説明

LEDユニット及び歯科用LED無影灯

【課題】灯具の組立性の改善を図ることができるLEDユニット及び歯科用LED無影灯を提供する。
【解決手段】LED16と、当該LED16に対向して配置され当該LED16の光を反射する反射鏡12とを備えた無影用のLEDユニット10において、前記反射鏡12には、複数の連設した凹面反射面14を、所定距離離れた位置で所定の照射範囲21Aを照射するように形成し、この凹面反射面14の両端部に、前記LED16の光線を前記所定範囲の中央領域Raに指向させる無影用反射面18を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源にLEDを用いて無影効果を得る照明技術に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療用の照明装置には、口元を含む照射野に影を生じさせない、いわゆる無影灯が用いられている。かかる無影灯の光源には、患者の目元への照射を防止し、また、口元を広範囲に照射するために、線状のハロゲンランプやクリプトンランプ等の白熱電球光源が採用されている。近年では、白熱電球光源に代えて、LEDを光源としたものも提案されている。特に、LEDと反射鏡とを備えて構成した反射型のLEDユニットを光源に採用して無影灯を構成することで、反射鏡による配光制御により照射野の輪郭のぼけが抑えられ、患者の目元への照射をより確実に防止した歯科用LED無影灯が得られる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−156074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の歯科用LED無影灯においては、複数のLEDユニットを灯体に内蔵し、これらのLEDユニットの光線がそれぞれ交差して無影効果を生じさせるために、各LEDユニットを所定の角度だけ傾斜させて灯体に取り付ける構成としている。このため、各LEDユニットの取付時には角度調整が必要となり、灯具の組立て作業が繁雑になる等の問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、灯具の組立性の改善を図ることができるLEDユニット及び歯科用LED無影灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、LEDと、当該LEDに対向して配置され当該LEDの光を反射する反射鏡とを備えたLEDユニットにおいて、前記反射鏡には、1又は複数の連設した凹面反射面を、所定距離離れた位置で所定の照射範囲を照射するように形成し、この凹面反射面の両端部に、前記LEDの光線を前記所定の照射範囲の中央部に指向させる無影用反射面を設けたことを特徴とする。
【0006】
また本発明は、上記LEDユニットにおいて、前記凹面反射面に、前記所定の照射範囲の全範囲を反射光で照射する全範囲照射用反射面と、前記無影用反射面の反射光が照射する範囲の周辺を照射するむら防止用反射面とを設けたことを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上記LEDユニットにおいて、前記凹面反射面に、前記LEDをオーバーハングさせたことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記の本発明に係るLEDユニットを光源に備えたことを特徴とする歯科用LED無影灯を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、LEDと、当該LEDに対向して配置され当該LEDの光を反射する反射鏡とを備えたLEDユニットにおいて、凹面反射面の両端部に、LEDの光線を所定範囲の中央部に指向させる無影用反射面を設けたため、当該LEDユニット単体で所定範囲の照射野に無影効果が得られる。これにより、LEDユニットを傾けて灯体に組み込む必要が無いため、灯具の組み立てが容易となり、組立性の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る歯科用LED無影灯の構成を示す図であり、(A)は底面からみた図、(B)は(A)のI−I線における断面視図である。
【図2】無影用LEDユニットの構成とともに照射野を模式的に示す図である。
【図3】無影用LEDユニットの正面、平面及び側面の三面を示す図である。
【図4】凹面反射面での反射光の指向方向を模式的に示す図である。
【図5】無影用LEDユニットの特性の一例を示す図である。
【図6】本発明の変形例に係る無影用LEDユニットの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係る歯科用LED無影灯1の構成を示す図であり、図1(A)は底面を示し、図1(B)は図1(A)のI−I線における断面を示す図である。
歯科用LED無影灯1は、同図に示すように、底面が矩形の照射開口2Aとして開口した横長のケース体(灯体)2と、ケース体2の照射開口2Aを覆う例えば樹脂製の透明カバー3とを備えている。ケース体2は、図1(B)に示すように、有底の中ケース5と、当該中ケース5の上側を覆う上ケース6とを備え、中ケース5及び上ケース6に囲まれてできた空間8には、図示を省略したLED駆動回路や電源回路、ヒートシンクなどが内蔵されている。また、中ケース5の底面5Aには無影用のLEDユニット(以下、「無影用LEDユニット」と言う)10が固定されている。
【0012】
