説明

LED電球

【課題】
特別な放熱手段がなく、取り扱い易く、商品としてのデザインの自由度が大きく、既存の白熱電球と自由に置換可能であって、周辺電子機器に対するノイズを誘発しないLED電球を提供することにある。
【解決手段】
複数のLEDを備え既存の照明灯と差し替え可能なLED電球において、定電圧の商用電源を直接整流した電圧を使用する回路と、定電流制御回路とを備え、少なくとも1つ以上の直列に接続された1列あたりのLED個数(M)が、
M=(−k+N√2(100―R)/100)(1−E/100)I/QLED
且つ QLED=I(1−E/100)Ls ≦46
を満足することを特徴とするLED電球。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDを備えたLED電球に関する。
【背景技術】
【0002】


近年、照明分野において従来の白熱電球などの代替としてLEDを用いたLED電球が開発されつつある。特にここ数年におけるLEDの高光束化の進歩は著しく、一部の用途では、従来の白熱電球などの照明器具の代替として使用され始めている。LED電球は、白熱電球や蛍光灯などの既存の電灯と比べて、同じ照度を得るための電力消費量が少ない、紫外線や赤外線を含まない限定された波長の光が得られる、点灯と同時に最大光量が得られる、構造が簡単なため大量生産が容易である、フィラメントを使わないため耐衝撃性に優れる、電球としての寿命が長い、蛍光灯のような水銀を使っていない、などの長所がある。一方、LEDは耐熱性が低くLED自体の発熱によって温度が上昇すると発光効率が著しく低下し、80℃以上でLEDの劣化が始まる、という短所がある。
【0003】
特許文献1の段落[0003]には、「…複数のLEDが面実装されたLEDモジュール11は、放熱部12の放熱板13に接触して取り付けられている。また、放熱部12の放熱板13には、LEDモジュール11を覆ってグローブ14が取り付けられ、LEDモジュール11のLEDからの放射光を外部に出射する。一方、…、この放熱部12の中空部にLEDを点灯する点灯回路が内蔵されている。LEDモジュール11のLEDの熱は放熱板13を通って放熱部12の外表面に伝熱され放熱される。」と記載され、続けて段落[0004]には、「…LEDモジュール11は、平板状の直方体の基板18の一面に複数の青色LED素子19が面実装され、…。LEDモジュール11は、LEDモジュール11の青色LED素子19が面実装された面をグローブ14側の向きにして放熱部12の放熱板13に配置される。」と記載され、複数のLEDが面実装された放熱板を有するLEDモジュール11が開示されている。
【0004】
特許文献2の段落[0006]には、「発明された本電球は、連続した、一様な且つ高輝度の照明が達成されるのを可能にする。5lm以上の光束を持つLEDは、電球が熱放散手段を有する場合にのみ効率的に使用することができることが判った。通常の白熱電球は、斯様な高光束を持つようなLEDを備えるLED電球によってのみ置換することが可能である。本発明の特別な特徴は、上記熱放散手段が当該電球の動作中に発生される熱を、前記基板から前記ギア柱を介して、前記電球口金と該口金に接続された主電源とへ取り除く点にある。」と記載され、5lm以上の高光束を持ち熱放散手段を有するLEDを備えたLED電球によってのみ白熱電球と置換可能であることが開示されている。
【0005】
特許文献3の段落[0081]には、補償回路部22は、例えば温度検出回路部21の検出結果からLED3aの温度が高く発光出力が高くなるように補正する必要がある場合(高温度時:図15参照)には、LED電流を大きく変化させるような補正信号(抵抗値)を決定し、可変抵抗R2の抵抗値を制御して、LED電流の波高値を決定する。つまり、…LEDの点滅制御とともにLEDの流れる電流値を調整することが可能となり、高温温度の場合でも、最適な発光出力を得ることが可能となる。」と記載され、続いて、段落[0082]には、「…駆動回路部によるLED電流の波高値制御を併用して実施することにより、LEDの温度変化に伴い変化する発光出力を常に安定した規定の所定レベルの発光出力となるように補正制御することが可能となる。…」と記載されており、LEDの温度を検出し、温度上昇に伴う全光束の低下を補償回路部22によって電流を補償(増量)し全光束を保持した構成が開示されている。
