説明

LEDランプ

【目的】フリップチップ型(フェースダウン)の LEDでも使用可能な、量産に向く製造容易な LEDランプを提供することである。
【構成】図1の LEDランプ1は砲弾型のパッケージ2でリード3が延びた形状である。多色 LEDでは、共通端子と三色用に四本のリード3が設けられる。このリード3は、パッケージ2の内部となる部分で曲げ加工によってチップ台(ボンディング領域)が設けられる。一部はリード間にフリップチップ型の GaN青LED チップが固定され、又はアノードコモンのリード3aのチップ台に直接赤LED チップを搭載して、点灯端子とボンディングワイヤで接続している。曲げ加工によりリードフレームの平坦面をリード方向に対して直角方向にするため、リード端をそのままボンディング領域にできる。リードフレームは一回の打ち抜き工程で形成できる上、連続してリード部を供給してLED ランプを量産できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、 LED(発光ダイオード)ランプに関し、特に複数色発光可能な LEDランプに関する。
【0002】
【従来の技術】従来知られている多色発光可能な LEDランプの構成には、図6に示すような、ハーメチックシール構造の絶縁基板上にパターンを形成して LEDチップをボンディングしたものがある(特開平4-137569号公報)。これはハーメチックシールのリードピン(点灯端子)と LEDチップとをワイヤーボンディングした構成となっている。また図7に示すようなリードフレームを加工して先端部を折り曲げてチップ台を設け、そのチップ台に LEDチップを搭載した構成のものもある。他の LED素子でも、コモン(共通)端子にカップ部を設けて LEDチップを接合し、他のリードピンとワイヤーボンディングする構成が取られているものがある。
【0003】その一方で、フリップチップを用いた LEDを構成するために図8に示すような構成が提案されている(特開平4-163973号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】図6に示すようなハーメチックシールは、確実にシールできて信頼性が高い構成であるが、製造するための工程が複雑であり、ハーメチックシールの基板は通常セラミック等の絶縁板であり、 LEDチップをボンディングするためのパターンを形成しておく必要がある。またこの基板にリードとなるピンを挿入して固定し、そのピンの先端と LEDチップとをワイヤーボンディングしているため、やはり製造工程がかかり、通常大量生産で安価な製品を目的とすることが多い LEDランプとしては不向きな構造であるという問題がある。またこのようなワイヤーボンディングタイプのパッケージに対しては、ワイヤを必要としないフェースダウン方式(フリップチップ)の LEDチップでは搭載できないという問題があり、多色LEDランプに対する容易な製造を妨げているという問題もある。
【0005】また図7に示すようなリードフレームを用いた構成では、リードフレームという量産に向いた部品を利用してはいるものの、 LEDチップを搭載するためにリードフレーム先端をリード方向に対して垂直な向きを持つ平坦なチップ台を形成する工程を必要とし、またこの方式でもチップ台と垂直なリード部とに対してフリップチップを搭載するには問題がある。しかし、図8に示すようなフリップチップを用いることができるタイプのリードでは、先端部にチップ搭載のためのカップ部21を成形する工程を必要とし、リードフレームのような単純な加工ではすまないこと、および搭載時に位置合わせの手間がかかることなどから、製造上の効率が低下し、コスト高であるという問題があった。
【0006】従って本発明の目的は、フリップチップ型(フェースダウン)の LEDでも使用可能な、量産に向く製造容易な LEDランプを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため本発明の構成は、異なる単色 LEDチップを少なくとも複数個、1パッケージに備えて多色表示可能な LEDランプにおいて、前記パッケージが透光性樹脂であり、前記 LEDチップにフリップチップ型 LEDを含み、該フリップチップ型 LEDの電極がチップのボンディング領域でいずれか二本のリードに渡ってそれぞれ接合されていることである。また関連発明の構成は、前記ボンディング領域がリードフレームの曲げ加工により前記リードの方向にほぼ垂直な面に形成されたことを特徴とする。さらに別の構成は、前記ボンディング領域が、リードフレームのリードが4本並列に配置された片端にあることを特徴とする。さらに別の構成は、リードが2本並列になったリードフレームの中央部を曲げ加工してコの字状にし、該中央部に前記ボンディング領域が設けられていることである。
【0008】
【作用】リードフレームを曲げ加工によりその平坦面をリード方向に対して直角方向にするため、平板なリード部をそのままボンディング領域にできる。従って LEDチップの配置はリードフレームの打ち抜きパターンを決めることで決定できる。リードフレームは一回の打ち抜き工程で形成できる上、連続してリード部を供給できてLED ランプを量産できる。
