説明

MIG又はMAG溶接ガン

【課題】人間工学的なMIG又はMAG溶接グリップを得ること。
【解決手段】本発明は、溶接工程中に溶接ガンを支持し、操作し、狙いを定めるための手持ち式のハンドルを備えるMIG又はMAG溶接ガンであって、ハンドルが、本体部材(1)と、回動グリップ部材(2)を有する。回動グリップ部材(2)は、本体部材(1)に対して回動可能であり且つ本体部材(1)と同じ長手方向の長さの少なくとも一部に亘って本体部材(1)に沿って位置する。そして、回動グリップ部材(2)を回動させて回動グリップ部材(2)の自由端を本体部材(1)に係合する位置に配置した場合に、本体部材(1)と回動グリップ部材(2)が、一つの手で把持可能なハンドルを共同して構成する。そして、回動グリップ部材2を本体部材1から遠ざけるように回転させた位置に配置した場合に、本体部材1及び回動グリップ部材2がV字フォークを共同して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接工程中に溶接ガンを支持し、操作し、狙いを定めるための手持ち式のハンドルを備えるMIG又はMAG溶接ガンであって、ハンドルが、本体部材と、本体部材に対して回動可能であり且つ本体部材と同じ長手方向の長さの少なくとも一部に亘って本体部材に沿って位置する回動グリップ部材とを含み、回動グリップ部材の回動によって、回動グリップ部材の自由端が本体部材から離れて、回動グリップ部材を保持する手が本体部材と回動グリップ部材との間にフィットする位置まで回動可能であり、その手の上部に本体部材が支えられる溶接ガンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許公報WO0234450(特許文献1)及びUS-4,161,643(特許文献2)は、回動可能なグリップを含むこの種のピストル型ハンドルを開示している。これらのハンドルは、重く、且つ手が常に本体の下にあるという一つの操作方法のみでの使用が可能という理由で一般に評判がよくなかった。したがって、汎用モデルは、本体から突出するピストルグリップなしのものであるが、代わりに「溶接ガン」の本体もグリップ又はハンドルとして同時に機能している。
【0003】
この種の溶接ガンでは、溶接ワイヤ及びシールドガスを、ハンドルを通してハンドルの軸方向で長手方向に通過させる。ハンドルは、弓状シャンク形の延長部分を有し、その端部には、溶接ノズルと、ノズルの周囲を取り巻くシールドガスドームが設けられている。
【0004】
特許公報US-6,225,599(特許文献3)はMIG溶接ガンを開示しており、そのハンドルは、その間に例えば20°の角度を有する二つの軸方向に連続するハンドル要素を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO0234450
【特許文献2】米国特許US-4,161,643号公報
【特許文献3】米国特許US-6,225,599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に示すような溶接ガンの問題点としては、様々なタイプの溶接継手を溶接する工程で、手の位置が悪い場合があり、溶接ガンを支持した結果、手が疲れることである。これにより、溶接工が首及び肩の病気に罹りやすくなり、腕及び手のひらには腱鞘炎などの反復性ストレス障害が発生する場合がある。
【0007】
特許文献3に示される技術の場合も、上向隅肉(overhead fillet)溶接工程及び横向立向隅肉(horizontal vertical fillet)溶接工程の際などのいくつかの溶接継手の場合に、溶接ガンを、手が疲れるような僅かに高くした位置で手によって支持しなければならないという問題が取り除かれるものではない。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、人間工学的なMIG又はMAG溶接グリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、特許請求の範囲の請求項1に示される特徴的な構成を基礎として本発明によって達成される。本発明の好ましい実施形態が従属項に示されている。
【0009】
本発明のMIG又はMAG溶接ガンは、溶接工程中に溶接ガンを支持し、操作し、狙いを定めるための手持ち式ハンドルを備えるMIG又はMAG溶接ガンであって、ハンドルが、本体部材と、本体部材に対して回動可能であり且つ本体部材と同じ長手方向の長さの少なくとも一部に亘って本体部材に沿って位置する回動グリップ部材とを含み、回動グリップ部材の回動によって、回動グリップ部材の自由端が本体部材から離れて、回動グリップ部材を保持する手が本体部材と回動グリップ部材との間にフィットする位置まで回動可能であり、手の上部に本体部材が支えられる溶接ガンにおいて、回動グリップ部材がトラフの形状を有し、トラフが本体部材の外側にフィットするように寸法取りされており、その結果、本体部材がトラフ内に少なくとも部分的に収容され、回動グリップ部材が回動されて回動グリップ部材の自由端が本体部材に係合する位置に配置された場合に、これらの二つの構成部品である本体部材と回動グリップ部材が、一つの手で把持可能なハンドルを共同して構成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のMIG又はMAG溶接ガンによれば、例えば、上向隅肉溶接及び横向立向隅肉溶接工程等の様々なタイプの溶接継手の間で手の位置を変更することができる。そして、手の上に支えられているハンドルの本体をかなり低い高さの支持位置に手で保持することができる。従って、現在利用できる溶接ガンのように容易に手が疲れることはない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のMIG又はMAG溶接ガンの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次いで、本発明の一つの例示の実施形態を添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明のMIG又はMAG溶接ガンの側面図である。
【0014】
