説明

N−アルキル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンの直接アルキル化

少なくとも1種のオレフィンによる、少なくとも1種のN−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンの環アルキル化のための単一ステップの方法が開示され、この方法は、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミン(複数可)とオレフィン(複数可)の混合物を、少なくとも1種のアルキルアルミニウムハライドの触媒量の存在下、密閉した容器中で約50〜約350℃の温度で、約1〜約30時間加熱することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル化されたN−アルキル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンに関する。より詳細には、本発明は、N−アルキル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンの環アルキル化のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族アミンは、広い範囲の応用例で有用である。例えば、これらは、火花点火式内燃機関に使用されるガソリン中のアンチノック剤である。これらは、また、染料工業における価値のある中間体であり、ゴムに添加した場合、オゾンによる劣化を防止して有益である。
【0003】
N−置換−N’−p−フェニレンジアミンは、薬剤、農業製品の製造で、並びに染料、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、ゲル化防止剤、及びゴムに対する重合禁止剤として有用であることも知られている。
【0004】
アニリンなどの芳香族アミンのオルトアルキル化の方法が知られている。適した方法が、米国特許第2762845号;米国特許第2814646号;及び米国特許第3275690号に開示されている。
【0005】
米国特許第2762845号には、芳香族アミンとオレフィンの反応によって、アルキル化芳香族アミンを製造する手順が開示されており、この手順は、アルキル化反応を触媒するためにアルミニウム又はアルミニウム合金を使用し得ることを特徴としている。
【0006】
米国特許第2814646号には、アルミニウムアニリドタイプの触媒の存在下、アミノ窒素上に少なくとも1個の水素を有し、さらにこのアミノ窒素基に対してオルト位の核炭素上に少なくとも1個の水素を有する芳香族アミンと1つ又は複数の単位の炭素−炭素不飽和を有する有機化合物とを反応させることが開示されている。
【0007】
米国特許第3275690号には、フリーデル−クラフツ触媒の存在下、約150〜400℃の温度で、脂肪族オレフィン及びシクロオレフィンの群のオレフィンと、芳香族アミンとを反応させることによる芳香族アミンの核アルキル化が開示されている。
【0008】
米国特許第3649693号には、アルミニウムアニリド触媒の存在下で、オレフィンによるアニリンなどの芳香族アミンの選択的オルトアルキル化が開示されている。オルトアルキル化生成物は、事前の加水分解をせずに、反応混合物から蒸留し、残る残留物は、次のオルトアルキル化工程のための触媒として循環することができる。
【0009】
米国特許第3654331号及び米国特許第3923892号には、アミン基に対してオルト位にある少なくとも1個の核炭素原子上に水素原子を有する芳香族アミン(例えば、アニリン)の、ジエチルアルミニウムクロライドなどのアルキルアルミニウムハライドの触媒量をこの芳香族アミンに添加し、得られた混合物をオレフィンの存在下で約100〜500℃に加熱することによる選択的オルトアルキル化が開示されている。この方法は、アルミニウムアニリドの添加した存在下で実施してもよい。
【0010】
米国特許第5371289号には、メタノールの存在下で、(a)(1)N−フェニル−p−キノンイミンと(2)p−ヒドロキシジフェニルアミンの1.5:1〜1:1.5のN−フェニル−p−キノンイミン対p−ヒドロキシジフェニルアミンのモル比の混合物を、(b)一級アミンと反応させることを含む、N−置換−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンを調製する方法が開示されている。
【0011】
前述の開示は、その全体を参照により本明細書に援用する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンと1種又は複数のオレフィンの混合物を、好ましくは加圧下、アルキルアルミニウムハライドの触媒量の存在下で加熱することによる、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンの単一ステップの環アルキル化を対象とする。
【0013】
より詳細には、本発明は、少なくとも1種のオレフィンによる、少なくとも1種のN−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンの環アルキル化のための単一ステップの方法であって、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミン(複数可)とオレフィン(複数可)の混合物を、少なくとも1種のアルキルアルミニウムハライドの触媒量の存在下、密閉した容器中で約50〜約350℃の温度で、約1〜約30時間加熱することを含む方法を対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記のように、本発明は、少なくとも1種のオレフィンによる、少なくとも1種のN−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンの環アルキル化のための単一ステップの方法であって、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミン(複数可)とオレフィン(複数可)の混合物を、少なくとも1種のアルキルアルミニウムハライドの触媒量の存在下、密閉した容器中で約50〜約350℃の温度で、約1〜約30時間加熱することを含む方法を対象とする。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンは構造
【化1】


