説明

LED駆動回路

【課題】LED列に全波整流波形の低電圧位相だけ電圧を印加しても、非点灯期間を無くすか若しくは短くしてモーションブレークやフリッカを目立たなくする。
【解決手段】電圧検出回路110は全波整流波形の電圧を計測し、全波整流波形の電圧が低い期間だけスイッチ130を導通させる。スイッチ130は発光回路120と直列接続しているので、スイッチ130の導通時にだけ電流が発光回路120に流入する。発光回路120の内部ではLED列123と電流制限回路124が直列接続し、この直列回路と並列にコンデンサ125が接続している。全波整流波形の電圧が高くなりスイッチ130が非導通となる期間でもコンデンサ125が放電しLED列123が点灯する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源として複数のLEDを直列接続したLED列を備えるLED駆動回路に関し、さらに詳しくは、このLED列に含まれるLEDの個数を減らし全波整流波形の低電圧位相でこのLED列を点灯させながら高電圧位相ではこのLED列に高電圧を印加しないLED駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
商用電源を全波整流して得られる全波整流波形または全波整流波形に近い電圧波形でLED(発光ダイオードともいう)を点灯させる駆動回路が知られている(以下LED駆動回路と呼ぶ)。このLEDに直接的に全波整流波形を印加するには、LEDが高い電圧に耐えられるよう多数のLEDを直列接続しなければならない(以下複数のLEDを直列接続したものをLED列と呼ぶ)。例えば商用電源の実効値が100VならLED列の直列段数を40段程度にすることが多い。
【0003】
ところが小型の照明装置の場合、多数のLEDを直列接続させられない場合がある。LED列の直列段数を減らすためLED列と直列に電圧降下量の大きい電流制限素子を加える手法もあるが、この場合、電流制限素子による電力損失が大きくなってしまうので好ましくない。そこで少ない直列段数で効率的にLED列を駆動するため、全波整流波形の低電圧位相のみLED列に電流を流し、高電圧位相ではLED列に電流を流さないようにしたLED駆動回路が知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
特許文献1の図1に示される交流用LED点灯回路(LED駆動回路)では、LED1(LED列)を整流ダイオード2と半導体スイッチ4を介して交流電源3に接続している。LED1は、交流半波(全波整流波形の一周期分)において半導体スイッチ4により決まる任意の電流以下の間だけLED1に電流が流れ、1つの交流半波で2回点灯する。
【0005】
特許文献1の図1に示された回路の動作を説明する。最初、全波整流波形の電圧が低いうちはLED1が点灯している。全波整流波形の電圧が上昇し、半導体スイッチ4を流れる電流が所定の値に達すると、サイリスタ構成となっているトランジスタ9,10が導通状態となり半導体スイッチ4がカットオフする。さらに全波整流波形の電圧が上昇してもLED1は、抵抗8で決まる微小電流しか流れないのでほとんど点灯しない。その後、全波整流波形の電圧が下降しはじめトランジスタ9のエミッタ電圧が下がると、トランジスタ9,10は電流が流れなくなり非導通状態になる。このとき半導体スイッチ4が導通するので、再びLED1が点灯する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−148721号公報 (図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1で示されるような低電圧位相でLED列を点灯させるLED駆動回路は、逆にいうと全波整流波形の電圧が高い期間ではLED列は非点灯状態にある。この非点灯期間が長くなればなるほど高速で移動する物体がとびとびに見えるモーションブレークやフリッカが目立つようになる。
【0008】
そこで本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、光源として複数のLEDを直
列接続したLED列を備え、このLED列に含まれるLEDの個数を減らし全波整流波形の電圧の低電圧位相でこのLED列を点灯させながら高電圧位相ではこのLED列に高電圧を印加しないLED駆動回路において、非点灯期間を無くすか若しくは短くしてモーションブレークやフリッカを目立たなくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のLED駆動回路は、光源として複数のLEDを直列接続したLED列を備え、全波整流波形が低電圧位相にあるとき前記LED列に前記全波整流波形の電圧を印加するLED駆動回路において、