図示した例示の実施形態において、溶接ガンは、本体部材1と、本体部材1に対して回動可能であり且つ本体部材1と同じ長手方向の長さの少なくとも一部にわたって本体部材1に沿って位置する回動グリップ部材2とを含む。回動グリップ部材2は、回動によって回動グリップ部材2の自由端が本体部材1から離れて、回動グリップ部材2を把持する手が本体部材1と回動可能な回動グリップ部材2との間にフィット(fit)する位置まで回動可能な構成を有しており、作業位置で手の上部に本体部材1が支えられる。回動グリップ部材2が回動されて、回動グリップ部材2の自由端が本体部材1に係合する位置に配置された場合に、本体部材1と回動グリップ部材2は、一つの手で把持可能なハンドルを共同して構成する。開かれた状態のグリップ部材2を使うか、又は、閉じられた状態のグリップ部材2と本体部材1によって共同して構成されるハンドルを使うかによって、溶接継手の形式が異なる溶接工程において、手のために最良な位置を選択することができる。
【0015】
作動トリガ3は、回動グリップ部材2のピボットリンク4が設けられている側の端部近傍で、回動グリップ部材2の本体部材1から離反する側の面に沿うように回動グリップ部材2に設けられている。このように、図示した実施形態において、回動グリップ部材2は、溶接ガンのノズル端部の近傍に位置する本体部材1の端部に、ピボットリンク4を介して直接接続されている。単一のピボットリンク4は、最も単純で最も経済的に優れた解決策であり、実際に、溶接ガンの価格を少しも高くしない。なお、この簡単なピボットリンク4の代わりに、他の機構を使用することはもちろん可能であり、例えば、ピボットリンク4とスライドとの組み合わせのような、手がグリップ部材2を把持しているときに手がその間にフィットするように構成部品1と構成部品2を互いに適切に離れるようにすることができる手段を使用してもよい。
【0016】
回動グリップ部材2は、回動角用のリミッタ5をさらに含み、そのリミッタ5よって回動グリップ部材2の回動角を調整することができる。グリップ部材2に収容されるものとしては、例えば、調整用の指回し式円形板を挙げることができる。回動グリップ部材2は、本体部材1の長手方向軸に対して、30°〜75°、好ましくは40°〜60°の範囲内の回動角を有する。もちろん、この回動角は、前記スライド機構を伴う回動動作の場合には、より小さくすることができる。
【0017】
回動グリップ部材2は、好ましくは、トラフの形状(trough)を有している。トラフは、本体部材の外側にフィットするように寸法取りされており、その結果、本体部材1は、トラフ内に少なくとも部分的に収容される。
【0018】
図示の場合には、回動グリップ部材2が本体部材1から遠ざかるように回転された位置にある場合に、本体部材1及び回動グリップ部材2はV字フォークを共同して構成する。
【符号の説明】
【0019】
1 本体部材(構成部品)
2 回動グリップ部材(構成部品)
3 作動トリガ
4 ピボットリンク
5 リミッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接工程中に溶接ガンを支持し、操作し、狙いを定めるための手持ち式のハンドルを備えるMIG又はMAG溶接ガンであって、前記ハンドルが、本体部材(1)と、前記本体部材(1)に対して回動可能であり且つ前記本体部材と同じ長手方向の長さの少なくとも一部に亘って前記本体部材に沿って位置する回動グリップ部材(2)とを含み、該回動グリップ部材(2)の回動によって、前記回動グリップ部材(2)の自由端が前記本体部材(1)から離れて、前記回動グリップ部材(2)を保持する手が前記本体部材(1)と前記回動グリップ部材(2)との間にフィットする位置まで回動可能であり、前記手の上部に前記本体部材(1)が支えられる溶接ガンにおいて、
前記回動グリップ部材(2)がトラフの形状を有し、前記トラフが前記本体部材(1)の外側にフィットするように寸法取りされており、その結果、前記本体部材(1)が前記トラフ内に少なくとも部分的に収容され、前記回動グリップ部材(2)が回動されて前記回動グリップ部材(2)の自由端が前記本体部材(1)に係合する位置に配置された場合に、これらの二つの構成部品である前記本体部材(1)と前記回動グリップ部材(2)が、一つの手で把持可能な前記ハンドルを共同して構成することを特徴とする溶接ガン。
【請求項2】
前記回動グリップ部材(2)には、前記回動グリップ部材(2)のピボットリンク(4)が設けられている側の端部近傍にて、前記回動グリップ部材(2)の前記本体部材(1)から離反する側の面に沿うように、作動トリガ(3)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の溶接ガン。
【請求項3】
前記回動グリップ部材(2)には、前記回動グリップ部材(2)の回動角を調整可能な回動角用のリミッタ(5)が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接ガン。
【請求項4】
前記回動グリップ部材(2)は、前記本体部材(1)の長手方向軸に対して、30°〜75°、好ましくは40°〜60°の範囲内の回動角を有することを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の溶接ガン。
【請求項5】
前記ハンドルは、前記回動グリップ部材(2)を前記本体部材(1)から遠ざかるように回動させた位置に配置した場合に、前記本体部材(1)と前記回動グリップ部材(2)で共同してV字フォークを構成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の溶接ガン。

【図1】
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【公表番号】特表2010−520812(P2010−520812A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552237(P2009−552237)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/FI2008/050106
【国際公開番号】WO2008/110663
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(509251338)
【Fターム(参考)】