【0009】
【発明の効果】リードフレームの構造を、複数のフリップチップ型(フェースダウン) LEDチップ搭載可能な配置設計で曲げ加工のみで形成できるようにしたので、プラスチックモールドのパッケージのみで製造可能となり、自動製造ラインに組み込み可能なリードフレームなので、安価に大量に多色 LEDランプを製造できる。
【0010】
【実施例】以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。図1に示すリードフレームを用いた LEDランプの一例を示す。 LEDランプ1の外観は通常良く知られた砲弾型のパッケージ2でリード3が延びた形状である。通常、多色発光の LEDでは、共通端子としてグランド(アース)、残りのリードがそれぞれの色の点灯端子で、三色を独立して発光させるために四本のリードが設けられている。このリード3は、図1(d) に示すように、パッケージ2の内部となる部分で曲げ加工によって、ハンガー状にリードの先端を曲げて LEDチップを搭載するチップ台(ボンディング領域)が設けられ、一部はリードとリードとに渡って橋渡しするようにフリップチップ型(フェースダウン)の青LED チップが固定され、あるいはアノードコモンのリード3aのチップ台に直接赤LED チップを搭載して、点灯端子とボンディングワイヤで接続している。このチップの配置は図1(c) に示すように、平行な平らなリード4のうち一本をコモンリード(グランドもしくは電源ライン)としてその周囲に点灯端子となるリードのチップ搭載箇所が配置されるような構造になっている。ここで使用する三色は青、赤、緑のいわゆる色の RGB三原色で、青の輝度が弱いものを使用する場合として、青LED を複数個搭載する例を示してある。ここで用いた青LED は窒化ガリウム(GaN) 半導体でできたフリップチップであって、ボンディングワイヤを使用しないタイプのものである。
【0011】このリード3はリードフレームを利用した自動実装可能な大量生産向きの構成としてある。つまり、細長い平板状のリード材を打ち抜いて四本のリード部分とその先端部のチップ台を形成し、その先端部を曲げ加工して、 LEDの発する光の放射方向がリード3を出す方向と反対方向になるように、つまりリード3に対して直角方向となるよう(図1(d))チップ台が加工される。この構成のリードではどちらのタイプの LEDでも搭載できる。またリードフレームは通常、自動実装機械に利用できるようにキャリアテープという形でリード部が多数連なったリール状になっている。従ってリードフレームは非常に自動加工、自動実装に向いた構成であり、他の電子部品でもよく使用されている。
【0012】また図1に示したチップ配置は一例に過ぎず、図2に示すような様々な配置が挙げられる。即ち、図2(a) のように、青LED のフリップチップをアノードコモンリードの片サイドに配置し、ワイヤボンディングタイプの赤LED と緑LED とを青LED の反対サイドに配置する構成である。これは赤LED としてGaP,GaAsP 系の材料を用いていて、n伝導型面がリードに接触する面となるため、アノードコモンリードに接着できないためである。
【0013】さらにカソードをコモンリードとしても同じである。この場合、赤LED としてAlGaAsを使用する場合、リードのチップ台に張り付ける面がp伝導型となるためである。また図2(c) の場合では、カソードコモンリードのチップ台に二つのボンディングタイプのチップを搭載できるため、素子密度が大きくとれる。
【0014】(第二実施例)図1および図2ではリードが同方向に揃っているリードフレームを用いているが、図3に示すように、リードフレームの形状として、リード4が LEDチップの接合されるチップ台領域から両側に延びる形状でも同様の効果がある。即ち図4(b) に示すようなリードフレームとなる平板11を、図4(a) の如くに平行な二本のリード形状に打ち抜き、チップ台部分にチップを搭載、ボンディングし、その後リードフレームをコの字状に曲げ加工して(図4(c))、高分子樹脂の砲弾型パッケージ7をモールドして LED素子を形成する。加工時に設けてあるリード4の保持梁6はパッケージ7形成後にカットして、通常の砲弾型LED とする。図3R>3で用いている赤LED としてAlGaAsを使用しているため、アノードコモンのリード部に赤LED チップを搭載している。
【0015】このタイプにおいても LEDチップの配置は様々なパターンが実施でき、その例として図5(a) に示すように、使用する赤LED として GaP,GaAsPタイプではn伝導型を張り付けることになるため、図3と異なる位置の点灯リード側に赤LED チップを搭載する。また、カソードコモンのリードとする場合は、それぞれ図5(b) (赤 LEDがAlGaAsタイプ) 、図5(c) (赤 LEDがGaP,GaAsP タイプであり、(a) と赤、緑のチップ位置の搭載位置が変わる)のようになる。
【0016】この構成の砲弾型LED の製造方法について大雑把に述べる。LED チップは既に形成されているものとする。
