説明

MRI検査法による検査を受ける際のRF被曝防護方法およびその防護具

【課題】この発明は、MRI検査において、非磁性金属を体内に埋め込んだ患者の患部のRFによる非磁性金属の局部発熱や、妊娠可能年齢の女性や小児の被曝のリスクに対して、装着が簡単で、しかも、安価・軽量な素材を用いて行うことのできるMRI検査における高周波被曝防護方法および防護具を開発・提供することにある。
【解決手段】MRI検査法による検査を受ける際に、検査対象外である身体(X)のインプラント埋植部(Y)を、炭素繊維素材からなるプロテクター(1)で被覆して、検査することを特徴とするMRI検査法におけるRF被曝防護方法から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気共鳴撮像法(以下、MRIという)検査における高周波(Radio Frequency:以下、RFという)被曝の防護方法およびその防護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非磁性インプラントを埋め込んだ患者のMRI検査は、比較的安全とされ、日常的に行われている。そして、パソコン等の電子機器の分野では、長時間使用する者に対して、銀メッキ繊維を使用したOAエプロン等のRP(高周波:Radio Freqencyの略)防護具で保護するよう開発されている。
【0003】
しかしながら、高磁場MRI装置においては、撮像中に人体の温度が局部的に上昇することがある。その原因としては、高周波(RF)による人体に吸収されて熱となる,発熱のリスクがあり、熱傷に至る等大変危険である。
【0004】
このMRI検査においても、RFによる非磁性体金属の局部発熱や妊娠可能年齢の女性や小児の被曝のリスクが考えられるが、現在、具体的な対応策がないのが実状である。そして、非磁性インプラントを埋め込んだ患者の磁気共鳴撮像法(MRI)検査は、比較的安全とされ、日常的に行われている。
【0005】
しかし、昨年実施したアンケート調査でも、発熱事故が報告されているが、このようなインプラントの埋め込まれた患者のMRI検査に対する明確なガイドラインはなく、実際にMRI検査に従事している技師からの対応策の要望は多いものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、MRI検査において、非磁性金属を体内に埋め込んだ患者の患部のRFによる非磁性金属の局部発熱や、妊娠可能年齢の女性や小児の被曝のリスクに対して、装着が簡単で、しかも、安価・軽量な素材を用いて行うことのできるMRI検査における高周波被曝防護方法および防護具を開発・提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による課題を解決するための手段としては、MRI検査法による検査を受ける際に、検査対象外である身体のインプラント埋植部を、炭素繊維素材からなるプロテクターで被覆して、検査することを特徴とするMRI検査法におけるRF被曝防護方法であり、さらには、炭素繊維素材からなるプロテクターである,防護具の具体的構造に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によると、検査対象外の身体の部分を炭素繊維で防護することにより、炭素繊維によるRF吸収がRF被曝のリスクの軽減に最も効果的であり、不要な高周波被曝を抑制することができる検査方法であり、かつMRI検査におけるRF防護具としても最適である。
【0009】
特に、非磁性金属を埋め込んだ患者のMRI検査に際し、インプラント埋植部に炭素繊維からなるプロテクターを巻き付けることでRF発熱を抑制でき、また、妊婦・小児の頭部検査時の体幹部などに使用することにより安全であり、また、検査対象外の身体の部分への着脱も簡単に行うことが可能である。
【0010】
さらに、炭素繊維素材は、安価・軽量、柔軟性にすぐれており、加工しやすく、MRI装置で使用するRFでも遮断効果も高く、このことは、後述の実験の結果からも明らかであり、極めて有益なる効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の好適な実施の形態について、図1に基づいて詳細に説明すると、MRI検査法による検査を受ける際に、検査対象外である身体のインプラント埋植部を、炭素繊維素材からなるプロテクターで被覆して検査することを特徴とするMRI検査法におけるRF被曝防護方法であり、また、その被曝防護具であるプロテクターの構造である。
【実施例】
【0012】
次に、この発明の第一の発明の一実施例を図面に従って詳述すると、MRI検査法による検査を受ける際に、検査対象外である身体(X)のインプラント埋植部(Y)を、炭素繊維素材からなるプロテクター(1)で被覆して、検査することを特徴とするMRI検査法におけるRF被曝防護方法から構成される。
【0013】
さらに、この発明の第二の発明の一実施例を詳述すると、 MRI検査法による検査を受ける際に、検査対象外である身体(X)のインプラント埋植部(Y)を被覆するプロテクター(1)を、炭素繊維シート材で構成することを特徴とするMRI検査法におけるRF被曝防護具から構成される。
【0014】
そして、炭素繊維シート材は、図2(a)に示すように、上部横幅70cm、下部横幅40cm、高さ80cmの上径が下径より大きい台形状に形成し、中心線(Z)より折り畳み、テーパ状の筒体に形成し、上肢用プロテクター(1a)とするものである。
【0015】
また、炭素繊維シート材は、図2(b)に示すように、上部横幅90cm、下部横幅50cm、高さ100cmの上径が下径台形状に形成し、中心線(Z)より折り畳み、テーパ状の筒体に形成し、下肢用プロテクター(1b)とするものである。
【0016】
さらには、 炭素繊維シート材は、図2(c)に示すように、縦120cm、横100cmの矩形状に形成し、大幹部用のプロテクター(1c)とするものである。
【0017】
尚、これら、上肢用プロテクター(1)、下肢用プロテクター(1)、そして大幹部用のプロテクター(1)には、これら一実施例として寸法を記載したが、それぞれこの数値に限定されるものではない。
【0018】
そして、上記炭素繊維シート材からなるプロテクター(1a,1b,1c)のそれぞれ両端部には、面ファスナー(2)を設け、検査対象外である身体(X)に簡易、迅速に着脱できよう構成したものである。
【0019】
次に、この発明による炭素繊維によるシールド効果と画質への影響調査について、
1.ファントムによるSNR測定による画質評価について、
2.画像アーチファクトの影響
3.発熱抑制効果の実験
について、それぞれ下記のとおりの結果を得た。
【0020】
1.ファントムによるSNR(信号・ノイズ比)測定による画質評価について
MRI装置調整用ボトル型ファントム(1リットルのニッケル硫酸銅水溶液)を3個使用し、1本のファントムは炭素繊維シート材で被覆(以下、カーボンシールドという)し、SNRを測定した。SNR測定はAXIAL断面にてNEMA規格に準じて3回測定し平均値で評価した。
【0021】
そして、下記の表1に示すように、シールドしたファントムのSNRは約2%で顕著なRFのシールド効果が確認できる。シールド以外のファントムではSNRに殆ど変化がないことから画質低下は来さない事が確認できた。
【表1】