【0006】
特許文献4の段落[0010]には、「図3、図4は外部LED調光器と小型電源(3)との調光関係を示す説明図である。調光動作は調光器入力電圧波形(Sin波)の導通角を制御して調光する。LED電源は入力電圧の導通角に比例した直流電流を出力する。」と記載され、位相制御方式の調光器によって調光し、既存の照明器具に適用可能であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−170114号
【特許文献2】特表2002−525814号
【特許文献3】特開2000−173304号
【特許文献4】特開2005−043694号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の白熱電球と代替可能なLED電球は、LEDから発生する熱の放熱手段が電球の外部に装備されることによってLED電球を取り扱い難いものにしていたのみならず、商品としてのデザインの自由度を大きく損なう要因にもなっていた。
【0009】
また、特許文献2は、5lm以上の高光束のLEDを備えたLED電球は、放熱手段を備えたときのみ白熱電球と置換可能であるとされており、熱開放手段としてのギア柱がLED電球の形状を縦に長く限定し、該電球を取り扱い難いものにするのみならず該電球の用途を狭くする要因にもなっていた。
【0010】
更に、特許文献3に記載の複数のLEDを配設した航空標識灯は、LEDの温度検出装置を備えLEDの温度を検出しているが、LEDの発熱に基づく温度の上昇によって生じる全光束の低下を、補償回路でLED電流を増やすことによって、発光の照度を保持するものであり、LEDの発熱を増加させ温度の上昇を加速させる結果となっていた。
【0011】
更に、特許文献4は、位相制御方式の調光器に対応したLED電球は、既存の白熱電球と置換可能であるとされているが、商用電源回路は位相制御方式ではなく電圧制御方式で調光する回路もあり、その場合には置換できないという問題があった。
【0012】
また位相制御方式における位相調整光回路の部品には、通常「性能」として表記されない「最低動作電流」がある。白熱電球は10W以上の製品がほとんどであるためこの「最低動作電流」を満たさないことは無いので白熱電球関連部品には「最低動作電流」が明記されない。しかし消費電力が白熱電球に比べて非常に少ないLED電球においては、調光部品の最低動作電流が必ずしも確保できず、調光回路を通過後の商用電源波形が乱れたり、電球破損に至るほどの高い電圧成分のノイズを発生する事があった。
【0013】
インバーターを使用することによる熱の発生があり、また直流から直流への電圧変換回路(インバーター)は、そこから発生するノイズが周辺電子機器に対する誤動作の要因になる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記の課題を達成するため鋭意検討を行い、特別な放熱手段が不要であって、取り扱い易く且つデザインの自由度が高く、周辺機器に対してノイズによる誤動作を誘発せず、既存の照明具と自在に置換可能なLED電球を完成するに至った。即ち、本発明は下記のとおりである。なお、本発明における電源とは商用電源をいう。また、一般的に電球は、球形、長球形、円筒型、円錐型などがあり、また蛍光灯は管形が多いが、本発明のLED電球は、LEDの発光を利用した照明具であればよく、球形や管形などの形状にとらわれず、全ての形状を含む。
(1)複数のLEDを備え既存の照明灯と差し替え可能なLED電球において、定電圧の商用電源を直接整流した電圧を使用する回路と、定電流制御回路とを備え、少なくとも1つ以上の直列に接続された1列あたりのLED個数(M)が、
M=(−k+N√2(100―R)/100)(1−E/100)I/QLED
且つ QLED=I(1−E/100)Ls ≦46
但し、M:LED個数(端数は切り捨て)、N:電源電圧(VAC)、k:定電流回路の動作電圧(VDC)、R:定電圧電源の電圧の最大変動幅(%)、QLED:LED1個あたりの発熱量(mJ/s)、I:順方向電流(mA)、E:発光効率(%)、
