説明

LED用拡散ユニット

【課題】輝度ムラが少なく、目玉状イメージを低減したLED用拡散ユニットを提供する。
【解決手段】熱可塑性透明樹脂に光拡散剤を配合した1又は複数枚の拡散板であって、各全光線透過率が40〜85%の範囲内で、該拡散板の少なくとも1つの面に、レンズ形状を有する事を特徴としたLED用拡散ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDを光源とした表示装置の拡散ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LEDを光源にした表示装置、又は照明分野が注目を集めている。LEDは従来の蛍光灯、白熱電球と比べ、寿命が長く、省エネルギーである。又、環境汚染物質を使っていないため、環境にやさしく、今後各種光源への応用が期待される。
LEDは指光性が強く、その特徴を生かし、現状ではスポット用照明や文字、デザインを表示する表示装置用照明として広く用いられるようになった。
表示装置は、自発光ではないため、表示装置用照明としてはバックライトといわれる光源装置が必要とされる。
バックライトには、エッジライト型バックライトと直下型バックライトと呼ばれる2つのタイプがあるが、表示装置は大型化と高輝度を実現できる直下型バックライトが多く用いられる。
【0003】
直下型バックライトは、一般に、これまで図1に示すような構造(断面図)をしており、反射板4、LED1、拡散板5、を基本構成に、用途の必要に応じ、光学フィルム、又は表示用文字板、又は液晶パネル等を付加して構成されていた。
従来技術の光源は、冷陰極管が広く使われており、例えば特許第2120343号公報(特許文献1)、特開平10−3811号公報(特許文献2)、特開平11−5241号公報(特許文献3)などで報告されているように従来の白色系顔料だけでなく有機/無機、様々な光拡散剤を配合する検討が多数行われてきた。
また冷陰極管を使用したユニットでも、ランプイメージを低減する為、レンズ機能を有する技術も検討されている。例えば、特開平2−257188号公報(特許文献4)、特開平5−45505号公報(特許文献5)、特開平5−333333号公報(特許文献6)、特開平6−18707号公報(特許文献7)などではプリズム形状を設計することで出光パターンを制御した報告がされている。
【0004】
しかし、LEDは、指光性が強く(出光する光束の角度が狭いという意味)これまでに報告されている技術だけで、輝度ムラを軽減させようとすると、LEDの数を増やす方向になってしまう。
一方、市場では、低消費エネルギーと、コストダウンを図るため、LEDの個数を削減したい要求があり、従来技術のままではこれを達成出来ない。図1のようにLED2を間引きして、LEDの個数を削減すると、指光性の強い光が強調され、面として見ても、目玉状ランプイメージになり、これを嫌うユーザーが増えてきている。
【特許文献1】特許第2120343号公報
【特許文献2】特開平10−3811号公報
【特許文献3】特開平11−5241号公報
【特許文献4】特開平2−257188号公報
【特許文献5】特開平5−45505号公報
【特許文献6】特開平5−333333号公報
【特許文献7】特開平6−18707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
指光性の強いLEDを、光源とする直下型バックライトユニットは、小型軽量化が進み、光源から拡散板までの距離が10〜15mmと短く、面として見ると、輝度ムラがあり、明暗の目玉状ランプイメージが発生するので、本発明は、この目玉状ランプイメージを軽減したLED用拡散ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、
LEDの目玉状ランプイメージは、指向性が強いために、正面の光が多く、拡散光が少ないのが原因であることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
1.熱可塑性透明樹脂に光拡散剤を配合した1又は複数枚の拡散板を有し、各拡散板の全光線透過率が40〜85%の範囲内で、該拡散板の少なくとも1つの面に、レンズ形状を有することを特徴とするLED用拡散ユニット。
2.光拡散剤が、有機系架橋微粒子であることを特徴とする1.記載のLED用拡散ユニット。
