説明

N,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体

【課題】有機EL用素子成分、特に正孔輸送材料として優れた新規なN,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体を提供すること。
【解決手段】本発明のN,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体は、ポリフェニレンジアミン誘導体に特定構造の三環性アミン基を2個有する新規なN,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体である。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なN,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体に関する。さらに詳しくは有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子成分として用いることにより、有機EL素子の発光寿命を顕著に改良できる新規なN,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子については、その原理的な可能性は従来から知られていたものの、実用的な素子の作製が初めて報告されたのは、1987年にコダック社のTangらによるものが最初である。彼らは発光層と正孔輸送層を分離し、薄膜で積層化させることにより有機EL素子の発光効率を向上させ、かつ低電圧での発光を可能にし、発光素子としての可能性を世に示した(例えば、特許文献1参照)。これ以降、多くの研究者によって発光効率や素子寿命の改良のための研究が行われ、素子用材料として数多くの化合物が提案されてきた。その結果、発光特性についても十分な実用性を有する材料が開発されるに至った(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、素子寿命については未だに十分な特性が得られているとは言い難く、素子の駆動時に、時間とともに発光輝度が低下したり、ダークスポットと呼ばれる発光しない部分が現れたりする等の劣化が観測されている。これらの素子寿命に影響を及ぼす劣化の原因の一つとして、正孔輸送材料の特性が大きくかかわっていることが、最近の研究で明らかになってきた。具体的には、通電により正孔輸送材料が結晶化して薄膜の均一性をゆがめ、素子の短絡をまねいたり、また、通電により正孔輸送材料が分解を起こして機能しなくなり、発光を阻害する等である。
【0003】
このような問題を解決すべく、改良された特性を有する化合物(通称:α−NPD)のような正孔輸送材料が用いられている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
【化1】

【0005】
また、さらに最近になって、正孔輸送材料としてより高い融点や高い熱分解点を有するものが、発光や保存の安定性に優れ、また、発光寿命が長いことも見出されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、これまでに開発されている優れた発光材料の特性を生かすに足る、十分な安定性を持った正孔輸送材料については、未だ得られていないのが現状である。
【特許文献1】特開昭63−295695号公報
【特許文献2】特開平4−220995号公報
【特許文献3】特開平5−234681号公報
【特許文献4】特開2004−182740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、熱安定性に優れ、駆動による特性の劣化が改善された、有機EL用正孔輸送材料として優れた特性を有する、新規なN,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、文献に未記載の新規化合物である特定の構造を有するN,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体の少なくとも1種を、有機EL用素子の構成要素、特に正孔輸送材料として用いることにより、優れた有機EL素子を得ることが出来た。
【0008】
すなわち、本発明は、一般式(1)で示されるN,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体を提供するものである。
【0009】
【化2】

