説明

MIMO系において再構成可能アンテナを選択するシステムおよび方法

再構成可能多素子アンテナに、MIMO、SIMOおよびMISO通信システムにおけるアンテナ構成の選択を可能にする方法。この選択方式は、空間相関、チャネル逆条件数、遅延スプレッド、および平均SN比(SNR)の情報を使用して、受信機におけるアンテナ放射パターンを選択する。このアプローチを用いると、多素子再構成可能アンテナシステムにおいて、従来の無線通信システムのデータフレームを修正することなく、容量増加を達成することができる。この構成選択手法によって達成可能な容量増加は、チャネル推定に対する最小平均二乗誤差を用いるMIMOの受信機における、再構成可能な円形パッチアンテナを使用して、数値シミュレーションによって計算される。チャネル容量およびビット誤り率(BER)の結果は、再構成可能MIMO系に対して、従来のアンテナ選択技法と比較して、改善が得られることを示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には多素子アンテナ系の分野に関する。具体的には、本発明は、MIMO系、SIMO系およびMISO系において多素子再構成可能アンテナを効率的に使用するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関係出願の相互参照
本出願は、その開示の全文を参照により本明細書に組み入れてある、2009年1月26日出願の米国特許仮出願番号第61/147365号の利益を主張するものである。
【0003】
連邦委託研究の声明文
本明細書の開示の一部には、米国国立科学財団(National Science Foundation)、助成番号CNS−0322795、CNS−0322797、およびECS−0524200からの助成により部分的に支援されているものがある。合衆国政府は、本発明において一定の権利を保有することができる。
【0004】
発明の背景
最近の研究によると、再構成可能アンテナを利用すると、多入力多出力(MIMO)系、単入力多出力(SIMO)系、および多入力単出力(MISO)系で得られる利得を改善できることが以下の文献に説明されている:D. Piazza、N.J. Kirsch、A. Forenza, R.W. Heath Jr.、およびK.R. Dandekarによる"Design and evaluation of a reconfigurable antenna array for MIMO systems," IEEE Transactions on Antennas and Propagation, vol. 56, no. 3, 2008;B.A. Cetiner、E. Akay、E. Sengul、およびE. Ayanogluによる"A MIMO system with multifunctional reconfigurable antennas," IEEE Antennas and Wireless Propagation Letters, vol. 5, no. 31, pp. 463-466, 2006;B.A. Cetiner、H. Jafarkhani、 Jiang-Yuan Qian、Hui Jae Yoo、A. Grau、およびF. De Flaviisによる"Multifunctional reconfigurable MEMS integrated antennas for adaptive MIMO systems," IEEE Communications Magazine, vol. 42, no. 12, pp. 62-70, 2004;A.M. SayeedおよびV. Raghavanによる"Maximizing MIMO capacity in sparse multipath with reconfigurable antenna arrays," IEEE Journal of Selected Topics in Signal Processing, vol. 1, no. 1, pp. 156-166, 200;およびD. Piazza、P. Mookiah、M. D'Amico、およびK.R. Dandekarによる"Two port reconfigurable circular patch antenna for MIMO systems," Proceedings of the European Conference on Antennas and Propagation, EUCAP, 2007.
これらのアンテナは、所与の通信システムにおいて送信アンテナと受信アンテナの間の強固なチャネルを提供するために、無線チャネルの伝播特性に応じて、その電気的性質および放射性質を適応的に変化させる。
【0005】
このような再構成可能アンテナを最適に使用するためには、A. Grau、H. Jafarkhami、およびF. De Flaviisによる“A reconfigurable multiple-input multiple-output communication system,” IEEE Transactions on Wireless Communications, vol. 7, no. 5, 2008に示されているように、各アンテナ構成に対して送信機と受信機の間のチャネル応答を知ることが必要である。しかしながら、上記の文献に記載されているように、送信機と受信機とにおいて各アンテナ構成に対するチャネル応答を推定することは、電力消費が大きく、かつ再構成可能なMIMO系、MISO系、およびSIMO系の性能に対して有害な影響を与えることが実証されている。通信システムの性能に対するチャネル推定の悪影響は、アンテナ構成の数に比例して増大し、不完全なチャネル推定によって生じる損失が、再構成可能アンテナによって得られる容量増加よりも高くなる点に到達する。
【発明の概要】
【0006】
このチャネル推定問題を克服するために、本明細書では、線形および非線形の多素子再構成可能アンテナの両方に、余分の電力を消費すること、および従来型の再構成不能(non-reconfigurable)MIMO系、SIMO系またはMISO系のデータフレームに対して修正をすることなしに、受信機におけるアンテナ構成を選択することを可能にする方法を提案する。この構成選択方式は、各特定のチャネル実現例に対して、処理量を最大化することをねらうものではなく、通信リンクのスペクトル効率を、平均的に増大させるアンテナ構成を選択するものである。
【0007】
以下に提示する適応アルゴリズムは、その使用をその他のクラスのアンテナに拡張することもできるが、パターン再構成可能アンテナに対して有効であることを示すものである。パターン再構成可能アンテナを選択する理由は、空間ダイバーシティまたは偏波ダイバーシティを利用するアンテナに対して、MIMO、SIMOまたはMISOの通信において、それらが長所を有するからである。パターンダイバーシティアンテナは、A. ForenzaおよびR. W. Heath Jr.による"Benefit of pattern diversity via two-element array of circular patch antennas in indoor clustered MIMO channels," IEEE Transactions on Communications, vol. 54, no. 5, pp. 943-954, 2006によって教示されるように、偏波ダイバーシティアンテナと同様に、システム設計者が、通信装置上で占拠されるアンテナ空間を減少させて、従来の多素子アンテナシステムにおいてアンテナを遠く離して配置することを妨げる、寸法およびコストの制約を解決することを可能にする。
【0008】
また、偏波再構成可能アンテナと異なり、パターン再構成可能アンテナは、偏波調整のために送信機と受信機とで同時にアンテナ構成を切り替える必要がなく、効率的に使用することができる。さらに、パターン再構成可能アンテナは、偏波再構成可能アンテナと異なり、無線チャネルを最高のスペクトル効率に対して最適に調整するために、アンテナ素子毎に、理想的な無制限の数の、完全に無相関のパターンを生成することを可能にする。構成選択方式は、D. Piazza、P. Mookiah、M. D'AmicoおよびK.R. Dandekarによる“Two port reconfigurable circular patch antenna for MIMO systems," Proceedings of the European Conference on Antennas and Propagation, EUCAP, 2007に記述されているように、再構成可能円形パッチアンテナで達成可能な性能を解析する発明によって提案される。D. Piazzaの論文に記述されているように、これらのアンテナは、円形パッチの半径を変えることによってそれらのパターンを動的に変更することができる。これらの再構成可能円形パッチアンテナ(Reconfigurable Circular Patch Antennas:RCPA)の解析が、エルゴード的チャネル容量およびビット誤り率(BER)について、V. Ercegらによる"TGn channel models," IEEE 802.11-03/940r4, 2004に教示されるように、クラスタードチャネル(clustered channel)モデルを使用して行われている。
