説明

ISDN付加サービスの識別装置および識別方法

【課題】ISDN回線加入者が自己の契約している回線付加サービスを容易に確認できない点・および第三者が加入者の契約している回線付加サービスを容易に調べられない点を解決すること。
【解決手段】付加サービスの調査の対象となる電話回線加入者から、ISDN回線上に設けられた識別装置に、通話・通信を行わせ、その際にISDN網から発せられたITU-T勧告Q.931に規定されたプロトコル情報のうち加入者呼設定用メッセージ中の発番号情報要素の識別子を取り出し、その値を単独で、またはその他の情報要素の組み合わせによって、対象となる加入者が契約している付加サービスの識別を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ISDN(Integrated Services Digital
Network)網を利用してISDN付加サービスを識別する装置およびその方法に関するものである。

【背景技術】
【0002】
公衆ISDNサービスには、通話・通信の品質保持だけでなく、利便性を向上させるための基本サービスとして発信者番号通知・料金情報通知・サブアドレス通知などのサービスなどが、各通信会社(キャリア)によって提供されている。 また付加サービスとして、希望者に、ナンバーディスプレイサービス、二重番号サービス、転送電話サービスなどを、各通信会社は追加することができるサービスを行っている。
【0003】
基本サービスは、通話・通信の当事者の一方から、その相手方に特定の情報を送信するものが多く、またそうでないものも利用者の直接的な操作によって制御するサービスが大半であるため、利用者はそのサービスの存在を比較的容易に知覚しえる状態にあることが多い。 一方、付加サービスは、主に加入者に着信した通話・通信に対して、加入者を収容する交換機が、なんらかの制御を付加・あるいは情報を付加して、着信された加入者の利便性を向上するサービスが多い。このため、付加サービスの中には、通信会社からの請求書等によってのみ、そのサービスに加入していることを知覚するしか方法がないものもある。
【0004】
もし加入者が、他の通信会社に変更しようとする際、現在加入しているものとまったく同条件のサービス環境を、あたらしい通信会社にも求めるなら、自身が加入している回線の基本サービス・付加サービスをすべて網羅し、あたらしい通信会社に同様のサービス設定を行うよう求めなければならない。 しかし、通信会社によっては、それぞれのサービスの名称が異なったり、あるいはサービスによっては組み合わせ方に高度な知識・経験が要求されるものがあり、専門知識のない加入者がこれらの照合・振り分け・申し込みを一手に行うと、手順の欠落や組み合わせの不適切な申し込みを実施してしまうことがあり、その後の回線開通に支障をきたすことが多いという問題があった。
【0005】
この改善策として、通信会社は加入者宅に専門知識を持った作業員を派遣し、加入者の請求書等を確認したうえで、加入者の許可を得て、加入者回線から加入通信会社に電話をかけて設定されている付加サービスを問い合わせをする方法があるが、作業が煩雑で時間も多くかかり、また情報の取りこぼしも起きることがあるなど、通信会社・加入者の双方に負担が大きく、加入者が通信会社を変更するうえでの阻害要因となっていた。
【非特許文献1】「INSネット販売マニュアル」一二三書房 1997年
【非特許文献2】「ISDN技術必携」オーム社 1989年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、加入者が自己の契約している付加サービスを容易に確認できない点・および第三者が加入者の契約している付加サービスを容易に調べられない点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、付加サービスの調査の対象となる加入者から、ISDN回線上に設けられた識別装置に、通話・通信を行わせることにより、その際にISDN網から発せられたITU-T勧告Q.931に規定されたプロトコル情報のうち加入者呼設定用メッセージ中の発番号情報要素の識別子を取り出し、その値を単独で、または他の情報要素・識別子との組み合わせることによって、対象となる加入者が契約・設定している付加サービスの識別を行わせることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、加入者の契約している付加サービスを容易に調べられ、加入者宅に専門知識を持った作業員を派遣する必要性を軽減・または全くなくすることができ、また加入者の錯誤による不適切な付加サービス申し込みを検出・識別し、さらに識別結果そのものが加入者の錯誤の客観的証拠になり得るという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の一実施例によるシステム構成を図1に示している。ここでは本発明を具体的に実施する装置として、プロトコル情報識別装置・論理演算装置・表示装置を一体として備え、これにDSUと終端装置を相互に接続し、DSUはISDN網に接続している。単純な識別であれば論理演算装置はPIC(Peripheral Interface Controller)などを用いたハードウェアロジックで完結してもよく、高度な識別・記録を要する識別機能を持たせるのであればパソコンのようなコンピューターを用いて構成する。

