説明

LED点灯制御装置

【課題】 複数個のLED列の中に断線等が原因で電流の流れないLED列が含まれていても、全てのLED列が完全に消灯せず、尚且つ、定電流回路が異常な発熱状態にならないLEDの灯制御装置を提供する。
【解決手段】 制御回路4aの内部に、第2の選択検出回路9と切換回路10を新たに設ける。保護回路7が上昇した出力電圧から過電圧状態を検出した時、誤差増幅回路6に供給する信号を、保護回路7からの保護信号を受け取った切換回路10によって、第1の選択検出回路5の出力信号から第2の選択検出回路9の出力信号に切り換える。これにより、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧を、第2の選択検出回路9で検出された最も小さな順方向降下電圧が現れるLED列に接続された定電流回路の端子間電圧に応じて制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のLED列の中に断線等が原因で電流の流れないLED列が含まれていても、定電流回路が異常な発熱状態にならないようにする保護機能を有したLEDの灯制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LEDを照明装置に使用する際には、1個のLEDから得られる光量に限界があるため、LEDを多数使用することで必要な光量を得ている。ただし、LEDに電流を流して点灯する時、あまり多くの数のLEDを直列に接続するとLED列の始端と終端の間に供給すべき電圧が高くなってしまう。そこで通常は、直列個数を抑えた複数個のLED列を並列に接続することで、供給電圧を低く抑えながらLEDの必要個数を確保するという対応をしている。
【0003】
LEDの発光量は電流の大きさに依存するため、複数のLED列をムラ無く点灯させるには、各LED列を流れる電流がほぼ同じ値になるよう制御する必要がある。しかし、並列接続された各LED列の始端−終端間に単純に同じ大きさの電圧を供給した場合、LED列によって電流の大きさが異なるという現象を生じる。このため、近年のLEDを点灯させる装置は、各LED列の電流の大きさを揃えるため、各LED列にそれぞれ独立した定電流回路を直列に接続する。そして、そのLED列と定電流回路の直列体(複数)に対し、DC−DCコンバータ回路から安定した電圧を供給するという構成となっている。
(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)
【0004】
図3は、近年のLED点灯制御装置の構成の一例を示している。なお、図3において、1はDC−DCコンバータ回路であり、4bはDC−DCコンバータ回路1の動作をフィードバック制御するための制御回路である。2aと2bは、それぞれ外部から電源電圧の供給受けるための高電位側入力端子と低電位側入力端子2bである。3は負荷回路と接続するための高電位側の出力端子である。なお、低電位側の出力端子は、低電位側の入力端子2bと共に基準電位点としてのグランドに接続されており、グランドを事実上の低電位側の出力端子として扱うことで図示を省略してある。
【0005】
図3に示す回路は、次のような構成になっている。
DC−DCコンバータ回路1の出力端子3とグランドの間に、出力電圧平滑用のコンデンサC1及び出力電圧検出用の抵抗R1と抵抗R2の直列回路が接続されている。DC−DCコンバータ回路1の出力端子3は更に、複数のLEDを直列に接続した第1のLED列LA1、第2のLED列LA2及び第3のLED列LA3の一端(始端)に接続されている。各LED列LA1、LA2、LA3の各他端(終端)は、それぞれ定電流回路CS1、CS2、CS3を介してグランドに接続されている。
【0006】
第1のLED列LA1と定電流回路CS1の接続点は制御回路4bの第1系列検出端子ST1に接続されている。同様に、第2のLED列LA2と定電流回路CS2の接続点は第2系列検出端子ST2に接続され、第3のLED列LA3と定電流回路CS3の接続点は第3系列検出端子ST3に接続されている。制御回路4bは、各系列検出端子ST1、ST2、ST3の他に駆動信号出力端子DRVと電圧入力端子VITを有しており、駆動信号出力端子DRVは、駆動信号をDC−DCコンバータ回路1内のスイッチング素子に供給するようにDC−DCコンバータ回路1接続されている。また、電圧入力端子VITは、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧を検出するように抵抗R1と抵抗R2の共通接続点に接続されている。