【0009】
このアプローチによって、アレイ構成選択は、i)無線チャネルの空間的特徴(パワー角スペクトル(power angular spectrum)の広がり角(angle spread))、ii)再構成可能アレイの素子間に存在するパターンダイバーシティのレベル、iii)様々なアンテナ構成間での、放射効率および入力インピーダンスの差、およびiv)系の平均SN比(Signal-to-Noise-Ratio:SNR)に直接的に関連づけられる。多素子再構成可能アンテナ用に最適化されたアンテナ選択方式が望ましく、本明細においてはそれについて説明する。
【0010】
要約
本発明により提案される多素子アンテナ選択方式は、多素子再構成可能送信機/受信機アンテナ用のアンテナアレイ構成を選択する。このシステムは、複数の再構成可能素子を含む送信機アンテナアレイおよび受信機アンテナアレイの少なくとも一方と、アンテナアレイ構成の選択のためのソフトウエアを実装するとともに、少なくとも一方のアンテナアレイ構成のためのルックアップテーブルも構築する、プロセッサとを含む。アンテナアレイ構成を再構成するようにプロセッサによって調節することのできる、PINダイオード、MEMSスイッチ、FETトランジスタ、可変インダクタおよび/または可変キャパシタなどの結合手段が設けられている。この再構成可能アンテナアレイ構成は、それに限定はされないが、円形パッチアンテナアレイとすることができる。受信機アンテナアレイも、チャネル推定を行うのに、線形または非線形の受信機を使用することができる。送信電力は、送信機アンテナアレイのアレイ素子間に均等に分布させるか、または送信機アンテナアレイのアレイ素子間に適応して分布させることができる。
【0011】
複数の再構成可能素子は、それに限定はされないが、ビームフォーミング伝送方式、空間多重化方式、空間時間ダイバーシティ伝送方式を使用するシステム、無線ローカルエリアネットワーク、無線パーソナルエリアネットワーク、無線アドホックネットワーク、センサネットワーク、無線ボディエリアネットワーク、レーダシステム、衛星通信ネットワーク、3Gセルラーネットワーク、および/または4Gセルラーネットワーク含む、様々な無線通信システムにおいて使用することができる。
【0012】
プロセッサは、アンテナアレイ構成のルックアップテーブルを構築し、このルックアップテーブルは、それに限定はされないが、SN比(SNR)、広がり角(AS)、逆条件数(Dσ)、送受信相関行列の逆条件数(Dλ)、および遅延スプレッド(DS)を表わす値を含む。このルックアップテーブルを構築するのに使用することのできるさらなる要素としては、電磁クラスタードチャネルモデル、電磁レイ・トレーシング・シミュレーション、チャネル測定値、またはチャネル容量、データ転送速度、ビット誤り率、パケット誤り率、または送信電力量などの系の性能尺度を含む。これらの値は、データパケット群に受信された情報から推定することが可能であり、このデータパケット群の各データパケットの一部がチャネル推定に割り当てられている。
【0013】
各アレイ素子に対する値は、様々なアンテナアレイ構成に対して推定される。このアンテナアレイ構成は、送信機アンテナおよび/または受信機アンテナに対して設定される。選択されたアレイ構成に対する信号相関を求めて、チャネル逆条件数Dλを求めるのに使用することもできる。現在アレイ構成に対するチャネル伝達行列を求めて、チャネル逆条件数Dσを求めるのに使用することができる。
【0014】
ルックアップテーブルは、このルックアップテーブルを構築するのに使用されるアレイ構成に基づいて、選択することができる。このルックアップテーブルは、SNRの直接測定に基づいて選択することもできる。ASは、逆条件数情報を使用して推定してもよい。
【0015】
アレイ構成は、好ましくは、入力信号の面内での疑似全方向受信(quasi omni-directional coverage)を保証する、全放射パターンを有する再構成可能アレイに設定することができる。そのように選択される選択アンテナアレイ構成は、放射パターンの形状、放射パターンの偏波、および/またはアンテナアレイのアレイ素子間の間隔に影響を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)および1(b)は、2つ(図1(a))および3つ(図1(b))のアンテナ構成を備える、再構成可能円形パッチアンテナ(RCPA)の概略図を示すのに対して、図1(c)は、異なる電磁モードに対して、RCPAの2つのポートにおいて方位面(azimuthal plane)内で励起された放射パターンを示す図である。
【0017】
【図2】図2は、異なるアンテナ構成に対するRCPA放射効率を、基板誘電体誘電率の関数として示す図である。
【0018】
【図3】図3(a)は、受信機においてRCPA‐1を使用する2X2MIMO系に対して、3つの異なるアンテナ構成に対するチャネル容量曲線を、広がり角(AS)の関数として示す図であり、これに対して、図3(b)は、モードTM21、TM31、およびTM41において動作する円形パッチアンテナを使用する再構成不能アンテナ系と比較して、同一の2X2MIMO系においてRCPA‐1を使用するときに達成可能な容量向上率をASの関数として示す図である。
【0019】
【図4】図4は、(a)受信側にRCPA‐2、および(b)SNR=5dBであるすべてのアンテナ構成に対して単位放射効率(unitary radiation efficiency)を有する理想的RCPA、を使用する2X2MIMO系に対して、異なる3つのアンテナ構成(TM21、TM31、TM41)に対するチャネル容量曲線を、広がり角の関数として示す図である。
【0020】
【図5】図5は、(a)SNR=0dBおよび(b)SNR=20dBに対して、受信機にRCPA‐1を使用する2X3MIMO系に対して、3つの異なるアンテナ構成に対するチャネル容量曲線を、広がり角の関数として示す図である。
【0021】
【図6】図6は、構成TM21XTM31およびTM31XTM41に対して、広がり角交差点対SNRを示す図である。
【0022】
【図7】図7は、2X2MIMO系において受信機に使用されるアンテナ構成TM21に対して、逆条件数Dλを、広がり角の関数として示す図である。
【0023】
【図8】図8(a)は、2X2MIMO系に対して、達成可能なチャネル容量を、広がり角(AS)の関数として示し、図8(b)は、受信機においてRCPA‐1を使用する同一のMIMO系に対して、容量向上率を、ASの関数として示す図である。
【0024】
【図9】図9は、受信機にRCPA(RCPA‐1)を備える2X6MIMOに対して、達成可能なチャネル容量を、広がり角(AS)の関数として示す図である。
【0025】
【図10A】図10Aは、受信機にRCPA‐1を備える2X2MIMO系に対して、BER対SNRを示す図である。
【図10B】図10Bは、受信機にRCPA‐1を備える2X2MIMO系に対して、BER対SNRを示す図である。
【0026】
【図11】図11は、現在アレイ構成に基づいて、ルックアップテーブル群の内の適当なルックアップテーブルの選択を説明する、フロー図である。
【0027】
【図12】図12は、基準構成TM21に対して、SNRおよびDλを知ってアンテナ構成を選択するのに使用することのできる、サンプルルックアップテーブルを示す図である。
【0028】
【図13】図13は、異なる基準アンテナ構成に対する、サンプルルックアップテーブルの群を示す図である。
【0029】
【図14A】図14Aは、(a)基準構成TM21に対するSNRおよびDσ、および(b)基準構成TM21に対するSNRおよびDSを知ってアンテナ構成を選択するのに使用することのできる、サンプルルックアップテーブルを示す図である。
【図14B】図14Bは、(a)基準構成TM21に対するSNRおよびDσ、および(b)基準構成TM21に対するSNRおよびDSを知ってアンテナ構成を選択するのに使用することのできる、サンプルルックアップテーブルを示す図である。
【0030】
実証態様の詳細な説明
SIMO系およびMISO系は、それぞれ受信機にのみ、および送信機にのみ多素子アンテナを使用するのに対して、MIMO系は、通信リンクの両端において多素子アンテナを使用する。以下の説明においては、MIMO通信システムを例示的態様として考慮するが、すべての結果がSIMO系およびMISO系にもあてはまることを当業者は理解するであろう。
【0031】
従来型の再構成不能多素子アンテナ系と異なり、再構成可能MIMO系においては、送受信アレイの各アンテナ素子は、その放射パターン特徴(すなわち、パターン、偏波、または両方)を変化させることができる。各アンテナ素子の放射パターンを変化させることは、送信機と受信機の間における、無線チャネルの条件の変化に適応するための有効な技法であることが示されている。アレイ構成を適切に選択することによって、最高の処理量を可能にするチャネルシナリオを選ぶことができる。
【0032】
再構成可能アレイを使用する、MIMO系は、P個の異なる構成が可能である。フラットフェージングチャネルを仮定して、受信機において収集される信号は、送信機から出力される信号と、次の関係式で関係づけられる:
p,q=Hp,qp,q+np,q
ここで、yp,q∈CN×1は受信アレイにおける信号ベクトル、xp,q∈CM×1は送信アンテナアレイにおける信号ベクトル、np,q∈CN×1は分散
【数1】


