MRIコントラスト強化薬物キャリア
本発明は、磁気共鳴イメージングガイド薬剤放出に有用な薬剤キヤリアに関する。これは、19FMRコントラスト試薬を内包し、例えば熱のようなエネルギーを局所適用することで、内包された生物活性剤を放出することができる、シェルを有する。好ましくは、キヤリアはまた、化学交換依存飽和移動(CEST)の原理に基づいてMRIのコントラスト強化剤としても作用する。この目的で、該シェルは、常磁性化学シフト試薬、プロトン分析物及び19Fコントラスト試薬を含み、該シェルがプロトン分析物の拡散を可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング(MRI)に関する。特に本発明は、治療剤又は診断剤(以下、「薬物」とする)のような生物活性剤の輸送モニター又はガイドにおける、MRI及び19FMRIの使用に関する。より詳しくは、本発明は、そのような輸送モニター又はガイドにおいて、MRIコントラスト試薬として使用できる薬物キャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
ある組織にほとんど局在するような多くの病気は、全身投与された薬物により治療される。標準の癌治療のよく知られた例は、全身化学療法であり、これは望ましくない体内分配及び毒性による、患者にとって重大な副作用を伴う。これらの薬物の治療窓は、通常、一方では病気の組織に要求される最小量の治療濃度により決められ、他方では例えば肝臓や脾臓などのターゲットでない器官への毒性効果で決められる。例えば、ナノキャリアからの細胞静止薬の局所放出のような局在化治療は、より効果的な治療と、通常の治療窓に比べてより大きい治療窓を持つことが期待されている。局所薬物輸送はまた、肝臓癌の場合にしばしばそうであるように、外科手術のような他の治療選択があまりに危険である場合、重要である。局所薬物輸送はまた、例えば大動脈の冠状硬化症のような心血管疾患(CVD)での多くの兆候への好ましい治療選択となる得るものである。
【0003】
磁気共鳴イメージングは、通常磁気核として1Hに基づき、病院では病気の診断で広く使われている重要な技術のひとつである。MRIは、軟組織に対してすばらしい空間分解能をもつ非侵襲性イメージングを可能とする。
【0004】
1Hの代わりに19Fに基づく磁気共鳴イメージングは、新たな診断の可能性を開くものである。19F核は高い磁気回転比(40MHz/T)を持ち、さらに天然の同位体存在比が100%である。ヒトの体には、19Fを含む構造は、ほとんどが例えば歯や骨のような固体塩の形で存在する。その結果、内在性の19F原子のT2緩和時間は非常に短く、そのMRシグナルは非常に観測し難い。言い換えると、相対的に高い横緩和時間を持つ内在性19Fに基づく構造がないことは、非常に低いバックグラウンドMRシグナルを保証する。それゆえ、内在性19Fに基づくMRIコントラスト試薬は、PET(ポジトロンエミッショントモグラフ)のような他の技術と同じ方法で、「ホットスポット」イメージングを可能とする。
【0005】
診断的使用の有用な拡張として、MRIはまた、治療又は診断薬のような生物活性剤の輸送のモニターのために提案されている。言い換えると、MRIは、治療計画のために用いられるだけでなく、イメージガイドの下で局所薬物輸送を制御することも可能である。
【0006】
上で説明した高い特異性から、19FNMRを診断用道具のみならず、薬物又は他の生物学的に活性剤のMRI補助輸送としても望まれるものであろう。しかし、高い特異性はまた、ここでの19FMRIの最適使用にとって実際的な問題がある。19Fコントラスト試薬を薬物キャリアに加えることは、天然の19Fシグナル源がないことから、そのような薬物キャリアを19FMRIの手法でいつでも位置づけできることを意味する一方、他方では、19Fコントラスト試薬の検出が、その生物活性試薬の放出についての情報を与えるものではなく、コントラスト試薬の存在のみの情報を与えるものであることを意味する。
【0007】
MRI監視薬物放出についての文献は、Ponce et al, J Natl Cancer Inst 2007; 99: 53−63である。ここには、薬物のドクソビシンが、温度感受性リポソームに取り込まれている。体温では、ドクソビシンは、リポソーム内に留まっているが、41−42℃でその細胞静止薬はリポソームの水性成分から放出される。このように、薬物放出が熱を供給することで実行される。これは、リポソームの開口の結果であり、これにより薬物放出は(あるとすれば)拡散により決定されるものではなく、リポソームのシェルを通るものである。MRIで薬物放出をモニターするために、マンガンがMRIコントラスト試薬として組成物に添加されている。
【0008】
ほとんどすべての現在のMRIは、バルク水分子のイメージングに基づく。それは、全ての組織を通して非常に高濃度で存在する。異なる組織間での造影が医学的情報を得るには十分でない場合、ガドリニウムの低分子量錯体のようなコントラスト試薬を投与される。これらの常磁性錯体は、水分子のプロトンの縦緩和時間(T1)及び横緩和時間(T2)を減少させる。
【0009】
上で説明した薬物キャリア中のマンガンコントラスト試薬は、MRIで検出されるバルク水に影響を与える。即ち、熱を供した後、リポソームの融転移温度を超えたところでリポソームが開口し、即座にMRIコントラスト強化をもたらす。
【0010】
説明したように、この薬物放出プロセスにおいて使用されるMRIは、事実、実際の放出をモニターするために用いられ、熱感受性リポソームが実際に作用することを確立する。言い換えるとそれは単に事後的に情報を提供するものである。
【0011】
19FMRIを、薬物のような生物活性剤の局所放出をガイド及び/又はモニターするために使用することは有益である。また、薬物が、投与によりどうなるのかをモニターすることも有益である。また、薬物が放出されたという事実を即座に確認することよりも、そのモニターが、薬物放出が何時、どこで生じるべきかを前もって決めることができるようなものであることが望まれる。特に、温度感受性薬物キャリアを用いて、その薬物キャリアを局所化し、そして熱を供して、望ましい場所でそのスポットで、望ましい時のその瞬間に、薬物を放出させるようにすることは有益である。さらに、薬物放出のプロセスが必ずしも消失する必要がなく、そして好ましくは、薬物放出プロセスを定量化し治療効果を評価するために使用することができる、モニターの可能性を提供することは有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の要求に応じる、薬物のような生物活性剤の局所輸送に適したキャリアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の要求によりよく応じるため、本発明はひとつの側面で、薬物のような生物活性剤の局所輸送に適したキャリアを提供する。当該キャリアは、局所刺激、例えば熱のようなエネルギー投与の結果として、内包された生物活性剤、薬物を放出することができるシェルを含む。また前記シェルは19Fコントラスト試薬を内包する。
【0014】
他の側面では、本発明は、19FMRI及び1HCESTMRIの組み合わせを提供する。さらに本発明は、薬物のような生物活性剤の局所輸送に適したキャリアを提供し、当該キャリアは、局所刺激、例えば熱のようなエネルギー投与の結果として、内包された生物活性剤、薬物を放出することができるシェルを含み、また前記シェルは、1HMRIのためのリポCEST用化学シフト試薬及び19Fコントラスト試薬を内包する。
【0015】
他の側面では、本発明は、薬物のような生物活性剤の局所輸送に適したキャリアを提供し、前記キャリアは、19F及び1HMRIのためのコントラスト試薬を含む。特にさらなる側面として、1HNMRコントラスト試薬が、T1及び/又はT2強化コントラスト試薬、CESTMRコントラスト試薬及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0016】
さらなる側面において、本発明は、キャビティを有する感受性の半透過性のシェルを持つ薬物キャリアを提供する。ここで前記キャビティは、19Fコントラスト試薬、常磁性化学シフト試薬及びプロトン分析物のプロトンプールを含む。
【0017】
さらに他の側面として、本発明は、治療又は診断試薬のような生物活性剤の制御された局所放出のためのキャリアを提供する。前記キャリアは、キャビティを持つ熱感受性の半透過性シェルを有し、前記キャビティには、19Fコントラスト試薬、常磁性化学シフト試薬及びプロトン分析物のプロトンプールを含み、前記シェルが、前記プロトン分析物の拡散を可能とし、さらに前記シェルが熱により変化して、前記キャリアの中で生物活性剤の放出を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は以下、非限定的な例及び添付の非限定的な図面を参照して説明する。
【図1】図1は、薬物分子のイメージガイド輸送のための熱感受性リポソームを示す。この模式図は、外部作動(例えば熱、超音波又はRF)を適用する際の、化学シフト試薬(例えば[Tm(hpdo3a)H2O]及び19FMRIコントラスト試薬(例えばNH4PF6)の放出を示す。
【図2】図2は、19FMRIに適切なコントラスト試薬の例を示す。
【図3】図3は、ジパルミトイルsn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)、水素化大豆sn−グリセロ−3−ホスホコリン(HSPC)及びモノパルミトイルsn−グリセロ−3−ホスホコリン(MPPC)の化学式を示す。
【図4】図4は、キャビティに50mMのNH4PF6を含むリポソームの7Tでの19FNMRである(処方A)。非イオン性表面活性剤であるTriton−X100の添加により、19Fシグナルはよりシャープになり、リポソームからNH4PF6が放出されたことを示す。
【図5】図5は、NH4PF6及び[Tm(hpdo3a)H2O]を含む低温度感受性リポソームの、異なる温度での19FNMRスペクトルを示す。
【図6】図6は、低温度感受性リポソーム(LTSL)の内包されたNH4PF6の異なる濃度(処方A−D)で、7Tでの温度の関数としての19FNMRシグナルの強度を示す。融解相転移温度での19Fシグナルの強度が温度により増加することが分かる。
【図7】図7は、298K、7.0Tでの飽和前パワーレベル(2.9−10.6μT)の関数として、50mM[Tm(hpdo3a)H2O]と50mMNH4PF6(処方B)を付加した低温度感受性リポソームのZスペクトル(左)及びCEST効果(右)を示す。CEST効果は、式:(1−Ms/M0)*100%で計算した。Msはリポソーム内の水プールの選択的飽和させた後の水プロトンシグナルの強度であり、M0は、逆周波数オフセットで制御された照射下でのバルク水プロトンシグナルの強度である。
【図8】図8は、CEST1H及び19FMRIのための低温度感受性リポソームコントラスト試薬の、温度の関数としてのNMRシグナル強度を示す(処方B)。
【図9】図9は、3Tでの同時デュアル19F/1Hシーケンスを用いて得られた低温度感受性リポソームMRIコントラスト試薬のCESTイメージングを示す(処方B)。297Kで見られたCEST効果は、311Kで消失した。これは、[Tm(hpdo3a)H2O]がリポソームの内側から放出されたことを示す(左)。試剤を加熱後、19FMRシグナルは見えるようになった(右)。
【図10】図10は、低温度感受性リポソーム(LTSL)(処方E)、従来の温度感受性リポソーム(TTLS)(処方F)及び非温度感受性リポソーム(NTSL)(処方G)の、CEST効果対温度を示す。低温度感受性リポソームCESTMRIコントラスト試薬(処方E)は、312Kで鋭いCEST効果の減少を示すが、TTSL又はNTSLのいずれに基づくCESTMRIコントラスト試薬でのより高い温度では、よりゆっくりとしたCEST効果の減少が観察された。
【図11】図11は、LTSL(処方E)、TTSL(処方F)及びNTSL(処方G)についての19Fシグナル対温度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
広い意味で、本発明は、薬物のような生物活性剤の局所輸送に適した、19Fコントラスト試薬を含むキャリアに関するものである。19Fコントラスト試薬は、キャリアから放出され、検出可能性に変化をもたらすものである。特に、19Fコントラスト試薬がキャリアに内包されている状態では、コントラスト試薬の19FMRシグナルは、スペクトル的に非常にブロードである。19Fコントラスト試薬はほとんど観測されない。しかしながら放出されると、19Fコントラスト試薬が観測可能となり、明瞭な好ましくはシャープな19F磁気共鳴シグナルを生じる。
【0020】
特に本発明は、本発明は、薬物のような生物活性剤の局所輸送に適した、19Fコントラスト試薬及びCESTコントラスト試薬とを含むキャリアに関するものである。
【0021】
薬剤のような生物活性剤の局所輸送(以下、「薬剤輸送」とする。)のためのキャリアの適合性は、薬剤を付加されたキャリアが、例えば制御された外部力又は十分量のエネルギーを供与されることで、その薬剤を局所的に放出するように引き起こされることができる、種々の方法に関することができる。これは、例えば、局所加熱を与えることで局所的に薬物の放出を引き起こすことができる温度感受性薬物キャリアに関する。局所化輸送の他の方法は、必ずしも温度感受性だけを含むものではなく、温度感受性以外の性質に基づく活性化方法により薬物放出を引き起こすことができるキャリアには、限定されるものではないが、pH,気体コア及び/又は層の存在及び外部から供される超音波周波数/波長及び強度が含まれる。
【0022】
19FMRIコントラスト試薬
上記の説明に関して、MR検出可能な19Fは、体内では天然では生じることはない。従って、19FMRIは、19Fコントラスト試薬添加を基本として行われる。
【0023】
19Fのコントラスト試薬は、好ましくは、多数の磁気的に等価なフッ素化基を有するものである(感度は、分子当たりの磁気的に等価なF原子の数に直線的である)。使用されるCESTMRI、19FMRコントラスト試薬との望ましい組み合わせという観点から、好ましくは、水溶性であり、そして特に好ましくはできるだけ水溶性を持つために帯電性の分子である。リン脂質シェルにおいて適用するという観点から、好ましい19Fコントラスト試薬は、リン脂質に著しく結合したり、付随したりしないものである。ヒト又は動物の体内で放出されるという観点から、19Fコントラスト試薬は好ましくは、低毒性であり、高生物適合性のものである。
【0024】
好ましい19Fコントラスト試薬は、図2で記載された化合物及びその混合物から選択される。最も好ましくは、脂肪族炭化水素のパーフルオロ体の適用である。
【0025】
CESTMRI
好ましい実施態様において本発明はまた、CESTMRIコントラスト強化(contrast enhancement)に関する。本方法は、選択された、磁気的に前飽和されたプロトンから、MRIで決定されたバルク水への、化学的交換依存飽和移動(CEST)の利用によるイメージ造影を生成するために役立つ。
【0026】
この好ましい実施態様において、本発明は、温度感受性薬物放出に対して全てのCESTタイプのコントラスト強化の応用に関するけれども、利用可能となる高度なCEST方法を使用することが好ましい。
【0027】