【0010】
〔一般式(1)において、R1は、水素原子、C1〜C4の低級アルキル基またはC1〜C4の低級アルコキシ基を示す。R2は、水素原子、C1〜C4の低級アルキル基、C1〜C4の低級アルコキシ基またはハロゲン原子を示す。Ar1は置換基を有してもよいアリール基を示し、Ar2はそれぞれが置換基を有してもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基またはヘテロ環基を示す。Zは、チッ素を含む5員環の2つの炭素と共に、5〜8員環の飽和の炭化水素環あるいは複素環を形成するのに必要な原子を示す。また、nは0〜2の整数を示す。〕
【発明の効果】
【0011】
本発明のN,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体を用いることにより、融点や熱分解点等の熱安定性が十分高く、発光寿命の長い、優れた有機EL素子を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一般式(1)におけるR1の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のC1〜C4の低級アルキル基、または、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のC1〜C4の低級アルコキシ基を挙げることが出来る。R2の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のC1〜C4の低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のC1〜C4の低級アルコキシ基、または、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を挙げることが出来る。
【0013】
Ar1の具体例としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−オクチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−メチル−4−エチルフェニル基、2−エチル−5−ブチル基等のアルキル基で置換されたフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、3−プロポキシフェニル基、4−プロポキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基、4−ヘキシルオキシ基、2,4−ジメトキシフェニル基、2−メトキシ−5−エトキシ基等のアルコキシ基で置換されたフェニル基、2−メトキシ−4−メチルフェニル基、2,6−ジメチル−4−メトキシフェニル基等のアルキル基及びアルコキシ基の双方で置換されたフェニル基、4−スチリルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル基等のアルケニル基で置換されたフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、5−メチル−1−ナフチル基、1−メチル−2−ナフチル基、4−エチル−2−ナフチル基、4−プロピル−1−ナフチル基等のアルキル基で置換されたナフチル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、4′−メチル−4−ビフェニリル基、2′,4′−ジメチル−4−ビフェニリル基、3′,5′−ジエチル−3−ビフェニリル基等のアルキル基で置換されたビフェニリル基、4−p−ターフェニリル基、4−m−ターフェニリル基、4−o−ターフェニリル基、4′′−メチル−p−ターフェニリル基、3′′−5′′−ジメチル−p−ターフェニリル基、4′′−オクチル−p−ターフェニリル基等のアルキル基で置換されたターフェニリル基、9−フェナントリル基、1−アントリル基、9−アントリル基、1−ピレニル基等のアリール基を挙げることが出来る。
【0014】
Ar2の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、2−メチルオクチル基、4−エチルヘキシル基等のアルキル基、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、4−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、2−メチルベンジル基、2,4−ジメチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−クロルベンジル基、4−エチルベンジル基、4−プロピルベンジル基、4−ブチルベンジル基等のアラルキル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−オクチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−メチル−4−エチルフェニル基、2−エチル−5−ブチル基等のアルキル基で置換されたフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、3−プロポキシフェニル基、4−プロポキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基、4−ヘキシルオキシ基、2,4−ジメトキシフェニル基、2−メトキシ−5−エトキシ基等のアルコキシ基で置換されたフェニル基、2−メトキシ−4−メチルフェニル基、2,6−ジメチル−4−メトキシフェニル基等のアルキル基及びアルコキシ基の双方で置換されたフェニル基、4−スチリルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル基等のアルケニル基で置換されたフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、5−メチル−1−ナフチル基、1−メチル−2−ナフチル基、4−エチル−2−ナフチル基、4−プロピル−1−ナフチル基等のアルキル基で置換されたナフチル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、4′−メチル−4−ビフェニリル基、2′,4′−ジメチル−4−ビフェニリル基、3′,5′−ジエチル−3−ビフェニリル基等のアルキル基で置換されたビフェニリル基、4−p−ターフェニリル基、4−m−ターフェニリル基、4−o−ターフェニリル基、4′′−メチル−p−ターフェニリル基、3′′−5′′−ジメチル−p−ターフェニリル基、4′′−オクチル−p−ターフェニリル基等のアルキル基で置換されたターフェニリル基、9−フェナントリル基、1−アントリル基、9−アントリル基、1−ピレニル基等のアリール基、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−メチル−4−ピリジル基、1−フェニル−2−インドリル基、1−フェニル−3−インドリル基、9−フェニル−3−カルバゾリル基等のヘテロ環基を挙げることが出来る。
【0015】
また、Zの具体例としては、チッ素を含む5員環の2つの炭素と共に飽和鎖を形成する−(CH23−、−(CH24−、−(CH25−等の炭素鎖や、−CH2−NH−CH2−、−CH2−N(CH3)−CH2−等の含チッ素炭素鎖が挙げられる。また、nは0〜2の整数を示す。
【0016】
次に、上記一般式(1)で示されるN,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体の製造方法について説明する。一般式(1)で示されるN,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体は、一般式(2)で示されるN,N′−ビスアリール置換−ポリフェニレンジアミン誘導体と、一般式(3)で示されるハロゲン置換三環性アミン誘導体とをN−アリール化反応させることにより合成することが出来る。
【0017】
【化3】

