説明

MRI装置およびMRI撮像方法

【課題】撮像動作中の被検体の体動を抑制し、これにより被検体の体動に起因する画質劣化を削減することができるMRI装置を提供する。
【解決手段】MRI装置が、連続する2つの撮像プロトコル間に休止時間を設けた撮像計画を作成する撮像計画作成部を備える。また、MRI装置が、被検体が載置される天板と、前記被検体を前記天板に固定するベルトと、前記被検体の身長・体重、撮影部位の少なくとも一方に応じて前記ベルトの張力を可変とするベルト張力可変手段と、を有する寝台装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像診断装置に用いられる寝台装置ならびに寝台に載置された被検体に対してMRI撮像を行うMRI装置およびMRI撮像方法に関するもので、特に寝台装置の天板に設けられて被検体を固定するベルトおよび撮像手順に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検体を撮像して画像診断を行う画像診断装置には、MRI(Magnetic・Resonance・Imaging)装置、X線CT(Conputed・Tomography)装置、PET(Positron・Emission・Tomography)装置、X線診断装置などがある。
【0003】
これらMRI装置、X線CT装置、PET装置などの画像診断装置は、撮像を行うための開口部が形成された架台を有し、その開口部に被検体を挿入して撮像動作をする。また、循環器用等のX線診断装置は、C字形アームの両端部に対向して配置されたX線発生器及びX線検出器を備えた撮像部を有し、X発生器及とX線検出器の間(開口部)に被検体を挿入して撮像が行われる。
【0004】
そして、これら画像診断装置への被検体の挿入は、架台開口部の近傍に配置される寝台装置の天板に被検体を載置し、この天板上の被検体を画像診断装置の開口部に移動することによって行われる。
【0005】
ところで、MRI装置を用いた撮像の場合、通常1乃至5分間程度の比較的長い撮像時間にて撮像動作を行う。この撮像動作中に被検体が動くと画像にボケやぶれが発生する。さらに被検体が大きく動いた場合には診断不可能となる場合もある。そのため、適切に被検体を固定することが必要である。これに対して、従来、例えばゴムを編みこんだベルト状の固定具とこの固定具に挟み込むスポンジやタオル等の弾力のある柔軟物とを組み合わせて、被検体を天板にしばるように拘束している。ベルトの接続方法としてはベルクロテープ、ラチェットなど各種提案されている。また、拘束方法としてはベルトに弾力を持たせずに柔軟物を多く詰め込む方法や、ベルトの収縮量を大きくするといった方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−136618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の方法は、いずれも固定の作業を行う技師の技量(個人的なスキル・経験等)に大きく依存するものである。例えば、ベルトのかけ方ひとつとっても1箇所の局所的な固定では固定された部位を中心に回転する自由度が残ってしまい、肝心の撮像部位では動きが入ってしまう。固定が弱すぎると動きを抑制できないことはもちろんだが、固定が強すぎる場合にいても、撮像の後半で被検体に疲れが発生し、筋肉の反射的な不随意運動など誘発させて被検体が動いてしまう等、被検体の体動を適切に抑制することは容易ではない。
【0008】
この発明はこのような課題を解決するためになされたもので、技師の技量によらず被検体を固定するベルトの張力を適切なものとなるように管理することができ、撮像動作中の被検体の体動を抑制し、これにより被検体の体動に起因する画質劣化を削減することができるMRI装置およびMRI撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明に係る寝台装置は、画像診断装置により診断される被検体が載置される天板と、前記被検体を前記天板に固定するベルトと、撮像対象に応じて前記ベルトの張力を可変とするベルト張力可変手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、この発明に係るMRI装置は、被検体が載置される天板と、前記被検体を前記天板に固定するベルトと、前記被検体に対してMRI撮像を行うMRI装置本体と、前記被検体の撮像進行状況に応じて前記ベルトの張力を可変とするベルト制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、この発明に係るMRI装置は、連続する2つの撮像プロトコル間に休止時間を設けた撮像計画を作成する撮像計画作成部を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、この発明に係るMRI撮像方法は、被検体を天板に固定するベルトの張力を該被検体の撮像進行状況に応じて可変とすることを含んだことを特徴とする。
