説明

NK細胞活性化方法、これを用いたNK細胞増殖方法及び細胞製造方法並びにNK細胞を含む単核球

【課題】種々の腫瘍細胞、ウイルス感染細胞等に対して非特異的な細胞傷害性活性あるいはADCC活性を有するNK細胞を、K562等と混合させることなく安全に且つ簡単に増殖させるべく活性化させることができるNK細胞活性化方法、これを用いたNK細胞増殖方法及び細胞製造方法並びに大量のNK細胞を含む単核球を提供すること。
【解決手段】NK細胞活性化方法では、CD52アゴニストによりT細胞及びNK細胞を含む単核球に刺激を与えてNK細胞を活性化させる。CD52アゴニストによる単核球の刺激は、サイトカインの存在下で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)を活性化させるNK細胞活性化方法、当該NK細胞を用いたNK細胞増殖方法及び細胞製造方法並びにNK細胞を含む単核球に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1においては、抗CD3抗体を用いて癌患者から採取したリンパ球を培養して多くのγδT細胞及びNK細胞が含まれるリンパ球を得る方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−314183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体は、病原体の侵入や悪性腫瘍の発生など、生体にとって好ましくない病態を防ぐために、自然免疫と適応免疫の2つの免疫系によって対応している。自然免疫では侵入した病原体を、すでに存在するNK細胞やマクロファージなどの食細胞、あるいは補体系などが、非特異的な活性化経路で数時間以内に感知し迅速にこれを排除する。適応免疫では、特定の病原体や異常細胞に対し抗原特異的エフェクターT細胞が増殖を伴って誘導され、細胞傷害活性を有するT細胞となり、また抗原に対応する抗体の産生を促進し、侵入した病原体の排除に4日以上の時間を要する。
【0005】
自然免疫に重要な役割を果たすNK細胞は、末梢血リンパ球の10%前後を占め、生体の異常をすばやく察知し対処する免疫学的監視を行っている。NK細胞は、形態的には特徴的な細胞内顆粒を有する大型のリンパ球であり、細胞傷害性T細胞のように抗原刺激後の分化を経ることなく細胞傷害活性を発揮する細胞である。そのため、T細胞のような抗原特異性を持たずに、主要組織適合性遺伝子複合体(major histocompatibility complex、以下、MHCと称する)が消失したある種のウイルス感染細胞や癌細胞に対して細胞傷害活性を示す。一方、NK細胞には、正常細胞のようにMHC−class Iを発現した細胞に結合する抑制性レセプターがあるため、正常細胞に対しては細胞傷害活性が発揮されない。
【0006】
NK細胞は、非特異的細胞傷害活性のほか、特有な機序で標的細胞を傷害することができる。NK細胞の大多数は、IgG分子のFc部に対するレセプター(CD16)を細胞表面上に発現している。NK細胞は、CD16を介して標的細胞の細胞表面に結合したIgGのFc部に結合して活性化し、標的細胞を殺傷する抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)活性を発揮する。
【0007】
このような細胞傷害活性を有するNK細胞を生体外で増やし、再び生体内に戻す養子免疫療法を、癌やウイルス感染症などの治療法として活用しようという試みは長く行われてきた。また、最近は他人(他家)のNK細胞を投与することにより種々の悪性腫瘍を治療しようという試みもなされている(Igarashi T, et al., Blood 2004,104:170,Ruggeri L, et al., Curr. Opin. Immunol. 2005, 17:211)。しかし、NK細胞を、簡便な方法により臨床に使用できるほど大量の細胞数となるまで培養することは困難であった。
【0008】
これまでに報告されたNK細胞の培養法を以下に挙げる。
1) 末梢血リンパ球または磁気ビーズで単離したNK細胞を、IL−2あるいはIL−15によって刺激し、増殖させる。斯かる増殖は、多くの報告によれば10倍前後であるため、末梢血単核球(以下、PBMCと称する)を大量に用意する必要がある(Dunne J, et al., J. Immunol.2001, 167:3129, Klingemann HG, et al., Cytotherapy 2004, 6:15)。