常磁性化学シフト試薬との組み合わせたCEST(ParaCEST)は、CESTコントラスト試薬の常磁性シフトしたプロトンプールの磁化が、ラジオ波(RF)照射の適用によって選択的に飽和されるという方法である。この飽和がバルク水にプロトン交換により移動することで、CESTコントラスト試薬環境にある励起可能な水のプロトンの量を減少させる。従ってバルク水のシグナルの強度の減少が観測され、これはMRIイメージングにおける(負の)コントラスト強化を作り出すために使用することができる。
【0028】
高いCEST効果を得るための方法は、化学的にシフトされ、従って選択的にRFパルスで飽和される、プロトンプールを提供するために、常磁性シフト試薬(例えばNa[Tm(dotma)H2O]、ここで「H4dotma」は、α、α’、α’’、α’’’−テトラメチル−1、4、7、10−四酢酸であり、dotmaはそのリガンドのそれぞれの4つ脱プロトンしたテトラアニオン形を表す)を含む溶液の多数の水分子の利用に基づく。この系がキャリア、例えばリポソーム内に内包される場合、磁気飽和は、このキャリアの外側のバルク水(化学的にシフトされていない)へ移動することができる(LipoCEST)。磁気移動の量及び従ってコントラスト強化の程度は、キャリア内の水の量によると同様に、キャリアのシェル例えば、リン酸脂質膜を通る水の拡散速度により決められる。
【0029】
最適な水交換速度は、キャリアの外側のバルク水と内側のプロトンプールの間の化学シフトの差に直接関連する。リポソーム内の水分子に誘起される常磁性シフトは、2つの主要な寄与からなる。ひとつは、水分子とシフト試薬との直接双極子相互作用(δdip)と、もうひとつは、バルク磁気感受性効果による化学シフト(δbms)である。全体の常磁性シフトは、これらの2つの寄与の和である。
δ=δdip +δbms (1)
δbmsは球状粒子ではゼロであるが、異方性粒子の場合は顕著となる。非球状粒子は磁場で力を受け、磁場線に沿っての配列が引き起こされる。リポソームの場合で、常磁性分子がリン脂質膜に付随するような場合、この効果はさらに増大する。
【0030】
非球状リポソームを用いたCESTに関する文献は、Terreno, E. et al. Angew. Chem. Int. Ed. 46, 966-968 (2007)である。
【0031】
19F及び1HMRコントラスト試薬との組み合わせ
本発明において、適切な19F及び1HMRコントラスト試薬との組み合わせは種々の方法で可能である。
【0032】
CEST機構又は19FMRを利用することにより、2重又は多重ラベル化MR造影を 生成することができる。または、多重MR造影は、キャリア中に金属含有化合物を存在させることにより、イメージングされる分析物(通常水のプロトン)の縦緩和時間(T1)又は浴緩和時間(T2)の変更を通じて生成されることができる。これらのコントラスト強化機構のすべては、これらのすべての組み合わせでも使用され得る。
【0033】
二重/多重ラベル化MRI造影は、キャリアの物理状態に依存して、従来のMR装置を用いて連続的に又は交互に、又は二重同調スペクトル装置を用いて、例えば1H及び19F共鳴周波数で、周波数組み合わせを用いて同時に、モニターすることができる。
【0034】
この側面において本発明はまた、薬物輸送のモニター及び/又はガイドにおける同時二重核MRに使用に関する。
【0035】
温度感受性リポソームにおいて、CEST及び19Fコントラスト試薬の組み合わせは、CEST及び19FMRIの手段による独立かつ同時に、薬物放出プロセスをモニターする機会を提供する。2つの異なるMRシグナルを同時にモニターすることは、対応する二重ラベルMR技術により成立する。この方法は、次のいくつかの可能な利点をもたらす。薬物付加粒子の空間分布が、CESTMRIにより薬物放出前に入手利用できる。1HCEST及び19FMRシグナルは、放出薬物の量に比例する。これは、フィードバックループを用いて、インビボでの放出薬物の定量的制御を可能とする。疾患場所でのキャリアからの薬物の放出は、温度感受性リポソームの場合の例えばRF又は超音波による加熱のような局所的刺激により誘起されることができる。CESTMRコントラスト強化を、意図するままに、切り替えることができる。
【0036】
キャリア
これまで、薬物のような生物活性剤の局所輸送に適したキャリアについて言及した。以下では、用語「生物活性剤」について、短く「薬物」及び「薬物キャリア」として言及する。
【0037】
本発明の内容において薬物キャリアとは、その中に又はその上に生物活性剤が含まれることができ、目的物を体内放出されることができる、すべての物質を意味する。
【0038】
適するキャリアには、マイクロキャリア及び、特に、リポソーム、ポリマーソーム、ナノカプセル及びCESTコントラスト試薬としての使用に適うサイズと性質を持つその他のナノキャリアを含まれる。
【0039】
薬物キャリアは、MRIの対象となるヒトの体内に導入される。これは例えば、血液流に注入されるか、他の手段により体液中にキャリアが導入される。
【0040】
薬物は、病気又は不調の処置、治療、予防又は診断に、又は他の身体的又は精神的健康増進のために用いられる化学物質である。本発明で意図するガイド輸送は、主に治療剤(すなわち、厳密な意味で、疾患又は不調に対する治療又は予防のために意図される薬物)として有用であり、しかしまた診断目的で投与される薬剤として有用である。他の生物活性剤、すなわち機能性食品成分のような治療又は予防的ではないものは、通常はガイド及び/又はモニター輸送の対象ではないけれども、望むならば本発明を用いて行うことができる。
【0041】
本発明の最適の使用は、ターゲット療法、すなわちターゲット輸送に向けられた薬物の場合に達成される。そのような輸送は、本発明により可能となる、モニターすることから本来最も利益を得るであろう。これは例えば、腫瘍の治療においてその場に輸送されるべき薬剤、心臓血管のアテローム硬化症のような心臓血管不調の治療又は予防における薬剤又はてんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病又は発作のような神経状態の治療に用いられる神経修飾物質のような脳血管障壁を貫通することを要する薬剤に関連する。ターゲット薬剤輸送をガイドしモニターすることから得られる利益はまた、ターゲット診断薬剤に適用可能である。同じくターゲット療法の場合と同じく、ここでもまた癌は、場所特異的輸送が重要となり得る領域である。
【0042】
本発明の使用に適する生物活性剤は、生物学的に活性な薬剤であって、治療薬、内在性分子及び薬学的に活性な薬剤を含み、抗体、栄養分子、美容薬剤、診断薬及び追加のイメージングのためのコントラスト試薬を含む。ここで用いられるように、活性剤には、これらの薬学的に許容される塩を含む。
【0043】
本発明の薬物キャリアは、親水性又は疎水性の生物活性剤を含むことができる。親水性生物活性剤は、キャリアの水性成分に内包されることができ、一方疎水性生物活性剤は、キャリアの疎水性領域、例えばリポソームの脂質二重層に内包されることができる。核酸、炭水化物及び一般的にタンパク質及びペプチドは水溶性又は親水性である。小分子である生物活性剤として、脂質、リポポリサッカライド、ポリヌクレオチド及びアンチセンスヌクレオチド(遺伝子治療剤)が含まれる。取り込まれ得るそのような生物活性剤には、非タンパク質、非ペプチド薬剤も含まれる。本発明の範囲内で、重合性の性質の薬剤を取り込むことが可能であり、しかしまた、相対的に1500g/mol又は500g/molよりも小さい分子量の薬剤も取り込むことが可能である。
【0044】
従って、本発明の内容において、生物活性剤として使用を意図されている化合物は、治療又は予防効果を持つすべての化合物を含む。組織成長、細胞成長、細胞分化に影響する又は関与する化合物、免疫応答のような生体反応を引き起こすことができる化合物、又は1又はそれ以上の生物的プロセスにおいてなんらかの役割を演じる化合物であり得る。限定するものでないが例を列記する。抗微生物剤(抗菌剤、抗ウイルス剤及び抗真菌剤)、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、トロンビンインヒビター、抗血栓剤、血栓溶解剤、繊維素溶解剤、血管痙攣インヒビター、カルシウムチャンネルブロッカー、血管拡張剤、降圧剤、抗菌剤、抗生物質、表層糖タンパク質レセプターのインヒビター、抗血小板剤、抗有糸分裂剤、微小管インヒビター、抗分泌性剤、アクチンインヒビター、再形成インヒビター、抗代謝剤、抗増殖性剤(血管新生抑制剤を含む)、抗癌化学療法剤、ステロイド抗炎症剤又は非ステロイド抗炎症剤、免疫抑制剤、成長ホルモンアンタゴニスト、成功因子、ドーパミンアゴニスト、放射線治療剤、細胞外マトリックス成分、ACEインヒビター、フリーラジカル消去剤、キレーター、抗酸化剤、抗ポリメラーゼ及び光力学療法剤である。
【0045】
相対的に小さいペプチドは、アミノ酸の数(例えば、ジ−、トリ−、テトラペプチド)で表される。アミド結合の相対的に少ない数のペプチドはまたオリゴペプチド(50アミノ酸まで)と呼ばれることもできる。一方相対的に大きい数(50アミノ酸よりも多い)のペプチドはポリペプチド又はタンパク質と呼ばれることができる。アミノ酸基の重合体であるということに加えて、さらに、いわゆる4次元構造と呼ばれる、いくつかの数のポリペプチドの集合体により特徴付けられることもできる。これは、必ずしも化学的にアミド結合で結合されているものではなく、一般的に当該技術分野の熟練者には知られた力、例えばファンデルワールス力で結合されているものである。ここで用いられる、ペプチド、タンパク質又はそれらの混合物なる用語は、すべての上記説明した可能性を含む。
【0046】
通常、タンパク質及び/又はペプチドは、その生物活性に基づいて選択される。選択されたポリマーのタイプにより、本発明のプロセスで得られる生成物は、タンパク質及びペプチドの制御放出のために非常に適している。ひとつの実施態様においては、タンパク質又はペプチドは、成長因子である。
【0047】
付加される重合体に有利に含まれることのできる、タンパク質又はペプチドの例又はタンパク質又はエプチドを含む物の他の例は、限定されるものではないが、免疫原性ペプチド又は免疫原性タンパク質を含み、それらは限定されるものではないが以下の物を含む。
【0048】
ジフテリア毒及び破傷風毒のような毒素 アデノウイルス、エプスタイン・バーウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、HIV−1ウイルス、HIV−2ウイルス、HIV−IIIウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、はしかウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、風疹ウイルス、天然痘ウイルス及び黄熱病ウイルスなどの表面抗原又はその断片。
【0049】
ボルデテラ百日咳、ヘリコバクターピロリ、破傷風菌、ジフテリア菌、大腸菌、インフルエンザ菌、クレブシエラ菌種、レジオネラニューモフィラ、ウシ型結核菌、らい菌、結核菌、淋菌、髄膜炎菌、プロテウス菌種、緑膿菌、サルモネラ種、赤痢菌種、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、コレラ菌及びペスト菌などの表面抗原又はその断片。
【0050】
三日熱マラリア、熱帯熱原虫マラリア、卵型原虫マラリア、熱帯リシューマニア、ドノバンリシューマニア、ブラジルリシューマニア、ローデシアトリパノソーマ睡眠病、ガンビアトリパノソーマ睡眠病、クルーズトリパノソーマ(シャガス病)、マンソン住血吸虫症、住血吸虫症、日本住血吸虫症、旋毛虫病(トリキネラ症)、糞旋虫(鉤虫症)、十二指腸虫(鉤虫症)、アメリカ鉤虫症、バンクロフト糸状虫(フィラリア)、マレー糸状虫(フィラリア)、ロア糸状虫(フィラリア)、常在糸状虫(フィラリア)、メジナ糸状虫(フィラリア)及び回旋糸状虫(フィラリア)などの表面抗原又はその断片。
【0051】
IgG、IgA、IgMのようなイムノグロブリン、抗狂犬病イムノグロブリン及び抗ワクチニアイムノグロブリン。
【0052】
ボツリヌス抗毒素、ジフテリア抗毒素、ガス壊疽抗毒素、破傷風抗毒素のような抗毒素。
【0053】
口蹄疫に対する免疫応答を引き起こす抗原。
【0054】
ろ胞刺激ホルモン、プロラクチン、アンジオゲニン、表皮成長因子、カルシトニン、エリスロポイエチン、甲状腺刺激性放出ホルモン、インスリン、成長ホルモン、シンスリン様成長イン疎水性1及び2、骨格成長因子、ヒトじゅう毛膜性刺激ホルモン、神経成長因子、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、黄体ホルモン放出ホルモン(LHRH)、副甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、インタフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子及び腫瘍壊死因子のようなサイトカイン、ウロキナーゼ、キドニープラスミノーゲンアクチベータのような繊維素溶解性酵素、及びタンパク質C、因子VIII、因子IX、因子VII及びアンチトロンビンIIIのような凝固因子、のようなホルモン及び成長因子。
【0055】
他のタンパク質又はペプチドの例として、アルブミン、心房性ナトリウム利尿因子、レニン、スーパーオキサイドディスミュターゼ、アルファ1−アンチトリプシン、肺表面タンパク質、バシトラシン、ベスタチン、サイドスポリン、デルタ誘眠ペプチド(DSIP)、エンドルフィン、グルカゴン、グラミシジン、メラニン細胞抑制因子、ニューロテンシン、オキシトシン、ソモスタチン、テルプロチド、血清胸腺因子、チモジン、DDAVP、デルモルフィン、メタ−エンケファリン、ペプチドグリカン、サチエチン、チモペンチン、繊維素分解生成物、デス−エンケファリン−アルファ−エンドルフィン、ゴナトトロピン放出ホルモン、ロイプロリド、アルファ−MSH及びメトケファミド、が挙げられる。
【0056】
アルトレタミン、フルオロウラシル、アムサクリン、ヒドロキシカルバミド、アスパラギナーゼ、イホスファミド、ブレオマイシン、ロムスチン、ブスルファン、メルファラン、クロラムブシル、メルカプトプリン、クロメチン、メトレキサート、シスプラチン、ミトマイシン、シクロホスファミド、プロカルバジン、シタラビン、テニポシド、ダカルバジン、チオテパ、ダクチノマイシン、チオグアニン、ダウノルビシン、トレオスルファン、ドキソルビシン、チオホスファミド、エストラムシン、ビンブラスチン、エトグルシド、ビンクリスチン、エトポシド、ビンデシン及びパクリタキセル、のような抗腫瘍剤。
【0057】
以下のものを含む抗菌剤。
【0058】
アンピシリン、ナフシリン、アモキシリン、オキサシリン、アズロシリン、ペニシリン、Gカルベニシリン、ペニシリンV、ジクロキサシリン、フェネチシリン、フロクサシリン、ピペラシリン、メシリナム、スルベニシリン、メチシリン、チカルシリン、メズロシリン、セファロスポリン、セファクロ、セファロチン、セファドロキシル、セファピリン、セファマンドール、セファラジン、セファトリジン、セファスルホジン、セファゾリン、セフタジジム、セホラニド、セフトリアゾン、セホキシチン、セフロキシム、セファセトニル、ラタモキセフ及びセファレキシン、のような抗菌剤。アミカシン、ネオマイシン、ジベカシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシンのようなアミノグリコシド。アンホテリシンB、ノボビオシン、バシトラシン、ニスタチン、クリンダマイシン、ポリミキシン、コリスチン、ロバマイシン、エリスロマイシン、スペクチノマイシン、リンコマイシン、バンコマイシン、のようなマクロライド。クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ロリテトラサイクリン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン及びミノサイクリン、のようなテトラサイクリン。クロラムフェニコール、リファマイシン及びチアムフェニコールのような他の抗菌剤。
