説明

LEDライダー装置

【課題】小型化、軽量化が可能であって、よりブラインドエリアが小さく、性能も実際の装置として実用性のあるLEDライダー装置を提供する。
【解決手段】LEDライダー装置において、光を発するLED光源と、LED光源が放出する光を平行にするとともに、光のうち測定対象によって散乱されて戻る光を集光するレンズと、LED光源を配置するホールが形成され、LED光源の光軸に対し傾けて配置されるミラーと、ミラーにより反射した光を透過させるためのピンホールが形成された遮光フィルタと、遮光フィルタの前記ピンホールを透過した光を受ける受光装置と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDライダー装置に関する。より詳細には、LED光源を用いたライダー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ライダー装置とは、光を用いて室内のガス濃度や大気中の粉塵等の状態を測定することのできる装置であって、近年その室内状態等の測定の需要及びその重要性が増してきている。
【0003】
ライダー装置の光源としては、レーザーが多く用いられているが、レーザーは非常に大掛かりな装置であることが多く、持ち運びや設置に手間がかかり、室内のガス濃度や大気中の粉塵等の状態を簡便に測定するには重さや大きさ等によって困難が伴う場合が多い。
【0004】
一方で、このライダー装置の光源として、例えば下記非特許文献1乃至3に、LEDをライダー装置の光源として用いる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】椎名達雄、小山護哲、“LEDライダーの試案”、第27回レーザセンシングシンポジウム予稿集、84−85、2009年
【非特許文献2】椎名達雄、小山護哲、“LEDライダーのパルス光源の開発”、第27回レーザセンシングシンポジウム予稿集、86−87、2009年
【非特許文献3】M.Koyama、T.Shiina、”Light”Source Module for LED Lider“、proceedings of 25th International Laser Radar Conferece,S01P−32−1−4(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記非特許文献1乃至3に記載の技術で用いる砲弾型LED光源はコリメート性が低く、実際の装置としての性能において未だ解決すべき課題が残る。
【0007】
また一般に、従来のライダーは、観測を行なうことのできない距離範囲いわゆるブラインドエリアを有しており、しかもこのブラインドエリアは近距離測定に現われ、近距離測定が難しいといった課題もある。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、小型化、軽量化が可能であって、よりブラインドエリアが小さく、性能も実際の装置として実用性のあるLEDライダー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の第一の観点にかかるLEDライダー装置は、光を発するLED光源と、LED光源が放出する光を平行にするとともに、光のうち測定対象によって散乱されて戻る光を集光するレンズと、砲弾型LED光源を配置するホールが形成され、LED光源の光軸に対し傾けて配置されるミラーと、ミラーにより反射した光を透過させるためのピンホールが形成された遮光フィルタと、遮光フィルタのピンホールを透過した光を受ける受光装置と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、小型化、軽量化が可能であって、よりブラインドエリアが小さく、性能も実際の装置として実用性のあるLEDライダー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るLEDライダー装置の概略図である。
【図2】実施形態に係るLEDライダー装置の砲弾型LED光源近傍の拡大図である。
【図3】実施例に係るLEDライダー装置の結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の例示に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本実施形態に係るLEDライダー装置(以下「本装置」という。)1の概略図である。本図で示すように、本装置1は、光を発する砲弾型LED光源2と、砲弾型LED光源2が放出する光を平行にするとともに、この光のうち測定対象によって散乱されて戻る光を集光するレンズ3と、砲弾型LED光源2を配置するホール41が形成され、砲弾型LED光源2の光軸21に対し傾けて配置されるミラー4と、ミラー4により反射した光を透過させるためのピンホール51が形成された遮光フィルタ5と、遮光フィルタ5のピンホール51を透過した光を受ける受光装置5と、この受光装置6と遮光フィルタ5の間に配置されるバンドパスフィルタ7と、を有する。
【0014】
本実施形態において、砲弾型LED光源2は、砲弾型をしたLED(Light Emitting diode)であって、具体的には半導体からなり光を発するLED素子を透明樹脂で砲弾のような形で覆ったものをいう。砲弾型LEDは、先端部が球形状をしており、放出される光に予め広がりを持たせておくことができる。
【0015】
また、本実施形態においてレンズ3は、砲弾型LED光源2が放出した光を平行にするとともに、この光のうち測定対象によって散乱されて戻る光を集光することができる。すなわち本実施形態では、送信用のレンズと受信用のレンズに同じレンズをそのまま用いることができ、その送受信用レンズの先にミラー等を配置する必要がなく、いわゆるブラインドエリアが殆どない。
【0016】
