説明

LSIピン

【課題】プリント板とパッケージとインピーダンス整合可能とするピンの提供。
【解決手段】中心側から順に、ピン3と、ピン3を囲む絶縁体7と、絶縁体7を囲む外部導体6とを備え、外部導体6は外周断面の円弧の一部に間隙を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、半導体装置のピンの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル技術の発展に伴いLSIが扱う信号の周波数は年々高くなり、GHzを超える周波数の信号を扱うLSIが実用化されている。例えばシリアル転送インタフェースであるPCI Expressでは2.5Gbps(最大周波数1.25GHz)でLSIとLSIを接続している。GHzを超える高周波になると信号レベルの低下(減衰)と反射による波形乱れのためプリント板上を伝達するのが困難となる。また、LSIとプリント板の接続部分はオープンであるため、特性インピーダンスを整合させることが困難である。そして、今後、10GHzを超える周波数を伝達しなければならなくなることが思料され、特性インピーダンスの整合が重要になってくる。
【0003】
LSIのピンは、高周波信号の伝達において、いくつかの問題がある。すなわち、LSIピンは、信号の伝達経路として、特性インピーダンスがマッチしていない。これは、LSIピンにおいて、特性インピーダンスをマッチさせるに必要な安定したリファレンス(GND)がないことに起因する。
【0004】
LSIとプリント板との接続のように、異なる伝送路を接続する場合、物理的な制約(位置、パターン幅の差異等)により、LSIとプリント板の間を、特性インピーダンスを一定にしたまま接続することができない。
【0005】
なお、インピーダンス整合を考慮し、中心導体、絶縁体、外部導体を有する同軸構造のピンとして、例えば特許文献1には、ピン状電極の根元に絶縁部材を介してピン状電極と同軸に環状の同軸電極を備えたPGA(ピン・グリッド・アレイ)型電子部品が開示されている。また特許文献2には、半導体チップを搭載する多層配線板(パッケージ基板)の外部端子を信号線と電源線との間に絶縁層を介する同軸状の導電路構造とし、絶縁層の厚さを調整して外部端子のインピーダンスを印刷配線基板の特性インピーダンスと同じとなるようにした半導体装置が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−261121号公報
【特許文献2】特開平7−66353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みて創案されたものであって、その目的は、特性インピーダンスを印刷配線基板の特性インピーダンスに整合自在に調整可能とするLSIピンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、中心側から順に、ピンと、前記ピンを囲む絶縁体と、前記絶縁体の外周を環状に囲む導体とを備えたLSIピンであって、前記導体は、その断面の少なくとも1部の円弧に少なくとも1つの間隙を備えている。
【0009】
本発明において、前記間隙は、前記導体の長手方向に、同一の円弧の位置に延在されて配置される。あるいは、前記導体の長手方向において、前記断面の異なる円弧の位置に配置される、複数の間隙を含むようにしてもよい。
【0010】
本発明において絶縁体の厚さを可変に調整してもよい。
【0011】
本発明において、前記導体の端部は、グランド電位に接続される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、LSIピンを同軸構造にして特性インピーダンスを、LSIパッケージの信号とプリント板上の信号の特性インピーダンスをあわせることにより、信号の伝わる経路の特性インピーダンスを整合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記した本発明についてさらに詳細に説述すべく、添付図面を参照して説明する。本発明は、LSIのリードピン(3)の周りを、同心円上に絶縁体(「同軸絶縁体」ともいう)(7)と外部導体(6)で囲み、リードピン(3)と外部導体(6)とで構成される伝送路のインピーダンスを、当該LSIピンの信号線のインピーダンスに整合させる。本発明においては、外部導体(6)は、その断面の少なくとも1部の円弧に、間隙(12)を備えている。
【0014】
高周波信号の伝達を阻害するインピーダンスの不整合を防止することにより、LSIのピンの部分で発生するインピーダンスの不整合が原因とされる反射を低減することができる。よく知られているように、例えば負荷のインピーダンスZと信号伝送路のインピーダンスZとの不整合による反射は、Γ=(Z−Z)/(Z+Z)で与えられる。
【0015】
本発明によれば、リードピン(3)と外部導体(6)の間の絶縁体(7)の種類を変えることで、ピンのもつインピーダンスを可変させることができる。また、絶縁体(7)の厚みを変え、リードピン(3)と外部導体(6)の距離を変えるか、間隙(12)のサイズを変えることでインピーダンスを変更することができる。
【0016】
