てられていない場合、そのユーザのためにS−CSCFの割り当てがI−CSCFによっても実行されることに留意すべきである。これは「終端する」呼のケースと呼ばれる。終端する呼のケースに対しては、S−CSCFの割り当ては一時的であり、その後、UEはさらなる呼を開始するためにIMSに登録を行う必要がある。
【0010】
IMSサービス・ネットワーク内において、IMSサービスの機能性を実装するために、アプリケーション・サーバ(AS)が提供される。アプリケーション・サーバはIMSシステム内のエンドユーザに対してサービスを提供し、3GPP規定のMrインタフェース越しにエンドポイントとして接続されるか、または、3GPP規定のISCインタフェース越しにS−CSCFによって「リンク・イン」されるかもしれない。異なる呼のケースに対して異なるIFCが適用されるかもしれない。IFCは、IMS登録手順の間に、S−CSCFがユーザのユーザ・プロファイルの一部としてHSSから受信する。あるアプリケーション・サーバは、加入者(着信側または発信側の加入者、いずれにせよアプリケーション・サーバを制御するネットワークによって「所有」される)のアイデンティティに従ってアクションを実行するだろう。例えば、呼を転送する場合、適切な(終端の)アプリケーション・サーバは、所与の加入者への呼が転送される新たな終端のパーティを判定するだろう。S−CSCFで受信されたSIPメッセージが特定のSIP ASへ転送されるべきであることをIFCが示している場合、そのASはメッセージ・パスに追加される。一度、SIPメッセージがASによってS−CSCFへ返されると、それは最終目的地へ向けて転送されるか、または、IFC内にそのことが示されているときは他のASへ転送される。
【0011】
現在のIMSコア仕様は、ネットワーク・エレメントでの障害の後に定常状態へ回復する手順を含んでいない。具体的には、S−CSCFの障害が初期登録の場合についてのみ検討されている(すなわち、I−CSCFが選択されたS−CSCFにコンタクトできない場合、代わりのものを選択することができる)。この問題について検討がなされている(非特許文献9〜11)が、提案されている解決法は一般に、同一のIMSサブスクリプションに対して二重にS−CSCFの割り当てがなされる可能性があり、登録状態が失われる問題に苦しんでいる。この障害ケースをカバーする作業項目は作成されており、研究要件が非特許文献12に規定されている。障害回復は、非特許文献8のリリース8で提供されることが予想される。
【0012】
S−CSCFの障害は、短期(一時的)または長期(永続的)になりうる。永続的な障害の場合、閾値回数の再試行が到達した後に、選択されたS−CSCFから応答が全く到達しないようなときは、P−CSCFは、エラーメッセージ(408タイムアウト)をUEに返すだろう。このことは図2に示されており、図2では、UEがSIPリクエストをP−CSCFへ送信することにより処理が開始されている。現在では、UEがタイムアウト・メッセージに対してどのように対応すべきかは特定されていない。一つの可能性としては、ある定められた期間、例えば24時間の後に、UEが再度、登録を試みるという対応が挙げられるだろう。しかし、この動作は確実なものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】3GPP TS 23.002
【非特許文献2】3GPP TS 22.228
【非特許文献3】3GPP TS 23.228
【非特許文献4】3GPP TS 24.229
【非特許文献5】3GPP TS 29.228
【非特許文献6】3GPP TS 29.229
【非特許文献7】3GPP TS 29.328
【非特許文献8】3GPP TS 29.329 リリース5−8
【非特許文献9】3GPP SA2
【非特許文献10】3GPP CT1
【非特許文献11】3GPP CT4
【非特許文献12】3GPP TS 23.820 v0.1.0(C4−070890)
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、UEのIMS登録におけるS−CSCFの割り当ての後の、S−CSCFの障害から回復する手法を提供することである。この目的は、P−CSCFからUEに対して、そのUEにIMSへの再登録を実行させる再登録メッセージを送信することにより実現される。
【0015】
本発明の第1の側面によれば、IPマルチメディア・サブシステム・ネットワーク内のサービング呼セッション制御機能における障害からの回復を容易にする方法が提供される。この方法は、プロキシ呼セッション制御機能において、IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークに以前登録されたアイデンティティを有するユーザ機器であって、当該ユーザ機器に対して所与のサービング呼セッション制御機能が選択されているユーザ機器から送信された、SIPリクエストを受信する工程を有する。プロキシ呼セッション制御機能は、所与のサービング呼セッション制御機能に障害が生じたこと、または、所与のサービング呼セッション制御機能に到達不可能であることを判定し、ユーザ機器へ再登録メッセージを送信する。ユーザ機器における再登録メッセージの受信に応じて、当該ユーザ機器は、IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークへの登録手順を実行する。
【0016】
本発明の実施形態によれば、S−CSCFの障害がユーザ機器に対するIMSサービスの喪失という結果にならないことが確実になり、また、ユーザ機器が予測可能な方法でS−CSCFの障害に対応できることが確実となる。