を満足することを特徴とするLED電球。
(2)前記LED電球は、位相調光方式の調光器又は電圧調光方式の調光器のいずれにも追従可能であって、純抵抗性負荷を実装するとともに調光追従回路を備えたことを特徴とする上記(1)に記載のLED電球。
(3)前記LED電球の前記M個のLEDは、前記複数のLEDが、台座を介して実装基板に配列され、前記台座の高さが前記実装基板の中央部が最も高く、前記実装基板の端部に向かって次第に低くなるように形成されていることを特徴とする上記(1)又は(2)のいずれか1項に記載のLED電球。
【発明の効果】
【0015】
LEDは電流が流れると温度が上昇し、温度が上昇するほど発光効率が低下し、80℃以上になるとLED自体の劣化が起こる。このため発光源としてLEDを備えたLED電球は、LEDを流れる電流が小さいほど発光効率が高く劣化も起こり難い。LED電球の発熱は、LED自体にかかる電力からLEDの発光によって消費されるエネルギーを差し引いたエネルギーによる発熱量(H1)と、LEDに消費される電圧と電源電圧との差から発生する発熱量(H2)とがある。複数個のLEDは1個づつ電球のプラスチック製のLED装着部に装着されるが、LED1個あたりの発熱量が一定値以下であれば、上記装着部の部材やLED周辺の環境を経て外部に自然排熱できることを見出した。従って、LED1個あたりの発熱量が一定値以下であれば、LED個数が増えてもLEDの自然排熱は可能である。また、上記自然排熱のためには、電力を消費する回路基板からの発熱によってLED装着部材周辺の温度を上げないことも肝心である。そのために本発明では、上記H2を極小化する構成も備えた。
【0016】
本発明(1)の構成は、QLED=I(1−E/100)Ls ≦46を前提条件としていると共に、直列配置の個数を発熱―自然放熱の関係を維持し、最適な発光量に対してさらに最適化するLED個数を規定するもので、LED1個当りの発熱量(H2)を46mJ/s以下とし、自然排熱が可能な発熱量の範囲のものを採用している。
【0017】
上記式に基づいて、直列に接続された1列のLEDにかかる電圧が一定の変動幅の定電圧電源の電圧の下限値以下であって且つその近傍になるように、該1列あたりのLEDの個数を複数であってM以下に規定した。また、定電圧の商用電源を直接整流した電圧を使用する回路、即ちインバーターを使わない回路を、採用したことによって、インバーターによる発熱を排除した。これらによってLED周辺の環境温度の上昇を抑制できた。また、インバーターを備える機器は周辺の電子機器のノイズを誘発し、また熱も発生する。しかし、本発明(1)はインバーターを使用しないため、本LED電球が使用される環境の周辺に散在する各種電子機器への、該電球のノイズによる誤動作の発生を防止でき、かつ余分な発熱を排除できるという効果がある。LED電球を室内で使用する場合、周辺に多くの電子機器、例えば、テレビ、パソコン、ケータイ電話、ゲーム器などが散在するはずであり、それらの機器に対して電球からのノイズによる誤動作の発生を防止することは、電球が備えるべき重要な要件である。
【0018】
上記構成によって、本発明のLED電球1の発熱量は、使用環境における自然放熱量と同程度以下となり、特別な排熱手段がなくても、発熱による温度上昇を招くことがなく、正常に発光させることが可能なLED電球を提供できるという効果がある。特別な排熱手段とは、特許文献1に記載の放熱板や特許文献2に記載の熱放散手段、即ち、表面積を大きく形成された凹凸状のフィンや熱伝導性の高い金属製の板状の放熱板などの、電球の発光面以外の部位の外面に露出して備えられ放熱を目的として形成された装備をいう。
【0019】
本発明(1)は特別な排熱手段を必要としないことによって、LED電球全体が嵩高にならず取り扱い易く、またLED電球の発光面以外の外表面に露出させるべき部材が少ないことによって、既存のLED電球に比べて取り扱い易く且つデザインの自由度が高まるという効果がある。電球は室内で使用することが多いので、単に照明灯というだけではなく美観が求められるので、デザインの自由度の高さは電球を作る上で重要な要素である。