を有する複素加算白色ガウス雑音(AWGN:additive white Gaussian noise)ベクトルであり、Hp,q∈CN×Mはチャネル伝達行列である。下付き添え字p番およびq番は、送信機/受信機多素子アンテナでそれぞれ使用されるアレイ構成を表わす。
【0033】
クロネッカーモデルによれば、伝達チャネル行列Hp;qは、
【数2】


によって定義され、ここでRTXpおよびRRXqは、それぞれ、受信アレイのp番目構成および送信アレイのq番目構成に対する、受信/送信空間相関行列を示す。H∈CN×Mは、複素ガウスフェージング係数の行列である。チャネル応答Hp;qの推定を実施するために、最小平均二乗誤差(MMSE:minimum mean square error)受信機を使用する、パイロット援用(pilot assisted)推定が考えられる。L個のシンボルからなるトレーニングシーケンスが、K個のシンボルの周期で送信されて、チャネル応答を推定するために、受信機によって使用される。異なる送信アンテナに割り当てられるパイロット信号は互いに直交するのが一般的である。この仮定は、パイロットシーケンス当たりの合計送信データはK−LM個のシンボルに等しいことを意味する。
【0034】
送信された電力は、M個の送信アンテナ素子の全体にわたって均一に分布する。次いで、データシンボルの振幅を以下のように表わすことができる:
【数3】


ここで、Pavは、全送信アンテナからの平均送信電力であって、αは、データシンボルの振幅をトレーニングシンボルApの振幅に関係づけるパラメータであって、A=αAとなる。次いで、トレーニングシンボルに割り当てられた電力の割合、αが以下のように得られる:
【数4】

【0035】
このような通信システムに対して、送信機と受信機とにおける空間相関情報の完全な知識を仮定すると、達成可能なエルゴード的チャネル容量の下界は、以下のように定義される:
【数5】


ここで、^Hp;qは、推定伝達チャネル行列であり、Heを
【数6】


についてのMMSE推定誤差として、fiはランダムベクトルHの共分散行列であり、IはNXN恒等行列であり、(y)は複素共役転置演算を示す。ここで、各送信アンテナ毎にL個の時間シグネチャーがパイロットに割り当てられるので、
【数7】


が導入される。共分散行列αは、以下のように定義される:
【数8】

ここで、
【数9】

は、HwについてのMMSE推定誤差の分散である。この通信システムに対して、
【数10】


は、以下のように定義される:
【数11】

ここで、
【数12】

であって、Lpは、送信機および受信機における特定のアンテナ構成に対するチャネル伝達行列を推定するために割り当てられた、L個のサブトレーニングシーケンスの長さである(L∈(0,L])。なおここで、αが1に近づくと、エルゴード的チャネル容量は、受信機における完全チャネル状態情報(p‐CSI:perfect channel state information)を仮定する系のものとなる。
【0036】
再構成可能なアンテナの好ましい態様の一つとして、再構成可能円形パッチアンテナ(RCPA:reconfigurable circular patch antenna)が挙げられる。RCPAを再構成するのに使用される結合手段には、PINダイオード、MEMSスイッチ、FETトランジスタ、可変インダクタおよび/または可変キャパシタを設定することを含めることができる。RCPAは、円形パッチの大きさを変えることによって、それらの放射パターンの形状を動的に変更することのできるアンテナである。各アンテナは、2つの給電点を有し、2素子アレイとして作用する。図1に示すように、アンテナ構造上の2つの給電点は、2つのポート(ポート1およびポート2)において励起される放射パターンが互いに直交するように、間隔が空けられている。アンテナ上に放射状に位置するスイッチ群を同時にオン・オフすることによって、アンテナ構造上の電流分布を変えて、それぞれが特定の放射パターン形状に対応する、異なるTM電磁モードを励起することが可能である。n番目のTM電磁モードに対して、アンテナの各ポートによって遠方場において励起される電界成分は、円形パッチアンテナ半径ρの関数として、以下のように定義される:
【数13】


ここで、Eθ,<1,2>およびEφ,<1,2>は、RCPAのポート1およびポート2において励起された電界のθ成分およびφ成分である。Jn(kρsinθ)は、第1種n次のベッセル関数、fi0はアンテナ上の給電場所に対応する基準角度であり、V0はφ=0における端部電圧であり、k0は波数、dはアンテナからの距離である。アンテナの半径を変えることによって、異なる電磁モードを、以下によって励起することができる:
【数14】

ここで、εは基板の誘電体誘電率であり、λは波長、
【数15】


はベッセル関数Jnの導関数の1番目のゼロ点である。
【0037】
本態様は、両ポートにおいて3つの異なる電磁モード(すなわち構成):TM21、TM31、TM41を励起することのできるRCPAを含む。そのようなPCPAによって、方位面内で励起される放射パターンが、図1(c)に示されている。同一のアンテナ構成に対して、RCPAの2つのポートにおいて励起されたパターンは、互いに直交しており、異なるRCPAモードの放射パターン間の変形が、ローブ(lobe)数およびそれらのビーム幅において発生する。RCPAのポートにおいて励起された放射パターン間に存在するダイバーシティのレベルを定量化するために、空間相関係数
【数16】


を使用してもよく、これは以下のように定義される:
【数17】



ここで、jおよびlはアレイポートを、kおよびmは、ポートjおよびlにおけるアンテナ構成をそれぞれ定義する。
【数18】


は、立体角Ω(φ,θ)に広がる、ポートjにおける構成kの放射パターンである。P(Ω)は、入射マルチパス電界分布を記述する、確率密度関数である。
リッチ散乱(rich scattering)環境に対して、P(Ω)は、
【数19】


全体にわたって均一に分布している。表Iは、各アンテナ構成に対して、放射パターン間に存在するダイバーシティのレベル
【数20】

を示しているのに対して、表IIは、異なるアンテナ構成間に存在するダイバーシティのレベル
【数21】

を報告している。
【表1】

表I
同一の構成に対して、RCPAの2つの異なるポートにおいて生成されたパターン間の空間相関−
【数22】

この態様によって、アレイの2つのポートにおいて励起される放射パターン間の相関値が、すべての構成に対して、有意なダイバーシティゲインを与えるのに十分なほど小さい(≦0:7)ことが見て取れる。表IIは、異なる構成間の相関が、すべての状態に対して、約0:8であることを示している。この値は大きいが、アレイ構成間の差は、再構成不能の円形パッチアンテナと比較して、スペクトル効率およびBERについて改善をもたらすのに十分に高いものである。
【表2】


表II
RCPAの同一ポートにおいて生成されるパターン間の空間相関−
【数23】


【0038】
様々なアンテナ構成(および電磁モード)間の差は、励起された放射パターンの形状においてだけではなく、放射効率ηのレベルにおいても存在し、この放射効率はηは以下のように定義される:
【数24】


ここでQTはアンテナ総合品質係数、QRは放射品質係数であり、QTは、誘電性、伝導および放射の損失を考慮しているのに対して、QRは放射損失にのみに対する良度指数(figure of merit)である。これらは、円形パッチアンテナに対して、以下のように定義される:
【数25】


ここで、fは動作の周波数であり、μは基板誘電透磁率、hは基板厚さ、σは円形パッチを構築するのに使用された材料の導電率である。tanδは、基板損失を考慮に入れる良度指数であり、I1は以下のように定義される:
【数26】