2) 末梢血リンパ球またはNK細胞とBリンパ腫細胞株であるK562またはダウジ(Daudi)との混合培養をIL−2存在下で行うことで、IL−2単独の場合よりも多く増殖し、数10倍に増えることが報告されている。
3) プラスチックプレートに接着したLymphokine−activated killer(LAK)細胞(実際はNK細胞)に、IL−2とフィーダ細胞(feeder細胞)としてのCon−A刺激末梢血リンパ球またはEBウイルス感染リンパ芽球細胞株とを加え、増殖させる(Rabinowich H, et al., Cell Immunol. 1991, 135:454)。しかし、プラスチックプレートに接着するLAK細胞が少ないため、増殖させても最初に採取したNK細胞の36倍にとどまる。
4) PBMC48時間刺激培養上清
PBMC、EBウイルス感染リンパ芽球細胞株、PMA及びPHAとイオノマイシン、IL−2を加えることで、IL−2単独刺激よりもNK細胞を9倍に増やす。しかし手技が煩雑なわりに大量に得ることは難しい(Robertson MJ, et al., J Immunol 1993, 150:1705)。
5) PBMCと接着性腫瘍細胞株HFWTをIL−2存在下で培養すると、NK細胞が10日間から21日間で58倍から401倍に増殖する(Harada, et al., Jpn J Cancer Res 2002, 93:313)。
6) 4−1BB遺伝子及びIL−15遺伝子を組み込んだK562とPBMCとを3週間混合培養する場合には、NK細胞が平均1000倍以上に増殖する(Imai C, et al., Blood 2005)。
【0009】
上述したように、NK細胞を少なくとも数100倍以上に大量に増殖させるためには、K562やHFWTなどのヒト腫瘍細胞との混合培養、さらにはそれらの細胞株への遺伝子導入が必要である。これらの細胞株が、腫瘍細胞であること、他人の細胞であること、また遺伝子導入をしていることなどから、その使用には医学的な問題のほか倫理上の問題がある。たとえば、腫瘍細胞株との混合培養を用いる方法では、1個でも生き残った腫瘍細胞が生体に入る虞がある。また、生体への導入遺伝子の影響が未知であることなど、その臨床使用にあたっては慎重にならざるをえない。
【0010】
CD52分子は、GPIアンカー型糖蛋白質に属する。GPIアンカー型糖蛋白質に属する分子としては、CD48、CD55、CD59等もある。CD52分子は、T細胞、B細胞、単球、NK細胞に発現し、顆粒球には発現しない。T細胞において、CD3分子とともにCD52分子をモノクローナル抗体で刺激すると、CD3単独刺激の場合に比べ、T細胞の活性化が顕著に増強され、CD52が共刺激分子として機能する(Rowan WC, et al., Int Immunol 1995,7:69)。NK細胞は、CD3分子を発現しないため、T細胞のようにこれらの分子を介した共刺激効果は見られない。
【0011】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、種々の腫瘍細胞、ウイルス感染細胞等に対して非特異的な細胞傷害性活性あるいはADCC活性を有するNK細胞を、K562等と混合させることなく安全に且つ簡単に増殖させるべく活性化させることができるNK細胞活性化方法並びにこれを用いたNK細胞増殖方法及び細胞製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的とするところは、大量のNK細胞を含む単核球を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のNK細胞活性化方法は、CD52アゴニストによりT細胞及びNK細胞を含む単核球(単核球群)に刺激を与えてNK細胞を活性化させる。当該CD52アゴニストによる単核球の刺激は、サイトカインの存在下、好ましくはIL−2の存在下で行われてもよい。
【0013】
本発明のNK細胞活性化方法によれば、T細胞及びNK細胞を含む単核球にCD52アゴニストによる刺激を与えるために、NK細胞をT細胞よりも活性化させることができ、NK細胞をK562等と混合させることなく安全に且つ簡単に増殖させるべく活性化させることができ、特に、T細胞及びNK細胞を含む単核球にCD52アゴニストによる刺激を、例えばIL−2存在下で与えることで、例えばIL−2単独刺激に比べ、NK細胞をT細胞よりも増殖させることができる。また、本発明のNK細胞活性化方法を用いればNK細胞を1000倍以上にも増殖させ得る。