【0020】
本発明(2)は、電球入力部分に純抵抗性負荷を実装することで調光部品の最低動作電流を満たし、電圧波形の乱れや電圧成分のノイズ発生を防止したことによって、商用電源回路に使用されている位相調光方式あるいは電圧調光方式のいずれにも対応可能となり、既存電球との差し替えが自在であるという効果がある。
【0021】
本発明(3)のLED電球は、LEDモジュールの位置が、LED実装基板の中央部ほどLED実装基板からの高さが高い位置に配され、周端部ほどLEDモジュールのLED実装基板からの高さが低い位置に配されたことによって、隣接するLEDモジュールやその台座によって側方への光が遮断され難くなり、LEDが発光した光を有効に照度に反映させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のLED電球の概観図
【図2】本発明のLEDの断面図(図1のA−A断面図)
【図3】制御回路図1(ブリッジ整流回路と定電流回路を併用した回路図)
【図4】E−I−QLED相関図
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明のLED電球について説明するが、本発明はこの事例に限られるものではない。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態であるLED電球1の側面図であり、図2は図1のA−A断面概略図である。LED電球1は、LEDモジュール10を保護し発光を均一に周囲に分散する材質から形成されたカバー4と、LED実装基板12、制御回路13及びリード線15などの主要部分を内蔵してそれらを保護し、且つカバー4の下部をねじ込み式で受け止めるグローブ3と、電源20との接続部のひとつであるアイレット7と、電源20にアイレット7を押接するための押し込み部であって、且つ電源20との接続部のひとつであるねじ込み型の口金5と、口金5とグローブ3の連結部であってリード線を内蔵する基体2及びくびれ部6と、から構成されている。
【0025】
口金5は、エジソンタイプのE26型(E17型あるいはE11形であってもよい。)であって表面にねじ山を備えた筒状に形成され、この筒状部の一端側の頂部に絶縁部(不図示)を介して設けられたアイレット7を備えている。また、口金5は絶縁シートや絶縁性接着材などの絶縁物を介してくびれ部6と固着されている。
【0026】
グローブ3及びカバー4は、透光性を有してなり、例えば透明あるいは半透明のガラスや合成樹脂などの材質により一般照明用電球と略同等の形状に形成されている。
【0027】
LEDモジュール10は、LED素子11の発光面側に透明な樹脂が配され、該樹脂の表面にLEDの発光を白色光に変換する蛍光体が塗布されて形成されている。
【0028】
LEDモジュール10とLED実装基板12との間にLEDモジュール10のLED実装基板10からの高さを調整するための台座14が配される。台座14はLED実装基板12の中央部ほど高く周辺部ほど低くなっている。台座14の高さをこのように調整することによって、隣接するLED同士が互いに隣のLEDからの光を遮ることがなく、LED電球1の周囲への光の分散が可能になる。
【0029】
本第1の実施形態のLED電球1は、色温度2900K、消費電力4.2W、全光束342lm、定格電圧100VAC、定格電流30mA(平均)、LED個数76個(直列38個で2列)、口金型E26、白熱電球60W相当の照度、インバーターなし、調光器対応型(位相・電圧いずれも対応型)、電球外径64mmΦ、全高さ81mm、である。
【0030】
本第1の実施形態の制御回路を、図3に基づいて説明する。図3の点線内は本LED電球1に備えられた制御回路30である。外部からの過電流に対し内部回路を保護する第1保護回路31、外部からの過電圧に対し内部回路を保護する第2保護回路32、交流50Hz/60Hzの100VAC±5VACから脈流を作るブリッジ整流回路36、脈流を平滑化しリプル率5%以下の整流を作る平滑回路35、交流を整流に変換する整流ダイオード36、LED素子をチラツキの無い電流で駆動させる定電流制御回路33、である。LED実装基板12に、式(a)に基づいて算出されたLED素子38個を直列に接続した第1LED列51と第2LED列52が並列に配置される。