【0039】
図2において、放射効率は、5:2GHzにおいてマッチングされて、厚さh=0:159mmおよびtanδ=0:0009の基板上に構築されたRCPAの異なる構成に対する誘電体誘電率の関数として報告されている。放射効率のレベルは、参考文献において提案されている、ほとんどの電気的に再構成可能なアンテナがそうであるように、各アンテナ構成に対して異なっていることが見て取れる。RCPAに対して、低次の電磁モードは、高次のモードよりも効率が高いことに注意されたい。また、誘電体誘電率の値が増加すると、放射効率は低下する。選択アルゴリズムのための、RCPAの2つの好ましい態様は、アンテナ基板と放射効率のレベルにおいて異なっている。これらの2つのアンテナの主たる特徴の要約を、以下の表IIIに示す。
【0040】
各クラスタは、平均到来角(AOA)Ωによって特徴づけられ、ここでΩ=(φ,θ)は、方位角(φ)成分と仰角(θ)成分からなる、立体角を表わす。システム帯域幅によっては、異なる伝播径路にわたる過剰な遅延は、解像可能でない場合がある。この場合には、クラスタの平均AOAφに対するオフセットφで、複数のAOAが定義される。この到来角は、パワー角スペクトル(PAS)をモデル化する特定の確率密度関数(PDF)に従って生成される。PASの分散、σφ、はクラスタの広がり角(AS)の尺度である。
【0041】
PASは、P(Ω)=Pφ(Ω)+Pθ(Ω)として定義され、ここでPφおよびPθは、それぞれ、入射場の
【数27】


成分および
【数28】


成分の角度パワー密度である。また、散乱電力のほとんどは、方位角方向にわたって伝播すると仮定される。したがって、P(Ω)=Q(Ω)*δ(φ―φ)δ(θ−π/2)、ここで*はコンボルーション演算子を表し、Q(Ω)は、切捨てラプラス分布(truncated Laplacian distribution)によって生成される。
【0042】
無線チャネルの影響を含む、多素子アンテナのj番目およびl番目のポートで励起されたk番目およびm番目のパターン構成間の空間相関は、以下のように定義される:
【数29】


ここで、
【数30】


は、
【数31】


が、空間相関係数の正規化係数として使用される、基準アンテナ構成の電場であるとして、設定される。S11は、アンテナ入力ポートにおける電圧反射係数であり、ηはアンテナ放射効率である。
【0043】
2ポートRCPAの理論的空間相関係数は以下のように表わされる:
【数32】

ここで、
【数33】


が仮定されている。無線チャネルを記述する、入力インピーダンス、効率およびパワー角度スペクトルのASは、空間相関係数のスケールファクタとして作用する。各アンテナ構成に対する空間相関係数を知ることによって、伝達チャネル行列Hp,qを演算することが可能になる。本明細書においては、片側相関MIMOチャネルだけを考慮する。特に、RCPAは、受信機だけにおいて使用し、それに対して送信機では、RTX=Iと仮定される。この仮定がされた理由は、受信機用のアンテナ構成選択技法を、送信機と独立して提示することができるからである。RTX=Iであることは、RTX6=Iに変わることのない、以下の解析に影響を与えない。
【0044】
次いで、各RCPAに対して達成可能なエルゴード的チャネル容量を、以下に考察するように、受信における完全チャネル状態情報の場合(α→∞)に対して計算することができる。以下の解析は、単一クラスタチャネルモデルにおいて実施し、空間相関情報は、基準アンテナとして構成TM21を使用して求めた。
【0045】
図3(a)に示す別の態様においては、再構成可能円形パッチアンテナのいくつかの構成に対して、達成可能な平均チャネル容量が、SNR=5dBについて、PASのASの関数として報告されている。エルゴード的チャネル容量値は、入力PASの全方位角
【数34】


にわたって平均化されている。なお、チャネル容量のこれらの結果は、Rogers社RT−duroid5880基板上に構築されたRCPAに対して、かつ全てのアンテナ構成(RCPA‐1)に対する完全マッチング条件に対して、求められたものであることに留意されたい。表IIIは、アンテナ関係パラメータの要約を示している。達成可能な平均チャネル容量は、PAS広がり角の関数として変動する。特に、各アンテナ構成は、広がり角のある範囲において、他の構成よりも性能が優れている。図4において、Rogers社のR03003基板上に構築されたRCPA(RCPA‐2)に対して、図3(a)の同一のエルゴード的チャネル容量が準備されている。RCPA‐2のパラメータについては、表IIIにおいても説明する。この表に示すように、RCPA‐2は、RCPA‐1と比較して、放射効率の異なる値が特徴である。図3(a)を図4と比較すると、チャネル容量線の交差点が、構成の放射効率の関数として変動することを示している。この効果は、そのすべての構成に対して単位効率を有する理想的RAPAと比較して、平均チャネル容量曲線(図4(b))を見ることによって、より分かりやすく説明される。この場合に、構成TM41は、低ASに対してはその他の構成よりも性能が優れているのに対して、大ASに対しては、すべての構成が同等の性能を示す。これが生じるのは、低ASにおいて、高次モードは、低次のモードに対してより大きなパターンダイバーシティを特徴とするが、高ASにおいては、パターンダイバーシティのレベルは、すべてのアンテナモードに対して同様であるからである。一方で、高次モードよりも低次モードに対して大きい放射効率によって、構成TM21が、図3(a)および図4に示すように、高ASにおいて最良の性能を有することが決まる。異なるアンテナ構成の中で入力インピーダンスにおける変動であれば、同様の結論を導くこともできる。
【表3】

表III
RCPA特徴
【0046】
これらの結果は、一旦、平均システムSNRが分かると、PAS広がり角知識に基づいて、受信機におけるアンテナ構成を選択する可能性を実証するものである。図3(b)には、再構成不能アンテナ系(すなわち、TM21、TM31およびTM41モードにおいて動作する一定半径円形パッチアンテナ)と比較して、RCPAを使用するときに達成可能な容量向上率。なお、図3(b)の系に対して、構成を切り替えるために広がり角情報を使用すると、再構成可能アンテナを使用しない系に対して、最大5%までの平均向上をもたらすことを注記することができる。
【0047】
MIMO系のエルゴード的チャネル容量は、空間相関だけに依存するものではなく、系の平均SNRにも依存する。図5には、RCPA−1の異なる構成に対して達成可能な平均チャネル容量が、SNR=20dB(図5(a))およびSNR=0dB(図5(b))についてPASのASの関数として示されている。達成可能なチャネル容量は、予測されるように、SNR=20dBの系に対しては、SNR=5dB(図8(a))およびSNR=0dBの同一系のそれよりも高い。異なるアンテナ構成に対して、容量曲線の広がり角交差点は、異なる系の平均SNRと共に移動する。SNR=20dBにおいて、同一の再構成可能アンテナを使用すると、AS交差点値は、SNR=0dBの系と比較してより高い。
【0048】
図6には、TM41−TM31およびTM31−TM21の構成に対するAS交差点が、受信機にRCPA‐1を使用するMIMO系に対して、系の平均SNRの関数として報告されている。系の平均SNRの値が増大すると、AS交叉点値も増大する。この効果は、MIMO系のチャネル容量は、2つの方法:i)系ダイバーシティを増大させること、およびii)受信信号電力量を増大させることによって増大させることができることから説明される。系ダイバーシティは、アンテナ相関係数に反映されるのに対して、受信信号電力は、アンテナ効率および入力インピーダンスによって影響される。直感的に、高SNRにおいては、アンテナ効率および入力インピーダンスを変えることによって受信電力量を大きく修正することはできないので、アンテナダイバーシティのレベルが、達成可能なチャネル容量に対する支配的な寄与である。代わりに、低SNRにおいては、アンテナ効率および入力インピーダンスにおける小さな変動が、受信信号電力量に大きな影響を与える可能性があり、したがってアンテナ効率および入力インピーダンスが、チャネル容量傾向に対する支配的な寄与である。
【0049】
図5(a)に示すように、低SNRにおいて、最も効率的なアンテナ(TM21)は、その他の構成と比較して、より大きな利点がある。他方で、高SNR(図5(b))においては、最低の空間相関を有する構成(TM41)が、より低いSNRの同一の系と比較して、広がり角のより多くの値に対して他の構成よりも優れた性能を示す。
【0050】
上記の観測に基づいて、PAS広がり角および系の平均SNRの知識に基づいて、受信機におけるアンテナ構成を選択することができる。
例えば、この態様においては、異なる無線チャネルシナリオ間の識別パラメータは、送受信相関行列の逆条件数であり:
【数35】



