説明

LEDユニット及び歯科治療用照明装置

【課題】患者に眩しさを感じさせることがないようにする。
【解決手段】反射体22と、この反射体22を挟んで対向配置された1対のLED24と、を備え、前記反射体22には、前記LED24に対応して2つの反射面23A、23Bが形成され、前記反射面23A、23Bのそれぞれは、各反射光が前記反射面23A、23Bから所定距離Mだけ離れた基準照射域Pで前記LED24の対向方向に、前記LED24の離間距離Lに相当する幅だけ広がって、互いに重なるように形成されているLEDユニット10を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療に用いられる歯科治療用照明装置に用いて好適なLEDユニット、及び、歯科治療用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療の現場では、照明域内に影が生じないように設定された、いわゆる無影灯と呼ばれる照明装置が用いられている。この種の照明装置は、線状に形成されたハロゲンランプやクリプトンランプ等の白熱電球光源と、この白熱電球光源の光を照射域に向けて反射する反射鏡とを備え、この反射鏡の面内に多数のファセットを形成することで反射光を制御し、照射域に無影効果が得られるように構成されている。近年では、白熱電球光源に代えて、LEDを光源とした無影灯も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、複数の反射面が形成された反射体の周囲に各反射面に対応してLEDを配置し、各LEDの光を同一方向に向けて照射する構成とすることで、照射光量を増大可能にしたLEDユニットが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006−156074号公報
【特許文献2】国際公開第2005/048362号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
無影灯の光源に上記LEDユニットを採用することで、歯科治療に用いるに十分な照射光量が得られる歯科治療用照明装置が実現され得るものの、歯科治療においては、患者の口内を照明装置で照らしつつも当該患者の目元が光で照らされないようにすることで、患者に眩しさを感じさせないようにする必要がある。
しかしながら、上記LEDユニットをそのまま組み込んで歯科治療用照明装置を構成した場合には、口元から目元にかけての広い範囲に光が照射されてしまう、という問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、患者に眩しさを感じさせることがないようにできるLEDユニット及び歯科治療用照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、反射体と、この反射体を挟んで対向配置された1対のLEDと、を備え、前記反射体には、前記LEDに対応して2つの反射面が形成され、前記反射面のそれぞれは、各反射光が前記反射面から所定距離だけ離れた基準位置で前記LEDの対向方向に、前記LEDの離間距離に相当する幅だけ広がって、互いに重なるように形成されていることを特徴とするLEDユニットを提供する。
【0005】
また本発明は、上記LEDユニットにおいて、前記LEDのそれぞれの対向面には無反射処理が施されていることを特徴とする。
【0006】
また本発明は、上記LEDユニットにおいて、前記LEDを実装したLED基板と、前記反射体及び前記LED基板を収容した筐体と、を備え、前記筐体を高熱伝導材から形成するとともに、前記LED基板を前記筐体の内面に密接して設けたことを特徴とする。
【0007】
また上記目的を達成するために、本発明は、反射体と、この反射体を挟んで対向配置された1対のLEDと、を備え、前記反射体には、前記LEDに対応して2つの反射面が形成され、前記反射面のそれぞれは、各反射光が前記反射面から所定距離だけ離れた基準位置で前記LEDの対向方向に、前記LEDの離間距離に相当する幅だけ広がって、互いに重なるように形成されているLEDユニットを、複数備え、前記LEDユニットのそれぞれを、各LEDユニットのLEDの対向方向と略直交する方向に配列したことを特徴とする歯科治療用照明装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2つの反射面での各反射光が、反射面から所定距離だけ離れた基準位置でLEDの対向方向に、LEDの離間距離に相当する幅だけ広がって互いに重なる。