【0013】
また、この発明に係るMRI撮像方法は、連続する2つの撮像プロトコル間に休止時間を設けた撮像計画を作成することを含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る寝台装置、MRI装置およびMRI撮像方法によれば、被検体を固定するベルトの張力を技師の技量によらず適切なものとなるように管理することができるので、撮像動作中の被検体の体動を抑制することができ、被検体の体動に起因する画質劣化を削減することができる。
【0015】
また、この発明に係るMRI装置およびMRI撮像方法によれば、適切に休止時間を設けるので、撮像動作中の被検体の体動を抑制することができ、被検体の体動に起因する画質劣化を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るMRI装置の実施例1を示すシステム構成図である。
【図2】ベルトとベルト巻き込み機構の詳細を示す斜視図である。
【図3】天板に組み込まれたベルト巻き込み機構の様子を示す斜視図である。
【図4】撮像部位とその撮像部位に対して使用するベルトおよびそのベルトと張力の関係である撮像部位ベルト張力情報を記憶するテーブルの一例を示す図である。
【図5】連続して行われる撮像プロトコルとベルト張力の関係を示すプロトコルベルト張力情報の一例を示す図である。
【図6】休止時間が自動的に設けられた撮像計画画面の一例を示す図である。
【図7】休止時間編集例を示す図である。
【図8】張力変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る寝台装置、MRI装置およびMRI撮像方法の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明に係るMRI装置の実施例1を示すシステム構成図である。MRI装置100は、本体部10と、オペレータコンソール部20と、寝台部30とを含んで構成されている。オペレータコンソール部20は、さらに本体システム部40と、ベルトシステム部50とを含んで構成されている。これら構成のうち、本体部10と本体システム部40とは、被検体Pに対して磁場を発生してMRI撮像を行うMRI装置本体を構成している。また、寝台部30とベルトシステム部50とは、被検体Pを載置してMRI装置本体に対して被検体Pを移動させる寝台装置を構成している。
【0019】
本体部10は、架台11と、静磁場磁石12と、傾斜磁場コイル13と、傾斜磁場電源15と、高周波コイル17と、送信部19と、局所用プローブ21と、位置調整機構23と、受信部25とを有している。
【0020】
円筒形の静磁場磁石12は、架台11内に収納され、内部空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石12には、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。静磁場磁石12の内側に、さらに円筒形の傾斜磁場コイル13が配置されている。傾斜磁場コイル13は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて構成されている。この3つのコイルは、傾斜磁場電源15から個別に電流供給を受けて、磁場強度がX,Y,Zの各軸に沿って傾斜する傾斜磁場を発生する。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。
【0021】
傾斜磁場コイル13の内側に、さらにまた円筒形の高周波コイル17が配置されている。そして、この高周波コイル17の内側に、天板61に載置された被検体Pが挿入される。高周波コイル17は、送信部19から高周波パルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。また高周波コイル17は、高周波磁場の影響により被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。