ここで、λmaxおよびλminは送受信相関行列の最大および最小の固有値である。
【0051】
図7において、逆条件数が、モードTM21において動作するRCPA(RCPA‐1)に対して、PASの広がり角の関数としてプロットされている。ASの各値に対して、対応する逆条件数の値があり、特にASの低い値に対して、逆条件数は高く、その逆も真である。系の平均SNR、および(図3(a)に示すように)2つの構成間の切り替え点を定義するASの値が与えられると、逆条件数へのマップを作ることができる。表IVには、逆条件数の、AS領域の対応する値へのマッピングが提示されている。
【表4】

表IV
SNR=5dBに対する、広がり角と逆条件数との関係
【0052】
図3(a)の結果が得られると、Dλの3つの領域のみを指定する必要があり、各領域は、受信機における特定のアンテナ構成に対応するということを認識するべきである。このマッピング手順は、PAS広がり角を推定することが難しいために必要であるが、送受信空間相関行列は、標準技法を使用して推定することができる。なお、マッピング手順は、以下に説明するように、系の平均SNRと共に変わることに留意されたい。したがって、表IVの表のようなアンテナ表を、各平均SNR値に対して生成する必要がある。代替的に、図12の表のような、2項目表を生成することができる。したがって、このチャネルパラメータ表示によれば、受信機アレイ構成を決定するために、平均SNRと共に2次無線チャネル統計を使用することができる。なお、この手法によって、各アンテナ構成についてのチャネル応答を推定する必要がなく、1つの基準アンテナ構成だけの空間構成行列を使用して、系が、アンテナ構成を選択することが可能になることに留意されたい。これによって、再構成可能MIMO系におけるチャネル推定が大幅に簡略化される(以下にさらに考察する)。表IVおよび図12の例において、アンテナ構成TM21が、任意の基準アンテナとして選択されている。
【0053】
異なる無線チャネルシナリオ間の別の識別パラメータは、以下のように定義される、送受信チャネル行列の逆条件数である:
【数36】


ここで、σmaxおよびσminは、送受信チャネル行列の最大および最小の固有値である。このパラメータを使用して構築されたルックアップテーブルの一例が図14(a)に示されている。
【0054】
異なる無線チャネルシナリオ間の別の識別パラメータは、遅延スプレッドDSである。このパラメータを使用して構築されたルックアップテーブルの一例が図14(b)に示されている。
【0055】
本発明によれば、各アンテナ構成に対するチャネル伝達行列の推定はしないが、指向性、放射パターン形状およびアンテナゲインの両方の効果を考慮して、アンテナ構成を選択するための方法が提供される。そのような方法100は、図11を参照して以下のように要約することができる。
オフライン動作
1.最適アンテナ構成を逆数および/または遅延スプレッド(DS)の範囲にマッピングする、図12の表のようなアンテナルックアップテーブルが、例えば、上記の電磁クラスタードチャネルモデル手法を使用して、各平均SNR値に対して1つ、ステップ102において構築される。この情報は、各データパケットがチャネル推定のために割り当てられている、データパケットに受信することができる。
オンライン動作
2.ステップ104において系の平均SNRが求められて、現在アレイ構成に対して生成されたアンテナ表の列を選択するのに使用される。
3.送信機における空間相関行列Rt、および受信機におけるRr、伝達チャネル行列H、および遅延スプレッドDSの少なくとも1種が、基準アンテナ構成用に求められる。ステップ106において、送信機における空間相関行列Rt、および受信機におけるRrを使用して、チャネル逆条件数Dλを求め、伝達チャネル行列Hを使用して、現在アレイ構成の逆条件数Dσを求められる。
4.次いで、ステップ108において、ステップ106で決定された現在アレイ構成を使用して、適切なルックアップテーブル(例えば、図12〜14を参照)が選択される。
5.ステップ110において、測定SNRに基づいて選択されたルックアップテーブルの適切な列が選択される。
6.ステップ112において、逆条件数Dλ、Dσおよび/またはDSの情報をアンテナ表といっしょに使用して、受信機でのアンテナ構成を選択し、このアンテナ構成はステップ114において設定される。
【0056】
この方法に使用されるルックアップテーブルの一例が、基準構成TM21に対して図12に示されている。図13に示されるように、各ルックアップテーブルがアレイの特定の基準アンテナ構成に対応する、ルックアップテーブルの群を定義することも可能である。
【0057】
提案の選択アルゴリズムは、チャネル2次統計が、構成選択手順の間にわたり、一定であることを必要とする。次いで、空間相関行列の推定を、標準的技法を用いて実施することもできる。チャネル相関が推定されて、アンテナ構成が選択されると、パイロットシーケンスのL個のシンボルを使用して、上述のように信号検出用のチャネルを推定することができる。
【0058】
なお、本方法の変形形態としては、DσおよびDS情報を使用して、アンテナ構成を選択する可能性も挙げられる。図1(b)のRCPA構成の選択のための、DσまたはDSを用いて構築されたルックアップテーブルの例が、図14に示されている。さらなる変形形態としては、ルックアップテーブルを埋めるのに必要な値を求めるために、電磁レイ・トレーシング・シミュレーションを使用することが挙げられる。
【0059】
特定のアンテナ構成に対する伝達チャネル行列を推定するための、サブトレーニングシーケンスを使用する方法も提供される。この手法によれば、次いで、達成可能なエルゴード的容量を、計算することができる。なお、この選択手法とは反対に、本明細書において提案する選択アルゴリズムは、常に、受信機アンテナ構成の数とは無関係にLp=Lを有する。このようにして、チャネル行列のより良好な推定値をえることができ、結果として、より良好な信号検出が得られ、したがって、より高い達成可能チャネル容量およびより低いBERを得ることができる。この技法は、受信SN比を最大化するチャネルシナリオに基づいて、常に、最適なアンテナ構成を選択するのに対して、提案の選択方式は、平均して通信リンクのスペクトル効率を向上させる、アンテナ構成を選択する。再構成可能なアレイは、入射信号の面内で、擬全方向受信を保証する全放射を有する。
【0060】
したがって、本発明は、全トレーニングシーケンスに対してP回、チャネルを推定すること(アンテナ構成毎に1回の推定)を必要とする選択方式ではなく、単一のアンテナ構成に対してのみチャネルを推定する方法を提供する。
【0061】
図8(a)において、受信機にRCPA‐1を備える、2X2MIMO系に対して、達成可能なチャネル容量が、広がり角(AS)の関数として示されており、この系は、(i)不完全チャネル推定の影響を含む提案の選択方式(提案のアルゴリズムnp‐CSI)、(ii)完全チャネル推定を仮定する提案の選択方式(提案のアルゴリズムp‐CSI)、(iii)不完全チャネル推定の影響を含む、すべての可能な構成に対してチャネルを推定した後に、アンテナ構成を選択するアルゴリズム(標準np‐CSI)、および(iv)完全チャネル推定を仮定する標準アルゴリズム(標準p‐CSI)を使用する。不完全チャネル推定を仮定する異なるモードで動作する再構成不能円形パッチアンテナで達成可能なチャネル容量と比較した曲線も報告されている。図8(b)においては、提案の選択アルゴリズムを、異なるモード(提案・相対TM21、TM31およびTM41)において動作する、再構成不能アンテナシステムに比較して、受信機にRCPA‐1を使用する同一の2X2MIMOに対して、およびSNR=5dBである、すべての可能な構成に対してチャネルを推定し尽した後にアンテナ構成を選択するRCPA系(提案・相対・標準(np‐CSI))に対して、容量向上率が、広がり角(AS)の関数として示されている。
【0062】
図9には、提案の選択方式によって達成可能なチャネル容量が、SNR=5dBについて、受信機のみにRCPAsを使用する2X6MIMO系に対して求められている。MIMO系構成が、表Vに示されている。この場合に、Rogers社のRT‐duroid5880基板(RCPA‐1)に構築された、3つのRCPAが、複数波長の空間間隔を有して、互いに無相関であるように、受信機で使用されている。次いで、TM21、TM31、およびTM41のモード間を切り替えが可能なRCPAを使用して、合計で10の可能なアレイ構成を、受信機において(P=102)選択することができる。送信機において、RTX=Iを仮定する。アンテナ構成数が、2X2MIMOの場合よりも大きい(ここでは、P=3)ので、提案の選択方式を使用して達成可能な容量向上はより大きい。向上は、ほとんど20%である。上記で説明したように、アレイ構成の数が大きいほど、チャネル伝達行列の検出は悪化し、したがって、チャネル容量が悪化する。この問題は、アレイ構成の数とは無関係に、単一アンテナ構成に対してチャネルを推定する必要のある、提案の選択方式によって対処される。
【表5】