[式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、及び構造式
【化2】


(式中、Rは、同じか又は異なってもよく、独立に、水素及びメチルからなる群から選択され、Rは1〜12個の炭素原子のアルキルからなる群から選択され、nは0〜6の整数である)の基からなる群から選択される]である。
【0016】
上記フェニレンジアミンの式に関して、Rは、好ましくは、1〜50個の炭素原子を有するアルキル及び3〜30個の炭素原子を有するシクロアルキルからなる群から選択される。
【0017】
本発明の実施に使用されるN−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンを調製する方法は、米国特許第5371289号に記載されており、この開示を参照により本明細書に援用する。これらのN−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンは、当業者には既知の他の手段で調製することもできる。
【0018】
本発明の実施に使用することができるN−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンは、制限されないが、以下のものが含まれる。
N−メチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−エチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−プロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−n−ブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−sec−ブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−n−ペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−1−メチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−1,2−ジメチルプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−2−メチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−3−メチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−1−エチルプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−n−ヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−1−メチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−2−メチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−3−メチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−4−メチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−1,2−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−1−エチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−2−エチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−ヘプチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−オクチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−ノニル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−デシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−シクロオクチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−メチルシクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、及び
N−シクロオクチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン。
【0019】
好ましくは、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンは、
N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、及び
N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンからなる群から選択される。
【0020】
N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン及びN−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(これらは、それぞれFlexzone 7及びFlexzone 3Cとして市販されている)が特に好ましい。Flexzone 7の構造式は、
【化3】