【0059】
スルホンアミドスルファジアジン、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファメトキサゾール、スルファジミジン、スルファメトキシピリダジン、スルファフラゾール、スルファフェナゾール、スルファレン、スルフィソミジン、スルファメラジン、スルフィソキサゾール及びスルファメトキサゾール又はスルファメトロールと共にトリメトプリム、のような化学療法剤。
【0060】
メタナミン、キノロン(ノルフロキサシン、シノキサシン)、ナリジクス酸、ニトロ−化合物(ニトロフラントイン、ニフルトイノール)及びオキソリン酸のような尿路防腐剤。
【0061】
メトロニダゾールのような嫌気性感染症のための薬物
アミノサイリチル酸、イソニアジド、シクロセリン、リファムピシン、エタムブトール、チオカルリド、エチオンアミド及びビオマイシンのような肺結核のための薬剤
アミチオゾン、リファムピシン、クロファジミン、スルホキソンナトリウム及びジアミノジフェニルスルホン(DDS,ダプソン)のようならい病のための薬剤。
【0062】
アムホテリシンB、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、エコナゾール、ナタマイシン、フルサイトシン、ニスタチン及びグリセオフルビンのような抗真菌薬剤。
【0063】
アシクロビル、イドクスウリジン、アマンチジン、メチサゾン、シタラビン、ビダラビン及びガンシクロビルのような抗ウイルス薬剤。
【0064】
クロロキン、イオドキノール、クリオキノール、メトクロニダゾール、デヒドロエメチン、パロモマイシン、ジロキサニド、フロアテチニダゾ−ル及びエメチンのようなアメーバ症の化学療法薬剤。
【0065】
クロロキン、ピリメタミン、ヒドロキシクロロキン、キニン、メフロキニン、スルファドキシン/ピリメタミン、ペンタミジン、スラミンナトリウム、プリマキン、トリメトプリム及びプログアニルのような抗マラリア薬剤。
【0066】
アンチモンカリウム酒石酸塩、アンチモンナトリウムジメルカプトコハク酸塩、オキサムニキン、ベフェニウム、ピペラジン、ジクロロフェン、プラジカンテル、ジエチルカルバマジン、パモ酸ピランテル、ヒカントン、パモ酸ピリビウム、レバミソール、スチボフェン、メベンダゾール、テトラミソール、メトリホネート、チオベンダゾール及びニクロサミドのようなぜん虫症薬剤。
【0067】
アセチルサリチル酸、メファナム酸、アクロフェナク、ナプロキセン、アゾプロパノン、ニフルミン酸、ベンジダミン、オキシフェンブタゾン、ジクロフェナク、ピロキシカム、フェナプロフェン、ピルプロフェン、フルルビプロフェン、サリチル酸ナトリウム、イブプロフェンスリンダク、インドメタシン、チアプロフェン酸、ケトプロフェン及びトリメチンのような抗炎症剤。
【0068】
コルヒチン及びアロプリノールのような抗痛風薬剤。
【0069】
アルフェンタニル、メタドン、ベジトラミド、モルフィン、ブプレノルフィン、ニコモルフィン、ブトルファノール、ペンタゾシン、コデイン、ペチジン、デキストロモラミド、ピリトラニド、デキストロプロポキシフェン、スフェンタニル及びフェンタニルのような中枢作用性(モルヒネ様)鎮痛剤。
【0070】
アルチカイン、メチバカイン、ブピバカイン、プリロカイン、エチドカイン、プロカインリドカイン及びテトラカインのような局所麻酔薬。
【0071】
アマンチジン、ジフェンヒドラミン、アポモルフィン、エトプロパジン、ベンズトロピンメシラート、レルゴトリル、ビペリデン、レボドーパ、ブロモクリプチン、リスリデ、カルビドーパ、メチキセン、クロロフェノキサミン、オルフェナドリン、サイクラミン、プロサイクリジン、デキセチミド及びトリヘキシフェニジルのようなパーキンソン病のための薬剤。
【0072】
バクロフェン、カリソプロゾール、クロルメザノン、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、ダントロレン、ジアゼパム、フェバルバメート、メフェノキザロン、メフェネシン、メトキサロン、メトカルバモル及びトルペリゾンのような中枢神経系筋弛緩薬剤。
【0073】
コルチゾール、デソキシコルチコステロン及びフロロヒドロコルチゾンのようなコルチコステロイド。
【0074】
ベクロメタゾン、メータメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオコルトロン、フルオメトロン、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン及びトリアムシノロン(アセトニド)のようなグルココルチコステロイド。
【0075】
以下のものを含むアンドロゲン。ダナゾール、フルオキシメステロロン、メステロロン、メチルテストステロン、テストステロン及びそれらの塩。
【0076】
カルステロン、ナンドロロン及びそれらの塩、ドロモスタノロン、オキサンドロロン、エチルエステロール、オキシメトロン、メタンドリオール、スタノゾロール、メタンドロステノロン及びテツトラクトンのような、治療用アナボリックステロイド。
【0077】
シプロテロンアセテートのような抗アンドロゲン。
【0078】
ジエチルスチルベストロール、エステラジオール、エステロール、エチニルエステラジオール、メストラノール及びキネストロールを含むエストロゲン。
【0079】
クロロトリアニセン、クロミフェン、エタモキシトリフェトール、ナフォキシジン及びタモキシフェンのような、抗エストロゲン。
【0080】
アリルエストレノール、デソゲストレル、ジメチステロン、ジドロゲステロン、エチニルエストレノール、エチステロン、エチナジオール、ジアセテート、エチノジオール、ヒドロキシプロゲストロン、レボノルゲストレル、リネストレル、メドロキシプロゲステロン、メガストロールアセテート、ノルエチンドロン、ノルエチステロン、ノルゲストレル及びプロゲステロンのような、プロゲスチン。
【0081】
次のものを含む甲状腺疾患薬剤。
【0082】
レボチロニン及びリオチロニンのような、甲状腺疾患治療薬剤。
【0083】
カルビマゾール、メチマゾール、メチルチオウラシル及びプロピルチオウラシルのような、抗甲状腺疾患治療薬剤。
【0084】
水溶性である生物活性剤のほか、他の水溶性の化合物を挿入することができる。例えば
抗酸化剤、イオン、キレート剤、色素、イメージング化合物である。
【0085】
好ましい治療剤は、癌(例えば抗腫瘍)及び心臓血管疾患の分野である。
【0086】
ナノ粒子又はリポソーム処方に適した親脂質薬剤誘導体の調製方法は、当該分野において知られている(例えばUS5534499には、共有結合でリン脂質の脂肪鎖に付された治療薬剤が記載されている)。本発明の薬剤はまた、プロドラッグであってもよい。
【0087】
薬剤は、キャリアの成分、例えばリポソームのキャビティ及び/又はシェルの、中側、外側又は両側に存在することができる。薬剤の分布は、薬剤キャリアに含まれる他のすべての剤、例えば常磁性化学シフト試薬又は常磁性試薬の分布とは独立している。薬剤の組合わせを用いてもよく、これらの組合わせ薬剤は、薬剤キャリアの成分、例えばリポソームのキャビティ及び/又はシェルの、中側、外側又は両側に存在することができる。
【0088】
温度感受性キャリア
本発明は好ましくは、温度感受性のキャリアを提供する。これは、キャリアの物理的又は化学的状態がその温度に依存することを意味する。
【0089】
特定の分子を内包でき、体温(すなわち、37℃)では変化なく、他の体温ではない温度でしかも目的物にとって使用されても堪えられる温度で破壊されることができる、温度感受性キャリアが使用可能である。本発明のキャリアには、制限されるものではないが、温度感受性マイクロ−及びナノ−粒子、温度感受性ポリマーソーム、温度感受性リポソーム、温度感受性ナノベシクル及び温度感受性ナノスフェアが含まれる。
温度感受性ナノベシクルは通常、100nmの直径を有する。本発明の内容で、100nmよりも大きい、一般には5000nmまでのベシクルがミクロベシクルとされる。用語「ベシクル」は、ミクロ又はナノベシクルのすべてのタイプを意味する。リポソームベシクルのようなベシクルは、一般には、興味あるいかなる物質をも含むことができるキャビティを有する。上で概説した通り、本発明においてはこれが好ましい。
【0090】
温度感受性ナノスフェアは、限定されるものではないが、5nm以上である。ナノスフェアは、一般的にはキャビティを有さない。すなわち、本発明のこの実施態様においてはCEST効果は、純粋にナノスフェアに含まれる常磁性化学シフト試薬の化学的シフトによってのみ実現されることになる。
【0091】
温度感受性ポリマーソームには、限定されるものではないが、ミクロベシクル及びナノベシクルを含むすべてのポリマーベシクルを含む。
【0092】
温度感受性リポソームには、限定されるものではないが、例えばPEG化されたリポソームのような長期化された半減寿命を持つものを含む。
【0093】
最適なCESTコントラスト強化の使用を有効にするために、リポソームのように、キャビティを持つ半透過性シェルを有する温度感受性キャリアの適用が好ましい。この利点は、CESTコントラスト強化が、前記キャビティに含まれる常磁性化学シフト試薬と同じくキャビティに存在するプロトンのプール又は他のMRI分析物との相互作用に基づきなされることができるということである。
【0094】
「半透過性」なる用語は、当該分野においてはよく理解されている。一般的に、それは、シェルのような膜の生物活性剤温度感受性質であって、選択的に透過性であることを意味するが、場合によっては、部分的に透過性であることや又は異なって透過性であることをも意味する。この意味で、シェルは、完全に開いた壁ではなく、好ましくはほとんどが閉じた壁(この意味でシェルはキャビティを服務)であり、ある分子やイオンを拡散によって通過させることができる、構造を意味する。
【0095】
本明細書においては、シェルの半透過性とは、一般的に、MR分析物を拡散によって通過させることができることを意味する。従って、分析物(水又は他のプロトンを持つ小分子)及びシェル(脂質二重層のような)との組み合わせが、分析物が拡散によってシェルを通過することができるようになっていれば、シェルは半透過性であると考える。
【0096】
半透過性シェルを持つ温度感受性キャリアの参照は、例えば、US6,726,925, US 2006/0057192, US2007/0077230A1及びJP2006-306794が挙げられる。本発明の記載に基づき、これらの開示を参照して、当該技術分野の熟練者は、温度感受性リポソームを用いてCESTコントラスト強化を実施することができる。
【0097】
リポソームは一般的に、キャビティ又はルーメンを内包する二層膜を含む球状ベシクルである。二層膜は、少なくともひとつのリン脂質で作られており、コレステロールを含むんでいてもよいし、含んでいなくてもよい。リポソームは、天然由来のリン脂質と脂質鎖(卵ホスファチジルエタノールアミンのような)から形成されてもよいし、又はジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)のような純粋な表面活性成分から形成されてもよい。本発明の明細書で使用される用語「リポソーム」には、通常ミセルと記載される脂質球も含む。
【0098】
半透過性シェルの一般的例はまた、リン脂質二重層を含む半透過性膜においても見られる。リン脂質は、小さな、非帯電溶質について最も透過性が高い。リポソームは、リン脂質二重層に基づいて形成されてもよい。
【0099】
本発明で使用する温度感受性リポソームは理想的には、37℃、すなわちヒトの体温ではその構造を維持するが、それよりも高い温度、好ましくはヒトの体温よりもわずかに高い温度で、かつまた好ましくは発熱病での体温よりも高い温度で、破壊されるものである。一般的に熱的にガイドされる薬物輸送にとって約42℃が最も有用な温度である。
【0100】
温度感受性薬物キャリアの温度を上昇させ、温度感受性キャリアの破壊を促進するために、要求される熱が使用されることができる。熱はすべての身体的に許容される方法で供することができるが、好ましくは、非常に局在化された高体温を生じさせることのできる集中型のエネルギー源を用いることである。このエネルギーは、例えばマイクロ波、超音波、磁気誘導、赤外線又は可視光エネルギーを通じて提供されることができる。
【0101】
温度感受性リポソームは当該分野において知れている。本発明のリポソームは、当該分野で知られた種々の技術で調製することができる。例えば、US特許4,235,871、PCT 出願公開WO 96/14057、New RRC, Liposomes: A practical approach, IRL Press, Oxford (1990), pages 33-104、Lasic,D.D., Liposomes from physics to applications, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, 1993、Liposomes, Marcel Dekker, Inc., New York (1983)、が挙げられる。
【0102】
薬剤又は他の生物活性剤を本発明のリポソームに閉じ込めることはまた、当該分野の従来方法を用いて行うことができる。本発明のリポソーム組成物を調製する際に、抗酸化剤及び他の添加物を、本発明の目的を実質的に損なわない範囲で用いることができる。
【0103】
キャビティを内包する半透過性シェルに基づくリポソーム及び他の可能なキャリアは、通常球状である。本発明を使用するために、そのような球状のキャリアを非球状にすることが好ましい。これは、例えばリポソームの場合、リポソームを高張性緩衝液(従ってリポソームの内側の溶液に比べて高浸透圧を持つ)に対して透析することで行うことができる。透析は、リポソームの内側からバルク溶液へ正味の水の拡散を生じさせる。これによりリポソームの内部容積は減少する。リポソームの表面積が一定であることから、容積減少はリポソームを変形させ、ディスク形状、タバコ形状又は他のいかなる非球状になると考えられる。
【0104】
常磁性化学シフト試薬
本発明において、常磁性化学シフト試薬は、キャリアの中又は上ですべての方法で含まれることができる。好ましくは、キャリアのキャビティの中で前記試薬とプロトンプールを共に含むことで、シフト試薬がプロトンプールと十分な相互作用を持つことである。
【0105】
常磁性化学シフト試薬は、それが含まれる溶液又は分散液の相対的に多量の水分子を、取り囲むバルク水に関してMR共鳴周波数がシフトされたプロトンプールに変えるために適していればいかなる常磁性試薬でも基本的によい。リポCESTに関して既に説明した通り、好ましくは温度感受性薬剤キャリアは、常磁性化学シフト試薬と内部プロトンプールを有するものであることから、RFパルスで飽和させることができる。好ましい薬物キャリアは、リポソームの脂質二重膜のようなシェルを持ち、原理的にその直接環境とプロトンを交換可能であることから、RFパルスにより起こされた飽和は、付加されRF飽和された温度感受性薬物キャリアへ移動する。従って、磁気共鳴イメージングを実行する際、温度感受性薬物キャリアの直接環境は、他のバルク水分子に比べて減少したシグナルを示し、減少したシグナル強度によるコントラスト試薬の直接環境を検出することができる。常磁性化学シフト試薬は常磁性化合物、すなわち常磁性を持つすべての化合物を含む。好ましくは、常磁性化合物は、常磁性金属を含む。ここで金属とは、金属ナノ又はミクロ粒子又は金属イオンを意味し、明示的にキレート配位子による金属錯体を含む。常磁性金属は当該技術分野の熟練者には知られており、ここでは詳しくは記載しない。例えば前遷移金属温及び後遷移金属であり明示的には、クロム、マンガン、鉄であり、同様に、ガドリニウム、ユロピウム、ディスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、タリウム及びイッテルビウムのようなランタニドである。