表V
MIMO系構成
【0063】
BERについての、提案の構成選択アルゴリズム性能の解析を、受信機にRCPA‐1を使用する2X2MIMO系に対して実施した。考慮された変調方式は、追加の符号化を用いない、BPSKである。BER値は、2X2MIMO系を含む、2単入力単出力(SISO)リンクの受信機における完全な非結合化(decoupling)を仮定して計算された。
【0064】
提案のアルゴリズムは、各構成に対してチャネルを推定し尽くした後にアンテナ構成を選択する、標準選択アルゴリズムと比較して、相当のゲインを達成する。提案のアルゴリズムを使用すると、チャネルは、標準アルゴリズムによるよりも、良好に推定される。具体的には、提案のアルゴリズムにおいては、トレーニングシーケンスは、すべての可能なアレイ構成に対してチャネルを推定するために割り当てられる代わりに、単一のアンテナ構成に対してチャネルを推定するように、全体が割り当てられている。この効果は、完全チャネル推定(標準アルゴリズムp‐CSI)を備える系のBER曲線と、不完全チャネル推定(提案のアルゴリズムnp‐CSIおよび標準アルゴリズムnp‐CSI)を備える系のBER曲線とを比較することによってより良好に観測することができる。
【0065】
標準アルゴリズムとは異なり、提案の構成選択方式は、単一アンテナ構成に対してチャンネルを推定し、したがって、チャネル推定の品質は、アレイ構成の数とは無関係に同じままとなる。しかしながら、提案のアルゴリズムを使用する系のダイバーシティ次数は、標準アルゴリズムを使用する系と比較して、劣化する。このダイバーシティ次数劣化は、提案の選択アルゴリズムが、各特定のチャネル実現例に対して、最適のアンテナ構成を選択せず、通信リンクのスペクトル効率を、平均して、増大させるアンテナ構成を選択することによるものである。
【0066】
図10(a)において、BER対SNRが、受信機にRCPA‐1を備える、2X2MIMO系に対して示されており、この系は、(i)不完全チャネル推定の影響を含む、提案の選択方式(提案のアルゴリズムnp‐CSI)、(ii)不完全チャネル推定の影響を含む、すべての可能な構成に対してチャネルを推定した後に、アンテナ構成を選択するアルゴリズム(標準np‐CSI)、および(iii)完全チャネル推定を仮定する標準アルゴリズム(標準p‐CSI)を使用する。非完全チャネル推定を仮定する異なるモードで動作している、再構成不能円形パッチアンテナに対するBER曲線は、AS=10°において報告されている。
【0067】
図10(b)において、同一のBER曲線が、60°の広がり角に対して示されている。各構成に対してチャネルを推定し尽くした後にアンテナ構成を選択する系と比較して、同様の利得が、提案のアルゴリズムを使用して達成される。しかしながら、図10(a)の場合と異なり、高ASにおいて、提案のアルゴリズムは常に構成TM21を選択することが見て取れる。TM21は、上記の結果によれば、平均して、その他の構成より優れた性能を示すことを思い出されたい。また、高ASにおいて、BER曲線傾斜は、すべての異なる構成に対して、同等のままであり、したがって異なる構成によってもたらされるダイバーシティのレベルは同等である。ダイバーシティレベルはまた、提案のアルゴリズム(提案のアルゴリズムnp‐CSI)および標準アルゴリズム(標準アルゴリズムnp‐CSI)に対して、BER曲線の傾向に影響を与える。図10(a)の結果とは異なり、高ASにおいて、BER曲線傾斜はまた、両系に対して同等であり、したがって、高ASにおいて、2つの系は、同等のダイバーシティ次数によって特徴づけられる。
【0068】
図13に示すルックアップテーブルの群(アレイ構成毎に1つのルックアップテーブル)は、無線チャネルの統計モデル(例えば、クラスタードチャネルモデル)と一緒に、受信機における再構成可能アンテナアレイの放射パターンを使用して、事前計算されている。RCPA放射パターンおよびクラスタードチャネルモデルは、どちらのアレイ構成が、SNRの特定の範囲およびパワー角スペクトルの広がり角に対して、最高のチャネル容量を達成するかを判定するのに使用される(図5および6を参照)。この情報は、図13のルックアップテーブルの群を構築するのに使用される。SNRおよびDλは、受信機においてアレイ構成を選択するための、ルックアップテーブルの入力項として使用される。アンテナアレイ構成を設定することは、放射パターンの形状、放射パターンの偏波、および/またはアレイ素子とアンテナアレイとの間の間隔に影響を与える。送信電力は、アレイ素子の間に均等に分布させるか、または送信機アンテナアレイの素子の間で、適応的に分布させることができる。
【0069】
ルックアップテーブルの群が、処理ユニットに記憶される。受信機でのアレイ構成が構成TM21に設定されていると仮定して、処理ユニットは以下のアルゴリズムを実行する。
シナリオ1:
1.受信機がN個のデータパケットの受信を待機する。
2.最後のN個のデータパケットを使用して、受信空間相関行列RおよびSNRを測定するとともに、Dλを計算する。図13の場合には、SNR=6.5dB、Dλ=27である。
3.構成TM21が使用中であるので、処理ユニットは、ルックアップテーブルの群から、「基準構成TM21」用のルックアップテーブルを選択する(図13を参照)。
4.SNRの値は、選択されたルックアップテーブルに示された最も近い整数に四捨五入される。図13の場合には、SNR=5dBである。
5.受信機において使用されるアレイ構成を定義するために、SNR=5dBおよびDλ=27が、選択されたルックアップテーブルの入力として使用される。この場合に、構成TM31が選択される。
6.構成TM31が、通信リンクの受信機において設定され、アルゴリズムは1から再び開始される。
【0070】
処理ユニットが6つのステップのすべてを完了した後で、アンテナ構成が変わらない場合には、上記の例からの変形形態は以下のようになる。
シナリオ2:
1.受信機がN個のデータパケットの受信を待機する。
2.最後のN個のデータパケットを使用して、受信空間相関行列RおよびSNRを測定するとともに、Dλを計算する。この場合には、SNR=6.5dB、Dλ=5である。
3.構成TM21が使用中であるので、処理ユニットは、ルックアップテーブルの群から、「基準構成TM21」用のルックアップテーブルを選択する(図13を参照)。
4.SNRの値は、選択されたルックアップテーブルに示された最も近い整数に四捨五入される。この場合には、SNR=5dBである。
5.受信機において使用されるアレイ構成を定義するために、SNR=5dBおよびDλ=5は、選択されたルックアップテーブルの入力として使用される。この場合には、構成TM21が選択される。
6.構成TM21が、通信リンクの受信機において維持される。
7.受信機は1個のデータパケットの受信を待機する。
8.最後のN個のデータパケットを使用して、RおよびSNRを測定するとともに、Dλを計算する。この場合には、SNR=6.5dB、Dλ=27である。
9.構成TM21が使用中であるので、処理ユニットは、ルックアップテーブルの群から、「基準構成TM21」用のルックアップテーブルを選択する(図13を参照)。
10.SNRの値は、選択されたルックアップテーブルに示された最も近い整数に四捨五入される。この場合には、SNR=5dBである。
11.、受信機において使用されるアレイ構成を定義するために、SNR=5dBおよびDλ=5は選択されたルックアップテーブルの入力として使用される。この場合に、構成TM31が選択される。
12.構成TM31が、通信リンクの受信機において設定され、アルゴリズムはシナリオ1のステップ1から再び開始される。
【0071】
再構成可能アンテナ系が送信機および受信機において使用される場合には、受信機および送信機の両方が処理ユニットを有することになる。構成TM21が、送信機および受信機において最初に使用されると仮定すると、シナリオ1は以下のように変わる。
シナリオ3.A(RXおよびTX)
1.受信機がN個のデータパケットの受信を待機する。
2.最後のN個のデータパケットを使用して、受信機においてR、RおよびSNRを測定する。受信機におけるDλはRから計算されるのに対して、送信機のDλはRから計算される。この場合には、受信機でのSNR=6.5dBであり、受信機においてDλ=27、送信機においてDλ=52である。
3.受信機は、フィードバックチャネルを介して、情報Dλ=52を送信機処理ユニットに送る。
4.最後の送信されたN個のデータパケットを使用して、送信機においてSNRを測定する。この場合には、送信機においてSNR=25dBである。
5.構成TM21が送信機および受信機において使用中であるので、送信機および受信機の処理ユニットは、ルックアップテーブルの群から、「基準構成TM21」用のルックアップテーブルを選択する(図13を参照)。