【0014】
本発明のNK細胞活性化方法の好ましい例では、前記CD52アゴニスト及びCD3アゴニストによりNK細胞の増殖がT細胞の増殖よりも優位となるように単核球に共刺激を与える。尚、CD3アゴニストの追加によるNK細胞の活性化は、NK細胞がCD3分子を有していないことから、CD3アゴニストがNK細胞を直接刺激したのではなく、CD3アゴニスト及びCD52アゴニストによるT細胞の活性化を経て生じた二次的効果と考えられる。
【0015】
本発明のNK細胞活性化方法の好ましい例では、CD3アゴニストが0.1μg/ml以下の濃度で存在する培地において単核球に刺激を与えてもよく、CD3アゴニストが0.001μg/ml以上、好ましくは0.03μg/ml以上の濃度で存在する培地において単核球に刺激を与えてもよく、CD52アゴニストが20μg/ml以下の濃度で存在する培地において単核球に刺激を与えてもよく、CD52アゴニストが2μg/ml以上の濃度で存在する培地において単核球に刺激を与えてもよく、また、CD52アゴニスト及びCD3アゴニストが上記各濃度で存在する培地において単核球に刺激を与えてもよく、より好ましくは、CD52アゴニスト20μg/ml及びCD3アゴニスト0.1μg/mlが存在する培地において単核球に刺激を与える。またCD52アゴニストの濃度は20μg/ml以上であってもよい。このような好ましい例によれば、NK細胞の増殖がT細胞の増殖よりも優位となるように単核球に刺激を与えることができる。尚、CD3アゴニストの濃度がT細胞に最大限のDNA合成を誘導する程度に濃い場合には、CD4T細胞、CD8T細胞の増殖が優位となり、NK細胞の増殖は逆に抑制される。
【0016】
本発明のNK細胞活性化方法の好ましい例では、末梢血、リンパ節、胸腺、骨髄、腫瘍、胸水、腹水又は臍帯血から採取された単核球に刺激を与える。斯かる単核球は、より好ましくは末梢血単核球からなる。
【0017】
本発明のNK細胞活性化方法の好ましい例では、IL−2により単核球に刺激を与える。IL−2による刺激は、CD52アゴニストやCD3アゴニストによる刺激と同時であってもよく、また、CD52アゴニストやCD3アゴニストによる刺激の後であってもよい。IL−2による刺激は、2日から3日ごとに与えてもよい。
【0018】
本発明のNK細胞活性化方法を用いれば、大量のNK細胞を製造することができ、50%以上の割合でNK細胞を含む単核球、70%から95%の割合でNK細胞を含む単核球を製造することができる。また、本発明の単核球は、T細胞及びNK細胞を含む単核球であって、CD52アゴニストにより刺激が与えられて二次的に増殖されたNK細胞を50%以上の割合で含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、種々の腫瘍細胞、ウイルス感染細胞等に対して非特異的な細胞傷害性活性あるいはADCC活性を有するNK細胞を、K562等と混合させることなく安全に且つ簡単に増殖させるべく活性化させることができるNK細胞活性化方法並びにこれを用いたNK細胞増殖方法及び細胞製造方法を提供し得る。また、本発明によれば、大量のNK細胞を含む単核球を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、実施例2における実験結果に関する説明図である。
【図2】図2は、実施例3における実験結果に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態の例を、図に示す例に基づいて更に詳細に説明する。尚、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
【実施例1】
【0022】
実施例1では、CD52アゴニストの存在下及び非存在下においてCD3アゴニストの濃度を変えた場合のCD16NK細胞、CD4T細胞及びCD8T細胞の比率の変化を調べる実験を行った。
【0023】
まず、Ficoll−Paque Plus(Amershan Pharmacia)を用いた密度勾配遠心法により健常人から末梢血単核球(PBMC)を分離した。