前記全波整流波形の電圧を計測する電圧検出回路と、
前記全波整流波形が低電圧位相にあるとき前記電圧検出回路により導通するよう制御されるスイッチと、
前記スイッチと直列接続する発光回路とを備え、
前記発光回路が前記LED列とコンデンサを有し、前記LED列と前記コンデンサが並列接続し、
前記スイッチと前記発光回路からなる直列回路に前記全波整流波形の電圧を印加する
ことを特徴とする。
【0010】
(作用)
電圧検出回路は全波整流波形の電圧を計測し、全波整流波形の電圧が低い期間だけスイッチを導通させる。スイッチは発光回路と直列接続しているので、スイッチの導通時に電流が発光回路に流入する。発光回路の内部ではLED列と電流制限回路が直列接続し、この直列回路と並列にコンデンサが接続している。この結果、全波整流波形の電圧が低くスイッチが導通している期間では発光回路に電流が流入しLED列が点灯する。同時にコンデンサを充電する。全波整流波形の電圧が高くなりスイッチが非導通となる期間では、発光回路への電流の流入がなくなる一方でコンデンサが放電しLED列を点灯させる。このようにして、これまで非点灯期間であった全波整流波形の高電圧位相でもLEDが点灯し、非点灯期間が無くなるか又は短縮する。
【0011】
前記発光回路の電流入力端子に逆流防止用のダイオードを備えると良い。
【0012】
前記コンデンサへの放電時定数を充電時定数より長くしても良い。
【0013】
前記コンデンサの一端に抵抗或いは定電流素子とダイオードからなる並列回路が接続しても良い。
【0014】
前記LED列を複数に分割し、この複数に分割したLED列の接続部にバイパス回路を設け、該バイパス回路が前記LED列に流れる電流に応じてバイパス電流を制御しても良い。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明のLED駆動回路は、光源として複数のLEDを直列接続したLED列を備え、このLED列に全波整流波形の低電圧位相だけ電圧を印加しても、非点灯期間を無くすか若しくは短くしてモーションブレークやフリッカを目立たなくできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態のLED駆動回路を示すブロック図。
【図2】図1に示すLED駆動回路の回路図。
【図3】図1に示すLED駆動回路の動作を説明するための波形図。
【図4】本発明の第2実施形態のLED駆動回路を示すブロック図。
【図5】図4に示すLED駆動回路に含まれる発光回路の回路図。
【図6】図4に示すLED駆動回路の動作を説明するための波形図。
【図7】本発明の第3実施形態のLED駆動回路を示すブロック図。
【図8】図7に示すLED駆動回路に含まれる発光回路の回路図。
【図9】図7に示すLED駆動回路の動作を説明するための波形図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図1〜9を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また説明のため波形等の部分的な縮尺は適宜変更している。さらに特許請求の範囲に記載した発明特定事項との関係をカッコ内に記載している。
(第1実施形態)
【0018】
図1〜3により本発明の第1実施形態におけるLED駆動回路100を説明する。図1はLED駆動回路100を示すブロック図であり、(a)はスイッチ130が導通状態、(b)はスイッチ130が非導通状態にある場合を示している。LED駆動回路100には、全波整流電圧源105、電圧検出回路110、発光回路120、スイッチ130がある。
【0019】
全波整流電圧源105は、電圧検出回路110の+側端子111と発光回路120の電流入力端子121に接続し全波整流波形の電圧を印加する。電圧検出回路110は、全波整流波形の電圧を計測し、制御出力端子113を介して全波整流波形の電圧が低い期間にスイッチ130を導通させ(a)、全波整流波形の電圧が高い期間にスイッチ130を非導通にする(b)。発光回路120とスイッチ130は直列接続しており、本図の例では発光回路120の電流出力端子122がスイッチ130の上端と接続している。電圧検出回路110の−側端子112並びにスイッチ130の下端は全波整流電圧源105の下端(電流が戻る端子)と接続している。