【0031】
一般の白熱電球を使用した調光機能は白熱電球回路と商用電源間に外部調光回路39を備え実現されている例が大多数である。本実施例のLED電球回路30には商用電源40から外部調光回路39を経て位相調光波又は電圧調光波が入力される。外部調光回路39には、位相調光回路と電圧調光回路の2種類があり時間軸上で商用電源40を一定の間隔で入り切りし、波形の面積を調整することで電力を調整し、調光を可能にする場合と、可変変圧器を使用し、商用電源の相似波形を作成し波形の面積を調整することで電力を調整し、調光を可能にする場合がある。従来のLED電球は、位相調光の場合、調光開始タイミングを特別な回路で検出し、それを基準にLED素子に流す電流を制御して行なわれていた。この回路は電圧調光回路では機能しない欠点が有った。本発明は定電流回路の動作を、入力電圧が−5%以下になった時停止させることによって、LEDを流れる電流を、入力電圧の整流電圧に比例させて発光量を入力電圧に比例させている。この方法によって位相調光回路と電圧調光回路のいずれにおいても従来の白熱電球と同様に、調光を実施することができる。また位相調光回路の部品では、通常「性能」として表記されない「最低動作電流」がある。白熱電球は10W以上の製品がほとんどであるためこの最低電流を満たさないことは無いので部品に明記されない。しかし消費電力が非常に少ないLED電球においては、調光部品の最低電流が必ずしも確保できず、調光回路を通過後の商用電源波形が乱れたり、電球破損に至るほどの高い電圧成分のノイズを発生する事がある。これらの不具合を抑制するために、電球の入力部分に、純抵抗性負荷37を実装することで調光部品の最低電流を満たし、調光回路・電球を含む照明回路を使用可能なものとした。
【0032】
第1LED列51及び第2LED列52の各列の一端及び他端からリード線が取り出され制御回路基板13に接続される。制御回路基板13から2本のリード線が取り出され1本はアイレット7の端子に他の1本は口金5の端子に接続される。本発明のLED1は、38個のLEDが直列に配列された列を2列有する。直列の列数は1列だけであってもよく、2列以上であってもよい。
【0033】
請求項1に記載の下記式は(a)は、
M=(−k+N√2(100―R)/100)(1−E/100)I/QLED
…(a)
請求項1に記載の下記式(b)と、
LED=I(1−E/100)Ls ≦46 …(b)
下記式(c)から導かれる。
M=(−k+N√2(100―R)/100 )/Lsに…(c)、
(a)式よって算出される直列1列あたりのLED個数Mは、LED電球に対する電圧負荷を最大限に有効活用可能に構成されるので最も好ましい個数である。直列1列あたりのLED個数はMより少なくてもよいが、Mよりも少ない個数分だけ無駄な発熱が発生しLEDの温度上昇に影響するので、LED個数は0.9M(端数は切り捨てる。)以上が好ましい。
【0034】
図4は、LEDの電流(I)―発光効率(E)―発熱量(QLED)の関係を示す図である。電球の照度を確保するためには発光効率は、高いほど好ましい。LEDの発光効率(E)は、発光効率が100%の場合の全光束に対する実績の全光束の割合(%)で示される。前記QLED=I(1−E/100)Lsに対応する本第1の実施形態のLED1は、その発光効率は14.6%、電流値は15mA、発熱量(QLED)は38mJ/sである。また駆動電流が18mAよりも大きい場合は、LEDの発熱量が大きくなり、LEDが昇温して劣化の可能性が高まるのでよくない。
【0035】
このように、第1の実施形態のLED1の発熱量(QLED)は38mJ/sと極めて小さく、通常の電球を構成する材料に組み込むことによって十分排熱は可能な熱量である。本発明のLED電球に搭載されるLEDの発熱量(QLED)の上限は46mJ/sであって、それより少ない方が好ましい。
【実施例1】
【0036】