【0007】
ここで制御回路4bは、その内部に第1の選択検出回路5、誤差増幅回路6、保護回路7及び信号処理回路8を有している。制御回路4bの内部において、3つの系列検出端子端子ST1、ST2、ST3は第1の選択検出回路5の入力側にそれぞれ接続されている。また、電圧入力端子VITは保護回路7の入力側に接続されており、駆動信号出力端子DRVは信号処理回路8の出力側に接続されている。誤差増幅回路6と保護回路7の各出力側は信号処理回路8にそれぞれ接続され、誤差増幅回路6の入力側は第1の選択検出回路5の出力側と接続されている。
【0008】
ここで第1の選択検出回路5は、その内部が図4に示すような回路構成となっている。すなわち、第1の選択回路5は、アノードが共通接続されたダイオードD1、D2、D3及び、そのアノードの共通接続点P1と電源ライン(VDD)の間に接続された抵抗R3によって構成されている。この第1の選択検出回路5の入力側であるダイオードD1、D2、D3の各カソードは、第1から第3の系列検出端子ST1、ST2、ST3にそれぞれ個別に接続されている。また、第1の選択検出回路5の出力側であるアノードの共通接続点P1は誤差増幅回路6に接続されている。
【0009】
誤差増幅回路6は、図3に示すように、制御対象の制御目標値を設定するための基準電圧源VR1と、非反転入力端子に基準電圧源VR1から基準電圧の供給を受ける誤差増幅器AMPによって構成されている。この誤差増幅回路6の入力側である誤差増幅器AMPの反転入力端子は第1の選択検出回路5の出力側、すなわち図4に示す回路のアノードの共通接続点P1に接続されている。また、誤差増幅回路6の出力側である誤差増幅器AMPの出力端子は信号処理回路8に接続されている。
【0010】
保護回路7は、図3に示すように、過電圧状態の有無を判断するしきい値を設定するための基準電圧源VR2と、反転入力端子に基準電圧源VR2からのしきい値電圧の供給を受ける比較器CMPによって構成されている。この保護回路7の入力側である比較器CMPの非反転入力端子は電圧入力端子VITに接続されている。また保護回路7の出力側である比較器CMPの出力端子は信号処理回路8に接続されている。
【0011】
そして信号処理回路8は、DC−DCコンバータ回路1にごく一般的なPWM制御方式のスイッチング・レギュレータを想定しているため、その内部にPWM制御方式の制御回路が通常持つべき発振回路、PWMコンパレータ、スイッチング素子駆動回路、等が構成されている。ちなみに、DC−DCコンバータ回路1がシリーズレギュレータである場合、信号処理回路8の内部には直列制御素子駆動回路等が構成される。ここでは、信号処理回路8の内部にはDC−DCコンバータ回路1の回路方式に応じた一般的な制御機構が構成されるものとし、その具体的な構成の説明は省略する。
【0012】
以上のような構成とした図3の回路において、DC−DCコンバータ回路1から各LED列LA1〜LA3に電圧が供給された時、出力端子3に共通接続された各LED列LA1〜LA3の始端の電圧は、当然、同一になる。しかし、各LED列LA1〜LA3の始端−終端間に生じる順方向降下電圧が異なるため、各系列検出端子ST1〜ST3に現れる電圧は同一にならない。
【0013】
いま、第3のLED列LA3の順方向降下電圧が最も大きいと仮定する。この場合、第3系列検出端子ST3の位置に現れる電圧が最も低くなる。すると、第1の選択検出回路5の中にある接続点P1の位置の電圧は、ダイオードD1〜D3に生じる順方向降下電圧を無視すると、最も電圧値の低い第3系列検出端子ST3の電圧とほぼ同じ値になる。このため、第1の選択検出回路5は、最も大きな順方向降下電圧を持つLED列(LA3)に接続された定電流回路(CS3)の端子間電圧を選択的に検出し、その端子間電圧とほぼ同じ大きさの電圧の信号を誤差増幅回路6に供給することになる。
【0014】