【0020】
発光回路120は、複数のLED123aが直列接続したLED列123と電流制限回路124とコンデンサ125を備え、電流入力端子121から電流出力端子122に向かってLED列123と電流制限回路124が直列接続し、この直列回路と並列にコンデンサ125が接続している。
【0021】
(a)に示すようにスイッチ130が導通していると、全波整流波形の電圧がLED列123の閾値よりも高くなっていれば、電流IがLED列123、電流制限回路124及びスイッチ130を流れる。このときコンデンサ125は充電され、その両端間電圧はLED列123と電流制限回路124からなる直列回路に印加される電圧と等しくなる。なお全波整流波形の電圧がLED列123の閾値よりも低い場合、LED列123に電流Iは流れない。
【0022】
(b)に示すようにスイッチ130が非導通であると、電流入力端子121から電流が流入できなくなる。このときコンデンサ125が放電を開始し、コンデンサ125の両端間電圧がLED列123の閾値になるまでLED列123には電流Iが流れる。なおスイッチ130が非導通であるときLED列123と電流制限回路124からなる直列回路に印加する電圧は、全波整流波形の高電圧位相の電圧ではなくコンデンサ125の両端間電圧である。
【0023】
次に図2により図1のLED駆動回路100をさらに具体的に説明する。図2は図1に示したLED駆動回路100の回路図である。全波整流電圧源105(図1参照)はブリッジ整流回路105aと商用電源105bからなる。商用電源105bはブリッジ整流回
路105aの交流入力端子に接続している。ブリッジ整流回路105aは、4個のダイオード105cからなり、端子A及び端子Bがそれぞれ全波整流の電流出力端子及び電流入力端子である。
【0024】
電圧検出回路110において+側端子111は、抵抗110aの上端と抵抗110cの上端の接続部であり、端子Aと接続し、さらに発光回路120の電流入力端子121とも接続している。−側端子112は、抵抗110bの下端とトランジスタ110dのエミッタの接続部であり、端子B及びトランジスタ130a(図1のスイッチ130に相当する)のエミッタと接続している。また電圧検出回路110の内部では抵抗110aと抵抗110bの接続部にトランジスタ110dのベースが接続している。さらに抵抗110cとトランジスタ110dのコレクタとの接続部(図1の制御出力端子113に相当する)がトランジスタ130aのベースに接続している。
【0025】
発光回路120の電流入力端子121は端子Aと接続し、電流出力端子122はトランジスタ130aのコレクタと接続している。また発光回路120内には、コンデンサ125、複数のLED123aが直列接続したLED列123及び抵抗124aがあり、電流入力端子121から電流出力端子122に向かってLED列123と抵抗124aが直列接続している。またLED列123と抵抗124aからなる直列回路と並列にコンデンサ125が接続している。なお抵抗124aは図1の電流制限回路124に相当しており、電流制限回路124としては抵抗124a以外に定電流回路や定電流ダイオードであっても良い。
【0026】
次に図3を用いて図1、図2に示したLED駆動回路100の動作を説明する。図3は図1、図2のLED駆動回路100において、(a)が全波整流波形、(b)がLED列123を流れる電流Iの波形を示す波形図である。なお(a)及び(b)は時間軸が一致している。全波整流波形は端子Bを基準にしている(以下同様)。また図1、図2への指示なしに部品及び端子の番号を参照する。
【0027】
(a)は全波整流波形の一周期を示している。なお後述するように端子Aの電圧はコンデンサ125により全波整流波形の電圧の低い期間で全波整流波形から変形したものとなる。そこでタイミング等の説明のため(a)では理想的な全波整流波形を示している。(b)では一周期を、全波整流波形の電圧がLED列123の閾値より小さい期間t1、全波整流波形の電圧がLED列123の閾値を越えスイッチ130が非導通になるまでの期間t2、スイッチ130が非導通の期間t3、スイッチ130が再び導通してから全波整流波形の電圧がLED列123の閾値まで下降する期間t4、全波整流波形の電圧がLED列123の閾値以下の期間t5、に区分した。
【0028】