【0024】
リン酸緩衝液(PBS)で0μg/ml、0.01μg/ml、0.1μg/ml及び1μg/mlに夫々希釈されたCD3アゴニストとしてのヒトCD3抗体(ORTHO CLONE OKT3,Ortho Biotech)500μlを夫々別々に24穴プレート(Falcon)の各穴に入れて4℃で一晩処理し、このようにして24穴プレートにヒトCD3抗体を固相化した。24穴プレートの各穴は、固相化後にPBSで2回洗浄した。
【0025】
上記同様にヒトCD3抗体500μlを夫々別々に他の24穴プレート(Falcon)の各穴に入れ、さらに当該各穴に、CD52アゴニストとしてヒトCD52抗体、ここではPBSで濃度1mg/mlに希釈されたAlemtuzumabを20μg/mlとなるように添加して4℃で一晩処理し、このようにして他の24穴プレートにヒトCD3抗体及びヒトCD52抗体を固相化した。他の24穴プレートの各穴は、固相化後にPBSで2回洗浄した。
【0026】
次に、単離したPBMCをIL−2(175U/ml)を含むKBM540培地(Kohjin Bio)に1×10/mlの濃度で浮遊させた培養液1mlを、24穴プレートの各穴及び他の24穴プレートの各穴に夫々添加し、CO培養器内で37℃、3日間培養した。
【0027】
4日目に、24穴プレートの各穴及び他の24穴プレートの各穴に培養液1mlを追加し、IL−2を200U/ml添加した。6日目に、24穴プレートの各穴の細胞を6穴プレートに移すと共に他の24穴プレートの各穴の細胞を他の6穴プレートに移し、2日から3日間隔でIL−2を200U/ml加えながら培養を継続した。
【0028】
培養13日目に、6穴プレートの各穴及び他の6穴プレートの各穴から3×10個の細胞をエッペンドルフチューブに取り、これにFITC標識抗ヒトCD8抗体、PE標識抗ヒトCD4抗体及びPC5標識抗ヒトCD16抗体を各3μg/ml加え、定法により細胞を染色した。染色した細胞はただちにFACSCaliburで解析し、CD8T細胞、CD4T細胞及びCD16NK細胞の比率を求めた。
【0029】
以上のように実験を行った結果、ヒトCD52抗体を処理せずにヒトCD3抗体のみを処理して6穴プレートから得た細胞数の割合については次の通りであった。ヒトCD3抗体刺激の強さにかかわらず、CD8T細胞は49%から56%、CD16NK細胞は24%から34%と狭い範囲で変化した。また、CD4T細胞はヒトCD3抗体刺激が強くなるにしたがって20%まで増加した。
【0030】
ヒトCD52抗体を処理して他の6穴プレートから得た細胞数の割合については次の通りであった。ヒトCD52抗体20μg/mlとヒトCD3抗体0μg/mlとを処理(ヒトCD52抗体のみを処理)した細胞数の割合については、CD16NK細胞が66%前後、CD4T細胞が1%よりも低く、CD8T細胞が27%前後であった。ヒトCD52抗体20μg/mlとヒトCD3抗体0.01μg/mlとを処理した細胞数の割合については、CD16NK細胞が95%前後、CD4T細胞が1%前後、CD8T細胞が10%前後であった。ヒトCD52抗体20μg/mlとヒトCD3抗体0.1μg/mlとを処理した細胞数の割合については、CD16NK細胞が66%前後、CD4T細胞が3%前後、CD8T細胞が29%前後であった。ヒトCD52抗体20μg/mlとヒトCD3抗体1μg/mlとを処理した細胞数の割合については、CD16NK細胞が35%前後、CD4T細胞が5%前後、CD8T細胞が55%前後であった。ヒトCD52抗体及びヒトCD3抗体を処理(CD52抗体のみを処理した場合を含む)して得たCD16NK細胞とCD8T細胞とには、ヒトCD3抗体のみを処理して得たCD16NK細胞とCD8T細胞との比率の変動に比べて、大きな比率の変動が見られた。ヒトCD52抗体のみを処理した場合でも、CD16NK細胞は50%以上であって66%と高く、CD8T細胞は27%であり、CD4T細胞は1%よりも低かった。ヒトCD52抗体20μg/mlとヒトCD3抗体0.01μg/mlとを処理して得たCD16NK細胞とCD8T細胞との比率の差は上述のように顕著なものとなり、CD16NK細胞は90%以上であって95%前後となった。CD8T細胞の比率は、ヒトCD3抗体の濃度が0.01μg/mlから1μg/mlまで濃くなるに従って上昇し、ヒトCD3抗体の濃度1μg/mlではCD16NK細胞の比率を超えた。CD4T細胞の増殖は、ヒトCD3抗体の濃度の如何にかかわらず僅かであった。
