説明

N36結合ペプチドの製造方法

【課題】N36結合ペプチドを、微生物を利用して安価かつ大量に製造する
【解決手段】哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルスのN36タンパク質に結合するN36結合ペプチドをコードするDNA分子を組み込んだ組換えベクターを、大腸菌を宿主として導入して形質転換体とし、該形質転換体を培地で培養して培養物中にN36結合ペプチドを生成蓄積させ、該培養物からN36結合ペプチドを採取することを特徴とするN36結合ペプチドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルス(例えばHIV、SIV)の予防または治療作用を有するN36結合ペプチドの微生物を利用した製造方法及びN36結合のエイズ関連ウイルスの予防又は治療への利用に関する。
【背景技術】
【0002】
エイズ(AIDS)とは後天性免疫不全症候群(Acquired Immuno Deficiency Syndrome)の略称であり、免疫不全をひき起こすレトロウイルス(例えばHIV、SIV)に感染することにより病原体に対する免疫力が正常に働かなくなって発症する様々な病気の総称を意味する。
【0003】
エイズ治療剤として、現在アジドチミジンに代表される逆転写酵素阻害剤やプロテアーゼ阻害剤などのウイルスの増殖プロセスを阻害する薬が用いられ、これら薬剤の併用療法によりかなりの治療効果が得られるようになってきている。
【0004】
免疫不全をひき起こすレトロウイルス、例えばHIVが宿主細胞へ侵入するメカニズムの1つとして、HIVのgp41タンパク質中のα−へリックス構造を有するC34の3量体が、α−へリックス構造を有するN36の3量体を包み込むようにして6量体を形成し、HIVの細胞膜と宿主細胞の細胞膜との融合が起こるというメカニズムが知られている(非特許文献1)。N36をターゲットにして上記6量体形成を防ぐための薬剤、例えばT20(商品名Fuzeon)は、米国FDAにより認可されているが、T20耐性能を有するHIV-1株の存在がすでに確認されており、更なる抗HIV活性を有する薬剤が必要である。
【0005】
T20に比べて強い抗HIV活性を有するC34ペプチドは、薬剤耐性ウイルスも出現しにくいが、水溶性が非常に悪く、その開発が遅れていた。本発明者らは、C34の難溶性を改善するためにα−へリックス構造を有するように,N36結合ペプチドをデザインした(特許文献1)。このN36結合ペプチドは強力な抗HIV活性を有し,T20薬剤に耐性を示すHIV株にも有効である.
このN36結合ペプチドはデザインされたペプチドであるため、これまで化学合成でしか生産できず大量生産の可能性が見出せていなかった。実用化には安価な大量生産が必至で、必要量は概算年間1トン、その合成コストは100兆円にも及ぶ。
【0006】
N36結合ペプチドの微生物による提供ができれば安価かつ現実的にエイズ治療薬として供給できる。
【0007】
しかしながら、N36結合ペプチドを微生物で生産した例はなかった。
【特許文献1】WO03/029284
【非特許文献1】Review: D.M.Eckert, P.S.Kim, Annu.Rev.Biochem. 2001, 70, 777-810
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、化学合成法により製造されていたN36結合ペプチドを、微生物を利用して安価かつ大量に製造する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意検討を重ねた結果、遺伝子工学的にN36結合ペプチドを製造するにあたって、大腸菌、酵母及び糸状菌からなる群から選択される少なくとも1種を宿主として利用することによって、安価かつ大量に目的とするペプチドを製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のN36結合ペプチドの製造方法、哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルス感染症の予防又は治療剤組成物を提供するものである。
項1. 哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルスのN36タンパク質に結合するN36結合ペプチドをコードするDNA分子を組み込んだ組換えベクターを、大腸菌を宿主として導入して形質転換体とし、該形質転換体を培地で培養して培養物中にN36結合ペプチドを生成蓄積させ、該培養物からN36結合ペプチドを採取することを特徴とするN36結合ペプチドの製造方法。
項2. 前記形質転換体を培地で培養して、菌体内発現、ペリプラズム発現、分泌発現のいずれかの形態でN36結合ペプチドを培養物中において生成蓄積させることを特徴とする、項1に記載の方法。
項3. 前記形質転換体を培地で培養して、N36結合ペプチドを大腸菌の菌体内発現により生成蓄積させることを特徴とする、項2に記載の方法。
項4. 前記組換えベクターが、N36結合ペプチドをコードするDNA分子と、大腸菌で発現可能なタンパク質をコードするDNA分子を融合して含むことを特徴とする項1記載のN36結合ペプチドの製造方法。
項5. 前記組換えベクターが、N36結合ペプチドをコードするDNA分子と、大腸菌で発現可能なタンパク質をコードするDNA分子を融合して含み、前記N36結合ペプチドをコードするDNA分子の一端又は両端にペプチド結合を切断可能な認識部位をコードするDNA分子を含むことを特徴とする項1記載のN36結合ペプチドの製造方法。
項6. 前記認識部位がシステインであることを特徴とする項5記載のN36結合ペプチドの製造方法。
項7. 大腸菌で発現可能な前記タンパク質がグルタチオンSトランスフェラーゼ及びEGFPよりなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする項4〜6のいずれかに記載のN36結合ペプチドの製造方法。
項8. 哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルスのN36タンパク質に結合するN36結合ペプチドをコードするDNA分子を組み込んだ組換えベクターを、糸状菌を宿主として導入して形質転換体とし、該形質転換体を培地で培養して培養物中にN36結合ペプチドを生成蓄積させ、該培養物からN36結合ペプチドを採取するN36結合ペプチドの製造方法。
項9. 前記糸状菌が麹菌であることを特徴とする項8記載のN36結合ペプチドの製造方法。
項10. 前記組換えベクターが、N36結合ペプチドをコードするDNA分子と、糸状菌で発現可能なタンパク質をコードするDNA分子を融合して含むことを特徴とする項8または9記載のN36結合ペプチドの製造方法。
項11. 前記組換えベクターが、N36結合ペプチドをコードするDNA分子と、糸状菌で発現可能なタンパク質をコードするDNA分子を融合して含み、前記N36結合ペプチドをコードするDNA分子の一端又は両端にペプチド結合を切断可能な認識部位をコードするDNA分子を含むことを特徴とする項8記載のN36結合ペプチドの製造方法。
項12. 前記認識部位がシステインであることを特徴とする項11記載のN36結合ペプチドの製造方法。
項13. 糸状菌で発現可能な前記タンパク質がグルコアミラーゼであることを特徴とする項10〜12のいずれかに記載のN36結合ペプチドの製造方法。
項14. 糸状菌を固体培養することを特徴とする項8〜13のいずれかに記載のN36結合ペプチドの製造方法。
項15. 哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルスのN36タンパク質に結合するN36結合ペプチドをコードするDNA分子を組み込んだ組換えベクターを、酵母を宿主として導入して形質転換体とし、該形質転換体を培地で培養して培養物中にN36結合ペプチドを生成蓄積させ、該培養物からN36結合ペプチドを採取することを特徴とするN36結合ペプチドの製造方法。
項16. 前記酵母がサッカロミセス属に属する微生物であることを特徴とする項15記載のN36結合ペプチドの製造方法。
項17. 前記組換えベクターが、N36結合ペプチドをコードするDNA分子と、酵母で発現可能なタンパク質をコードするDNA分子を融合して含むことを特徴とする項15または16記載のN36結合ペプチドの製造方法。
項18. 前記組換えベクターが、N36結合ペプチドをコードするDNA分子と、酵母で発現可能なタンパク質をコードするDNA分子を融合して含み、前記N36結合ペプチドをコードするDNA分子の一端又は両端にペプチド結合を切断可能な認識部位をコードするDNA分子を含むことを特徴とする項15または16記載のN36結合ペプチドの製造方法。
項19. 前記認識部位がシステインであることを特徴とする項18記載のN36結合ペプチドの製造方法。
項20. 酵母で発現可能な前記タンパク質がアルファファクターであることを特徴とする項17〜19のいずれかに記載のN36結合ペプチドの製造方法。
項21. 項1〜20のいずれかに記載の製造方法により得られたN36結合ペプチドを有効成分とする哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルス感染症の予防又は治療剤組成物。
項22. 哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルスがヒト免疫不全ウイルス(HIV)であることを特徴とする項21記載の予防又は治療剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、宿主として、酵母、糸状菌又は大腸菌を利用することにより、N36結合ペプチドを安価かつ大量に製造することができる。また、本発明によれば、哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルスの予防又は治療に有用な組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルスとしては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、牛免疫不全様ウイルス(BIV)などが挙げられ、特に、HIVが挙げられる。
【0013】
本明細書において、「N36結合ペプチド」は、以下のものを意味する。
N36結合ペプチドの定義
下記のモジュール構造1〜3の少なくとも1種を含む、哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルスのN36に結合性を有するポリペプチドを意味する。モジュール構造とは、6個又は7個のアミノ酸からなるポリペプチドであり、以下の3種類が例示される。
(Y')m1−X1aX1b−A1−X1cX1dX1e−A2−(X'')n1 :モジュール構造1(MS1)
(Y')m2−X2a−A1A1−X2bX2c−A2A2−(X'')n2 :モジュール構造2(MS2)
(Y')m3−X3a−A1−X3bX3cX3d−A2−X' :モジュール構造3(MS3)
ポリペプチド中の各モジュールにおいて、A1は酸性アミノ酸を示し、好ましくはグルタミン酸、アスパラギン酸又はシステイン酸であり、より好ましくはグルタミン酸又はアスパラギン酸である。A2は塩基性アミノ酸を示し、好ましくはリジン、アルギニン、オルニチン又はヒスチジンであり、より好ましくはリジン、アルギニン又はオルニチンであり、更に好ましくはリジン又はオルニチンである。
【0014】
A1及びA2は、各モジュールにおいてそれぞれi位、i+4位の関係になっている。このi位、i+4位のアミノ酸がそれぞれ酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸という組み合わせ(又はその逆の組み合わせでも良い)にすることにより、両者間にsalt bridgeが形成され、本発明ポリペプチドのα−へリックスが形成されやすくなる。また、このsalt bridgeの双極子の方向が、ペプチド主鎖によって形成される双極子の方向と逆を向くのでヘリックスを形成した場合の分子の熱力学的安定性が増大する。
【0015】
上記酸性アミノ酸及び塩基性アミノ酸の組み合わせの中でも、グルタミン酸(E)−リジン(K)の組み合わせがより好ましい。
【0016】
上記酸性アミノ酸及び塩基性アミノ酸組み合わせは、各モジュール中に1又は2個存在するのが好ましい。
【0017】
また、N36結合ペプチドは、モジュール内のみに限られず、モジュール間(モジュール構造を超えた範囲)においても、上記のi位、i+4位の組み合わせを有していてもよい。N36結合ペプチドは、モジュール間におけるこの組み合わせを有することにより、α−へリックスを更に安定化させることができる。
【0018】
N36結合ペプチド中におけるアミノ酸X1a〜X3d(X1a、X1b、X1c、X1d、X1e、X2a、X2b、X2c、X3a、X3b、X3c及びX3d)は、同一又は異なった任意のアミノ酸を示す。
【0019】
上記任意のアミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、スレオニン、システイン、システイン酸、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、オルニチン、サルコシン、β−アラニン、ノルロイシン(Nle)、ナフチルアラニン(Nal)等が例示できる。
【0020】
なお、プロリンは、使用によりα−へリックス構造を破壊する可能性がある場合には使用しないほうが良いが、アミノ末端(以下、「N末端」という。)又はカルボキシ末端(以下、「C末端」という。)に位置してα−へリックス構造を破壊する可能性がない場合には使用しても良い。
【0021】
例えば、X1a、X2a又はX3aのアミノ酸としては、トリプトファン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、セリン、スレオニン、アスパラギン、バリン、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、グリシン、アラニン、ナフチルアラニン等が好ましい。
【0022】
X1b又は「c」の位置のアミノ酸、即ちX3bのアミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、スレオニン、システイン、システイン酸、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、オルニチン、サルコシン、β−アラニン、ノルロイシン、ナフチルアラニン等が例示できる。
【0023】
なお、プロリンは、使用によりα−構造を破壊する可能性がある場合には使用しないほうが良いが、N末端又はC末端に位置してα−へリックス構造を破壊する可能性がない場合には使用しても良い。
【0024】
X1c、X2b、X3c、X1d、X2c又はX3dのアミノ酸としては、例えば、トリプトファン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、バリン、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、グリシン、アラニン等が好ましい。