【0022】
送信部19は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部および高周波電力増幅部を有している。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波信号を発生する。位相選択部は、高周波信号の位相を選択する。周波数変調部は、位相選択部から出力された高周波信号の周波数を変調する。振幅変調部は、周波数変調部から出力された高周波信号の振幅を例えばシンク関数に従って変調する。高周波電力増幅部は、振幅変調部から出力された高周波信号を増幅する。これらの各部の動作の結果として送信部19は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを高周波コイル17に送信する。
【0023】
局所用プローブ21は、高周波コイル17よりも小さな高周波コイルを内蔵する。局所用プローブ21は、高周波コイル17の内側に配置され、位置調整機構23により支持される。局所用プローブ21に内蔵された高周波コイルは、被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。
【0024】
受信部25は、選択器、前段増幅器、位相検波器およびアナログディジタル変換器を有している。選択器は、高周波コイル17および局所用プローブ21から出力される磁気共鳴信号を選択的に入力する。受信部25は、選択器から出力される磁気共鳴信号を増幅する。位相検波器は、前置増幅器から出力される磁気共鳴信号の位相を検波する。アナログディジタル変換器は、位相検波器から出力される信号をデジタル信号に変換する。
【0025】
寝台部30は、天板61と、支持部62と、移動機構部63と、寝台制御部65と、ベルト67と、ベルト巻き込み機構69と、ベルト駆動部71と、ワイヤ73と、張力検出部75と、操作入力部77とを有している。
【0026】
天板61上に被検体Pが載置される。天板61を支持する支持部62に移動機構部63が設けられている。移動機構部63は、内蔵する図示しない駆動モータにより天板61をスライドさせるように進退動させて、被検体Pを本体部10の架台11内に出し入れする。寝台制御部65は、インタフェース部31を介して入力された動作指令や操作入力部77から入力された動作指令に基づき移動機構部63を駆動して寝台部30を総括的に制御する。
【0027】
天板61には、5組のベルト67が長手方向にほぼ等間隔に設けられている。この5組のベルト67は、各々天板61の一方の側部から他方の側部に向かって架け渡されていて、例えば被検体Pの頭部、胸部、腹部、膝部および脚部を拘束する。各ベルト67は、しなやかで丈夫な布で作製され、天板61の両側部に設けられたベルト巻き込み機構69から引き出されている。
【0028】
図2はベルト67とベルト巻き込み機構69の詳細を示す斜視図である。ベルト67は、2本のベルト67A,67Bに分割されている。ベルト巻き込み機構69は、概略箱状のケース69aと、このケース69a内に回転可能に軸支された巻棒69bとを有している。巻棒69bは図示しない付勢バネによりベルトを巻き込む方向に弱く付勢されている。ベルト67A,67Bは、一端がこの巻棒69bに巻き付けられて他端がケース69aから引き出されて自動車のシートベルトのように繰り出し及び引き込み可能とされている。ベルト67A,67Bの引き出された側の先端部には対を成すベルクロテープが設けられ、このベルクロテープにより、ベルト67Aとベルト67Bとが接続されるようにされている。
【0029】
巻棒69bの一端には、図示しない付勢バネに先端を接触させて、巻棒69bの回転を所定の付勢力により押し止める張力調整つまみ69c(張力保持手段)が設けられている。張力調整つまみ69cを緩めた状態で、ベルト67Aとベルト67Bをケース69aから繰り出し及び引き込みして、両ベルトを任意の長さに調整した後、張力調整つまみ69cを締め付けると、そのねじ込み量により巻棒69bが所定の付勢力により押し止まる。これにより、システムの動作と関わりなく手動操作によってベルト長さとベルト張力が調整できるようにされている。ベルト巻き込み機構69と張力調整つまみ69cとは、手動操作時におけるベルト張力可変手段を構成している。なお、張力調整つまみ69cは、付加的な構成でありシステムとして必要でない場合は取り付けられない。
【0030】