【0106】
常磁性化学シフト試薬は、常磁性金属と強く結合することができるキレート構造を有し、金属が水又は他の適当なプロトン源と相互作用することができる。適切なキレート構造については、P. Caravan et al., Chem. Rev., 99, 2293-2352 (1999)を参照できる。好ましくは、水は、常磁性試薬の金属に少なくとも遷移状態的に配位される。化学シフトのメカニズムに関しては、J. A. Peeters et al., Prog. Nucl. Magn. Reson. Spectr, 28, 283-350 (1999)が参照できる。ひとつの実施態様において、キレート構造はそれ自体また、交換可能なプロトン、例えばヒドロキシ、アミン又はアミドプロトンを持つ。
【0107】
好ましくは、常磁性化学シフト試薬は、ランタニドイオンでキレート構造を有するもので、例えば、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(H4dota)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−α、α’、α’’、α’’’−テトラメチル−1,4,7,10−四酢酸(H4dotma)及び関連する配位子で、常磁性試薬において水分子が軸配位することができるものである。これについては、Aime et al., Angew. Chem. Int. Ed., 44, 5513- 5515 (2005)を参照できる。
【0108】
好ましくは、常磁性化学シフト試薬は水溶性である。好適な化学シフト試薬は当該技術分野の熟練者に知られている。CESTコントラスト試薬は、シフト試薬とプロトンプールが十分な相互作用を持ち、その結果化学的にシフトされたプロトンのプールとなる限り、なんら特別の化学シフト試薬を必要としない。
【0109】
好ましくは、常磁性化学シフト試薬は、金属イオンと、多座キレート配位子に基づく配位子を含む金属錯体である。より好ましくは、化学シフト試薬とプロトンプールとの相互作用が、配位形成により生じるものである。従って、金属錯体が、少なくともひとつの金属配位位置を有し、さらに少なくとも1つの水分子が配位する配位位置を残すものである。
【0110】
好適な水溶性化学シフト試薬の例は、[Ln(hpdo3a)(H2O)] (1)、 [Ln(dota)(H2O)]− (2)、 [Ln(dotma)(H2O)]― (3)、 [Ln(dotam)(H2O)]3+ (4)及び [Ln(dtpa)(H2O)]2― (5)であり、それらの関連する化合物を含み、Lnはランタニドイオンである。
【0111】
好ましくは常磁性化学シフト試薬は、下式1から5のようなランタニド錯体である。
【0112】
【化1】
ここで、ランタニドは、Eu3+, Dy3+, Ho3+, Er3+, Tm3+, Yb3+及び 好ましくは Tm3+又は Dy3+である。
【0113】
常磁性化学シフト試薬は通常、当該試薬に、1mMから2000mM,好ましくは1mMから1000mM及びより好ましくは50mMから200mM含まれる。常磁性化学シフト試薬は、オリゴメリックでもポリメリック化合物でも、分子中に数個の常磁性金属イオンを含むオリゴ核又は多核の化合物でもよい。
【0114】
さらなるコントラスト強化剤
本発明の温度感受性薬剤キャリアは、T1又はT2減少剤を含んでいてよい。これに関しては、Aime et al., JACS, 129, 2430-2431 (2007)が参照される。この方法で、すべてをひとつにする(all−in−one)概念が、19FMRIをT1、T2との組みあわせで、及び好ましくはまた1HMRIでCEST造影との組み合わせで実現できる。
【0115】
温度感受性薬剤キャリアの環境にある飽和移動プロトンに対する化学シフト差は、さらに温度感受性薬剤キャリア膜に、さらなる常磁性試薬(化学シフト試薬である必要はない)を与えることで強化され得る。従って、磁場での非球状キャリアの方向は、影響され既に説明したバルク感受性効果が強化される。さらなる常磁性試薬としては、好ましくは、ランタニド錯体を含み(両性化合物のより極性側に)、非極性末端を持つ両極性化合物である。かかる非極性末端は、好ましくは、疎水性分子相互作用に基づき温度感受性薬剤キャリア表面で脂質二重層の中に取り込まれ配列する傾向を有する。
【0116】
このような両極性錯体は例えば次に挙げられる。
【0117】
【化2】
常磁性化学シフト試薬を付加した温度感受性薬剤キャリアは、その中で又は外側表面、例えばリポソームシェルで、常磁性試薬と組み合わせることができる。そのような試薬は一般的に、常磁性基、好ましくはランタニド錯体(両極性化合物のより極性側で)を持ちかつ非極性末端部を持つ両極性化合物を含む。かかる非極性末端は、好ましくは、疎水性分子相互作用に基づき温度感受性リポソームの表面で脂質二重層の中に取り込まれ配列する傾向を有する。
【0118】
この選択的な膜−付随常磁性試薬におけるランタニドイオンは、コントラスト試薬のキャビティ内のランタニドと同じであってもよく又は違っていてもよい。
【0119】
本発明により提供されるように、常磁性化学スフト試薬は、温度感受性薬剤キャリアに内包されることができる。この方法により、水のプロトンプールが形成され、それはキャリアを取り囲むバルク水の化学シフトと比べて異なる化学シフトを有する。これらの化学的シフトした水の磁気共鳴は、十分狭いバンド幅のRFパルスで飽和される。コントラスト試薬の内側の水分子は、コントラスト試薬を取り囲むバルク水分子と急速に交換しているとから、この飽和はバルク水に移動される。
【0120】
従って、実際に使用する際には、温度感受性薬剤キャリアに基づくCESTコントラスト試薬の位置で、取り囲む水(すなわち、インビボで好ましく使用される体液)は、CEST−強化MRイメージで低強度領域として可視化される。CEST強化MRIについて、通常のMRIであって、励起に先立ち、交換可能な水の共鳴が選択的に飽和されていることを意味する。一般的に飽和に使用するRFパルスは、数ヘルツから数百ヘルツのバンド幅である。このパルスの適切な周波数は通常、仮想又は臨床前CESTMRI研究からすでに知られている。
【0121】
従って、本発明の好ましいキャリアは(19Fコントラスト試薬だけでなく、常磁性化学シフト試薬とプロトンプールを通してCESTコントラスト強化を与える)、19Fコントラスト試薬の放出により19FMRIによって検出されるだけでなく、キャリアが開口する前のいかなる時においても1HNMRを通しても検出されることができる。さらにT1又はT2コントラスト試薬を含む場合、キヤリアの開口に伴う薬剤放出ステップはまた(シェルが閉じて、飽和プロトン交換が拡散により生じている限りCESTコントラスト強化は作用している)検出されることができ、T1又はT2コントラスト強化は、これらのコントラスト試薬がバルク水(すなわち、このコントラスト試薬がシェルの開口を通して放出される際には体液)と相互作用をすることができる場合には、作用を表す。
【0122】
本発明のキャリアは種々の方法で使用されることができる。これらは、いかなる水性環境において望ましいレベルのMRI造影を生成するために適用されることができる。主な用途は、温度感受性薬剤キャリアを用いることが最も有益であるが、ビボでの局所的MRI造影を生成することである。これは、例えば生物(好ましくはヒト)の血中又は他の体液に注入することによりコントラスト試薬を導入し、この生物の全身又は一部でCESTコントラスト強化MRIスキャンを実施することで、可能となる。CEST生成されるバルク水分子のCESTコントラスト強化は、腫瘍のような、正常な体液が乱されている場所の点を可視化することができる。また、本発明のコントラスト試薬は、例えばひとつの末端に、キャリアの表面(例えばリン脂質表面の場合)内に貫通するに適する疎水性末端を持ち、他方の末端には望まれる配位子を持つ化合物を持たせることにより、脂質シェル内に疾患特異的分子プローブを設けることができる。温度感受性薬剤キヤリアは、特定の生物ターゲット位置で活性化される際、治療的内容物を放出する(これはキャリアシェルが崩壊することに対応する)ようにデザインされる。主な治療用ナノキャリアは、例えばリポCESTタイプのMR造影によりラベル化されてり、CESTMRIシグナルが放出に伴い消失する。従って、含まれる治療用物質の行き先は、MRではもはや観測されないし定量化もされない。これが、医学的応用において19Fシグナルの有用性が発揮されるところである。薬剤に放出にともない、19Fシグナルは薬剤放出過程を定量化し、治療効果を評価するために使用されることができる。CESTナノキャリアラベルが伝導性容器に閉じこめられている一方、分子構造に依存して、19Fラベルは、薬剤の組織での溢出しや吸収を追跡することができる。
【0123】
これにより、コントラスト試薬を望ましい又は疑われる体の位置に局在させることができ、そこでMRIにより可視化されることができる。本発明のCESTコントラスト試薬は好ましくは、キャリアの外の液体と交換可能な、キャリア内のプロトンプールに基づき作用する。この交換は、水プロトン移動によりなされるがまた、キャリアのシェル、すなわち好ましくは脂質二重膜又は温度感受性リポソームを通過するに十分小さな他の分子からのプロトン交換でもよい。
【0124】
本発明は、ここで説明した実施態様に限定されないことを理解されるべきである。また、特許請求の範囲で用いる、「含む」、「有する」なる用語、いかなる他の要素又はステップを排除するものではないことは理解されるべきである。「ひとつの」なる用語は特に記載されない限り、複数の意味も含む。
【0125】
実施例1
平均直径100nmのリポソームを、脂質膜を、脂質フィルムを脂質膜水和法と連続押し出しで作成した。MPPC及びDPPCはCHCl3/EiOH(4:1v/v)に溶解した。溶媒をゆっくりと減圧下で除去し薄膜が得られた。脂質膜を、50mMNH4PF6及び50mM[Tm(hpdo3a)(H2O)]を、20mMHEPES緩衝液中でpH7.4で水和した。分散液を数回、ポア直径が200nm及び100nmのポリカボネート膜フルターに順に通した。得られたリポソームを4℃で一夜透析して、脂質膜の水和の後内包されなかったNH4PF6と[Tm(hpdo3a)(H2O)]を除いた。透析は、0.3MのNaClを含む20mMHEPES緩衝液で行い、非球状性リポソームを得た。
【0126】
リポソームA−Dの組成物について、表1で参照される。
【0127】
【表1】
実施例2
同様にして、異なる温度感受性のリポソームを調製する。すなわち、低温度感受性(LTSL)、通常温度感受性(TTSL)及び非温度感受性(NTSL)である。
これらのリポソームの組成は表2に参照される。
【0128】
【表2】
これらの種々の処方で、19FMRI同様CESTMRIの効果につき、前記した図4−11を参照して測定される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング(MRI)に関する。特に本発明は、治療剤又は診断剤(以下、「薬物」とする)のような生物活性剤の輸送モニター又はガイドにおける、MRI及び19FMRIの使用に関する。より詳しくは、本発明は、そのような輸送モニター又はガイドにおいて、MRIコントラスト試薬として使用できる薬物キャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
ある組織にほとんど局在するような多くの病気は、全身投与された薬物により治療される。標準の癌治療のよく知られた例は、全身化学療法であり、これは望ましくない体内分配及び毒性による、患者にとって重大な副作用を伴う。これらの薬物の治療窓は、通常、一方では病気の組織に要求される最小量の治療濃度により決められ、他方では例えば肝臓や脾臓などのターゲットでない器官への毒性効果で決められる。例えば、ナノキャリアからの細胞静止薬の局所放出のような局在化治療は、より効果的な治療と、通常の治療窓に比べてより大きい治療窓を持つことが期待されている。局所薬物輸送はまた、肝臓癌の場合にしばしばそうであるように、外科手術のような他の治療選択があまりに危険である場合、重要である。局所薬物輸送はまた、例えば大動脈の冠状硬化症のような心血管疾患(CVD)での多くの兆候への好ましい治療選択となる得るものである。
【0003】
磁気共鳴イメージングは、通常磁気核として1Hに基づき、病院では病気の診断で広く使われている重要な技術のひとつである。MRIは、軟組織に対してすばらしい空間分解能をもつ非侵襲性イメージングを可能とする。
【0004】
1Hの代わりに19Fに基づく磁気共鳴イメージングは、新たな診断の可能性を開くものである。19F核は高い磁気回転比(40MHz/T)を持ち、さらに天然の同位体存在比が100%である。ヒトの体には、19Fを含む構造は、ほとんどが例えば歯や骨のような固体塩の形で存在する。その結果、内在性の19F原子のT2緩和時間は非常に短く、そのMRシグナルは非常に観測し難い。言い換えると、相対的に高い横緩和時間を持つ内在性19Fに基づく構造がないことは、非常に低いバックグラウンドMRシグナルを保証する。それゆえ、内在性19Fに基づくMRIコントラスト試薬は、PET(ポジトロンエミッショントモグラフ)のような他の技術と同じ方法で、「ホットスポット」イメージングを可能とする。
【0005】
診断的使用の有用な拡張として、MRIはまた、治療又は診断薬のような生物活性剤の輸送のモニターのために提案されている。言い換えると、MRIは、治療計画のために用いられるだけでなく、イメージガイドの下で局所薬物輸送を制御することも可能である。
【0006】
上で説明した高い特異性から、19FNMRを診断用道具のみならず、薬物又は他の生物学的に活性剤のMRI補助輸送としても望まれるものであろう。しかし、高い特異性はまた、ここでの19FMRIの最適使用にとって実際的な問題がある。19Fコントラスト試薬を薬物キャリアに加えることは、天然の19Fシグナル源がないことから、そのような薬物キャリアを19FMRIの手法でいつでも位置づけできることを意味する一方、他方では、19Fコントラスト試薬の検出が、その生物活性試薬の放出についての情報を与えるものではなく、コントラスト試薬の存在のみの情報を与えるものであることを意味する。
【0007】
MRI監視薬物放出についての文献は、Ponce et al, J Natl Cancer Inst 2007; 99: 53−63である。ここには、薬物のドクソビシンが、温度感受性リポソームに取り込まれている。体温では、ドクソビシンは、リポソーム内に留まっているが、41−42℃でその細胞静止薬はリポソームの水性成分から放出される。このように、薬物放出が熱を供給することで実行される。これは、リポソームの開口の結果であり、これにより薬物放出は(あるとすれば)拡散により決定されるものではなく、リポソームのシェルを通るものである。MRIで薬物放出をモニターするために、マンガンがMRIコントラスト試薬として組成物に添加されている。