【0025】
X1eのアミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、スレオニン、システイン、システイン酸、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、オルニチン、サルコシン、β−アラニン、ノルロイシン、ナフチルアラニン等が例示できる。
【0026】
なお、プロリンは、使用によりα−へリックス構造を破壊する可能性がある場合には使用しないほうが良いが、N末端又はC末端に位置してα−へリックス構造を破壊する可能性がない場合には使用しても良い。
【0027】
X'は保護基を有していてもよい任意のアミノ酸、−OR1又は−NR2R3を示し、X''は−OR4又は−NR5R6を示す。
【0028】
アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、スレオニン、システイン、システイン酸、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、オルニチン、サルコシン、β−アラニン、ノルロイシン、ナフチルアラニン等が例示できる。
【0029】
なお、プロリンは、使用によりα−へリックス構造を破壊する可能性がある場合には使用しないほうが良いが、N末端又はC末端に位置してα−へリックス構造を破壊する可能性がない場合には使用しても良い。
【0030】
N36結合ペプチドが保護アミノ酸を有する場合、保護基としては以下のものが例示できる。エトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、4−メトキシベンジルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が例示できる。
【0031】
R1〜R6(R1、R2、R3、R4、R5及びR6)は、同一又は異なってH、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。
【0032】
アルキル基としては、例えば、C1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル等が挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基、置換基を有するフェニル基が例示できる。置換基としては、上で例示したアルキル基、ハロゲン原子、シアノ、カルボン酸、ニトロ、アミノ、アセチルアミノ、アルコキシ基、水酸基等が例示できる。置換基の数は特に限定されず、1〜5、好ましくは1〜3である。
【0033】
Y'はH、R7CO−、トルエンスルホニル基又はメタンスルホニル基を示す。R7はアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいベンジル基を示す。アルキル基は上述したものが使用できる。置換基の例示又は数も上で例示した通りである。
【0034】
n1は、モジュール構造1がC末端の場合は1であり、C末端の場合以外は0である。n2は、モジュール構造2がC末端の場合は1であり、C末端の場合以外は0である。
【0035】
m1は、モジュール構造1がN末端の場合は1であり、N末端の場合以外は0である。m2は、モジュール構造2がN末端の場合は1であり、N末端の場合以外は0である。m3は、モジュール構造3がN末端の場合は1であり、N末端の場合以外は0である。
【0036】
また、モジュール構造1〜3において、アミノ酸は−NH−CH(R')−CO−(R'はアミノ酸の側鎖を示す。)を意味するものとする。
【0037】
本発明のポリペプチドは、上記モジュール構造1〜3の少なくとも1種、好ましくは、モジュール構造1〜3を少なくとも1種以上含むポリペプチドである。本発明のポリペプチドが、モジュール構造として同じモジュール構造のみからなっていても良い。
【0038】
本発明のポリペプチドは、上記モジュール構造を例えば2〜15個、好ましくは3〜12個、更に好ましくは4〜10個含むことができ、特に5〜7が好ましい。各モジュール構造の結合順序は、N36結合ペプチドがα−へリックス構造をとり、N36と結合する限り限定されない。
【0039】
例えば、N36結合ペプチドが抗HIV剤として使用される場合の好ましい態様のうちの1つとして、モジュール構造1をアミノ末端(以下、「N末端」という。)に有するポリペプチドが挙げられ、その中でも、N末端に位置するモジュール構造1が「Trp-Z-Glu-Trp-Asp-Arg-Lys」(「Z」は、ノルロイシン、メチオニン又はグルタミン酸を表す。)であることが特に好ましい。
【0040】
また、もう1つの好ましい態様として、モジュール構造3がC末端に位置するポリペプチドも例示でき、その中でもX'が−NH2のものがより好ましい。
【0041】
N36結合ペプチドにおいて、各モジュール間にモジュール構造を形成するアミノ酸以外のアミノ酸が存在しないことが特に好ましい。しかしながら、本発明のポリペプチドがα−へリックスを形成し、N36と結合することができる限り、各モジュール構造間に7個の任意のアミノ酸からなる7アミノ酸挿入配列が含まれていても良い。N末端又はC末端であれば、1〜6個の任意のアミノ酸を付加してもよい。
【0042】
任意のアミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、スレオニン、システイン、システイン酸、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、オルニチン、サルコシン、β−アラニン、ノルロイシン、ナフチルアラニン等が例示できる。これらのアミノ酸は、上述した通り保護基を有していてもよい。
【0043】
なお、プロリンは、使用によりα−へリックス構造を破壊する可能性がある場合には使用しないほうが良いが、N末端又はC末端に位置してα−へリックス構造を破壊する可能性がない場合には使用しても良い。
【0044】
モジュール間に含まれてもよい7アミノ酸挿入配列としては、例えば「X2a−A2A2−X2bX2c−A1A1」(X2a、X2b、X2c、A1及びA2は前記で定義した通りである。)が好ましい態様として例示できる。
【0045】
この7アミノ酸挿入配列は、例えば、モジュール構造間であれば1個、N末端又はC末端であれば1〜3個、本発明のポリペプチドに含むことができる。
【0046】
更に、N36結合ペプチドは、そのN末端及び/又はC末端に、N36に結合し得る化合物を有することもできる。
【0047】
N36結合ペプチドは、アミノ酸を、例えば13又は14〜104又は105個、好ましくは13又は14〜83又は84個、より好ましくは13又は14〜48又は49個、特に好ましくは34又は35個有することができる。
【0048】
N36結合ペプチドにおいて使用されるアミノ酸は、L体(Lアミノ酸)が好ましいが、D体を用いても良い。D体を用いる場合には、全ての光学活性アミノ酸をD体にする必要がある。
【0049】
更には、本発明のポリペプチドにおけるペプチド結合(-NH-CO-⇔-N=C(OH)-)を、それと生物学的に等価な結合、例えば、アルケン(-CH=CH-)又はフルオロアルケン(-CF=CH-)とすることも可能である。アルケンについては、例えば、S. Oishi, T. Kamano, A. Niida, Y. Odagaki, N. Hamanaka, M. Yamamoto, K. Ajito, H. Tamamura, A. Otaka, and N. Fujii. Diastereoselective Synthesis of New Ψ[(E)-CH=CMe]- and Ψ[(Z)-CH=CMe]-type Alkene Dipeptide Isosteres by Organocopper Reagents and Application to Conformationally Restricted Cyclic RGD Peptidomimetics. J. Org. Chem. 2002, 67, 6162-6173.等に記載されており、フルオロアルケンについては、例えば、A. Otaka, H. Watanabe,A. Yukimasa, S. Oishi, H. Tamamura, and N. Fujii. New Access to a-Substituted (Z)-Fluoroalkene Dipeptide Isosteres Utilizing Organocopper Reagents under "Reduction-Oxidative Alkylation (R-OA)" Conditions. Tetrahedron Lett. 2001, 42, 5443-5446.等に記載されている。
【0050】
N36結合ペプチドの好ましい態様として、例えば以下の式で表されるポリペプチドが例示できる(MS1はモジュール構造1を示し、MS2はモジュール構造2を示す、MS3はモジュール構造3を示し、AAは7つのアミノ酸からなる挿入配列を示す。);
MS1−MS1−MS1−MS1−MS1、MS2−MS2−MS2−MS2−MS2、MS3−MS3−MS3−MS3−MS3、AA−MS1−MS1−MS1−MS1、MS1−AA−MS1−MS1−MS1、MS1−MS1−AA−MS1−MS1、MS1−MS1−MS1−AA−MS1、MS1−MS1−MS1−MS1−AA、AA−MS2−MS2−MS2−MS2、MS2−AA−MS2−MS2−MS2、MS2−MS2−AA−MS2−MS2、MS2−MS2−MS2−AA−MS2、MS2−MS2−MS2−MS2−AA、MS3−AA−MS3−MS3−MS3、MS3−MS3−AA−MS3−MS3、MS3−MS3−MS3−AA−MS3、MS3−MS3−MS3−MS3−AA、AA−MS3−MS3−MS3−MS3、MS1−MS2−AA−MS1−MS3、MS1−MS2−MS2−MS1−MS3、MS1−AA−MS2−MS1−MS3、MS1−MS2−MS1−AA−MS3、MS1−MS2−MS2−MS1−MS3、MS1−MS1−MS2−MS1−MS3、MS1−MS1−MS2−MS2−MS3、MS1−MS1−MS2−MS3−MS3、MS1−MS1−MS1−MS1−MS3、MS1−MS1−MS1−MS2−MS3、MS1−MS1−MS1−MS3−MS3、MS1−MS1−MS3−MS1−MS3、MS1−MS1−MS3−MS2−MS3、MS1−MS1−MS3−MS3−MS3、MS1−MS2−MS1−MS1−MS3、MS1−MS2−MS1−MS2−MS3、MS1−MS2−MS1−MS3−MS3、MS1−MS2−MS2−MS2−MS3、MS1−MS2−MS2−MS3−MS3、MS1−MS2−MS3−MS1−MS3、MS1−MS2−MS3−MS2−MS3、MS1−MS2−MS3−MS3−MS3、MS1−MS3−MS1−MS1−MS3、MS1−MS3−MS1−MS2−MS3、MS1−MS3−MS1−MS3−MS3、MS1−MS3−MS2−MS1−MS3、MS1−MS3−MS2−MS2−MS3、MS1−MS3−MS2−MS3−MS3、MS1−MS3−MS3−MS1−MS3、MS1−MS3−MS3−MS2−MS3、MS1−MS3−MS3−MS3−MS3。
【0051】
N36タンパク質の更に好ましい具体例としては、例えば、「Ac-Trp-Nle-Glu-Trp-Asp-Arg-Lys-Ile-Glu-Glu-Tyr-Thr-Lys-Lys-Ile-Lys-Lys-Leu-Ile-Glu-Glu-Ser-Gln-Glu-Gln-Gln-Glu-Lys-Asn-Glu-Lys-Glu-Leu-Lys-NH2」(SC34−a)、「Ac-Trp-Met-Glu-Trp-Asp-Arg-Lys-Ile-Glu-Glu-Tyr-Thr-Lys-Lys-Ile-Lys-Lys-Leu-Ile-Glu-Glu-Ser-Gln-Glu-Gln-Gln-Glu-Lys-Asn-Glu-Lys-Glu-Leu-Lys-NH2」(SC34−b)、「Ac-Trp-Nle-Glu-Trp-Asp-Arg-Lys-Ile-Glu-Glu-Tyr-Thr-Lys-Lys-Ile-Glu-Glu-Leu-Ile-Lys-Lys-Ser-Gln-Glu-Gln-Gln-Glu-Lys-Asn-Glu-Lys-Glu-Leu-Lys-NH2」(SC34(EK)−a)、「Ac-Trp-Met-Glu-Trp-Asp-Arg-Lys-Ile-Glu-Glu-Tyr-Thr-Lys-Lys-Ile-Glu-Glu-Leu-Ile-Lys-Lys-Ser-Gln-Glu-Gln-Gln-Glu-Lys-Asn-Glu-Lys-Glu-Leu-Lys-NH2」(SC34(EK)−b)、「Ac-Trp-Glu-Glu-Trp-Asp-Lys-Lys-Ile-Glu-Glu-Tyr-Thr-Lys-Lys-Ile-Glu-Glu-Leu-Ile-Lys-Lys-Ser-Glu-Glu-Gln-Gln-Lys-Lys-Asn-Glu-Glu-Glu-Leu-Lys-Lys-NH2」(SC35(EK))(「Ac」はアセチル基を示す。)等を例示することができる。
【0052】
上記のN36タンパク質は、HIVに有効な配列を中心に例示したが、サル免疫不全ウイルス(SIV)、牛免疫不全様ウイルス(BIV)に対するN36タンパク質のアミノ酸配列についても、対応する免疫不全をひき起こすレトロウイルスのC34ペプチド配列に従って、同様に設計することができる。
【0053】
N36タンパク質は、哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルスのgp41タンパク質中のα−へリックス構造を有するC34の3量体が結合する、α−へリックス構造を有するタンパク質であり、C34の3量体とN36の3量体が結合して6量体を形成するものである。
【0054】
N36結合ペプチドとしては、C34あるいはその誘導体が挙げられる。N36に結合性を有するC34誘導体としては、C34の水溶性・安定性を向上させるなどの目的でアミノ酸残基を置換または伸張・短縮した誘導体が含まれる。例えば特開2003-176298に記載されるような、6個又は7個のアミノ酸からなる複数のモジュール構造を有し、i位、i+4位のアミノ酸がそれぞれ酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸という組み合わせ(又はその逆の組み合わせでも良い)にすることにより、両者間にsalt bridgeが形成され、本発明ポリペプチドのα−へリックスが形成されやすくしたものが挙げられる。本明細書では、C34タンパク質のi位とi+4位のアミノ酸がそれぞれ酸性アミノ酸(Glu(E)を代表例として「E」と表示する)、塩基性アミノ酸(Lys(K)を代表例として「K」と表示する)で置換されたモジュール(X-EE-XX-KK)を1つ含有する誘導体を「SC34」誘導体、2つ以上含有する誘導体を「SC34EK」誘導体と表示することがある。N36結合ペプチドには、ペプチド末端がカルボキシル基やアミノ基のものや、融合タンパク質からN36結合ペプチドの切断の際に他の化学構造(アミド基やラクタム環など)に置換された誘導体も含まれる。また、得られた融合タンパク質・ペプチドのペプチド末端を、常法により他の化学構造に置換した状態でもよい。さらに、ペプチドの状態だけでなく、ペプチド結合をアルケン、フルオロアルケン、アルカンなどの炭素結合やエーテル結合などの構造で置換した誘導体の形でも本ペプチドは利用可能である。ペプチド結合の置換により、酵素による分解を受けにくくなり生体内での安定性の向上が期待できる。