【0018】
〔式中、R1、Ar1及びnは前記一般式(1)の場合と同じである。〕
【0019】
【化4】

【0020】
〔式中、R2、Ar2及びZは前記一般式(1)の場合と同じである。またXはハロゲン原子を示す。〕
【0021】
Xの具体例は、前記R2の具体例で記載したハロゲン原子と同じである。
【0022】
また、一般式(2)のN,N′−ビスアリール置換−ポリフェニレンジアミン誘導体は、ジフェニルアミンを濃硫酸と発煙硫酸(SO2含量:20%)の混合液中で80℃に加熱して合成する方法(バイルシュタイン13巻、223ページ)やジフェニルアミンを硫酸、酢酸及び水の混合溶液で反応させた後、重クロム酸カリウム水溶液で酸化する方法(Journal of American Chemical Society、1940年、7巻、634〜638ページ)を用いて合成することが出来る。
【0023】
また、一般式(3)のハロゲン置換三環性アミン誘導体は、一般式(4)の三環性アミン誘導体を、臭素やヨウ素等の単体ハロゲンまたはN−ハロゲノコハク酸イミド等を用いてハロゲン化することにより得られる。
【0024】
【化5】

【0025】
〔式中、R2、Ar2及びZは前記一般式(1)の場合と同じである。〕
【0026】
一般式(4)の三環性アミン誘導体は、公知の前駆体であるNが無置換の三環性インドール誘導体をアリールハライドによりN−アリール化した後、接触水素化反応等でインドール環の二重結合を還元するか(特開2000−169446号公報等)、あるいは、1,1−ジフェニルヒドラジンとシクロペンタノンを縮合させるFisherのインドール合成の方法により得られた三環性インドール誘導体の二重結合を同様に接触水素化反応等で還元することにより製造することが出来る。
【0027】
上記一般式(2)で示されるN,N′−ビスアリール置換−ポリフェニレンジアミン誘導体の具体例としては、下記式(2−01)〜(2−13)などが挙げられる。
【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
また一般式(3)で示されるハロゲン置換三環性アミン誘導体の具体例としては、下記式(3−01)〜(3−20)などが挙げられる。
【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
【化10】

【0034】
【化11】

【0035】
などを挙げることが出来る。
【0036】
上記一般式(2)のN,N′−ビスアリール置換−ポリフェニレンジアミン誘導体と一般式(3)のハロゲン置換インドリン誘導体とのN−アリール化反応に置いては、一般的に縮合剤として塩基が用いられる。塩基の例としては、アルカリ金属やアルカリ土金属の水酸化物、炭酸塩、水素化物、低級アルコールの金属塩、あるいは3級アミン類が用いられるが、好ましくはカリウムターシャルブトキシドやナトリウムメチラート等の低級アルコールの金属塩が用いられる。
【0037】
また、この縮合反応においては、反応を円滑に進行せしめるために金属触媒を用いることが出来る。金属触媒としては、銅やその化合物の臭化第一銅や沃化第一銅、あるいはパラジウムやその化合物の酢酸パラジウム等が好ましく用いられる。また、触媒助剤として、三価のアルキルリン化合物、例えばトリターシャルブチルフォスフィン等を用いてもよい。
【0038】
また、反応溶剤としては、ある程度の溶解性を有する、不活性の有機溶剤であればいずれをも用いることが出来る。好ましくはニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、スルホラン、キシレン等の高沸点の溶剤が用いられる。
【0039】
反応温度は、原料化合物の溶剤に対する溶解度や、反応のし易さ等によっても異なるので、一概には言えないが、通常、100〜400℃、好ましくは120〜200℃の範囲で行われる。高温で不安定な置換基を有するものの場合は、適当な溶剤及び触媒系を選択することにより、より低い反応温度で円滑に反応を進行させることが出来る。
【0040】
次に、本発明の一般式(1)の化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
【化12】

【0042】
【化13】

【0043】
【化14】

【0044】
【化15】

【0045】
【化16】

【0046】
【化17】

【0047】
【化18】

【0048】
【化19】

【0049】
【化20】

【0050】
【化21】

【0051】
【化22】

【0052】
【化23】

【0053】
【化24】

【実施例】
【0054】
本発明のN,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体について、代表的な合成の実施例を以下に示す。
【0055】
(実施例1)
(1)4−ブロモベンズアルデヒド93.64g(506ミリモル)、ジエチルベンズヒドリルフォスフォネート186.2g(612ミリモル)及びN,N−ジメチルホルムアミド843mlの混合物を、水浴で冷却、撹拌している中へ、カリウムターシャルブトキシド85.78g(764ミリモル)を20分かけて加えた。水冷下1時間撹拌した後、さらに室温で8時間撹拌して反応を完結させた。反応液を水1800ml中に注入し、1時間撹拌の後、酢酸エチル1800mlで抽出、水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮して酢酸エチルを除去し、残渣をエタノールで再結晶して2−(4−ブロモフェニル)−1,1−ジフェニルエチレン87.46g(収率51.5%)を得た。
【0056】
【化25】