(1) リードフレームとなるリボン状の平板金属材料を、プレス機の打ち抜き加工などにより、リード部分とチップ台部分とに、保持梁で結合された状態で形成する。保持梁がない状態のままでは各リードが不安定であるので、工程中は各リードを結び付けておく。各リードの両端は平板金属材料の両端部分に相当するテープ状のキャリア部につながり、リード部の列が形成されて自動機械での取扱いが容易なように形成される。
(2) リードの先端部分もしくは中央部分を折り曲げ加工する。このときチップ台となる部位の平面さを失わないように加工形成し、必要ならばメッキ処理を実施する。(以上、リードフレーム形成工程)
(3) リード方向と90度角度が異なるチップ台に対して各色の LEDチップを所定位置に搭載する。接合は半田付けや導電性ペーストなどを用いた従来公知の接着方法で実施する。( LEDチップ搭載工程)
(4) その後、ボンディングワイヤーを必要とする LED素子に対してボンディングを実施する。(ボンディング工程)
(5) チップ台部分をエポキシなどの高分子パッケージでモールド成形して、できた砲弾型LED のリード部分の保持梁を切断除去し、リード部をテープ状のキャリア部から切離し、 LEDランプ単品を完成する。(成形工程および仕上げ工程)
【0017】以上のように、リードフレームを利用してフリップチップ搭載可能な多色発光LEDランプを容易に構成することができ、特にフリップチップ型(フェースダウン)の青LED チップが赤、緑 LEDチップとともに搭載できるので、集約されたRGB の LEDランプを提供することができる。
【0018】なお、請求項で言う、パッケージとは、むき出しの LEDチップ(ベアチップ)周囲の絶縁性保護物を言い、硝子封止のカンタイプや透光性の樹脂モールドタイプなどが挙げられる。本実施例では砲弾型の樹脂モールドタイプであるが、樹脂タイプでも砲弾型に限らず、円筒型や矩形型など使用目的に応じて様々な形状が形成可能である。また、ボンディング領域とはチップ台やカップ部とも書き表したが、 LEDチップをリードに接合する部分を中心とするリードの一部、および LEDチップのボンディング部分を指す。さらに、透光性樹脂には、透明エポキシ樹脂などがある。リードフレームとは、もともとリードを形成するためのテープ状平板金属材料から形成される図2や図4、5の形状の、素子ごとに分離される前の、各素子用のリード部がキャリア部に連なった全体をさして言うが、説明図では主に LEDチップを搭載するボンディング部分を中心に示してあり、また、ボンディング部もしくはリード部そのものを指して言うこともある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例の LEDの模式的構成断面図。
【図2】図1のリードフレームの変形例を示す説明図。
【図3】第二実施例の LEDの模式的断面構成図。
【図4】図3の詳細説明図。
【図5】図3のリードフレームの変形例を示す説明図。
【図6】従来のハーメチックシールタイプの LEDの概略構成図。
【図7】従来のリードフレームタイプの LEDの概略構成図。
【図8】従来のフリップチップ搭載可能なカップ部を有する LEDの模式的断面図。
【符号の説明】
1 LEDランプ(砲弾型)
2、7 パッケージ(モールド)
3 リード(リードフレーム)
4、5 リード
6 保持梁(モールド後に除去)
8a R−LED(GaP,GaAsP 赤 LED)
8b R−LED(AlGaAs赤 LED)
9 G−LED(緑 LED)
10 B−LED(青 LED)
11 平板(加工前のリードフレーム)
21 カップ部(リードフレーム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】異なる単色 LEDチップを少なくとも複数個、1パッケージに備えて多色表示可能な LEDランプにおいて、前記パッケージが透光性樹脂であり、前記 LEDチップにフリップチップ型 LEDを含み、該フリップチップ型 LEDの電極がチップのボンディング領域でいずれか二本のリードに渡ってそれぞれ接合されていることを特徴とする LEDランプ。
【請求項2】前記ボンディング領域がリードフレームの曲げ加工により前記リードの方向にほぼ垂直な面に形成されたことを特徴とする請求項1記載の LEDランプ。
【請求項3】前記ボンディング領域が、リードフレームのリードを4本並列に配置した片端にあることを特徴とする請求項1乃至2に記載の LEDランプ。
【請求項4】リードが2本並列になったリードフレームの中央部を曲げ加工してコの字状にし、該中央部に前記ボンディング領域が設けられていることを特徴とする請求項1乃至2に記載の LEDランプ。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【公開番号】特開平7−235624
【公開日】平成7年(1995)9月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−51374
【出願日】平成6年(1994)2月23日
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)