期間t1においてトランジスタ130aは導通状態ではあるが、全波整流波形の電圧がLED列123の閾値に達しないためLED列123には電流Iがほとんど流れない。なお後述するようにコンデンサ125の放電による電流Iが存在することがあるので、期間t1では僅かな電流Iがあるように図示している。
【0029】
期間t2では全波整流波形の電圧がLED列123の閾値を超えているので、全波整流波形の電圧の上昇ととともに電流Iが増加する。なお電流Iは電流制限用の抵抗124aで制限される。また期間t2ではコンデンサ125が充電される。
【0030】
時刻t6では抵抗110aと抵抗110bの接続部の電圧が0.6Vになりトランジスタ110dが導通状態になる。この結果トランジスタ130aが非導通状態になり、発光回路120の電流入力端子121から電流が流入できなくなる。このときコンデンサ125が放電を開始し、期間t3においてコンデンサ125の両端間電圧がLED列123の
閾値と等しくなるまで電流Iが流れる。図中では期間t3の半分程度で電流Iが流れなくなっている。
【0031】
時刻t7では抵抗110aと抵抗110bの接続部の電圧が0.6Vを下回り、トランジスタ110dが非導通状態になり、トランジスタ130aが導通状態になる。この結果、発光回路120に再び電流Iが流れ始める。期間t4では全波整流波形の電圧がLED列123の閾値電圧よりはるかに高いので、時刻t7から急激に電流Iが上昇したのち、全波整流波形の電圧の降下とともに電流Iも減少する。なお期間t4では電流Iについてコンデンサ125の放電を無視できる。
【0032】
期間t5の最初のタイミングで全波整流波形の電圧がLED列123の閾値近傍になると、LED列123に流れる電流Iが減少する。期間t5では全波整流波形の電圧の低下よりコンデンサ125の電圧低下の方が遅くなる。この結果、期間t5ではLED列123を通じて電流Iが僅かに流れる。なお期間t5では電圧検出回路110も放電経路になるので期間t3より時定数が小さくなる。電圧検出回路110による放電経路をなくしたい場合は電流入力端子121に逆流防止用のダイオードを挿入すればよい。このようにすると期間t5から期間t1にかけて全波整流波形の電圧がLED列123の閾値以下になってもLED列123が非点灯となる期間を無くすか若しくは短くできる。
【0033】
発光回路120において、例えばLED列123の段数と期間t2,t4を決め、次に期間t2,t4の平均電流を例えば60mA、期間t3における平均電流を20mAというように設定すると、コンデンサ125と抵抗124aの値が決まる。前述のように商用電源105bの実効値が100Vのとき、多くの照明装置ではLED列の直列段数を40段程度にしていたのに対し、本実施形態のように全波整流波形の低電圧位相に主な発光期間がある場合はLED列123の直列段数を10〜20程度にできる。
(第2実施形態)
【0034】
第1実施形態におけるLED駆動回路100では、トランジスタ130aが非導通になるとコンデンサ125が急速に放電するため、全波整流波形の高電圧位相(期間t3)の半分程度だけ点灯していた(図3参照)。モーションブレークやフリッカは点灯期間が長いと目立ちにくくなることがある。そこで図4〜6により本発明の第2実施形態として放電時間をコントロールできるLED駆動回路400を示す。
【0035】
図4はLED駆動回路400を示すブロック図である。なお図4では図1に比べスイッチ130が非導通である場合のみを示し簡略化している。LED駆動回路400には、図1のLED駆動回路100と同様に全波整流電圧源105、電圧検出回路110、発光回路420、スイッチ130がある。なお全波整流電圧源105、電圧検出回路110及びスイッチ130は、本実施形態と図1で示したものが同じなので説明は省略する。
【0036】
発光回路420は、複数のLED423aが直列接続したLED列423と電流制限回路424とコンデンサ425に加え、ダイオード426と抵抗427を備えている。図1の発光回路120と同様に電流入力端子421から電流出力端子422に向かってLED列423と電流制限回路424が直列接続している。この一方で、本実施形態ではダイオード426と抵抗427からなる並列回路がコンデンサ425と接続し、ダイオード426と抵抗427とコンデンサ425からなる並直列回路が、LED列423と電流制限回路424からなる直列回路と並列接続している。
【0037】
スイッチ130が導通していると、電流IがLED列423、電流制限回路424及びスイッチ130を流れる。このときコンデンサ425はダイオード426を介して急速に充電され、その両端間電圧はLED列423と電流制限回路424からなる直列回路に印