誤差増幅回路6は、その内部の誤差増幅器AMPにおいて、第1の選択検出回路5から供給される信号と基準電圧の電圧値の差に応じた誤差信号を発生させる。そして信号処理回路8は、誤差増幅回路6から誤差信号の供給を受け、その内部において駆動信号を生成する。信号処理回路8において生成された駆動信号は駆動信号出力端子DRVを介してDC−DCコンバータ回路1に供給され、DC−DCコンバータ回路1は駆動信号に応じた出力電圧を出力する。これら第1の選択検出回路5、誤差増幅回路6及び信号処理回路7の動作の結果、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧は、第3系列検出端子ST3の位置の電圧と基準電圧源VR1の基準電圧を等しくするような値に制御される。
【0015】
ここで、制御回路4bの制御対象となっているのは、最も電圧値の低い第3系列検出端子ST3の電圧値であり、それは即ち、最も順方向降下電圧の大きな第3のLED列LA3に接続された定電流回路CS3の端子間電圧である。一般に定電流回路は、電流を制御する際に所定値以上の端子間電圧を必要とする。通常、端子間電圧がそれより低いと、定電流回路の動作は不安定になり、電流を回路構成時に設定された規定値で一定になるように制御できない。そこで、基準電圧源VR1から誤差増幅器AMPに供給する基準電圧を定電流回路(CS1〜CS3)の安定動作に必要な最小の端子間電圧よりも高い値に設定しておけば、DC−DCコンバータ回路1は、全てのLED列と定電流回路の直列回路に対し、定電流回路CS3の安定動作を可能とするような出力電圧を供給することになる。
【0016】
第3系列検出端子ST3の位置に現れる電圧は、定電流回路CS3の端子間電圧に等しく、先の仮定の元では3つの系列検出端子ST1〜ST3の電圧の中で最も低い。つまり、定電流回路CS1とCS2の端子間電圧は定電流回路CS3の端子間電圧よりも高くなっている。このため、定電流回路CS1〜CS3が同一特性のものであるとすると、最も順方向降下電圧の大きなLED列(この仮定の元ではLA3)に接続された定電流回路(この仮定の元ではCS3)が安定した動作を行える状態にあれば、他の全ての定電流回路も安定した動作が可能な状態になっているということになる。
【0017】
いま、図3の回路において、第1のLED列LA1の内部で断線等が生じ、第1のLED列LA1に電流が流れない状態になったとする。この時、第1系列検出端子ST1の位置の電圧はほぼゼロになり、第1の選択検出回路5から誤差増幅回路6に供給される信号の電圧値もほぼゼロになってしまう。すると信号処理回路8は、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧を上昇させるような駆動信号をDC−DCコンバータ回路1に供給する。
【0018】
しかし、第1のLED列LA1に電流が流れないため、いくらDC−DCコンバータ回路1の出力電圧を上昇させても第1系列検出端子ST1の位置の電圧は上昇しない。このため、信号処理回路8は内部に構成されたロジックに従ってDC−DCコンバータ回路1の出力電圧を更に上昇させようとする。もしDC−DCコンバータ回路1の出力電圧が無制限に上昇すると、過電圧によりDC−DCコンバータ回路1や定電流回路CS2、CS3を破損させてしまう。そこで図3の回路は、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧が無制限に上昇するのを防止するために保護回路7を設けている。
【0019】
この保護回路7は、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧が抵抗R1とR2、そして基準電圧源VR2のしきい値電圧で設定される値を越えて大きくなった時、その出力電圧が過電圧状態であるとして、信号処理回路8に対して保護信号を出力する。ここで、信号処理回路8が保護回路7の出力する保護信号に応じて動作を停止させる構成になっている場合、保護回路7から保護信号が出力された時、信号処理回路8からDC−DCコンバータ回路1への駆動信号の供給が停止する。その結果、DC−DCコンバータ回路1の動作は停止し、出力電圧が無制限に上昇することが防止される。
【特許文献1】特開2002−008409号
【特許文献2】特表2005−537669号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