6.SNRの値は、選択されたルックアップテーブルに示された最も近い整数にまとめられる。この場合に、受信機においてSNR=5dB、送信機においてSNR=25dBである。
7.受信機において使用されるアレイ構成を定義するために、SNR=5dBおよびDλ=27は、受信機における選択されたルックアップテーブルの入力として使用される。この場合には、構成TM31が選択される。
8.送信機において使用されるアレイ構成を定義するために、SNR=5dBおよびDλ=52は、送信機におけるルックアップテーブルの入力として使用される。この場合には、構成TM41が選択される。
9.構成TM31が通信リンクの受信機において設定されるのに対して、構成TM41が送信機において設定されて、アルゴリズムは1から再び開始される。
【0072】
ユーザ選好に応じて、以下の変形形態を実装することも可能である。
シナリオ3.B(RXおよびTX)
1.受信機がN個のデータパケットの受信を待機する。
2.最後のN個のデータパケットを使用して、RおよびSNRを測定するとともに、Dλを計算する。この場合には、SNR=6.5dB、Dλ=27である。
3.構成TM21が使用中であるので、処理ユニットは、ルックアップテーブルの群から、「基準構成TM21」用のルックアップテーブルを選択する(図13を参照)。
4.SNRの値は、選択されたルックアップテーブルに示された最も近い整数に四捨五入される。この場合には、SNR=5dBである。
5.受信機において使用されるアレイ構成を定義するために、SNR=5dBおよびDλ=27は、選択されたルックアップテーブルの入力として使用される。この場合に、構成TM31が選択される。
6.構成TM31が、通信リンクの受信機において設定されるのに対して、送信機はまだ構成TM21を使用している。
7.送信機は、他のM個のデータパケットを送る。
8.受信機は、これらのM個のデータパケットの受信を待機する。
9.最後のM個のデータパケットを使用して、Rを測定するとともに、送信機におけるDλを計算する。この場合には、送信機においてDλ=52である。
10.受信機は、フィードバックチャネルを介して、情報Dλ=52を送信機処理ユニットに送る。
11.最後の送信されたM個のデータパケットを使用して、送信機においてSNRを測定する。この場合には、送信機においてSNR=25dBである。
12.送信機において構成TM21が使用中であるので、送信機処理ユニットは、ルックアップテーブルの群から、「基準構成TM21」用のルックアップテーブルを選択する(図13を参照)。
13.SNRの値は、選択されたルックアップテーブルに示された最も近い整数に四捨五入される。この場合には、送信機においてSNR=25dBである。
14.送信機において使用されるアレイ構成を定義するために、SNR=25dBおよびDλ=52は、送信機における選択されたルックアップテーブルの入力として使用される。この場合に、構成TM41が選択される。
15.構成TM41が送信機において設定され、アルゴリズムは1から再び開始される。
【0073】
なお、シナリオ2の変形形態は、シナリオ3.Aおよびシナリオ3.Bに適用可能であることに留意されたい。上記の例においては、DλおよびSNRを入力として使用するルックアップテーブルが、送信機/受信機において使用されるアンテナ構成を決定するのに使用された。上記のように、DσおよびDSのような、その他のパラメータを、これらのルックアップテーブルの入力として使用することができる。次いで、上記の例を、図14に示すものと類似の表を使用して修正することができる。
【0074】
提案のアルゴリズムを採用する系のダイバーシティ次数は、標準構成選択アルゴリズムを採用する系の上界と、再構成可能アンテナを使用しない系の下界との間に入る。他方で、提案のアルゴリズムによって、標準構成選択方式よりも、良好なチャネル推定(したがって、より高い受信機SNR)が可能になることが見て取れる。
【0075】
なお、アンテナ構成を選択するための提案の方法は、無線通信システムとは無関係に、MIMO系、SIMO系およびMISO系における多素子再構成可能アンテナに使用することができることに留意されたい。この選択アルゴリズムの利用することのできる、見込みのある無線通信システムは、無線ローカルエリアネットワーク、無線パーソナルエリアネットワーク、無線アドホックネットワーク、センサネットワーク、無線ボディエリアネットワーク、レーダシステム、衛星通信ネットワーク、3Gおよび4Gセルラーネットワーク、ならびにビームフォーミング伝送方式、空間多重化方式、または空間時間ダイバーシティ伝送方式を使用する無線通信システムである。
【0076】
一態様においては、ルックアップテーブルを構築するのにチャネルモデルを使用する方法は、個別の用途に基づいて適切に選択する必要がある。そのようなシステムの部分は、複数の再構成可能素子を備える、送信機アンテナアレイおよび(線形および非線形の受信機の両方を使用することができる)受信機アンテナアレイ;選択ソフトウエアを実装し、ルックアップテーブルを作成するプロセッサ;データパケットを介してプロセッサから受信した構成データに基づいて、構成を調整するのに使用される、PINダイオード、MEMSスイッチ、FETトランジスタ、可変インダクタおよび/または可変キャパシタを含む。図12、13および14のルックアップテーブルに報告した値は、例えば、論文V.Ercegら著、"TGn Channel models," IEEE 802.11.03/9490r4, 2004に記載されているように、インドアMIMO無線ローカルエリアネットワーク用に定義された電磁クラスタードチャネルモデルを使用して求めた。無線チャネルモデルは、ルックアップテーブルに使用される値を求めるために、特定の用途を参照して選択する必要がある。
【0077】
本発明を特定の態様を参照して説明してきたが、これらの説明は、本発明を例証するためのものであり、本発明を限定するものとは解釈すべきではない。当業者は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、様々な変更および応用を思いつくであろう。
【0078】
したがって、例証された態様は、例示としての目的だけで記載されたものであること、およびそれが以下の特許請求の範囲によって定義される本発明を限定するものとは解釈すべきではないことを理解すべきである。例えば、請求項の要素がある組合せにおいて以下に記載されているにもかかわらず、本発明は、そのような組合せに最初に記載されていないときでも、上記に開示されている、より少数、多数、または異なる要素のその他の組合せを含むことを、明確に理解すべきである。請求された組合せにおいて2つの要素が組み合されるという教示は、2つの要素が互いに組み合わされずに、単独で使用されるか、またはその他の組合せで組み合わせることのできる、組合せの請求も可能にするものであると、さらに理解されるべきである。本発明の開示された任意の要素の摘出は、本発明の範囲の含まれるものと、明白に意図される。
【0079】
本明細書において、本発明およびその様々な態様を記述するのに使用される用語は、一般的に定義される趣旨の意味だけではなく、本明細書構造における専用の定義によって、一般的に定義される趣旨の範囲を超える、材料または作用の意味においても、理解されるべきである。すなわち、要素が、本明細書の文脈において、2つ以上の趣旨を含むものと理解される場合には、請求項におけるその使用は、明細書または用語それ自体に支持される、すべての可能な趣旨を総称するものであると理解されるべきである。
【0080】
以下の請求の範囲の用語または要素の定義は、したがって、本明細書において、文字通り記載される要素の組合せだけでなく、実質的に同等の結果を得るために実質的に同等な方法で、実質的に同等な機能を実施するための、すべての均等な構造、材料または作用を含めて定義されている。この意味で、2つまたは3つ以上の要素の同等な代用を、以下の請求の範囲における要素の任意の1つに対して行うか、または請求項内の2つまたは3つ以上の要素を単一の要素で代用することもできる。上記では要素は、ある組合せにおいて作用していると記述され、さらに最初にそのように請求されている場合があるが、場合よっては、請求の組合せから1つまたは2つ以上の要素を、その組み合わせから摘出してもよいこと、および請求された組合せが、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形形態を対象にしてもよいことを明確に理解されるべきである。
【0081】