3.有機系架橋微粒子が、アクリル系樹脂微粒子、スチレン系樹脂微粒子、又はシリコーン系架橋微粒子であることを特徴とする1.記載のLED用拡散ユニット。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、LED光源から拡散板までの距離が10〜15mmと短い直下型バックライトユニットでも、目玉状ランプイメージを低減させることが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について、特にその好ましい形態を中心に、以下具体的に説明する。
本発明のLED用拡散ユニットとは、図2で示すようにLED1、(この2つのLED間の距離(中心間の距離)をbとする、又この図は略図で、LEDはx軸方向に等間隔で連続し、z軸方向にも等間隔にあってもよい)基盤3、反射板4、レンズ付拡散板6、レンズ付拡散板7から構成され、且つ光源中心から最外拡散板上面までの距離が10〜15mm、(この距離をaとする)からなるものである。
aは1mm以上で、bは10〜100mmまでの範囲が好ましい。aが1mm以上だと、板がたわむことなく、LED表面に接触しない。bは10mm以上だとLEDの数が過多にならない。また100mmを超えると、レンズ付拡散板の枚数を増やしても、輝度ムラは解消されにくい。a/bの比は、0.01〜0.80の範囲が好ましい。0.01以上であれば、光が拡散するための距離がとりやすい。又0.80以下だとLEDから拡散板までの距離が十分にあり、本発明ユニットの優位性を発揮しにくい。a/bの比は、更に好ましくは0.1〜0.5で、ユニットの薄型化のバランスも考慮するとこの範囲が特に良い。
【0009】
但し、レンズ付拡散板は1又は複数枚でも良い。ここで用いるLEDは表面実装型、砲弾型といわれるいわゆる汎用、又はパワーLED等の種類に限らず、必要な明るさに応じて選択すればよい。
本発明に用いる熱可塑性透明樹脂とは、メタクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリスチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリルとスチレンを共重合させたMS樹脂、アクリロニトリルとブタジエンとスチレン3成分を共重合させたABS樹脂、メチルメタクリレートとスチレンを共重合させたMS樹脂、メチルメタクリレートとブタジエンとスチレン3成分を共重合させたMBS樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、脂環式アクリル樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、オレフィン・マレイミド交互共重合体、シクロヘキサジエン系ポリマー、等が挙げられる。好ましくは、耐光性の点からメタクリル樹脂、MS樹脂である。本発明で用いるメタクリル樹脂としては、メタクリル酸メチルを主体とする樹脂がより好ましい。
【0010】
これは、メチルメタクリレートの単独重合体、又はメチルメタクリレートとメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシアクリレート、無水マレイン酸、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物類等が挙げられる。これらのメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体は1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。その他多層構造アクリルゴムなどで耐衝撃性付与したメタクリル樹脂組成物も使用できる。
このようなメタクリル樹脂の製造方法としては特に制限はなく、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等、公知の方法のいずれを用いても良い。
本発明に用い得るMS樹脂は、メチルメタクリレートとスチレンの共重合体を主体とする樹脂を示すが、上記メタクリル樹脂で例示したような共重合可能なモノマーのいずれか1つ以上が加わった多元共重合体なども含まれる。MS樹脂全体を100重量部としたとき、メチルメタクリレートの割合が60重量部を越えるものが耐光性が良好でより好ましい。
【0011】
拡散板に用いる熱可塑性透明樹脂は、拡散板を1又は複数枚使用する場合、同じ熱可塑性透明樹脂でも良いし、異なる熱可塑性透明樹脂でも良い。
