説明

Lawsoniaintracellularisワクチン

本発明は、新規Lawsonia intracellularisポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に関連する。それはまた、これらの配列を含むDNA断片、組換えプラスミドDNA、および生きた組換え微生物に関連する。さらに、本発明は、これらのヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドに関連する。本発明はまた、Lawsonia intracellularis感染の予防のための免疫原性組成物、およびこれらの免疫原性組成物の調製の方法に関連する。本発明はまた、Lawsonia intracellularisDNAの検出、Lawsonia intracellularis抗原の検出、およびLawsonia intracellularisに対する抗体の検出のための診断テストに関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2008年10月23日出願の米国仮特許出願番号61/107,858号に対して米国特許法の119(e)条における優先権を主張する非仮特許出願であり、その全体が本明細書で参照として援用される。
【0002】
本発明は、Lawsonia intracellularisに対する免疫のための免疫原性組成物に関連する。タンパク質発現、精製、および免疫原性組成物の調製における使用の方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
回腸炎とも呼ばれるブタ増殖性腸炎(PPEまたはPE)は、ブタ産業において、最も経済的に負担となる疾患の1つである。その疾患は、世界中の農場の12%から50%のブタを冒すと報告された(非特許文献1)。PPEの経済的影響は、主にブタ産業によって感じられるが、その疾患は、サル、ウサギ、ハムスター、ウマ、ダチョウ、キツネ、フェレット、ラットおよびエミューを含む、複数の哺乳類種も冒すことが示された(非特許文献1)。PPEの急性形態である増殖性出血性腸炎(PHE)を示す動物において、死亡率は50%と高く、そして感染した妊娠動物は多くの場合、最初の6日以内に流産する(非特許文献1)。PPEの原因因子は、最初にLawsonらによって決定および単離された(非特許文献2)。Lawsonらによって単離された細菌は、絶対細胞内グラム陰性の湾曲した桿菌(curved rod)であり、それは環境圧力からの減圧において酸素のみを許容し、そして腸細胞においてのみインビボで増殖する。Lawsonらは、2つの系統の細菌を単離し、そしてそれらをNCTC12656およびNCTC12657として寄託した。
【0004】
これらの細菌のさらなる系統発生的特徴付けおよび命名が、McOristらによって行われた(非特許文献3)。PPEの原因因子は、絶対細胞内寄生細菌であり、もともとLawsonらによって発見され、今はLawsonia intracellularis(LI)と命名された。この生物はグラム陰性、有鞭毛細菌であり、それは腸細胞と呼ばれる、腸管陰窩の未熟な上皮細胞に感染する。
【0005】
感染の早い段階において、細菌は細胞膜と結合し、そして侵入液胞を介して、陰窩上皮細胞に迅速に侵入する(非特許文献4)。この液胞は迅速に分解し、そして細菌は細胞の細胞質で自由に繁殖および増幅する。この疾患の顕著な特徴の1つは、陰窩上皮細胞の制御不可能な増殖であり、それは小腸、そして時には大腸の粘膜裏層(mucosal lining)の肥厚を引き起こす。ブタにおいて、LIによる感染は、下痢、発育阻止、そしていくつかの場合には突然死を引き起こす。
【0006】
増殖性腸炎は、広く異なる様子および症状を有する疾患群であり、その1つのメンバーはPPEである(非特許文献1)。いくつかの異なる形態のPPE(急性、慢性、壊死性、および無症候性)も区別し得る;しかしそれらは全て共通してその根底には発病の原因であるLawsonia intracellularisを有する。その疾患は最初に、Lawsonia intracellularisが感染した未熟な腸管上皮細胞の進行性の増殖として発現する。その疾患のこの形態は、出血性、または血の混じった下痢、血餅、および突然死によって特徴付けられる。ブタ腸管腺腫症(PIA)は、その疾患の慢性および最もよくある形態であると考えられ、それは成長中のブタにおいて見られる(保育段階から後期仕上げ段階(nursery to late finishing stage))。増殖性出血性腸炎(PHE)は、その疾患の急性形態と考えられ、成熟ブタ(4−12ヶ月齢)の回腸末端および結腸を冒す。PHEはPIAから発達し、そして重度の腸管管腔への出血によって、既存のPIA病変から区別される。疾患のこの形態は、回腸末端および近位結腸上部において観察され、そして粘膜表面における炎症はほとんどまたは全く無く、冒された領域の粘膜裏層の広範な肥厚によって特徴付けられる。壊死性腸炎は、その疾患の別の形態であり、それは回腸における黄色がかった壊死性病変の存在と共に、回腸の重度の肥厚によって特徴付けられる。Lawsonia感染を有するブタにおいて記載されたその疾患の別の形態は、疾患の明白な徴候を有さないキャリア動物を生じる無症候性の疾患である。
【0007】
細胞培養におけるLawsonia intracellularisの増殖は、普通でない気体の混合物(酸素、二酸化炭素、窒素、および水素)を含む環境を必要とする。それに加えて、その細菌は宿主細胞において観察できる細胞変性効果を示さない。これらの要素は、Lawsoniaによって引き起こされる疾患に対して保護するが、その細菌の培養を必要としない、有効なワクチンを開発するための特殊な技術を研究する重要性を強調する。1つのそのようなアプローチは、サブユニットワクチンを開発するための、組換えDNA技術の適用を含む。以前の研究は、完全に配列決定されたLawsoniaゲノムをアノテートするためにARTEMISおよびTB−parseを利用した(特許文献1)。
【0008】
これらの利点にも関わらず、サブユニットワクチンの開発は、ワクチンの基礎として使用し得る保護抗原の本質(identity)についての情報の欠如によって妨害されてきた。本発明は、これらおよび他のニーズに取り組む。
【0009】
本明細書中で引用された参考文献は、参考としてのみ見なされることを意図し、そしていかなる他の目的も意図しない。提供された情報および引用された参考文献が、単にこの文書中にあるので先行技術であるという推論はすべきでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0024696号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Diseases of Swine、第7版、560−569(1992)
【非特許文献2】Lawsonら、Journal of Clinical Microbiology 31(5):1136、(1993年5月)
【非特許文献3】McOristら、International Journal of Systematic Bacteriology、45(4):820−825(1995年10月)
【非特許文献4】McOrist,S.ら、The Canadian Journal of Veterinary Research、70(2):155−159(2006年4月)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、インビトロにおける培養の必要無しに、Lawsonia intracellularisに対する保護のためのサブユニットワクチンとして有用なポリペプチドおよびポリヌクレオチドに向けられる。本発明は、1つまたは複数の本発明のポリペプチド(例えば配列番号第1〜13番)を含む組成物を提供する。これらの組成物はまた、免疫原性組成物であり得、それはさらに薬学的に許容可能なアジュバントを含む。本発明はまた、さらに1つまたは複数の以下の微生物の抗原性成分を含む免疫原性組成物を提供する:Mycoplasma Hyopneumoniae、Erysipelas spp、salmonella、H.parasuis、clostridium spp、streptoccous suis、brachyspira spp、bordetella、pasteurella、E.coli、コロナウイルス、パルボウイルス、PRRS、サーコウイルス、およびSIV。他の実施態様において、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする、1つまたは複数のポリヌクレオチド(例えば配列番号第27〜39番)を含む組成物を提供する。これらの組成物はまた、免疫原性組成物であり得、それはさらに薬学的に許容可能なアジュバントを含む。それに加えて、本発明は、不活化Lawsonia(バクテリン)および適当なアジュバントを含む免疫原性組成物を提供する。
【0013】
本発明はさらに、動物においてLawsoniaに対する保護的免疫反応を誘導する方法を提供し、ここでその方法は、本発明のバクテリン、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む組成物をその動物に投与することを含む。特定の実施態様において、その動物はブタである。投与経路は、本発明にとって決定的ではない。本発明において有用な投与方法は、乱刺、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内、鼻腔内投与、または経口投与を含む。本発明はさらに、動物から得られた生物学的サンプルにおける、Lawsoniaに反応性の抗体の特異的検出の方法を提供する。本発明の検出方法は、その生物学的サンプルを、本発明のLawsonia抗原と接触させる工程、および生物学的サンプルにおいてLawsonia抗原と抗体の間の抗原抗体結合を検出する工程を含む。特定の実施態様において、その生物学的サンプルは血液由来である。本発明はまた、本発明の1つまたは複数のLawsonia抗原、およびブタにおけるLawsoniaに対する保護的免疫反応を誘導するための説明書を含むキットを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の定義
他に定義されなければ、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的用語は一般的に、本発明が属する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般的に、本明細書中で使用される命名法、および細胞培養、分子遺伝学、有機化学、および核酸化学、および下記で記載するハイブリダイゼーションにおける実験室手順は、当該分野において周知であり、そして通常採用されるものである。標準的な技術を、核酸およびペプチド合成のために使用する。一般的に、酵素的反応および精製工程を、製造業者の仕様に従って行う。その技術および手順を一般的に、当該分野における従来の方法、およびこの文書中で提供される、様々な一般的な参考文献に従って行う(一般的にSambrookら、MOLECULAR CLONING:ALABORATORY MANUAL、第2版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.を参照のこと、それは本明細書中で参考文献に組み込まれる)。本明細書中で使用される命名法、および分析化学、および下記で記載される有機合成化学における実験手順は、当該分野において周知であり、そして通常採用されるものである。標準的な技術、またはその改変を、化学合成および化学分析のために使用する。
【0015】
当業者は、本発明のLawsoniaポリペプチドは、免疫原性の喪失無しに変化し得ることを認識する。従って、本発明のポリペプチドは、多型性変異体、対立遺伝子、および(1)ここで例示されたポリペプチドに対して、特に少なくとも約25、50、100、200、500、1000、またはそれより多いアミノ酸の領域に渡って、約80%より高いアミノ酸配列同一性、85%、90%、特に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%またはそれより高いアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する変異体を含む。そのような変異体は、ここで例示されたアミノ酸配列を含む免疫原に対して作られた抗体、例えばポリクローナル抗体に特異的に結合する。本発明の変異体を同定する別の手段は、それらをコードするDNAは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、ここで示した核酸配列に特異的にハイブリダイズする、または例示された配列に対して、約90%より高い、特に約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高いヌクレオチド配列同一性を有する核酸配列を有することである。
【0016】
配列比較のために、典型的には1つの配列が参照配列として作用し、それに対してテスト配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、テスト配列および参照配列をコンピューターにインプットし、もし必要ならサブシーケンス座標を指定し、そして配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。次いで配列比較アルゴリズムが、指定したプログラムパラメーターに基づいて、参照配列と比較した、テスト配列(複数可)の配列同一性パーセントを計算する。
【0017】
例えば、SmithおよびWaterman、Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、PearsonおよびLipman、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性探索の方法によって、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実行によって(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または目視検査によって(一般的に、Current Protocols in Molecular Biology、F.M.Ausubelら編、Current Protocols、Greene Publishing Associates,Inc.およびJohn Wiley & Sons,Inc.の間のジョイントベンチャー(1995 Supplement)(Ausubel)を参照のこと)、比較のために配列の最適なアラインメントを行い得る。
【0018】
配列同一性パーセントおよび配列類似性パーセントを決定するために適当なアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、それらはそれぞれAltschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403−410およびAltschuelら(1977)Nucleic Acids Res.25:3389−3402において記載される。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて、公的に入手可能である。このアルゴリズムは、まず検索配列において短い文字列の長さWを同定することによって、ハイスコア配列ペア(HSP)を同定することを含み、それはデータベース配列の同じ長さの文字列とアラインメントした場合に、いくらかの正の値の閾値スコアTにマッチするまたはそれを満足する。Tは近傍文字列スコア閾値(neighborhood word score threthold)と呼ばれる(Altschulら、前出)。これらの最初の近傍文字列ヒットが、それらを含むより長いHSPを発見するための検索を開始するためのシードとして作用する。次いで累積アラインメントスコアが増加し得る限り、文字列のヒットを各配列に沿って両方向に延長する。累積スコアを、ヌクレオチド配列に関してはパラメーターM(マッチする残基のペアの報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基のペナルティースコア;常に<0)を用いて計算する。アミノ酸配列に関して、累積スコアを計算するために、スコアリングマトリックスを使用する。累積アラインメントスコアが、その最大達成値より量Xだけ減少した場合;1つまたは複数の負のスコア(negative−scoring)の残基アラインメントのために、累積スコアがゼロまたはそれ以下になった場合;またはいずれかの配列の末端に到達した場合、各方向における文字列ヒットの延長を停止する。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXが、アラインメントの感度およびスピードを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列のための)は、11の文字列長さ(W)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、および両方の鎖の比較をデフォルトとして使用する。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、3の文字列長さ(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffおよびHenikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照のこと)をデフォルトとして使用する。
【0019】
配列同一性パーセントを計算することに加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列の間の類似性の統計的分析を行う(例えばKarlinおよびAltschul、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5787(1993)を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最少合計確率(P(N))であり、それは2つのヌクレオチド配列または2つのアミノ酸配列の間のマッチが、偶然によって起こる確率の指標を提供する。例えば、テスト核酸と参照核酸との比較において、もし最少合計確率が、約0.1より低ければ、より具体的には約0.01より低ければ、そして最も具体的には約0.001より低ければ、核酸配列は参照配列と類似しているとみなされる。
【0020】
2つの核酸配列またはタンパク質が、実質的に同一であることのさらなる指標は、下記で記載するように、最初の核酸によってコードされるタンパク質が、2番目の核酸によってコードされるタンパク質と免疫学的に交差反応性であることである。従って、例えば、2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、タンパク質は、典型的には2番目のタンパク質と実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であるという別の指標は、下記で記載するように、ストリンジェントな条件下で2つの分子がお互いにハイブリダイズすることである。
【0021】
「特異的にハイブリダイズする」という語句は、その配列が(例えば全細胞)DNAまたはRNAの複雑な混合物中に存在する場合に、ストリンジェントな条件下で、特定のヌクレオチド配列のみに対する分子の結合、二本鎖形成、またはハイブリダイズを指す。
【0022】
「ストリンジェントな条件」という用語は、プローブがその標的サブシーケンスにハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、そして異なる状況において異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。一般的に、ストリンジェントな条件を、規定されたイオン強度およびpHにおける、特異的配列についての熱的融点(Tm)より約15℃低くなるよう選択する。Tmは、標的配列に相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度(規定されたイオン強度、pH、および核酸濃度において)である。(標的配列は一般的に過剰に存在するので、Tmにおいて、50%のプローブが平衡状態で占有される)。典型的には、ストリンジェントな条件は、pH7.0から8.3において、塩濃度が約1.0MのNaイオンより少なく、典型的には約0.01から1.0MのNaイオン濃度(または他の塩)であり、そして温度が短いプローブ(例えば10から50ヌクレオチド)に関して少なくとも約30℃、そして長いプローブ(例えば50より長いヌクレオチド)に関して少なくとも約60℃であるものである。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような、不安定化剤の添加によって達成し得る。選択的または特異的なハイブリダイゼーションのために、ポジティブなシグナルは、典型的には少なくともバックグラウンドの2倍、より具体的にはそのハイブリダイゼーションはバックグラウンドのハイブリダイゼーションの10倍である。代表的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下のようであり得る:50%のホルムアミド、5×SSC、および1%のSDS、42℃でインキュベート、または5×SSC、1%のSDS、65℃でインキュベート、65℃における0.2×SSC、および0.1%のSDSで洗浄。PCRに関して、約36℃の温度が、低いストリンジェンシーの増幅のために典型的であるが、アニーリング温度は、プライマーの長さに依存して、約32〜48℃の間で変更し得る。高いストリンジェンシーのPCR増幅に関して、約62℃の温度が典型的であるが、高いストリンジェンシーのアニーリング温度は、プライマーの長さおよび特異性に依存して、約50℃から約65℃の範囲であり得る。高いストリンジェンシーの増幅および低いストリンジェンシーの増幅両方のための典型的なサイクル条件は、90〜95℃で30〜120秒間の変性期、30〜120秒間続くアニーリング期、および約72℃で1〜2分間の伸長期を含む。低いストリンジェンシーの増幅反応および高いストリンジェンシーの増幅反応のためのプロトコールおよびガイドラインが、例えばInnisら(1990)PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications、Academic Press、N.Y.において入手可能である。
【0023】
簡便さのための単数形の用語の使用は、決してそのように制限することを意図しない。従って、例えば「ポリペプチド(a polypeptide)」を含む組成物への言及は、1つまたは複数のそのようなポリペプチドへの言及を含む。それに加えて、「抗体(antibody)」への言及は、複数の抗体への言及を含む。さらに、「生物(organism)」への言及は、複数の生物への言及を含む。
【0024】
「増幅プライマー」または「PCRプライマー」という用語の使用は、特異的な核酸配列の増幅のための土台として働き得る、天然または合成いずれかのヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを指す。それらは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーおよびリガーゼ連鎖反応プライマーの両方を含む。
【0025】
「抗体」という用語は、実質的に1つの免疫グロブリン遺伝子または複数の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるポリペプチドを指し、それは1つまたは複数のタンパク質および/または抗原を含むがこれに限らない、組成物中に含まれる特定のタンパク質または抗原と相互作用および結合し得る。
【0026】
「アジュバント」という用語は、免疫系の刺激を引き起こす1つまたは複数の物質として定義される。本出願の文脈において、1つまたは複数の免疫原性組成物抗原/単離物に対する免疫原性反応を増強または刺激するために、アジュバントを使用する。
【0027】
ブタ(pig)またはブタ(swine)という用語は、他に示されなければ、全ての家畜化されたブタ種を含む。
【0028】
合成遺伝子を産生する方法
本発明は、免疫原性特性を有する、新規Lawsoniaタンパク質を提供する。あらゆる現在利用可能なバイオインフォマティクスの適用を、推定タンパク質を決定するために採用し得る。推定Lawsoniaタンパク質配列の細胞の位置を予測するためにそのアルゴリズムを使用し得るコンピュータープログラムを使用して、バイオインフォマティクススクリーニングのさらなる工程を使用した。推定タンパク質の位置および/または機能を予測するいかなるバイオインフォマティクスプログラムも採用し得るが、この目的のためにPSORTを好都合に使用する。そのようなプログラムは、数千の推定Lawsoniaタンパク質のどれが細胞表面に位置し、そして従って潜在的にワクチンにおいて有用であるかに関する情報を得るために有用である。本発明のタンパク質を、配列番号第1〜13番に列挙する。これらのタンパク質をコードする核酸を、配列番号第14〜39番に示す。
【0029】
本発明はさらに、推定遺伝子を合成する次の工程を提供する。遺伝子を、標準的な方法によって合成し得る。一旦得られたら、その配列を次いで当業者に公知の標準的な方法を使用して発現ベクターに挿入する。コドンの使用を、望ましい宿主細胞、例えばE.coliにおいて最適なタンパク質発現を得るために最適化し得ることが認識される。
【0030】
増幅の方法
一旦望ましい配列が同定されたら、PCR増幅を使用して関心のあるポリヌクレオチド配列を調製し得る。PCR増幅を、当該分野において基礎的な技術を有するいかなる人によっても、標準的な方法を用いて行い得る。PCR増幅の多くの方法を行い得、そしてこれらのいずれも本発明のために使用し得る。
【0031】
Lawsonia遺伝子のクローニングの方法
Lawsonia遺伝子を、標準的な組換えDNA技術の方法を用いて、当該分野で基礎的な技術を有するいかなる人によってもクローニングし得る。多くのベクターが、本発明の方法のために十分である。使用される正確なベクターは、本発明に決定的ではない。典型的には、その発現ベクターは、望ましい宿主細胞、例えばE.coliにおいて有効なタンパク質発現を提供するよう選択およびデザインされる。
【0032】
タンパク質の発現および精製
本発明は、新規Lawsoniaポリペプチドの発現および精製のための方法を提供する。タンパク質発現およびタンパク質の精製のための周知の方法論を、本発明において使用し得る。
【0033】
本発明のタンパク質を、E.coli、他の細菌宿主、酵母および昆虫細胞を含む、様々な宿主細胞において発現し得る。その宿主細胞は、例えば酵母細胞、細菌細胞、または糸状真菌細胞のような、微生物であり得る。適当な宿主細胞の例は、多くの他のものの中で、例えばPseudomonas sp.、Escherichia sp.(例えばE.coli)、Bacillusを含む。適当な酵母細胞は、例えばSaccharomyces(例えばS.cerevisiae)およびCandidaを含む、いくつかの属のいずれかのものであり得る。適当な昆虫細胞は、例えばSf9およびHi−5細胞を含む、いくつかの種類のものであり得る。
【0034】
本発明のポリペプチドをコードする合成遺伝子を得た後、これらの合成遺伝子を、望ましい宿主細胞における発現のためにデザインした発現ベクターへクローニングし得る。DNA配列の発現ベクターへのクローニングは、普通および当業者に周知の方法である。あらゆる数の特定の方法およびベクターを採用し得る。そのベクターは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列および望ましい宿主細胞、例えばE.coliにおける発現のために必要なエレメントを含むことのみ必要である。本発明のために使用し得る他の特定のベクターは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列および望ましい昆虫細胞型、例えばSf9またはHi−5における発現のために必要なエレメントを含み得るバキュロウイルスベクターを含む。
【0035】
適当な宿主細胞に入れた場合に、ポリヌクレオチドの発現を促進する遺伝子発現調節シグナルに操作可能に連結した、関心のあるポリヌクレオチドを含む構築物は、「発現カセット」と呼ばれる。本発明のタンパク質をコードする発現カセットは、多くの場合宿主細胞への導入のために発現ベクターに入れる。そのベクターは典型的には、発現カセットに加えて、ベクターが1つまたは複数の選択された宿主細胞において独立に複製することを可能にする核酸配列を含む。一般的に、この配列は、ベクターが宿主染色体DNAと独立に複製することを可能にするものであり、そして複製起点または自己複製配列を含む。そのような配列は、様々な細菌に関して周知である。例えば、プラスミドpBR322由来の複製起点は、ほとんどのグラム陰性細菌に適当である。あるいは、そのベクターは、宿主細胞ゲノム相補鎖に組み込まれ、細胞がDNA複製を行うときに複製されることによって複製し得る。
【0036】
選択可能マーカーが、多くの場合、本発明のポリヌクレオチドを発現するために使用される発現ベクターへ組み込まれる。これらの遺伝子は、選択培地において増殖する形質転換した宿主細胞の生存または増殖のために必要な、タンパク質などの遺伝子産物をコードし得る。選択遺伝子を含むベクターで形質転換されなかった宿主細胞は、その培地において生存しない。典型的な選択遺伝子は、アンピシリン、ネオマイシン、カナマイシン、クロラムフェニコール、またはテトラサイクリンのような、抗生物質または他の毒素に対する抵抗性を与えるタンパク質をコードする。あるいは、選択可能マーカーは、栄養要求性の欠損を補完する、または複合培地から入手可能でない決定的な栄養素を供給するタンパク質をコードし得る。多くの場合、そのベクターは、例えばE.coli、または他の細胞において機能的である1つの選択可能マーカーを有し、そこでベクターは宿主細胞へ導入される前に複製される。いくつかの選択可能マーカーが、当業者に公知である。
【0037】
そのタンパク質の発現を、誘導性プロモーターを含むベクターを選択することによって誘導し得る。例えば、IPTG誘導性ベクター(pMAL−c2XおよびpET−23a(+))を採用し、E.coliへ形質転換し、そして発現をIPTGによって誘導し得る。これらの方法は周知であり、そしてタンパク質発現のために高度に有用であることが示されている。
【0038】
いくつかの実施態様において、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を、タンパク質の発現を最適化するために、望ましい宿主におけるコドン使用に関して最適化する。例えば、もとのLawsoniaゲノムポリヌクレオチド配列を、配列番号第27〜39番として列挙する;これらの核酸配列のE.coliコドン最適化変異体を、配列番号第14〜26番として列挙する。
【0039】
発現したタンパク質の検出および精製の方法
本発明のタンパク質を、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等を含む、当該分野において標準的な方法によって精製し得る(一般的に、R.Scopes、Protein Purification、Springer−Verlag、N.Y.(1982)、Deutscher、Methods in Enzymology 第182巻:Guide to Protein Purification、Academic Press,Inc.、N.Y.(1990)を参照のこと)。少なくとも約70%から90%の均一性の、実質的に純粋な組成物を想定し、そしてより具体的には98から99%を想定する。
【0040】
精製を促進するために、タンパク質をコードする核酸はまた、アフィニティー結合試薬が利用可能であるエピトープまたは「タグ」、すなわち精製タグのコーディング配列を含み得る。適当なエピトープの例は、mycおよびV−5リポーター遺伝子を含む;これらのエピトープを有する融合タンパク質の組換え産生に有用な発現ベクターは、市販されている(例えばInvitrogen(Carlsbad CA)ベクターpcDNA3.1/Myc−HisおよびpcDNA3.1/V5−Hisが、哺乳類細胞における発現に適当である)。本発明のタンパク質にタグを結合するために適当なさらなる発現ベクター、および対応する検出システムは、当業者に公知であり、そしていくつかが市販されている(例えば「FLAG」(Kodak、Rochester NY)。適当なタグの別の例は、ポリヒスチジン配列であり、それは金属キレートアフィニティーリガンドに結合し得る。典型的には、6個の隣接するヒスチジンを使用するが、6個より多くをまたは6個未満を使用し得る。ポリヒスチジンタグの結合部分として働き得る適当な金属キレートアフィニティーリガンドは、ニトリロ三酢酸(NTA)を含む(Genetic Engineering:Principles and Methods、J.K.Setlow編、Plenum Press、NYのHochuli,E.(1990)「Purification of recombinant proteins with metal chelating adsorbents」;Qiagen(Santa Clarita、CA)から市販されている)。
【0041】
精製タグはまた、マルトース結合ドメインおよびデンプン結合ドメインを含む。マルトース結合ドメインタンパク質の精製は、当業者に公知である。デンプン結合ドメインは、本明細書中で参考文献に組み込まれる、WO99/15636において記載される。ベータシクロデキストリン(betacylodextrin)(BCD)−誘導体化樹脂を用いた、デンプン結合ドメインを含む融合タンパク質のアフィニティー精製が、本明細書中でその全体として参考文献に組み込まれる、2003年5月5日に出願されたUSSN60/468,374において記載される。
【0042】
タグとして使用するために適当な他のハプテンは、当業者に公知であり、そして例えばHandbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(第6版、Molecular Probes,Inc.、Eugene OR)において記載される。例えば、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン、バルビツール酸塩(例えば米国特許第5,414,085号を参照のこと)、およびいくつかの型のフルオロフォアが、ハプテンとして有用であり、これらの化合物の誘導体も同様である。ハプテンおよび他の部分をタンパク質および他の分子に結合するためのキットが、市販されている。例えば、ハプテンがチオールを含む場合、SMCCのようなヘテロ二官能性リンカーを使用して、タグを捕捉試薬に存在するリシン残基に結合し得る。
【0043】
当業者は、その免疫原性活性を減少させることなく、本発明のタンパク質に改変を行い得ることを認識する。いくつかの改変を、クローニングまたは発現を促進するために行い得る。そのような改変は当業者に周知であり、そして例えば、例えばアミノ末端に追加して開始部位を提供するメチオニンを提供するための、ポリヌクレオチドのいずれかの末端におけるコドンの追加、または好都合に位置する制限酵素部位または終止コドンまたは精製配列を作成するためにいずれかの末端に置かれたさらなるアミノ酸(例えばポリHis)を含む。
【0044】
ワクチン組成物および使用:
本発明のタンパク質免疫原を、当業者に公知の様々な方法を使用して、E.coliなどの発現宿主から発現、濃縮、および精製し得る。精製タンパク質免疫原を、免疫学的に有効な量の1つまたは複数の本発明のタンパク質、および適当な薬学的担体を含むワクチンへ処方し得る。従って、本発明のタンパク質を、単一の組成物または複数の組成物のいずれかで、個々にまたは組み合わせて投与し得る。処方されたワクチンを、薬学的に許容可能なアジュバントと組み合わせ得る。処方されたワクチンは、水性溶液、懸濁液、またはエマルションであり得る。本発明のワクチンにおける各免疫原の免疫学的に有効な量は、過度の実験無しに、当該分野で公知の方法によって決定可能である。本発明の特定の実施態様において、各免疫原の一般的な量は、5μgおよび500μgの間の精製タンパク質である。本発明の特定の実施態様において、その量は10μgおよび250μgの間である。さらにより特定の本発明の実施態様において、その量は50μgおよび200μgの間の各タンパク質である。
【0045】
そのアジュバントは、あらゆる薬学的に許容可能なアジュバントであり得る。いくつかの実施態様において、そのアジュバントは水酸化アルミニウムである。他のものにおいて、そのアジュバントはリン酸アルミニウムである。さらに別の実施態様において、そのアジュバントはEmunade(登録商標)である。Emunade(登録商標)は、油、水および水酸化アルミニウムの組み合わせから成るアジュバントである。さらに別の実施態様において、そのアジュバントはQuilAである。さらに別の実施態様において、そのアジュバントはQuilAプラスコレステロールである。
【0046】
いくつかの実施態様において、ISCOMをアジュバントとして使用する。ISCOMは、免疫刺激複合体のアクロニムであり、そしてその技術はMoreinら(Nature 308:457−460(1984))によって記載された。ISCOMは以下のように形成される。ポリペプチドを、非イオン性界面活性剤(例えばMega−9、TritonX−100、オクチルグルコシド、ジギトニン、NonidetP−40、C12、Lubrol、Tween−80)を用いるような、標準的な方法を使用して可溶化する。脂質混合物を加えて、ISCOMの形成を補助する。その脂質混合物は、ホスファチジルコリンおよび合成コレステロールを含み得る。いくつかの実施態様において、その混合物をまず、撹拌しながら室温において非イオン性界面活性剤で処理し、次いでその脂質混合物(例えば等量のホスファチジルコリンおよびコレステロール)を加え、そして撹拌を続ける。QuilA(サポニンの精製グリコシド)をポリペプチド組成物に加え、そして撹拌を続ける。次いで非イオン性界面活性剤を除去する(例えば酢酸アンモニウムによるダイアフィルトレーションによって)。ISCOMのマトリクスが、QuilAによって形成される。電子顕微鏡で見たISCOM粒子の形態は、サイズが約35nmの典型的なかご様の構造を示す。ISCOM形成段階を、タンジェンシャルフローダイアフィルトレーションの使用によって精密にし得る。ISCOMは、QuilAの臨界濃度において自発的にミセルを形成する能力に基づいて、および精製抗原を捕捉する疎水性/親水性結合によって、精製抗原を多量体の形態で提示する。ISCOMの形成を、典型的なかご様の構造が形成されたことを確認するために電子顕微鏡によって確認し得る。QuilAを、約0.01から0.1%の最終濃度を与えるために加え得る。いくつかの実施態様において、最終濃度は約0.05%である。
【0047】
本発明のタンパク質およびアジュバントを含む組成物を、以下の標準的な方法の1つによって投与し得る:乱刺、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内、鼻腔内投与、または経口投与。特定の実施態様において、1つまたは複数の本発明のポリペプチドを含む組成物を、筋肉内注射によって投与する。本発明の典型的な実施態様において、そのポリペプチドを、10μgおよび1000μgの間の用量で投与する。別の実施態様において、そのポリペプチドを、10μgおよび500μgの間の用量で投与する。さらに別の実施態様において、そのポリペプチドを、100μgおよび250μgの間の用量で投与する。
【0048】
1つまたは複数の本発明のポリペプチドを含む組成物の投与後に、保護的免疫反応を引き出すことにおけるその組成物の投与の有効性を調査し得る。
【0049】
本発明のさらなる実施態様は、本発明のポリヌクレオチドを含む組成物を提供する。本発明は、ウイルスベクターゲノムへ挿入された外来性DNA配列を含む組換えウイルスベクターを提供する。本発明によって企図されるウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、ブタポックスウイルス、PRRSウイルスベクターおよび仮性狂犬病ウイルスベクターから成るが、これに限らない。他の実施態様において、本発明は、細菌ベクターゲノムに挿入された外来性DNA配列を含む細菌ベクターを提供する。本発明によって企図される細菌ベクターは、Salmonella cholerasuisベクター、Salmonella typhimuriumベクター、E.coliベクター、およびLactobacillusベクターを含むがこれに限らない。配列番号第27〜39番として列挙される、本発明のポリヌクレオチドを、当業者に周知の標準的な手順によって、ウイルスベクターまたは細菌ベクターへ組換え的に挿入し得る。別の特定の実施態様において、その組換えウイルスベクターは、その組換えベクターが投与された動物において複製し得る。特定の実施態様において、そのベクターは上記で列挙したものの1つである;しかし、これは網羅的なリストではなく、そして動物において発現し得るあらゆるベクターの使用が、本発明によって企図される。
【0050】
本発明はさらに、配列番号第27〜39番において列挙するような、Lawsonia由来の外来性DNA配列、またはポリペプチドをコードするこれらの配列由来の外来性RNAを提供する。特定の実施態様において、本発明のポリヌクレオチドを、ウイルスベクターまたは細菌ベクターのオープンリーディングフレーム(ORF)へ組換え的に挿入する。本発明の目的のために、ORFは、RNAへ転写され得る、そしてさらにアミノ酸配列またはポリペプチドへ翻訳され得るコドンを含む、組換えベクターのDNAの部分として定義される;ORFは終止コドンを含まない。本発明の組換えベクターはまた、プロモーターを含む。本発明の目的のために、プロモーターは、RNAポリメラーゼが結合し、そしてそこで外来性および/または組換え的に挿入されたDNA配列の転写が開始する、組換えDNAベクターの特定のDNA配列として定義される。特定の実施態様において、そのポリヌクレオチド配列は、プロモーターの制御下にある。
【0051】
1つの実施態様において、組換えベクターから転写されたRNAから翻訳されたLawsoniaポリペプチドは、それが発現する動物において、免疫原性的に活性な抗原である。より特定の実施態様において、このポリペプチドは、上記動物において抗体の産生を誘導し得る。さらにより特定の本発明の実施態様において、上記動物はブタである。
【0052】
本発明はさらに、複製可能であり、そしてLawsonina由来である抗原性ポリペプチドをコードする、配列番号第27〜39番で列挙されたような外来性DNAポリヌクレオチドを含む、組換えアデノウイルスベクターを提供する。本発明はさらに、Lawsonia由来である、配列番号第1〜13番で列挙されたような、抗原性ポリペプチドをコードする外来性DNAポリヌクレオチドを含む、複製可能な組換えアデノウイルスベクターを提供する。
【0053】
本発明はさらに、複製可能であり、そしてLawsonia由来である抗原性ポリペプチドをコードする、配列番号第27〜39番で列挙されたような、外来性DNAポリヌクレオチドを含む、組換えブタポックスウイルスベクターを提供する。本発明はさらに、Lawsonia由来である、配列番号第1〜13番で列挙されたような、抗原性ポリペプチドをコードする外来性DNAポリヌクレオチドを含む、複製可能な組換えブタポックスウイルスベクターを提供する。
【0054】
本発明はさらに、複製可能であり、そしてLawsonia由来である抗原性ポリペプチドをコードする、配列番号第27〜39番で列挙されたような、外来性DNAポリヌクレオチドを含む、組換えPRRSウイルスベクターを提供する。本発明はさらに、Lawsonia由来である、配列番号第1〜13番で列挙されたような、抗原性ポリペプチドをコードする外来性DNAポリヌクレオチドを含む、複製可能な組換えPRRSウイルスベクターを提供する。
【0055】
本発明はさらに、複製可能であり、そしてLawsonia由来である抗原性ポリペプチドをコードする、配列番号第27〜39番で列挙されたような、外来性DNAポリヌクレオチドを含む、組換え仮性狂犬病ウイルスベクターを提供する。本発明はさらに、Lawsonia由来である、配列番号第1〜13番で列挙されたような、抗原性ポリペプチドをコードする外来性DNAポリヌクレオチドを含む、複製可能な組換え仮性狂犬病ウイルスベクターを提供する。
【0056】
本発明はさらに、Lawsonia由来である抗原性ポリペプチドをコードする、配列番号第27〜39番で列挙されたような、外来性DNAポリヌクレオチドを含む、組換えSalmonella cholerasuisベクターを提供する。本発明はさらに、Lawsonia由来である、配列番号第1〜13番で列挙されたような、抗原性ポリペプチドをコードする外来性DNAポリヌクレオチドを含む、組換えSalmonella cholerasuisベクターを提供する。
【0057】
本発明はさらに、Lawsonia由来である抗原性ポリペプチドをコードする、配列番号第27〜39番で列挙されたような、外来性DNAポリヌクレオチドを含む、組換えSalmonella typhimuriumベクターを提供する。本発明はさらに、Lawsonia由来である、配列番号第1〜13番で列挙されたような、抗原性ポリペプチドをコードする外来性DNAポリヌクレオチドを含む、組換えSalmonella typhimuriumベクターを提供する。
【0058】
本発明はさらに、Lawsonia由来である抗原性ポリペプチドをコードする、配列番号第27〜39番で列挙されたような、外来性DNAポリヌクレオチドを含む、組換えE.coliベクターを提供する。いくつかの実施態様において、E.coliにおける発現のために最適化された、配列番号第14〜26番を使用する。本発明はさらに、Lawsonia由来である、配列番号第1〜13番で列挙されたような、抗原性ポリペプチドをコードする外来性DNAポリヌクレオチドを含む、組換えE.coliベクターを提供する。
【0059】
本発明はさらに、Lawsonia由来である抗原性ポリペプチドをコードする、配列番号第27〜39番で列挙されたような、外来性DNAポリヌクレオチドを含む、組換えLactobacillusベクターを提供する。本発明はさらに、Lawsonia由来である、配列番号第1〜13番で列挙されたような、抗原性ポリペプチドをコードする外来性DNAポリヌクレオチドを含む、組換えLactobacillusベクターを提供する。
【0060】
ベクター免疫原を含むポリヌクレオチドを、免疫学的に有効な量の1つまたは複数の本発明のポリヌクレオチドベクターおよび適当な薬学的担体を含むワクチンへ処方し得る。従って、本発明のポリヌクレオチドを、個々に、または単一の組成物または複数の組成物のいずれかにおいて組み合わせて投与し得る。処方されたワクチンを、薬学的に許容可能なアジュバントと組み合わせ得る。処方されたワクチンは、水性溶液、懸濁液、またはエマルションであり得る。本発明のワクチンにおける各免疫原の免疫学的に有効な量は、過度の実験無しに、当該分野で公知の方法によって決定し得る。本発明のポリヌクレオチド免疫原を、ウイルス粒子または細菌粒子として投与し得る。特定の実施態様において、本発明のポリヌクレオチド配列を含むウイルス粒子または細菌粒子を、用量あたり10から10粒子の濃度で投与し得る。より特定の実施態様において、本発明のポリヌクレオチド配列を含むウイルス粒子または細菌粒子を、用量あたり10から10粒子の濃度で投与し得る。さらにより特定の実施態様において、本発明のポリヌクレオチド配列を含むウイルス粒子または細菌粒子を、用量あたり10から10粒子の濃度で投与し得る。
【0061】
本発明の免疫原性組成物はまた、ウイルスベクターまたは細菌ベクターの非存在下で、免疫原性ポリペプチドをコードする核酸を含み得る。例えばWolffら(1990)Science 247:1465−1468;米国特許第5,580,859;5,589,466;5,804,566;5,739,118;5,736,524;5,679,647号;およびWO98/04720を参照のこと。DNAに基づく送達技術の例は、「裸のDNA」、促進された(ブピバカイン(bupivicaine)、ポリマー、ペプチドによる)送達、陽イオン性脂質複合体、および粒子による(「遺伝子銃」)、または圧による送達(例えば米国特許第5,922,687号を参照のこと)を含む。
【0062】
本発明の別の実施態様において、各ポリヌクレオチド免疫原の一般的な量は、用量あたり1μgおよび1000μgの間の各ポリヌクレオチドである。本発明の特定の実施態様において、その量は用量あたり10μgおよび500μgの間の各ポリヌクレオチドである。さらにより特定の本発明の実施態様において、その量は用量あたり25μgおよび250μgの間の各ポリヌクレオチドである。
【0063】
有効性の1つの簡便な尺度は、コントロール動物に対するワクチン接種動物の、有病率および回腸の肉眼的および顕微鏡的病変の重症度の有意な(p<0.05)減少に基づく。例えば、ワクチン接種動物およびコントロール動物の間の回腸病変スコアにおける有意な減少(t−検定、p<0.05)は、有効性の1つの有用な尺度である。さらに、冒された回腸組織の免疫組織化学的染色によって決定された、コントロールに対するワクチン接種動物のコロニー形成における有意な減少も検出し得る。そのようなアッセイを行う方法は周知である。
【0064】
本発明はまた、本発明の免疫原および、Mycoplasma Hyopneumoniae、Erysipelas spp、salmonella、H.parasuis、clostridium spp、streptoccous suis、brachyspira spp、bordetella、pasteurella、E.coli、コロナウイルス、パルボウイルス、PRRS、サーコウイルス、およびSIVを含むがこれに限らない、他の病原体の少なくとも1つの抗原性成分を含む混合ワクチン(combination vaccine)を含む。
【0065】
本発明のワクチンを、乱刺、筋肉内、皮下、鼻腔内、腹腔内、または経口方法を含むがこれに限らない、様々な方法を用いて動物に投与し得る。
【0066】
本発明の別の実施態様において、その免疫原性組成物は、「バクテリン」と名付けられた不活化細菌を含み得る。不活化の方法は、本発明にとって決定的ではない。混入物質または干渉物質が除去された後に不活化が起こり得る。不活化は、公知の不活化薬剤の使用を含み得る。そのような不活化薬剤は、UV照射、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、バイナリーエチレンイミン(BEI)、およびベータプロピオラクトンを含むがこれに限らない。いくつかの実施態様において、BEIはウイルスタンパク質を損傷せずにウイルス核酸を破壊することが公知であるので、BEIを使用する。それに加えて、BEIはタンパク質含有量および温度に影響されない。不活化薬剤を、溶液中の全ての細菌を不活化するのに十分な高い濃度で使用する。例えば、BEIを約0.5mMおよび10mMの間の最終濃度で使用し得る。得られた不活化細菌が依然として免疫原性であることを保証するためにpHおよび温度を選択し得る。不活化は、その薬剤が溶液中の全ての細菌粒子と接触することを保証するために、適当な量の撹拌によって進行し得る。
【0067】
不活化後、不活化薬剤を、不活化薬剤の不活化、不活化薬剤の沈殿、不活化薬剤のろ過、およびクロマトグラフィーを含むがこれに限らない方法、またはこれらの方法の混合を用いて除去し得る。例えば、BEIを、チオ硫酸ナトリウムの添加によって不活化し得る。残留BEIをまた、サイズ排除法を用いて細菌から分離し得る。
【0068】
血清学的反応の検出
その免疫原性組成物が、血清学的反応を誘導するかどうかを同定する方法も、当該分野で周知である。例えば、テスト動物に、免疫原性組成物/ワクチンを注射し、そして血清中の抗ウイルス抗体を同定し得る。その免疫原性組成物が保護的であるかどうかを同定する方法が、当該分野において周知であり、そしてその免疫原性組成物によるテスト動物の免疫、続く疾患を引き起こすウイルスの接種、および疾患の症状の存在または欠如の同定を含む。
【0069】
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドをまた、生物学的サンプルにおけるLawsoniaの検出のための診断的適用において使用し得る。寄生虫の存在を、免疫学的結果に基づいて、いくつかのよく認識された特異的結合アッセイを用いて検出し得る。例えば、本発明のポリペプチドに対する標識化モノクローナル抗体を使用して、生物学的サンプルにおけるLawsoniaを検出し得る。あるいは、本発明の標識化ポリペプチドを使用して、生物学的サンプルにおけるLawsonia抗原に対する抗体の存在を検出し得る。そのサンプルは、血液、尿、腸管粘膜、または抗体を含んでいる可能性のある他のあらゆる体液であり得る。
【0070】
多くのアッセイ形式が、標識化アッセイ成分を採用する。標識システムは、様々な形態であり得る。その標識を、当該分野において周知の方法によって、アッセイの望ましい成分に直接または間接的に結合し得る。広く様々な標識を使用し得る。いくつかの方法のいずれか1つによって、その成分を標識化し得る。検出の最もよくある方法は、3H、125I、35S、14C、または32P標識化合物等によるオートラジオグラフィーの使用である。非放射性標識は、標識抗体に結合するリガンド、フルオロフォア、化学発光薬剤、酵素、および標識リガンドの特異的結合ペアメンバーとして働き得る抗体を含む。標識の選択は、必要な感度、化合物との結合の容易さ、安定性の必要条件、および利用可能な計測手段に依存する。
【0071】
Lawsoniaに対する抗体の存在を、ウェスタンブロット、ELISA等のような周知の技術を用いて測定し得る。従って本発明のポリペプチドをまた、これらの技術を用いて動物におけるLawsonia感染を検出するために使用し得る。
【実施例】
【0072】
以下の実施例を本特許請求される発明を制限するためでなく、説明のために提供する。
【0073】
実施例1:合成遺伝子を産生する方法
本発明は、ゲノムDNAに基づいてタンパク質配列を予測する方法を提供する。本発明はさらに、前述の予測タンパク質の抗原の有用性を予測する方法を提供する。本発明によって包含される方法の前に、Lawsonia intracellularis染色体およびプラスミドの完全なDNA配列を決定し、そしてGenbankに電子的に寄託した。可能性のある保護的抗原を同定するために、バイオインフォマティクスの方法を、公開されたLawsonniaゲノムDNA配列およびプラスミドDNA配列に適用した。
【0074】
Kapurらは以前に、Lawsoniaタンパク質配列を予測するために、推定または仮説のオープンリーディングフレームを得るためのバイオインフォマティクスアプローチの使用を報告した(US2006/0024696)。本発明はさらに、発見された仮説のタンパク質の検証の方法を提供する。推定または仮説のLawsoniaタンパク質の細胞の位置を決定するために、プログラムPSORTを使用した。PSORTプログラムは、タンパク質における局在化シグナルを認識することによって機能し、そして所定のタンパク質を、細胞内(すなわち細胞の細胞質内)に、細胞質膜に、外膜に、または複数の位置において見出し得るかどうかに関して情報を提供する。従って、以前の方法をPSORTと組み合わせて、潜在的に免疫原性である配列を得た。
【0075】
バイオインフォマティクス方法論から得られた推定アミノ酸配列に基づいて、13個の候補遺伝子を、Center for Biological Analysis CBSのソフトウェア、Signal P3.0を用いて分析した。そのソフトウェアは、シグナル配列切断点の可能性の高い位置の同定を可能にする。提唱された推定シグナル配列を欠く推定成熟Lawsoniaタンパク質配列を、DNA2.0,Inc.(Menlo Park、CA、USA)に提供した。次いでE.coliにおける発現のためにコドン使用を最適化して、各遺伝子をコードするDNAを合成した。これらの合成Lawsonia遺伝子を、次いでInvitrogen Gateway Entry Vector、pDONR221にクローニングした。全ての合成遺伝子構築物を、両方の鎖について配列決定し、正確性を保証した。
【0076】
実施例2:PCR増幅の方法
前述の方法を使用して、13個の推定タンパク質配列をさらなる分析のために選択した。13個のアミノ酸配列をコードするDNAを単離し、そしてポリメラーゼ連鎖反応方法論によって増幅した。13個の推定タンパク質配列をコードするDNAの増幅のために、2つのPCR反応を採用した。
【0077】
PCR増幅反応を、KOD Hot Start DNA Polymerase(Novagen)を用いて、100ngの鋳型DNA(配列番号第14〜26番に列挙した合成遺伝子配列)、15pMの各プライマー、それぞれ0.2mMのdATP、dGTP、dCTP、およびdTTP、および1mMのMgSOを含む50μLの反応混合物において、加熱および冷却の35回サイクルによって行った。遺伝子の増幅のために使用した全てのプライマーは、配列番号第40〜65番に列挙した配列に含まれる。
【0078】
PCR増幅を、Accu−Primer GC Rich DNA Polymerase(Invitrogen)を用いて、200〜500ngの鋳型DNA(配列番号第14〜26番で列挙した合成遺伝子配列)、10pMの各プライマー、それぞれ0.2mMのdATP、dGTP、dCTP、およびdTTP、および1.5mMのMgSOを含む50μLの反応混合物において、加熱および冷却の30回サイクルによって行った。遺伝子の増幅のために使用した全てのプライマーは、配列番号第40〜65番に列挙した配列に含まれる。
【0079】
実施例3:Lawsonia遺伝子のクローニング
pUEX2−M3へのクローニングのために、プラスミドpDONR−G07501から単離されたPacI/BamHI断片を、EcoRIで消化し、そして得られたEcoRI/BamHI断片を、QIAquick スピンカラム(QIAGEN、Valencia、CA)を用いて、2.0%アガロースゲルから精製した。合成Lawsonia遺伝子Law0460−PEBP(配列番号第23番)を含む精製DNA断片を、次いでpUEX2−M3プラスミドのEcoRI/BamHI部位へ挿入した。2つの相補的な合成オリゴマーを一緒にアニーリングすることによって産生した、N末端Hisタグを、EcoRI部位においてこのプラスミドに加えた。配列リストは、Hisタグアダプターを作成するために使用した2つのDNAオリゴマーの配列を、配列番号第66〜67番として含む。
【0080】
pET−23a(+)またはpMAL−c2Xプラスミドベクターのいずれかへのクローニングのために、合成Lawsonia遺伝子PCR産物を、まずQIAEXII Gel Extraction KitまたはQIAquickスピンカラム(QIAGEN、Valencia、CA)の使用によって、1.0−2.0%アガロースゲルから精製し、次いでBglIIまたはBamHIおよびHindIIIのいずれかで消化し、そしていずれかのプラスミドベクターのBamHI/HindIII部位へ挿入した(表1)。これの1つの例外は、内部HindIII部位を含むLaw0050−AsmA(配列番号第19番)であり、従ってPCR産物をBglIIおよびXbaIで消化し、そしてプラスミドベクターのBamHI/XbaI部位へ挿入した。
【0081】
この過程は、13個の発現プラスミドを産生した。これらのプラスミドを、DNA配列決定によって確認した。pET−23a(+)およびpUEX2−M3/Hisによって発現される組換えタンパク質は、それぞれC末端またはN末端に6個のヒスチジン残基を有するHisタグタンパク質である。pMAL−c2Xによって発現される組換えタンパク質は、N末端にマルトース結合タンパク質(MBP)タグを有する。
【0082】
実施例4:タンパク質の発現および精製
E.coli株BL21(DE3)/pLysSのコンピテント細胞を、Novagen(San Diego、CA、USA)から購入した。コンピテントE.coli株DH5αおよびTOP10を、Invitrogenから購入した。合成Lawsonia遺伝子を、InvitrogenのGATEWAYエントリープラスミド、pDONR221へクローニングし、そしてInvitrogenのE.coli株OmniMAX2 T1 Phage−Resistant(T1)中で増殖させた。発現プラスミドpMAL−c2XおよびpET−23a(+)を、それぞれNew England BiolabsおよびNovagenから購入した。発現プラスミドpUEX2−M3を、Biostar Inc.(Saskatoon、Saskatchewan、Canada)から得た。
【0083】
Luria Bertani(LB)肉汁培地を、標準的な手順に従って調製した。LBプレートを、imMedia Amp(またはKan)Agar(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)から調製した。カルベニシリン二ナトリウム塩、カナマイシン硫酸塩、およびイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を、Thermo Fisher Scientific Inc.(Pittsburgh、PA、USA)から購入した。全ての制限エンドヌクレアーゼ、およびDNAリガーゼを、New England Biolabs(Ipswich、MA、USA)から購入した。
【0084】
pMAL−c2Xから得られた発現プラスミドを、E.coli TOP10株へ形質転換した。細胞を、37℃で、LB培地中で一晩増殖させた。100g/mLのカルベニシリンを含む、LB培地を含むフラスコに、一晩培養物の1/40容量を播種し、そして600nmにおける吸光度が0.6から0.8に達するまで、37℃でインキュベートした。IPTGを、0.25mMの最終濃度まで加え、そしてインキュベーションを30℃で2〜4時間続けた。7000×gで10分間の遠心によって、各タンパク質に関して2から3リットルの細胞を回収し、そして250〜300mLの緩衝化食塩水溶液に再懸濁した。細胞を、APVホモジナイザーによって破壊した。サンプルを12,000×gで10分間遠心分離して、可溶性画分および不溶性画分を分離した。次いで、緩衝化食塩水溶液で平衡化した、Amylose Resin(NEB、Ipswich、MA)を、可溶性画分へ加えた。その溶液を4℃で1〜20時間混合した後、その樹脂をカラムに詰め、そして20カラム容積の緩衝化食塩水で洗浄した。10mMのマルトースを含む緩衝化生理食塩水の使用によって、組換えタンパク質をカラムから溶出した。
【0085】
pET−23a(+)から誘導された発現プラスミドを、E.coli BL21(DE3)pLysS株へ形質転換した。細胞を、37℃で、LB培地中で一晩増殖させた。100g/mLのカルベニシリンを含む、LB培地を含むフラスコに、一晩培養物の1/40容量を播種し、そして600nmにおける吸光度が0.6から0.8に達するまで、37℃でインキュベートした。IPTGを、0.25mMの最終濃度まで加え、そしてインキュベーションを30℃で2〜4時間続けた。DH5α E.coli株へ形質転換した、pUEX2−M3/His−G07501プラスミドを、同様の方式で増殖させ、そして次いで42℃で2〜3時間誘導した。7000×gで10分間の遠心分離によって、各タンパク質に関して2から3リットルの細胞を回収し、そして250〜300mLのLysis緩衝液(50mMのリン酸塩緩衝液、pH8.0、300mMのNaCl、10mMのイミダゾール)に再懸濁した。細胞を、APVホモジナイザーによって破壊した。サンプルを12,000×gで10分間遠心分離して、可溶性画分および不溶性画分を分離した。次いで、Lysis緩衝液で平衡化した、Ni−NTA Superflow アガロースビーズ(QIAGEN)を可溶性画分に加えた。その溶液を4℃で1〜20時間混合した後、その樹脂をカラムに詰め、そして20カラム容積のWash緩衝液(50mMのリン酸塩緩衝液、pH8.0、300mMのNaCl、20mMのイミダゾール)で洗浄した。Elution緩衝液(50mMのリン酸塩緩衝液、pH8.0、300mMのNaCl、250mMのイミダゾール)の使用によって、その組換えタンパク質をカラムから溶出した。
【0086】
本発明の13個のLawsonia遺伝子を、E.coli株TOP10、BL21(DE3)pLysSまたはDH5αでうまく発現させた。組換えタンパク質のうちの9個が、可溶性タンパク質として発現した(表1)。発現した組換えタンパク質のうちの2つ、Law0033−OstA(配列番号第1番)およびLaw C046−SLH(配列番号第4番)は部分的に可溶性であり、そして2つ、Law005−AsmA(配列番号第6番)およびLaw0043−PtfH(配列番号第8番)は不溶性である。タンパク質のサイズおよび精製タグの型を、表1に列挙する。ウェスタン分析は、13個のタンパク質のうち5個が、ブタ抗Lawsonia血清と反応したことを示した。ウェスタンブロット分析に基づいて、ブタ抗Lawsonia血清と相互作用した5個のタンパク質は、Law0691−PAL(配列番号第2番)、Law0995−OPRM(配列番号第3番)、Law0147−SlyB(配列番号第5番)、Law1082−FeoA(配列番号第10番)、およびLaw0460−PEBP(配列番号第11番)であった。
【0087】
【表1】

実施例5:発現したタンパク質の検出方法
βメルカプトエタノールの存在下で、NuPAGE LDS Sample Buffer(Invitrogen)と共に10分間沸騰させた組換えタンパク質を、4%から12%のNuPAGE Bis−Trisゲル(Invitrogen)を用いて、200ボルトで35分間、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)にかけた。そのゲルを、SimplyBlueTM Safe Stain(Invitrogen)で染色した、または0.2ポアサイズのニトロセルロース膜(Invitrogen)に移し、そしてブタ抗Lawsonia血清、ウサギ抗マルトース結合タンパク質血清プラスホスファターゼ標識ヤギ抗ウサギ血清、ペルオキシダーゼ標識マウス抗His血清、またはホスファターゼ標識マウス抗His(C−term)血清と反応させた。
【0088】
マウスモノクローナル抗His(Cterm)抗体を、Invitrogenから得た。ペルオキシダーゼ標識マウスモノクローナル抗His抗体を、Roche Applied Science(Indianapolis、IN、USA)から得た。ウサギ抗マルトース結合タンパク質抗体を、New England Biolabsから得た。ホスファターゼ標識ヤギ抗ウサギ血清を、Kirkegaard & Perry Laboratories,Inc.(Gaithersburg、MD、USA)から得た。ブタ抗Lawsonia血清を、当業者に利用可能な標準的な方法によって、研究室内で調製した。
【0089】
実施例6:ワクチン組成物および使用
本発明のタンパク質免疫原を、当該分野で公知の様々な方法を使用して、E.coliのような発現宿主から、発現、濃縮、および精製した。精製したタンパク質免疫原を、免疫学的に有効な量の各免疫原および適当な薬学的担体を含むワクチンへ処方し得る。処方されたワクチンを、アジュバントと組み合わせ得る。処方されたワクチンは、水性溶液、懸濁液、またはエマルションであり得る。本発明のワクチンにおける各免疫原の免疫学的に有効な量は、過度の実験無しに、当該分野で公知の方法によって決定し得る。本発明の特定の実施態様において、各免疫原の一般的な量は、5μgおよび500μgの間の精製タンパク質である。本発明の特定の実施態様において、その量は10μgおよび250μgの間である。さらにより特定の本発明の実施態様において、その量は50μgおよび200μgの間の各タンパク質である。
【0090】
本発明はまた、本発明の免疫原、およびMycoplasma Hyopneumoniae、Erysipelas spp、salmonella、H.parasuis、clostridium spp、streptoccous suis、brachyspira spp、bordetella、pasteurella、E.coli、コロナウイルス、パルボウイルス、PRRS、サーコウイルス、およびSIVを含むがこれに限らない、他の病原体の少なくとも1つの抗原性成分を含む、混合ワクチンを含む。
【0091】
本発明のワクチンを、乱刺、筋肉内、皮下、鼻腔内、腹腔内、または経口法を含むがこれに限らない、様々な方法を使用して動物に投与し得る。
【0092】
実施例7:ワクチン接種調査の結果
毒性のLawsonia微生物による死滅化ワクチン(killed vaccine)が、Lawsoniaによって引き起こされる疾患に対して保護を提供し得るかどうかを試験するために、ブタにおいて調査を行った。この調査において、細菌の調製のために使用したLawsonia生物を、当該分野で確立した方法を用いて、T−175cmフラスコにおいて、マウス線維芽細胞(McCoy’s)細胞系において増殖させた(例えばLawsonら、Gebhartら)。当該分野で記載されたように、細菌を感染McCoy細胞から回収し、そして生きた細菌を、バイナリーエチレンイミン(BEI)の添加によって不活化し、そして次いでEmunade(登録商標)アジュバント中で処方した。不活化細菌を、2つの用量レベル;用量あたり1×10および5×10細菌で試験した。有効性の主な尺度は、コントロール動物に対するワクチン接種動物の、有病率および回腸における肉眼および顕微鏡的病変の重症度の有意な(p<0.05)抑制に基づいた。調査スケジュールおよび活動を表2に示す。この調査の結果を表3に示す。表3に示したデータは、ワクチン接種動物およびプラセボコントロールの間の、回腸病変スコアにおいて有意な減少があったことを示す(t−検定、p<0.05)。さらに、冒された回腸組織の免疫組織化学的染色によって決定されるように、プラセボコントロールに対してワクチン接種動物のコロニー形成における有意な減少が存在した。これらのデータは、死滅化または不活化Lawsonia intracellularisによるバクテリン(bacterin)を用いたブタのワクチン接種は、この細菌によって引き起こされる疾患に対して有意な保護をもたらすことを実証する。
【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
【化1】

【0096】
【化2】

【0097】
【化3】

【0098】
【化4】

【0099】
【化5】

【0100】
【化6】

【0101】
【化7】

【0102】
【化8】

【0103】
【化9】

【0104】
【化10】

【0105】
【化11】

【0106】
【化12】

【0107】
【化13】

【0108】
【化14】

【0109】
【化15】

【0110】
【化16】

【0111】
【化17】

【0112】
【化18】

【0113】
【化19】

本明細書中で記載された実施例および実施態様は、説明目的のみのためであり、そしてそれを考慮した様々な改変または変更が当業者に示唆され、そして本出願の意図および範囲および添付の特許請求の範囲内に含まれることが理解される。本明細書中で引用された全ての出版物、特許、および特許出願は、これによって全ての目的のためにその全体として参考文献に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のポリペプチドおよびアジュバントを含む免疫原性組成物であって、各ポリペプチドは、配列番号1〜11からなる群から選択される配列に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、免疫原性組成物。
【請求項2】
配列番号12および13からなる群から選択される配列に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをさらに含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、配列番号1に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、配列番号2に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、配列番号3に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、配列番号4に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、配列番号5に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、配列番号6に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、配列番号7に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、配列番号8に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、配列番号9に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、配列番号10に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、配列番号11に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記アジュバントが、動物における薬学的使用のために適切なアジュバントである、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記アジュバントが、水酸化アルミニウムである、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
前記アジュバントが、リン酸アルミニウムである、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記アジュバントが、油、水、および水酸化アルミニウムを含む、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記アジュバントが、ISCOMである、請求項14に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
Mycoplasma Hyopneumoniae、Erysipelas spp、salmonella、H.parasuis、clostridium spp、streptoccous suis、brachyspira spp、bordetella、pasteurella、E.coli、コロナウイルス、パルボウイルス、PRRS、サーコウイルス、またはSIVのうちの1つまたは複数の抗原性成分をさらに含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
1つまたは複数のポリヌクレオチドおよびアジュバントを含む免疫原性組成物であって、各ポリヌクレオチドは、配列番号1〜11からなる群から選択される配列に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するポリヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列を有する、免疫原性組成物。
【請求項21】
配列番号38および39からなる群から選択される配列に少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドをさらに含む、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号27に少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を有する、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号28に少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を有する、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号29に少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を有する、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号30に少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を有する、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号31に少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を有する、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号32に少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を有する、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号33に少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を有する、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号34に少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を有する、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項30】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号35に少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を有する、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項31】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号36に少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を有する、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項32】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号37に少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を有する、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項33】
Mycoplasma Hyopneumoniae、Erysipelas spp、salmonella、H.parasuis、clostridium spp、streptoccous suis、brachyspira spp、bordetella、pasteurella、E.coli、コロナウイルス、パルボウイルス、PRRS、サーコウイルス、またはSIVのうちの1つまたは複数の抗原性成分をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項34】
動物において、Lawsonia intracellularisに対する保護的免疫反応を誘導する方法であって、該方法は、該動物に請求項1に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項35】
前記動物がブタである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記免疫原性組成物が、乱刺、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内、鼻腔内投与、および経口投与からなる群から選択される経路により投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
動物において、Lawsonia intracellularisに対する保護的免疫反応を誘導する方法であって、該方法は、該動物に請求項20に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項38】
前記動物がブタである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記免疫原性組成物が、乱刺、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内、鼻腔内投与、および経口投与からなる群から選択される経路により投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
動物由来の生物学的サンプルにおける、Lawsoniaに反応性の抗体の特異的検出のための方法であって、
a)配列番号1〜11で示される配列、またはその免疫原性断片を有するLawsonia抗原と、該生物学的サンプルを接触させる工程、
b)該生物学的サンプル中の該Lawsonia抗原と抗体との間の抗原−抗体結合を検出する工程であって、該抗原−抗体結合の検出は、該生物学的サンプルにおけるLawsoniaに反応性の抗体の存在を示す、工程
を包含する、方法。
【請求項41】
前記生物学的サンプルが、血液を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
配列番号1〜11または配列番号27〜37で示される配列を有する1つまたは複数のLawsonia抗原を含む、キット。
【請求項43】
ブタにおいて、Lawsoniaに対する保護的免疫反応を誘導するための説明書をさらに含む、請求項42に記載のキット。

【公表番号】特表2012−506858(P2012−506858A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533288(P2011−533288)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/061429
【国際公開番号】WO2010/048252
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(510000976)インターベット インターナショナル ベー. フェー. (6)
【Fターム(参考)】