説明

MIM積分キャパシタを有するボロメータピクセル

【課題】バルキネスの点から見て改善した新規な検出デバイスを提供する。
【解決手段】
熱撮像マイクロ電子デバイスであって、
−支持体(200)と、
−前記支持体上に形成される電子コンポーネントを相互接続するための複数の金属レベル(M1、…、M5、M6)と、
−前記支持体上に形成され、各々が放射エネルギーを吸収し、且つ前記吸収した放射エネルギーに応じて1つ以上の電気信号を供給できる膜(210)を含む熱検出器アレイ、及び前記膜からの電気信号を読み出す、前記支持体に集積される読み出し手段と、
を備え、
前記検出器の少なくとも数個は、前記膜に対向して形成される少なくとも1つの積分キャパシタ(CI)を有する積分器を備えた読み出し手段を有し、
前記キャパシタは、前記複数の相互接続金属レベル(M1、…、M5、M6)の所与の相互接続金属レベルにおいて作成される少なくとも1つの上側プレート(244)有することを特徴とする、熱撮像マイクロ電子デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射検出用のデバイス、特にボロメータのような熱検出原理に基づく電磁放射検出用デバイスの分野に関する。
【0002】
例えば赤外線撮像の分野において用いられ、改良したレイアウトを有する読み出し回路に関連するボロメータセンサを含むセルまたはピクセルのアレイで形成される熱画像センサを提供する。
【0003】
本発明は、集積度、及び読み出し回路の出力における信号の品質の観点からの改善を提供する。
【背景技術】
【0004】
図1にボロメータセンサのレイアウト例を示す。
【0005】
本デバイスは、まず、入射する電磁放射に対する吸収膜1を備えている。この膜1は、導電性のマウント3を介して支持体2の上方に懸架される。
【0006】
電磁放射の影響下で、膜1は温まり、その温度を層4に伝えることができ、この層4は、半導体とし、例えば放射エネルギーを測定電気信号に変換できる1つ以上のサーミスタで構成することができる。
【0007】
支持体2は、1つ以上の集積回路、特に伝導される測定電気信号を読み出すための少なくとも1つの回路を備えたマイクロ電子デバイスの上位層とすることができる。
【0008】
検出器(ボロメータセンサ)は、一方の端部が膜1に接続され、他方の端部がアンカーマウント3に接続され、膜1を支持体2の上方に懸架したまま維持するアーム5a、5bをさらに備える。アーム5a、5bは、その長さの大部分において、膜1から離間させ、膜の熱損失を抑えて、これにより、検出器の感度を向上させる。
【0009】
電磁放射を反射する層6を膜1に対向して支持体2上に設置することができる。この層6と膜1との間の距離は、アンカーマウント3の高さによって決定される。この距離を検出波長の4分の1とすることにより、4分の1波長共振をつくり出し、膜の吸収を増加させることができる。
【0010】
一般的に、熱画像センサは、図1につき述べたような検出器を各々が備える、X×Y個のピクセル又は基本セルのアレイで形成される。
【0011】
したがって、赤外線撮像では、ピクセル毎に1つのボロメータを有し、赤外フラックスを感知するためのピクセルのアレイを備える撮像装置を用いて、撮像シーン、すなわち画像の記録期間中カバーされる表面の赤外線像を生成し、その像の大きさは、観察条件及び使用するセンサの特性に起因する。
【0012】
ボロメータは、抵抗値が温度、従ってシーンからの放射フラックスによって変化する、抵抗センサとして動作する。赤外フラックスに対応するボロメータの抵抗値を読み取るために、例えば、電圧を印加して、電流を測定することができる。
【0013】
図2にボロメータのセンサセル及び関連する読み出し回路の電気回路図を示してある。
【0014】
このデバイスでは、所定の設定値、例えばセンサの電流の平均値に近い値の電流を検出器10によって生じる電流から減算する。
【0015】
設定値を有するこのような電流は、観測される放射に無感応、又は無感応にした基準ボロメータ20で形成できる、設定電流を有するソースから生じる。基準ボロメータは、例えばピクセルのアレイの列の最後、又は行の先頭に設けることができる。
【0016】
したがって、シーンからの電磁放射フラックスの影響の下での、感知ボロメータの抵抗の変化に対応するできるだけ小さな電流を積分するようにしようとしている。
【0017】
感知ボロメータからの電流と基準ボロメータからの電流との差によって生じる電流は、積分器30によって電圧に変換され、積分器30は、コンパレータ40と、このコンパレータ40の反転入力と出力との間に位置するCintの容量を有する積分キャパシタ50とで形成される。
【0018】
サンプリング手段80を、積分器30の出力に設けることができる。