巻棒69bの他端には、ベルト駆動部71へと延びる被覆付きのワイヤ73が接続されている。ワイヤ73は、自転車のブレーキ等に用いられているワイヤと同様な構造であるが、MRI装置の磁場を乱すことのないように樹脂とグラスファイバを材料として作製されている。ベルト駆動部71は、ワイヤ73を介して駆動力を巻棒69bへ伝達することにより巻棒69bを回転させて、ベルト長さとベルト張力を所定の値に保つ。なお、ベルト駆動部71によりベルト巻き込み機構69が制御される自動運転の際には、手動操作用の張力調整つまみ69cは解放しておく。
【0031】
図3は天板61に組み込まれたベルト巻き込み機構69の様子を示す斜視図である。なお、図3においては、解り易くするために天板61に対してベルト巻き込み機構69を拡大して示している。天板61内部の両側部に長手方向に延びるガイド部61aが設けられている。ガイド部61aは天板61の内部に全長にわたって形成された突部により構成されている。ベルト巻き込み機構69は、このガイド部61aに収納され、ガイド部61aに案内されて天板61の長手方向にスライド可能とされている。また、天板61の上面には、ガイド部61aに沿ってスリット61bが形成されている。ベルト67A,67Bおよび張力調整つまみ69cのつまみは、このスリット61bを通って天板61上に引き出されている。このような構造とすることにより、被検体Pの身長が大小変化した場合や被検体Pが天板61に逆向きに載置された場合に対応して、ベルト67の位置が天板61の長手方向に調整可能とされている。
【0032】
図1に戻り、寝台の支持部62には、さらにベルト駆動部71が設けられている。ベルト駆動部71は、各ベルトに対応する駆動源として複数のステッピングモータ(図示せず)を内蔵しており、このモータにベルト巻き込み機構69から延びるワイヤ73がそれぞれ接続されている。ベルト駆動部71は、ベルトシステム部50(ベルト制御部53)からの動作指令や架台11に設けられた操作入力部77からの動作指令に応じてワイヤ73の出し入れをしてベルト巻き込み機構69を動作させる。これにより、各ベルトは所定の長さで所定の張力となるように制御される。装置が手動モードになっているとき、技師は、操作入力部77を介して動作指令を入力することにより、手動操作にて各ベルトの長さおよび張力を調整することができる。ベルト巻き込み機構69、ベルト駆動部71および操作入力部77は、寝台部30側から行う自動運転(手動操作)の際のベルト張力可変手段を構成している。ベルト巻き込み機構69、ベルト駆動部71およびベルト制御部53は、オペレータコンソール部20側から行う自動運転(手動操作およびシステム自動運転)の際のベルト張力可変手段を構成している。
【0033】
ベルト駆動部71に隣接して張力検出部75が設けられている。張力検出部75は、各モータにかかるトルクを検出して、このトルクからベルトの張力を算出する。張力検出部75の検出したベルト張力は、ベルト駆動部71にフィードバックされ、ベルト駆動部71は、このフィードバック信号を使ってベルト張力が指令値通りの大きさとなるように制御する。また、このベルト張力は、張力検出部75から寝台制御部65を介してオペレータコンソール部20側(ベルトシステム部50)にも送信される。
【0034】
張力検出部75は、各ベルト毎に第1,第2の2つの閾値を持っている。そして、いずれかのベルト67のベルト張力が第1の閾値以上となったときにブザー等の報知手段により警告(報知)する。また、このベルト張力が第1の閾値以上となったことを示す信号が、同時にオペレータコンソール部20側(ベルトシステム部50)に送信される。ベルト制御部53は、この信号を受けて表示部39にポップアップ表示にて警告(報知)を表示する。なお、警告はアラート(注意や警告を知らせる小さな画面)にて報知してもよい。
【0035】
また、張力検出部75は、ベルト張力が第2の閾値以上となったときベルト67を開放状態とする。ここで、ベルト開放状態とは、ベルト67がベルト巻き込み機構69から自由に引き出せる状態のことである。このように2つの閾値を設定しておき、第2の閾値以上となったときベルト67を開放状態にすることで、緊急時にベルト67が外れなくなることを防止する。
【0036】
寝台制御部65に接続されて操作入力部77が設けられている。操作入力部77は、実際には静磁場磁石12や傾斜磁場コイル13を収納する架台11の側面に取り付けられている。操作入力部77から入力された操作入力信号は寝台制御部65を介して、ベルト駆動部71やベルトシステム部50に伝達される。このようにして、寝台部30側にてベルト駆動部71の操作が行えるようにされている。