これにより、基準位置でのLEDの対向方向においては、反射面で配光制御された光がLEDの離間距離の範囲内に集められて照度が高められるとともに、当該離間距離から離れた箇所では照度が減少し十分に弱められる。したがって、LEDの対向方向を、目元から口元にかけた方向に一致させて歯科治療用照明装置の光源を構成することで、口元には十分な光を照射しつつも患者に眩しさを感じさせないようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係る歯科治療用照明装置1の構成を示す図であり、図1(A)は底面を示し、図1(B)は図1(A)のI−I線における断面を示す図である。
歯科治療用照明装置1は、同図に示すように、底面が開口した横長のケース体2と、ケース体2の底面を覆う例えば樹脂製の透明カバー3とを備えている。ケース体2は、有底の中ケース5と、当該中ケース5の上側を覆う上ケース6とを備え、中ケース5及び上ケース6の間の空間8には、図示を省略したLED駆動回路などが内蔵されている。
【0010】
中ケース5の底部5Aには、その長手方向に1列に並んで複数(図示例では4個)のLEDユニット10が照射開口12を下方に向けた姿勢で取付脚14を用いて固定されている。このとき、歯科治療用照明装置1の照明域内に無影効果が得られるように、LEDユニット10ごとに水平面Hに対する傾斜角度θが調整され、また、隣接するLEDユニット10の照射範囲が一部重複するように設定されている。
【0011】
図2はLEDユニット10の構成を示す斜視図であり、図2(A)はLEDユニット10の照射開口12をみた斜視図、図2(B)はLEDユニット10の側面をみた斜視図である。また、図3は、LEDユニット10の正面、平面、左右側面、及び、底面を示す図である。なお、図2において、内部に隠れてみえない部材を示すかくれ線を破線で示している。
LEDユニット10は、底面が上記照射開口12として開口し正面から背面に長手方向を有する略直方体形状の筐体20を備え、この筐体20には、1つの反射体22と、2つのLED24及びLED基板26とが収められている。
【0012】
反射体22は2つの反射面23A、23Bを備え、螺子25で筐体20に固定されている。反射面23A、23Bのそれぞれは、回転放物面を回転軸に沿って2等分した形状(放物面を180度回転させた形状)を成すとともに、図4に示すように、それぞれの一部分(図4中一点鎖線で示す)が重複(オーバーラップ)するように形成されている。このように反射面23A、23Bを重複させることで、反射体22が幅方向及び高さ方向に小さくなりLEDユニット10のコンパクト化が図られている。
反射面23A、23Bのそれぞれを回転放物面とした場合には、後述のLED24は、LED24の発光面が回転放物面の焦点位置あるいはその近傍に配置することで、LED24の出射光の集光性を向上できる。
【0013】
1つのLED基板26には1つのLED24が実装され、これらLED基板26は、反射体22を挟んで互いに対向配置される。具体的には、図3に示すように、LED基板26は、筐体20の正面及び背面と略同程度の大きさの矩形状に形成され、これら正面及び背面の内側のそれぞれに、螺子28により筐体20の正面及び背面に密接させて固定されている。この筐体20は、例えばアルミニウム等の高熱伝導性材から形成されており、当該筐体20の正面及び背面の略全領域に亘ってLED基板26を密接させることで、当該正面及び背面から効率よくLED24の放熱が行われる。
【0014】
この筐体20は、正面側パーツ21Aと背面側パーツ21Bとを備え、図3の底面を示す図におけるII―II線で2分割可能に構成されている。すなわち、正面側パーツ21Aと背面側パーツ21Bとで反射体22及びLED基板26を挟み込んで筐体20が構成されるから、反射体22やLED基板26の製造時に多少大きな寸法に形成されてしまった場合でも、これらを筐体20に収めることができる。
【0015】
さて、LED基板26に実装されたLED24は、反射面23A、23Bの焦点位置のそれぞれに配置され、各LED24から放射された光は反射面23A、23Bの各々で反射されて、当該反射面23A、23Bの回転軸方向に向けて照射される。
反射面23A、23Bは、上述の通り、一部を重複させ、当該重複部分が切り欠かれて形成されているため、反射面23A、23Bの境界部分には弓形に窪む窪み部29が形成される。この窪み部29のために、図4に示すように、反射面23A、23Bで反射されない、すなわち、配光制御されない直接光成分Xが増加し、各LED10から対向面側に向けて入射する。