【0019】
感知ピクセル内への基準ボロメータの集積化は、バルキネス、消費電力、及び検出精度の課題を提起する。
【0020】
ボロメータを有する画像アレイセンサでは、積分キャパシタ及びコンパレータ40は、一般に、列の最後に位置させる。
【0021】
図3に、従来技術による熱撮像デバイスの例示的なレイアウトを示してある。
【0022】
このデバイスは、感知ボロメータセンサのアレイ100と、このアレイに沿って配置され、観測放射に対して不感応にした基準センサの第1の組101及び第2の組102と、アレイ100の行をアドレス指定するための回路110と、アレイの列をアドレス指定する回路120とを備えている。読み出し回路の積分キャパシタは、一般に、感知センサのアレイの外側で、列の最後に、例えば基準センサの組102と列アドレス指定回路120との間に配置される。
【0023】
非冷却型のIR撮像装置専用のセンサには、全く抵抗性でなく、シーンに対する反応が非常に小さいものがある。したがって、それらに強くバイアスをかけて、満足な信号対雑音比を有するようにする必要がある。
【0024】
テクノロジーによっては、大電流を積分しなければならない場合があり、列の最後にキャパシタを集積するために必要とされる表面積が、アレイの感知領域より大きくなってしまうことがある。
【0025】
特許文献1には、熱撮像マイクロ電子デバイスであって、支持体上に形成した電子コンポーネントを相互接続するための複数の金属レベル、並びに支持体上に形成され、各々が放射エネルギーを吸収でき、吸収した放射エネルギーに応じて1つ以上の電気信号を供給する膜を含む熱検出器のアレイ、及び膜から生じる電気信号を読み出すための手段、を備えた熱撮像マイクロ電子デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第5021663号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の目的は、特にバルキネスの点から見て改善した新規な検出デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、第一に、熱撮像マイクロ電子デバイスであって、
−支持体と、
−前記支持体上に形成される電子コンポーネントを相互接続するための複数の金属レベルと、
−前記支持体上に形成され、各々が放射エネルギーを吸収し、且つ前記吸収した放射エネルギーに応じて1つ以上の電気信号を供給できる膜を含む熱検出器アレイ、及び前記膜からの電気信号を読み出す、前記支持体に集積される読み出し手段と、
を備え、
前記検出器の少なくとも数個は、前記膜に対向して形成される少なくとも1つの積分キャパシタを有する積分器を備えた読み出し手段を有し、
前記キャパシタは、前記複数の相互接続金属レベルの所与の相互接続金属レベルにおいて作成される少なくとも1つの上側プレート有することを特徴とする、熱撮像マイクロ電子デバイスに関する。
【0029】
膜に対向して積分キャパシタを配置するため、デバイスのバルキネスが減少した。
【0030】
積分キャパシタを列の最後に位置させるデバイスと比べると、スペースをかなり増やすことができる。
【0031】
MIMキャパシタの下側プレートは、前記相互接続金属レベルの他のレベルに形成することができる。
【0032】
上側プレートは、読み出し回路との接続を確立する1以上の垂直の相互接続導電部材、すなわちビアに接続することができる。
【0033】
プレートのうちの1つは、検出器アレイの同じ行の検出器によって共有することができる。積分キャパシタのプレートのうちの少なくとも1つが、アレイの列全体を覆う場合は、このプレートを検出器からの電流としての情報を流すのに用いることができる。
【0034】
上側プレートは、アレイの同じ行の検出器によって共有することができる。
【0035】
これにより、信号を劣化させるいかなる結合も回避するために、異なる相互接続金属レベルが作成されている基板から最も遠いプレートに信号輸送路をもたせることが可能となる。
【0036】
本発明は、以下の添付図面を参照して、単に例示的で非制限的な目的の例示的な実施形態の説明を読むことにより、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来技術による例示的な熱ボロメータ検出器を示す図である。
【図2】従来技術によるボロメータセンサ及び関連する読み出し回路の例示的なレイアウトを示す図である。
【図3】従来技術によるボロメータセンサのアレイと、特に、関連する読み出し回路の積分キャパシタとを備えるマイクロ電子デバイスの例示的なレイアウトを示す図である。
【図4】各ボロメータセンサがボロメータ検出器に対向して形成されるMIM積分キャパシタを備える、本発明によるボロメータを有するセンサのアレイを備える、例示的なマイクロ電子デバイスを示す図である。