【0055】
本発明実施例で使用するHIVのN36結合ペプチドをコードするアミノ酸配列を配列番号1(Trp-Met-Glu-Trp-Asp-Arg-Lys-Ile-Glu-Glu-Tyr-Thr-Lys-Lys-Ile-Glu-Glu-Leu-Ile-Lys-Lys-Ser-Gln-Glu-Gln-Gln-Glu-Lys-Asn-Glu-Lys-Glu-Leu-Lys)に示し、塩基配列を配列番号2に示す。
【0056】
本発明の製造方法で用いられる宿主としては、大腸菌、糸状菌、酵母が挙げられる。大腸菌としては、Escherichia coliに属するものが挙げられ,その中でもB株やK12株を親株とするものも使用できる。具体的には、市販のXL1−Blue株、BL−21株、JM107株、TB1株、JM109株、C600株、DH5α株、HB101株等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。糸状菌としては、各種麹菌(清酒麹、味噌麹、醤油麹、みりん麹、焼酎麹など)、アクレモニウム属、フミコーラ属、アスペルギルス属、トリコデルマ属、フザリウム属、ペニシリウム属、ムコール属、リゾープス属、ニューロスポラ属等に属する糸状菌が挙げられるが、これらに限定されるものではない。その中でもアスペルギルス属での生産は好ましく、具体的には、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・カワチ、アスペルギルス・ウサミ、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・フミガタス、アスペルギルス・ジャポニカス、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・ニヂュランス、アスペルギルス・アクレアタス、アスペルギルス・テレウス,アスペルギルス・パラシティカス、アスペルギルス・サイトイなどが挙げられるが、これらに限定されない。酵母としては、サッカロミセス属、ハンゼヌラ属、ピキア属、シゾサッカロミセス属、クリベロマイセス属に属する酵母が挙げられ、具体的には、サッカロミセス・セレビシエ、ピキア・パストリス、ピキア・メタノリカ、シゾサッカロミセス・ポンベ、ハンゼヌラ・アノマーラ、クリベロマイセス・ラクティスなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0057】
宿主が大腸菌である場合はプロモーターとして、例えば誘導酵素のプロモーター領域を使用することがより好ましく、具体的には、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、lppプロモーター、tacプロモーター、T7プロモーター、λPLプロモーターなどが好ましく、宿主が酵母である場合はプロモーターとして、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADH1プロモーター、GALプロモーターなどが好ましい。宿主が糸状菌である場合はプロモーターとして、糸状菌で機能しうるプロモーターすべてが含まれ、これらのプロモーターに配列改変を加えた改良型のプロモーターも含まれる。プロモーターとしては、解糖系に関する遺伝子、構成的発現に関する遺伝子、加水分解に関する酵素遺伝子などどれでもよく、具体的にはamyB glaA, agdA, glaB、TEF1, xynF1tannase gene, No.8AN, gpdA, pgkA, enoA, melO, sodM, catA, catBなどが好ましいがこれらに限定されるものではない。
【0058】
N36結合ペプチドは、単独で宿主で発現させた場合、各種高発現物質生産系を用いたとしても、目的のペプチドの収量が低くなる。従って、N36結合ペプチドを宿主で発現可能なポリペプチドと連結するか、あるいは、N36結合ペプチドを多量体(例えば3〜7量体)として発現させるのが好ましい。また、発現後に目的とするN36結合ペプチドを容易に回収できるように、ペプチド結合が切断可能な認識部位を介在させて、N36結合ペプチドと宿主で発現可能なポリペプチドを連結(融合)させるのが好ましい。
【0059】
N36結合ペプチドと融合させるのが好ましいポリペプチドは、宿主で発現可能なものであれば特に限定されないが、宿主が大腸菌の場合には、可視化できるDsRed、GFP、EGFP等が挙げられるが、更に好ましくはアフィニティ精製が可能なMBP、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、T7tag、Trxtag、Stag、CBDtag、Nustagなどが挙げられ、宿主が酵母の場合にはアルファファクター、インベルターゼ、酸性ホスファターゼ、各種の異種分泌タンパク質・グルコアミラーゼやαアミラーゼなどが挙げられ、宿主が糸状菌の場合にはフィターゼ、リアーゼ、ペクチナーゼのようなペクチン分解酵素、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、マンノシダーゼ、イソメラーゼ、インベルターゼ、トランスフェラーゼ、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、キチナーゼ、カタラーゼ、ラッカーゼ、フェノールオキシダーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、ペルオキシダーゼ、リパーゼ、ヒドロラーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、プロテアーゼのようなタンパク質分解酵素、アミノペプチダーゼ又はカルボキシペプチダーゼなどのタンパク質の構造遺伝子などが挙げられる。宿主で発現可能なポリペプチドは、全配列を有していてもよく、N36結合ペプチドの発現を可能にする限りその部分配列であってもよい。また、該ポリペプチドは宿主由来のポリペプチドであるのが好ましいが、宿主で発現可能である限り、宿主以外の生物由来のものあるいはその改変体であってもよい。
【0060】
該認識部位としては融合ペプチドの開裂可能な部位すべてを含み、プロセッシング酵素あるいは消化酵素などのプロテアーゼで切断可能なアミノ酸配列(2以上のアミノ酸からなる)、システインやメチオニンなど化学修飾剤、超音波やレーザー、熱などの物理的開裂により切断可能なアミノ酸などが挙げられる。認識部位を切断可能な消化酵素(プロセッシング酵素)としては、好ましくは第Xa因子、トロンビン、レニン、トリプシン、V8プロテアーゼ、Pseudomonasエンドプロテアーゼ、Arthrobacterリシルエンドペプチダーゼ等が挙げられ、認識部位としては、例えば第Xa因子認識配列であるIle−Glu−Gly−Argが挙げられる。化学修飾剤としては、Metを認識するCNBr、Asn, Asp, Gluを認識する希塩酸、システインを認識するDMAP-CNが挙げられる。例えば、N36結合ペプチドとポリペプチドとの連結部にシステイン残基を配置することで、DMAP-CNを用いたS-シアノ化法による切断を行うことができる。
【0061】
N36結合ペプチドは、宿主内に蓄積させてもよく、宿主外(培養液中、あるいは宿主が大腸菌の場合ペリプラズムを含む)に分泌させてもよい。
【0062】
本発明において、N36結合ペプチドと各宿主で発現可能なタンパク質との融合(キメラ)タンパク質は、これらをコードするDNAを直接あるいは必要に応じて認識部位をコードするDNAとをインフレームに連結したキメラDNAを含む組換えベクターで大腸菌、酵母、糸状菌などの宿主を形質転換し、得られる形質転換体を適当な培地中で培養することにより得られる。
【0063】
本発明において、N36結合ペプチドと融合されるポリペプチドをコードするDNAは、公知の遺伝子配列をもとに適当なオリゴヌクレオチドプライマー対を合成し、該遺伝子の宿主細胞または組織から抽出した全RNAもしくはポリA(+)RNA或いは染色体DNAを鋳型としてRT−PCR又はPCRを行うことによりクローニングすることができる。このとき、その後のベクターへのクローニングを容易にするために、用いるオリゴプライマーの末端に適当な制限酵素認識配列を付加することもできる。
【0064】
本発明において、N36結合ペプチドをコードするDNAは、そのアミノ酸配列をもとにして、宿主におけるコドンユーセージを考慮して塩基配列を決定し、DNA/RNA自動合成機を用いて、センス鎖の部分配列とアンチセンス鎖の部分配列を一部がオーバーラップするように合成し、PCR法によってより長い部分配列を二本鎖DNAとして得るという操作を繰り返すことによって、得ることができる。
【0065】
宿主が大腸菌の場合、N36結合ペプチドと融合されるポリペプチドは、シグナルペプチドを有しているものも可能であり、ペリプラズムあるいは菌体外に分泌されるタンパク質であってもよい。
【0066】
本発明で使用する組換えベクターは、N36結合ペプチドあるいは該N36結合ペプチドと各宿主で発現可能なタンパク質との融合(キメラ)タンパク質をコードするDNAが、大腸菌、酵母、糸状菌などの宿主で機能し得るプロモーターの制御下におかれた、任意の組換えベクターである。該プロモーター領域には、RNAポリメラーゼの結合位置を決定するコンセンサス配列である−35領域および−10領域が通常含まれるが、RNAポリメラーゼの結合位置を決定することができる他の配列が含まれていてもよい。所望の組換えタンパク質を大量に発現させる系として、誘導酵素のプロモーター領域を使用することがより望ましい。誘導物質(例えば、lacプロモーターではラクトースやIPTG)を添加するとリプレッサータンパク質のオペレーターへの結合が抑制され、プロモーターの制御下に置かれた遺伝子が大量に発現する。また、該組換えベクターは、翻訳開始コドンの上流にコンセンサスなShine−Dalgarno(SD)配列を含む。さらに、該組換えベクターは、N36結合ペプチドあるいは該N36結合ペプチドと各宿主で発現可能なタンパク質との融合(キメラ)タンパク質をコードするDNAの下流に転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含有する。ターミネーター領域としては、通常使用されている天然または合成のターミネーターを用いることができる。本発明の組換えベクターは、上記のプロモーター領域およびターミネーター領域に加えて、宿主内で自律複製し得る複製起点を含む。
【0067】
本発明の組換えベクターは、形質転換体選択のための選択マーカー遺伝子をさらに含有していることが好ましい。例えば、大腸菌においては、選択マーカー遺伝子としては、テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン等の各種薬剤に対する耐性遺伝子を用いることができるし、栄養要求性に関与する遺伝子変異を相補できる劣性の選択マーカーも使用できるがこれらに限定されるものでない。酵母においては、選択マーカー遺伝子として、ジェネティシンに対する耐性遺伝子を用いることができ、栄養要求性に関与する遺伝子変異を相補する遺伝子、LEU2, URA3, TRP1, HIS3などの選択マーカーも使用できるが、これらに限定されるものではない。糸状菌においては、選択マーカー遺伝子として、niaD(Biosci.Biotechnol.Biochem.,59,1795−1797(1995))、argB(Enzyme Microbiol Technol,6, 386−389, (1984)), sC (Gene, 84, 329−334, (1989))、ptrA (BiosciBiotechnol Biochem, 64, 1416−1421, (2000))、pyrG (BiochemBiophys Res Commun, 112, 284−289, (1983)), amdS (Gene, 26, 205−221, (1983))、オーレオバシジン耐性遺伝子 (Mol Gen Genet, 261, 290−296, (1999))、ベノミル耐性遺伝子(Proc Natl Acad Sci USA, 83, 4869−4873, (1986))及びハイグロマイシン耐性遺伝子 (Gene, 57, 21−26, (1987))からなる群より選ばれるマーカー遺伝子、ロイシン要求性相補遺伝子などが挙げられるが、これらに限定されない。また、宿主が栄養要求性変異株の場合には、選択マーカー遺伝子として当該栄養要求性を相補する野生型遺伝子を用いることもできる。
【0068】
組換えベクターの宿主細胞への導入は,従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、Cohenらの方法(塩化カルシウム法)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69:2110(1972)]、プロトプラスト法[Mol.Gen.Genet.,168:111(1979)]、コンピテント法[J.Mol.Biol.,56:209(1971)]、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
【0069】
N36結合ペプチドあるいは該N36結合ペプチドと各宿主で発現可能なタンパク質は、上記の形質転換体を適当な培地中で培養し、得られる培養物から分離して得ることができる。
【0070】
用いられる培地としては、炭素源としてグルコース、フルクトース、グリセロール、スターチなどの炭水化物を含有するものである。また無機もしくは有機窒素源(例えば硫酸アンモニウム,塩化アンモニウム,カゼインの加水分解物,酵母抽出物,ポリペプトン,バクトトリプトン,ビーフ抽出物等)を含んでいてもよい。これらの炭素源および窒素源は、純粋な形で使用する必要はなく、純度の低いものも微量の生育因子や無機栄養素を豊富に含んでいるので有利である。さらに所望により、他の栄養源[例えば、無機塩(例えば、二リン酸ナトリウムまたは二リン酸カリウム,リン酸水素二カリウム,塩化マグネシウム,硫酸マグネシウム,塩化カルシウム)、ビタミン類(例えば、ビタミンB1)、抗生物質(例えば、アンピシリン,カナマイシン)など]を培地中に添加してもよい。
【0071】
形質転換体の培養は、通常pH5.5〜8.5、好適にはpH6〜8、通常18〜40℃、好適には20〜35℃で、1〜150時間行われるが、これらは培養条件および培養規模によって適宜変更することができる。
【0072】
培養を大型タンク内で行う場合は、目的タンパク質の生産工程における生育遅延を回避するために、菌体を少量の培地に接種して1〜24時間前培養した後、得られた培養物を大型タンク中に接種するのが好ましい。
【0073】