通常の過電圧保護は、制御回路4b(具体的には信号処理回路8)からDC−DCコンバータ回路1への駆動信号の供給を停止し、DC−DCコンバータ回路1の動作を停止させることにより行われる。このような、DC−DCコンバータ回路1の動作を停止させる過電圧保護(動作停止型の過電圧保護)機能を備えたLED点灯制御装置では、一つのLED列に電流が流れなくなる不具合が生じた時、全てのLED列LA1〜LA3が完全に消灯することになる。しかし、LEDを照明として使用する電子機器によっては、全てのLED列が完全に消灯すると困る場合もある。そのような場合には、制御回路4bの制御対象を定電流回路の端子間電圧からDC−DCコンバータ回路1の出力電圧に変更し、出力電圧を直接制御するといった過電圧保護(以下、出力電圧制御型の過電圧保護という)が使用される。
【0021】
例えば、保護回路7の比較器CMPを誤差増幅回路6と同様な誤差増幅器に置き換え、更に、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧が過電圧状態になった時、信号処理回路8の処理対象が誤差増幅回路6の誤差信号から保護回路7の保護信号に代わるように構成しておく。この構成は、例えば、誤差増幅回路6と保護回路7の各出力信号を信号処理回路8内の同じPWMコンパレータ(図示せず)に入力し、抵抗R1と抵抗R2の抵抗値及び基準電圧源VR1と基準電圧源VR2の出力電圧値を、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧が過電圧状態になった時、誤差増幅回路6の誤差信号と保護回路7の出力信号の大小関係が逆転するような値に設定しておくことで実現できる。
【0022】
このような構成とすると、複数個のLED列の中の一つのLED列に電流が流れなくなる不具合が生じた時、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧は、抵抗R1、R2の抵抗値と基準電圧源VR2のしきい値電圧によって設定される値まで上昇した後、その値で一定になるように直接制御される。その結果、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧の供給は継続されるので、電流が流れなくなる不具合が生じたLED列以外の正常なLED列は点灯状態を維持できる。
【0023】
しかし、出力電圧制御型の過電圧保護が行われている時、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧は通常運転時よりも上昇し、正常なLED列に接続されている定電流回路の端子間電圧も通常より高い状態となる。この状態が長く続くと定電流回路が異常な発熱状態となり、消費電力の増加や定電流回路の焼損などの新たな問題を生じる恐れがあった。
そこで本発明は、複数個のLED列の中に断線等が原因で電流の流れないLED列が含まれていても、全てのLED列が完全に消灯せず、尚且つ、定電流回路が異常な発熱状態にならないLEDの灯制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するための本発明は、複数個のLED列にそれぞれ直列接続された複数個の定電流回路と、LED列と定電流回路に対して制御された出力電圧を供給するコンバータ回路と、複数個のLED列の中で最も大きな順方向降下電圧が現れるLED列に接続された定電流回路の端子間電圧を選択的に検出する第1の選択検出回路と、第1の選択検出回路で検出された端子間電圧が基準電圧値で安定するようにコンバータ回路の動作をフィードバック制御する制御回路と、を備えたLED点灯制御装置において、
制御回路が、コンバータ回路の出力電圧から過電圧状態を検出する保護回路と、複数個のLED列の中で最も小さな順方向降下電圧が現れるLED列に接続された定電流回路の端子間電圧を選択的に検出する第2の選択検出回路とを具備し、コンバータ回路の出力電圧が過電圧状態の時、第2の選択検出回路で検出された端子間電圧が基準電圧値で安定するようにコンバータ回路の動作をフィードバック制御することを特徴とする。
【0025】
このような本発明のLED点灯制御装置を用いると、複数個のLED列の中の一つのLED列に断線等の不具合が生じた時、一時的にはDC−DCコンバータ回路の出力電圧が上昇する。しかし、保護回路が上昇した出力電圧から過電圧状態を検出すると、以後、本発明のLED点灯制御装置は、DC−DCコンバータ回路の出力電圧を、第2の選択検出回路で検出された最も小さな順方向降下電圧が現れるLED列に接続された定電流回路の端子間電圧に応じて制御する。