【0037】
なお、操作入力部77を操作する技師の足もとに、緊急時にベルト67を開放状態にする図示しないフットスイッチが設けられている。また、同様なフットスイッチがオペレータコンソール部20側にも設けられている。なお、天板61が架台11から引き出された状態でベルト67が開放状態となると被検体Pが天板61から落下することが危惧されるので、このフットスイッチは、天板61の状態を目視できる架台11側のみに設けられてもよい。
【0038】
オペレータコンソール部20は、上述のように、本体システム部40とベルトシステム部50とを含んで構成されている。このうち、本体システム部40は、インタフェース部31、データ収集部33、再構成部35、記憶部37、表示部39、入力部41および本体制御部43を有している。
【0039】
インタフェース部31には、傾斜磁場電源15、送信部19、位置調整機構23、受信部25および寝台制御部65が接続されている。インタフェース部31は、これらの接続された各部とオペレータコンソール部20との間で授受される信号の入出力を行う。
【0040】
データ収集部33は、受信部25から出力されるデジタル信号をインタフェース部31を介して収集する。データ収集部33は、収集したデジタル信号、すなわち磁気共鳴信号データを、記憶部37に格納する。再構成部35は、記憶部37に記憶された磁気共鳴信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成を実行し、被検体P内の所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを求める。
【0041】
記憶部37は、磁気共鳴信号データと、スペクトラムデータあるいは画像データとを、被検体P毎に記憶する。表示部39は、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を本体制御部43の制御の下に表示する。表示部39としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。入力部41は、技師からの各種指令や情報入力を受け付ける。本体制御部43は、これら各部を総括的に制御してMRI装置本体の撮像動作を制御する。
【0042】
ベルトシステム部50は、データベース51と、ベルト制御部53と、張力変動検出部55と、モニタリング部57と、機能選択部59とを有している。
【0043】
データベース51には、被検体Pの患者情報や撮像部位ベルト張力情報が記憶されている。性別、年齢、身長、体重などの患者情報は、図示しないRIS(放射線部門情報管理システム)或いはMRI装置の入力部41により患者登録が行われ、データベース51に記憶される。また、撮像部位ベルト張力情報とは、例えば、撮像部位とその撮像部位に対して使用するベルトおよびそのベルトと張力の関係を示す情報であり、データベース51に記憶される。これらのデータベース51に記憶された情報は入力部41を介して編集可能とされている。
【0044】
ベルト制御部53は、ベルト67の駆動に関して総括的な制御を行う。例えば、ベルト制御部53は、データベース51に記憶された被検体Pの患者情報に基づきベルト67の張力を変化させる。また、ベルト制御部53は、本体制御部43が制御して行われるMRI装置本体の撮像動作に連動させてベルト67の張力を変化させる。
【0045】
張力変動検出部55は、張力検出部75が出力するベルト張力を監視する。そして、ベルト張力が短時間に所定値以上変動したときにこれを報知する(表示部39にアラートを表示する)。
【0046】
モニタリング部57は、張力検出部75が出力するベルト張力を受信して、撮像動作経過に伴うベルト張力の変化を記録する。そして、このモニタリング部57の記録したベルト張力の変化は、撮像動作の完了後に確認できるようにされている。
【0047】
機能選択部59は、入力部41を介して入力されるベルト制御に関する各種モードの選択や機能の選択を受け付けてこれを保持する。
【0048】
ベルト制御に関する基本的な制御モードとして以下のモードが設けられている。
・張力一定モード
このモードが選択されていると、ベルト制御部53は、ベルト67の長さを可変として張力を一定に保つように制御する。
・張力可変モード
このモードが選択されていると、ベルト制御部53は、ベルト67の長さを所定の長さに固定するように制御する。そのため、被検体Pの体動により張力が変動する。
・ベルト長優先モード