【0010】
調査対象の加入者に、本装置に接続する終端装置(音声案内装置またはFAX受信装置)に通話・通信を行わせると、ITU-T勧告Q.931に規定された呼設定メッセージが、ISDN網からDSUを経由し終端装置に向けて送信される。本装置は、この呼設定メッセージを中間で抽出し、論理演算装置に送り、判定結果を表示装置で出力する。
【0011】
呼設定メッセージ中の発番号情報要素とその他の情報要素の組み合わせは無数にあるので、当該論理演算装置は、あらかじめ抽出するべき付加サービスの判定条件を投入するものである。
【実施例】
【0012】
図2の実施例は、発番号情報要素の識別子を用いて、NTT東西の提供する付加サービスのiナンバーサービスとINSダイヤルインサービスの判定方法である。
【0013】
NTT東西のiナンバーサービスはISDN主契約番号に、さらに2つの番号を追加できるサービスである。一方、INSダイヤルインサービスは2つ以上の番号が追加できるサービスで、代表番号が組める。代表組みにはアナログ回線との混在も可能である。
【0014】
iナンバーサービスとINSダイヤルインサービスは、サービス内容が酷似しており、2つ以下の追加番号を行っている回線では外見上の識別は、極めて困難である。
【0015】
しかし、調査対象の加入者から、本装置に接続する終端装置(図2ではISDN通信端末装置)に通話・通信を行わせると、その通信手順の開始時に、着信側では呼設定メッセージ(SETUP)を抽出することができる。
【0016】
図2の論理演算部で示すように、呼設定メッセージのうち経過識別子の経過内容を参照すると、発信側がISDN回線かアナログ回線のどちらであるかを識別することができる。もし発信側に複数回線が設置されている場合において、そのひとつがアナログと判定されるなら、アナログ・ISDN混在の代表番号の可能性があるので、別の番号から再度かけさせて正しい判定を行わせることが適切である。
【0017】
アナログではないと判定されたら、続いて呼設定の発番号情報要素のうちオクテット3aの末尾2ビットを参照する。すべてのビットが1の場合は、伝達されている相手番号は網投入(交換機が付け加えたもの)であり、この特性を保持するのはiナンバーである可能性が最も高いので、iナンバーサービスと判定することができる。
【0018】
末尾2ビットのいずれかが0の場合は、伝達されている発信者番号はユーザー投入(発信者側が端末レベルで設定したもの)であるから、それが可能な付加サービスは、ダイヤルインサービスと判定することができる。
【0019】
いずれの判定も、調査対象の加入者番号が呼設定メッセージに載っていなければ(通知されていなければ)どの回線を調査したのか客観的に判らないため、加入者番号の通知を行うことを警告する表示がなされる。なお、本判定を行うにあたっては、あらかじめ調査対象の加入者に番号を通知するよう要請しておくことが望ましい。この発明は、かような弾力的運用を妨げるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ISDN付加サービスの識別装置を示した説明図である。(発明を実施するための最良の形態)
【図2】ISDN付加サービスの識別方法(例)を示した説明図である。(実施例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
公衆ISDN網に接続され、ISDN網から送出されるITU-T勧告Q.931に規定されたプロトコル情報を識別する装置を有し、呼設定用メッセージ中の発番号情報要素の識別子を用いた情報判定手段を有することを特徴とするISDN付加サービスの識別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の識別装置を用いてISDN付加サービスの識別を行うことを特徴とするISDN付加サービスの識別方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−49419(P2007−49419A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231628(P2005−231628)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(301068675)有限会社ダイアモンドアプリコット電話研究所 (1)
【Fターム(参考)】