【図5】各ボロメータセンサがボロメータ検出器に対向して形成されるMIM積分キャパシタを備える、本発明によるボロメータを有するセンサのアレイを備える、他の例示的なマイクロ電子デバイスを示す図である。
【図6】各セルがボロメータ検出器に対向して形成されるMIM積分キャパシタを備える、本発明によるボロメータを有するセンサを含むセルのアレイを備える、例示的なマイクロ電子デバイスを示す図である。
【0038】
同一、類似又は等価な部分には、1つの図から次の図への移り変わりを判りやすくするために、同じ参照番号を付してある。
【0039】
図を判りやすくするために、図に示される様々な部分は、必ずしも均一のスケールでは示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図4に本発明による、ボロメータセンサを備えている例示的なマイクロ電子デバイスを示してある。
【0041】
本デバイスは、例えば半導体基板、又はSOI(シリコン・オン・インシュレータ)基板のような、絶縁体上の半導体基板などの基板201を備え、この基板上には、電子コンポーネント及び積層された相互接続金属レベルが複数形成される。
【0042】
本デバイスは、k(kは0でない整数)層重ね合わせた相互接続金属レベルを有し、各レベルは、基板201と平行な1つ以上の水平方向の導電性ラインと、異なるレベルの導電性ラインを互いに接続する、一般に「ビア」と称される、1つ以上の垂直方向の相互接続部材とを備える。
【0043】
図4に示す例では、デバイスは、k=6の相互接続金属レベルM1、M2、M3、M4、M5、M6(電子コンポーネント及び最初の3つの相互接続金属レベルM1、…、M4を基板201の上方に破線のブロックで略図にて示してある)を含む。
【0044】
ボロメータセンサの感知部分は、図1につき前に説明したようなレイアウトを有することができ、支持体201上に載っている積層体の上方に配置される膜210を備えることができる。膜210は、基板201上に載っている積層体で形成されると共に、特に複数の相互接続レベルが作成されている支持体200の上方に懸架される。
【0045】
導電性のマウント230が、基板の上方に膜を支持するためと、検出した熱エネルギーを表す膜からの電気信号を伝えるためとの双方に用いられる。
【0046】
電磁放射用の反射層260を、膜210に対向して、積層体の上に設けることができる。この反射層260と膜210との間の距離は、導電性マウント230の高さによって決定され、検出される放射線の波長に応じて決定することができる。
【0047】
キャパシタCIはMIM(金属−絶縁体−金属)キャパシタであり、その上側プレート244は、所定の相互接続金属レベルにおいて、例えば最後の相互接続金属レベルM6において、すなわち、基板201から最も離れた金属レベルにおいて形成することができる。
【0048】
変形例(図5)によれば、キャパシタCIは、相互接続金属レベルM5bis、すなわち金属レベルM5と最後の金属レベルM6との間に位置する金属レベルで、基板201から最も離れたレベルにおいて形成した上側プレート246を備えることができ、相互接続金属レベルM5bisは最後のレベルM6に接続される。
【0049】
図4に戻って、下側プレート242は、他の相互接続金属レベル、例えば最後から2番目の相互接続金属レベルM5において形成することができる。
【0050】
上側プレート244及び下側プレート242は、それぞれ絶縁層245及び241内に形成した金属層の形態とすることができる。
【0051】
上側プレート244及び下側プレート242は、例えば銅又はアルミニウムをベースにして形成することができ、例えばSiO2をベースとする絶縁層243によって、互いに分離することができる。
【0052】
積分キャパシタCIの上側プレート244は、コンパレータ(図示せず)、例えばコンパレータの反転入力に接続することができ、一方、下側プレート242は、コンパレータの出力に接続することができる。
【0053】
図4及び図5には、熱検出器マイクロ電子デバイスの1つのセル又はピクセルのみを示してある。かようなデバイスは、アレイ配置される複数のボロメータセンサと、ボロメータセンサのアレイに対向して同様にアレイとして配置される関連する読み出し手段又は回路とを備えている。
【0054】
可能な実施形態(図示せず)によれば、積分キャパシタCIは、数個の並列に実装されるキャパシタ、例えば並列に実装される3つのキャパシタで形成することができる。
【0055】