このモードが選択されていると、ベルト制御部53は、基本的には固定ベルトの長さを固定した状態に制御して、所定値以上の張力がかかった場合には、張力を一定に保つようにする。
・張力優先モード
このモードが選択されていると、ベルト制御部53は、基本的に固定ベルトの長さを変更して張力を一定に保つように制御して、ベルト長が初期値に比べて一定以上伸びた場合に、張力を変化させてもベルト長をそれ以上伸びない状態に固定する。
【0049】
次ぎに動作を説明する。受信部25は、高周波コイル17および局所用プローブ21から出力される磁気共鳴信号を入力して磁気共鳴信号データを生成する。そして、本体制御部43は、例えば、高周波コイル17による磁気共鳴信号データに基づいて、被検体Pの全体の撮像を行う。また、本体制御部43は、局所用プローブ21による磁気共鳴信号データに基づいて、頭部、腹部といった被検体Pの局所毎の撮像を行う。このような撮像動作は、T1強調像、T2強調像、MRA(magnetic resonance angiography)、DWI(diffusion weighted imaging)およびFLAIR(fluid attenuated inversion recovery)といった撮像プロトコルに基づいて行われる。
【0050】
そして、例えば、頭部の撮像の場合、被検体Pの腕周りの固定は必要とするがそれほど強い固定でなくともよく、頭部の強めの固定と腕部の軽めの固定が必要になる。逆に、腹部撮像の場合には、頭部の固定は不要で撮像対象である腹部を直接強めに固定することが呼吸性の体動を抑制する目的で重要となる。このように臨床的な目的と撮像部位の組み合わせでベルト張力が決定される。
【0051】
ベルト制御部53は、上記撮像動作時に、データベース51に記憶された被検体Pの患者情報および撮像部位ベルト張力情報に基づいてベルト67の張力を変化させる。図4は撮像部位ベルト張力情報を記憶するテーブルの一例を示す図である。図中、A〜Eはベルト67にて固定する箇所を示している。Aは頭部、Bは腕部、Cは腰部、Dは膝部、Eは脚部である。Nは所定の係数を示している。ベルト67の張力は、図中の数字に、体重或いは身長を変数とする関数fを乗じた積にて決定される。例えば、成人の頭部を撮像する場合、頭部と腕部がベルト67にて固定され、頭部は3N×関数fの力で固定され、腕部はN×関数fの力で固定される。
【0052】
基本的にベルト制御部53は、被検体Pの患者情報に基づいて、体力が大きいと予測される被検体に対してはベルト張力を大きく、体力が小さいと予測される被検体に対してはベルト張力を小さくする。つまり、体力が大きい(力が強い)人ほど動いてしまう可能性があるので、体重、身長の大きな被検体に対してはベルト張力を大きく、反対に体重、身長の小さな被検体に対してはベルト張力を小さくする。同様の理由から、年齢の高い(老人)或いは低い(小児)被検体に対してはベルト張力を小さく、反対に年齢の若い(成人)被検体に対してはベルト張力を大きくする。さらに同様の理由により、女性の被検体に対してはベルト張力を小さく、反対に男性の被検体に対してはベルト張力を大きくする。
【0053】
なお、システムの拡張例として、学習モードを持たせておき、熟練した技師がセッティングしたときのベルト張力を、張力検出部75を介してベルトシステム部50で読み込み、このデータに基づいて上記撮像部位ベルト張力情報を修正するようにしてもよい。
【0054】
さらなるシステムの拡張例として、ログイン時のIDにより判別して技師の熟練度を判断して、熟練の技師が装置を使用する場合には、技師の手動操作による設定値が優先されて上記学習モードになり、上記撮像部位ベルト張力情報が修正され、一方、熟練度が低い技師が装置を使用する場合には、データベース51に記憶された設定値が優先されるようにしてもよい。
【0055】
また、撮像動作が複数の撮像プロトコルを連続して行うものであるとき、この撮像プロトコルの順序によりベルト張力が制御されてもよい。図5は連続して行われる撮像プロトコルとベルト張力の関係を示すプロトコルベルト張力情報の一例を示す図であり、具体的には頭部を撮像する際の撮像プロトコルとベルト張力の変化の割合を示すものである。図中横軸は、時間の経過、すなわち撮像プロトコルの進捗状況を示し、縦軸はベルト張力変化の割合を示している。図5に示すように、撮像動作中のベルト張力の制御として、動作中一定の張力にて締め付けるのではなく、例えば撮像の合間に被検体Pの休止時間を設けるタイミングに合わせてベルト張力を緩和するなどの動的な制御をすることも有効である。なお、この場合基本的な張力制御としてベルト長優先モードが選択される。