【0008】
ほとんどすべての現在のMRIは、バルク水分子のイメージングに基づく。それは、全ての組織を通して非常に高濃度で存在する。異なる組織間での造影が医学的情報を得るには十分でない場合、ガドリニウムの低分子量錯体のようなコントラスト試薬を投与される。これらの常磁性錯体は、水分子のプロトンの縦緩和時間(T1)及び横緩和時間(T2)を減少させる。
【0009】
上で説明した薬物キャリア中のマンガンコントラスト試薬は、MRIで検出されるバルク水に影響を与える。即ち、熱を供した後、リポソームの融転移温度を超えたところでリポソームが開口し、即座にMRIコントラスト強化をもたらす。
【0010】
説明したように、この薬物放出プロセスにおいて使用されるMRIは、事実、実際の放出をモニターするために用いられ、熱感受性リポソームが実際に作用することを確立する。言い換えるとそれは単に事後的に情報を提供するものである。
【0011】
19FMRIを、薬物のような生物活性剤の局所放出をガイド及び/又はモニターするために使用することは有益である。また、薬物が、投与によりどうなるのかをモニターすることも有益である。また、薬物が放出されたという事実を即座に確認することよりも、そのモニターが、薬物放出が何時、どこで生じるべきかを前もって決めることができるようなものであることが望まれる。特に、温度感受性薬物キャリアを用いて、その薬物キャリアを局所化し、そして熱を供して、望ましい場所でそのスポットで、望ましい時のその瞬間に、薬物を放出させるようにすることは有益である。さらに、薬物放出のプロセスが必ずしも消失する必要がなく、そして好ましくは、薬物放出プロセスを定量化し治療効果を評価するために使用することができる、モニターの可能性を提供することは有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記の要求に応じる、薬物のような生物活性剤の局所輸送に適したキャリアを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の要求によりよく応じるため、本発明はひとつの側面で、薬物のような生物活性剤の局所輸送に適したキャリアを提供する。当該キャリアは、局所刺激、例えば熱のようなエネルギー投与の結果として、内包された生物活性剤、薬物を放出することができるシェルを含む。また前記シェルは19Fコントラスト試薬を内包する。
【0014】
他の側面では、本発明は、19FMRI及び1HCESTMRIの組み合わせを提供する。さらに本発明は、薬物のような生物活性剤の局所輸送に適したキャリアを提供し、当該キャリアは、局所刺激、例えば熱のようなエネルギー投与の結果として、内包された生物活性剤、薬物を放出することができるシェルを含み、また前記シェルは、1HMRIのためのリポCEST用化学シフト試薬及び19Fコントラスト試薬を内包する。
【0015】
他の側面では、本発明は、薬物のような生物活性剤の局所輸送に適したキャリアを提供し、前記キャリアは、19F及び1HMRIのためのコントラスト試薬を含む。特にさらなる側面として、1HNMRコントラスト試薬が、T1及び/又はT2強化コントラスト試薬、CESTMRコントラスト試薬及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0016】
さらなる側面において、本発明は、キャビティを有する感受性の半透過性のシェルを持つ薬物キャリアを提供する。ここで前記キャビティは、19Fコントラスト試薬、常磁性化学シフト試薬及びプロトン分析物のプロトンプールを含む。
【0017】
さらに他の側面として、本発明は、治療又は診断試薬のような生物活性剤の制御された局所放出のためのキャリアを提供する。前記キャリアは、キャビティを持つ熱感受性の半透過性シェルを有し、前記キャビティには、19Fコントラスト試薬、常磁性化学シフト試薬及びプロトン分析物のプロトンプールを含み、前記シェルが、前記プロトン分析物の拡散を可能とし、さらに前記シェルが熱により変化して、前記キャリアの中で生物活性剤の放出を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は以下、非限定的な例及び添付の非限定的な図面を参照して説明する。
【図1】図1は、薬物分子のイメージガイド輸送のための熱感受性リポソームを示す。この模式図は、外部作動(例えば熱、超音波又はRF)を適用する際の、化学シフト試薬(例えば[Tm(hpdo3a)H2O]及び19FMRIコントラスト試薬(例えばNH4PF6)の放出を示す。
【図2】図2は、19FMRIに適切なコントラスト試薬の例を示す。
【図3】図3は、ジパルミトイルsn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)、水素化大豆sn−グリセロ−3−ホスホコリン(HSPC)及びモノパルミトイルsn−グリセロ−3−ホスホコリン(MPPC)の化学式を示す。
【図4】図4は、キャビティに50mMのNH4PF6を含むリポソームの7Tでの19FNMRである(処方A)。非イオン性表面活性剤であるTriton−X100の添加により、19Fシグナルはよりシャープになり、リポソームからNH4PF6が放出されたことを示す。
【図5】図5は、NH4PF6及び[Tm(hpdo3a)H2O]を含む低温度感受性リポソームの、異なる温度での19FNMRスペクトルを示す。
【図6】図6は、低温度感受性リポソーム(LTSL)の内包されたNH4PF6の異なる濃度(処方A−D)で、7Tでの温度の関数としての19FNMRシグナルの強度を示す。融解相転移温度での19Fシグナルの強度が温度により増加することが分かる。
【図7】図7は、298K、7.0Tでの飽和前パワーレベル(2.9−10.6μT)の関数として、50mM[Tm(hpdo3a)H2O]と50mMNH4PF6(処方B)を付加した低温度感受性リポソームのZスペクトル(左)及びCEST効果(右)を示す。CEST効果は、式:(1−Ms/M0)*100%で計算した。Msはリポソーム内の水プールの選択的飽和させた後の水プロトンシグナルの強度であり、M0は、逆周波数オフセットで制御された照射下でのバルク水プロトンシグナルの強度である。
【図8】図8は、CEST1H及び19FMRIのための低温度感受性リポソームコントラスト試薬の、温度の関数としてのNMRシグナル強度を示す(処方B)。
【図9】図9は、3Tでの同時デュアル19F/1Hシーケンスを用いて得られた低温度感受性リポソームMRIコントラスト試薬のCESTイメージングを示す(処方B)。297Kで見られたCEST効果は、311Kで消失した。これは、[Tm(hpdo3a)H2O]がリポソームの内側から放出されたことを示す(左)。試剤を加熱後、19FMRシグナルは見えるようになった(右)。
【図10】図10は、低温度感受性リポソーム(LTSL)(処方E)、従来の温度感受性リポソーム(TTLS)(処方F)及び非温度感受性リポソーム(NTSL)(処方G)の、CEST効果対温度を示す。低温度感受性リポソームCESTMRIコントラスト試薬(処方E)は、312Kで鋭いCEST効果の減少を示すが、TTSL又はNTSLのいずれに基づくCESTMRIコントラスト試薬でのより高い温度では、よりゆっくりとしたCEST効果の減少が観察された。
【図11】図11は、LTSL(処方E)、TTSL(処方F)及びNTSL(処方G)についての19Fシグナル対温度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
広い意味で、本発明は、薬物のような生物活性剤の局所輸送に適した、19Fコントラスト試薬を含むキャリアに関するものである。19Fコントラスト試薬は、キャリアから放出され、検出可能性に変化をもたらすものである。特に、19Fコントラスト試薬がキャリアに内包されている状態では、コントラスト試薬の19FMRシグナルは、スペクトル的に非常にブロードである。19Fコントラスト試薬はほとんど観測されない。しかしながら放出されると、19Fコントラスト試薬が観測可能となり、明瞭な好ましくはシャープな19F磁気共鳴シグナルを生じる。
【0020】
特に本発明は、本発明は、薬物のような生物活性剤の局所輸送に適した、19Fコントラスト試薬及びCESTコントラスト試薬とを含むキャリアに関するものである。
【0021】
薬剤のような生物活性剤の局所輸送(以下、「薬剤輸送」とする。)のためのキャリアの適合性は、薬剤を付加されたキャリアが、例えば制御された外部力又は十分量のエネルギーを供与されることで、その薬剤を局所的に放出するように引き起こされることができる、種々の方法に関することができる。これは、例えば、局所加熱を与えることで局所的に薬物の放出を引き起こすことができる温度感受性薬物キャリアに関する。局所化輸送の他の方法は、必ずしも温度感受性だけを含むものではなく、温度感受性以外の性質に基づく活性化方法により薬物放出を引き起こすことができるキャリアには、限定されるものではないが、pH,気体コア及び/又は層の存在及び外部から供される超音波周波数/波長及び強度が含まれる。
【0022】
19FMRIコントラスト試薬
上記の説明に関して、MR検出可能な19Fは、体内では天然では生じることはない。従って、19FMRIは、19Fコントラスト試薬添加を基本として行われる。
【0023】
19Fのコントラスト試薬は、好ましくは、多数の磁気的に等価なフッ素化基を有するものである(感度は、分子当たりの磁気的に等価なF原子の数に直線的である)。使用されるCESTMRI、19FMRコントラスト試薬との望ましい組み合わせという観点から、好ましくは、水溶性であり、そして特に好ましくはできるだけ水溶性を持つために帯電性の分子である。リン脂質シェルにおいて適用するという観点から、好ましい19Fコントラスト試薬は、リン脂質に著しく結合したり、付随したりしないものである。ヒト又は動物の体内で放出されるという観点から、19Fコントラスト試薬は好ましくは、低毒性であり、高生物適合性のものである。
【0024】
好ましい19Fコントラスト試薬は、図2で記載された化合物及びその混合物から選択される。最も好ましくは、脂肪族炭化水素のパーフルオロ体の適用である。
【0025】
CESTMRI
好ましい実施態様において本発明はまた、CESTMRIコントラスト強化(contrast enhancement)に関する。本方法は、選択された、磁気的に前飽和されたプロトンから、MRIで決定されたバルク水への、化学的交換依存飽和移動(CEST)の利用によるイメージ造影を生成するために役立つ。
【0026】
この好ましい実施態様において、本発明は、温度感受性薬物放出に対して全てのCESTタイプのコントラスト強化の応用に関するけれども、利用可能となる高度なCEST方法を使用することが好ましい。
【0027】
常磁性化学シフト試薬との組み合わせたCEST(ParaCEST)は、CESTコントラスト試薬の常磁性シフトしたプロトンプールの磁化が、ラジオ波(RF)照射の適用によって選択的に飽和されるという方法である。この飽和がバルク水にプロトン交換により移動することで、CESTコントラスト試薬環境にある励起可能な水のプロトンの量を減少させる。従ってバルク水のシグナルの強度の減少が観測され、これはMRIイメージングにおける(負の)コントラスト強化を作り出すために使用することができる。
【0028】
高いCEST効果を得るための方法は、化学的にシフトされ、従って選択的にRFパルスで飽和される、プロトンプールを提供するために、常磁性シフト試薬(例えばNa[Tm(dotma)H2O]、ここで「H4dotma」は、α、α’、α’’、α’’’−テトラメチル−1、4、7、10−四酢酸であり、dotmaはそのリガンドのそれぞれの4つ脱プロトンしたテトラアニオン形を表す)を含む溶液の多数の水分子の利用に基づく。この系がキャリア、例えばリポソーム内に内包される場合、磁気飽和は、このキャリアの外側のバルク水(化学的にシフトされていない)へ移動することができる(LipoCEST)。磁気移動の量及び従ってコントラスト強化の程度は、キャリア内の水の量によると同様に、キャリアのシェル例えば、リン酸脂質膜を通る水の拡散速度により決められる。
【0029】
最適な水交換速度は、キャリアの外側のバルク水と内側のプロトンプールの間の化学シフトの差に直接関連する。リポソーム内の水分子に誘起される常磁性シフトは、2つの主要な寄与からなる。ひとつは、水分子とシフト試薬との直接双極子相互作用(δdip)と、もうひとつは、バルク磁気感受性効果による化学シフト(δbms)である。全体の常磁性シフトは、これらの2つの寄与の和である。
δ=δdip +δbms (1)
δbmsは球状粒子ではゼロであるが、異方性粒子の場合は顕著となる。非球状粒子は磁場で力を受け、磁場線に沿っての配列が引き起こされる。リポソームの場合で、常磁性分子がリン脂質膜に付随するような場合、この効果はさらに増大する。
【0030】
非球状リポソームを用いたCESTに関する文献は、Terreno, E. et al. Angew. Chem. Int. Ed. 46, 966-968 (2007)である。
【0031】
19F及び1HMRコントラスト試薬との組み合わせ
本発明において、適切な19F及び1HMRコントラスト試薬との組み合わせは種々の方法で可能である。
【0032】
CEST機構又は19FMRを利用することにより、2重又は多重ラベル化MR造影を 生成することができる。または、多重MR造影は、キャリア中に金属含有化合物を存在させることにより、イメージングされる分析物(通常水のプロトン)の縦緩和時間(T1)又は浴緩和時間(T2)の変更を通じて生成されることができる。これらのコントラスト強化機構のすべては、これらのすべての組み合わせでも使用され得る。
【0033】
二重/多重ラベル化MRI造影は、キャリアの物理状態に依存して、従来のMR装置を用いて連続的に又は交互に、又は二重同調スペクトル装置を用いて、例えば1H及び19F共鳴周波数で、周波数組み合わせを用いて同時に、モニターすることができる。
【0034】
この側面において本発明はまた、薬物輸送のモニター及び/又はガイドにおける同時二重核MRに使用に関する。
【0035】
温度感受性リポソームにおいて、CEST及び19Fコントラスト試薬の組み合わせは、CEST及び19FMRIの手段による独立かつ同時に、薬物放出プロセスをモニターする機会を提供する。2つの異なるMRシグナルを同時にモニターすることは、対応する二重ラベルMR技術により成立する。この方法は、次のいくつかの可能な利点をもたらす。薬物付加粒子の空間分布が、CESTMRIにより薬物放出前に入手利用できる。1HCEST及び19FMRシグナルは、放出薬物の量に比例する。これは、フィードバックループを用いて、インビボでの放出薬物の定量的制御を可能とする。疾患場所でのキャリアからの薬物の放出は、温度感受性リポソームの場合の例えばRF又は超音波による加熱のような局所的刺激により誘起されることができる。CESTMRコントラスト強化を、意図するままに、切り替えることができる。
【0036】
キャリア
これまで、薬物のような生物活性剤の局所輸送に適したキャリアについて言及した。以下では、用語「生物活性剤」について、短く「薬物」及び「薬物キャリア」として言及する。
【0037】
本発明の内容において薬物キャリアとは、その中に又はその上に生物活性剤が含まれることができ、目的物を体内放出されることができる、すべての物質を意味する。
【0038】
適するキャリアには、マイクロキャリア及び、特に、リポソーム、ポリマーソーム、ナノカプセル及びCESTコントラスト試薬としての使用に適うサイズと性質を持つその他のナノキャリアを含まれる。