目的のタンパク質が、誘導タンパク質遺伝子のプロモーター系によって制御される場合、誘導物質は培養開始時から添加しておいてもよいが、対数増殖期初期に添加するのがより好ましい。宿主の増殖は、培養液の660nmにおける吸光度を測定することによってモニタリングできる。例えば、lacプロモーターやtacプロモーターを使用する場合、660nmにおける吸光度が0.4〜0.8になった時点で、誘導物質としてイソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド(以下、IPTGと省略する場合もある)を、例えば0.1〜1.0mMとなるように添加することができる。誘導物質の添加時期や添加速度は、培養条件、培養規模、誘導物質の種類等によって適宜変更することができる。
【0074】
本発明の方法では、N36結合ペプチドあるいはそのキメラタンパク質の精製は、該ペプチド又はタンパク質にHistagなどのタグ/標識を結合させるか、あるいはGST、MBP(マルトース結合蛋白)などのタンパク質を結合させ、アフィニティークロマトグラフにより行うことができる。あるいは、ゲル濾過、電気泳動、等電点クロマトグラフィーなどの通常の精製操作により精製してもよい。
【0075】
次に、Histag、あるいはGST、MBP 、T7tag、Trxtag、Stag、CBDtag、Stag、Nustag(pET system manual、メルク社出版)などのタンパク質をN36結合ペプチドに連結したキメラタンパク質は、特異的プロテアーゼ(例えば、thrombinやenterokinaseなど)認識部位においてHistagなどの標識、および/またはGST、MBP、T7tag、Trxtag、Stag、CBDtag、Stag、Nustagなどのタンパク質を切断し、目的とするN36結合ペプチドを得ることができる。認識部位は遺伝子工学的にアミノ酸配列を作成し、配列特異的に認識する各種の切断酵素(特にプロテアーゼ)を作用させればよい。あるいは、認識部位としてシステインなどのアミノ酸を使用する場合には、DMAP-CNなどの化学修飾剤を使用して切断し、目的とするN36結合ペプチドを得ることができる。目的タンパク質が大腸菌のペリプラズムに分泌されている場合には、リゾチーム処理等によって菌体をスフェロプラスト化して目的タンパク質を溶液中に遊離させ、濾過もしくは遠心分離して菌体を除去した後、得られる上清をアフィニティクロマトグラフィーなどの精製手段に供することができる。また、菌体外に分泌されている場合も同様にアフィニティクロマトグラフィーなどの精製手段に供することができる。
【0076】
あるいは、目的タンパク質が宿主内に存在する場合には、培養物から宿主菌体を集め、菌体破壊等を行って、目的タンパク質を含む画分を得、これをアフィニティクロマトグラフィーなどの手法を用いて精製すればよい。
【0077】
本発明の方法により製造可能な有効成分を含む哺乳動物のエイズ予防又は治療剤は、有効成分としてN36結合ペプチドを含有するものであれば特に限定されない。また、本発明の哺乳動物のエイズ予防又は治療剤は、その使用形態に応じて、生物学的に許容される担体、賦形剤等を任意に含有できる。本発明の哺乳動物のエイズ予防又は治療剤は、常套手段に従って製造することができる。例えば、必要に応じて糖衣や腸溶性被膜を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは軟膏、硬膏等の外用剤、噴霧剤、吸入剤などとして経皮的、経鼻的あるいは経気管的に、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。
【0078】
本発明のエイズ予防又は治療剤の投与量は、症状などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき約100mg〜4000mg、好ましくは約200mg〜3000mg、より好ましくは約300mg〜2000mgで効き得る。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、たとえば注射剤の形では成人の移植患者(体重60kgとして)への投与においては、一日につき約0.00001gから1g、好ましくは約0.01mgから30mg、より好ましくは約0.1mgから20mg程度、さらに好ましくは約0.1mgから10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。この投与量は他の動物の場合も同様である。
【実施例】
【0079】
以下、実施例等により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない
実施例1:大腸菌を宿主としたSC34EKの生産
大腸菌宿主
遺伝子を形質転換する大腸菌(Escherichia coli)宿主としては、大腸菌Escherichia coli BL21(DE3)株(メルク社製)を使用した。
【0080】
タンパク質及びペプチド発現プラスミドの構築
(i)プラスミドの構築法
プラスミドの構築は以下の方法で全て行った。まず得られたPCR増幅産物をフェノール-クロロホルム抽出した後、エタノール沈殿を行った。続いて各プライマーに付与された制限酵素認識部位を対応する制限酵素で処理し、得られた遺伝子断片をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN社製)で抽出した。続いて、対応する制限酵素で処理したプラスミドの遺伝子断片と混和し、Ligation kit ver2.1(宝バイオ社製)を用いて16℃で20時間反応させることによりライゲーションさせた。その後、反応液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ社製)へ形質転換し、培養後にプラスミドを抽出し、制限酵素マッピング及び塩基配列を確認し、目的のものと合致しているプラスミドを採用した。
【0081】
(ii) pSC34EKプラスミドの構築(図1)
タンパク質発現プラスミドとして、pET23b+、pET41b+、pLysS(いずれもメルク社製)を利用した。Cys-SC34EK-Cysペプチドをコードする遺伝子断片(配列番号2)は、配列番号3と配列番号4で表されるポリヌクレオチドを使用してPCR反応により合成した。PCR反応は全てLA-Taq(宝バイオ社製)の付属酵素、緩衝液及び基質を用いた。
<PCR条件>
・96℃(1分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(30秒),5サイクル
・72℃(2分),1サイクル
続いて、この遺伝子断片(配列番号2)に制限酵素認識部位を付加するために配列番号5(CCCGGAATTCGAGCCTCGAGTGCTGGATGGAATGGGATCGC、下線部はEcoRI認識部位)と配列番号6(ACGCGTCGACGCATTTCAGTTCTTTTTCG、下線部はSalI認識部位)のプライマーを用いて、配列番号3と4から作成した遺伝子断片(配列番号2)を鋳型としてPCR反応を行った。
<PCR条件>
・96℃(1分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(30秒),30サイクル
・72℃(2分),1サイクル
得られた遺伝子断片Iを制限酵素EcoRIとSalIにて消化し、pET23b+プラスミドのマルチクローニングサイトの相当する同じ認識部位に導入し、Cys-SC34EK-CysとHistagを融合させたキメラタンパク質の発現可能なpSC34EKプラスミドを作成した。
【0082】
(ii) pEGFP-SC34EKプラスミドの構築
EGFP遺伝子断片(Biochem Biophys Res Commun. 1996 Oct 23;227(3):707-11)を配列番号7(CCGCGGATCCGATGGTGAGCAAGGGCGAGG、下線部はBamHI認識部位)と配列番号8(CCCGGAATTCGGCTTGTACAGCTCGTCCAT、下線部はEcoRI認識部位)のプライマー対を用いてEGFP遺伝子を鋳型としPCR反応を行った。
<PCR条件>
・96℃(1分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(1分),30サイクル
・72℃(2分),1サイクル
得られたEGFP遺伝子断片を制限酵素BamHIとEcoRIにて消化し、pSC34EKプラスミドのマルチクローニングサイトの相当する同じ認識部位に導入し、EGFPとCys-SC34EK-CysとHistagの順で融合させたキメラタンパク質の発現産物を得ることができるpEGFP-SC34EKプラスミドを作成した(図1)。
【0083】
(iii) pGST-SC34EK-Histagプラスミドの構築
前記遺伝子断片Iを制限酵素EcoRIとSalIにて消化し、pET41b+プラスミドのマルチクローニングサイトの相当する同じ認識部位に導入し、GSTとCys-SC34EK-CysとHistagの順で融合させたキメラタンパク質をコードするpGST-SC34EK-Histagプラスミドを作成した(図2)。
【0084】
(iv) pGST-SC34EKプラスミドの構築
Cys-SC34EK-Cysペプチドをコードする遺伝子断片の末端のCys残基を終止コドンに改変するために、配列番号5と配列番号9(TTTTTAAGCTTTCATTTCAGTTCTTTTTCGTTT、下線部はHindIII認識部位)のプライマーを用いて遺伝子断片(配列番号2)を鋳型としPCR反応を行った。
<PCR条件>
・96℃(1分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(30秒),30サイクル
・72℃(2分),1サイクル
得られた遺伝子断片IIを制限酵素EcoRIとHindIIIにて消化し、pET41b+プラスミドのマルチクローニングサイトの相当する同じ認識部位に導入し、GSTとCys-SC34EKを融合させたキメラタンパク質をコードするpGST-SC34EKプラスミドを作成した(図2)。
【0085】
タンパク質の発現
<薬剤による形質転換体の選択>
pET23b+、pSC34EK及びpEGFP-SC34EKプラスミドで宿主の大腸菌BL21(DE3)株を形質転換するときは、抗生物質であるアンピシリンで寒天培地及び液体培地で選択を行った。pET41b+、pGST-SC34EK-Histag及びpGST-SC34EKプラスミドで宿主の大腸菌BL21(DE3)株を形質転換するときは、抗生物質であるカナマイシンで寒天培地及び液体培地で選択を行った。pLysSプラスミドを更に宿主に導入する場合には、更に抗生物質であるクロラムフェニコールを追加して選択を行った。
【0086】
<大腸菌の培養とタンパク質の発現>
大腸菌BL21(DE3)株のコンピテントセル(メルク社製)に上記で得た各プラスミドを導入し形質転換を行った。反応後のコンピテントセルを抗生物質入りのLB寒天培地に塗布し、8時間37℃で培養を行い、コロニーを形成させた。コロニーをオートクレーブで滅菌した爪楊枝で軽く刺し、抗生物質入りのLB液体培地に植菌し、8時間37℃で振盪培養を行い前培養液とした。100mlから2000mlの抗生物質入りのLB液体培地にその50分の1量となる前培養液を加え、37℃5時間振盪することで本培養を行った。本培養では、1時間おきに菌体濃度を定量するためにABS660の吸光度を測定した。まず2時間37℃で振盪培養を行った後、0.1-1.0mMとなるようにIPTGを加え、各プラスミドに含まれるT7プロモーターを活性化させ、タンパク質の生産を誘導した。更に3時間37℃で振盪培養した後、遠心分離を行い、大腸菌を収菌した。2-20mlの10mMリン酸-ナトリウム緩衝液(pH6-8)に懸濁し、超音波破砕あるいは高圧破砕を行い、再度遠心分離を行い、その上澄みを上清サンプルとして回収した。
【0087】
<タンパク質の精製>
Histagを利用して精製を行うときは、ニッケルカラム(アマシャムファルマシア社製)を利用した。まずニッケルカラムを10-100mMリン酸バッファー(pH7.4-7.6)で平衡化し、続いて上清サンプルをタンパク質濃度(2-20mg/ml)になるように調製した後にカラムに吸着させた。続いて、10-100mMリン酸バッファー(pH7.4-7.6)、0.1-1.0M NaClと10-200mMイミダゾールを混和したバッファーで不純物のタンパク質をカラムから溶出させ、10-100mMリン酸バッファー(pH7.4-7.6)と300-1000mMイミダゾールバッファーで目的のタンパク質を溶出させた。この溶出液を精製サンプルとした。
【0088】
GST-tagを利用して精製を行うときはグルタチオンカラム(ピアス社製)を利用した。まずグルタチオンカラムを10-100mMリン酸バッファー(pH6.0-8.0)で平衡化し、続いて上清サンプルをタンパク質濃度(2-20mg/ml)になるように調製した後にカラムに吸着させた。続いて、10-100mMリン酸バッファー(pH7.4-7.6)、0.1-1.0M NaClと0.1-1mM還元型グルタチオンを混和したバッファーで不純物のタンパク質をカラムから溶出させ、10-100mMトリスバッファー(pH6.0-8.0)と1-20mM還元型グルタチオンバッファーで目的のタンパク質を溶出させた。この溶出液を精製サンプルとした。
【0089】
<各プラスミドを導入した形質転換株の培養状況>
pET23b+及びpSC34EKプラスミド(図1)で宿主の大腸菌BL21(DE3)株を形質転換し、寒天培地でコロニーを形成させた。pET23b+プラスミドを用いて形質転換した場合は、1-3mm程度のコロニーが観察されたが、pSC34EKプラスミドで形質転換を行った場合は、1mm以下のコロニーのみしか観察されず、pSC34EKプラスミド導入が何らかの形で生育を阻害していた。更にこのpSC34EKプラスミドが導入された大腸菌のコロニーをLB液体培地に植菌し前培養した後に、本培養を行った。1時間おきに菌体量を測定したところ2時間後でも吸光度は0.05-0.2程度であり、IPTG添加後は菌体の増殖がとまり、さらに凝集してしまい菌体が回収できなかった(図3)。それに対しpET23b+プラスミド導入された株は、本培養2時間目にはABS660の吸光度が0.4-0.8であり、IPTG添加後も順調に増殖し、5時間目には吸光度が2.0を超えた(図3)。これは、SC34EKペプチドを単独で発現させると大腸菌体内で生育を阻害する毒性があることを示しており、大腸菌でのSC34EKは単に大腸菌での高発現系に供するだけでは実現することができないことが明らかとなった。
【0090】
そこで、更に厳密な発現制御をするために、pLysSプラスミドをpSC34EKプラスミドと共に宿主大腸菌に形質転換を行った。プラスミドを導入された大腸菌を用いて前述と同様に前培養及び本培養を行った。本培養の2時間後には、吸光度が0.1-0.2と多少の改善が見られたが、IPTGを添加すると増殖が停止し凝集が観察された(図3)。pLysSプラスミドを宿主に存在させても改善されなかったことより、SC34EKペプチドはかなりの毒性があることが明らかとなった。
【0091】