加される電圧と略等しくなる。なお全波整流波形の電圧はLED列423の閾値よりも高くなっているものとする。全波整流波形の電圧がLED列423の閾値よりも低い場合、LED列423に電流Iは流れない。
【0038】
スイッチ130が非導通であると、電流入力端子421から電流Iが流入できなくなる。このときコンデンサ425が放電を開始する。図1と異なり、本実施形態では電流Iはコンデンサ425の左側の端子から抵抗427を経由してLED列423、電流制限回路424を流れるので、電流Iの値が小さくなる一方で時定数が長くなる。放電はコンデンサ425の両端間電圧がLED列423の閾値になるまで続く。なお抵抗427は、電流Iを制限するものなので、定電流回路や定電流ダイオードであっても良い。
【0039】
次に図5により図4のLED駆動回路400をさらに具体的に説明する。図5は図4に示したLED駆動回路400に含まれる発光回路420の回路図である。なお本実施形態では、図1、2で示した第1実施形態の全波整流電圧源105(ブリッジ整流回路105a及び商用電源105b)、電圧検出回路110、スイッチ130(トランジスタ130a)は同じものなので、LED駆動回路400のうち発光回路420のみ示し、他の部分の説明は省略する。なお図5は、図4で示した発光回路420に対し電流制限回路424が具体的に抵抗424aになっているだけである。抵抗424aは定電流回路若しくは定電流ダイオードであっても良い。
【0040】
次に図6によりLED駆動回路400の動作をさらに詳しく説明する。図6は図5に示す発光回路420を含む図4のLED駆動回路400の動作を説明するための波形図であり、(a)が全波整流波形、(b)がLED列423を流れる電流Iの波形を示す波形図である。なお(a)及び(b)は時間軸が一致しており、(a)の全波整流波形の電圧は端子B(図1参照)を基準にしている。また図4、図5への指示なしに部品及び端子の番号を参照する。
【0041】
(a)は全波整流波形の一周期を示している。なお後述するように端子Aの電圧はコンデンサ425により低電圧側で変形されるので、説明のため(a)では理想的な全波整流波形を示している。(b)では一周期を、全波整流波形の電圧がLED列423の閾値より小さい期間t1、全波整流波形の電圧がLED列423の閾値を越えスイッチ130が非導通になるまでの期間t2、スイッチ130が非導通の期間t3、スイッチ130が再び導通してから全波整流波形の電圧がLED列423の閾値まで下降する期間t4、全波整流波形の電圧がLED列423の閾値以下の期間t5、に区分した。
【0042】
期間t1においてスイッチ130は導通状態である。しかし全波整流波形の電圧がLED列423の閾値に達していないため電流入力端子421から電流は流入せず、反対にコンデンサ425の放電が遅いため電流入力端子421から電流検出を経由してコンデンサ425が放電し続けている。また図3(b)の期間t1に比べると本図の期間t1では放電が遅い分電流Iが僅かに多い。
【0043】
期間t2では全波整流波形の電圧がLED列423の閾値を超えているので、全波整流波形の電圧の上昇ととともに電流Iが増加する。なお動作は図3(b)の期間t2と略等しい。この間、電流Iは電流制限用の抵抗424aで制限され、コンデンサ435が充電される。
【0044】
時刻t6ではスイッチ130が非導通状態になり、発光回路420の電流入力端子421から電流が流入しなくなる。このときコンデンサ425が放電を開始し、コンデンサ425の両端間電圧がLED列423の閾値と等しくなるまで電流Iが流れる。図3(b)の期間t3と比べると、本図の電流Iは期間t3の前半の部分において図3の電流Iより
小さな値になっているが、ゆっくりと放電するため期間t3の最後まで電流Iが流れ続けている。なおコンデンサ125(図1参照)とコンデンサ425並びに抵抗124a(図1参照)と抵抗424aは同じものを使用している。このようにして本実施形態では全波整流波形の高電圧位相(期間t3)でもLED列423が点灯し続ける。
【0045】
時刻t7では全波整流波形の電圧が低下し再びスイッチ130が導通状態になり、発光回路420の電流入力端子421から電流が流れ込み始める。図3(b)の期間t4と同様に、本図の期間t4でも時刻t7から急激に電流Iが上昇したのち、全波整流波形の電圧の降下とともに電流Iも減少する。なお期間t4では電流Iについてコンデンサ425の放電を無視できる。
【0046】