である。
Flexzone 3Cの構造は、
【化4】


である。
【0021】
本発明の方法では、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンは、少なくとも1種のオレフィンと反応される。
【0022】
本発明の方法で有用なオレフィンは、決定的ではなく、一又は多不飽和の両方、環状又は非環状、置換又は非置換、及び末端及び内部オレフィンの両方のオレフィンが含まれる。
【0023】
非環状モノオレフィンの例には、これらに限定されないが、エチレン;プロピレン;ブテン−1;ブテン−2;イソブテン;ペンテン−1;イソペンテン;ペンテン−2;ヘキセン−1;ヘキセン−2;2−メチルペンテン−1;2−メチルペンテン−2;n−デセン−1;2−エチルオクテン−1;2−エチルオクテン−2;n−デセン−2;ドデセン−1;2−エチルデセン−1;2−エチルデセン−2;ドデセン−2;オクタデセン−1;オクタデセン−2;2−メチルヘプタデセン−1;ジ−イソブチレン;エイコセン−1;エイコセン−2;2−エチルオクタデセン−1;ドコセン−1;ドコセン−2;トリアコンテン−1;2−エチルオクタコセン−1;テトラコンテン−2;ペンタコンテン−1等が含まれる。
【0024】
環状モノオレフィンの例には、これらに限定されないが、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、1−メチルシクロヘキセン、1−ブチルシクロヘキセン、1−メチルシクロオクテン等が含まれる。
【0025】
有用な非環状ポリエンには、これらに限定されないが、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン等が含まれる。
【0026】
有用な環状ポリエンには、これらに限定されないが、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−オクタジエン、1,3,5−シクロオクタトリエン等が含まれる。
【0027】
非炭化水素オレフィンを使用することができるが、これらのオレフィンは好ましくない。これらは、この反応を妨害しない任意の置換基を有してもよい。このような置換基の例には、限定されないが、ハロゲン、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基等が含まれる。このような非炭化水素オレフィンの例示的な例には、2−クロロ−3−ブタジエン、ビニルクロライド、アリルクロライド、ビニルブロマイド、エチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ラウリルアクリレート、メチルアクリレート等が含まれる。
【0028】
一般に、最も好ましいオレフィン反応物は、2〜約50個の炭素原子を含む炭化水素非環状モノオレフィン、5〜10個の炭素原子を含む環状オレフィン、及び8〜20個の炭素原子を含むアリール置換モノオレフィンである。
【0029】
添加されるオレフィンの量は、モノ−又はジアルキル化が望まれているかに応じて変化する。一般に、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンの各1モルに対してオレフィンの約0.5モル当量〜8モル当量を添加する。最も有用な範囲は、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンの各1モル当量に対してオレフィンの約1モル当量〜約3モル当量である。
【0030】
この方法は、高温で最もよく進行する。有用な範囲は、約50°〜約350℃である。好ましい温度範囲は約100℃〜約300℃、より好ましくは約140℃〜約240℃である。
【0031】
この反応が実施される圧力は、独立の変数ではなく、温度及び反応物の蒸気圧に伴って変化する。エチレンなどの、より揮発性の低級オレフィンでは、この反応圧力は極めて高いが、高級オレフィンでは、中位の圧力のみが観察される。反応物及び温度に応じて、この圧力は、通常、使用されるオレフィンに応じて約10〜約1800ポンド/平方インチ(ゲージ圧)(psig)の範囲である。
【0032】
本発明の実施に触媒として使用されるアルキルアルミニウムハライドには、アルキルの炭素原子がアルミニウム原子に直接結合しているアルキル基を含み、また、アルミニウム原子に直接結合しているハロゲン原子を共に含む任意のアルミニウム化合物が含まれる。これらには、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムジハライド、及びアルキルアルミニウムセスキハライドが含まれる。適したジアルキルアルミニウムハライドのいくつかの例には、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジ−n−プロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムアイオダイド、ジイソアミルアルミニウムクロライド、ジ−n−ドデシルアルミニウムクロライド、及びジエイコシルアルミニウムブロマイドがある。有用なアルキルアルミニウムジハライドの例には、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、n−プロピルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジブロマイド、n−ヘキシルアルミニウムジブロマイド、sec−デシルアルミニウムジアイオダイド、n−ドデシルアルミニウムジクロライド、及びn−エイコシルアルミニウムジブロマイドが含まれる。
【0033】
上記ジアルキルアルミニウムハライド及びアルキルアルミニウムジハライドは共に、二量体の形態で存在すると考えられ、勿論、これらは本発明の範囲内に含まれる。
【0034】
アルキルアルミニウムセスキハライドは、実験式RAl(ここで、Rはアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す)を有する。有用なアルキルアルミニウムセスキハライドの例には、メチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキアイオダイド、n−プロピルアルミニウムセスキクロライド、n−プロピルアルミニウムセスキブロマイド、イソブチルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキアイオダイド、n−ヘキシルアルミニウムセスキアイオダイド、n−デシルアルミニウムセスキクロライド、n−ドデシルアルミニウムセスキブロマイド、及びsec−エイコシルアルミニウムセスキクロライドが含まれる。
【0035】
上記アルキルアルミニウムハライドは、良好な結果で、単体で使用してもよく、又は混合物として芳香族アミンに添加してもよい。
【0036】
添加されるアルキルアルミニウムハライドの量は、触媒的量であるべきである。このことは、これは、使用される反応条件下で、オレフィンがN−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンを満足な速度でアルキル化させるのに十分であることを意味している。より高い温度及び/又はより高いオレフィン濃度では、必要な触媒はより少ない。一般に、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンのそれぞれ5〜40グラムモルに対して、アルミニウムの1グラム原子(これを超えても又は未満でも使用することはできるが)を供給するのに十分なアルキルアルミニウムハライドを芳香族アミンに添加すると、良好な結果が得られる。より好ましい操作範囲は、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンのそれぞれ7〜25グラムモルに対してアルミニウムの1グラム原子を供給するのに十分な量であり、最も好ましい量は、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンのそれぞれ10〜20グラムモル当たりアルミニウムの1グラム原子を供給するものである。
【0037】
この反応時間は、使用する反応物である程度変わる。反応温度及び添加したアルキルアルミニウムハライドの量によって大きく影響される。この方法は、所望のアルキル化度が得られるまで実施されることになる。反応の進行は、定期的に試料を取り出し、次いでこれらを気相クロマトグラフィーによって分析することによってモニターすることができる。
【0038】
本発明の様々な特徴及び態様を以下の実施例でさらに例示する。これらの実施例は、本発明の範囲内でどう動作するかを当業者に示すために提示されるが、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0039】
以下の式は、オレフィンとしてデセンを使用し、触媒としてジエチルアルミニウムクロライドを使用した場合の、本発明の方法の特徴を例示するために提供する。
【化5】