そこで、大腸菌体内に悪影響を及ぼさない方法でSC34EKペプチドを生産させる必要があった。本発明者はEGFPタンパク質(Biochem Biophys Res Commun. 1996 Oct 23;227(3):707-11)とHistagの間にSC34EKペプチドが挟まれた形の融合タンパク質を発現させることを着想し、当該タンパク質発現用のpEGFP-SC34EKプラスミド(図1)を構築した。このプラスミドを用いて形質転換した場合は、pET23b+プラスミドを用いて形質転換した場合と同様に1-3mm程度のコロニーが観察され、pEGFP-SC34EK-Histagプラスミドの導入による生育阻害は観察されなかった。前述同様に、pEGFP-SC34EKプラスミドが導入された株を用いて、前培養と本培養を行った。本培養2時間目にはABS660の吸光度が0.4-0.8であり、IPTG添加後も順調に増殖し、5時間目には吸光度が2.0を超え、pET23b+プラスミド導入された株とほとんど差が見られなかった(図3)。SC34EKペプチドはEGFPタンパク質と融合された形で発現させると毒性が中和されることが示された。よって、大腸菌の生育を止めることなく、SC34EKの高生産が可能となった。
【0092】
次に、pEGFP-SC34EK-Histagプラスミドが導入された株を培養し、本培養で大腸菌BL21(DE3)株にタンパク質を生産させた後、大腸菌体を遠心分離にて回収し、菌体を破砕し、タンパク質の抽出を行った。抽出したタンパク質溶液を更に遠心分離し、上清サンプルと沈殿物をそれぞれ得た。上清サンプルをニッケルカラムにて精製を行い、精製サンプルを得た。得られた精製サンプルはUV(波長220-340nm)を照射すると緑色の蛍光を発し、EGFPタンパク質が含まれていることを示した。また、ニッケルカラムで精製できたことから、Histag領域もタンパク質に含まれることが分かった。また精製サンプルのSDS-PAGE解析したところ、EGFPタンパク質とHistagの間にSC34EKペプチドが挟まれたキメラタンパク質の予想分子量(35.3kDa)の位置にバンドが検出された(図4)。以上の結果から、EGFPタンパク質とHistagタンパク質は共に分解されずに大腸菌で生産されたことから、間に挟まれたSC34EKペプチド部分は分解されずに生産させることができたことが分かった。
【0093】
更に、別のタンパク質との融合でも成功するかを検討した。GST(グルタチオンSトランスフェラーゼ)タンパク質とHistagの間にSC34EKペプチドを挟んだ融合タンパク質の発現検討を行った。pET41b+プラスミドにはGSTタンパク質をコードする遺伝子が予め組み込まれており、SC34EKペプチドをコードする遺伝子断片を組み込み、pGST-SC34EK-Histagプラスミド(図2)を構築した。pEGFP-SC34EK-Histagプラスミドを用いた実験手順と同様の手法で、pGST-SC34EK-Histagプラスミドを用いて形質転換し、本培養で大腸菌BL21(DE3)株にタンパク質を生産させた後、培養後の大腸菌体を回収、破砕し、ニッケルカラムでタンパク質を精製した。コロニーの大きさ、吸光度の推移、GST-SC34EK-Histagタンパク質の生産量、及びHistag精製が可能であったこと、また精製したタンパク質はSDS-PAGE解析で予想分子量と一致した。以上のように、pGST-SC34EK-Histagプラスミドの実験はpEGFP-SC34EKプラスミドを用いた実験結果とほぼ同一の結果であることから、SC34EKペプチドはGSTタンパク質と融合された形で発現させても毒性が中和されることが示唆された。更に、ニッケルカラムで融合タンパク質が精製できたこと、また精製サンプルは、GSTタンパク質をtagとして(GST-tag)利用するグルタチオンカラムにも特異的な結合を示したこと、そして先のSDS-PAGE解析で予想分子量の一致からも、GSTタンパク質とHistagタンパク質との融合発現でも、SC34EKペプチド部分は分解されずに生産させることができたことが分かった(図5)。
【0094】
最後に、SC34EK ペプチドをHistag部分を取り除いてGSTタンパク質との融合のみでタンパク質を発現させることを検討した。具体的には、SC34EKペプチドをコードする遺伝子断片の末端のシステイン残基のコドンを停止コドンに変えたもの(遺伝子断片IIの制限酵素EcoRIとHindIIIによる消化物)をpET41b+に組み込んだ。上記のタンパク質をコードする発現プラスミド、pGST-SC34EKプラスミド(図2)を構築し、これを受託番号FERM P−20910として独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)に平成18年5月12日に寄託した。形質転換をし、培養した後、グルタチオンカラムで精製を行った。精製サンプルをSDS-PAGEで解析したところ予想分子量(37.1kDa)の位置にバンドが検出されたことから、GSTタンパク質とSC34EKペプチドの融合タンパク質はグルタチオンカラムで精製でき、SC34EKペプチド部分も分解されていないことが確認できた(図6)。
【0095】
このシステムの構築により、SC34EKペプチド1tの生産にかかるコストは、大腸菌生産により10億円となり、化学合成で1t生産するのにかかるコスト100兆円に比較して、10万分の1のコストで生産できるようになる。
【0096】
実施例2:酵母を宿主としたSC34EKペプチドの生産
宿主
・清酒酵母;
・K7-U;(a/α,ura3/ura3)
きょうかい7号酵母を、EMS変異処理により、5’−FOA培地(2%Glucose, 0.67%Yeast nitorgenbaseで生育するコロニーを選択し、ura3変異株であることを確認し、宿主として使用した。
・K7-T;(a/α,trp1/trp1)
きょうかい7号酵母 トリプトファン要求性でtrp1変異株
・実験室酵母;
YNN27(α,trp1、ura3, gal1)を宿主として用いた。
SC34EKペプチド組換えベクターの構築
分泌型ベクター
・YEp-FLAG1ベクター(Sigma)
・pRS424-ADH1(TRP1マーカー)
・pRS426-ADH1(URA3マーカー)
染色体組み込み型ベクター
・pRS406(URA3マーカー)
SC34EKペプチド5連の作製に用いたプライマー(1);YEp-FLAGベクター
SC34EK-5S
配列番号10(GAGAAGAACGAGAAGGAGCTCAAGTGCTGGATGGAGTGGGACCGCAAGGATCGAGGAGTACACCAAGAAGATCGAGGAGCTCATCAAGAAGTCCCAGGAGCAGCAG)
SC34EK-5A
配列番号11(GATCTTGCGGTCCCACTCCTACCAGCACTTGAGCTCCTTCTCGTTCTTCTCCTGCTGCTCCTGGGACTTCTTGATGAGCTCCTCGATCTTCTTGGTGTACTCCTC)
【0097】
<PCR条件>
・96℃(5分)1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(5分),20サイクル
・72℃(7分),1サイクル
PCRはLA-Taq(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
【0098】
その結果、目的とするサイズのDNA断片が得られた。
【0099】
PCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出した。
【0100】
精製したPCR断片を鋳型として用い、次のPCRを行った。
リンカー付与
N5-F(N末端)
配列番号12(GGAATTCGTCGACTTACTC)
C5-R(C末端)
配列番号13(GGAATTCGTCGACTTACTC)
【0101】
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),50℃(30秒),72℃(5分),20サイクル
・72℃(7分),1サイクル
XhoI,SalIで切断しQIAquick PCR Purification kit(QIAGEN)で精製した。
【0102】
YEpFLAGのXhoI,SalIで切断し、精製したPCR断片をライゲーションし、JM109に形質転換し、LBAプレートで成育したコロニーより、目的とする断片が挿入されたベクターを得た。
SC34EKペプチド1連の作製に用いたプライマー(2);YEp-FLAGベクター
SC34EK-1YF
配列番号14(TGTTGGATGGAATGGGATAGGAAGATTGAAGAATACACTAAGAAGATTGAAGAATTGATTAAGAAGTCTCAAGAA)
SC34EK-1YR
配列番号15(ACACTTCAATTCCTTTTCGTTCTTTTCTTGTTGTTCTTGAGACTTCTTAATCAATTCTTCAATCTTCTTAGTGTA)
SC34EK-1YF,SC34EK-1YRプライマーをもちいて、KOD-Plus-DNA Polymerase(TOYOBO)によりPCRを行った。
【0103】
<PCR条件>
・94℃(2分),1サイクル
・94℃(15秒),68℃(30秒),30サイクル
得られた、PCR断片をQIAquick PCR Purification kit(QIAGEN)で精製し、次のPCRの鋳型としてもちい、KOD-Plus-DNA PolymeraseによりPCRを行った。
SC34EK-F2(EcoRI)
配列番号16(CCCGGAATTCTGTTGGATGGAATGGGATAG)
SC34EK-R2(SalI)
配列番号17(ACGCGTCGACACACTTCAATTCCTTTTCGTTC)
【0104】
<PCR条件>
・94℃(2分),1サイクル
・94℃(15秒),50℃(30秒),68℃(30秒),30サイクル
・68℃(30秒),1サイクル
適切なサイズのPCR断片が得られ、EcoRI,SalI制限酵素によって切断した。切断したDNA断片をQIAquick PCR Purification kit(QIAGEN)で精製した。次に、YEp-FLAGベクターをEcoRI,SalIで切断したベクターとライゲーションキットVer.2(宝バイオ)にて、ライゲーションし、コンピテントセルJM109に形質転換した。得られたコロニーから、目的とするDNA断片が挿入されたプラスミドを精製した。
【0105】
酵母の形質転換
K7-T株とYNN27株に形質転換した。形質転換方法は、常法によって行った。
【0106】
形質転換体を、最小培地+アミノ酸mix(-Trp)に2%Agarを添加した平板寒天培地にまき(2% Glucose, 0.67%YNB;Yeast nitrogen base),amino acid mix(40mg/l adenine,20mg/l L-arginine, 100mg/ml l-aspartic acid, 100mg/glutamic acid, 20mg/l L-histidine, 60mg/l L-leucine, 30mg/l L-lysine, 20mg/l l-methionine, 50mg/l L-phenylalanine, 375mg/l L-serine, 200mg/l threonine, 30mg/l L-tyrosine, 150mg/l L-valine, 20mg/l uracil)に生育したコロニーを、同じ培地でシングルコロニーとした。
【0107】
SC34EKペプチド生産の誘導
液体培地 最小培地+アミノ酸mix(-Trp)で30℃振盪1-2日間培養し、誘導培地3%Glycerol,2%EtOH、0.67%YNB+amino acid(-trp)で2日間振盪培養した。
【0108】
培養液をフィルターろ過(MW3000)MIRIPOREを用いて遠心し、培養液を50倍濃縮し、電気泳動とウエスタンブロッティングに供した。電気泳動は図7に示した。
分泌型ベクター;pRS424-ADH1(TRP1 Marker)、pRS426-ADH1(URA3 Marker)
Alpha-factor signal sequenceとSC34EKペプチド
PAF1Fw;配列番号18(ATTAAAAGAATGAGATTTCCTTCAATTTTT)
PAF2Rv;配列番号19(GCTGGCAATAGTAGTATTTATAAACAATAA)
テンプレートは、K7のゲノムDNAを用いた
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),50℃(30秒),72℃(5分),20サイクル
・72℃(7分),1サイクル
PCRは、LA-Taq(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
【0109】
その結果、目的とするサイズのDNA断片が得られた。PCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit (QIAGEN)で抽出した。
【0110】
精製したPCR断片を鋳型として用い、次のPCRを行った。
PAF2Fw;配列番号20(CGGGATCCATTAAAAGAATGAGATTTCCTT)
PAF2Rv;配列番号21(CGGAATTCGCTGGCAATAGTAGTATTTATA)
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),50℃(30秒),72℃(5分),20サイクル
・72℃(7分),1サイクル
PCRは、LA-Taq(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
【0111】
その結果、目的とするサイズのDNA断片が得られ,PCR断片をBamHIとEcoRIで切断した。QIAquick PCR Purification kit(QIAGEN)で精製し、ライゲーションに用いた。
SC34EK1連ペプチドの増幅
SC34EKペプチド1連の作製に用いたプライマー(2)でPCR増幅と精製した断片を鋳型として、PCRを行った。
PAF3Fw;配列番号22(ACGCGTCGACTGTTGGATGGAATGGGATAG)
PAF3Rv;配列番号23(TGCGGTCGACACACTTCAATTCCTTTTCGTT)
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),50℃(30秒),72℃(5分),20サイクル
・72℃(7分),1サイクル
PCRは、LA-Taq(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
【0112】
得られた目的のPCR断片をSalIで切断し、QIAquick PCR Purification kit(QIAGEN)で精製した。次のライゲーションに用いた。
【0113】
精製した断片を、pRS416-ADH1のBamHI、EcoRIで制限酵素処理し、PAF2Fw−PAF2RvのPCRで得られた断片(BamHI-EcoRI)をLigation Kit.Ver2(宝バイオ)でライゲーションした。大腸菌JM109に形質転換し、目的とするプラスミドを得た(pRS416-ADH-AF)。プラスミドを精製し、SalI制限酵素で消化しPaf3Fw-PAF3Rvのプライマーで得られた断片(SalI制限酵素処理)をライゲーションした。大腸菌JM109に形質転換し目的とするプラスミドを得た(pRS416-GPDAFS1)。
【0114】
このプラスミドを、K7Δura株、YNN27株に形質転換した。