期間t5の最初のタイミングで全波整流波形の電圧がLED列423の閾値近傍になるとLED列423に流れる電流Iはコンデンサ435の放電によるものだけになる。この電流Iは、図3(b)の期間t5における電流Iに比べ最初のうちは小さな値になるが、緩やかに減少する。なお期間t5から期間t1にかけて放電を有効利用する場合は、図3(b)の期間t5の説明と同様に逆流防止用のダイオードを挿入すると良い。
(第3実施形態)
【0047】
第1及び第2実施形態では、全波整流波形の高電圧位相(期間t3)におけるLED列123,423の点灯維持を課題としていた。このため全波整流波形の電圧がLED列123,423の閾値電圧より低い期間(期間t1及びt5)におけるLED列123,423の点灯維持については回路上点灯が維持される期間があるという指摘に留まり、逆流防止用ダイオードを挿入すればこの期間t1、t5で点灯維持が改善するということを示唆しているだけだった。また第1及び第2実施形態においてLED列123,423は一本の直列回路であったが、LED列123,423を2分割することで明るくできる場合がある。そこで図7〜9により第3実施形態として逆流防止用ダイオードの挿入並びにLED列の2分割を実施したLED駆動回路700を説明する。
【0048】
図7はLED駆動回路700を示すブロック図である。なお図7でも図1に対しスイッチ130が非導通である場合のみを示し簡略化している。LED駆動回路700には、図1、図4のLED駆動回路100,400と同様に、全波整流電圧源105、電圧検出回路110、発光回路720、スイッチ130がある。なお全波整流電圧源105、電圧検出回路110及びスイッチ130は、本実施形態と図1、図4で示したものが同じなので説明は省略する。
【0049】
発光回路720は、複数のLED723aが直列接続したLED列723と電流制限回路724とコンデンサ725に加え、逆流防止用のダイオード729、複数のLED726aが直列接続したLED列726並びにバイパス回路727を備えている。電流入力端子721と逆流防止用のダイオード729のアノードが接続し、ダイオード729のカソードから電流出力端子722に向かってLED列723、LED列726、並びに電流制限回路724が直列接続している。バイパス回路727は、LED列723とLED列726の接続部から電流が流れ込み、さらに電流制限回路724からも電流が流れ込むよう接続しており、さらにこれらの電流を出力する端子が発光回路720の電流出力端子722に接続している。またコンデンサ725は一端がダイオード729のカソードと接続し、他端が発光回路720の電流出力端子722と接続している。つまりコンデンサ725は、LED列723,726、電流制限回路724及びバイパス回路727からなる回路と並列接続している。
【0050】
スイッチ130が導通し、全波整流波形の電圧がLED列723の閾値より高ければ、電流入力端子721から電流出力端子722を経て電流Iが流れる。このとき全波整流波
形の電圧がLED列723の閾値より高く、LED列723の閾値とLED列726の閾値の和よりも小さい場合、電流IはLED列726を通らずバイパス回路727を経由する。バイパス回路727は流入する電流を監視しており、全波整流波形の電圧がLED列723の閾値とLED列726の閾値の和より大きくなり、電流Iが所定の値を越えたら全ての電流IがLED列726を流れるようにする。このときコンデンサ725は充電される。
【0051】
全波整流波形の電圧がさらに上昇しスイッチ130が非導通になると、電流入力端子721から電流が流入できなくなり、コンデンサ725が放電を開始する。全波整流波形の電圧が下降し再びスイッチ130が導通すると、全波整流波形の電圧が上昇するときと逆の過程で最高電圧からLED列723の閾値近傍になるまで全波整流波形の電圧とともに電流Iが減少する。さらに全波整流波形の電圧が下降しLED列723の閾値以下になるとコンデンサ725の左側の端子電圧が全波整流波形の電圧より高くなるためダイオード729がカットオフする。その後、コンデンサ725の放電電流はLED列723を通りバイパス回路727に向かう。
【0052】
次に図8により図7のLED駆動回路700をさらに具体的に説明する。図8は図7に示したLED駆動回路700に含まれる発光回路720の回路図である。なお本実施形態では、図1、2で示した第1実施形態の全波整流電圧源105(ブリッジ整流回路105a及び商用電源105b)、電圧検出回路110、スイッチ130(トランジスタ130a)は同じものなので、LED駆動回路700のうち発光回路720のみ示し、他の部分の説明は省略する。図7で示した発光回路720と比べると、図8ではバイパス回路727と電流制限回路724が具体的に記載されている。