無影用LEDユニット10は、単体で照射野に無影効果を生じさせるように構成されている。このため、無影用LEDユニット10のケース体2への取付構造においては、図1(B)に示すように、無影用LEDユニット10を傾斜させるための構造を備えていない。これにより、無影用LEDユニット10のケース体2への取り付け作業が容易となり、組立性の向上が図れることとなる。
以下、かかる無影用LEDユニット10の構造について詳述する。
【0013】
図2は無影用LEDユニット10の構成と照射野を模式的に示す図であり、図2(A)が無影用LEDユニット10の斜視図、図2(B)が照射野の模式図である。また、図3は無影用LEDユニット10の正面、平面及び側面の三面を示す図である。
無影用LEDユニット10は、これらの図に示すように、直方体形状の反射鏡12と、この反射鏡12の周囲に配置された4つのLED16とを備え、反射鏡12の一面には各LED16に対向して凹面反射面14が形成されている。
【0014】
凹面反射面14は、大別して4つの第1〜第4凹面反射面14A〜14Dを上下左右に連設して形成されている。これら第1〜第4凹面反射面14A〜14Dは、反射鏡12の一面を4等分に区画したそれぞれに回転放物面状の窪みを設けて形成されている。そして、第1〜第4凹面反射面14A〜14DごとにLED16が対向配置されている。第1〜第4凹面反射面14A〜14Dの反射光は、図2(B)に示すように、それぞれ所定距離離れた位置でX方向に伸びた楕円形状の所定範囲(所定大きさ)を照射して照射野20A〜20Dを形成し、これら照射野20A〜20Dが重なり合って1つの照射野20が形成されている。
【0015】
具体的には、反射鏡12の一側面の側に横並びに連設された第1、第2凹面反射面14A、14Bの照射野20A、20Bは、それぞれ同じ照射範囲21Aを照射し、また同様に、第3、第4凹面反射面14C、14Dの照射野20C、20Dがそれぞれ同じ照射範囲21Bを照射する。これにより、照射範囲21A、21Bでの照度が高められている。また、照射範囲21A、21Bは互いに一部を重なり合わせながらY方向にずれて配置されており、これにより、照射野20がY方向に拡張されることとなる。歯科用LED無影灯1においては、X方向を患者の顔の左右方向に向け、Y方向を顔の上下方向に向けることで、患者の目を照らさずに患者の口元を良好に照明することができる。
また、各照射範囲21A、21Bでは、それぞれ無影効果が得られるように構成されている。なお、第1、第2凹面反射面14A、14Bと、第3、第4凹面反射面14C、14Dとは同一構成であるため、以下の説明では、第1、第2凹面反射面14A、14Bを代表して説明する。
【0016】
図4は、第1、第2凹面反射面14A、14Bでの反射光の指向方向を模式的に示す図である。
第1、第2凹面反射面14A、14Bから成る一連の凹面反射面14には、その両端部に、無影用反射面18が形成されている。各無影用反射面18は、LED16の反射光22Aを照射範囲21Aの中心部Oに指向させ当該照射範囲21Aに至る前に光線が交差して、照射範囲21Aの中央領域Raを照射するように設けた反射面である。これにより、当該中央領域Raでは無影効果が得られることとなる。
【0017】
また、第1、第2凹面反射面14A、14Bには、それぞれ無影用反射面18の残余の部分に、全範囲照射用反射面17と、むら防止用反射面19A〜19Cとが設けられている。
全範囲照射用反射面17は、LED16の反射光22Bで照射範囲21Aの全体領域Rcを照射する。第1、第2凹面反射面14A、14Bにおいて、全範囲照射用反射面17は、LED16の放射光量が最も多い正面位置に設けられている。むら防止用反射面19A〜19Cは、中央領域Raの残余を含めた左右半分の領域Rbを反射光22C、22Dなどで照射し、当該左右半分の領域Rbでの照度むらを解消するように、むら防止用反射面19A〜19Cの各々の領域が規定されている。
【0018】
第3、第4凹面反射面14C及び14Dによる照射範囲21Bにおいても、照射範囲21Aと同様に、全体的に照度むらが無く、なおかつ、中央領域Raで無影効果が得られ、これら照射範囲21A、21Bを重ねた照射野21が無影用LEDユニット10により得られる。
【0019】
図5は、無影用LEDユニット10の特性の一例を示す図であり、図5(A)は照射野21における照度分布を示し、図5(B)は当該照射野21をX方向(図2(B))に切った断面の照度分布を示し、また、図5(C)は当該照射野21をY方向(図2(B))に切った断面の照度分布を示す。なお、反射鏡12の凹面反射面14の寸法は、X方向が180mm、Y方向が90mmであり(各第1〜第4凹面反射面14A〜14Dは、X方向90mm、Y方向45mm)、照射野21の位置は、無影用LEDユニット10から直下に向けて距離700mmだけ離間した位置に設定されている。
【0020】
これらの図に示すように、無影用LEDユニット10によれば、縦(Y方向)が80mm、横(X方向)が200mm程度の略矩形の照射野21が得られる。さらに、この照射野21のY方向(すなわち、口元から目元に向かう方向)では、±40mmの範囲に30000ルクス程度の照度を確保しつつ、この範囲から外れた箇所での照度が略ゼロとなっている。これにより、患者の目元を照らさずに口元だけを高い照度で照らせることが分かる。
また、照射野21のX方向については、上記全範囲照射用反射面17と、むら防止用反射面19A〜19Cとにより、略均等な照度分布が得られていることが分る。
【0021】
次いで、無影用LEDユニット10の製造方法について詳述する。