SC34EK5連ペプチドの増幅
PAF4Fw;配列番号24(ACGCGTCGACGAGAAGAACGAGAAGGAGCT)
PAF4Rv;配列番号25(CGGAATTCGCGATCTTGCGGTCCCACTCCTA)
SC34EKペプチド5連の作製に用いたプライマー(1)で増幅したPCR断片を鋳型としてPCRを以下の条件で行った。
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),55℃(30秒),72℃(5分),20サイクル
・72℃(7分),1サイクル
PCRは、LA-Taq(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
【0115】
得られた断片を、SalI制限酵素処理し、QIAquick PCR Purification kit(QIAGEN)で精製した。精製した断片を、pRS416-ADH-AFをSalIで制限酵素処理し、SalI断片とともにライゲーションした。大腸菌JM109に形質転換し、目的とするプラスミドを得た。プラスミドを精製したのち、酵母YNN27,K7Δuraに形質転換した。
組み込み型ベクター;pRS406(URA3マーカー)
分泌型ベクターpRS424-SC34EKのαfactorシグナル配列とSC34EK1連BamHI-SalI断片を切り出し、pRS406のBamHI-SalIサイトに挿入した。JM109株に形質転換し、LBAで生育するコロニーより、目的のプラスミドを得た。プラスミドを精製し、酵母の形質転換に用いた。
酵母の形質転換
K7-U株とYNN27株に形質転換した。形質転換方法は、常法によって行った。
【0116】
形質転換体を、最小培地+アミノ酸mix(Δura)に2%Agarを添加した平板寒天培地に塗布し(2% Glucose, 0.67%YNB;Yeast nitrogen base),amino acid mix -Ura(40mg/l adenine,20mg/l L-arginine, 100mg/ml l-aspartic acid, 100mg/glutamic acid, 20mg/l L-histidine, 60mg/l L-leucine, 30mg/l L-lysine, 20mg/l l-methionine, 50mg/l L-phenylalanine, 375mg/l L-serine, 200mg/l threonine, 30mg/l L-tyrosine, 150mg/l L-valine, 200mg/l tryptophan)に生育したコロニーを、同じ培地でシングルコロニーした。
SC34EKペプチド生産の誘導
液体培地 最小培地+アミノ酸mix(-Ura)で30℃振盪1-2日間培養し、誘導培地3%Glycerol,2%EtOH、0.67%YNB+amino acid(-Urp)で2日間振盪培養した。
【0117】
培養液をフィルターろ過(MW3000)MIRIPOREを用いて遠心し、50倍濃縮した。
ウエスタンブロッティング
SC34EK1連ペプチドとSC34EK5連ペプチドを抗SC34EK抗体を用いて検出した。電気泳動ゲルは16% Wide-PAGE mini Peptide-PAGE mini(Tricine系)(TEFCO),泳動バッファー;上部バッファー(12.1gトリス、17.9gトリシン、1.0gSDSを1000mlとする)下部バッファー24.2gトリス-HCl pH8.9を1000ml)で125mV一定で、1.5時間泳動した。泳動したゲルをセミドライブロッティング装置で(Amersham)65mA1時間で、Hybond-P(Amersham)にトランスファーした。トランスファー後、抗SC34EK抗体、抗ウサギ抗体を用いて、ECL-Plus Western Blotting Detection system(Amersham)で検出した。その結果、SC34EK5連ペプチドは1つの特異的なバンドとして検出され、さらにSC34EK1連ペプチドが検出できた。(図8)
染色体組み込み型は、目的とするサイズよりも大きなバンドとして検出された。(図9)
抗体作製
抗体作製に抗原として用いた合成ペプチド
配列番号26:Ac-Cys(SH)-Gly-Gly-Gly-Trp-Met-Glu-Trp-Asp-Arg-Lys-Ile-Glu-Glu-Tyr-Thr-Lys-Lys-Ile-Glu-Glu-Leu-Ile-Lys-Lys-Ser-Gln-Glu-Gln-Gln-Glu-Lys-Asn-Glu-Lys-Glu-Leu-Lys-NH2
分子量 4670.2Da
上記の合成ペプチドを用いて、カスタム抗体作製を受託し(Invitrogen)、ウサギに免疫することで抗SC34EK抗体を作製した。合成ペプチドを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより抗SC34EK抗体を精製した。
【0118】
実施例3:麹菌を宿主としたSC34EKの生産
グルコアミラーゼと融合させたSC34EKの麹菌における発現
麹菌宿主
遺伝子を形質転換する麹菌(Aspergillus oryzae)宿主としては、麹菌Aspergillus oryzae O-1013(FERM P-16528として独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている(寄託日:平成9年11月20日))から公知の紫外線照射変異導入法を用いて取得した、ロイシン要求性変異麹菌株Aspergillus oryzae leu-5(独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P-20079として寄託している(寄託日:平成16年6月7日))を使用した。
選択マーカープラスミド
選択マーカーとしては、上記ロイシン要求性変異麹菌株Aspergillus oryzae leu-5のロイシン要求性変異を相補できる、β−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードするAspergillus nidulans由来の遺伝子ANleu2(配列番号27)を利用した。ANleu2は、イントロン2つを含む遺伝子であり、370アミノ酸残基からなるβ−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子である。配列番号27の塩基番号1〜319はプロモーター領域、塩基番号320〜1549はオープンリーディング領域、塩基番号1550〜3560はターミネーター領域である。また配列番号27の320〜1549までのオープンリーディング領域のうち、2つのイントロンは、795〜851、1273〜1332である。アミノ酸配列は配列番号28に示した。ANleu2はアスペルギルス・ニドランス(Aspergillus nidulans)ゲノムDNAを鋳型としてLA-Taq(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。ANleu2用にプライマーP1;配列番号29(5’-TGCCAGTTTTACCAGCTTGACC-3’)及びプライマーP2;配列番号30(5’-CTTTCATGTCATGTCCCTAGAAG-3’)を使用した。
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(5分),30サイクル
・72℃(7分),1サイクル
その結果、それぞれ適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をフェノール−クロロホルム抽出した後、エタノール沈殿を行った。得られた増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出した。切り出したmetA, hisA, ANhisA, ANleu2, 及びANleu2B遺伝子断片は、LA-Taqの増幅産物よりその末端にアデニンが追出しており、TベクターであるpGEM-T(プロメガ社)へ、T4 DNAリガーゼ(プロメガ社)を用いて4℃で20時間処理することによりライゲーションさせた。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリン、IPTG及び X-galを添加したLB培地を用いて白色コロニーとして単離された。
【0119】
各形質転換体から、常法に従いプラスミドを調製した。ANleu2がサブクローニングされたプラスミドをpANLAと命名した。
【0120】
麹菌の形質転換
麹菌ロイシン要求性変異株Aspergillus oryzae leu-5をpANLAにより形質転換する手法は、常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法を用いた(Mol. Gen. Genet., 218, 99-104, (1989))。プロトプラストは、GPY(2% グルコース、1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス)で30℃、1日間培養したAspergillus oryzae leu-5をガラスフィルター3G1で集菌し、0.8M NaClを含むプロトプラスト化溶液(5mg/mlヤタラーゼ(宝バイオ)、5mg/mlセルラーゼ(和光純薬)、5mg/ml lysing enzyme(sigma)も含む)中で、30℃で3時間反応させた。ガラスフィルター3G2でろ過したろ液をプロトプラスト液として、常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法に用いた。この常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法におけるプラスミドなどの添加段階においては、pANLAなどの選択マーカーを含むプラスミドと、これとは異なる選択マーカーを含まない任意のプラスミドを任意の割合で添加することにより、最小培地で選択した形質転換体の染色体に両プラスミド断片を挿入することが可能である、常法コトランスフォーメーション(Cotransformation)が可能である。形質転換体の選択培地としては、Czapek-Dox最小培地(グルコース3%、硫酸マグネシウム0.1%、リン酸水素2カリウム0.1%、塩化カリウム0.05%、硝酸ナトリウム0.3%、硫酸鉄0.00001M、0.8M NaCl、1.5%寒天、pH6.3)を用いた。30℃で7日間培養した後、複数の形質転換体が得られた。
【0121】
1)液体培養における発現
発現プラスミドの構築
はじめに、麹菌での液体培養でのSC34EKの生産を行うために、麹菌のsodMプロモーター下流に開始コドンATGとその直後にSC34EKをコードする遺伝子を連結させたが、菌体内あるいは菌体外にそのSC34EKを確認することができず、麹菌でのSC34EKの生産は単純に麹菌の高発現系を利用するだけではうまくいかないことが明らかとなった。
【0122】
麹菌の液体培養で強力に発現するsodMプロモーター支配下で、グルコアミラーゼ遺伝子glaBのcDNAとSC34EKに相当する遺伝子の融合遺伝子の発現を試みた。sodMプロモーターの配列は配列番号31、グルコアミラーゼ遺伝子glaBのcDNA配列は配列番号32、SC34EKをコードする遺伝子の配列は配列番号33、glaBターミネーターは配列番号34である。また、glaBのcDNA配列番号32をもとに推測されるアミノ酸配列は配列番号35、SC34EKをコードする遺伝子配列番号33をもとに合成されるアミノ酸配列は配列番号36に示した。なお、配列番号36の1番目のCysと36番目のCysはケミカルクリバレッジによる切り出しのために設けたアミノ酸残基であり、配列番号36の2から35番目までの配列が抗HIV吸着阻害活性に必要な本体である。
【0123】
SC34EKをglaBのグルコアミラーゼ融合させる場合、例えばsodMプロモーター下流に、glaB cDNAの開始コドン以下を連結し、そのglaB cDNA中の特定のアミノ酸配列に相当する塩基配列の一部を、SC34EKをコードする遺伝子に置換し、さらにglaB cDNAの終止コドンの下流にglaBターミネーターを挿入する手法が考えられる。例えば、glaB型グルコアミラーゼの配列番号35の331番目のグリシンから365番目のグルタミンまでを、配列番号36の配列に置換する手法が考えられるが、置換する場所は当該部位に限定されず、また置換でなく挿入する形態も可能である。
【0124】
上記のglaB型グルコアミラーゼの配列番号35の331番目のグリシンから365番目のグルタミンまでを、SC34EKの配列番号36に置換する手法について説明する。まず、第一段階のPCRとして、sodMプロモーターは常法により取得した麹菌Aspergillus oryzae O-1013ゲノムDNAを鋳型にプライマーP3(5’-TTATGTACTCCGTACTCGGTTGAATTATTA-3’;配列番号37)とP4(5’-TGTTCCGCATTTTGGGTGGTTTGGTTGGTA-3’ ;配列番号38)を用いて増幅、glaB cDNA(配列番号32)の1〜991までをglaB cDNAがサブクローニングされたプラスミドを鋳型にプライマーP5(5’-ACCACCCAAAATGCGGAACAACCTTCTTTT-3’ ;配列番号39)とプライマーP6(5’-CCATCCAGCACCACTGCCGCGGCCTTTCCT-3’ ;配列番号40)を用いて増幅、SC34EK(配列番号33)の全長を配列番号33がサブクローニングされたプラスミドを鋳型にプライマーP7(5’-GCGGCAGTGGTGCTGGATGGAGTGGGACCG-3’ ;配列番号41)とプライマーP8(5’-TTCACTTGACGCACTTGAGCTCCTTCTCGT-3’ ;配列番号42)を用いて増幅、glaB cDNA(配列番号32)の1097〜1482までをglaB cDNAがサブクローニングされたプラスミドを鋳型にプライマーP9(5’-GCTCAAGTGCGTCAAGTGAACGTCAGTGAA-3’ ;配列番号43)とプライマーP10(5’-GAAAGTACATCTACCACGACCCAACAGTTG-3’ ;配列番号44)を用いて増幅、glaBターミネーター全長(配列番号34)をプライマーP11(5’-GTCGTGGTAGATGTACTTTCCAGTGCGTGT-3’ ;配列番号45)とプライマーP12(5’-GCGAACAGAGCTATACCTTCACATACCTTC-3’ ;配列番号46)を用いて増幅した。PCRは、LA-Taq(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
【0125】
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(5分),30サイクル
・72℃(7分),1サイクル
その結果、それぞれ4つの適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られた4つのPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出した。抽出した4つのサンプルを1つにまとめ、エタノール沈殿を行った。次に、4つのサンプルの混合物を鋳型として、プライマーP3, P12を用いて、2段階目のPCRを行った。PCRは、LA-Taq(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