【0022】
2.画像アーチファクトの影響について
ファントムの端に埋め込んだインプラント部分のみカーボンシールドを覆い、撮像断面の画質を評価した。シールドによりインプラント部分の画像は消失したが、他の場所への画像アーチファクト(偽像)の出現は認められない。
【0023】
3.発熱抑制効果の実験について
上腕骨骨折で使用されるステンレス製インプラントを人体等価ファントム内に埋め込み、最大SARで15分間撮像を行った。シールド有無による上腕骨インプラント先端部の温度上昇値を蛍光ファイバー式温度計で測定し評価した。
【0024】
その結果、図3のグラフに示すように、カーボンシールドすると照射開始15分の最大温度上昇も1°C程度となり、カーボンシールド無し(13.7°C)の条件と比較すると明らかにインプラントのRF発熱は抑制可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明であるMRI検査法による検査を受ける際のRF被曝防護方法およびその防護具の技術を確立し、実施・販売することにより、産業上利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施例を示す説明図である。
【図2】この発明の一実施例を示し、(a)は、上肢用プロテクター、(b)は、下肢用プロテクターであり、(c)は、大幹部用のプロテクターのそれぞれ平面図である。
【図3】この発明の一実施例を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0027】
1 プロテクター
1a 上肢用プロテクター
1b 下肢用プロテクター 1c 大幹部用のプロテクター
2 面ファスナー
X 身体
Y インプラント埋植部
Z 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRI検査法による検査を受ける際に、検査対象外である身体のインプラント埋植部を、炭素繊維素材からなるプロテクターで被覆して、検査することを特徴とするMRI検査法におけるRF被曝防護方法。
【請求項2】
MRI検査法による検査を受ける際に、検査対象外である身体のインプラント埋植部を被覆するプロテクターを、炭素繊維シート材で構成することを特徴とするMRI検査法におけるRF被曝防護具。
【請求項3】
炭素繊維シート材を、テーパ状の筒体に形成し、上肢用及び下肢用のプロテクターとすることを特徴とする請求項2記載のMRI検査法におけるRF被曝防護具。
【請求項4】
炭素繊維シート材を、矩形状に形成し、大幹部用のプロテクターとすることを特徴とする請求項2記載のMRI検査法におけるRF被曝防護具。
【請求項5】
炭素繊維シート材の両端部に、それぞれ面ファスナーを設け、検査対象外である身体に着脱自在としたことを特徴とする請求項3または4記載のMRI検査法におけるRF被曝防護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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