【0031】
以上のように、実施例1では、CD52抗体のみで又はCD52抗体にCD3抗体を加えて単核球を刺激することで、NK細胞の活性化、増殖が誘導されることが明らかになった。尚、NK細胞はCD3分子を持たないので、NK細胞の増殖には、CD52抗体による刺激又はCD52抗体及びCD3抗体による刺激によって活性化したCD4T細胞、CD8T細胞等の存在が二次的に関与しているものと思われる。
【実施例2】
【0032】
実施例2では、スモールスケールでの細胞増殖の抗体濃度依存性に関する実験を行った。
【0033】
実施例1と同じ手順により、各穴がCD3抗体0μg/ml、0.001μg/ml、0.01μg/ml、0.1μg/ml及び1μg/mlの濃度で夫々処理され、さらにCD52抗体0μg/ml、2μg/ml及び20μg/mlの濃度で夫々処理された24穴プレートを用意し、当該24穴プレートの各穴にPBMC1×10個を添加して培養した。実施例2における培養19日目の細胞数を図1に示す。
【0034】
図1において、培養したPBMCの細胞数については、CD52抗体0μg/ml及びCD3抗体0μg/mlで処理した場合には18×10個前後、CD52抗体0μg/ml及びCD3抗体0.001μg/mlで処理した場合には32×10個前後、CD52抗体0μg/ml及びCD3抗体0.01μg/mlで処理した場合には33×10個前後、CD52抗体0μg/ml及びCD3抗体0.1μg/mlで処理した場合には28×10個前後、CD52抗体0μg/ml及びCD3抗体1μg/mlで処理した場合には40×10個前後であることが示された。
【0035】
図1において、培養したPBMCの細胞数については、CD52抗体2μg/ml及びCD3抗体0μg/mlで処理した場合には18×10個前後、CD52抗体2μg/ml及びCD3抗体0.001μg/mlで処理した場合には26×10個前後、CD52抗体2μg/ml及びCD3抗体0.01μg/mlで処理した場合には38×10個前後、CD52抗体2μg/ml及びCD3抗体0.1μg/mlで処理した場合には44×10個前後、CD52抗体2μg/ml及びCD3抗体1μg/mlで処理した場合には40×10個前後であることが示された。
【0036】
図1においては、培養したPBMCの細胞数については、CD52抗体20μg/ml及びCD3抗体0μg/mlで処理した場合には20×10個前後、CD52抗体20μg/ml及びCD3抗体0.001μg/mlで処理した場合には34×10個前後、CD52抗体20μg/ml及びCD3抗体0.01μg/mlで処理した場合には40×10個前後、CD52抗体20μg/ml及びCD3抗体0.1μg/mlで処理した場合には49×10個前後、CD52抗体20μg/ml及びCD3抗体1μg/mlで処理した場合には43×10個前後であることが示された。
【0037】
図1においては、細胞数は、CD3抗体0.1μg/ml及びCD52抗体20μg/mlでPBMCを処理した場合に最も多くなっている。
【実施例3】
【0038】
実施例3では、上述のようにCD3アゴニストとCD52アゴニストとを固相化したフラスコを用いて、IL−2存在下でPBMCからNK細胞を大量に増殖させる実験を行った。
【0039】
CD52抗体のみでもNK細胞を誘導できるが、実施例2においてCD3抗体0.1μg/ml、CD52抗体20μg/mlの場合に最も高い増殖率が見られたので、この条件でPBMCを刺激培養した。
【0040】
フラスコへの抗体の固相化は、最終濃度が抗CD3抗体(ORTHO CLONE OKT3)0.1μg/ml及び抗CD52抗体(Alemtuzumab)20μg/mlとなるようにPBS20mlに添加し、これをフラスコに入れ、4℃で一晩静置して行った。フラスコ使用直前には、当該フラスコをPBS10mlで2回洗浄し、洗浄後、KBM540を90ml添加した。
【0041】
単離したPBMC1×10個を、KBM540(10ml)に浮遊させ、培養液の入ったフラスコに入れた。CO培養器内で37℃で3日間培養し、4日目にIL−2を200U/ml添加した。
【0042】
6日目に、上記フラスコ内の細胞浮遊液をKBM540(1000ml)が入ったCO透過性バッグにそのまま移し、2日から3日ごとに、IL−2(100U/ml)を追加投与した。
【0043】