本実施形態においてレンズ3は、上記の通り、砲弾型LED光源2が放出した光を平行にするとともに、この光のうち測定対象によって散乱されて戻る光を集光することができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えばフレネルレンズであることはより小型化することができる点において有用である。
【0017】
また本実施形態において、ミラー4は、光を反射することのできる部材であって、砲弾型LED光源2を配置するホール41が形成されており、砲弾型LED光源2の光軸21に対し傾けて配置されている。なお砲弾型LED光源2の光軸21とは、砲弾型LED光源2が発する光の中心となる軸をいい、この軸に対して光が対称に広がっている。
【0018】
本実施形態に係るミラー4には上記の通りホール41が形成されており、ホール41の領域内に砲弾型LED光源2が配置されており、このホール41から砲弾型LED光源2の光が上記レンズ3に放出できるようになっている。この場合において、砲弾型LED光源2は、ミラー4の反射面より突出していないことが好ましい。このようにしておくことで、ミラーから反射された光が遮光フィルタ5に入る前に砲弾型LED光源2によって吸収又は散乱されてしまうことを防止することができる。
【0019】
また本実施形態において、ミラー4は、砲弾型LED光源2の光軸21、及びレンズ3の光軸31に垂直な面32に対し傾けて配置されている。このように配置することで、散乱によって戻ってきた光は、レンズ3により集光される過程で反射され、向きを変えた後完全に集光し、受光装置6に入ることとなる。本実施形態では、砲弾型LED光源2を用いているため、散乱によって戻ってきた光が集光する位置は、砲弾型LED光源2の透明樹脂の効果により、砲弾型LED光源2が配置された位置よりもレンズから離れた位置となっている。そこで、本実施形態では砲弾型LED光源2をミラーに近い位置に配置することでミラーによってさえぎられることなく広く光を放出することができる一方、散乱によって戻ってきた光をミラーで反射させ離れた位置で集光、検知することができる。
【0020】
なお本実施形態においてミラー4を傾ける角度は、受光量の調整、LEDライダー装置内に受光装置6を無駄なくコンパクトに配置することができる限り適宜調整が可能であり特に限定されるわけではないが、例えば、ミラーの反射面42と砲弾型LED光源2の光軸21又はレンズの光軸31に垂直な面32とのなす角βが30度以上60度以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは50度以上55度以下の範囲であることが好ましく、最も好ましくは45度である。
【0021】
また本実施形態においてミラー4の大きさは、レンズ3の大きさによって適宜調整可能であり、限定されるわけではないが、レンズ3の縁部に戻ってきた光であってもミラー4によって反射が可能であるようにしておくことが好ましい。
【0022】
また本実施形態において、ミラー4に形成されたホールの側面42に、フード43が付されていることが好ましい。図2に、このフード43を設けた場合の砲弾型LED光源2及びミラー4の部分拡大図を示しておく。本実施形態係るフード43は、光を吸収する又は光の反射を抑える部材であることが好ましく、例えば黒い紙、黒い塗料(つや消し)、不織紙を用いることができる。本実施形態では、フードを設けることで砲弾型LED光源2から放出される光がこのホール側面42によって受光装置6側に向かってしまうことを防止することができるようになる。
【0023】
また本実施形態において受光装置6は、大気など装置外部から反射された光を取り込みその受光量を計測することのできる装置である。受光装置6はこの限りにおいて限定されるわけではないが、例えばPMT(PhotoMultiplier Tube)と、このPMTに接続されたフォトンカウンタとを有して構成されていることが好ましい。このようにすることで、PMTにより光エネルギーを電気エネルギーに変換し、フォトンをカウントすることができるようになる。
【0024】
また本実施形態において、受光装置6とミラー4の間には、装置外部から反射される光のみを受光装置6に取り込ませそれ以外の光を遮断するための遮光フィルタ5が配置されている。遮光フィルタ5にはピンホール51が形成されており、このピンホール51にミラー4によって反射され、集光する光の焦点がくるようピンホール51の位置を調整することで、測定に悪影響を与える光を除去することができるようになる。
【0025】
また本実施形態において、受光装置6とミラー4の間には、バンドパスフィルタ7を有している。本装置ではバンドパスフィルタ7を透過させることで、必要な範囲の波長の光を取り込ませることができ、より正確な測定を可能とすることができる。なお、砲弾型LED光源において、十分波長分離ができている場合は、このバンドパスフィルタを設けるには及ばない。
【0026】
また本装置では、砲弾型LED光源2をレンズ3側に照射した光の一部がレンズ3によって反射され、ミラー4によって更に反射され受光装置6に入射してしまうといった問題が生じるおそれがある。そのため、本装置では砲弾型LED光源2の光軸とレンズの光軸とをずらすことが好ましい。この場合の角度としては、適宜調整可能であるが、例えば砲弾型LED光源2の広がり角をαとした場合、0.5α以上2α以下の範囲でずれていることが好ましく、より好ましくはα以上2α以下である。この範囲内とすることで、本装置では、砲弾型LED光源2から発せられた光がレンズによって反射されたとしても受光装置6側に反射される量を抑えることができるといった効果がある。なおここで砲弾型LED光源2の広がり角とは、光強度が最大強度の半分になる半値全幅をいう。
【0027】
また本装置1では、上記LED光源2、レンズ3、ミラー4、遮光フィルタ5、受光装置6、バンドパスフィルタ7を収納、設置するためのハウジング8を有していることも好ましい。このようにハウジング8を設けることで系を固定し一体として持ち運びができるようになるといった利点がある。