本実施例は、電源電圧(N)は100VAC±変動幅(R)5%、の商用電源が使用され、制御回路基板13において100VACから141VDC(=N√2)に交流/直流変換される。LEDの順方向電流(I)は15mA、順方向電圧(Ls)は3VDCである。定電流制御回路の動作電圧(Fv)を3VDC、平滑回路のリプル(脈流から直流分を除いた電圧)(Fr)を6.0VDC、商用電源の変動分をうち消す定電流回路の動作余裕度(Tm)を5.7VDCとする。図4より、LED1の発熱量(QLED)は38mJ/s、発光効率(E)は14.6%である。以上より(a)式を用いて、M=38.1となり、端数0.1は切り捨てて、直列1列あたりのLED個数は38個となる。端数0.1に対応する電圧る。LED以外の部分による発熱量は、上述の定電流制御回路の動作電圧(Fv)5VDC、平滑回路のリプル(Fr)8VDC、商用電源の変動分をうち消す定電流回路の動作余は約0.3VDCは発熱(5mJ/s)となって消費されるが無視できる程度の発熱量であ裕度(Tm)6.7Vの合計が19.7VDCであるから、発熱量=15mA×2列×19.7VDC=591mJ/sとなる。これらの熱は、図2の電源及び制御回路基板13で発生するものであって、電源及び制御回路基板13はLEDモジュール10からは離れているため、LED素子の温度上昇への影響は小さく、また通常の電球部材を経て大気や該電球の周囲の部材に放散されるので、特別な放熱手段を必要とするものではない。従って、本第1の実施形態のLED電球1は、連続した稼動中においても、LEDの温度上昇を伴わないため、LEDの温度上昇による発光機能(照度)の低下やLED自体の寿命の低下を引き起こすことがない。本実施例1のLED1個の全光束は4.5lmであって、LEDの全個数76個では、342lmとなり、白熱電球と比較した場合60ワット相当の明るさとなる。本実施例1の評価結果は表1のとおりであった。
【実施例2】
【0037】
実施例1において、LEDの発熱量(QLED)は44mJ/sとして図4より、LEDの順方向電流(I)を17mA、発光効率(E)は14.1%、消費電力4.8ワットとした以外は実施例1と同じとした。評価結果は表1のとおりであった。
【実施例3】
【0038】
実施例1において、LEDの発熱量(QLED)は本発明の上限46mJ/sとして図4より、LEDの順方向電流(I)を18mA、発光効率(E)は14.0%、消費電力4.8ワットとした以外は実施例1と同じとした。評価結果は表1のとおりであった。
【実施例4】
【0039】
実施例1において、列数を4、LED総個数152、消費電力8.4ワットとした以外は実施例1と同じとした。評価結果は表1のとおりであった。
【比較例1】
【0040】
実施例1において、直列1列のLED個数を、M値38個より多い39個、LED総個数を73個とした以外は、実施例1と同じとした。評価結果は表1のとおりであった。
【比較例2】
【0041】
実施例1において、LEDの発熱量(QLED)は52mJ/sとして図4より、LEDの順方向電流(I)を20mA、発光効率(E)は13.1%、消費電力5.6ワットとした以外は実施例1と同じとした。評価結果は表1のとおりであった。
【0042】
実施例及び比較例の評価方法及び評価基準は次のとおりである。
【0043】
2)LEDモジュール発光面の温度(T(℃))
(1)評価方法
100VACの定電圧電源に接続された60Wの白熱電球(口金E26)を、本発明のLED電球と交換し、10時間点灯後、点灯した状態でカバー4を取り外し、LEDモジュール10の発光面中央部の温度を表面温度計(メーカー:佐藤計量製作所、品番:PC−8400II)で測定した。
(2)評価基準
○:T≦60℃
×:T>60℃
【0044】
3)発光状態
(1)評価方法
肉眼により発光のちらつき(照度が変る)の有無を観察する。
(2)評価基準
○:点滅しない。
×:点滅することがある。
【0045】
(総合評価)
上記1)及至4)に記載の評価基準の全てが○の場合は総合評価結果は○とし、ひとつでも△がある場合は総合評価は△、ひとつでも×がある場合は総合評価は×とする。
【0046】
【表1】

【0047】
(実施例1の検証)
実施例1は、本発明1の構成要件を全て備え、総合評価は良好(○)である。従って、無駄な発熱が少ないため特別な放熱手段が不要であって、且つ一般の白熱電球と差し替え可能な優れたLED電球であることが明らかである。