【0056】
図5において、撮像が開始され動きやすい時間帯である第1の撮像プロトコルでは、強めの張力にて固定を行う。これに比して第2の撮像プロトコル以降では張力を弱める。また、第2の撮像プロトコルと第3の撮像プロトコル間の休止時間では張力を弱める。
【0057】
第4の撮像プロトコルであるMRAは、撮像時間が他の撮像プロトコルに比べて長く、また体動の影響を受けやすい撮像プロトコルであることから被検体Pの固定が重要となる。具体的には、事前にこれが長時間の撮像であることを被検体Pに告知することで協力をお願いし、撮像中に徐々に張力を強める制御を行う。
【0058】
撮像プロトコルとベルト張力の関係であるプロトコルベルト張力情報は、息止め撮像、ダイナミック撮像などと同様に撮像プロトコル全体の計画の中で設定可能な要素として指定できるようにし、撮像プロトコルのメモリ機能の一部として実現することができる。
【0059】
また、モニタリングの機能が選択されていると、モニタリング部57は撮像中のベルト67の状態をモニタリングする(張力およびベルト長を逐次記憶部37に記憶する)。例えば、ベルト長優先モードの場合には、張力の時間変動が記録される。張力優先モードの場合には、ベルト長の時間変動が記録される。モニタリング結果は、撮像動作終了後に時間を遡って確認できるようにされている。つまり、撮像動作終了後にどのタイミングで被検体Pが動いたか確認することができるようにされている。
【0060】
このモニタリング機能により、例えば、撮像後の画像にアーチファクト(疑像)が存在した場合などに、その画像が撮像されたタイミングに被検体Pの体動が有ったか否かを確認することで、被検体Pの体動に起因したアーチファクトであるのか、その他の原因によるアーチファクトであるのか切り分けを行うことができる。
【0061】
さらに、このモニタリング機能に加えてアラート機能が選択されていると、張力変動検出部55は、大きな動きの前段階に現れる微小動き(いわゆる貧乏ゆすり)微小動きを検出して表示部39にアラートを表示する。
【0062】
このアラート機能を利用することにより、例えば、リラックスさせるための被検体Pへの声かけや、次の撮像のオートスタートを解除して、スタートの前に休止時間を設けるなどのその場の状況に合わせた適切な対応を技師に任せることが可能となる。
【0063】
上述してきたように、本実施例1では、被検体を固定するベルトの張力を技師の技量によらず適切なものとなるように管理することができるので、撮像動作中の被検体の体動を抑制することができ、被検体の体動に起因する画質劣化を削減することができる。
【0064】
なお、本実施例1の寝台装置は、技師の技量によらず被検体を固定するベルトの張力を適切なものとなるように管理するものであるので、MRI装置に限らず、X線CT装置、PET装置およびX線診断装置などの画像診断装置に用いられても所定の効果を得ることができる。
【実施例2】
【0065】
ところで、上記実施例1では、被検体を固定するベルトの張力を制御することによって撮像中の被検体の体動を防ぐ場合について説明したが、複数の撮像プロトコルで連続撮像を行う場合には、撮像の合間に休止時間を設けることによっても、撮像中の被検体の体動を防ぐことができる。
【0066】
数年前までのシステムでは、計算機の実行速度に比べて、撮像シーケンスをコントローラ用に展開、転送する速度が支配的だった。このため、パルスシーケンスの切り替えタイミングで自然と空き時間が生じ、その間患者(被検体)は、体動を防ぐために、体を硬直させていた状態から若干リラックスすることができた。しかしながら、計算機の実行速度の改善とコントローラ側への転送速度の向上などにより、このような空き時間を期待することが難しくなった。
【0067】
空き時間なしに連続的に撮像する場合、1回の静止時間が4分を超えると被検体の体動が大きくなることが経験的に知られている。また、30分の検査時間の後半20分過ぎぐらいになると患者が疲労により動きやすくなることも分かっている。現状は、オペレータが患者の状態を観察しながら適宜休止時間を設ける、声掛けを行うなどで体動が大きくならないようにしている。現状でも造影剤検査の場合には、ストップポイントを設けてそこで自動的にスキャンが動くことを抑制しておき、その間に造影剤の注入作業等を行うなどしている。
【0068】