現在わかっている、または後に考案される、当業者が見て特許請求の主題からの軽微な変更は、本請求の範囲に均等に含まれるものと明確に考慮される。したがって、現在または後に当業者に知られる、明白な置換は、定義された要素の範囲に含まれるものと定義される。
【0082】
特許請求の範囲は、上記に具体的に図示されて記述されたもの、概念的に均等なもの、明白に置換され得るもの、また本発明の本質的な理念を具体化するものを含むものと理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多素子再構成可能送信機/受信機アンテナ用のアンテナアレイ構成を選択する方法であって、
N個のアンテナアレイ構成の少なくとも1つに対するルックアップテーブルを構築するステップであって、該ルックアップテーブルは、SN比(SNR)、広がり角(AS)、逆条件数(Dσ)、送受信相関行列の逆条件数(Dλ)、および遅延スプレッド(DS)の少なくとも1種に対する値を含む、前記ステップ、
N個未満のアンテナアレイ構成に対して、SNR、AS、Dσ、Dλ、および/またはDSの値を推定するステップ、および
そのような推定値および、該推定値を使用してルックアップテーブルから検索したアレイ構成に少なくとも部分的に基づいて、送信機アンテナおよび/または受信機アンテナに対するアンテナアレイ構成を設定するステップ
を含む、前記方法。
【請求項2】
現在アレイ構成に対する信号相関を求め、該信号相関を使用して、チャネル逆条件数Dλを求めるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
現在アレイ構成のためのチャネル伝達行列を求め、該チャネル伝達行列を使用してチャネル逆条件数Dσを求めるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ルックアップテーブルを構築するのに使用されるアレイ構成に基づいて、該ルックアップテーブルを選択するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
直接測定されたSN比に基づいて、ルックアップテーブルを選択するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
広がり角が、逆条件数情報を用いて推定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ルックアップテーブルを構築するステップが、電磁クラスタードチャネルモデルを使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ルックアップテーブルを構築するステップが、電磁レイ・トレーシング・シミュレーションを使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ルックアップテーブルを構築するステップが、チャネル測定値を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ルックアップテーブルを構築するステップが、システム性能尺度を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
選択された性能尺度が、チャネル容量、データ転送速度、ビット誤り率、パケット誤り率、または送信電力量を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
設定ステップにおいて設定されるアンテナアレイ構成が、入力信号の面において疑似全方向受信を保証する全放射パターンを備える再構成可能アレイである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
アンテナアレイ構成の設定が、放射パターンの形状、放射パターンの偏波、および/またはアンテナアレイのアレイ素子間の間隔に影響を与える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
結合手段を使用して、アンテナアレイ構成を、設定アンテナアレイ構成に再構成することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
結合手段を使用してアンテナアレイ構成を再構成することが、PINダイオード、MEMSスイッチ、FETトランジスタ、可変インダクタおよび/または可変キャパシタを設定することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アンテナアレイ構成が、円形パッチアンテナアレイである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
推定値が、データパケット群に受信された情報から推定され、該データパケット群の各データパケットの一部がチャネル推定に割り当てられている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
第1の場所から第2の場所にデータを伝送するための伝送システムであって、
少なくとも一方が複数の再構成可能素子を含む、送信アンテナアレイおよび受信アンテナアレイ、および
前記送信アンテナアレイおよび受信アンテナアレイの前記少なくとも一方のための、アンテナアレイ構成を選択する選択ソフトウエアを実装するプロセッサを含み、
前記選択ソフトウエアは、実装されると、前記プロセッサに、N個のアンテナアレイ構成の少なくとも1つに対する、SN比(SNR)、広がり角(AS),逆条件数(Dσ)、送受信相関行列の逆条件数(Dλ)、および遅延スプレッド(DS)の少なくとも1種を含む、ルックアップテーブルを構築させ、N個未満のアンテナアレイ構成に対して、SNR、AS、Dσ、Dλ、および/またはDSの値を推定させ、そのような推定値および、該推定値を使用してルックアップテーブルから検索したアレイ構成に少なくとも部分的に基づいて、送信機アンテナおよび/または受信機アンテナに対してアンテナアレイ構成を設定させる。
【請求項19】
プロセッサによって、アンテナアレイ構成を設定アンテナアレイ構成に再構成するように調整される、結合手段をさらに含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
結合手段が、PINダイオード、MEMSスイッチ、FETトランジスタ、可変インダクタおよび/または可変キャパシタを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
再構成可能アンテナアレイ構成が、円形パッチアンテナアレイを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
推定値が、データパケット群に受信された情報から推定され、該データパケット群の各データパケットの一部がチャネル推定に割り当てられている、請求項18に記載のシステム。
【請求項23】
受信アンテナアレイが、チャネル推定を行うのに、線形または非線形の受信機を使用する、請求項18に記載のシステム。
【請求項24】
送信電力が、送信アンテナアレイのアレイ素子間に均等に分布している、請求項18に記載のシステム。
【請求項25】
送信電力が、送信アンテナアレイのアレイ素子間に適応して分布している、請求項18に記載のシステム。
【請求項26】
複数の再構成可能素子が、無線通信システムに使用されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項27】
無線通信システムが、ビームフォーミング伝送方式、空間多重化伝送方式、または空間時間ダイバーシティ伝送方式を使用する、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
無線通信システムが、無線ローカルエリアネットワーク、無線パーソナルエリアネットワーク、無線アドホックネットワーク、センサネットワーク、無線ボディエリアネットワーク、レーダシステム、衛星通信ネットワーク、3Gセルラーネットワーク、および/または4Gセルラーネットワークを含む、請求項26に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【公表番号】特表2012−516119(P2012−516119A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548171(P2011−548171)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/021917
【国際公開番号】WO2010/085722
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(598072065)ドレクセル・ユニバーシティー (11)
【Fターム(参考)】