【0040】
使用するオレフィンの物理的性質(ガス又は液体)に応じて、使用することが可能な2つの異なる手順が存在する。
【0041】
軽質オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブタン)
1リットルオートクレーブでは、先ず、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミン約0.85モルをオートクレーブに充填する。このオートクレーブを密閉し、300ポンド/平方インチ(ゲージ圧)の窒素で圧力試験をした後、容器を大気圧に開放する。約0.02〜0.2モルのジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)のヘキサン溶液(触媒)を、窒素で保護しながらオートクレーブにボールバルブを介してシリンジで注入する。次いで、ある一定量の軽質オレフィン、例えば、エチレン又はプロピレンを電動ボトルを介して供給する。次いで、この容器を撹拌しながら所望の温度まで加熱し、この温度にある期間(例えば、2〜24時間)維持する。最後に、オートクレーブを冷却し、容器から圧力を開放することによって、この反応を停止させる。次いで、試料を採取して分析する。試料は、またその進捗状況を測定するために行程中にディップチューブを介して採取される。軽質オレフィンの実施例を表1に示す。
【表1】


a.触媒としてDEACによる反応を、1リットルhastelloyオートクレーブ中で実施した。反応を180℃で15時間実施した。容器は、Flexzone−7 223グラム、ヘキサン(約56グラム)中の1M DEAC 80mL,及び対応するオレフィンを含んでいた。
b.種々の生成物の収率。ジ−アルキル及びトリ−アルキルは、「ジ−アルキル化」及び「トリ−アルキル化」を意味する。ジ−アルキル化は、2つの芳香環のそれぞれの上に1つのアルキル基を有する。トリ−アルキルAは、Flexzoneに結合している3つのアルキル基であり、2つのアルキル基が1つのアミノ基を有する芳香環上にあり、1つのアルキル基がアミノ基(複数)の間の芳香環上にある。
c.モノプロピルアルキル化Flexzone約7%
【0042】
液体の形態で使用されるオレフィン
1リットルhastelloyオートクレーブに、ある一定量のN−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミン及びオレフィンを充填した後、オートクレーブを密閉し、圧力試験をする。ヘキサン中のDEAC又はジイソブチルアンモニウムクロライド(DIBAC)などの、触媒を窒素で保護しながらオートクレーブにシリンジを介して注入する。次いで、反応器を撹拌しながら所望の温度まで加熱し、この温度にある期間(例えば、2〜24時間)維持する。オートクレーブを室温に冷却することによって、この反応を停止する。試料を行程後又は行程中採取して、その収率又は転換率を測定することができる。種々の液体オレフィンの実施例を表2から表5に示す。
【表2】


a.すべての反応を1リットルhastelloy容器中で実施した。総体積はすべての反応でほぼ同じである(約350ml)。先ず、Flexzone 3C及びデセンを充填する。容器を密閉し、圧力試験をし、Nをパージした後、DEACをシリンジを介して注入する。
b.選択的モノ比率(%)(% Sel.Mono)及び選択的ジ比率(%)(% Sel.Di)は、それぞれ、モノアルキル化生成物及びジアルキル化生成物への選択性比率(%)を意味する。
c.GBFEの構造は
【化6】


である。
【表3】


a.すべての反応を1リットルhastelloy容器中で実施した。総体積はすべての反応でほぼ同じである(約350ml)。先ず、Flexzone 3C及びデセンを充填する。容器を密閉し、圧力試験をし、Nをパージした後、DEACをシリンジを介して注入する。反応は温度で15時間実施した。
【0043】
(実施例13)
それに使用したDEACの代わりにDIBACに置換したことを除いて、実施例10を反復した。転換率(%)は、58であり;選択的モノ比率(%)は92.4(合計)及び63.5(GBFE)であり;選択的ジ比率(%)は7.6であった。
【表4】


a.すべての反応を1リットル容器中で実施した。総体積はすべての反応でほぼ同じである(約300ml)。先ず、GGFE及びデセンを充填する。容器を密閉し、圧力試験をし、Nをパージした後、DEACをシリンジを介して注入する。
b.GGFEは、1,3−ジメチルブチルアニリンである。
【表5】


a.すべての反応を1リットルhastelloyオートクレーブ中で実施した。先ず、Flexzone 7及びジシクロペンタジエンを充填する。オートクレーブを密閉し、圧力試験をした後、窒素で保護しながらDEACをシリンジで注入した。
b.S−aは、アミノ基(複数)の間の環上でアルキル化した2つの異性体への選択性の合計である。S−bは、1つのアミノのみが結合している芳香環上でアルキル化した異性体(複数)への選択性の合計である。これらの2種の異性体は、ガスクロマトグラフィーでより長い保持時間を有する。
【0044】
ジシクロペンタジエンの構造は、
【化7】