このとき、何ら対策を施さなければ、筐体20の正面及び背面で直接光成分Xが反射して、正面方向及び背面方向への光の漏れ成分を生じさせてしまう。
【0016】
歯科治療用照明装置1においては、図1に示すように、LEDユニット10の正面及び背面を結ぶ方向(LED24の対向方向)を口元から目元にかけての方向と一致するように各LEDユニット10を設けているため、上記の光の漏れ成分が大きいと、患者に眩しさを感じさせてしまう虞がある。
そこで、本実施形態では、上述の通りLED基板26が筐体20の正面及び背面の略全域を覆う構成とし、さらに、このLED基板26の表面26A(少なくとも直接光成分Xが照射される箇所)に、光の反射を防止する無反射処理を施すことで、漏れ光成分を抑え、患者に眩しさを感じさせないようにしている。
一方、筐体20の左右内側面については、反射面23A、23Bで覆われていない箇所には筐体20の金属面が露出して反射光が生じるようになっている。これにより、口元の幅方向に対してはLED24の光が有効に利用されて照射される。
【0017】
ここで、本実施形態においては、図4に示すように、歯科治療時の歯科治療用照明装置1から患者の口元までの大凡の距離M(例えば700mm)だけLEDユニット10の照射開口12から直下に離れた位置に基準照射域Pが設定され、この基準照射域Pに対してLEDユニット10が次のように光を照射する。
すなわち、基準照射域Pに対して、反射体22の反射面23A、23Bのそれぞれの反射光K1、K2が照射され、この基準照射域Pで互いに重なることとなるが、このとき、各反射光K1、K2が直下Oを中心にしてLED24の対向方向に当該LED24の離間距離L(例えば38mm)に相当する幅だけ広がるように、反射面23A、23Bの放物面が形成されている。
【0018】
これにより、基準照射域Pでは、LED24の対向方向において、反射面23A、23Bにより配光制御された光がLED24の離間距離Lの範囲に集められる。
このとき、離間距離Lの範囲には、配光制御された光とともにLED24の直接光も照射されるのに対して、離間距離Lから離れた箇所には、LED24の直接光のみが照射される。したがって、基準照射域Pでは離間距離Lの範囲の照度を十分に高めつつ、当該離間距離Lから離れた箇所の照度は減少し十分に弱められる。したがって、係るLEDユニット10を、LED24の対向方向と、口元から目元にかけての方向と一致させて配列し、歯科治療用照明装置1の光源を構成することで、口元には十分な光を照射しつつも患者に眩しさを感じさせないようにできる。
【0019】
図5は歯科治療用照明装置1の特性の一例を示す図であり、図5(A)は基準照射域Pにおける照度分布を示し、図5(B)はLED24の対向方向に沿った断面での照度分布を示し、また、図5(C)は左右方向に沿った断面での照度分布を示す。なお、基準照射域Pは、歯科治療用照明装置1から直下に向けて上記距離M(700mm)だけ離間した位置に設定されている。
これらの図に示すように、基準照射域Pにおいては、正面及び背面を結ぶ方向について、上記離間距離L(図示例L=38mm)の範囲での照度が十分に高められつつ(例えば30000ルクス程度)、この離間距離Lから離れるにつれて、すなわち、口元から目元に向うにつれて照度が急激に低下していることが示される。
一方、基準照射域Pにおいて、左右方向については、上記のLEDユニット10が横一列に配列されることで略均等な照度分布が得られていることが分る。
【0020】
また、図5(A)に示されるように、図4の構成からなるLEDユニット10の照度分布は、照射部の中心付近が2個のLED24から照射される光が重なり高くなり、周辺部は重なりが少ないため照度が低くなる。このような特性を持った個々のLEDユニット10を、取付け角度を調整して複数設置することにより、領域の中心部での必要照度を確保するとともに、離間距離Lの間の領域以外の領域での光量を抑えることができる。
【0021】
また図5(B)に示されるように、個々のLEDユニット10は、図4の構成および特性を持っているため、1列に4個並べても、離間距離Lの間の領域の光量を確保しつつ、それ以外の領域の光量を抑えることができる。
さらに上述の通り、LEDユニット10ごとに水平面Hに対する傾斜角度θが調整されているため、図5(C)に示されるように、横方向に長い照度分布を得ることができる。