【0026】
第2の選択検出回路で検出された定電流回路の端子間電圧は、第1の選択検出回路で検出された定電流回路の端子間電圧よりも高いものとなる。このため、第2の選択検出回路で検出された定電流回路の端子間電圧に応じてDC−DCコンバータ回路をフィードバック制御すると、第1の選択検出回路で検出された定電流回路の端子間電圧に応じてフィードバック制御されていた時よりもDC−DCコンバータ回路の出力電圧は低くなる。そして、その出力電圧は、少なくとも一つのLED列の点灯を可能とする。具体的には、その出力電圧は、最も小さな順方向降下電圧が現れるLED列の点灯を可能にする値になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のLED点灯制御装置によると、複数個のLED列の中に断線等により電流の流れないLED列が含まれていても、少なくとも最も小さな順方向降下電圧が現れるLED列は点灯するので、全てのLED列が完全に消灯することは無い。また、本発明のLED点灯制御装置によると、複数個のLED列の中に断線等により電流の流れないLED列が含まれていた場合、DC−DCコンバータ回路の出力電圧は一時的に上昇するが、過電圧状態が検出されると出力電圧は低下するため、定電流回路が異常な発熱状態にならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、図を参照しながら本発明を実施するにあたっての最良の形態を説明する。
図1は本発明の実施例によるLED点灯制御装置の回路図である。図1のLED点灯制御装置は、以下に説明するように、制御回路4aの内部構成が図3の従来のLED点灯制御装置(の制御回路4b)と異なっている。なお、図1と図3において、同じ構成要素に対しては同じ符号を付与してある。
【0029】
図1において、制御回路4aは、その内部に第1の選択検出回路5、誤差増幅回路6、保護回路7、信号処理回路8、第2の選択検出回路9及び切換回路10を有している。制御回路4aの内部において、電圧入力端子VITは保護回路7の入力側に接続されており、駆動信号出力端子DRVは信号処理回路8の出力側に接続されている。3つの系列検出端子端子ST1、ST2、ST3は第1の選択検出回路5の入力側にそれぞれ個別に接続されており、更に系列検出端子端子ST1、ST2、ST3は第2の選択検出回路9の入力側にもそれぞれ個別に接続されている。
【0030】
第1の選択検出回路5の出力側は切換回路10のa接点に接続されており、第2の選択検出回路9の出力側は切換回路10のb接点に接続されている。切換回路10の共通接点であるc接点は誤差増幅回路6の入力側に接続されており、誤差増幅回路6の出力側は信号処理回路8に接続されている。そして保護回路7の出力側は、その出力信号に応じた動作を行わせるために、第2の選択検出回路9及び切換回路10に接続されている。
【0031】
ここで第1の選択検出回路5は、従来のLED点灯制御装置と同様に、その内部が図4に示すような回路構成となっている。すなわち、第1の選択回路5は、アノードが共通接続されたダイオードD1、D2、D3及び、アノードの共通接続点P1と電源ライン(VDD)の間に接続された抵抗R3によって構成されている。第1の選択検出回路5の入力側であるダイオードD1、D2、D3の各カソードは、第1から第3の系列検出端子ST1、ST2、ST3にそれぞれ接続され、第1の選択検出回路5の出力側であるアノードの共通接続点P1は、切換回路10のa接点に接続されている。
【0032】
一方、第2の選択検出回路9は、その内部が図2に示すような回路構成となっている。すなわち、第2の選択回路9は、カソードが共通接続されたダイオードD4、D5、D6及び、カソードの共通接続点P2とグランドの間に接続された抵抗R4によって構成されている。第2の選択検出回路9の入力側であるダイオードD4、D5、D6の各アノードは、第1から第3の系列検出端子ST1、ST2、ST3にそれぞれ個別に接続され、第2の選択検出回路9の出力側であるカソードの共通接続点P2は、切換回路10のb接点に接続されている。
【0033】