拡散板に配合される光拡散剤は有機系、無機系などのいずれの拡散剤でもかまわず、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、シリコーン系微粒子、アクリル系微粒子、スチレン系微粒子、MS系微粒子、ガラス系微粒子など様々が挙げられるが、本発明で用いる光拡散剤は有機系架橋微粒子が好ましい。有機系架橋微粒子を用いることでマトリックスとなるメタクリル樹脂中での光拡散剤の分散ムラが少なく、光透過性が高く、光拡散性も高い優れた樹脂板に設計することができる。有機系架橋微粒子として特に好ましいのはアクリル系樹脂微粒子、スチレン系樹脂微粒子、シリコーン系架橋微粒子である。アクリル系微粒子としては、例えばメチルメタクリレート等の単官能ビニル単量体及び、多官能ビニル単量体との共重合架橋微粒子が挙げられ、スチレン系樹脂微粒子としては、例えばスチレン単量体と、多官能ビニル単量体との共重合架橋微粒子が挙げられ、シリコン系架橋微粒子としては、例えばシロキサン単量体の重合架橋微粒子が挙げられる。これらは、、いずれも懸濁重合、乳化重合等の重合方法により球状粒子として得られる。
【0012】
これら拡散板に用いる光拡散剤は、拡散板を1又は複数枚使用する場合、同じ光拡散剤でも、異なる光拡散剤でも、単独でも併用されていても良い。光拡散剤の屈折率は特に限定はないが、基材樹脂と屈折率があまり離れていると透過率が大きく下がる等光学的に問題がある場合があるため1.3〜1.7の屈折率が好ましい。複数枚使用する場合は、重ね合わせて用いても良いが、板間に空気層を設ける方が、光を広角化できる点で好ましい。
また、拡散微粒子の粒径については特に制限はないが、あまりに大きいとレンズの賦形が困難になる場合があり、また、小さいと拡散効果が少ないので、好ましくは、0.2〜100μmの範囲である。
【0013】
光拡散剤を熱可塑性透明樹脂に配合する方法としては、公知の方法が用いられ、ドラムブレンダーや、ヘンシェルミキサーで混合した後、220℃〜250℃の温度で、ベント付き単軸又は二軸押出機で溶融混練し、ペレットを得ることが好ましい。拡散板として求められている透過率は40〜85%の範囲で、40%未満では表示装置に搭載される直下型バックライトとしては暗くなりすぎ、85%を超えると透過光が多く光拡散効果がなくなり問題である。
これら拡散板の透過率は、有機架橋微粒子の配合量によって変えることができる。
拡散板の透過率は、拡散板を1又は複数枚使用する場合、同じ透過率でも、異なる透過率でも良い。この透過率とは、全光線透過率であり、「JIS K−7105」に準拠して測定した。
【0014】
レンズ形状は、一般的な凹凸Rレンズ形状、プリズム形状、ピラミッド形状、蒲鉾形レンズ形状、フレネルレンズ形状、モスアイレンズ形状、レンチキュラーレンズ形状等、各種レンズの組み合わせが考えられるが、好ましくは、四角すいのピラミッド形状、頂角が30〜150度で、30度以上だと光が十分出光側へ立ち上がる。150度以下だと指向性の強いLED光でも十分な出光効率が得られる。レンズのピッチ及び、山の高さは制限はなく、任意に設計してかまわないが光源とのモアレの防止や成型加工性から、ピッチは10〜3000μm、山の高さは1〜3000μmの範囲が好ましい。
レンズ形状は、拡散板の片面もしくは両面共に賦形されていてもかまわない。但し両面に賦形する場合表裏のレンズによるモアレを防止するため位相合わせが必要である。また片面のみに賦形する場合、プリズム面は直下式光源装置の光源側又は、光源と反対側いずれの面に賦形されてもかまわない。
【0015】
拡散板のレンズ形状は、拡散板を1又は複数枚使用する場合、同じレンズ形状でも、異なるレンズ形状でもかまわない。
拡散板1枚の板厚は、強度と重量の兼ね合いでレンズトップも含め0.5〜8.0mmの範囲が好ましい。更に好ましくは、0.75〜5.0の範囲である。
拡散板が1枚の場合でも、輝度ムラを少なくし、目玉状イメージを消すことは可能であるが、レンズ形状は複雑で、拡散板の厚みも厚くなり、加工も難しくなる。
拡散板を複数枚用いると、加工が容易なレンズ形状でも拡散した光が、拡散板同士の間の空気層で、より広角になり輝度ムラを少なくし、結果として目玉状イメージを低減す事が出来てより好ましい。
【0016】
本発明LED用拡散ユニットの上に、拡散フィルム、プリズム集光フィルム、反射偏光フィルム、文字板等の印刷を施したシート、液晶パネル等を乗せて使用しても良い。拡散板には、帯電防止、ハードコート、紫外線吸収剤、反射防止熱安定剤、滑剤、難燃剤等、必要に応じ処置、及び又は各種添加剤を、併用してもかまわない。