図2及び図3に示すように、例えばアルミニウム等を直方体形状に形成して成る反射鏡12の一面を4等分に区画し、それぞれに回転放物面の凹面を削り出すなどして形成し、第1〜第4凹面反射面14A〜14Dから成る凹面反射面14を形成する。本実施形態では、一対の第1、第3凹面反射面14A、14Cを形成した反射体13Aと、第2、第4凹面反射面14B、14Dを形成した反射体13Bとを2つ繋ぎ合わせて反射鏡12を構成している。
【0022】
次いで、反射鏡12の長手方向に延びる側面のそれぞれに、第1〜第4凹面反射面14A〜14Dに正対した位置に、それぞれ板状のLED取付板30をネジ止め固定し、各LED取付板30にLED16を取り付ける。このとき、LED16を、LED取付板30の内面に取り付けることでLED16を第1〜第4凹面反射面14A〜14Dに対向させて配置できるが、本実施形態では、次のようにしている。すなわち、図3に示すように、LED取付板30には凹面反射面14にオーバーハングさせたLED固定部32を設け、このLED固定部32にLED16をネジ止め固定する。これにより、LED16が各第1〜第4凹面反射面14A〜14Dにオーバーハングした位置から光を放射するため、LED取付板30の内面内にLED16を固定した場合に比べて、無影用反射面18に入射する光量を増やせるため、無影効果を高めることができる。
【0023】
このようにして製造した無影用LEDユニット10にあっては、単体で無影効果が得られるため、歯科用LED無影灯1のケース体2に組み付け際には、当該無影用LEDユニット10をそのままケース体2に固定するだけで、無影灯が構成される。
【0024】
以上説明したように、本実施形態によれば、LED16と、当該LED16に対向して配置され当該LED16の光を反射する反射鏡12とを備えて無影用LEDユニット10を構成した。これにより、輪郭のぼけを抑えた照射野21が得られるため、照射野21周辺への漏れ光が抑えられる。
【0025】
さらに、この無影用LEDユニット10において、反射鏡12の凹面反射面14の両端部に、LED16の光線の一部を所定の照射範囲21A(21B)の中央領域Raに指向させる無影用反射面18を設けたため、当該無影用LEDユニット10を単体で使用しても照射範囲21Aの照射野20で無影効果が得られる。これにより、無影用LEDユニット10を傾けてケース体2に組み込む必要が無いため、灯具の組み立てが容易となり、組立性の改善を図ることができる。
【0026】
また本実施形態によれば、第1〜第4凹面反射面14A〜14Dのそれぞれに、照射範囲21Aの全範囲である全体領域Rcを反射光で照射する全範囲照射用反射面17と、無影用反射面18の反射光が照射する範囲(中央領域Ra)の周辺の領域Rbを照射するむら防止用反射面19A〜19Cとを設ける構成とした。
この構成により、照射野20での照度むらを抑えることができる。
【0027】
また本実施形態によれば、第1〜第4凹面反射面14A〜14Dのそれぞれに、LED16をオーバーハングさせた状態で取り付ける構造とした。この構造により、LED16の光を利用効率を向上させることができる。
【0028】
また、係る無影用LEDユニット10を光源にした歯科用LED無影灯1を構成することで、無影用LEDユニット10をケース体2に固定する際に、傾きなどの調整が不要であるため、灯具の組み立てが容易となる。これに加え、患者の口元だけを照らし、目元への漏れ光が無い無影灯が得られる。
【0029】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形及び応用が可能である。
【0030】
例えば、上述した実施形態において、反射鏡12に複数の第1〜第4凹面反射面14A〜14Dを連設して凹面反射面14を形成したが、これに限らない。すなわち、図6に示すように、反射鏡12に1つの凹面反射面14を形成し、当該凹面反射面14の両端部に無影用反射面18を設けて無影用LEDユニット100を構成することもできる。
【符号の説明】
【0031】
1 歯科用LED無影灯
2 ケース体(灯体)
10、100 無影用LEDユニット(LEDユニット)
12 反射鏡
14、14A〜14D 凹面反射面
16 LED
17 全範囲照射用反射面
18 無影用反射面
19A〜19C むら防止用反射面
20A〜20D 照射野
21 照射野
21A、21B 照射範囲
32 LED固定部
O 中心部
Ra 中央領域
Rb 左右半分の領域
Rc 全体領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDと、当該LEDに対向して配置され当該LEDの光を反射する反射鏡とを備えたLEDユニットにおいて、
前記反射鏡には、1又は複数の連設した凹面反射面を、所定距離離れた位置で所定の照射範囲を照射するように形成し、この凹面反射面の両端部に、前記LEDの光線を前記所定の照射範囲の中央部に指向させる無影用反射面を設けたことを特徴とするLEDユニット。
【請求項2】
前記凹面反射面に、前記所定の照射範囲の全範囲を反射光で照射する全範囲照射用反射面と、前記無影用反射面の反射光が照射する範囲の周辺を照射するむら防止用反射面とを設けたことを特徴とする請求項1に記載のLEDユニット。
【請求項3】
前記凹面反射面に、前記LEDをオーバーハングさせたことを特徴とする請求項1又は2に記載のLEDユニット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のLEDユニットを光源に備えたことを特徴とする歯科用LED無影灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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