【0039】
薬物キャリアは、MRIの対象となるヒトの体内に導入される。これは例えば、血液流に注入されるか、他の手段により体液中にキャリアが導入される。
【0040】
薬物は、病気又は不調の処置、治療、予防又は診断に、又は他の身体的又は精神的健康増進のために用いられる化学物質である。本発明で意図するガイド輸送は、主に治療剤(すなわち、厳密な意味で、疾患又は不調に対する治療又は予防のために意図される薬物)として有用であり、しかしまた診断目的で投与される薬剤として有用である。他の生物活性剤、すなわち機能性食品成分のような治療又は予防的ではないものは、通常はガイド及び/又はモニター輸送の対象ではないけれども、望むならば本発明を用いて行うことができる。
【0041】
本発明の最適の使用は、ターゲット療法、すなわちターゲット輸送に向けられた薬物の場合に達成される。そのような輸送は、本発明により可能となる、モニターすることから本来最も利益を得るであろう。これは例えば、腫瘍の治療においてその場に輸送されるべき薬剤、心臓血管のアテローム硬化症のような心臓血管不調の治療又は予防における薬剤又はてんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病又は発作のような神経状態の治療に用いられる神経修飾物質のような脳血管障壁を貫通することを要する薬剤に関連する。ターゲット薬剤輸送をガイドしモニターすることから得られる利益はまた、ターゲット診断薬剤に適用可能である。同じくターゲット療法の場合と同じく、ここでもまた癌は、場所特異的輸送が重要となり得る領域である。
【0042】
本発明の使用に適する生物活性剤は、生物学的に活性な薬剤であって、治療薬、内在性分子及び薬学的に活性な薬剤を含み、抗体、栄養分子、美容薬剤、診断薬及び追加のイメージングのためのコントラスト試薬を含む。ここで用いられるように、活性剤には、これらの薬学的に許容される塩を含む。
【0043】
本発明の薬物キャリアは、親水性又は疎水性の生物活性剤を含むことができる。親水性生物活性剤は、キャリアの水性成分に内包されることができ、一方疎水性生物活性剤は、キャリアの疎水性領域、例えばリポソームの脂質二重層に内包されることができる。核酸、炭水化物及び一般的にタンパク質及びペプチドは水溶性又は親水性である。小分子である生物活性剤として、脂質、リポポリサッカライド、ポリヌクレオチド及びアンチセンスヌクレオチド(遺伝子治療剤)が含まれる。取り込まれ得るそのような生物活性剤には、非タンパク質、非ペプチド薬剤も含まれる。本発明の範囲内で、重合性の性質の薬剤を取り込むことが可能であり、しかしまた、相対的に1500g/mol又は500g/molよりも小さい分子量の薬剤も取り込むことが可能である。
【0044】
従って、本発明の内容において、生物活性剤として使用を意図されている化合物は、治療又は予防効果を持つすべての化合物を含む。組織成長、細胞成長、細胞分化に影響する又は関与する化合物、免疫応答のような生体反応を引き起こすことができる化合物、又は1又はそれ以上の生物的プロセスにおいてなんらかの役割を演じる化合物であり得る。限定するものでないが例を列記する。抗微生物剤(抗菌剤、抗ウイルス剤及び抗真菌剤)、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、トロンビンインヒビター、抗血栓剤、血栓溶解剤、繊維素溶解剤、血管痙攣インヒビター、カルシウムチャンネルブロッカー、血管拡張剤、降圧剤、抗菌剤、抗生物質、表層糖タンパク質レセプターのインヒビター、抗血小板剤、抗有糸分裂剤、微小管インヒビター、抗分泌性剤、アクチンインヒビター、再形成インヒビター、抗代謝剤、抗増殖性剤(血管新生抑制剤を含む)、抗癌化学療法剤、ステロイド抗炎症剤又は非ステロイド抗炎症剤、免疫抑制剤、成長ホルモンアンタゴニスト、成功因子、ドーパミンアゴニスト、放射線治療剤、細胞外マトリックス成分、ACEインヒビター、フリーラジカル消去剤、キレーター、抗酸化剤、抗ポリメラーゼ及び光力学療法剤である。
【0045】
相対的に小さいペプチドは、アミノ酸の数(例えば、ジ−、トリ−、テトラペプチド)で表される。アミド結合の相対的に少ない数のペプチドはまたオリゴペプチド(50アミノ酸まで)と呼ばれることもできる。一方相対的に大きい数(50アミノ酸よりも多い)のペプチドはポリペプチド又はタンパク質と呼ばれることができる。アミノ酸基の重合体であるということに加えて、さらに、いわゆる4次元構造と呼ばれる、いくつかの数のポリペプチドの集合体により特徴付けられることもできる。これは、必ずしも化学的にアミド結合で結合されているものではなく、一般的に当該技術分野の熟練者には知られた力、例えばファンデルワールス力で結合されているものである。ここで用いられる、ペプチド、タンパク質又はそれらの混合物なる用語は、すべての上記説明した可能性を含む。
【0046】
通常、タンパク質及び/又はペプチドは、その生物活性に基づいて選択される。選択されたポリマーのタイプにより、本発明のプロセスで得られる生成物は、タンパク質及びペプチドの制御放出のために非常に適している。ひとつの実施態様においては、タンパク質又はペプチドは、成長因子である。
【0047】
付加される重合体に有利に含まれることのできる、タンパク質又はペプチドの例又はタンパク質又はエプチドを含む物の他の例は、限定されるものではないが、免疫原性ペプチド又は免疫原性タンパク質を含み、それらは限定されるものではないが以下の物を含む。
【0048】
ジフテリア毒及び破傷風毒のような毒素 アデノウイルス、エプスタイン・バーウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、HIV−1ウイルス、HIV−2ウイルス、HIV−IIIウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、はしかウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、風疹ウイルス、天然痘ウイルス及び黄熱病ウイルスなどの表面抗原又はその断片。
【0049】
ボルデテラ百日咳、ヘリコバクターピロリ、破傷風菌、ジフテリア菌、大腸菌、インフルエンザ菌、クレブシエラ菌種、レジオネラニューモフィラ、ウシ型結核菌、らい菌、結核菌、淋菌、髄膜炎菌、プロテウス菌種、緑膿菌、サルモネラ種、赤痢菌種、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、コレラ菌及びペスト菌などの表面抗原又はその断片。
【0050】
三日熱マラリア、熱帯熱原虫マラリア、卵型原虫マラリア、熱帯リシューマニア、ドノバンリシューマニア、ブラジルリシューマニア、ローデシアトリパノソーマ睡眠病、ガンビアトリパノソーマ睡眠病、クルーズトリパノソーマ(シャガス病)、マンソン住血吸虫症、住血吸虫症、日本住血吸虫症、旋毛虫病(トリキネラ症)、糞旋虫(鉤虫症)、十二指腸虫(鉤虫症)、アメリカ鉤虫症、バンクロフト糸状虫(フィラリア)、マレー糸状虫(フィラリア)、ロア糸状虫(フィラリア)、常在糸状虫(フィラリア)、メジナ糸状虫(フィラリア)及び回旋糸状虫(フィラリア)などの表面抗原又はその断片。
【0051】
IgG、IgA、IgMのようなイムノグロブリン、抗狂犬病イムノグロブリン及び抗ワクチニアイムノグロブリン。
【0052】
ボツリヌス抗毒素、ジフテリア抗毒素、ガス壊疽抗毒素、破傷風抗毒素のような抗毒素。
【0053】
口蹄疫に対する免疫応答を引き起こす抗原。
【0054】
ろ胞刺激ホルモン、プロラクチン、アンジオゲニン、表皮成長因子、カルシトニン、エリスロポイエチン、甲状腺刺激性放出ホルモン、インスリン、成長ホルモン、シンスリン様成長イン疎水性1及び2、骨格成長因子、ヒトじゅう毛膜性刺激ホルモン、神経成長因子、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、黄体ホルモン放出ホルモン(LHRH)、副甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、インタフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子及び腫瘍壊死因子のようなサイトカイン、ウロキナーゼ、キドニープラスミノーゲンアクチベータのような繊維素溶解性酵素、及びタンパク質C、因子VIII、因子IX、因子VII及びアンチトロンビンIIIのような凝固因子、のようなホルモン及び成長因子。
【0055】
他のタンパク質又はペプチドの例として、アルブミン、心房性ナトリウム利尿因子、レニン、スーパーオキサイドディスミュターゼ、アルファ1−アンチトリプシン、肺表面タンパク質、バシトラシン、ベスタチン、サイドスポリン、デルタ誘眠ペプチド(DSIP)、エンドルフィン、グルカゴン、グラミシジン、メラニン細胞抑制因子、ニューロテンシン、オキシトシン、ソモスタチン、テルプロチド、血清胸腺因子、チモジン、DDAVP、デルモルフィン、メタ−エンケファリン、ペプチドグリカン、サチエチン、チモペンチン、繊維素分解生成物、デス−エンケファリン−アルファ−エンドルフィン、ゴナトトロピン放出ホルモン、ロイプロリド、アルファ−MSH及びメトケファミド、が挙げられる。
【0056】
アルトレタミン、フルオロウラシル、アムサクリン、ヒドロキシカルバミド、アスパラギナーゼ、イホスファミド、ブレオマイシン、ロムスチン、ブスルファン、メルファラン、クロラムブシル、メルカプトプリン、クロメチン、メトレキサート、シスプラチン、ミトマイシン、シクロホスファミド、プロカルバジン、シタラビン、テニポシド、ダカルバジン、チオテパ、ダクチノマイシン、チオグアニン、ダウノルビシン、トレオスルファン、ドキソルビシン、チオホスファミド、エストラムシン、ビンブラスチン、エトグルシド、ビンクリスチン、エトポシド、ビンデシン及びパクリタキセル、のような抗腫瘍剤。
【0057】
以下のものを含む抗菌剤。
【0058】
アンピシリン、ナフシリン、アモキシリン、オキサシリン、アズロシリン、ペニシリン、Gカルベニシリン、ペニシリンV、ジクロキサシリン、フェネチシリン、フロクサシリン、ピペラシリン、メシリナム、スルベニシリン、メチシリン、チカルシリン、メズロシリン、セファロスポリン、セファクロ、セファロチン、セファドロキシル、セファピリン、セファマンドール、セファラジン、セファトリジン、セファスルホジン、セファゾリン、セフタジジム、セホラニド、セフトリアゾン、セホキシチン、セフロキシム、セファセトニル、ラタモキセフ及びセファレキシン、のような抗菌剤。アミカシン、ネオマイシン、ジベカシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシンのようなアミノグリコシド。アンホテリシンB、ノボビオシン、バシトラシン、ニスタチン、クリンダマイシン、ポリミキシン、コリスチン、ロバマイシン、エリスロマイシン、スペクチノマイシン、リンコマイシン、バンコマイシン、のようなマクロライド。クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ロリテトラサイクリン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン及びミノサイクリン、のようなテトラサイクリン。クロラムフェニコール、リファマイシン及びチアムフェニコールのような他の抗菌剤。
【0059】
スルホンアミドスルファジアジン、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファメトキサゾール、スルファジミジン、スルファメトキシピリダジン、スルファフラゾール、スルファフェナゾール、スルファレン、スルフィソミジン、スルファメラジン、スルフィソキサゾール及びスルファメトキサゾール又はスルファメトロールと共にトリメトプリム、のような化学療法剤。
【0060】
メタナミン、キノロン(ノルフロキサシン、シノキサシン)、ナリジクス酸、ニトロ−化合物(ニトロフラントイン、ニフルトイノール)及びオキソリン酸のような尿路防腐剤。
【0061】
メトロニダゾールのような嫌気性感染症のための薬物
アミノサイリチル酸、イソニアジド、シクロセリン、リファムピシン、エタムブトール、チオカルリド、エチオンアミド及びビオマイシンのような肺結核のための薬剤
アミチオゾン、リファムピシン、クロファジミン、スルホキソンナトリウム及びジアミノジフェニルスルホン(DDS,ダプソン)のようならい病のための薬剤。
【0062】
アムホテリシンB、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、エコナゾール、ナタマイシン、フルサイトシン、ニスタチン及びグリセオフルビンのような抗真菌薬剤。
【0063】
アシクロビル、イドクスウリジン、アマンチジン、メチサゾン、シタラビン、ビダラビン及びガンシクロビルのような抗ウイルス薬剤。
【0064】
クロロキン、イオドキノール、クリオキノール、メトクロニダゾール、デヒドロエメチン、パロモマイシン、ジロキサニド、フロアテチニダゾ−ル及びエメチンのようなアメーバ症の化学療法薬剤。
【0065】
クロロキン、ピリメタミン、ヒドロキシクロロキン、キニン、メフロキニン、スルファドキシン/ピリメタミン、ペンタミジン、スラミンナトリウム、プリマキン、トリメトプリム及びプログアニルのような抗マラリア薬剤。
【0066】
アンチモンカリウム酒石酸塩、アンチモンナトリウムジメルカプトコハク酸塩、オキサムニキン、ベフェニウム、ピペラジン、ジクロロフェン、プラジカンテル、ジエチルカルバマジン、パモ酸ピランテル、ヒカントン、パモ酸ピリビウム、レバミソール、スチボフェン、メベンダゾール、テトラミソール、メトリホネート、チオベンダゾール及びニクロサミドのようなぜん虫症薬剤。
【0067】
アセチルサリチル酸、メファナム酸、アクロフェナク、ナプロキセン、アゾプロパノン、ニフルミン酸、ベンジダミン、オキシフェンブタゾン、ジクロフェナク、ピロキシカム、フェナプロフェン、ピルプロフェン、フルルビプロフェン、サリチル酸ナトリウム、イブプロフェンスリンダク、インドメタシン、チアプロフェン酸、ケトプロフェン及びトリメチンのような抗炎症剤。
【0068】
コルヒチン及びアロプリノールのような抗痛風薬剤。
【0069】
アルフェンタニル、メタドン、ベジトラミド、モルフィン、ブプレノルフィン、ニコモルフィン、ブトルファノール、ペンタゾシン、コデイン、ペチジン、デキストロモラミド、ピリトラニド、デキストロプロポキシフェン、スフェンタニル及びフェンタニルのような中枢作用性(モルヒネ様)鎮痛剤。
【0070】
アルチカイン、メチバカイン、ブピバカイン、プリロカイン、エチドカイン、プロカインリドカイン及びテトラカインのような局所麻酔薬。
【0071】
アマンチジン、ジフェンヒドラミン、アポモルフィン、エトプロパジン、ベンズトロピンメシラート、レルゴトリル、ビペリデン、レボドーパ、ブロモクリプチン、リスリデ、カルビドーパ、メチキセン、クロロフェノキサミン、オルフェナドリン、サイクラミン、プロサイクリジン、デキセチミド及びトリヘキシフェニジルのようなパーキンソン病のための薬剤。
【0072】
バクロフェン、カリソプロゾール、クロルメザノン、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、ダントロレン、ジアゼパム、フェバルバメート、メフェノキザロン、メフェネシン、メトキサロン、メトカルバモル及びトルペリゾンのような中枢神経系筋弛緩薬剤。
【0073】