本発明によれば、絶縁体と外部導体を備え特性インピーダンスを最適化することにより、LSIのピンを通過する信号の損失を最小限にする構成を有する。また、本発明によれば、LSIピンを同軸構造にして特性インピーダンスを、LSIパッケージの信号とプリント板上の信号の特性インピーダンスをあわせることにより、信号の伝わる経路の特性インピーダンスを整合させることができる。全てのインピーダンスが整合できると、特性インピーダンスの不連続部分における信号の反射がなくなり、波形ひずみか少ない波形を伝達することができるようになる。以下実施例に即して説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例のLSIピンの構成を説明するための図である。LSIパッケージ1は、プリント板(印刷配線基板)2に実装される。ピン3は、LSIパッケージ1(パッケージ基板)内で信号線4に接続されており、実装時、プリント板2のスルーホールに差し込まれ、プリント板2内の信号層の信号線5に電気的に接続される。ピン3を囲んで絶縁体7を備え、さらに、中空円筒形状とされ、絶縁体7を覆う外部導体6を備えている。外部導体6のLSIパッケージ1側の端部は、LSIパッケージ1の基板対向面のGND層9と接続されており、プリント板2側の端部は、実装時、ハンダ(半田)8にてGND10に接続される。LSIパッケージ1内の信号11は、信号線4、ピン3、信号線5を伝送する。LSIパッケージ1内の信号線4およびプリント板2内の信号線5の特性インピーダンスを50Ωとする。
【0018】
図2は、本実施例のLSIピンの断面形状を示す図である。図2に示すように、中心に信号を伝達する芯線をなすピン3、その外側に、同軸に設けられた絶縁体7、絶縁体7の外周を覆う外部導体6を備え、同軸ケーブルと同様な構造とされる。本実施例においては、外部導体6は、その外周断面の少なくとも1部の円弧に、間隙12を有する。例えば外部導体6の外周が3mmの場合、弧の長さが1.2mmの2つの外部導体6を組合わせ、円弧上の間隙12を0.3mmとする。なお、間隙12は、2つ以上で設けるようにしてもよいし、1つであってもよい。
【0019】
間隙12は、外部導体6の断面の円弧における位置として、図3(A)に示すように、ピン3の長手方向に沿って同一位置に延在する構成としてもよいし、あるいは、図3(B)に示すように、ピン3の長手方向に沿って異なった位置に配設するようにしてもよい。なお、間隙12の端部は、図3(A)に示すように、開放端であっても、あるいは、図3(B)に示すように、閉じていてもよい。さらに、図3(C)に示すように、外部導体6をメッシュ状に穴を開けた構成としてもよい。
【0020】
同軸ケーブルの特性インピーダンスZは、よく知られているように、
=60(1/√er)ln(d2/d1)
で求められる。ここで、erは絶縁体7の比誘電率、d2は外部導体(シールド)6の半径、d1は中心導体(ピン)3の半径である。
【0021】
本実施例においては、絶縁体7の種類、その厚さ、及び、円弧の間隙12のサイズ、設置個数、形状等を変えることで、そのインピーダンスを可変に調整することができる。
【0022】
これにより、LSIピン3のインピーダンスを、LSIパッケージ1またはプリント板2上の信号伝送路の特性インピーダンスをあわせることができる。一般に、高速信号は特性インピーダンスが50Ωになるように設計されている。信号線4および信号線5における特性インピーダンスを50Ω、ピンのインピーダンスを同じく50Ωで設計すると、特性インピーダンスの不連続がなくなり、特性インピーダンスの不連続による反射の影響がなくなることで損失の少ない伝送が可能となる。
【0023】
本発明は、1GHzを超える周波数の信号を扱うICと、ICを接続する必要がある情報機器、通信機器、映像機器に組み込まれるIC、LSI等へ適用して好適とされる。
【0024】
以上、本発明を上記実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみに制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施例のピンの断面を示す図である。
【図3】(A)、(B)、(C)は本発明の一実施例の外部導体の側面を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 LSIパッケージ
2 プリント板
3 ピン
4 信号線
5 信号線
6 外部導体
7 絶縁体(同軸絶縁体)
8 半田
9 GND層
10 GND
11 信号
12 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心側から順に、ピンと、前記ピンを囲む絶縁体と、前記絶縁体の外周を環状に囲む導体とを備えたLSIピンであって、
前記導体は、その断面の少なくとも1部の円弧に少なくとも1つの間隙を備えている、ことを特徴とするLSIピン。
【請求項2】
前記間隙は、前記導体の長手方向に沿って、前記断面の同一の円弧の位置に延在されて配置される、ことを特徴とする請求項1記載のLSIピン。
【請求項3】
前記導体の長手方向において、前記断面の異なる円弧の位置に配置される、複数の間隙を含む、ことを特徴とする請求項1記載のLSIピン。
【請求項4】
前記導体は、前記間隙を、側面にメッシュ状に備えている、ことを特徴とする請求項1記載のLSIピン。
【請求項5】
前記絶縁体の厚さが可変に調整される、ことを特徴とする請求項1記載のLSIピン。
【請求項6】
前記導体の一端又は両端は、グランド電位に接続される、ことを特徴とする請求項1記載のLSIピン。
【請求項7】
前記LSIピンに接続されたLSIパッケージの信号線路、及び、前記LSIパッケージを実装するプリント板の信号線のインピーダンスを整合自在としている、ことを特徴とする請求項1記載のLSIピン。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一に記載のLSIピンを備えた半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−115771(P2007−115771A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303383(P2005−303383)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)