しかしながら、経験の浅いオペレータの場合には、休止時間を設けることなく連続して撮像を行い、患者に大きな負担をかける事態が発生する。そこで、本実施例2では、撮像計画時にあらかじめ休止時間を組み込むMRI装置について説明する。すなわち、本実施例2に係るMRI装置は、撮像計画作成機能の一部として、概ね3−4分に1回、自動音声などと組み合わせて、15−30秒程度の患者がリラックスできる休止時間を設ける休止時間設定機能を提供する。
【0069】
具体的な休止時間設定方法としては、本実施例2に係るMRI装置は、撮像計画の計画時に図6に示すように、自動で休止時間81(Rest Time)を設け、オペレータにあまり意識を持たせない方法と、図7に示すように、撮像時間全体を表示し、プリセット値に対して、オペレータがマウス等の簡便な操作で休止詰め82や休止延長83などの値を書き換える操作を介在させる方法の2つを提供する。
【0070】
また、本実施例2に係るMRI装置は、自動で休止時間を設ける場合には、撮像の後半になるにつれて休止時間を徐々に長くする、長い撮像時間の前の休止時間を長めに取るなどを行う。また、本実施例2に係るMRI装置は、腹部や心臓の撮像の場合に用いられる息止め撮像の場合には、1回の息止め時間20秒程度に対して1分ぐらいの休止時間を設ける。
【0071】
また、本実施例2に係るMRI装置は、休止時間設定機能に加えて、図9に示すように、オペレータがマウス等の簡便な操作で張力変更や制御モードの変更を行う張力変更機能を提供する。
【0072】
このように、本実施例2に係るMRI装置は、休止時間設定機能や張力変更機能を提供することによって、撮像中の患者の体動を抑制し、画像の劣化を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
この発明は、MRI装置、X線CT装置、PET装置およびX線診断装置などの画像診断装置の寝台装置に適用されて好適なものであり、特に被検体に対してMRI撮像を行い比較的に撮像時間も長いMRI装置の寝台装置に適用されて最適なものである。
【符号の説明】
【0074】
10 本体部
11 静磁場磁石
13 傾斜磁場コイル
15 傾斜磁場電源
17 高周波コイル
19 送信部
20 オペレータコンソール部
21 局所用プローブ
23 位置調整機構
25 受信部
30 寝台部
31 インタフェース部
33 データ収集部
35 再構成部
37 記憶部
39 表示部
40 本体システム部
41 入力部
43 本体制御部
50 ベルトシステム部
51 データベース
53 ベルト制御部(ベルト張力可変手段)
55 張力変動検出部
57 モニタリング部
59 機能選択部
61 天板
61a ガイド部
61b スリット
62 寝台の支持部
63 移動機構部
65 寝台制御部
67 ベルト
69 ベルト巻き込み機構(ベルト張力可変手段)
69a ケース
69b 巻棒
69c 張力調整つまみ(張力保持手段)
71 ベルト駆動部(ベルト張力可変手段)
73 ワイヤ
75 張力検出部
77 操作入力部(ベルト張力可変手段)
81 休止時間
82 休止詰め
83 休止延長
100 MRI装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する2つの撮像プロトコル間に休止時間を設けた撮像計画を作成する撮像計画作成部を
備える、MRI装置。
【請求項2】
被検体が載置される天板と、
前記被検体を前記天板に固定するベルトと、
前記被検体の身長・体重、撮影部位の少なくとも一方に応じて前記ベルトの張力を可変とするベルト張力可変手段と、
を備える、請求項1に記載のMRI装置。
【請求項3】
前記ベルト張力可変手段は、
前記被検体の身長・体重、撮影部位の少なくとも一方に応じた張力を記憶したテーブルを用いて前記ベルトの張力を可変とする請求項2に記載のMRI装置。
【請求項4】
連続する2つの撮像プロトコル間に休止時間を設けた撮像計画を作成する
ことを含む、MRI撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−63294(P2013−63294A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264531(P2012−264531)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2007−285470(P2007−285470)の分割
【原出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】