である。
ジシクロペンタジエンは、芳香環に結合することができる4個の炭素を有する。4つのアルキル化異性体の2つは、アミノ基の間の芳香環上でアルキル化されており、他の2つは1つのアミノ基のみを有する芳香環上でアルキル化されている。
【0045】
本発明の根底をなす原理から逸脱することなく実施することが可能な多くの変更及び修正を考慮して、本発明により提供される保護の範囲を理解するために、頭記の特許請求の範囲を参照するべきである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のオレフィンによる、少なくとも1種のN−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンの環アルキル化のための単一ステップの方法であって、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンとオレフィンの混合物を、少なくとも1種のアルキルアルミニウムハライドの触媒量の存在下、密閉した容器中で約50〜約350℃の温度で、約1〜約30時間加熱することを含む方法。
【請求項2】
N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンが、構造
【化1】


[式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、及び構造式
【化2】


(式中、Rは、同じか又は異なってもよく、独立に、水素及びメチルからなる群から選択され、Rは1〜12個の炭素原子のアルキルからなる群から選択され、nは0〜6の整数である)の基からなる群から選択される]を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、1〜50個の炭素原子のアルキル及び3〜30個の炭素原子のシクロアルキルからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンが、
N−メチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−エチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−プロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−n−ブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−sec−ブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−n−ペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−1−メチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−1,2−ジメチルプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−2−メチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−3−メチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−1−エチルプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−n−ヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−1−メチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−2−メチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−3−メチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−4−メチルペンチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−1,2−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−1−エチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−2−エチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−ヘプチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−オクチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−ノニル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−デシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−シクロオクチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−メチルシクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、及び
N−シクロオクチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンが、
N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、
N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、及び
N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンが、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン及びN−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記オレフィンが、2〜約50個の炭素原子を含む炭化水素非環状モノオレフィン、5〜10個の炭素原子を含む環状オレフィン、及び8〜20個の炭素原子を含むアリール置換モノオレフィンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンの各1モルに対してオレフィンの約0.5モル当量〜8モル当量が添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
アルキルアルミニウムハライドが、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジ−n−プロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムアイオダイド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、ジイソアミルアルミニウムクロライド、ジ−n−ドデシルアルミニウムクロライド、ジエイコシルアルミニウムブロマイド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、n−プロピルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジブロマイド、n−ヘキシルアルミニウムジブロマイド、sec−デシルアルミニウムジアイオダイド、n−ドデシルアルミニウムジクロライド、n−エイコシルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキアイオダイド、n−プロピルアルミニウムセスキクロライド、n−プロピルアルミニウムセスキブロマイド、イソブチルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキアイオダイド、n−ヘキシルアルミニウムセスキアイオダイド、n−デシルアルミニウムセスキクロライド、n−ドデシルアルミニウムセスキブロマイド、及びsec−エイコシルアルミニウムセスキクロライドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
アルキルアルミニウムハライドが、ジエチルアルミニウムクロライド及びジイソブチルアルミニウムクロライドからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
2〜約50個の炭素原子を含む炭化水素非環状モノオレフィン、5〜10個の炭素原子を含む環状オレフィン、及び8〜20個の炭素原子を含むアリール置換モノオレフィンからなる群から選択される、少なくとも1種のオレフィンによる、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン及びN−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンからなる群から選択される、少なくとも1種のN−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンの環アルキル化のための単一ステップの方法において、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンの各1モルに対してオレフィンの約0.5モル当量〜8モル当量が添加される方法であって、N−アルキル−N’−フェニル−フェニレンジアミンとオレフィンの混合物を、ジエチルアルミニウムクロライド及びジイソブチルアルミニウムクロライドからなる群から選択される、少なくとも1種のアルキルアルミニウムハライドの触媒量の存在下、密閉した容器中で約140〜約240℃の温度で、約1〜約30時間加熱することを含む方法。


【公表番号】特表2009−524660(P2009−524660A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552323(P2008−552323)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/001128
【国際公開番号】WO2007/087195
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(508201282)ケムチュア コーポレイション (69)
【Fターム(参考)】