【0017】
上記プロキシ呼セッション制御機能は再登録メッセージの中に遅延値を含ませ、この遅延値により、ユーザ機器は、特定されている遅延の間、再登録の開始を遅延させてもよい。または、プロキシ呼セッション制御機能は再登録メッセージの中に遅延値を含ませ、この遅延値により、ユーザ機器は、特定されている遅延の間、再登録の開始を遅延させてもよい。これら両方の手法により、IMSネットワーク内のS−CSCFにおける障害の後に、シグナリングの負荷が時間をかけて拡散される結果となりやすい。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、上記方法は、ユーザ機器において、再登録メッセージを受信する工程と、続いて、IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークへの登録手順を実行する工程とをさらに有してもよい。ユーザ機器において、以前割り当てられたサービング呼セッション制御機能に障害が生じたことを示すインジケーションを(任意に、障害が生じたサービング呼セッション制御機能の識別情報も)、登録手順を開始するSIP登録メッセージの中に含ませることができ、したがって、これにより、IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークのインテロゲーティング呼セッション制御機能は、障害が生じたサービング呼セッション制御機能を示すか識別する、サービング呼セッション制御機能の性能に係るリクエストを、ホーム加入者サーバへ送信することができる。
【0019】
本実施形態は、I−CSCFと障害が生じたS−CSCFとの間でシグナリングを繰り返すことを防止できるという利点を有する。UEからI−CSCFへ登録リクエストが送信されると、即座に、新たなS−CSCFが選択される結果となる。
【0020】
本発明の第2の側面によれば、IPマルチメディア・サブシステム・ネットワーク内のプロキシ呼セッション制御機能として動作する装置が提供される。この装置は、
ユーザ機器から送信されたSIPリクエストを受信する入力手段と、
ユーザ機器に関連づけられたアイデンティティにすでに割り当てられているサービング呼セッション制御機能を識別し、当該割り当てられているサービング呼セッション制御機能に障害が生じたこと、または、当該サービング呼セッション制御機能に到達不可能であることを判定する手段と、
ユーザ機器にIPマルチメディア・サブシステム・ネットワークへの再登録を実行させるものとして特定される再登録メッセージを、ユーザ機器へ送信する手段と
を備える。
【0021】
本発明の第3の側面によれば、IPマルチメディア・サブシステム・ネットワーク内のインテロゲーティング呼セッション制御機能として動作する装置が提供される。この装置は、
ユーザ機器からSIP登録メッセージを受信する入力手段と、
SIP登録メッセージに、以前割り当てられたサービング呼セッション制御機能に障害が生じたことを示すインジケーションが含まれるか否かを判定する手段と、
SIP登録メッセージにインジケーションが含まれる場合、以前割り当てられたサービング呼セッション制御機能に障害が生じたことを示すインジケーションを含む、サービング呼セッション制御機能の性能に係るリクエストを、ホーム加入者サーバへ送信する手段と
を備える。
【0022】
本発明の第4の側面によれば、IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークにより促進されるサービスへのユーザ・アクセスを提供するユーザ機器が提供される。このユーザ機器は使用において、ユーザ機器に対するサービング呼セッション制御機能の割り当てをもたらす、IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークの登録を実行し、IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークに対してSIPリクエストを送信し、割り当てられたサービング呼セッション制御機能における障害の結果として、プロキシ呼セッション制御機能から再登録メッセージを受信し、IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークへの再登録を実行して、再登録メッセージの受信に応じる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】上述のように、IPマルチメディア・サブシステムの3G移動通信システムへの統合を模式的に示す図である。
【図2】S−CSCFの障害に関連するIMSシグナリングを示す図である。
【図3】S−CSCFの障害の問題に対する可能な解決法に関連するIMSシグナリングを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る、S−CSCFの障害の問題に対する可能な解決法に関連するIMSシグナリングを示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る、プロキシ呼セッション制御機能の機能要素を示す単純化した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
既存の手法が、登録手順におけるS−CSCFの障害からの回復を提供することが分かるだろう。また、終端する呼のケースにおける障害からの回復は、I−CSCFが、SIPリクエスト・パス内に必ず含まれるときにすでに提供されることも分かるだろう。以下、発信する呼のケースにおけるS−CSCFの障害からの回復の問題について説明する。