誤差増幅回路6は、従来と同様に、制御目標値を設定するための基準電圧源VR1と、非反転入力端子に基準電圧源VR1から基準電圧の供給を受ける誤差増幅器AMPによって構成されている。この誤差増幅回路6の入力側である誤差増幅器AMPの反転入力端子は切換回路10のc接点に接続され、誤差増幅回路6の出力側である誤差増幅器AMPの出力端子は信号処理回路8に接続されている。
【0034】
保護回路7は、過電圧状態の有無を判断するしきい値を設定するための基準電圧源VR2と、反転入力端子に基準電圧源VR2からのしきい値電圧の供給を受ける比較器CMPによって構成されている。この保護回路7の入力側である比較器CMPの非反転入力端子は電圧入力端子VITに接続されている。保護回路7の出力側である比較器CMPの出力端子は、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧から過電圧状態を検出した時、c接点の接続先をa接点からb接点に切り換えるように切換回路10に接続されている。また、比較器CMPの出力端子は、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧から過電圧状態を検出した時、図2のスイッチSWをオン状態にするように第2の選択検出回路9に接続されている。
【0035】
このような構成を持つ図1の回路は、初期状態としてスイッチ回路10のc接点をa接点に接続した状態となっている。このため図1の回路は、第1から第3のLED列LA1〜LA3の全てが正常な状態の時、図3の回路と同じ動作により、第1から第3のLED列LA1〜LA3に対して、LEDを点灯させるのに必要な電圧をDC−DCコンバータ回路1から供給する。この時のDC−DCコンバータ回路1の出力電圧は、制御回路4aの動作によって、最も順方向降下電圧の大きなLED列に接続された定電流回路の端子間電圧と基準電圧源VR1の基準電圧を等しくするような値に制御される。
【0036】
ここで、第1から第3のLED列LA1〜LA3の中の一つに断線等の不具合が発生し、その結果、不具合の発生したLED列に電流が流れなくなったとする。
LED列に電流が流れなければ、そのLED列に接続された定電流回路の端子間に電圧は生じない。このため第1の選択検出回路5は、共通接続点P1に最も小さい定電流回路の端子間電圧を生じさせる機能上、不具合の発生したLED列に接続された定電流回路の端子間電圧を選択的に検出してしまい、電圧値がほぼゼロの信号をスイッチ回路10を介して誤差増幅回路6に供給する。このとき、信号処理回路8は、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧を上昇させるような駆動信号をDC−DCコンバータ回路1に供給する。その結果、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧は、一時的に上昇することになる。
【0037】
DC−DCコンバータ回路1の出力電圧が抵抗R1、R2の抵抗値と基準電圧源VR2のしきい値電圧で設定される値を越えると、保護回路7は過電圧状態を検出し、第2の選択検出回路9と切換回路10に保護信号を供給する。すると、第2の選択検出回路9はスイッチSWをオン状態にし、切換回路10はc接点の接続先をa接点からb接点に切り換える。これにより誤差増幅回路6の入力側には、第1の選択検出回路5の出力信号に替わって、第2の選択検出回路9の出力信号が供給される。
【0038】
ここで、スイッチSWがオン状態になった第2の選択検出回路9は、ダイオードD4〜D6の順方向降下電圧を無視すると、図2の共通接続点P2に、ダイオードD4〜D6の各アノードに供給される電圧の中で最も高い電圧とほぼ同じ電圧を生じる。図1の回路構成上、ダイオードD4〜D6の各アノードには系列検出端子ST1〜ST3を介して各定電流回路CS1〜CS3の端子間電圧が印加される。その端子間電圧の中で最も高い電圧値になるものは、最も順方向降下電圧の小さなLED列に接続された定電流回路の端子間電圧である。このため、第2の選択検出回路9は、最も小さな順方向降下電圧を持つLED列に接続された定電流回路の端子間電圧を選択的に検出し、その端子間電圧とほぼ同じ大きさの電圧の信号を、切換回路10を介して誤差増幅回路6に供給することになる。
【0039】