この場合に、並列に実装されるキャパシタの各々は、最後の金属レベルM6において形成される上側プレートを備えることができ、この上側プレートは、最後の金属レベルM6において形成される他のキャパシタの少なくとも1つの他の上側プレートに接続することができ、また、前記キャパシタの各々は、最後から2番目の金属レベルM5において形成することができ、且つ最後から2番目の金属レベルM5において形成される他のキャパシタの少なくとも1つの他の下側プレートに接続される下側プレートを備えることができる。
【0056】
可能な実施形態によれば、積分キャパシタの上側プレート244は、アレイの同じ列の数セル、あるいは全セルによって共有される金属トラックに属することができる。
【0057】
積分キャパシタCIの下側プレート242も、アレイの同じ列の数セル、あるいは全セルによって共有される他の金属トラックに属することができる。
【0058】
この場合に、積分キャパシタの上側の金属プレート244がアレイの同じ列のセルによって共有される金属トラックに属する場合には、このプレートをボロメータセンサからの信号を転送するためにも用いて、列のバスとして機能させることができる。基板201及び基板上に形成されるコンポーネントから最も離れたプレートを介して信号を転送することにより、カップリング現象を抑えることができる。
【0059】
このようなレイアウトを、図6に示し、ここには例えばアレイデバイスの同じ列のセルに属するボロメータ検出器1101、…、110mを示してある。
【0060】
基準ボロメータ200は、例えば列の最後に設けられ、さらに、感知ボロメータからの電流と基準ボロメータからの電流との差異によって生じる電流は、コンパレータ400と、並列に取り付けられ、プレートが列バスとして機能する積分キャパシタCI1、…、CImとによって形成される積分器によって電圧に変換される。
【符号の説明】
【0061】
1 膜
2 支持体
3 導電性マウント
4 層
5a、5b アーム
6 層
10 検出器
20 基準ボロメータ
30 積分器
40 コンパレータ
50 キャパシタ
80 サンプリング手段
100 感知ボロメータセンサのアレイ
101 基準センサの第1の組
102 基準センサの第2の組
110 行アドレス指定回路
120 列アドレス指定回路
200 支持体
201 基板
210 膜
230 導電性マウント
241 絶縁層
242 下側プレート
243 絶縁層
244 上側プレート
245 絶縁層
260 反射層
400 コンパレータ
M1、M2、M3、M4、M5、M6、Mbis 金属層
CI 積分キャパシタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱撮像マイクロ電子デバイスであって、
−支持体(200)と、
−前記支持体上に形成される電子コンポーネントを相互接続するための複数の金属レベル(M1、…、M5、M6)と、
−前記支持体上に形成され、各々が放射エネルギーを吸収し、且つ前記吸収した放射エネルギーに応じて1つ以上の電気信号を供給できる膜(210)を含む熱検出器アレイ、及び前記膜からの電気信号を読み出す、前記支持体に集積される読み出し手段と、
を備え、
前記検出器の少なくとも数個は、前記膜に対向して形成される少なくとも1つの積分キャパシタ(CI)を有する積分器を備えた読み出し手段を有し、
前記キャパシタは、前記複数の相互接続金属レベル(M1、…、M5、M6)の所与の相互接続金属レベルにおいて作成される少なくとも1つの上側プレート(244)有することを特徴とする、熱撮像マイクロ電子デバイス。
【請求項2】
前記MIMキャパシタは、前記相互接続金属レベルの他のレベルに形成される少なくとも1つの下側プレート(242)を有する、請求項1に記載の熱撮像マイクロ電子デバイス。
【請求項3】
前記上側プレート(242)は、1以上の垂直方向の相互接続部材を介して前記読み出し手段に接続される、請求項1又は2に記載の熱撮像マイクロ電子デバイス。
【請求項4】
前記プレートの1つは、前記アレイの同一の行の検出器によって共有される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱撮像マイクロ電子デバイス。
【請求項5】
前記上側プレートは、前記アレイの同一の行の検出器によって共有される、請求項4に記載の熱撮像マイクロ電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−243490(P2010−243490A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−78627(P2010−78627)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(509248165)コミサリア ア レネルジ アトミク (28)
【Fターム(参考)】