【0025】
図3のシグナリング図において、UE1は、すでにIMSネットワークに登録されており、S−CSCF2が割り当てられていると想定する。ステップ1において、UEは、SIPリクエスト(例えば、SIP INVITE)をIMSネットワークに向けて送信する。このリクエストは、標準IMSルーティング・ポリシーに従って、まずP−CSCF3へルーティングされる。登録手順の間、P−CSCFにはS−CSCFのアドレスが通知されており、これによりそのアドレスのS−CSCFにリクエストを転送することができるだろう。さらに、登録とSIPリクエストの送信との間に、S−CSCFに障害が発生し、S−CSCFは、もはやP−CSCFから到達することはできないと想定する。この状態はP−CSCFにより検出されるはずである。このような検出を実現する多数の様々な手法が利用可能である。例えば、
a)P−CSCFは、ネットワーク管理システムの結果として、S−CSCFが現在利用可能でないことについて事前の情報を有していてもよい。
b)P−CSCFは、例えば「ハートビート」手法の手段により、そのP−CSCFが自らS−CSCFを監視した結果として、そのS−CSCFが現在利用可能でないことについて事前の情報を有していてもよい。
c)P−CSCFは、信頼性のあるトランスポート(例えば、TCP又はSCTP)を介してSIPリクエストを送信することを試みてもよいが、トランスポート接続の確立は可能でないと判定する。
d)P−CSCFは、信頼性のないトランスポート(例えば、UDP)を介してリクエストを送信することを試みてよく、宛先到達不可エラー・インジケーションを有するICMPメッセージのような、到達不可のインジケーションをトランスポート・ネットワークから受信する。
e)P−CSCFは、P−CSCFが応答を待っている間にタイマがタイムアウトしたことに応じて、SIPリクエストを送信してもよい。これは、図3のステップ2により示されているケースである。
【0026】
ここで、関連するIMS標準(非特許文献4)に対して、以下SIP「再登録(リ・レジスタ)」と呼ぶ、新たなSIPエラー応答を追加することを提案する。S−CSCFが利用可能でないことをP−CSCFが(上述の手法a)〜e)の一つを用いて)検出した場合、P−CSCFは、新たなエラー応答をUEに対して返す(ステップ3)。UEでのエラー応答の受信に応じて、UEは、繰り返しの登録手順を開始する。現在特定されている手順をI−CSCFに実装することを想定すると、再登録によって、I−CSCFは、ほぼ確実に、障害が発生したS−CSCFと同じS−CSCFを再度選択するだろう。しかし、そのS−CSCFからの応答がないことに応じて、I−CSCFは代わりのS−CSCFを選択し、登録は進行するだろう。新たに選択されたS−CSCFは、UEに関連付けられたデータや障害が発生したS−CSCFにより失われたデータを復元してもよい。
【0027】
P−CSCFは、UEが所与の遅延の後に新たな登録を開始するような、おそらくは遅延または遅延の範囲を定めた、UEに対するインジケーションを、再登録の応答の中に任意に有してもよい。これにより、P−CSCFが、到着するSIPリクエストの負荷をネットワークに向けて分散し、大きなネットワーク障害が生じたときにシグナリングの過負荷を防止するための手法が提供される。ここで提案する、同様の状況に対する他の選択肢は、P−CSCFが、再登録に続くSIP INVITE(又は他のリクエスト)の再試行を遅延させるための、UEに対するインジケーションを追加できることである。
【0028】
図5は、本発明の実施形態に係るP−CSCF1の極端に単純化した形態を示している。SIPリクエストが、UEから入力部2において受信される。処理手段3は、例えば、選択されたS−CSCFからの応答がないことの結果として、そのS−CSCFに障害が生じたことを判定する。さらなる処理手段4は、再登録SIPメッセージをUEへ返す。
【0029】
この技術分野の当業者は、本発明の技術的範囲から離れることなく、上述の実施形態に様々な修正を行ってもよいことを理解するだろう。例えば、UEが、再登録SIPメッセージを受信したことから、以前割り当てられたS−CSCFに障害が生じたことを暗黙に知ることができたときは、UEは、登録リクエストの中に、S−CSCFに障害が生じたことのインジケーションを含めることができるだろう。I−CSCFは、このインジケーションを用いて新たなS−CSCFを直接再度選択してもよく、これにより最初の段階で障害が生じたS−CSCFに対してI−CSCFがリクエストを送信する必要性が回避される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPマルチメディア・サブシステム・ネットワーク内のサービング呼セッション制御機能における障害からの回復を容易にする方法であって、
プロキシ呼セッション制御機能において、前記IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークに以前登録されたアイデンティティを有するユーザ機器であって、当該ユーザ機器に対して所与のサービング呼セッション制御機能が選択されているユーザ機器から送信された、SIPリクエストを受信する工程と、
前記プロキシ呼セッション制御機能において、前記所与のサービング呼セッション制御機能に障害が生じたこと、または、前記所与のサービング呼セッション制御機能に到達不可能であることを判定する工程と、
前記プロキシ呼セッション制御機能から前記ユーザ機器へ再登録メッセージを送信する工程と