誤差増幅回路6は、その内部の誤差増幅器AMPにおいて、第2の選択検出回路9から供給される信号と基準電圧の電圧値の差に応じた誤差信号を発生させる。そして信号処理回路8は、誤差増幅回路6から誤差信号の供給を受け、その内部において駆動信号を生成する。信号処理回路8において生成された駆動信号は駆動信号出力端子DRVを介してDC−DCコンバータ回路1に供給され、DC−DCコンバータ回路1は駆動信号に応じた出力電圧を出力する。これら第2の選択検出回路9、誤差増幅回路6及び信号処理回路7の動作の結果、一時的に上昇したDC−DCコンバータ回路1の出力電圧は低下し、その出力電圧は、最も小さな順方向降下電圧を持つLED列に接続された定電流回路の端子間電圧と基準電圧源VR1の基準電圧を等しくするような値に制御される。
【0040】
このように、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧が、最も小さな順方向降下電圧を持つLED列に接続された定電流回路の端子間電圧と基準電圧源VR1の基準電圧を等しくするような値に制御されていれば、少なくとも最も小さな順方向降下電圧を持つLED列に接続された定電流回路は安定した動作状態となる。このため、最も小さな順方向降下電圧を持つLED列に関しては、定電流回路で設定された規定の電流でもって通常通り点灯されることになる。
【0041】
他の正常なLED列については、例えば、あるLED列の順方向降下電圧の値が最も小さな順方向降下電圧の値と僅差である場合、具体的には、双方の順方向降下電圧の値の差が定電流回路の安定動作を可能とする最小の端子間電圧の値よりも小さい場合、そのLED列は点灯する。ただし、そのLED列に接続されている定電流回路は安定した動作状態になるとは限らず、定電流回路が不安定な動作状態にあれば、そのLED列は定電流回路で設定される規定の電流値よりも小さな電流で点灯する。あるLED列の順方向降下電圧の値が最も小さな順方向降下電圧の値から掛け離れて大きければ、そのLED列は点灯しない。
【0042】
通常、図1の各LED列LA1〜LA3のLEDの直列個数は同一になっていることが多く、各LED列LA1〜LA3に生じる順方向降下電圧の値もそれぞれ僅差であることの方が多い。その場合には、少なくとも最も小さな順方向降下電圧を持つLED列は通常通りに点灯し、LEDの順方向降下電圧のバラツキ具合にもよるが、それ以外の正常なLED列の中に規定値よりも小さい電流で点灯するものも出てくる。したがって、図1の構成のLED点灯制御装置によれば、複数個のLED列の中に断線等が原因で電流の流れないLED列が含まれていても、全てのLED列が完全に消灯してしまうことはない。
【0043】
ところで、第1の選択検出回路5が選択的に検出するのは、最も大きな順方向降下電圧を持つLED列に接続された定電流回路の端子間電圧であって、事実上、最も低い定電流回路の端子間電圧である。一方、第2の選択検出回路9が選択的に検出するのは、最も小さな順方向降下電圧を持つLED列に接続された定電流回路の端子間電圧であって、事実上、最も高い定電流回路の端子間電圧である。DC−DCコンバータ回路1の出力電圧は、最も低い定電流回路の端子間電圧を基準電圧源VR1の基準電圧に等しくする場合よりも、最も高い定電流回路の端子間電圧を基準電圧源VR1の基準電圧に等しくする場合の方が低くなる。
【0044】
このため、第1から第3のLED列LA1〜LA3の中の一つに断線等の不具合が発生し、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧が一時的に上昇したとしても、保護回路7において過電圧状態が検出されると、誤差増幅回路6に供給される信号が第1の選択検出回路5の出力信号から第2の選択検出回路9の出力信号に切り換わり、DC−DCコンバータ回路1の出力電圧は低下する。しかも、不具合発生後のDC−DCコンバータ回路1の出力電圧は、第1から第3のLED列LA1〜LA3が正常だった時よりも低い値に制御される。このため、第1から第3のLED列LA1〜LA3の中の一つに断線等の不具合が発生し、その状態が長く続いても、定電流回路が異常な発熱状態にならない。
【0045】