コルチゾール、デソキシコルチコステロン及びフロロヒドロコルチゾンのようなコルチコステロイド。
【0074】
ベクロメタゾン、メータメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオコルトロン、フルオメトロン、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン及びトリアムシノロン(アセトニド)のようなグルココルチコステロイド。
【0075】
以下のものを含むアンドロゲン。ダナゾール、フルオキシメステロロン、メステロロン、メチルテストステロン、テストステロン及びそれらの塩。
【0076】
カルステロン、ナンドロロン及びそれらの塩、ドロモスタノロン、オキサンドロロン、エチルエステロール、オキシメトロン、メタンドリオール、スタノゾロール、メタンドロステノロン及びテツトラクトンのような、治療用アナボリックステロイド。
【0077】
シプロテロンアセテートのような抗アンドロゲン。
【0078】
ジエチルスチルベストロール、エステラジオール、エステロール、エチニルエステラジオール、メストラノール及びキネストロールを含むエストロゲン。
【0079】
クロロトリアニセン、クロミフェン、エタモキシトリフェトール、ナフォキシジン及びタモキシフェンのような、抗エストロゲン。
【0080】
アリルエストレノール、デソゲストレル、ジメチステロン、ジドロゲステロン、エチニルエストレノール、エチステロン、エチナジオール、ジアセテート、エチノジオール、ヒドロキシプロゲストロン、レボノルゲストレル、リネストレル、メドロキシプロゲステロン、メガストロールアセテート、ノルエチンドロン、ノルエチステロン、ノルゲストレル及びプロゲステロンのような、プロゲスチン。
【0081】
次のものを含む甲状腺疾患薬剤。
【0082】
レボチロニン及びリオチロニンのような、甲状腺疾患治療薬剤。
【0083】
カルビマゾール、メチマゾール、メチルチオウラシル及びプロピルチオウラシルのような、抗甲状腺疾患治療薬剤。
【0084】
水溶性である生物活性剤のほか、他の水溶性の化合物を挿入することができる。例えば
抗酸化剤、イオン、キレート剤、色素、イメージング化合物である。
【0085】
好ましい治療剤は、癌(例えば抗腫瘍)及び心臓血管疾患の分野である。
【0086】
ナノ粒子又はリポソーム処方に適した親脂質薬剤誘導体の調製方法は、当該分野において知られている(例えばUS5534499には、共有結合でリン脂質の脂肪鎖に付された治療薬剤が記載されている)。本発明の薬剤はまた、プロドラッグであってもよい。
【0087】
薬剤は、キャリアの成分、例えばリポソームのキャビティ及び/又はシェルの、中側、外側又は両側に存在することができる。薬剤の分布は、薬剤キャリアに含まれる他のすべての剤、例えば常磁性化学シフト試薬又は常磁性試薬の分布とは独立している。薬剤の組合わせを用いてもよく、これらの組合わせ薬剤は、薬剤キャリアの成分、例えばリポソームのキャビティ及び/又はシェルの、中側、外側又は両側に存在することができる。
【0088】
温度感受性キャリア
本発明は好ましくは、温度感受性のキャリアを提供する。これは、キャリアの物理的又は化学的状態がその温度に依存することを意味する。
【0089】
特定の分子を内包でき、体温(すなわち、37℃)では変化なく、他の体温ではない温度でしかも目的物にとって使用されても堪えられる温度で破壊されることができる、温度感受性キャリアが使用可能である。本発明のキャリアには、制限されるものではないが、温度感受性マイクロ−及びナノ−粒子、温度感受性ポリマーソーム、温度感受性リポソーム、温度感受性ナノベシクル及び温度感受性ナノスフェアが含まれる。
温度感受性ナノベシクルは通常、100nmの直径を有する。本発明の内容で、100nmよりも大きい、一般には5000nmまでのベシクルがミクロベシクルとされる。用語「ベシクル」は、ミクロ又はナノベシクルのすべてのタイプを意味する。リポソームベシクルのようなベシクルは、一般には、興味あるいかなる物質をも含むことができるキャビティを有する。上で概説した通り、本発明においてはこれが好ましい。
【0090】
温度感受性ナノスフェアは、限定されるものではないが、5nm以上である。ナノスフェアは、一般的にはキャビティを有さない。すなわち、本発明のこの実施態様においてはCEST効果は、純粋にナノスフェアに含まれる常磁性化学シフト試薬の化学的シフトによってのみ実現されることになる。
【0091】
温度感受性ポリマーソームには、限定されるものではないが、ミクロベシクル及びナノベシクルを含むすべてのポリマーベシクルを含む。
【0092】
温度感受性リポソームには、限定されるものではないが、例えばPEG化されたリポソームのような長期化された半減寿命を持つものを含む。
【0093】
最適なCESTコントラスト強化の使用を有効にするために、リポソームのように、キャビティを持つ半透過性シェルを有する温度感受性キャリアの適用が好ましい。この利点は、CESTコントラスト強化が、前記キャビティに含まれる常磁性化学シフト試薬と同じくキャビティに存在するプロトンのプール又は他のMRI分析物との相互作用に基づきなされることができるということである。
【0094】
「半透過性」なる用語は、当該分野においてはよく理解されている。一般的に、それは、シェルのような膜の生物活性剤温度感受性質であって、選択的に透過性であることを意味するが、場合によっては、部分的に透過性であることや又は異なって透過性であることをも意味する。この意味で、シェルは、完全に開いた壁ではなく、好ましくはほとんどが閉じた壁(この意味でシェルはキャビティを服務)であり、ある分子やイオンを拡散によって通過させることができる、構造を意味する。
【0095】
本明細書においては、シェルの半透過性とは、一般的に、MR分析物を拡散によって通過させることができることを意味する。従って、分析物(水又は他のプロトンを持つ小分子)及びシェル(脂質二重層のような)との組み合わせが、分析物が拡散によってシェルを通過することができるようになっていれば、シェルは半透過性であると考える。
【0096】
半透過性シェルを持つ温度感受性キャリアの参照は、例えば、US6,726,925, US 2006/0057192, US2007/0077230A1及びJP2006-306794が挙げられる。本発明の記載に基づき、これらの開示を参照して、当該技術分野の熟練者は、温度感受性リポソームを用いてCESTコントラスト強化を実施することができる。
【0097】
リポソームは一般的に、キャビティ又はルーメンを内包する二層膜を含む球状ベシクルである。二層膜は、少なくともひとつのリン脂質で作られており、コレステロールを含むんでいてもよいし、含んでいなくてもよい。リポソームは、天然由来のリン脂質と脂質鎖(卵ホスファチジルエタノールアミンのような)から形成されてもよいし、又はジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)のような純粋な表面活性成分から形成されてもよい。本発明の明細書で使用される用語「リポソーム」には、通常ミセルと記載される脂質球も含む。
【0098】
半透過性シェルの一般的例はまた、リン脂質二重層を含む半透過性膜においても見られる。リン脂質は、小さな、非帯電溶質について最も透過性が高い。リポソームは、リン脂質二重層に基づいて形成されてもよい。
【0099】
本発明で使用する温度感受性リポソームは理想的には、37℃、すなわちヒトの体温ではその構造を維持するが、それよりも高い温度、好ましくはヒトの体温よりもわずかに高い温度で、かつまた好ましくは発熱病での体温よりも高い温度で、破壊されるものである。一般的に熱的にガイドされる薬物輸送にとって約42℃が最も有用な温度である。
【0100】
温度感受性薬物キャリアの温度を上昇させ、温度感受性キャリアの破壊を促進するために、要求される熱が使用されることができる。熱はすべての身体的に許容される方法で供することができるが、好ましくは、非常に局在化された高体温を生じさせることのできる集中型のエネルギー源を用いることである。このエネルギーは、例えばマイクロ波、超音波、磁気誘導、赤外線又は可視光エネルギーを通じて提供されることができる。
【0101】
温度感受性リポソームは当該分野において知れている。本発明のリポソームは、当該分野で知られた種々の技術で調製することができる。例えば、US特許4,235,871、PCT 出願公開WO 96/14057、New RRC, Liposomes: A practical approach, IRL Press, Oxford (1990), pages 33-104、Lasic,D.D., Liposomes from physics to applications, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, 1993、Liposomes, Marcel Dekker, Inc., New York (1983)、が挙げられる。
【0102】
薬剤又は他の生物活性剤を本発明のリポソームに閉じ込めることはまた、当該分野の従来方法を用いて行うことができる。本発明のリポソーム組成物を調製する際に、抗酸化剤及び他の添加物を、本発明の目的を実質的に損なわない範囲で用いることができる。
【0103】
キャビティを内包する半透過性シェルに基づくリポソーム及び他の可能なキャリアは、通常球状である。本発明を使用するために、そのような球状のキャリアを非球状にすることが好ましい。これは、例えばリポソームの場合、リポソームを高張性緩衝液(従ってリポソームの内側の溶液に比べて高浸透圧を持つ)に対して透析することで行うことができる。透析は、リポソームの内側からバルク溶液へ正味の水の拡散を生じさせる。これによりリポソームの内部容積は減少する。リポソームの表面積が一定であることから、容積減少はリポソームを変形させ、ディスク形状、タバコ形状又は他のいかなる非球状になると考えられる。
【0104】
常磁性化学シフト試薬
本発明において、常磁性化学シフト試薬は、キャリアの中又は上ですべての方法で含まれることができる。好ましくは、キャリアのキャビティの中で前記試薬とプロトンプールを共に含むことで、シフト試薬がプロトンプールと十分な相互作用を持つことである。
【0105】
常磁性化学シフト試薬は、それが含まれる溶液又は分散液の相対的に多量の水分子を、取り囲むバルク水に関してMR共鳴周波数がシフトされたプロトンプールに変えるために適していればいかなる常磁性試薬でも基本的によい。リポCESTに関して既に説明した通り、好ましくは温度感受性薬剤キャリアは、常磁性化学シフト試薬と内部プロトンプールを有するものであることから、RFパルスで飽和させることができる。好ましい薬物キャリアは、リポソームの脂質二重膜のようなシェルを持ち、原理的にその直接環境とプロトンを交換可能であることから、RFパルスにより起こされた飽和は、付加されRF飽和された温度感受性薬物キャリアへ移動する。従って、磁気共鳴イメージングを実行する際、温度感受性薬物キャリアの直接環境は、他のバルク水分子に比べて減少したシグナルを示し、減少したシグナル強度によるコントラスト試薬の直接環境を検出することができる。常磁性化学シフト試薬は常磁性化合物、すなわち常磁性を持つすべての化合物を含む。好ましくは、常磁性化合物は、常磁性金属を含む。ここで金属とは、金属ナノ又はミクロ粒子又は金属イオンを意味し、明示的にキレート配位子による金属錯体を含む。常磁性金属は当該技術分野の熟練者には知られており、ここでは詳しくは記載しない。例えば前遷移金属温及び後遷移金属であり明示的には、クロム、マンガン、鉄であり、同様に、ガドリニウム、ユロピウム、ディスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、タリウム及びイッテルビウムのようなランタニドである。
【0106】
常磁性化学シフト試薬は、常磁性金属と強く結合することができるキレート構造を有し、金属が水又は他の適当なプロトン源と相互作用することができる。適切なキレート構造については、P. Caravan et al., Chem. Rev., 99, 2293-2352 (1999)を参照できる。好ましくは、水は、常磁性試薬の金属に少なくとも遷移状態的に配位される。化学シフトのメカニズムに関しては、J. A. Peeters et al., Prog. Nucl. Magn. Reson. Spectr, 28, 283-350 (1999)が参照できる。ひとつの実施態様において、キレート構造はそれ自体また、交換可能なプロトン、例えばヒドロキシ、アミン又はアミドプロトンを持つ。
【0107】
好ましくは、常磁性化学シフト試薬は、ランタニドイオンでキレート構造を有するもので、例えば、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(H4dota)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−α、α’、α’’、α’’’−テトラメチル−1,4,7,10−四酢酸(H4dotma)及び関連する配位子で、常磁性試薬において水分子が軸配位することができるものである。これについては、Aime et al., Angew. Chem. Int. Ed., 44, 5513- 5515 (2005)を参照できる。
【0108】
好ましくは、常磁性化学シフト試薬は水溶性である。好適な化学シフト試薬は当該技術分野の熟練者に知られている。CESTコントラスト試薬は、シフト試薬とプロトンプールが十分な相互作用を持ち、その結果化学的にシフトされたプロトンのプールとなる限り、なんら特別の化学シフト試薬を必要としない。
【0109】
好ましくは、常磁性化学シフト試薬は、金属イオンと、多座キレート配位子に基づく配位子を含む金属錯体である。より好ましくは、化学シフト試薬とプロトンプールとの相互作用が、配位形成により生じるものである。従って、金属錯体が、少なくともひとつの金属配位位置を有し、さらに少なくとも1つの水分子が配位する配位位置を残すものである。
【0110】
好適な水溶性化学シフト試薬の例は、[Ln(hpdo3a)(H2O)] (1)、 [Ln(dota)(H2O)]− (2)、 [Ln(dotma)(H2O)]― (3)、 [Ln(dotam)(H2O)]3+ (4)及び [Ln(dtpa)(H2O)]2― (5)であり、それらの関連する化合物を含み、Lnはランタニドイオンである。
【0111】
好ましくは常磁性化学シフト試薬は、下式1から5のようなランタニド錯体である。
【0112】
【化1】
ここで、ランタニドは、Eu3+, Dy3+, Ho3+, Er3+, Tm3+, Yb3+及び 好ましくは Tm3+又は Dy3+である。
【0113】
常磁性化学シフト試薬は通常、当該試薬に、1mMから2000mM,好ましくは1mMから1000mM及びより好ましくは50mMから200mM含まれる。常磁性化学シフト試薬は、オリゴメリックでもポリメリック化合物でも、分子中に数個の常磁性金属イオンを含むオリゴ核又は多核の化合物でもよい。
【0114】
さらなるコントラスト強化剤
本発明の温度感受性薬剤キャリアは、T1又はT2減少剤を含んでいてよい。これに関しては、Aime et al., JACS, 129, 2430-2431 (2007)が参照される。この方法で、すべてをひとつにする(all−in−one)概念が、19FMRIをT1、T2との組みあわせで、及び好ましくはまた1HMRIでCEST造影との組み合わせで実現できる。
【0115】