【0048】
(実施例2の検証)
実施例2は、本発明1の構成要件を全て備えており、本発明1の構成要件のQLEDの上限近傍44mJ/sの例について示したものであるが、総合評価は良好(○)である。従って、本発明1は、構成要件の境界領域近傍においても、無駄な発熱が少ないため特別な放熱手段が不要であって、且つ一般の白熱電球と差し替え可能な優れたLED電球であることが明らかである。
【0049】
(実施例3の検証)
実施例3は、本発明1の構成要件を全て備えており、本発明1の構成要件のQLEDの上限近傍46mJ/sの例について示したものであるが、総合評価は良好(○)である。従って、本発明1は、構成要件の境界領域においても、無駄な発熱が少ないため特別な放熱手段が不要であって、且つ一般の白熱電球と差し替え可能な優れたLED電球であることが明らかである。
【0050】
(実施例4の検証)
実施例4は、120Wの電球例であり、本発明1の構成要件を全て備えている。すなわち、本発明1の構成要件の直列に接続されたLEDを4列備え、LED総個数が152、消費電力を8.4ワットの例について示したものである。総合評価は良好(○)であった。従って、本発明1は、直列に接続されたLEDの列数を増加してもLEDの温度上昇がなく、無駄な発熱が少ないため特別な放熱手段が不要であって、且つ一般の白熱電球と差し替え可能な優れたLED電球であることが確認できた。
【0051】
(比較例1の検証)
比較例1は、直列に接続するLED個数が本発明1の構成要件のM値より1個多い39個、LED総個数78個の例について示したものである。これは、LEDにかかる所定電圧を超えたため、定電圧電源の変動幅が下限になった時、電圧が不足になって発光状態が不安定となり、一時的に照度が低下するちらつき現象が発生した。これは、LED個数は、M以下でなければ安定的な発光状態を得ることはできないことを示すものであり、本発明1の構成要件の境界領域が明確であることの証である。
【0052】
(比較例2の検証)
比較例3は、本発明1の構成要件の、QLEDの上限を超えた52mJ/s、の例について示したものであるが、LEDモジュール発光面の温度が64℃となり、自然放熱量の限界近傍となりLEDの機能が低下しつつあることを示すものである。
【0053】
(実施例4)
本発明のLED電球1の、稼動中における周辺電子機器の誤動作の有無について次のとおりであった。8畳の広さの室内の天井の中央にある100VACの定電圧電源に接続された60Wの白熱灯を、本発明のLED電球1と交換し点灯状態とした。該室内には、AMラジオ、テレビ、パソコン及びゲーム器が上記白熱灯と同じ電源に接続されているが、該電球の点灯状態において、それらの電子機器を5時間稼動させたが、一切誤動作が発生しなかった。またこの室内において、ケータイ電話は特に誤動作はなく正常に使用することができた。
【0054】
(比較例3)
市販のLED電球(メーカー:シャープ、型式:DLL60EL、消費電力:8.3W、全光束330lm、定格電圧100V、定格電流:119mA、口金E26、外径寸法:60φ・L114、インバーター付き)の、稼動中における周辺電子機器の誤動作の有無について次のとおりであった。8畳の広さの室内の天井の中央にある100VACの定電圧電源に接続された60Wの白熱灯を、本市販のLED電球と交換し点灯状態とした。該室内には、AMラジオ、テレビ、パソコン及びゲーム器が上記白熱灯と同じ電源に接続されているが、該電球の点灯状態において、AMラジオは雑音を発生し音が聞きとれなかった。
【0055】
(実施例5)
本発明のLED電球1を位相調光波形を供給する外部調光回路を備えた商用電源を電源とする部屋に備えられた60W白熱電球と交換し調光操作を行ったところ、最高照度から照度がなくなるまで自在に調光可能であった。また、電圧調光波形を供給する外部調光回路を備えた商用電源を電源とする室の60W白熱電球と交換し調光操作を行ったところ、上記と同じく最高照度から照度がなくなるまで自在に調光可能であった。
【0056】
(実施例6)