を有し、
前記ユーザ機器における前記再登録メッセージの受信に応じて、当該ユーザ機器は、前記IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークへの登録手順を実行する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記プロキシ呼セッション制御機能は前記再登録メッセージの中に遅延値を含ませ、
前記遅延値により、前記ユーザ機器は、特定されている遅延の間、再登録の開始を遅延させる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロキシ呼セッション制御機能は前記再登録メッセージの中に遅延値を含ませ、
前記遅延値により、前記ユーザ機器は、IPマルチメディア・サブシステムの登録の成功に続いて、特定されている遅延の間、前記SIPリクエストの再送を遅延させる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ユーザ機器において、前記再登録メッセージを受信する工程と、
続いて、前記IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークへの登録手順を実行する工程と
をさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ユーザ機器において、以前割り当てられた前記サービング呼セッション制御機能に障害が生じたことを示すインジケーションを、前記登録手順を開始するSIP登録メッセージの中に含ませる工程をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ユーザ機器において、障害が生じた前記サービング呼セッション制御機能の識別情報を、前記SIP登録メッセージの中に含ませる工程をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークのインテロゲーティング呼セッション制御機能において、前記SIP登録メッセージの受信に応じて、障害が生じた前記サービング呼セッション制御機能を示すか識別する、サービング呼セッション制御機能の性能に係るリクエストを、当該インテロゲーティング呼セッション制御機能からホーム加入者サーバへ送信する工程をさらに有することを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
IPマルチメディア・サブシステム・ネットワーク内のプロキシ呼セッション制御機能として動作する装置であって、
ユーザ機器から送信されたSIPリクエストを受信する入力手段と、
前記ユーザ機器に関連づけられたアイデンティティにすでに割り当てられているサービング呼セッション制御機能を識別し、当該割り当てられているサービング呼セッション制御機能に障害が生じたこと、または、当該サービング呼セッション制御機能に到達不可能であることを判定する手段と、
前記ユーザ機器に前記IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークへの再登録を実行させるものとして特定される再登録メッセージを、前記ユーザ機器へ送信する手段と
を備えることを特徴とする装置。
【請求項9】
IPマルチメディア・サブシステム・ネットワーク内のインテロゲーティング呼セッション制御機能として動作する装置であって、
ユーザ機器からSIP登録メッセージを受信する入力手段と、
前記SIP登録メッセージに、以前割り当てられたサービング呼セッション制御機能に障害が生じたことを示すインジケーションが含まれるか否かを判定する手段と、
前記SIP登録メッセージに前記インジケーションが含まれる場合、以前割り当てられたサービング呼セッション制御機能に障害が生じたことを示すインジケーションを含む、サービング呼セッション制御機能の性能に係るリクエストを、ホーム加入者サーバへ送信する手段と
を備えることを特徴とする装置。
【請求項10】
IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークにより促進されるサービスへのユーザ・アクセスを提供するユーザ機器であって、使用において、
前記ユーザ機器に対するサービング呼セッション制御機能の割り当てをもたらす、IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークの登録を実行し、
前記IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークに対してSIPリクエストを送信し、
前記割り当てられたサービング呼セッション制御機能における障害の結果として、プロキシ呼セッション制御機能から再登録メッセージを受信し、
前記IPマルチメディア・サブシステム・ネットワークへの再登録を実行して、前記再登録メッセージの受信に応じる
ことを特徴とするユーザ機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−541348(P2010−541348A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526168(P2010−526168)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060324
【国際公開番号】WO2009/039890
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】