【0057】
(2)上記(1)で得られた2−(4−ブロモフェニル)−1,1−ジフェニルエチレン87.46g(261ミリモル)、1,1a,2,3,4,4a−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール〔上記(5)の化合物〕39.43g(248ミリモル)、カリウムターシャルブトキシド33.41g(298ミリモル)、酢酸パラジウム0.41g(1.83ミリモル)、トリターシャルブチルフォスフィン1.22g(6.03ミリモル)及びキシレン680mlの混合物を窒素気流下撹拌しながら、110℃で1時間、次いで120℃で4時間加熱して反応を完結させた。反応液を熱時セライト濾過し、濾液を1規定塩酸、次いで飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧で溶剤を留去して1−〔4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル〕−1,1a,2,3,4,4a−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール〔下記(6)の化合物〕90.72g(収率88.6%)を得た。
【0058】
【化26】

【0059】
(3)上記(2)で得られた1−〔4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル〕−1,1a,2,3,4,4a−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール4.13g(10.0ミリモル)をクロロホルム80mlに溶かし、室温で撹拌している中へ、臭素2.02g(12.6ミリモル)のクロロホルム15ml溶液を、40分かけて滴下した。さらに室温で2.5時間撹拌して反応を完結させた後、減圧で溶剤を留去して粗生成物6.17gを得た。これをトルエンを溶剤としてクロマト精製を行い、6−ブロモ−1−〔4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル〕−1,1a,2,3,4,4a−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール〔例示化合物(3−01)〕4.44g(収率90.2%)を得た。
【0060】
(4)上記(3)で得られたブロム置換体〔例示化合物(3−01)〕3.66g(7.43ミリモル)、N,N′−ジフェニルベンジジン1.25g(3.72ミリモル)、カリウムターシャルブトキシド1.01g(9.00ミリモル)、酢酸パラジウム0.04g(0.178ミリモル)、トリターシャルブチルフォスフィン0.16g(0.791ミリモル)及びキシレン70mlの混合物を窒素気流下撹拌しながら、100℃で1時間、次いで120℃で6.5時間加熱して反応を完結させた。反応液を熱時セライト濾過し、減圧で溶剤を留去して粗生成物4.79gを得た。これを2回クロマト精製して、目的とするN,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体〔例示化合物(1−01)〕2.62g(収率60.7%)を得た。融点は179.0〜182.0℃であった。
【0061】
このものは、1H−NMR(δ,ppm,CDCl3)において、7.67(s,2H)、7.35〜7.44(m,10H)、7.28〜7.34(m,16H)、7.23〜7.27(m,8H)、7.16〜7.22(m,6H)、7.07〜7.15(m,8H)、7.02(s,2H)、6.92(t,2H)、5.29(t,2H)、4.50(t,2H)、2.10〜2.20(m,2H)、1.88〜2.06(m,4H)、1.73〜1.80(m,2H)、1.60〜1.72(m,2H)、1.46〜1.58(m,2H)のピークを示していることから、その構造が確認された。
【0062】
このものについて、熱分析による分解点の測定を行ったところ、熱分解温度は350℃以上という結果が得られた。
【0063】
(実施例2)
(1)実施例1の(2)の方法と同様にして、4−ブロモビフェニル21.9g(94ミリモル)と1,1a,2,3,4,4a−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール14.2g(89ミリモル)から、1−(4−ビフェニル)−1,1a,2,3,4,4a−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール〔下記式(7)の化合物〕25.4g(収率87.2%)を得た。
【0064】
【化27】