また、従来の出力電圧制御型の過電圧保護によると、LED列の数が非常に多い場合、一つのLED列が消灯した程度ではLED列における不具合の発生を認識できないことも有り得る。DC−DCコンバータ回路の出力電圧が上昇しても、各LED列を流れる電流は定電流回路によって規定値で一定になるように制御されているので、他の正常なLED列の発光量がほとんど変化しないこと。また、通常、照明装置の発光面には輝度均一化のための蛍光板等が設置されることが、不具合発生を認識しにくくしている。
【0046】
しかし、本発明のLED点灯制御装置の過電圧保護によると、DC−DCコンバータ回路の出力電圧が低くなり、それに伴って電流が小さくなるLED列、あるいは消灯するLED列が出現する。その結果、照明装置の発光面の輝度は見た目にも明らかに低下し、LED列の数が非常に多い場合にもLED列における不具合の発生を認識し易くなるといった付帯的な効果も得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明によるLED点灯制御装置の実施例の構成を示す回路図。
【図2】第2の選択検出回路9の具体的な内部構成を示す回路図。
【図3】近年のLED点灯制御装置の一例の構成を示す回路図。
【図4】第1の選択検出回路5の具体的な内部構成を示す回路図。
【符号の説明】
【0048】
1:DC−DCコンバータ回路
2a:高電位側の入力端子
2b:低電位側の入力端子
3:出力端子(高電位側)
4a、4b:制御回路
5:第1の選択検出回路
6:誤差増幅回路
7:保護回路
8:信号処理回路
9:第2の選択検出回路
10:切換回路
AMP:誤差増幅器
C1:平滑コンデンサ
CMP:比較器
CS1〜CS3:定電流回路
DRV:駆動信号出力端子
LA1〜LA3:LED列
P1:第1の選択検出回路内の共通接続点
P2:第2の選択検出回路内の共通接続点
R1、R2:出力検出用抵抗回路の抵抗
ST1〜ST3:系列検出端子
VR1:基準電圧源(制御目標値を設定するための基準電圧発生用)
VR2:基準電圧源(過電圧状態の有無を判断するしきい値電圧発生用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のLED列にそれぞれ直列接続された複数個の定電流回路と、該LED列と該定電流回路に対して制御された出力電圧を供給するコンバータ回路と、該複数個のLED列の中で最も大きな順方向降下電圧が現れるLED列に接続された定電流回路の端子間電圧を選択的に検出する第1の選択検出回路と、該第1の選択検出回路で検出された端子間電圧が基準電圧値で安定するように該コンバータ回路の動作をフィードバック制御する制御回路と、を備えたLED点灯制御装置において、
該制御回路が、
該コンバータ回路の出力電圧から過電圧状態を検出する保護回路と、
該複数個のLED列の中で最も小さな順方向降下電圧が現れるLED列に接続された定電流回路の端子間電圧を選択的に検出する第2の選択検出回路と、
を具備し、該コンバータ回路の出力電圧が過電圧状態の時、該第2の選択検出回路で検出された端子間電圧が基準電圧値で安定するように該コンバータ回路の動作をフィードバック制御する
ことを特徴とするLED点灯制御装置。
【請求項2】
前記制御回路が、
前記端子間電圧と前記基準電圧値の差に応じた信号を出力する誤差増幅回路と、
前記第1の選択検出回路と前記第2の選択検出回路で検出された2つの端子間電圧のうちの一方を、前記保護回路の出力信号に応じて選択的に該誤差増幅回路に供給する切換回路と、
を具備することを特徴とする、請求項1に記載したLED点灯制御装置。
【請求項3】
前記第2の選択検出回路が、
前記複数個のLED列と前記複数個の定電流回路の各共通接続点にそれぞれカソードが接続された複数個のダイオードと、
該複数個のダイオードのアノードと共通接続された回路接点と、
該回路接点に一端が接続された抵抗と、
該抵抗の他端とグランドの間に接続され、前記保護回路の出力信号に応じてオンオフするスイッチ素子と、
を具備することを特徴とする、請求項1あるいは請求項2に記載したLED点灯制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−99894(P2009−99894A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272205(P2007−272205)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】