温度感受性薬剤キャリアの環境にある飽和移動プロトンに対する化学シフト差は、さらに温度感受性薬剤キャリア膜に、さらなる常磁性試薬(化学シフト試薬である必要はない)を与えることで強化され得る。従って、磁場での非球状キャリアの方向は、影響され既に説明したバルク感受性効果が強化される。さらなる常磁性試薬としては、好ましくは、ランタニド錯体を含み(両性化合物のより極性側に)、非極性末端を持つ両極性化合物である。かかる非極性末端は、好ましくは、疎水性分子相互作用に基づき温度感受性薬剤キャリア表面で脂質二重層の中に取り込まれ配列する傾向を有する。
【0116】
このような両極性錯体は例えば次に挙げられる。
【0117】
【化2】
常磁性化学シフト試薬を付加した温度感受性薬剤キャリアは、その中で又は外側表面、例えばリポソームシェルで、常磁性試薬と組み合わせることができる。そのような試薬は一般的に、常磁性基、好ましくはランタニド錯体(両極性化合物のより極性側で)を持ちかつ非極性末端部を持つ両極性化合物を含む。かかる非極性末端は、好ましくは、疎水性分子相互作用に基づき温度感受性リポソームの表面で脂質二重層の中に取り込まれ配列する傾向を有する。
【0118】
この選択的な膜−付随常磁性試薬におけるランタニドイオンは、コントラスト試薬のキャビティ内のランタニドと同じであってもよく又は違っていてもよい。
【0119】
本発明により提供されるように、常磁性化学スフト試薬は、温度感受性薬剤キャリアに内包されることができる。この方法により、水のプロトンプールが形成され、それはキャリアを取り囲むバルク水の化学シフトと比べて異なる化学シフトを有する。これらの化学的シフトした水の磁気共鳴は、十分狭いバンド幅のRFパルスで飽和される。コントラスト試薬の内側の水分子は、コントラスト試薬を取り囲むバルク水分子と急速に交換しているとから、この飽和はバルク水に移動される。
【0120】
従って、実際に使用する際には、温度感受性薬剤キャリアに基づくCESTコントラスト試薬の位置で、取り囲む水(すなわち、インビボで好ましく使用される体液)は、CEST−強化MRイメージで低強度領域として可視化される。CEST強化MRIについて、通常のMRIであって、励起に先立ち、交換可能な水の共鳴が選択的に飽和されていることを意味する。一般的に飽和に使用するRFパルスは、数ヘルツから数百ヘルツのバンド幅である。このパルスの適切な周波数は通常、仮想又は臨床前CESTMRI研究からすでに知られている。
【0121】
従って、本発明の好ましいキャリアは(19Fコントラスト試薬だけでなく、常磁性化学シフト試薬とプロトンプールを通してCESTコントラスト強化を与える)、19Fコントラスト試薬の放出により19FMRIによって検出されるだけでなく、キャリアが開口する前のいかなる時においても1HNMRを通しても検出されることができる。さらにT1又はT2コントラスト試薬を含む場合、キヤリアの開口に伴う薬剤放出ステップはまた(シェルが閉じて、飽和プロトン交換が拡散により生じている限りCESTコントラスト強化は作用している)検出されることができ、T1又はT2コントラスト強化は、これらのコントラスト試薬がバルク水(すなわち、このコントラスト試薬がシェルの開口を通して放出される際には体液)と相互作用をすることができる場合には、作用を表す。
【0122】
本発明のキャリアは種々の方法で使用されることができる。これらは、いかなる水性環境において望ましいレベルのMRI造影を生成するために適用されることができる。主な用途は、温度感受性薬剤キャリアを用いることが最も有益であるが、ビボでの局所的MRI造影を生成することである。これは、例えば生物(好ましくはヒト)の血中又は他の体液に注入することによりコントラスト試薬を導入し、この生物の全身又は一部でCESTコントラスト強化MRIスキャンを実施することで、可能となる。CEST生成されるバルク水分子のCESTコントラスト強化は、腫瘍のような、正常な体液が乱されている場所の点を可視化することができる。また、本発明のコントラスト試薬は、例えばひとつの末端に、キャリアの表面(例えばリン脂質表面の場合)内に貫通するに適する疎水性末端を持ち、他方の末端には望まれる配位子を持つ化合物を持たせることにより、脂質シェル内に疾患特異的分子プローブを設けることができる。温度感受性薬剤キヤリアは、特定の生物ターゲット位置で活性化される際、治療的内容物を放出する(これはキャリアシェルが崩壊することに対応する)ようにデザインされる。主な治療用ナノキャリアは、例えばリポCESTタイプのMR造影によりラベル化されてり、CESTMRIシグナルが放出に伴い消失する。従って、含まれる治療用物質の行き先は、MRではもはや観測されないし定量化もされない。これが、医学的応用において19Fシグナルの有用性が発揮されるところである。薬剤に放出にともない、19Fシグナルは薬剤放出過程を定量化し、治療効果を評価するために使用されることができる。CESTナノキャリアラベルが伝導性容器に閉じこめられている一方、分子構造に依存して、19Fラベルは、薬剤の組織での溢出しや吸収を追跡することができる。
【0123】
これにより、コントラスト試薬を望ましい又は疑われる体の位置に局在させることができ、そこでMRIにより可視化されることができる。本発明のCESTコントラスト試薬は好ましくは、キャリアの外の液体と交換可能な、キャリア内のプロトンプールに基づき作用する。この交換は、水プロトン移動によりなされるがまた、キャリアのシェル、すなわち好ましくは脂質二重膜又は温度感受性リポソームを通過するに十分小さな他の分子からのプロトン交換でもよい。
【0124】
本発明は、ここで説明した実施態様に限定されないことを理解されるべきである。また、特許請求の範囲で用いる、「含む」、「有する」なる用語、いかなる他の要素又はステップを排除するものではないことは理解されるべきである。「ひとつの」なる用語は特に記載されない限り、複数の意味も含む。
【0125】
実施例1
平均直径100nmのリポソームを、脂質膜を、脂質フィルムを脂質膜水和法と連続押し出しで作成した。MPPC及びDPPCはCHCl3/EiOH(4:1v/v)に溶解した。溶媒をゆっくりと減圧下で除去し薄膜が得られた。脂質膜を、50mMNH4PF6及び50mM[Tm(hpdo3a)(H2O)]を、20mMHEPES緩衝液中でpH7.4で水和した。分散液を数回、ポア直径が200nm及び100nmのポリカボネート膜フルターに順に通した。得られたリポソームを4℃で一夜透析して、脂質膜の水和の後内包されなかったNH4PF6と[Tm(hpdo3a)(H2O)]を除いた。透析は、0.3MのNaClを含む20mMHEPES緩衝液で行い、非球状性リポソームを得た。
【0126】
リポソームA−Dの組成物について、表1で参照される。
【0127】
【表1】
実施例2
同様にして、異なる温度感受性のリポソームを調製する。すなわち、低温度感受性(LTSL)、通常温度感受性(TTSL)及び非温度感受性(NTSL)である。
これらのリポソームの組成は表2に参照される。
【0128】
【表2】
これらの種々の処方で、19FMRI同様CESTMRIの効果につき、前記した図4−11を参照して測定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性剤の局所輸送のためのキャリアであり、局所刺激、例えば熱のようなエネルギー供与の結果として、内包する前記生物活性剤を放出することができるシェルを含み、前記シェルが19FMRコントラスト試薬を内包する、キャリア。
【請求項2】
前記19Fコントラスト試薬が、次の化合物からなる群から選択される、請求項1に記載のキャリア。
【化1】
【請求項3】
T1及び/又はT2変更コントラスト試薬、化学交換依存飽和移動(CEST)コントラスト試薬及びそれらの組合わせからなる群から選択される1HMRコントラスト試薬をさらに含む、請求項1又は2のいずれかに記載のキャリア。
【請求項4】
前記シェルが、薬剤放出に影響する温度感受性物質を含む、請求項1乃至4のいずれかに記載のキャリア。
【請求項5】
前記シェルが、半透過性であり、かつキャビティを内包し、前記キャビティが、常磁性化学シフト試薬、プロトン分析物のプロトンプール及び19Fコントラスト試薬を含み、前記シェルが前記プロトン分析物の拡散を可能とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のキャリア。
【請求項6】
非球状である、請求項5に記載のキャリア。
【請求項7】
前記プロトン分析物のプロトンプールが水を含む、請求項5又は6のいずれかに記載のキャリア。
【請求項8】
リポソーム、ポリマーソーム、ナノカプセル及びそれらの混合物からなる群から選択される温度感受性ナノ粒子である、請求項1乃至7のいずれかに記載にキャリア。
【請求項9】
常磁性化学シフト試薬が、金属と多座キレート配位子に基づく配位子とを有する金属錯体である、請求項1乃至8のいずれかに記載のキャリア。
【請求項10】
前記金属の少なくとも1つの配位座が、少なくとも1つの水分子の配位のために開いている、請求項9に記載のキャリア。
【請求項11】
前記常磁性シフト試薬が、[Ln(hpdo3a)(H2O)]、[Ln(dota)(H2O)]−、[Ln(dotma)(H2O)]−、[Ln(dotam)(H2O)]3+、[Ln(dtpa)(H2O)]2−、それらの誘導体及びそれらの混合物であり、Lnはタンタニドイオンである、請求項10に記載のキャリア。
【請求項12】
常磁性剤が、外部表面内又は外部表面である、請求項1乃至11のいずれかに記載のキャリア。
【請求項13】
前記常磁性剤が、少なくとも6炭素数を含む疎水性基を持つ多座配位子分子により錯体形成する、ランタニドイオンDy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+又はYb3+の少なくともひとつからなる群から選択される、請求項12に記載のキャリア。
【請求項14】
癌又は心臓血管系疾患治療の薬剤を含む、請求項1乃至13のいずれかに記載のキャリア。
【請求項15】
前記キャリアの外側表面に出ている目標結合のためのリガンドを含む、請求項1乃至14のいずれかに記載のキャリア。
【請求項16】
前記リガンドが、疎水性末端部を含み、前記末端部が前記キャリアの脂質二重層シェルに貫入する、請求項15に記載のキャリア。
【請求項17】
前記リガンドが、疾患特異的分子プローブである、請求項15又は16のいずれかに記載のキャリア。
【請求項18】
目的物に生物活性剤をMRIガイド輸送するための方法であり、
前記目的物に、前記生物活性剤異物を付与した請求項1乃至16のいずれかに記載のキャリアを投与し、前記キャリアから前記生物活性剤を放出させ、前記19FMRコントラスト試薬により供される造影を用いて19FMRイメージを生成することを含む、方法。
【請求項19】
前記キャリアがCESTコントラスト試薬を含み、前記生物活性剤の放出前及び/又は間で、前記CESTコントラスト試薬により供される前記CESTコントラスト強化を用いて、MRイメージを生成する、請求項18に記載の方法。
【請求項1】
生物活性剤の局所輸送のためのキャリアであり、局所刺激、例えば熱のようなエネルギー供与の結果として、内包する前記生物活性剤を放出することができるシェルを含み、前記シェルが19FMRコントラスト試薬を内包する、キャリア。
【請求項2】
前記19Fコントラスト試薬が、次の化合物からなる群から選択される、請求項1に記載のキャリア。
【化1】
【請求項3】
T1及び/又はT2変更コントラスト試薬、化学交換依存飽和移動(CEST)コントラスト試薬及びそれらの組合わせからなる群から選択される1HMRコントラスト試薬をさらに含む、請求項1又は2のいずれかに記載のキャリア。
【請求項4】
前記シェルが、薬剤放出に影響する温度感受性物質を含む、請求項1乃至4のいずれかに記載のキャリア。
【請求項5】
前記シェルが、半透過性であり、かつキャビティを内包し、前記キャビティが、常磁性化学シフト試薬、プロトン分析物のプロトンプール及び19Fコントラスト試薬を含み、前記シェルが前記プロトン分析物の拡散を可能とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のキャリア。
【請求項6】
非球状である、請求項5に記載のキャリア。
【請求項7】
前記プロトン分析物のプロトンプールが水を含む、請求項5又は6のいずれかに記載のキャリア。
【請求項8】
リポソーム、ポリマーソーム、ナノカプセル及びそれらの混合物からなる群から選択される温度感受性ナノ粒子である、請求項1乃至7のいずれかに記載にキャリア。
【請求項9】
常磁性化学シフト試薬が、金属と多座キレート配位子に基づく配位子とを有する金属錯体である、請求項1乃至8のいずれかに記載のキャリア。
【請求項10】
前記金属の少なくとも1つの配位座が、少なくとも1つの水分子の配位のために開いている、請求項9に記載のキャリア。
【請求項11】
前記常磁性シフト試薬が、[Ln(hpdo3a)(H2O)]、[Ln(dota)(H2O)]−、[Ln(dotma)(H2O)]−、[Ln(dotam)(H2O)]3+、[Ln(dtpa)(H2O)]2−、それらの誘導体及びそれらの混合物であり、Lnはタンタニドイオンである、請求項10に記載のキャリア。
【請求項12】
常磁性剤が、外部表面内又は外部表面である、請求項1乃至11のいずれかに記載のキャリア。
【請求項13】
前記常磁性剤が、少なくとも6炭素数を含む疎水性基を持つ多座配位子分子により錯体形成する、ランタニドイオンDy3+、Ho3+、Er3+、Tm3+又はYb3+の少なくともひとつからなる群から選択される、請求項12に記載のキャリア。
【請求項14】
癌又は心臓血管系疾患治療の薬剤を含む、請求項1乃至13のいずれかに記載のキャリア。
【請求項15】
前記キャリアの外側表面に出ている目標結合のためのリガンドを含む、請求項1乃至14のいずれかに記載のキャリア。
【請求項16】
前記リガンドが、疎水性末端部を含み、前記末端部が前記キャリアの脂質二重層シェルに貫入する、請求項15に記載のキャリア。
【請求項17】
前記リガンドが、疾患特異的分子プローブである、請求項15又は16のいずれかに記載のキャリア。
【請求項18】
目的物に生物活性剤をMRIガイド輸送するための方法であり、
前記目的物に、前記生物活性剤異物を付与した請求項1乃至16のいずれかに記載のキャリアを投与し、前記キャリアから前記生物活性剤を放出させ、前記19FMRコントラスト試薬により供される造影を用いて19FMRイメージを生成することを含む、方法。
【請求項19】
前記キャリアがCESTコントラスト試薬を含み、前記生物活性剤の放出前及び/又は間で、前記CESTコントラスト試薬により供される前記CESTコントラスト強化を用いて、MRイメージを生成する、請求項18に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−502019(P2012−502019A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525664(P2011−525664)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053836
【国際公開番号】WO2010/029469
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053836
【国際公開番号】WO2010/029469
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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