【0065】
(2)上記(1)で得られた1−(4−ビフェニル)−1,1a,2,3,4,4a−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール6.23g(20.0ミリモル)をクロロホルム160mlに溶かし、室温で撹拌している中へ、臭素3.51g(21.9ミリモル)のクロロホルム30ml溶液を、1時間かけて滴下した。さらに室温で5時間撹拌して反応を完結させた後、減圧で溶剤を留去して粗生成物8.66gを得た。これをトルエンを溶剤としてクロマト精製を行い、6−ブロモ−1−(4−ビフェニル)−1,1a,2,3,4,4a−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール〔例示化合物(3−06)〕7.65g(収率98.0%)を得た。
【0066】
(3)上記(2)で得られたブロム置換体〔例示化合物(3−06)〕3.90g(9.99ミリモル)、N,N′−ジフェニルベンジジン1.68g(4.99ミリモル)、カリウムターシャルブトキシド1.37g(12.21ミリモル)、酢酸パラジウム0.08g(0.356ミリモル)、トリターシャルブチルフォスフィン0.42g(2.08ミリモル)及びキシレン100mlの混合物を窒素気流下撹拌しながら、100℃で1時間、次いで120℃で5時間加熱して反応を完結させた。反応液を熱時セライト濾過し、減圧で溶剤を留去して粗生成物5.40gを得た。これを2回クロマト精製して、目的とするN,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体〔例示化合物(1−06)〕3.10g(収率65.0%)を得た。融点は140.0〜142.5℃であった。
【0067】
このものは、1H−NMR(δ,ppm,CDCl3)において、7.60〜7.73(m,6H)、7.38〜7.56(m,16H)、7.23〜7.33(m,10H)、7.10〜7.22(m,10H)、5.39(t,2H)、4.59(t,2H)、1.90〜2.17(m,4H)、1.50〜1.88(m,8H)のピークを示していることから、その構造が確認された。
【0068】
このものについて、熱分析による分解点の測定を行ったところ、熱分解温度は350℃以上という結果が得られた。
【0069】
(応用例)
以上の実施例1〜2で得られた例示化合物(1−01)、(1−06)及び同様の方法で合成して得られた例示化合物(1−02)、(1−03)、(1−04)、(1−05)、(1−07)、(1−12)、(1−15)、(1−18)、(1−20)を用いて、有機EL素子を作製し、その正孔輸送材料としての機能を確認した。有機EL素子は、ガラス基板上にITO電極を予め形成してある透明電極の上に、正孔輸送材料として本発明化合物の薄膜を形成し、その上に発光層及び電子輸送層としてアルミキノリン3量体の薄膜を形成、その上にMg/Al電極薄膜をさらに形成することにより作製した。
【0070】
以上の様にして作製した有機EL素子について、定電流装置を用いて100mA/cm2の電流を印加したところ、十分な発光輝度で連続して発光することが確認された。いずれの例示化合物を用いた場合も、初期感度が半減するまでの発光寿命は100時間以上であった。
【0071】
(比較例)
これに対し、比較化合物としてα−NPDを用いて、同様の有機EL素子を作製し、同様の定電流装置を用いて100mA/cm2の電流を印加したところ、最初は十分な発光輝度で発光したが、発光寿命が例示化合物と比較して短く、約50時間であった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の活用例として、特に熱安定性が高い、発光寿命に優れた有機EL用素子を実現することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるN,N′−ビス三環性アミン置換−ポリフェニレンジアミン誘導体。
【化1】

〔一般式(1)において、R1は、水素原子、C1〜C4の低級アルキル基またはC1〜C4の低級アルコキシ基を示す。R2は、水素原子、C1〜C4の低級アルキル基、C1〜C4の低級アルコキシ基またはハロゲン原子を示す。Ar1は置換基を有してもよいアリール基を示し、Ar2はそれぞれが置換基を有してもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基またはヘテロ環基を示す。Zは、チッ素を含む5員環の2つの炭素と共に、5〜8員環の飽和の炭化水素環あるいは複素環を形成するのに必要な原子を示す。また、nは0〜2の整数を示す。〕

【公開番号】特開2010−30961(P2010−30961A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195798(P2008−195798)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】