【0126】
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),68℃(5分),30サイクル
・72℃(7分),1サイクル
その結果、単一の適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出した。本PCR産物はその末端にアデニンが突出しており、TベクターであるpGEM-T(プロメガ社)へ、T4 DNAリガーゼ(プロメガ社)を用いて4℃で20時間処理することによりライゲーションさせた。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリン、IPTG及び X-galを添加したLB培地を用いて白色コロニーとして単離された。glaB型グルコアミラーゼの配列番号35の331番目のグリシンから365番目のグルタミンまでを、配列番号36の配列に置換した融合遺伝子を発現させるための遺伝子を含むプラスミドをpMGSC1とした。
【0127】
また対照として、グルコアミラーゼ全長を液体培養で生産させるために必要なプラスミドを構築した。構築方法は、sodMプロモーターを常法により取得した麹菌Aspergillus oryzae O-1013ゲノムDNAを鋳型にプライマーP3(5’-TTATGTACTCCGTACTCGGTTGAATTATTA-3’ ;配列番号37)とP4(5’-TGTTCCGCATTTTGGGTGGTTTGGTTGGTA-3’ ;配列番号38)を用いて増幅、glaB cDNA(配列番号32)の全長までをglaB cDNAがサブクローニングされたプラスミドを鋳型にプライマーP5(5’-ACCACCCAAAATGCGGAACAACCTTCTTTT-3’ ;配列番号39)とプライマーP10(5’-GAAAGTACATCTACCACGACCCAACAGTTG-3’ ;配列番号44)を用いて増幅、glaBターミネーター全長(配列番号34)を麹菌Aspergillus oryzae O-1013ゲノムDNAを鋳型にプライマーP11(5’-GTCGTGGTAGATGTACTTTCCAGTGCGTGT-3’ ;配列番号45)とプライマーP12(5’-GCGAACAGAGCTATACCTTCACATACCTTC-3’ ;配列番号46)を用いて増幅した。PCRは、LA-Taq(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
【0128】
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(5分),30サイクル
・72℃(7分),1サイクル
その結果、それぞれ3つの適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られた4つのPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出した。抽出した3つのサンプルを1つにまとめ、エタノール沈殿を行った。次に、3つのサンプルの混合物を鋳型として、プライマーP3, P12を用いて、2段階目のPCRを行った。PCRは、LA-Taq(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
【0129】
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),68℃(5分),30サイクル
・72℃(7分),1サイクル
その結果、単一の適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出した。本PCR産物はその末端にアデニンが突出しており、TベクターであるpGEM-T(プロメガ社)へ、T4 DNAリガーゼ(プロメガ社)を用いて4℃で20時間処理することによりライゲーションさせた。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリン、IPTG及び X-galを添加したLB培地を用いて白色コロニーとして単離された。glaB型グルコアミラーゼの配列番号35の全長を発現させるための遺伝子を含むプラスミドをpMG1とした。
【0130】
形質転換体の液体培養と生産物の確認
麹菌ロイシン要求性変異株Aspergillus oryzae leu-5をpANLA単独の形質転換、若しくはpANLAとpMGSC1双方のコトランスフォーメーション、あるいはpANLAとpMG1双方のコトランスフォーメーションにより形質転換する手法は、常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法を用いた。得られた形質転換体の遺伝子の有無は、PCRにより確認した。
【0131】
得られた形質転換体については、SC34EKをコードする遺伝子の有無をPCRにより確認した。その結果、pMGSC1が形質転換された株と、対照としてpMG1が形質転換された株及びpANLAのみが形質転換された株を取得することができた。
得られた形質転換体を40mlのGPY液体培地で30度3日間培養後、ガラスフィルターで細胞を収集し、得られた細胞を、100mlのCzapek-Dox液体培地(グルコース3%、硫酸マグネシウム0.1%、リン酸水素2カリウム0.1%、塩化カリウム0.05%、硝酸ナトリウム0.3%、硫酸鉄0.00001M、pH6.3)で1日間培養した。1日後の培養液10μlをSDS-PAGEに供した結果、クマシー染色により、図10の黒線の枠内に示した部分においてグルコアミラーゼとSC34EKの融合タンパク質と考えられるタンパク質が分泌発現されていることが示された。さらにこれを確認するために、図11においてpANLAのみの形質転換体とpMGSC1の形質転換体4(図10の4のレーンに相当)の培養液のウエスタン解析を行った結果、pMGSC1の形質転換体にのみシグナルが検出され、SC34EKが融合タンパク質として菌体外に分泌生産されていることが示された。また、抗SC34EK抗体を用いたELISAによる定量を行った結果、SC34EKのみのペプチドに相当する分泌量は1Lの培地当たり約100mg程度であった。よって、麹菌の液体培養を行うことにより、SC34EKの大量分泌生産が可能となることが明らかとなった。
【0132】
2)固体培養における発現
発現プラスミドの構築
麹菌の固体培養で強力に発現するglaBプロモーター支配下で、グルコアミラーゼ遺伝子glaBのcDNAとSC34EKに相当する遺伝子の融合遺伝子の発現を試みた。glaBプロモーターの配列は配列番号47、グルコアミラーゼ遺伝子glaBのcDNA配列は配列番号32、SC34EKをコードする遺伝子の配列は配列番号33、glaBターミネーターは配列番号34である。また、glaBのcDNA配列番号32をもとに推測されるアミノ酸配列は配列番号35、SC34EKをコードする遺伝子配列番号33をもとに合成されるアミノ酸配列は配列番号36に示した。なお、配列番号36の1番目のCysと36番目のCysはケミカルクリバレッジによる切り出しのために設けたアミノ酸残基であり、配列番号36の2から35番目までの配列が抗HIV吸着阻害活性に必要な本体である。
【0133】
SC34EKをglaBのグルコアミラーゼ融合させる場合、例えばsodMプロモーター下流に、glaB cDNAの開始コドン以下を連結し、そのglaB cDNA中の特定のアミノ酸配列に相当する塩基配列の一部を、SC34EKをコードする遺伝子に置換し、さらにglaB cDNAの終止コドンの下流にglaBターミネーターを挿入する手法が考えられる。例えば、glaB型グルコアミラーゼの配列番号35の331番目のグリシンから365番目のグルタミンまでを、配列番号36の配列に置換する手法が考えられるが、置換する場所は当該部位に限定されず、また置換でなく挿入する形態も可能である。
【0134】
上記のglaB型グルコアミラーゼの配列番号35の331番目のグリシンから365番目のグルタミンまでを、SC34EKの配列番号36に置換する手法について説明する。まず、第一段階のPCRとして、glaBプロモーターは常法により取得した麹菌Aspergillus oryzae O-1013ゲノムDNAを鋳型にプライマーP13(5’-TCTCAACCCAAGTAACGATGAAGAATGGCT-3’ ;配列番号48)とP14(5’-TGTTCCGCATGATGGTGGTGACTTCCAAGA-3’ ;配列番号49)を用いて増幅、glaB cDNA(配列番号32)の1〜991までをglaB cDNAがサブクローニングされたプラスミドを鋳型にプライマーP15(5’-CACCACCATCATGCGGAACAACCTTCTTTT-3’ ;配列番号50)とプライマーP6(5’-CCATCCAGCACCACTGCCGCGGCCTTTCCT-3’ ;配列番号40)を用いて増幅、SC34EK(配列番号33)の全長を配列番号33がサブクローニングされたプラスミドを鋳型にプライマーP7(5’-GCGGCAGTGGTGCTGGATGGAGTGGGACCG-3’ ;配列番号41)とプライマーP8(5’-TTCACTTGACGCACTTGAGCTCCTTCTCGT-3’ ;配列番号42)を用いて増幅、glaB cDNA(配列番号32)の1097〜1482までをglaB cDNAがサブクローニングされたプラスミドを鋳型にプライマーP9(5’-GCTCAAGTGCGTCAAGTGAACGTCAGTGAA-3’ ;配列番号43)とプライマーP10(5’-GAAAGTACATCTACCACGACCCAACAGTTG-3’ ;配列番号44)を用いて増幅、glaBターミネーター全長(配列番号34)を麹菌Aspergillus oryzae O-1013ゲノムDNAを鋳型にプライマーP11(5’-GTCGTGGTAGATGTACTTTCCAGTGCGTGT-3’ ;配列番号45)とプライマーP12(5’-GCGAACAGAGCTATACCTTCACATACCTTC-3’ ;配列番号46)を用いて増幅した。PCRは、LA-Taq(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
【0135】
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),60℃(30秒),72℃(5分),30サイクル
・72℃(7分),1サイクル
その結果、それぞれ4つの適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られた4つのPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出した。抽出した4つのサンプルを1つにまとめ、エタノール沈殿を行った。次に、4つのサンプルの混合物を鋳型として、プライマーP13, P12を用いて、2段階目のPCRを行った。PCRは、LA-Taq(宝バイオ)によるPCR増幅を行った。
【0136】
<PCR条件>
・96℃(5分),1サイクル
・96℃(20秒),68℃(5分),30サイクル
・72℃(7分),1サイクル
その結果、単一の適正なゲノム遺伝子産物が増幅した。得られたPCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で切り出し、QIAquick Gel Extraction kit(QIAGEN)で抽出した。本PCR産物はその末端にアデニンが突出しており、TベクターであるpGEM-T(プロメガ社)へ、T4 DNAリガーゼ(プロメガ社)を用いて4℃で20時間処理することによりライゲーションさせた。その後、ライゲーション液を大腸菌JM109コンピテントセル(宝バイオ)へ形質転換した。形質転換体はアンピシリン、IPTG及び X-galを添加したLB培地を用いて白色コロニーとして単離された。glaB型グルコアミラーゼの配列番号35の331番目のグリシンから365番目のグルタミンまでを、配列番号36の配列に置換した融合遺伝子を発現させるための遺伝子を含むプラスミドをpBGSC1とした。
【0137】
形質転換体の固体培養と生産物の確認
麹菌ロイシン要求性変異株Aspergillus oryzae leu-5をpANLA単独の形質転換、あるいはpANLAとpBGSC1双方のコトランスフォーメーションにより形質転換する手法は、常法であるプロトプラスト-PEG-カルシウム法を用いた。得られた形質転換体の遺伝子の有無は、PCRにより確認した。
【0138】
得られた形質転換体については、SC34EKをコードする遺伝子の有無をPCRにより確認した。その結果、pBGSC1が形質転換された株と、対照としてpANLAのみが形質転換された株を取得することができた。
【0139】
得られた形質転換体を米麹の固体培養に供した。固体培養に用いるのは、70%精米歩合の蒸し米であり、形質転換体の胞子(GPYプレート上の胞子をデンプンで懸濁したもの)を接種後、30℃で2日間、37℃で1日間培養した。培養後の培養物を5倍量の0.5% NaCl溶液で室温、3時間抽出し、抽出液の10μlをSDS-PAGEに供した。 その結果、クマシー染色により、図12の矢印で示した部分においてグルコアミラーゼとSC34EKの融合タンパク質と考えられるタンパク質が分泌発現されていることが示された。さらにこれを確認するために、大腸菌で発現させたSC34EKペプチドをスタンダードにして、ELISAに供した結果、1kgの米麹当たりのSC34EKペプチドに相当する量は、330mg分泌生産されていることが明らかとなった。よって、麹菌の固体培養を行うことにより、SC34EKの大量分泌生産が可能となることが明らかとなった。
【0140】
固体培養で生産させた融合タンパク質の精製
上記pBGSC1形質転換体の米麹培養物0.5kgを0.5% NaCl溶液2500mlで、室温、3時間抽出後、10,000rpmで遠心して上清を回収した。この上清に90%飽和硫安となるように、硫安を添加後、室温で20時間放置した。その後、10,000rpmで遠心し、上清を回収した。この上清に、ブチルトヨパール樹脂(アマシャムファルマシア社)をバッチで添加し、室温で30分放置し、樹脂を回収した。この樹脂を2M硫安で洗浄後、等量の水で懸濁し、その上清を回収した。その結果、図13のSDS-PAGEに示したように、米麹の抽出液の段階に比べて、硫安処理と疎水性樹脂のバッチによる添加という簡易的な処理により80%以上の純度に融合タンパク質を精製できることが明らかとなった。これは、工業的にコスト面のメリットがあるといえる。
【0141】
このシステムの構築により、SC34EKペプチド1tの生産にかかるコストは、麹菌生産により20億円となり、化学合成で1t生産するのにかかるコスト100兆円に比較して、5千分の1のコストで生産できるようになる。
【0142】
実施例4: 融合蛋白質からのN36結合ペプチドの切断