【0022】
このように、本実施の形態によれば、LEDユニット10の2つの反射面23A、23Bを、各反射光が、基準照射域PでLED24の対向方向に、LED24の離間距離Lに相当する幅だけ広がって互いに重なるように形成した。
これにより、基準照射域PではLED24の対向方向において、反射面23A、23Bで配光制御された反射光がLED24の離間距離Lの範囲内に集められて照度が高められるとともに、当該離間距離Lから離れた箇所では照度が減少し十分に弱められる。したがって、LED24の対向方向を、目元から口元にかけた方向に一致するように各LEDユニット10を配列して光源を構成した歯科治療用照明装置1によれば、口元には十分な光を照射しつつも患者に眩しさを感じさせないようにできる。
【0023】
また本実施形態によれば、LED24のそれぞれの対向面に位置するLED基板26の表面26Aに無反射処理を施す構成としたため、LED24の対向方向への漏れ光を防止することができる。
また本実施形態によれば、筐体20を高熱伝導材から形成するとともに、LED基板26を筐体20の内面に密接して設けたため、LED24の発熱を十分に放熱することができる。
【0024】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る歯科治療用照明装置の構成を示す図であり、(A)は底面を示し、(B)は(A)のI−I線における断面を示す図である。
【図2】LEDユニットの構成を示す斜視図であり、(A)はLEDユニットの照射開口をみた斜視図、(B)はLEDユニットの側面をみた斜視図である。
【図3】LEDユニットの正面、平面、左右側面、及び、底面を示す図である。
【図4】LEDユニットの特性を説明するための図である。
【図5】歯科治療用照明装置の特性の一例を示す図であり、(A)は基準照射域における照度分布を示し、(B)はLEDの対向方向に沿った断面での照度分布を示し、また、(C)は左右方向に沿った断面での照度分布を示す。
【符号の説明】
【0026】
1 歯科治療用照明装置
2 ケース体
10 LEDユニット
12 照射開口
20 筐体
21A 正面側パーツ
21B 背面側パーツ
22 反射体
23A、23B 反射面
24 LED
26 LED基板
L LEDの離間距離
P 基準照射域(基準位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射体と、この反射体を挟んで対向配置された1対のLEDと、を備え、
前記反射体には、前記LEDに対応して2つの反射面が形成され、
前記反射面のそれぞれは、各反射光が前記反射面から所定距離だけ離れた基準位置で前記LEDの対向方向に、前記LEDの離間距離に相当する幅だけ広がって、互いに重なるように形成されていることを特徴とするLEDユニット。
【請求項2】
前記LEDのそれぞれの対向面には無反射処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載のLEDユニット。
【請求項3】
前記LEDを実装したLED基板と、
前記反射体及び前記LED基板を収容した筐体と、を備え、
前記筐体を高熱伝導材から形成するとともに、前記LED基板を前記筐体の内面に密接して設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のLEDユニット。
【請求項4】
反射体と、この反射体を挟んで対向配置された1対のLEDと、を備え、
前記反射体には、前記LEDに対応して2つの反射面が形成され、
前記反射面のそれぞれは、各反射光が前記反射面から所定距離だけ離れた基準位置で前記LEDの対向方向に、前記LEDの離間距離に相当する幅だけ広がって、互いに重なるように形成されているLEDユニットを、複数備え、
前記LEDユニットのそれぞれを、各LEDユニットのLEDの対向方向と略直交する方向に配列したことを特徴とする歯科治療用照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−153285(P2010−153285A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332036(P2008−332036)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【出願人】(394000149)株式会社新光電気 (3)
【Fターム(参考)】