【0028】
以上本実施形態に係るLEDライダー装置は、小型化、軽量化が可能であって、よりブラインドエリアが小さく、性能も実際の装置として実用性がある。
【0029】
なお本実施形態では、砲弾型LED光源を用いているが、散乱して戻る光の焦点位置が光源の位置より離れた位置になるものであれば特に限定はされず、例えば面発光型のLED光源であってもよい。
【実施例】
【0030】
以下、上記実施形態に係る装置について実際に作成しその効果を確認した。以下説明する。
【0031】
本装置は、幅230mm、奥行き230mm、高さ210mmのハウジングを形成し、その内部に、砲弾型LED光源、フレネルレンズ、ミラー、PMT、ピンホールが形成された遮光フィルタを所定の配置で設置した。
【0032】
本実施例において砲弾型LED光源は波長392nm、径3mmのものを用いた。LEDをパルス発振させるにいたっては、無安定マルチバイブレータ回路と単安定マルチバイブレータの複合回路を作成し、パルス励起信号をLEDドライブ回路に入力した。これによりパルスドライブ回路は30mm×45mmとなり小型化することができた。なおこの砲弾型LED光源はパルス駆動する際、大電流を流すこととなるため連続波駆動する場合に比べ若干波長のシフトがあるが、特に大きな影響は無い。
【0033】
本実施形態においてフレネルレンズは、砲弾型LED光源から180mm離した位置に配置し、砲弾型LED光源から発せられた光をコリメートさせるようにした。なおビーム径は60mm、ビームの広がり角は9.5mradとなるようにした。なお、装置外部から反射した光は上記ビーム径より当然に広がっていることを想定し190mm×190mm(f=140mm)のものを使用した。
【0034】
また本実施形態においてミラーは、120mm×60mmの板状であってホールが形成され、このホールに上記砲弾型LED光源が配置されるようにした。なおミラーの反射面と砲弾型LED光源とのなす角は45となるように設置した。
【0035】
本実施例においてPMTは浜松ホトニクス製、型番1924Pを用い、この前面には遮光フィルタを配置し、ピンホールの径は4mmとした。この結果、本装置の視野角(FOV)は10.7mradとなった。
【0036】
次に、上記作成したLEDライダー装置について動作確認を行なった。この動作確認は、まず本装置のレンズから6.4mはなれたハードターゲット(壁)に対し光を照射させることで行なった。
【0037】
まず砲弾型LED光源から、パルス幅10.2ns、112kHz、55mWで光を放出させ、その信号を確認した。図3にこの結果を示す。この結果、6.4mの位置に壁からのエコーと思われるピークを確認することができ、実測値と一致した。この結果、本実施例に係るLEDライダー装置は、小型化、軽量化が可能であって、よりブラインドエリアが小さく、性能も実際の装置として実用性があることを確認した。
【0038】
(実施例2)
本実施例では、ミラーのホール側面に黒い塗料が付されたフードを設け、更に、砲弾型LED光源の光軸とレンズの光軸とをずらした点が上記実施例1と異なるがそれ以外は同様とした。
【0039】
図3で示す結果では、本図が示すとおり、0mの位置において極めて強いピークが観測されている。これは、上記実施形態において述べるように、砲弾型LED光源がレンズから反射された光をうけている可能性、更に砲弾型LED光源がミラーのホール側面に反射して受光装置に入ってきてしまっている可能性があると見出した。そこで、本実施例ではミラーのホールの側面にフードを設けるとともに、砲弾型LED光源の光軸とレンズの光軸とを10度傾けて上記実施例1と同様の測定を行った。この結果を図5に示す。なお、実施例1、2において、ホールは、直径4mmの空洞が、ミラー(厚さ3mm)の反射面に対して45度傾いて貫通するよう、即ち砲弾型LED光源の光軸と平行となるよう形成している。
【0040】
この結果、0mにおける強度が改善前(実施例1)に比べ、非常に低く抑えることができていることを確認し、本手段の有用性を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、LEDライダー装置として産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発するLED光源と、
前記LED光源が放出する光を平行にするとともに、前記光のうち測定対象によって散乱されて戻る光を集光するレンズと、
前記LED光源を配置するホールが形成され、前記LED光源の光軸に対し傾けて配置されるミラーと、
前記ミラーにより反射した光を透過させるためのピンホールが形成された遮光フィルタと、
前記遮光フィルタの前記ピンホールを透過した光を受ける受光装置と、を有するLEDライダー装置。
【請求項2】
前記LED光源は、砲弾型である請求項1記載のLEDライダー装置。
【請求項3】
前記遮光フィルタと前記受光装置の間にバンドパスフィルタを有する請求項1記載のLEDライダー装置。
【請求項4】
前記ミラーのホール側面にフードを備えた請求項1記載のLEDライダー装置。
【請求項5】
前記LED光源の光の広がり角をαとした場合、前記レンズの光軸と前記LEDの光軸とのなす角βが0.5α度以上2α度以下の範囲内にある請求項1記載のLEDライダー装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−122950(P2012−122950A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275798(P2010−275798)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第36回 リモートセンシングシンポジウム講演論文集、2010年11月4日発行
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】