以上のようにして、培養した細胞の細胞数を求め、CD4T細胞、CD8T細胞及びCD16NK細胞の夫々の比率をフローサイトメトリーで調べ、各細胞群の細胞数を計算した。
【0044】
図2は、実施例3の実験に係る細胞の増殖に関して時系列で示したものである。図2において、7日間培養した細胞の細胞数については、CD16NK細胞が0.8×10個前後、CD4T細胞が1.2×10個前後、CD8T細胞が1×10個前後であることが示され、11日間培養した細胞の細胞数については、CD16NK細胞が2.1×10個前後、CD4T細胞が1.2×10個前後、CD8T細胞が2.1×10個前後であることが示され、13日間培養した細胞の細胞数については、CD16NK細胞が3.7×10個前後、CD4T細胞が1.8×10個前後、CD8T細胞が2.6×10個前後であることが示され、15日間培養した細胞の細胞数については、CD16NK細胞が6.3×10個前後、CD4T細胞が1×10個前後、CD8T細胞が2.3×10個前後であることが示され、18日間培養した細胞の細胞数については、CD16NK細胞が6.8×10個前後、CD4T細胞が0.8×10個前後、CD8T細胞が2.2×10個前後であることが示され、21日間培養した細胞の細胞数については、CD16NK細胞が11×10個前後、CD4T細胞が1×10個前後、CD8T細胞が2.8×10個前後であることが示された。
【0045】
実施例3においては、CD16NK細胞は、21日間の培養で2100倍にまで増殖したが、CD4T細胞及びCD8T細胞は、培養11日目以降から増殖がほぼ止まった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD52アゴニストによりT細胞及びNK細胞を含む単核球に刺激を与えてNK細胞を活性化させるNK細胞活性化方法。
【請求項2】
前記CD52アゴニスト及びCD3アゴニストによりNK細胞の増殖がT細胞の増殖よりも優位となるように単核球に共刺激を与える請求項1に記載のNK細胞活性化方法。
【請求項3】
CD3アゴニストが0.1μg/ml以下の濃度で存在する培地において単核球に刺激を与える請求項2に記載のNK細胞活性化方法。
【請求項4】
CD3アゴニストが0.001μg/ml以上の濃度で存在する培地において単核球に刺激を与える請求項2又は3に記載のNK細胞活性化方法。
【請求項5】
CD52アゴニストが20μg/ml以下の濃度で存在する培地において単核球に刺激を与える請求項1から4のいずれか一項に記載のNK細胞活性化方法。
【請求項6】
CD52アゴニストが2μg/ml以上の濃度で存在する培地において単核球に刺激を与える請求項1から5のいずれか一項の記載のNK細胞活性化方法。
【請求項7】
末梢血、リンパ節、胸腺、骨髄、腫瘍、胸水、腹水又は臍帯血から採取された単核球に刺激を与える請求項1から6のいずれか一項に記載のNK細胞活性化方法。
【請求項8】
IL−2により単核球に刺激を与える請求項1から7のいずれか一項に記載のNK細胞活性化方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のNK細胞活性化方法を用いてNK細胞を増殖させるNK細胞増殖方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載のNK細胞活性化方法を用いてNK細胞を含む単核球を製造する細胞製造方法。
【請求項11】
T細胞及びNK細胞を含む単核球であって、CD52アゴニストにより刺激が与えられて二次的に増殖されたNK細胞を50%以上の割合で含む単核球。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−239972(P2010−239972A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164904(P2010−164904)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【分割の表示】特願2005−171737(P2005−171737)の分割
【原出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(504246568)株式会社セレックス (2)
【出願人】(397052136)
【Fターム(参考)】