拡散板及び拡散板にレンズ形状を施す方法としては射出成型法、プレス成型法、押出法、いずれでも構わないが、精度よく成型する方法としては射出成型法が好ましい。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
拡散板6は、メタクリル樹脂100重量部に対し、平均粒径約2μmのシリコーン架橋微粒子(日興リカ株式会社製 商品名MSP−S020)0.5重量部と、平均粒径約5μmのMS系架橋微粒子(ガンツ化成株式会社製 GSM0561)1.0重量部をドラムブレンダーで混合し、30mm二軸押出機を用いて樹脂温度230〜250℃で混練、造粒し組成物を得る。これを射出成型機を用い樹脂温度240〜250℃で成型し、レンズ機能付拡散板を得る。拡散板7はメタクリル樹脂100重量部に対し平均粒径約2μmのシリコーン系架橋微粒子(日興リカ株式会社製 商品名MSP−S020)1.5重量部、平均粒径約5μmのMS系架橋微粒子(ガンツ化成株式会社製 GSM0561)4.5重量部を用い、その他は拡散板6と同様に混練し組成物を得てそれを用いる。図2に示すように汎用LED1を2ヶ、40mmはなして直列にセットし、電圧を0.65VかけLED1を点灯させる。2ヶのLED1から垂直方向に3.5mmはなして1枚目として板厚1.5mmのレンズ付拡散板6、更に3.5mmはなし、2枚目として板厚1.5mmのレンズ付拡散板7を設置する。拡散板6は透過率80%、LED側の面に頂角90度、ピッチ500μm、四角すいの、ピラミッド形レンズを施した。拡散板7は透過率60%、LED側の面に頂角120度、ピッチ500μm、四角すいの、ピラミッド形レンズを施した。これら2枚の拡散板をセットし、左右各LED直上と、LED間の輝度を、測定した。輝度計はトプコン製の商品名BM7を用い、測定条件は、測定距離350mm、視野角0.2度である。結果を相対輝度で[表1]に比較例1と共に示す。相対輝度は、比較例−1のLED直上で大きい方の値を“1”にした時の比で表す。
【0018】
[比較例1]
拡散板8は、拡散板7と同様の組成物を、射出成型により成型した1.5mmでレンズ機能のないフラットな板である。この拡散板8を2ヶのLED1から垂直方向に8.5mmはなしてセットし、それ以外は実施例−1と同様に行った。[図3]
【0019】
【表1】

【0020】
[実施例1]の場合、左右LED上の輝度平均値に対し、LED間の輝度は約17%のダウンに留まり良好で、目視で見ても目玉状のランプイメージには見えず均一である。
一方、[比較例1]の場合同様に左右LED上の輝度平均値に対し、LED間の輝度は約70%のダウンで、目視では目玉状のランプイメージが見える。
【産業上の利用可能性】
【0021】
LEDを光源とした拡散ユニットは長寿命、軽量化、低消費エネルギーで環境汚染物質がないので地球にやさしく、一般照明ユニットから、住宅室内・間接照明ユニット、リサイクル性も含め自動車内装・表示装置ユニット、薄型テレビのバックライトユニット、PCモニター等、現状、蛍光灯、冷陰極管又は、白熱電球で構成されているユニット全てに代替可能で、多くの分野で好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の直下型バックライト用拡散ユニットの断面摸式図である。
【図2】実施例1の直下型バックライト用拡散ユニットのLED点灯時の断面摸式図である。
【図3】比較例1の直下型バックライト用拡散ユニットのLED点灯時の断面摸式図である。
【符号の説明】
【0023】
1 LED
2 間引きしたLED
3 基盤
4 反射シート
5 拡散板
6 レンズ付拡散板(A)
7 レンズ付拡散板(B)
8 レンズのないフラットな拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性透明樹脂に光拡散剤を配合した1又は複数枚の拡散板を有し、各拡散板の全光線透過率が40〜85%の範囲内で、該拡散板の少なくとも1つの面に、レンズ形状を有することを特徴とするLED用拡散ユニット。
【請求項2】
光拡散剤が、有機系架橋微粒子であることを特徴とする請求項1記載のLED用拡散ユニット。
【請求項3】
有機系架橋微粒子が、アクリル系樹脂微粒子、スチレン系樹脂微粒子、又はシリコーン系架橋微粒子であることを特徴とする請求項1記載のLED用拡散ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate