説明

MCG測定値のノイズ除去

【課題】ノイズアーティファクトが低減されている心磁図(MCG)システムが、最初に、磁場センサーユニットによって取得される低分解能測定値の高分解能画像表現を作成することを提供する。
【解決手段】高分解能画像表現は、理想的な、ノイズのない高分解能画像のライブラリーを使用してトレーニングされているPCAモデル22を使用することによって作成される。次いで、ビオ・サバールの法則が使用されて、高分解能画像表現を所与として電流インパルスの3Dモデルが作成される。3D電流インパルスモデルから、3D電流インパルスモデルを観測する理論的センサーユニットを使用して得られていたであろうような、理想的なセンサーユニット測定値が合成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心磁図(magneto cardio gram、MCG)イメージングの分野に関する。詳細には、本発明は、電磁センサーユニットによって得られる低密度(sparse)測定値のノイズを低減すること(すなわち、ノイズ除去)に関する。
【背景技術】
【0002】
生体磁気の分野は一般的に、生命有機体、または生体組織によって生成される磁場の研究を指す。例えば、この分野は、人の脳および心臓の磁気画像の作成に適用されてきた。本発明は、磁気心臓学、人の心臓の磁気画像の作成に関するものである。
【0003】
心臓電流(または電流インパルス)は、心臓内の電気生理学的過程によって生成される。異常な電流の位置特定が、心筋梗塞症、狭心症などのような虚血性疾患の診断に使用される場合がある。これは、Int.Conf.on Biomagnetism Advances in Biomagnetism,28:1−8,2010における、F.Stroinkによる「磁気心臓学の40年(Forty Years of Magnetocardiology)」において説明されているように、治療および経過観察のためにカテーテル検査室に入っている患者に有益である。
【0004】
従来、不整脈のような不規則な心臓電気活動が、心電図(electrocardiogram、ECG)を用いて診断される。しかしながら、ECGは、時間的情報を提供するのみであり、従って、虚血性疾患が検出されている場合には、心臓内の異常な電気インパルス電流を直接位置特定することはできない。電気インパルス電流を位置特定することを試みる1つの技法は、体表面電位マッピング(Body Surface Potential Mapping、BSPM)として知られており、これは、多数の電極(すなわち、リード線)を使用して体表面電位マップを再構築する。このBSPM技法は、CVPR,2176−2183ページ,2009における、Wang他による「心臓電気生理の非侵襲的容積イメージング(Noninvasive volumetric imaging of cardiac electrophysiology)」において説明されている。しかしながら、BSPM電流位置特定の精度は、体組織の伝導性の不足によって、観測される電気信号が歪められる可能性があるため、限定されている。
【0005】
心磁図、または心磁図記録法(MCG)の出現により、空間的および時間的の両方において、心臓電気インパルス電流のより正確な測定値が利用可能となった。図1Aを参照すると、MCGシステムは、少数の個々の電磁センサー13(通常は64個以下のセンサーから成る平面アレイとして配列される)を収容するMCGセンサーユニットから成る。身体内の電気インパルス17が、磁場15を生成する。本事例では、ヒトの心臓19が電気インパルス17の観測される発生源として(すなわち、電流源として)機能する。
【0006】
各電磁センサー13はキャプチャーポイントであり、電磁センサー13は、以後キャプチャーとして記載される場合がある。各キャプチャー(電磁センサー13)は、患者の胸部21(すなわち、ヒトの胴体)から発する磁気波形をセンサー平面アレイに垂直な方向(すなわち、z方向)における1次元(すなわち、1D)で測定する。z方向における所与の深度においてキャプチャー13のアレイの深度測定値(すなわち、1D磁気波形)を位置合わせ(または同期)することによって、所与の深度における2次元(2D)MCGマップを構築することができる。MCGセンサーユニット11は通常、患者の胸部21の5〜10センチメートル上に置かれ、患者の心臓磁場を非侵襲的に測定する。キャプチャー(電磁センサー13)のアレイは、電磁気活動の低分解能(以下、低解)2次元(2D)MCGマップの集合として測定する。
【0007】
MCGにはECGにまさるいくつかの利点がある。第1に、体組織の磁気特性に起因して、心臓の電流インパルス(以下、電流(currents,electric currents or electrical currents))によって生成される。磁場は体表面に垂直な方向(すなわち、z方向)において歪められない。従って、MCGはより正確であり、心臓疾患の初期段階における微弱な電気的活動に対する感度が高い。第2に、MCGセンサーアレイは心臓内の電流の位置を特定することができる。更に、MCG測定は非侵襲的である。40年にわたるMCGにおける研究では、MCG測定のための心臓電流位置特定および高分解能の視覚化は研究および臨床の両方の領域でますます多くの関心を惹きつけている。
【0008】
しかしながら、MCGに関連する多数の難点が存在し、このことが今までのところ、MCGが心臓病学における主流の医療診断器具となることを妨げている。第1の難点は、ヒトの心臓において生成される小さな磁場を分かりにくくする可能性がある多大な量の電磁的ノイズである。これは、磁気遮蔽室を使用して背景ノイズを低減することによって、超電導量子干渉素子(superconducting quantum interference device、SQUID)のような高感度の電磁センサー13の導入によって或る程度までは対処されてきた。これらのステップは助けになってきたが、それでも、なお、計測値には多くのノイズが残っている。
【0009】
もう一つの難点は、MCGセンサーユニット11内に収容することができる電磁センサー13の数が限られていることであり、これによって、MCGマップの分解能が制限される。結果として、MCGセンサーユニット11は一般的に低分解能の(低解)2D MCGマップしか生成することができない。一般的に、これらの低解2D MCGマップは心臓内の電流を位置特定するのに十分でない。例えば、(Hitachi Review,50(1):13−17,2001における、Tsukada他による、「心臓疾患診断のための新開発心磁図記録システム(Newly Developed Magnetocardiographic System for Diagnosing Heart Disease)」に記載されているような)25mmのセンサー間隔を有する64チャネルHITACHI(登録商標)MCGシステムは、8×8MCGマップ(すなわち、64個の測定点から成る8×8アレイ)しか測定しない。
【0010】
従って、MCGは、低解2D MCG画像またはマップから高分解能(以下、高解)2D MCG画像またはマップを生成することである。このような高解2D MCG画像の2つの画像例23および25が、図1Bにおいて示されている。画像23は、生成された、健康な心臓の高解MCG画像の接線画像を示す。画像23内の最大点(すなわち、最強点)は、心臓内の電流の位置(すなわち発生源)を示す。従って、高解MCG画像は、医師が心臓内の電気的活動を直接「見る」ことを可能にする。画像25は、生成された健康でない心臓の高解MCG画像の接線画像を示す。当該画像は、健康な心臓の画像23と著しく異なり、従って、診断のための重要な指示を提供する。低解MCGマップと比較して、高解MCG画像は診断により有意義な画像を提供し、正確な電流位置特定のための基礎としての役割を果たす。
【0011】
最新のMCGシステムは、高解2D MCG画像を低解2D MCGマップから生成するために、Ann Noninvasive Electrocardiol,10(2):152−160,2005における、B.A.S.他による「不整脈基質の心磁図記録による位置特定:基準としての副伝導路除去を伴う方法論研究(Magnetocardiographic Localization of Arrhythmia Substrates: A Methodology Study With Accessory Path‐Way Ablation as Reference)」、および、Int.Congress Series,1300:512−515,2007における、Nomura他による「心磁図による梗塞ベクトルの評価:心磁図から推定することができない起電力の検出(Evaluation of an Infarction Vector by Magnetocardiogram: Detection of Electromotive Forces that Cannot be Deduced from an Electrocardiogram)」に示されているような、電磁センサー13の観測された測定値の間の曲線適合補間法を使用しているが、曲線適合法の精度は一般的に限られている。
【0012】
観測された低解MCGマップにおいてノイズを首尾よくさらに低減するMCGシステムが必要とされている。
【0013】
高解MCGマップをより良好に利用してMCGシステムの観測された測定値を改善する方法も必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願第13/017,869号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】F.Stroinkによる「磁気心臓学の40年(Forty Years of Magnetocardiology)」Int.Conf.on Biomagnetism Advances in Biomagnetism,28:1−8,2010年
【非特許文献2】Wang他による「心臓電気生理の非侵襲的容積イメージング(Noninvasive volumetric imaging of cardiac electrophysiology)」CVPR,2176−2183ページ,2009年
【非特許文献3】Tsukada他による、「心臓疾患診断のための新開発心磁図記録システム(Newly Developed Magnetocardiographic System for Diagnosing Heart Disease)」Hitachi Review,50(1):13−17,2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、改善されたノイズ除去能力を有するMCGシステムである。
【0017】
本発明のもう一つの目的は、高解MCG画像の改善された分解能を利用して観測された低解MCGマップ内のノイズを補正するのを助けることである。
【0018】
本発明のもう一つの目的は、ノイズ低減能力がもともと備わっている高解MCG画像を生成する方法を提供することである。
【0019】
本発明のもう一つの目的は、MCGセンサーユニットの境界を越えてイメージング情報を提供する高解MCG画像を生成することである。
【0020】
本発明のもう一つの目的は、MCGシステムのコンピューティング資源要件を低減する低解2Dマップから高解MCG画像を生成することを目的とする手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的は、心磁図(MCG)システムであって、M×M個のデータ値の低密度測定値出力を生成するM×M個の電磁センサーを含むセンサーユニットであって、当該低密度測定値出力は第1MCG画像を構成するセンサーユニットと、第1MCG画像を受け取るとともに当該第1MCG画像のより分解能の高い画像表現を生成するための高分解能MCG画像合成器であって、当該より分解能の高い画像表現は第1MCG画像よりも画素密度の高い第2MCG画像である高分解能MCG画像合成器と、第2MCG画像を受け取るとともに当該第2MCG画像のノイズ除去された、より分解能の低い画像表現を生成するためのノイズ除去画像処理ブロックであって、ノイズ除去されたより分解能の低い画像表現は第1MCG画像のM×M個のデータ値の範囲に対応する物理センサー領域内のM×M個の画素と、を有するとともに、第1MCG画像と比較して低減されたノイズレベルを有する第3MCG画像であるノイズ除去画像処理ブロックとを有する心磁図システムである。
【0022】
好ましくは、ノイズ除去画像処理ブロックは、ターゲット画素として、その画像位置が第1MCG画像のM×M個のデータ値の画像位置に対応する第2MCG画像の画素を識別し、物理センサー領域に当該ターゲット画素をデータ投入する。
【0023】
さらに、高分解能MCG画像合成器による第2MCG画像の生成は、第1MCG画像より分解能の高いモデルMCG画像を定義する線形モデルにアクセスするステップであって、当該線形モデルは、線形モデルの特性とM×M個のデータ値の低密度測定値出力の任意のデータ値との間の補間パターンを確立するアクセスするステップと、第1MCG画像を線形モデルの部分空間上に投影するとともに、線形モデルおよびM×M個のデータ値に従って中間MCG画像のための係数を確立することによって中間MCG画像を生成するステップとを含む。この場合、高分解能MCG画像合成器は、第2MCG画像として中間画像を出力される。
【0024】
さらにこの場合、線形モデルは第2MCG画像と同じ分解能を有する複数の合成心磁図画像を作成することによって定義され、合成心磁図画像は、予測される心磁図システムにおいて知覚されるであろうような3次元空間心臓容積内のシミュレートされる電気インパルスに基づく。好ましくは、合成MCG画像は心臓容積内でランダムに生成される電流に基づき、線形モデルは主成分分析(principal component analysis、PCA)を使用することによって作成される。
【0025】

【0026】
さらにこの実施形態において、新たな双極子およびM×M個の低密度測定値gjを所与として、固有行列内の対応する行を見つけるとともに、結果として得られる部分行列をΣgとして示すステップと、低密度測定値をPCA部分空間に投影するとともに係数をcg=Σg+(gj−gmean)として計算するステップであって、Σg+はΣgの擬似逆である、投影するとともに計算するステップと、高密度磁場マップBzをfj=Σfg+fmeanとして再構築するために、計算された係数および元のPCA空間を使用するステップとによって、中間MCG画像が作成される。
【0027】

【0028】

【0029】




【0030】
好ましくは、第2MCG画像は、第1MCG画像よりも広いイメージング領域にわたる。この場合、第3MCG画像は第1MCG画像よりも広いイメージング領域にわたり、第3MCG画像の物理センサー領域の画素密度は第3MCG画像全体にわたって一様に広がり、物理センサー領域を超えて延在する第3MCG画像のピクセルは、第2MCG画像から求められるシミュレートされたセンサーデータを投入される。
【0031】
さらに、ノイズ除去画像処理ブロックは、ターゲットピクセルとして、そのピクセル画像位置が第3MCG画像のピクセル画像位置に対応する第2MCG画像の画素を識別し、第3MCGのピクセル画像位置にそれらの対応するターゲット画素をデータ投入する。
【0032】
好ましくは、第3MCG画像のイメージング範囲は、第2MCG画像のイメージング範囲と実質的に同じである。
【0033】
任意選択的に、高分解能MCG画像合成器によって第1MCG画像のより分解能の高い画像表現を生成することは、第1MCG画像よりも著しく分解能の高いモデルMCG画像を定義する線形モデルにアクセスするステップであって、線形モデルは、第2MCG画像と同じサイズおよび分解能を有する複数の合成心磁図画像を作成することによって定義されるアクセスするステップと、合成心磁図画像が、第2MCG画像と類似の分解能の仮想心磁図システムにおいて知覚されるであろうような3次元空間心臓容積内でシミュレートされる電気インパルスに基づくステップと、線形モデルの特性と、低密度測定値出力の任意のデータ値の特性との間の補間パターンを確立するために、複数の合成心磁図画像からの情報が線形モデルに組み込まれるステップと、第2MCG画像を生成することが、当該2MCG画像の作成において使用するための係数を確立するために、第1MCG画像を線形モデルの部分空間上に投影することを含むステップとを含む。
【0034】

【0035】
この目的は、心磁図(MCG)システムであって、M×M個のデータ値の低密度測定値出力を生成するM×M個の電磁センサーを含むセンサーユニットであって、当該低密度測定値出力は第1MCG画像を構成するセンサーユニットと、第1MCG画像を受け取るとともに当該第1MCG画像のより分解能の高い画像表現を生成するための高分解能MCG画像合成器であって、当該より分解能の高い画像表現は第1MCG画像よりも画素密度が高く、第1MCG画像よりも広いイメージング領域にわたる第2MCG画像である高分解能MCG画像合成器とを有する心磁図システムにおいても満たされる。
【0036】
好ましくは、高分解能MCG画像合成器によって第1MCG画像のより分解能の高い画像表現を生成することは、第1MCG画像よりも著しく分解能の高いモデルMCG画像を定義する線形モデルにアクセスするステップであって、線形モデルは、第2MCG画像とほぼ同様のサイズおよび分解能を有する複数の合成心磁図画像を作成することによって定義されるアクセスするステップと、合成心磁図画像が、第2MCG画像と類似の分解能および画像サイズの仮想心磁図システムにおいて知覚されるであろうような3次元空間容積内でシミュレートされる電気インパルスに基づくステップと、線形モデルの特性と低密度測定値出力の任意のデータ値の特性との間の補間パターンを確立するために、複数の合成心磁図画像からの情報が線形モデルに組み込まれるステップと、第2MCG画像の生成は、当該第2MCG画像のための係数を確立するために第1MCG画像を線形モデルの部分空間上に投影することを含むステップとを含む。
【0037】
任意選択的に、3次元空間容積はシミュレートされた心臓組織容積であり、合成MCG画像はシミュレートされた心臓組織容積内でランダムに生成される電流に基づき、線形モデルは主成分分析(PCA)を使用することによって作成される。
【0038】

【0039】
他の目的および達成は、本発明のより完全な理解とともに、添付の図面とともに取り上げられる、以下の記載および特許請求の範囲を参照することによって明らかとなり、理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1Aは、MCG測定システムを示し、図1Bは、健康な心臓の復元された高解MCG画像の接線画像を、健康でない心臓のそれと比較している。
【図2】図2は、本発明のノイズ除去方法/システムの全体的な概説図である。
【図3】図3は、図2のMCG画像合成器の簡略化された内部図を示す。
【図4】図4は、本発明によって得られるいくつかのノイズ除去結果を示す。
【図5】図5は、本発明によって得られるいくつかのノイズ除去結果を示す。
【図6】図6は、本発明によって得られるいくつかのノイズ除去結果を示す。
【図7】図7は、本発明のモデリングシステムの原理を示す。
【図8】図8は、本発明のモデリングシステムの追加の原理を示す。
【図9】図9は、本発明による拡張モデルの1つの実施態様を示す。
【図10】図10は、本発明の拡張モデルの原理を示す。
【図11】図11は、本発明によるシミュレーション設定における心臓容積との空間的関係において2Dセンサーアレイを示す。
【図12】図12は、本発明によるトレーニング画像のさまざまな例を示す。
【図13】図13aは、異なる複数の深度層における電流のランダムな生成を示し、図13bは、異なる複数の深度zにおける64回の試行の結果をプロットしている。
【図14】図14は、本発明を使用する高解MCG画像の作成を、従来技術の方法およびグランドトゥルースの例と比較している。
【図15】図15は、本発明によるセンサーおよび電流の空間構成を示す。
【図16】図16は、本発明を使用する高解MCG画像の作成を、従来技術の方法およびグランドトゥルースの例と比較している。
【図17】図17は、異なるボクセル電流のサイズに関する、2Dボクセル電流位置特定誤差を示す。
【図18A】図18Aは、本発明の説明に有用なさまざまな式を示す。
【図18B】図18Bは、本発明の説明に有用なさまざまな式を示す。
【図18C】図18Cは、本発明の説明に有用なさまざまな式を示す。
【図19】図19a〜19dは、テスト結果を示すさまざまな表を示す。
【図20】図20は、拡張モデルが、元のモデルにおいて境界となっているものの上で電流双極子が位置特定されるのにどのようにより多くのサポートを提供するかを示す。
【図21】図21は、拡張モデルの拡張高密度磁場画像がどのように行ベクトルf1tとして計算され記憶されることができるかを示す図である。
【図22】図22は、元のモデルおよび拡張モデルの実施態様の幾つかの態様を比較している。
【図23】図23は、拡張モデルの一実施態様を示す。
【図24】図24は、本発明の一実施形態の例示的な実施態様を示す。
【図25】図25は、本発明の一実施形態の例示的な実施態様を示す。
【図26】図26は、図24に示されるレベルによる、元のモデルと拡張モデルとを比較する、実験結果を比較する表を提供する。
【図27】図27は、図24に示されるレベルによる、元のモデルと拡張モデルとを比較する、実験結果を比較する表を提供する。
【図28】図28は、図24に示されるレベルによる、元のモデルと拡張モデルとを比較する、実験結果を比較する表を提供する。
【図29】図29は、図24に示されるレベルによる、元のモデルと拡張モデルとを比較する、実験結果を比較する表を提供する。
【図30】図30は、図24に示されるレベルによる、元のモデルと拡張モデルとを比較する、実験結果を比較する表を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
人の心臓によって生成される磁場は非常に弱い。一般的に、このような磁場は10-12〜10-10テスラ程度である。これらの磁場のサイズは、それらが本質的に電磁的ノイズに対して脆弱であることを意味する。それゆえ、良好な測定値を得ることは、感度の高い機器を使用することが好ましいが、このような感度は同様にノイズの影響を受けやすい。
【0042】
それゆえ、最良のMCG測定値であってもノイズが多い傾向にある。事実、生のMCG測定値はノイズが多すぎて直接使用することができない場合がある。従って、ノイズ除去方法(すなわち、生のMCGマップからノイズを除去する方法)は、2D MCG画像の生成において、一般的に前処理工程として必要になる。
【0043】
異なる複数の手法が異なる複数の種類のノイズに対処されている。例えば、環境ノイズは、遮蔽室およびグラジオメーターを使用することによって低減されることができる。システムノイズは機器を注意深く較正することによって低減されることができる。生データにおける直接測定ノイズは、一般的に信号処理方法によって対処される。
【0044】
現在の信号処理方法は、一般的に1次元のみにおいて測定ノイズに対処している。すなわち、各個々の電磁センサーから観測されたデータ信号は別個に処理される。各個々の電磁センサーから観測された測定値は経時的に収集されるため、このような信号処理方法は時間的領域における1次元情報のノイズ除去しか提供されていない。
【0045】
現在好ましい発明は、直接測定ノイズを低減することに焦点を当てているが、2次元ノイズ除去方法を適用することによってそれを行っている。すなわち、従来技術におけるように、各電磁センサーを経時的に個々に処理する代わりに、本発明においては、MCGセンサーユニット内の電磁センサーのアレイ全体が、空間的領域において同時に対処される。従って、本発明は、所与のイメージング領域上での2次元測定値のためのノイズ除去方法を提供する。
【0046】

この手法を使用して、最小二乗問題を解くことによってノイズが除去されることができる。さらに、現在好ましい手法に関して、ノイズが基本モードでなくなることになるため、ノイズはPCAモデルを適合させることによって除去される。
【0047】
PCAモデルを使用することによって、ノイズ除去処理中に同時に追加の画像処理の増強を適用することができる。すなわち、PCAモデルは、追加の画像処理効果のために設計されることができ、これは、ノイズ除去プロセスに不可分の一部となる。従って、PCAモデルはノイズを除去しながら生の入力MCGマップを調整(すなわち、修正またはフィルタリング)することができる。
【0048】
従って、現在好ましい実施形態は、ノイズ除去のプロセス中に低解2D MCG画像に対する画像増強(複数の場合もあり)を適用する方法を提供する。この画像増強(複数の場合もあり)は、例えば、観測された磁場の改善されたモデリングの提供の形態、および/または元の低解MCG画像の範囲(すなわち、可視領域)の増大の形態であり得る。
【0049】
1つの手法では、本方法は、生の低解2D MCGマップを表す3次元(3D)電流ベクトルを構築し、その後、構築された3D電流ベクトルから、理論的なノイズのないMCGユニットによってキャプチャーされる理想的な低解2D MCGマップを再構築する。好ましくは、3D電流ベクトルを構築するためのステップは、同時に測定ノイズを抑制しながら、構築された3D電流ベクトルの精度を高めるPCAモデルを組み込む。別の手法においては、PCAモデルは後続する3D電流ベクトル構築なしに適用される。ノイズのないMCGユニットによって見られるノイズ除去された低解2D MCGマップがPCAモデル結果から直接構築される。
【0050】
両方の場合において、PCAモデルは、元の物理MCGユニットによって提供されるものよりも広い表示領域を提供するように強化することができる。従って、増強されたPCAモデルから構築される。結果として、得られる低解2D MCGマップ8は、元の生の低解2D MCGマップのものよりも広い表示領域を提供する。これは、物理電磁センサーのアレイのエッジのような、境界エッジ状態を起こしやすい誤差をいくらか低減する。
【0051】
図2を参照すると、本発明の全体的な概説は、低解2D第1MCG画像12(または低密度MCGマップ)を出力する(図1Aのセンサーユニット11のような)物理MCGセンサーユニット10によって開始する。理解されるであろうように、MCGセンサーユニット10は、図1Aに示されるような物理電磁センサーのアレイを収容し、各電磁センサーはピクセル値を構成する別個の測定値出力またはデータ値を提供するであろう。例えば、MCGセンサーユニット11がM×M個の電磁センサーのアレイを収容している場合、低解第1MCG画像12はM×M個のデータ値から成るM×Mピクセル分解能を有することになる。
【0052】
低解第1MCG画像12は(好ましくはPCAベースの)高解MCG画像合成器14に送られ、当該画像合成器は、高解2D第2MCG画像16を生成する。高解第2MCG画像16は第1MCG画像12のより分解能の高い画像表現している。例えば、第2MCG画像16はP×Pピクセル分解能を有することができ、ここで、P>>Mである。さらに好ましくは、第2MCG画像16は一貫した第1MCG画像12よりも高い画素密度を有する。例えば、第1MCG画像12が20cm×20cmの画像領域にわたる場合、その画素密度は400cm2あたりM×Mピクセルになり、一方で対応する第2MCG画像16の同じ画像領域に対する画素密度は、400cm2あたりP×Pピクセルになる。なお、第2MCG画像16の画像領域が第1MCG画像12のものよりも大きい場合、第2MCG画像16は好ましくは、その画像領域全体にわたって同じ画素密度を維持する。
【0053】
ノイズ除去画像処理ブロック18は高解第2MCG画像16を受け取る。ノイズ除去画像処理ブロック18は好ましくは、少なくともMCGセンサーユニット10の物理的構築および構成ならびにその電磁センサーの内部アレイを認識している。ノイズ除去画像処理ブロック18はこの情報を使用して、第2MCG画像16から低解2D第3MCG画像20を構築し、当該画像は、測定値ノイズがその読み値になかった場合にMCGセンサーユニット10がキャプチャーしているはずのものをシミュレートする。すなわち、ノイズ除去画像処理ブロック18は、MCGセンサーユニット10の物理センサー領域、すなわち、第1MCG画像12のイメージング領域をシミュレートする。それゆえ、第3MCG画像20は第1MCG画像12と類似の(好ましくは等しい)画素密度を有する。
【0054】
任意選択的に、ノイズ除去画像処理ブロック18は、破線によって示されるような第1MCG画像12のコピーを受け取ることによってもこれを達成することができる。この場合、ノイズ除去画像処理ブロック18は、第1MCG画像12を第2MCG画像16と比較し、その画像位置が第1MCG画像12のM×M個のデータ値の画像位置に対応する第2MCG画像16の画素を、ターゲット画素として識別する。第1MCG画像12の画像領域に対応する(すなわち、MCGセンサーユニット10の物理センサー領域に対応する)第3MCG画像20の画像領域に、その後、対応するターゲット画素をデータ投入することができる。
【0055】
第3MCG画像20の画像領域が第2MCG画像16の画像領域に類似している(および好ましくは同じ)こと、および、第3MCG画像20の画素密度が第1MCG画像12に類似している(および好ましくは同じ)ことが望ましい。従って、第2MCG画像16が第1MCG画像12の画像領域よりも大きく、かつ完全に包含している場合、第3MCG画像20は同様に、第1MCG画像12の画像領域よりも大きく、かつ完全に包含していることになる。この場合、第3MCG画像のセンサー領域(すなわち、第1MCG画像12の画像領域に対応する画像領域)の画素密度は、第3MCG画像20全体を通じて一様に広がっている。好ましくは、第3MCG画像20内で、このセンサー領域を超えて延在するピクセルは、直ぐ上で記載された、かつ/または下記により詳細に記載されるものと同様の様式で、第2MCG画像16から求められるシミュレートされたセンサーデータを投入される。
【0056】
上記で説明されたように、高解MCG画像合成器14は好ましくはPCAベースのモデルを実装し、同時に第1MCG画像12の分解能を向上させて当該画像の鼻を低減しながら、画像増強を提供する。MCG画像合成器14の簡略化された内部図が図3において提供される。
【0057】
図3を参照すると、ここで図2に類似のすべての要素は同様の参照符号を有するとともに上述されており、MCG画像合成器14のいくつかの任意選択の実施態様が示されている。図2および3に示されているように、MCG画像合成器14は入力第1MCG画像12を、ノイズ除去画像処理ブロック18に転送するために直接、出力に渡すことができる。
【0058】
好ましくは、MCG画像合成器14は、上記第1MCG画像12よりも大幅に分解能の高いモデルMCG画像(本明細書においてPCA線形モデル22によって具現化される)を組み込み、または通信する。PCA線形モデル22は、心臓組織内の電流インパルスの所望の効果を有する理想的な高分解能画像の予備知識に基づいて、第1MCG画像12を修正する。このような理想的な高分解能画像のライブラリーを物理的測定値から取得することは実際的でないため、PCA線形モデル22は好ましくは、第2MCG画像16と同じサイズおよび分解能を有する合成心磁図画像のライブラリーから定義される。合成心磁図画像のライブラリーは好ましくは、所望の画像増強を組み込むように合成される。従って、この合成ライブラリーに基づくPCA線形モデル22は、同じ望ましい画像増強を組み込んだことになる。下記により十分に説明されるように、合成心磁図画像は、仮想高分解能心磁図システムにおいて知覚される3次元空間心臓組織容積内でシミュレートされるランダム電気インパルスに基づく。この複数の合成心磁図画像からの情報がPCA線形モデル22に組み込まれて、当該線形モデルの特性と、第1MCG画像12の任意のデータ値の特性との間の補間パターンを確立する。第2MCG画像16を生成するための第1の技法は、第1MCG画像12をPCA線形モデル22の部分空間上に投影して、第2MCG画像16の作成に使用するための係数を確立することである。
【0059】
1つの実施形態において、PCA線形モデル22によって結果として得られる高分解能画像出力は、第2MCG画像16として出力に直接送られる。
【0060】
代替の実施形態において、MCG画像合成器14は、さらに、PCA線形モデル22によって生成される高解画像から3D電流インパルスをモデル化し、その後モデル化された3D電流インパルスから第2MCG画像16を作成し直す。これは、下記により十分に説明されるように、最終高解画像のノイズをさらに低減する。
【0061】
この代替の場合において、PCA線形モデル22からの出力は電流ローカライザー24に渡される中間画像であり、当該電流ローカライザーは中間MCG画像に従って電流の位置および運動量を求める。好ましくは、電流ローカライザー24は、単一の双極子を想定して電磁出力データがx−y方向(Bxy)において個々の電磁センサーにおいて観測される電磁出力データを評価し、高密度Bzから高密度Bxyを計算し、ここで「B」は磁場を指す。

【0062】

【0063】
従って、図3は本発明を実装する2つの基本的な方法を提供する。1つの手法においては、MCG画像合成器14は低解第1MCG画像12を受け取り、高解/低解モデルフィッティングを使用して高解第2MCG画像16を生成し(すなわち、低解第1MCG画像12を高解PCA線形モデル22に適合させて)、ノイズ除去画像処理ブロック18が、PCA線形モデル22の出力から低解第3MCG画像20を生成する。
【0064】
代替の手法において、PCAモデルフィッティング+双極子再構築がノイズ除去された低解第3MCG画像20の構築に使用される。すなわち、電流ローカライザー24およびMCGセンサーユニットシミュレーター26は双極子再構築をPCA線形モデル22の出力に提供し、ノイズ除去画像処理ブロック18が、MCGセンサーユニットシミュレーター26の出力から低解第3MCG画像20を生成する。この代替の手法は以下のようにも要約され得る。復元された2D高解MCG画像(好ましくは、PCA線形モデル22の出力)を所与として、電流の2D位置を推定し、逆問題を解いて電流双極子の3D位置および運動量を再構築し、ビオ・サバールの法則に基づいて再構築された電流双極子を所与として高解第2MCG画像16を計算する。好ましい実施形態において、ノイズ除去画像処理ブロック18は、高解第2MCG画像16の対応する2D低解成分をノイズ除去済みMCG信号として使用する。
【0065】
本発明によって得られるいくつかのノイズ除去結果が図4〜6の表に示されている。図4の表は、8×8センサー、2.5cm間隔、200回試行、かつ各試行がBmおよびBgを[0,1]に正規化しているシミュレーション設定において、ノイズ除去結果をグランドトゥルースと比較している。25個のモードを使用して、以下を使用して相対誤差が計算される。

図示されるように、両方の手法が良好なノイズ除去測定値をレンダリングするが、高解モデルフィッティングを使用してその後双極子を再構築する方法が、一貫してより良好な結果を提供した。
【0066】
同様の結果が図5の表に示されており、これは、8×8センサー、2.5cm間隔、各試行がBmおよびBgを[0,1]に正規化している200回試行のュレーション設定を使用している。15個のモードを使用して、以下のように相対誤差が計算される。

上記の2つのシミュレーションにおいて、ランダムノイズが20%を下回るとき、モデルフィッティング(高解および低解モデルの両方)のみを使用する実施形態がノイズを低減することができる。しかしながら、双極子を再構築することによって、ノイズをさらにより低減することができる。
【0067】
ファントム実験の結果が図6の表に示されている。このファントム実験は、8×8センサー、2cm間隔、4回巻垂直円形コイルを使用し、BmおよびBgを[0,1]に正規化した。平均相対誤差が以下のように計算される。

これらの結果は再び、両方の手法が効果的なノイズ除去能力を実証していることを示しているが、高解モデルフィッティングを使用してその後双極子を再構築する手法が、一貫して再びより良好な結果を提供している。実際には本発明のファントム実験は、ノイズが実際に大きい(>35%)場合、モデルフィッティング+双極子再構築が依然としてノイズを大幅に低減することができることを示している。
【0068】
高解MCG画像合成器14の構築および使用の好ましい方法の詳細な記載が下記に提供される。しかしながら、詳細な記載を論じる前に、その原理のいくつの概説を論じることが有益である。
【0069】
図7は、本発明のモデル化事例の原理を示す。図1Aの要素に類似のすべての要素が同様の参照符号を有し上記に記載されている。基本原理は、心臓19を心臓組織20のブロックとしてシミュレートし、その後、心臓組織ブロック内の複数の電流インパルス17をシミュレートすることである。心臓組織20の物理的特性は分かっているため、電流インパルス17によって生成される心臓組織20を通る磁場の伝搬がシミュレートされることができる。心臓組織ブロック20のサイズは心臓19と同等のサイズ(または平均的なヒトの心臓と同様の容積)とすることができる。
【0070】
図8を参照すると、MCGセンサーユニット11に類似の仮想MCGセンサーユニット11は図1Aに図示ものであり、心臓組織容積20の上に示されている。理論的MCGセンサーユニット11は、図1Aの物理電磁センサー13と同様の数の仮想電磁センサー13’を収容し得る。この場合、仮想MCGセンサーユニット11’は、低分解能MCGセンサーユニット、すなわち、図1Aのものとなる。しかしながら、ノイズの除去に加えて本発明のもう一つの目的は物理MCGセンサーユニットからの測定読み値を増強することであるため、かつ仮想MCGセンサーユニットを任意の所望の機能を有するように自由に定義することができるため、低分解能MCGセンサーユニット11’は高分解能仮想MCGセンサーユニット32に置き換えられる。
【0071】
仮想高解MCGセンサーユニット32は、図2の高解第2MCG画像16に類似の分解能を有し、従って、第2MCG画像16のピクセル当たり1つの、仮想電磁センサーのより大規模なアレイ34を収容することになる。ここでランダムな電流インパルス36が心臓組織容積20内で定義され、その結果として得られる磁場が生成され得る。高解MCGセンサーユニット32は、心臓組織容積20内のさまざまな深度において磁場の高分解能読み取りを行わない(すなわち、高精細MCG画像を生成しない)。
【0072】
実際的な理由で、心臓組織容積20内の所定の限られた数の深度、または層40において高解MCG画像を生成することが好ましい。このとき、個々の層が心臓組織容積20から抽出され、各深度レベルに対して個々の高精細MCG画像42を生成するために分離されることができる。複数のランダム電流インパルスが定義され、それらの磁場が生成され、結果として得られるレベル画像が作成されるであろうことは理解される。1つの実施形態において、1つの深度レベルあたり1000個のランダム電流インパルスが定義され、1000個のサンプル画像が作成される。これらのシミュレートされた高解MCG画像42はその後、PCAベースの高解MCG画像モデル22を構築するのに使用される。
【0073】
この実施形態では、仮想高解MCGセンサーユニット32によってカバーされる面積は、仮想低解MCGセンサーユニット11’によってカバーされる面積と同じである。すなわち、仮想高解MCGセンサーユニット32の物理センサー領域は仮想低解MCGセンサーユニット11’のものと一致し、これは物理低解MCGセンサーユニット11のものと一致する。
【0074】
しかしながら、より大規模なMCGセンサーユニットであれば、より大きな画像、従って、医療専門家がそれを用いて作業することができる、より多くの情報を提供する可能性が高い。より大規模な物理MCGユニットを作成することはコストが高く、より大規模な物理高解MCGセンサーユニットを作成することは不可能であるため、本発明の代替の実施形態は、仮想高解MCGセンサーユニット32を、より大きなサイズの高解MCGセンサーユニットをシミュレートするように修正する。
【0075】
図9を参照すると、ここで図7のものに類似のすべての要素は同様の参照符号を有するとともに上述されており、大きなモデルブロック50が前の心臓組織ブロック20を包含している。一例として、モデルブロック50の長さおよび高さは心臓組織ブロック20の2倍であることができる。1つの例では、モデルブロックは心臓組織ブロック20のものに類似の個体心臓組織質量を構成することができるが、よりサイズが大きく、従ってよりサイズの大きい心臓をシミュレートすることができる。また、第2の例として、心臓19のより完全なモデルを提供することができる。
【0076】
代替の第3の例において、モデルブロック50は一般的な心臓の心臓組織を超えて及ぶようにすることができる。この第3の例において、モデルブロック50はそれが包含する種々の種類の組織質量の3D表現を表すようにモデル化されることができる。従って、心臓19を表すその中心内の心臓形組織質量に加えて、モデルブロック50は任意選択的に、心臓動脈54、肺52、およびその容積内の任意の他の組織をモデル化することができる。
【0077】
これらの3つの例において、より大きなモデルブロック50はランダムインパルス電流17によって生成される磁場のより良好な表示を提供することができる。なお、さらに、モデルブロック50が心臓組織質量としてモデル化されるか、または異なる複数の隣接する組織質量としてモデル化されるかにかかわらず、PCA線形モデルを生成するための一般的なプロセスは一般的に上記で説明し、下記でより詳細に説明されるものと同様である。
【0078】
例えば、図8および9のものと同様のすべての要素が同様の参照符号を有するとともに上記で説明されている図10において、仮想低解MCGセンサーユニット11’は、低解MCGセンサーユニット11’のセンサー領域よりも広いイメージング領域を有するより大規模な仮想高解MCGセンサーユニット60に置き換えられている。アレイ64の、単位面積あたりの電磁センサーの密度は好ましくは、図8のアレイ34のものと同じである。電磁センサーのアレイ64のセンサー面積は、モデルブロック50の上面面積によって定義される。前に述べたように、モデルブロック50は好ましくは幅および高さが心臓組織ブロック20の2倍である。
【0079】
本発明によって、実験から得られたいくつかのノイズ除去結果を提示する前に、上記の高解MCG画像合成器14のより詳細な例示的実施態様を提供することが有益であり得る。より具体的には、PCA線形モデル22、電流ローカライザー24、およびMCGセンサーユニットシミュレーター26の好ましい実施態様を提示することが有益であり得る。
【0080】
理解され得るように、ますます多くの深度レベルにおける高解2Dは、MCG画像の集合を組み合わせて3次元(3D)MCG画像を作成することができる。従って、高解2D MCG画像の精度を向上させる高解生成方法/プロセス/デバイスを使用して所与の低解MCG測定値のセットから電流の位置、大きさおよび向きの3次元(3D)構図を作成することができる。向上した精度を提供する1つの方法は、ビオ・サバールの法則を用いて求められる電流に基づいて高解MCG画像を計算する。しかしながら、当該技術分野において既知であるように、ヘルムホルツの相反則に従って、MCGに関する逆問題は、電気インパルスの数が分からない限り、不良設定問題である。しかし、電気インパルスの数が分かっている場合でさえ、計算コストが高いことが多く望ましくない。局所、最小値をもたらし得る大規模な非線形最適化問題を解く必要がある。それゆえ、これらの種類の方法に基づく高解MCG画像復元(すなわち、生成)は、以前は信頼できないものになっていた。
【0081】
現在好ましい実施形態は、高解MCG画像復元(すなわち生成)問題を、事例に基づく超分解能問題とみなす。通常、事例に基づく問題は、本物の例(すなわち、本物のサンプル画像)のライブラリーであって、当該ライブラリーから、このような本物の例の特性を学習するための、ライブラリーを必要とする。しかしながら、高密度磁場を測定することは、不可能ではないにしても実際的でなく、従って、直接観測される本物の測定値からこのような本物の例を得ることは実現可能でない。それゆえ、現在好ましい実施形態は、トレーニングを目的として、本物のサンプル画像のライブラリーとして、コンピュータ生成(すなわち、合成)高解MCG画像を使用する。すなわち、本発明のモデル学習アルゴリズムは、合成高解MCG画像に基づくものである。
【0082】
本発明のサンプル画像のライブラリーを含む合成高解MCG画像は好ましくは、ビオ・サバールの法則に基づいてランダムに生成される。これらのサンプル画像から、好ましくは主成分分析(PCA)を使用することによって線形モデルが構築される。物理MCGセンサーユニットからの低密度の本物の測定値が、その後、そのように構築された線形モデルの部分空間内に投影され、モデル係数が推定されて高解MCG画像が当該線形モデルのモデルインスタンスとして復元(すなわち、作成、合成、または生成)される。このモデルインスタンスは、物理MCGセンサーの低密度測定値によって定義される低分解能画像の高解MCG画像表現として出力されることができる。
【0083】
高解MCG画像がこのように再構築されることによって、現在好ましい発明は、高解MCG画像をさらに分析して、このような画像を生成することになるインパルス電流の位置、深度、大きさおよび向きを特定するものである。
【0084】
上記で説明されたように、観測された物理的測定値から得られる本物のMCG画像は一般的に、具体的なインパルス電流情報を直接回復するために十分な情報を提供しない低解2Dは、MCGマップから成る。しかしながら、高解MCG画像が再構築されると、電流の2D位置が、高解MCG画像の接線成分の最大点として位置特定されることができる。2D位置特定精度を向上させるために、本明細書において、非線形最適化アルゴリズムが逆問題を解くために説明される。同時に、電流の深度、大きさおよび向きも回復される。より具体的には、好ましいアルゴリズムは2つのステップを交互に繰り返す。第1のステップは、3Dインパルス電流の発生位置を推定し、第2のステップは推定された発生位置に基づいてその大きさおよび向きを再構築する。3Dインパルス電流の発生位置の推定において、モデルベースの復元から推定される2D電流位置が初期設定として使用される。本方法は、特別な仮定を必要とすることなく効率的、正確かつ高信頼性である。単純にするために、現在好ましいシステム/方法は、単一のインパルス電流の事例に適用されるものとしてのみ例示されている。しかしながら、本発明のシステム/方法/デバイスを複数のインパルス電流に拡張することは容易であることは理解される。
【0085】
本実施形態は、さまざまなコンピューティングデバイス(またはデータ処理デバイス)を利用して、ランダムインパルス電流によって生成される合成高解MCG画像のセットから線形モデルを学習(すなわち作成)する。MCGセンサーユニットから受け取られる低密度データ(すなわち、低分解能画像)はその後、線形モデル上に投影され、そこから低分解能画像の高分解能画像表現が作成される。この手法の一例が図11に示される。
【0086】
図11を参照すると、上面図(a)はシミュレーション設定において、2Dセンサーアレイの上面図(a)(またはセンサー平面)を、側面図の3D空間心臓容積33[側面図(b)]と関連付けて示している。本例において、上面図(a)は、8×8センサーアレイに配列される(電磁センサー13のような)64個の物理センサー13を有する(図1AのMCGセンサーユニット11のような)MCGセンサーユニットの上面図(a)を示している。しかしながら、本実施形態において、4個の仮想センサー31から成るセットが、xおよびy方向において隣接する実際の物理センサー13の間に直列に挿入される。加えて、4つの角にある物理センサー13および、それらの仮想センサー31の4つの整列したセットによって画定される正方形領域が、追加の仮想センサー31の4×4アレイを充てられる。従って、本実施形態は、1232個の仮想センサー31を64個の物理センサー13に追加し、センサーは合計で1296個になる。これは36×36センサーアレイに相当し、本高解画像の1つの実施形態のための基礎を構成する。1つのセンサー当たり1つの画像ピクセルを割り当てることによって、本実施形態はこのようにして、高解MCG画像内にP×P(P>8)ピクセルを提供する。好ましくは、センサー平面は、本事例においては10×10×10cm3である心臓容積境界ボックス33の5〜10cm上にある。この例では、各高解MCG画像における画素密度は(1296ピクセル)/(100cm2)または1平方センチメートルあたり約13ピクセルであろう。電流は3D点において位置特定されるベクトルによって表される。
【0087】
仮想センサーの数、およびPの値は設計上の選択であることは理解さられる。下記に説明する後者の実施形態は、例えば、より多数の仮想センサーを組み込んでさらに分解能の高いMCG画像を生成する。
【0088】
図18A〜18Cは、説明を容易にするためのさまざまな式(式1〜式12)を示す。
【0089】

【0090】

【0091】

【0092】
トレーニングステップにおいて、高解P×PのMCG画像のセット(ここで、P>>M)が合成、すなわち生成される。各高解P×PのMCG画像を生成するために、ランダムなモーメントおよびランダムな3D位置の両方を有する単一の電流が定義される。結果として得られる高解P×P MCG画像が、式2に基づいて計算される。
【0093】
合成トレーニング画像のいくつかの例が図12に示される。各合成高解MCG画像は、ランダムなモーメントおよび3D位置の両方を有する単一の電流によって生成される。心臓によって生成される磁場は非常に弱い(10-12〜10-10テスラ)ため、高解MCG画像は0〜255に正規化され、JETカラーマップを使用して表示される。異なる複数の行からの画像が異なる複数の深度(z方向における電流の距離)から生成される。このようにして、K個の高解MCGトレーニング画像が生成、すなわち合成される。すべての画像ベクトルは集中化され(平均ベクトルはμによって示される)、それらは行列Aにスタックされる。従って行列AはK列のP×Pベクトルから成る。行列Aの固有ベクトルを抽出するためにPCAが適用され、従って固有行列Σを定義する。
【0094】

【0095】
図12は、4行の異なるMCG画像(すなわち、4つの2DのMCG画像)を示す。4行のMCG画像は4つのそれぞれの深度、または層(すなわち、z方向における電流位置、または発生源に対する異なる複数の距離)において生成される。深度が変化するときにMCG画像間に大きな変動を見ることができる。
【0096】
これらの深度層41の図が図13aに示されている。現在好ましい実施形態において、電流は異なる複数の深度層41においてランダムに生成される。すべての深度をサンプリングすることは網羅的でありすぎて、深度層の1つのセットを選択することはできない。この手法は、下記により十分に説明されるように、Bzが電流深度の線形関数として近似されることができると仮定する。
【0097】

【0098】

【0099】

【0100】
本例において、一千個の高分解能MCG画像サンプルが10個の均一に分布する深度層またはレベルのそれぞれにおいて生成された。
【0101】
復元高解MCG画像を作成する現在好ましい方法のBzビューおよびBxyビューがその後、図14に示すように、双三次補間方法およびグランドトゥルース画像を用いて比較された。評価を目的として、ビオ・サバールの法則に基づいてグランドトゥルース電流から再構築された高解MCG画像が示される。物理的条件をより良好にシミュレートするために、5%一様分布ランダムノイズが各センサーに加えられ、その後現在好ましい方法および双三次補間方法がこのノイズを含むセンサー結果に適用された。3つの画像の隣り合わせの比較から視覚的に明らかであるように、現在好ましい方法を用いて構築された高解MCG画像は、グランドトゥルースMCG画像により近く一致する。従って、本方法は、高解MCG画像の構築においてより高いレベルの精度を達成する。
【0102】
上述のように、高解MCG画像を分析することによって電流位置の2D推定値を得ることができる。位置特定精度を向上させるための現在好ましい方法は、電流の3D位置およびモーメントの両方を再構築する非線形最適化、すなわち、逆問題を解くことである。線形モデルによって復元される正確な高解MCG画像は、逆問題のための良好な初期設定を提供し、より早く大域的最適解に収束するのを助ける。高解MCG画像から2D推定値を生成するための好ましい方法は以下のとおりである。
【0103】
高解MCG画像Bz(i,j)(i=1,2,・・・,N;j=1,2,・・・,N)を所与として、Bz(i,j)の接線成分の最大点B’xy(i,j)は、電流の2D位置(xp,yp)を指す。これは、図14の2行目の画像に見ることができる。Bz(i,j)の接線成分は式5を使用して計算されることができる。この時点で、逆問題を解くことが残っている。
【0104】

【0105】

【0106】

【0107】

【0108】

【0109】

【0110】
本シミュレーション設定は、図1Aに示されている設定と同様である。2.5cmのセンサー間隔をおいて、8×8個の物理センサー13がある。全体の測定面積は17.5×17.5cm2である。心臓容積19は10×10×10cm3である。センサーアレイ(またはセンサーユニット)11から心臓容積19の上部までの距離は5cmである。各試行において、心臓容積内にランダム電流が生成される。64個のセンサー13においてBzが計算され、5%、10%または15%のランダムノイズが各センサーに加えられる。この加えられたノイズは一様またはガウス分布を有する。ノイズを有する64個の低密度測定値が使用されて、N×N分解能を有する高解MCG画像を復元する。これを達成するために、2つの隣接する現実のセンサーの間に50ピクセルが挿入され、これは、高解MCG画像内の隣接するピクセル間の間隔が0.5mmであることを意味する。この場合N=50×7+1=351である。
【0111】
図19a〜19d内の表1〜4はそれぞれ、いくつかのシミュレーション結果を示す。図19a内の表1は、200回の試行にわたる種々のノイズタイプおよび比率に関する2D電流位置特定誤差を示す(深度はこの事例においては考慮されない)。2D電流位置特定に関する精度についての研究報告は多数存在する。
例えば、Pacing and Clinical Electrophysiology,14(111):1961−1965,1991における、Weismuller他による「ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群における副伝導路の生体磁気非侵襲的位置特定(Biomagnetic Noninvasive Localization of Accessory Pathways in Wolff‐Parkinson‐White Syndrome)」、およびEuropean Heart J.,13(5):616−622,1992における、P.Weismuller他による「マルチチャネルシステムによるウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群における副伝導路の心磁図記録による非侵襲的位置特定(Magnetocardiographic Non‐invasive Localization of Accessory Pathways in the Wolff‐Parkinson‐White Syndrome by a Multichannel System)」において、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト(Wolff‐Parkinson‐White、WPW)症候群に対する2D位置特定精度は0cm〜5cmの間であり、平均1.8cmである。
さらに、IEEE Trans.on Medical Imaging,17(3):479−485,1998における、P.L.Agren他による「不整脈基質の心磁図記録による位置特定:基準としての副伝導路除去を伴う方法論的研究(Magnetocardiographic Localization of Arrhythmia Substrates: a Methodology Study with Accessory Pathway Ablation as Reference)」は、不整脈基質に対する2D位置特定精度を、2.1cmおよび9.6cmであるものとして報告している。
最後に、J.of Arrhythmia,16:580−586,2000における、S.Yamada他による「心磁図を使用することによる不整脈病巣の非侵襲的診断−磁気解剖学的マッピングシステムの方法および精度(Noninvasive Diagnosis of Arrhythmic Foci by Using Magnetocardiograms,‐ Method and Accuracy of Magneto‐Anatomical Mapping System)」、および、Arrhythmias and Fetal Diagnosis,2005における、S.Yamada他による「臨床医学における心磁図:新虚血における特有の情報(Magnetocardiograms in clinical medicine: unique information on cardiac ischemia)」は、8×8個のセンサー、2.5cmのセンサー間隔、および5%のランダムノイズから成る類似の設定を示しているが、センサー深度もノイズタイプも報告されていない。それらは、2D位置特定精度をシミュレーションに関しては1.4mm+/−0.7mm、WPWに関しては8mm、および7mm PCVであると報告している。以前の研究と比較すると、本方法は現行の技術水準よりも良好な精度を示している。
【0112】
その上、本方法は電流の3D位置およびそのモーメントの再構築を可能にする。本発明の3D電流を再構築する能力は当該技術分野において新規のものである。
【0113】

【0114】

【0115】
実際には、電流は点というよりもボクセルのようなものである。種々のサイズのボクセル電流が0.5mm間隔で小さな立方体内に点電流のセットを生成することによってシミュレートされた。図17は、ボクセル電流に関する2D位置特定誤差を示している。ボクセル電流の幾何学的中心がグランドトゥルースとして使用される。結果は、本発明の位置特定アルゴリズムが電流のサイズに対して良好であり、(点電流のみを考慮した)最新技術に匹敵することを実証している。
【0116】
以上において、単一電流位置特定問題のみが考慮されており、高密度MCG画像から良好な初期設定が計算されることができる。実際には、2つ以上のボクセル電流が存在する可能性がある。複数電流位置特定の初期設定のために信号分解が必要とされ得る。要約すると、本方法は、正確な高解MCG画像を復元/作成することが可能である。単一電流2D位置特定に関して、高解MCG画像が効率的、正確、かつ高信頼性の様式で作成される。加えて、本発明のアルゴリズムは、電流の深度およびモーメントを再構築することができる。これは、複数の電流源について解くように容易に拡張することができる。
【0117】
上記で説明されたように、代替の実施形態は、元のサイズの空間容積キューブのセンサー面積を、好ましくは元のサイズの2×2倍に拡張する。説明を容易にするために、拡張されていない実施態様は以下用語「元のモデル」であり、拡張された実施態様は「拡張モデル」と称される。元のモデルは好ましくは、センサー領域の外側に仮想センサーを挿入することによって拡張モデルを作成するように拡張される。これは、図20に示されている境界において電流双極子が位置特定されるのにより多くのサポートを提供する。この手法のいくつかの利点は、診断および位置特定のためのより良好な視覚化、分解能の変更のためのオプション(すなわち、ズームイン)、および境界源に関するより良好な精度である。
【0118】
しかしながら、この手法は、その実装に対して幾つかの実際的な課題を呈する。第1に、これはデータ記憶容量が大きく、計算要件が高い。これらの実際的な制限を克服するために、拡張モデルの上記で説明された実施態様は、計算資源が限られている状況に対応するように修正されることができる。
【0119】
最初に、上記で説明されたように、合成拡張高分解能MCG画像から外挿PCAモデルが学習される。すなわち、元のサイズのセンサー領域を使用する代わりに、各サンプルに対して拡張高密度MCG画像が計算される。第2に、アクティブメモリー要件を低減するために、アクティブメモリー(すなわち、RAM)の代わりに長期記憶(すなわち、ハード・ディスク・スペース)が使用される場合がある。最後に、モデル学習のための計算は分割されて並列に実行され、これは実行時間を大幅に改善する。
【0120】
最初に、並列に実行するための準備において、モデル学習のための計算が分割される。ランダム電流双極子を所与として、拡張高密度磁場画像は、図21に示されるように行ベクトルf1tとして計算および記憶される。このステップはK回繰り返され、図示されるようにK個の行ベクトルがデータファイル内に記憶される。上記で説明された元のモデルにおいて、行内にサンプルベクトルが生成されたが、この代替の実施態様では、サンプルベクトルはスレッド内に生成される。好ましくは、8個のスレッドが8個のCPUに対して生成される。結果として得られる8個のファイルはその後1つに統合される。
【0121】
図22を参照すると、上記で説明された元のモデルの実施態様において、データファイルに対してメモリーバッファーが割り当てられることができ、すべてが一度に行列に読み出されることができる(72)。次いで、平均ベクトルおよび正規化データ行列が計算されることができる(74)。次いで、共分散行列に対するメモリーバッファーが割り当てられることができる(K<<2Nx2Nであるため)(76)。次いで、固有分解が共分散行列に適用されることができる。
【0122】
対照的に拡張モデルの本実施態様においては、平均ベクトルは、データベクトルを1つずつ読み出すとともに平均ベクトルをハードディスク内に記憶することによって計算されることができる。次いで、共分散行列がL×L個のブロックに分割されることができる(78)。各ブロックを計算するために、データファイルからサンプルベクトルの対応する2つのブロック(例えば、ブロックb1t1もしくはブロックb1tLまたはブロックbLtLなど)を読み出すことができる。したがって、データファイル全体をアクティブメモリー内に記憶する必要はない。さらに有利なことに、これは共分散行列の異なる複数のブロックの並列計算を可能にする。
【0123】
この例示的な実施態様が図23に示される。拡張された境界ボックス内で異なる複数の水平面内にランダムサンプルが生成される。1つの実施形態において、2000個のサンプルが生成され、好ましくは2cm間隔の6個の水平層が定義される。ランダムな位置および向きを有するランダム電流インパルスが生成され、それらの大きさが正規化される。
【0124】
元のモデルと対比しての拡張モデルの本発明の実施態様の効率改善が実験結果の比較によって実証された。元のモデルが、12000個のサンプルのデータスケール、共分散行列のための1Gのアクティブメモリー、およびデータ行列のための1Gのアクティブメモリーを使用する32ビットシステムにおいて実装された。この設定のための処理時間はおよそ4週間であった。
【0125】
拡張モデルが並列計算を有する64ビットシステムを使用して実装された。この実施態様は、60000個のサンプルのデータスケール、および共分散行列のための15Gのアクティブメモリーを使用した。この代替の実施態様のための処理時間(すなわち、トレーニング時間)は6日間であった。
【0126】
より広い表示領域を提供することに加えて、拡張モデルは向上した位置特定精度も実証した。元のモデルを使用すると、1x1x1ボクセル双極子に対する位置特定精度は200回の試行および5%の一様ノイズにわたって、1.2+/−1.1(mm)の値をもたらした。対照的に、拡張モデルは1.14+/−0.98(mm)の値をもたらした。
【0127】
拡張モデルに関する3D空間内の双極子位置特定誤差分布も試験された。この設定は、8×8センサー、2.5×2.5cm間隔、5%の一様分布ノイズ、3.25×3.25×3.25測定境界キューブ、1×1×1 3Dボクセル二重層ソース、境界キューブ_z+1.25/2+0.25(オフセット)=4.125cmに等しいセンサーオフセット設定(最上レベルに関して)、5×5×5=125回測定、および各測定において100回の試行を使用した。この実験の結果は、平均して、拡張モデルが電流源、特にセンサー境界の近くに位置している電流源に関してより良好な位置特定精度を提供することを示している。この実験の図が図24および25に示されている。
【0128】
レベルI〜Vのそれぞれに関する元のモデルおよび拡張モデルのための測定結果の比較が、それぞれ図26〜30に示されている。レベルI〜Vに関する表のそれぞれにおいて、X−Y座標は図24におけるX−Y座標に対応し、レベル番号I〜Vは図24におけるZ座標に対応する。さらに、図26〜30内の表のそれぞれにおいて、元のモデルを拡張モデルと比較している各行(1〜5の番号を付されている)に関して、上部の数字は元のモデルによって得られた値であり、下部の、より大きなフォントで太字の数字は拡張モデルによって得られた値である。図示されるように、拡張モデルによって得られた値のほとんどは元のモデルによって得られた値よりも良好である。
【0129】
本代替の実施態様は、より大きなデータ(すなわち、より大きな組織容積)の使用に関連付けられる計算複雑度を解決する。なお、さらに、本発明の拡張モデルは、境界双極子の位置特定に関して元のモデルよりも良好に機能する。
【0130】
いくつかの具体的な実施形態とともに本発明が記載されてきたが、さらに多くの代替形態、修正形態および変形形態が上記の記載に照らして明白であることは、当業者には明らかである。従って、本明細書に記載されている本発明は、添付の特許請求項の精神および範囲内に含まれ得るような、すべてのこのような代替形態、修正形態、応用形態および変形形態を包含するように意図される。
【符号の説明】
【0131】
10,11…MCGセンサーユニット、12…低解第1MCG画像(第1MCG画像)、13…電磁センサー、14…高解MCG画像合成器(MCG画像合成器)、16…高解第2MCG画像(第2MCG画像)、17…電流インパルス、18…ノイズ除去画像処理ブロック、19…心臓(心臓容積)、20…心臓組織(心臓組織容積)、22…高解PCA線形モデル(PCA線形モデル)、24…電流ローカライザー、26…MCGセンサーユニットシミュレーター、31…仮想センサー、32…高解MCGセンサーユニット、33…心臓容積境界ボックス、34…アレイ、36…電流インパルス、40…層、41…深度層、42…高解MCG画像、50…モデルブロック、52…肺、54…心臓動脈、60…仮想高解MCGセンサーユニット、64…アレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
M×M個のデータ値の低密度測定値出力を生成するM×M個の電磁センサーを含むセンサーユニットであって、
前記低密度測定値出力は第1MCG画像を構成するセンサーユニットと、
前記第1MCG画像を受け取るとともに該第1MCG画像の分解能の高い画像表現を生成するための高分解能MCG画像合成器であって、前記分解能の高い画像表現は前記第1MCG画像よりも画素密度の高い第2MCG画像である高分解能MCG画像合成器と、
前記第2MCG画像を受け取るとともに、該第2MCG画像のノイズ除去された、分解能の低い画像表現を生成するためのノイズ除去画像処理ブロックであって前記ノイズ除去された分解能の低い画像表現は前記第1MCG画像の前記M×M個のデータ値の前記範囲に対応する物理センサー領域内のM×M画素を有するとともに、前記第1MCG画像と比較して低減されたノイズレベルを有する第3MCG画像であるノイズ除去画像処理ブロックと、
を備えたことを特徴とする心磁図(MCG)システム。
【請求項2】
前記ノイズ除去画像処理ブロックは、ターゲット画素として、その画像位置が前記第1MCG画像の前記M×M個のデータ値の前記画像位置に対応する前記第2MCG画像の前記画素を識別し、前記物理センサー領域に前記ターゲット画素をデータ投入することを特徴とする請求項1に記載のMCGシステム。
【請求項3】
前記高分解能MCG画像合成器によって前記第2MCG画像を前記生成することは、
前記第1MCG画像よりも分解能の高いモデルMCG画像を定義する線形モデルにアクセスするステップであって、該線形モデルは、該線形モデルの特性と、前記M×M個のデータ値の低密度測定値出力の任意のデータ値の特性との間の補間パターンを確立するアクセスするステップと、
中間MCG画像を、前記第1MCG画像を前記線形モデルの部分空間上に投影して該中間MCG画像のための係数を前記線形モデルおよび前記M×M個のデータ値に従って確立することによって生成するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のMCGシステム。
【請求項4】
前記高分解能MCG画像合成器は、前記第2MCG画像として前記中間画像を出力することを特徴とする請求項3に記載のMCGシステム。
【請求項5】
前記線形モデルは、前記第2MCG画像と同じ分解能を有する複数の合成心磁図画像を作成することによって定義され、該合成心磁図画像は、予測される心磁図システムにおいて知覚されるとともに、3次元空間心臓容積内のシミュレートされる電気インパルスにより作成されることを特徴とする請求項3に記載のMCGシステム。
【請求項6】
前記合成MCG画像は前記心臓容積内でランダムに生成される電流に基づき、前記線形モデルは主成分分析(PCA)を使用することによって作成されたことを特徴とする請求項5に記載のMCGシステム。
【請求項7】

【請求項8】
前記中間MCG画像は以下の、
新たな双極子およびM×M個の低密度測定値gjを所与として、前記固有行列内の前記対応する行を見つけるとともに、結果として得られる部分行列をΣgとして示すステップと、
前記低密度測定値を前記PCA部分空間に投影するとともに、前記係数をcg=Σg+(gj−gmean)として計算するステップであって、式中、Σg+はΣgの疑似逆である、投影するとともに計算するステップと、
前記高密度磁場マップBzをfj=Σfg+fmeanとして再構築するために、前記計算された係数および元のPCA空間を使用するステップと、
を含むことを特徴とする請求項7に記載のMCGシステム。
【請求項9】
前記中間MCG画像を前記生成することは、
前記低密度測定値出力をベクトルgとして定義するステップと、
前記線形モデルをΣとして定義するステップと、
部分固有行列Σgを形成するためにΣから低密度測定値出力に対応する前記行を抽出するステップと、
gをΣg上に投影するステップと、
前記係数の確立をcg=Σg+(gi−μg)として定義するステップであって、式中、Σg+はΣgの前記疑似逆であり、μgは線形モデルΣの平均ベクトルμから抽出される係数である、定義するステップと、
前記中間MCG画像ベクトルhをh=Σ・cg+μとして定義するステップと、
を含むことを特徴とする請求項3に記載のMCGシステム。
【請求項10】

【請求項11】




【請求項12】
前記第2MCG画像は、前記第1MCG画像よりも広いイメージング領域からなることを特徴とする請求項1に記載のMCGシステム。
【請求項13】
前記第3MCG画像は、前記第1MCG画像よりも広いイメージング領域にわたり、
前記第3MCG画像の物理センサー領域の前記画素密度は前記第3MCG画像全体にわたって一様に広がり、
前記物理センサー領域を超えて延在する前記第3MCG画像の前記ピクセルは、前記第2MCG画像から求められるシミュレートされたセンサーデータを投入することを特徴とする請求項12に記載のMCGシステム。
【請求項14】
前記ノイズ除去画像処理ブロックは、ターゲットピクセルとして、そのピクセル画像位置が前記第3MCG画像の前記ピクセル画像位置に対応する前記第2MCG画像の前記画素を識別し、前記第3MCGの前記ピクセル画像位置にそれらの対応するターゲット画素をデータ投入することを特徴とする請求項13に記載のMCGシステム。
【請求項15】
前記第3MCG画像の前記イメージング範囲は、前記第2MCG画像の前記イメージング範囲と同一であることを特徴とする請求項13に記載のMCGシステム。
【請求項16】
前記高分解能MCG画像合成器によって前記第1MCG画像の前記より分解能の高い表現を前記生成することは、
前記第1MCG画像よりも著しく分解能の高いモデルMCG画像を定義する線形モデルにアクセスするステップであって、該線形モデルは前記第2MCG画像と同じサイズおよび分解能を有する複数の合成心磁図画像を作成され、アクセスするステップと、該合成心磁図画像が、前記第2MCG画像と類似の分解能の仮想心磁図システムにおいて知覚される3次元空間心臓容積内でシミュレートされる電気インパルスに基づくステップと、前記線形モデルの特性と、前記低密度測定値出力の任意のデータ値の特性との間の補間パターンを確立するために前記複数の合成心磁図画像からの情報が前記線形モデルに組み込まれるステップと、
前記第2MCG画像を前記生成することが、該第2MCG画像の該作成において使用するための係数を確立するために、前記第1MCG画像を前記線形モデルの前記部分空間上に前記投影することを含むステップと、
を含むことを特徴とする請求項12に記載のMCGシステム。
【請求項17】

【請求項18】
心磁図(MCG)システムであって、
M×M個のデータ値の低密度測定値出力を生成するM×M個の電磁センサーを含むセンサーユニットであって、前記低密度測定値出力は第1MCG画像を構成する、センサーユニットと、
前記第1MCG画像を受け取るとともに該第1MCG画像のより分解能の高い画像表現を生成するための高分解能MCG画像合成器であって、前記より分解能の高い画像表現は前記第1MCG画像よりも画素密度が高く、前記第1MCG画像よりも広いイメージング領域にわたる第2MCG画像である高分解能MCG画像合成器と、
を備えたことを特徴とする心磁図(MCG)システム。
【請求項19】
前記高分解能MCG画像合成器によって前記第1MCG画像の前記より分解能の高い画像表現を前記生成することは、
前記第1MCG画像よりも著しく分解能の高いモデルMCG画像を定義する線形モデルにアクセスするステップであって、該線形モデルは、前記第2MCG画像とほぼ類似のサイズおよび分解能を有する複数の合成心磁図画像を作成することによって定義される、アクセスするステップと、該合成心磁図画像が、前記第2MCG画像と類似の分解能および画像サイズの仮想心磁図システムにおいて知覚されるであろうような3次元空間容積内でシミュレートされる電気インパルスに基づくステップと、前記線形モデルの特性と、前記低密度測定値出力の任意のデータ値の特性との間の補間パターンを確立するために、前記複数の合成心磁図画像からの情報が前記線形モデルに組み込まれるステップと、
前記第2MCG画像を前記生成することが、該第2MCG画像のための係数を確立するために、前記第1MCG画像を前記線形モデルの前記部分空間上に前記投影することを含むステップと、
を含むことを特徴とする請求項18に記載のMCGシステム。
【請求項20】
前記3次元空間容積はシミュレートされた心臓組織容積であり、
前記合成MCG画像は前記シミュレートされた心臓容積内でランダムに生成される電流に基づき、
前記線形モデルは主成分分析(PCA)を使用することによって作成されることを特徴とする請求項19に記載のMCGシステム。
【請求項21】


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図1】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−66708(P2013−66708A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204038(P2012−204038)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】