図2に示すように、本発明のLED電球1は、中央部のLEDモジュール10が台座14によって高くなるように形成されているために、LEDモジュール10同士が互いに重ならず、LEDの横方向の光が遮られないので、LEDの発光が有効に照度に反映されることが明らかである。
【0057】
本発明によれば、上述した関係式(請求項1に規定)を満足し、定電圧の商用電源を直接整流した電圧を使用する回路と、定電流制御回路とを備え、LEDの発熱量及び発光効率と、直列に配列されるLEDの個数を一定の範囲に限定し、効率よく電力消費可能なLED配列を規定したことによって、無駄な発熱を抑制し特別な排熱手段の不要なLED電球を提供できた。また、これに加えて、調光追従回路とともに純抵抗負荷を配することによって安定した位相調光及び電圧調光のいずれにも適応可能なLED電球を提供するものである。また、台座を介して実装基板に配列され、前記台座の高さが前記実装基板の中央部が最も高く、前記実装基板の端部に向かって次第に低くなるように形成することで、電球の発光面方向のみならず電球の側方の照度も確保可能なLED電球を提供できる。
【0058】
本発明は、請求項1の規定に従えば、日本国で主要に用いられる100V60W電球等のLED電球だけでなく、海外で使用される120V、200V、240V等の電圧であっても、30W〜200W等のLED電球にも適用でき、低発熱自然放熱できるので、付加的な冷却手段を設ける必要が無くなるという画期的なLED電球を提供できる。なお、本発明のM個の直列配置LEDを多数並列に設ける際に、並列による弊害が出る場合は、本発明のM個の直列配置LEDを少数並列にした回路を複数設ける構成にしても良い。
【符号の説明】
【0059】
1 LED電球
2 基体
3 グローブ
4 カバー
5 口金
6 くびれ部
7 アイレット
10 LEDモジュール
12 LED実装基板
13 電源及び制御回路基板
14 台座
15 リード線
30 本電球の回路
31 保護回路1
32 保護回路2
33 定電流制御回路
34 調光追従回路
35 平滑回路
36 整流ダイオード
37 純抵抗負荷
38 位相調光波形(又は電圧調光波形)
39 外部調光回路
40 商用電源
51 個数を調整したLED素子列1
52 個数を調整したLED素子列2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLEDを備え既存の照明灯と差し替え可能なLED電球において、定電圧の商用電源を直接整流した電圧を使用する回路と、定電流制御回路とを備え、少なくとも1つ以上の直列に接続された1列あたりのLED個数(M)が、
M=(−k+N√2(100―R)/100)(1−E/100)I/QLED
且つ QLED=I(1−E/100)Ls ≦46
但し、M:LED個数(端数は切り捨て)、N:電源電圧(VAC)、k:定電流回路の動作電圧(VDC)、R:定電圧電源の電圧の最大変動幅(%)、QLED:LED1個あたりの発熱量(mJ/s)、I:順方向電流(mA)、E:発光効率(%)、Ls:LEDの順方向電圧(VDC
を満足することを特徴とするLED電球。
【請求項2】
前記LED電球は、位相調光方式の調光器又は電圧調光方式の調光器のいずれにも追従可能であって、純抵抗性負荷を実装するとともに調光追従回路を備えたことを特徴とする請求項1に記載のLED電球。
【請求項3】
前記LED電球の前記M個のLEDは、台座を介して実装基板に配列され、前記台座の高さが前記実装基板の中央部が最も高く、前記実装基板の端部に向かって次第に低くなるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のLED電球。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−9369(P2012−9369A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145862(P2010−145862)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(397025587)エステー産業株式会社 (38)
【出願人】(510179331)エクセルデザイン有限会社 (1)
【Fターム(参考)】