【0053】
バイパス回路727において抵抗727aの上端とFET727bのドレインがLED列723とLED列726との接続部に接続している。またトランジスタ727cのエミッタと抵抗727dの下端子が電流出力端子722と接続している。さらにFET727bのソース、トランジスタ727cのベース並びに抵抗727dの上端の接続部は、電流制限回路724に含まれるトランジスタ724cのエミッタ及び抵抗724dの下端と接続している。なおこの接続部が、バイパス電流と電流制限回路724から流入する電流の加算部(図7において白丸中に+印で示していたもの)になる。バイパス回路727の内部では抵抗727aの下端、FET727bのゲート並びにトランジスタ727cのコレクタが接続している。
【0054】
電流制限回路724において抵抗724aの上端とFET724bのドレインがLED列726のカソードに接続している。また電流制限回路724内には、FET724bのソース、トランジスタ724cのベース並びに抵抗724dの上端の接続部と、抵抗724aの下端、FET724bのゲート並びにトランジスタ724cのコレクタの接続部とがある。
【0055】
次に図9によりLED駆動回路700の動作をさらに詳しく説明する。図9は図8に示す発光回路720を含む図7のLED駆動回路700の動作を説明するための波形図であり、(a)が全波整流波形、(b)がLED列723を流れる電流Iの波形を示す波形図である。なお(a)及び(b)は時間軸が一致しており、(a)の全波整流波形は端子B(図1参照)を基準にしている。また図7、図8への指示なしに部品及び端子の番号を参照する。
【0056】
(a)は全波整流波形の一周期を示している。なお本実施形態では逆流防止用のダイオード729を備えているため端子Aの電圧波形が全波整流波形となる。(b)では一周期を、全波整流波形の電圧がLED列723の閾値より小さい期間t8、全波整流波形の電
圧がLED列723の閾値を越えスイッチ130が非導通になるまでの期間t9、スイッチ130が非導通の期間t3、スイッチ130が再び導通しその後全波整流波形の電圧がLED列723の閾値まで下降する期間t10、全波整流波形の電圧がLED列723の閾値以下となる期間t11、に区分した。
【0057】
期間t8においてスイッチ130は導通状態である。しかし全波整流波形の電圧がLED列723の閾値に達していないため電流入力端子721から発光回路720に電流は流入しない。なお、逆流防止用ダイオード729によりコンデンサ725の放電電流が電流入力端子721に向かわないこと、LED列723の閾値電圧がLED列123,423の閾値電圧より低いため期間t8が図3、図6で示した期間t1より短いこと、により期間t8の電流Iが図1、図6の期間t1の電流Iより多くなっている。
【0058】
期間t9では全波整流波形の電圧がLED列723の閾値を超えているので電流Iは全波整流波形の電圧の上昇ととともに増加する。なお電流Iは、期間t9の始めに急激に増加するが途中で平坦になる期間が現われる。これはバイパス回路727が特定の電流領域でトランジスタ727cのベース電圧を0.6Vに保つよう定電流動作するからである。この期間の後半では全波整流波形の電圧がLED列723の閾値とLED列726の閾値の和を越えLED列726にも電流が流れるようになる。このときバイパス電流とLED列726に流れる電流の和(電流I)が一定になる。さらに全波整流波形の電圧が上昇するとトランジスタ727cが飽和しバイパス電流がなくなり、電流Iが再び急上昇する。その後、電流制限回路724により電流Iの上限値が決められる。この間、コンデンサ725が充電される。
【0059】
時刻t6でスイッチ130が非導通状態になると、発光回路720の電流入力端子721から電流が流入しなくなり、コンデンサ725の放電が始まる。時刻t6の直後は電流制限回路724により電流Iが一定になり、その後放電曲線を描く。さらに電流Iは、途中でバイパス回路727が定電流動作するため一定になる期間が現われ、さらに放電が進み放電電流が減少するとコンデンサ725の両端間電圧がLED列723の閾値と等しくなるまで放電曲線を描く。
【0060】