実施例1, 2, 3に記載の方法に従い得られた融合蛋白質を0.1M酢酸、10mM DTT、 6M尿素(または6M グアニジン塩酸塩)溶液を加えて37℃で2時間攪拌し、チオールの5等量の1-シアノ-4-ジメチルアミノピリジニウム塩(DMAP-CN)を加え、室温で15分間反応し、S-シアノ化された蛋白質を得た。反応終了後、反応液を50%酢酸で一晩透析を行い、得られた溶液を凍結乾燥した。凍結乾燥粉末を再び6M尿素(または6M グアニジン塩酸塩)溶液で溶解し、最終濃度が3Mとなるように25%アンモニア水を加え、15℃で15分反応させた。また、切断には0.05Mの水酸化ナトリウムも利用できる。反応終了後、酢酸でpH6.0に調整した。得られた反応液を、0.05% ギ酸で平衡化したUnisonUK-C18(150mm×10mm, Imtakt)に通液し、吸着、洗浄した後、20-50%B(B: アセトニトリル)の段階勾配で溶出を行い、C末端がアミド化(水酸化ナトリウムの場合はカルボキシル基のまま)されたペプチド画分を回収し、この画分を凍結乾燥し、ペプチドの凍結乾燥粉末を得た。
【0143】
実施例5:SC34EK配列を含む生産物の定量と活性測定
ELISAによる定量(図14、15)
抗SC34EK抗体を用いて、SC34EK配列を含む融合タンパク質あるいは、SC34EKの定量を行った。
【0144】
融合タンパク質をNa2CO3(0.060 M Na2CO3, 0.136 M NaHCO3, pH 9.6)で希釈し、ELISAプレート(SUMIRON)に50 mlずつ分注し、4℃ 一晩静置あるいは室温で 2時間静置した。Wash Buffer (50 mM Tris-HCl, 0.2 % Tween20, pH 8.0)200μlで3回洗浄した。Blocking Buffer (1 % BSA/Wash Buffer )各ウェルに200μlずつ分注し、4 ℃で2〜3時間静置した後、Washing Buffer200μlで3回洗浄した。一次抗体(抗SC34EK抗体)を5000倍にWash Bufferで希釈し,50μlを添加し、室温で2時間静置した。Wash Buffer 200μlで3回洗浄した後、二次抗体(抗ウサギIgG(H+L)), Biotin抗体(フナコシ)を5000倍にWash Bufferで希釈し、50μlずつ加え、室温で2時間静置した後、Wash Buffer 200μlで6回洗浄した。TMPパーオキシダーゼ基質キット(バイオ・ラッド)にて発色させ、吸光度655nmを測定した後、1M硫酸 100μlで反応を停止し、吸光度450nmを測定した。吸光度450nm−655nmを算出し、実施例1で生産したGST-SC34EKをスタンダードとして用いて検量線を作成し、微生物で生産させたSC34EK配列を含む産物を定量した。
【0145】
N36結合活性(ELISA法)
SC34EKとN36の結合反応を測定し、SC34EK融合タンパク質の確認を行った。
実施例1で生産した、EGFP-SC34EKをNa2CO3buffer(pH 9.6)で希釈し、50μlをELISA用ウェルプレートに分注し、室温で2時間または4 ℃で一晩静置した。Wash buffer (0.025容量% Tween 20 を含むPBS buffer)200μlで3回洗浄した。Blocking buffer (0.1重量% BSAを含むWash buffer)を各ウェルに200μlずつ分注し、4 ℃で3時間静置した後、Wash buffer 200μlで3回洗浄した。MBP-N36(Maltose Binding Protein−N36)を1000倍にWash bufferで希釈し、各ウエルに100μlずつ分注し、37℃で1時間30分静置した。Wash buffer 200μlで6回洗浄した後、抗MBP抗体をWash bufferで1000倍希釈し、各ウエルに100μlずつ分注し、4℃で1時間静置した。Blue Phos(KPL)を100μlずつ加え、37℃で20分静置した後,吸光度650nmを測定した。EGFP-SC34EKに、N36結合活性が確認できた。
【0146】
N36-C34結合阻害反応
N36とC34の結合反応を用いた阻害剤の活性測定方法、GST-C34をNa2CO3buffer(pH 9.6)で希釈し、50μlをELISA用ウェルプレートに分注し、室温で2時間または4 ℃で一晩静置し、ELISA用ウェルプレートに定着させた。Wash buffer (0.025容量%Tween 20を含む PBS) 200μlで3回洗浄した。Blocking buffer (0.1重量% BSA を含むWashing buffer)を各ウェルに200μlずつ分注し、4 ℃で2〜3時間静置した後、Wash buffer 200μlで3回洗浄した。MBP-N36をWashing bufferで1000倍希釈し、実施例1で生産したN36結合阻害剤を10倍ごとに希釈し、サンプル希釈液を各ウェルに100μlずつ分注した後、37 ℃で1時間30分静置した。その後、Wash buffer 200μlで6回洗浄した。抗体(Monoclonal Anti-Maltose Binding Protein)をWash bufferで1000倍に希釈し、各ウェルに100μlずつ分注し、4 ℃で1時間静置した。Blue Phose発色液を100μlずつ加え、37 ℃で20分静置し、吸光度650nmを測定した。阻害剤として機能すると、発色が抑えられ、EGFP-SC34EKにおいて、N36とC34との結合阻害活性を有することが確認できた(図14)。
【0147】
なお、Cysにおける開裂の反応の概略を図16に示す。
MAGI(Maltinuclear activation of galactosidase indicator)アッセイによる抗HIV活性の測定
Hela細胞にCD4-LTR/βgalを発現させたMAGI細胞を使用し、MAGIアッセイにより微生物生産したSC34EK配列を含むサンプルについて抗HIV活性を測定した。
MAGI 細胞をトリプシン5分処理後、等量以上のDMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)を添加し、カウント後、96wellに1×104cells/wellとなるようにした。ウイルスHIV-1株クローンNL4-3をDMEMで希釈し、100μlずつウェルに添加した。微生物生産したSC34EK配列を含む産物、実施例1に記載のGST-SC34EK溶液を10倍ごとの段階希釈し、ウェルに添加した。48時間培養後、X-Galを添加して青色に染色される細胞数をカウントした。この細胞はHIVが感染するとX-GALで青色に染色されることから50%染色率を示す濃度をEC50(Effective concentration)として表記する。
【0148】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、SC34EKペプチドの製造分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】pSC34EKプラスミドの構築
【図2】pGST-SC34EK-Histagプラスミドの構築
【図3】各プラスミドを導入した形質転換株の培養状況
【図4】EGFP-SC34EKタンパク質のSDS-PAGE解析
【図5】GST-SC34EK-Histagタンパク質のSDS-PAGE解析
【図6】GST-SC34EKタンパク質のSDS-PAGE解析
【図7】SC34EK(×1)電気泳動(バイオアナライザー)
【図8】ウエスタンブロッティング(SC34EK)
【図9】ウエスタンブロッティング(染色体組み込み型)
【図10】麹菌発現液体培養
【図11】ウエスタン解析(液体培養)
【図12】固体培養SDS-PAGE
【図13】固体培養発現させた融合タンパク質の精製
【図14】ELISAによる定量(1.2.)
【図15】ELISAによる定量(3.)
【図16】Cysにおける開裂の反応の概略

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルスのN36タンパク質に結合するN36結合ペプチドをコードするDNA分子を組み込んだ組換えベクターを、大腸菌を宿主として導入して形質転換体とし、該形質転換体を培地で培養して培養物中にN36結合ペプチドを生成蓄積させ、該培養物からN36結合ペプチドを採取することを特徴とするN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項2】
前記形質転換体を培地で培養して、菌体内発現、ペリプラズム発現、分泌発現のいずれかの形態でN36結合ペプチドを培養物中において生成蓄積させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記形質転換体を培地で培養して、N36結合ペプチドを大腸菌の菌体内発現により生成蓄積させることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組換えベクターが、N36結合ペプチドをコードするDNA分子と、大腸菌で発現可能なタンパク質をコードするDNA分子を融合して含むことを特徴とする請求項1記載のN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項5】
前記組換えベクターが、N36結合ペプチドをコードするDNA分子と、大腸菌で発現可能なタンパク質をコードするDNA分子を融合して含み、前記N36結合ペプチドをコードするDNA分子の一端又は両端にペプチド結合を切断可能な認識部位をコードするDNA分子を含むことを特徴とする請求項1記載のN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項6】
前記認識部位がシステインであることを特徴とする請求項5記載のN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項7】
大腸菌で発現可能な前記タンパク質がグルタチオンSトランスフェラーゼ及びEGFPよりなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項8】
哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルスのN36タンパク質に結合するN36結合ペプチドをコードするDNA分子を組み込んだ組換えベクターを、糸状菌を宿主として導入して形質転換体とし、該形質転換体を培地で培養して培養物中にN36結合ペプチドを生成蓄積させ、該培養物からN36結合ペプチドを採取するN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項9】
前記糸状菌が麹菌であることを特徴とする請求項8記載のN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項10】
前記組換えベクターが、N36結合ペプチドをコードするDNA分子と、糸状菌で発現可能なタンパク質をコードするDNA分子を融合して含むことを特徴とする請求項8または9記載のN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項11】
前記組換えベクターが、N36結合ペプチドをコードするDNA分子と、糸状菌で発現可能なタンパク質をコードするDNA分子を融合して含み、前記N36結合ペプチドをコードするDNA分子の一端又は両端にペプチド結合を切断可能な認識部位をコードするDNA分子を含むことを特徴とする請求項8記載のN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項12】
前記認識部位がシステインであることを特徴とする請求項11記載のN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項13】
糸状菌で発現可能な前記タンパク質がグルコアミラーゼであることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載のN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項14】
糸状菌を固体培養することを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載のN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項15】
哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルスのN36タンパク質に結合するN36結合ペプチドをコードするDNA分子を組み込んだ組換えベクターを、酵母を宿主として導入して形質転換体とし、該形質転換体を培地で培養して培養物中にN36結合ペプチドを生成蓄積させ、該培養物からN36結合ペプチドを採取することを特徴とするN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項16】
前記酵母がサッカロミセス属に属する微生物であることを特徴とする請求項15記載のN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項17】
前記組換えベクターが、N36結合ペプチドをコードするDNA分子と、酵母で発現可能なタンパク質をコードするDNA分子を融合して含むことを特徴とする請求項15または16記載のN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項18】
前記組換えベクターが、N36結合ペプチドをコードするDNA分子と、酵母で発現可能なタンパク質をコードするDNA分子を融合して含み、前記N36結合ペプチドをコードするDNA分子の一端又は両端にペプチド結合を切断可能な認識部位をコードするDNA分子を含むことを特徴とする請求項15または16記載のN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項19】
前記認識部位がシステインであることを特徴とする請求項18記載のN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項20】
酵母で発現可能な前記タンパク質がアルファファクターであることを特徴とする請求項17〜19のいずれかに記載のN36結合ペプチドの製造方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載の製造方法により得られたN36結合ペプチドを有効成分とする哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルス感染症の予防又は治療剤組成物。
【請求項22】
哺乳動物の免疫不全をひき起こすレトロウイルスがヒト免疫不全ウイルス(HIV)であることを特徴とする請求項21記載の予防又は治療剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−29239(P2008−29239A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204827(P2006−204827)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000165251)月桂冠株式会社 (88)
【Fターム(参考)】