時刻t7では全波整流波形の電圧が低下し再びスイッチ130が導通状態になり、発光回路720の電流入力端子721から電流が流れ込み始める。期間t10では時刻t7から急激に電流Iが上昇したのち、期間t9とは逆の過程で電流Iが減少する。なお期間t10では電流Iについてコンデンサ725の放電を無視できる。
【0061】
期間t11になり全波整流波形の電圧がLED列723の閾値を下回るようになるとLED列723に流れる電流Iはコンデンサ735の放電によるものだけになる。期間t8と同様の理由で期間t11の電流Iは図3、図6(b)で示した期間t5の電流Iより多くなっている。
【0062】
以上のように本実施形態は、全波整流波形の電圧がLED列723の閾値より低い期間における点灯状態を改善している。すなわち本実施形態のLED駆動回路700は、第1及び第2実施形態のLED駆動回路100,400よりも全波整流波形の電圧が低い時刻からLED列(LED列723とLED列726からなるLED列)の一部(LED列723)が点灯し始めるため、LED列が同じ直列段数であれば明るくなる。さらに逆流防止ダイオード729を備えているので期間t8,t11において放電電流が全てLED列723に流れるので明るくなる。
【0063】
本実施形態では電流制限回路724を定電流回路としたが、抵抗や定電流ダイオードであっても良い。またコンデンサ725の低電圧側の端子を電流制限回路724の出力側に
接続しても放電電流を利用できるが、本実施形態のようにバイパス回路727の出力側に接続したほうが放電電圧の下限が低くなるので効率が良い。スイッチ130は電流入力端子721の直前にあっても良い。
【符号の説明】
【0064】
100,400,700…LED駆動回路、
105…全波整流電圧源、
105a…ブリッジ整流回路、
105b…商用電源、
105c,426,729…ダイオード、
110…電圧検出回路、
110a,110b,110c,124a,424a,427,727a,727d,724a,724d…抵抗、
110d,130a,727c,724c…トランジスタ、
111…+側端子、
112…−側端子、
113…制御出力端子、
120,420,720…発光回路、
121,421,721…電流入力端子、
122,422,722…スイッチ、
123,423,723,726…LED列、
123a,423a,723a,726a…LED、
124,424,724…電流制限回路、
125,425,725…コンデンサ、
130…スイッチ、
724b,727b…FET、
727…バイパス回路、
t1〜t5,t8〜t11…期間、
t6,t7…時刻。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源として複数のLEDを直列接続したLED列を備え、全波整流波形が低電圧位相にあるとき前記LED列に前記全波整流波形の電圧を印加するLED駆動回路において、
前記全波整流波形の電圧を計測する電圧検出回路と、
前記全波整流波形が低電圧位相にあるとき前記電圧検出回路により導通するよう制御されるスイッチと、
前記スイッチと直列接続する発光回路とを備え、
前記発光回路が前記LED列とコンデンサを有し、前記LEDと前記コンデンサが並列接続し、
前記スイッチと前記発光回路からなる直列回路に前記全波整流波形の電圧を印加する
ことを特徴とするLED駆動回路。
【請求項2】
前記発光回路の電流入力端子に逆流防止用のダイオードを備えることを特徴とする請求項1に記載のLED駆動回路。
【請求項3】
前記コンデンサへの放電時定数を充電時定数より長くしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のLED駆動回路。
【請求項4】
前記コンデンサの一端に抵抗或いは定電流素子とダイオードからなる並列回路が接続したことを特徴とする請求項3に記載のLED駆動回路。
【請求項5】
前記LED列を複数に分割し、この複数に分割したLED列の接続部にバイパス回路を設け、該バイパス回路が前記LED列に流れる電流に応じてバイパス電流を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のLED駆動回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−58670(P2013−58670A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196961(P2011−196961)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】