説明

NOxセンサの異常診断装置

【課題】新規なパラメータないし特性を利用してNOxセンサの異常診断を行う。
【解決手段】内燃機関の排気通路に設けられたNOxセンサの異常診断装置であって、NOxセンサのセンサセル75,70における酸素吸着能を計測する計測手段と、計測手段により計測された酸素吸着能に基づき、NOxセンサの異常を判定する判定手段とを備える。センサセルの酸素吸着能がNOxセンサ劣化度に応じて変化することに着目し、これらの相関性を利用してNOxセンサの異常診断を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はNOxセンサの異常診断装置に係り、特に、内燃機関の排気通路に設けられたNOxセンサの異常診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から排出される排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の濃度を検出するものとして、NOxセンサが公知である。こうしたNOxセンサは、例えば、ディーゼルエンジンにおける選択還元型NOx触媒を用いた排気浄化システム(所謂尿素SCRシステム)において、NOx触媒の下流側に配設され、その検出NOx濃度がNOx触媒に対する還元剤添加量の制御等に利用される。
【0003】
ところでNOxセンサが故障或いは熱劣化等により異常を来すと、正確なNOx濃度が検出できなくなり、その結果排気エミッションが悪化するなどの不具合が生じる。実際、自動車の分野では、排ガスが悪化した状態での走行を未然に防止するため、車載状態(オンボード)で各種排ガス関連部品の異常を検出することが法規化されつつある。
【0004】
かかるNOxセンサの異常診断については、例えば特許文献1に開示されたものがある。これにおいては、NOxセンサに供給される排気ガス中の酸素濃度が既知であるときに、NOxセンサの酸素ポンプセルに特定の電圧を印加し、このときに酸素ポンプセルから出力される出力値が当該酸素ポンプセルが正常であるときにとりうると予想される値からずれているときに、NOxセンサが故障していると診断する。
【0005】
【特許文献1】特開2003−270194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、NOx触媒の下流側に配設されたNOxセンサの場合、NOxセンサの異常を診断することは一般的には困難である。なぜなら、エンジンの運転状態にばらつきがあることに加え、NOxセンサに供給される排気ガスがNOx触媒を通過した後のガスであり、センサ検出濃度の比較対象となる真のNOx濃度の推定が難しいからである。また、NOxセンサは構造が複雑で、センサのNOx濃度検出性能の低下と相関のあるパラメータないし特性を選定するのが難しいからである。
【0007】
かかる状況の中、本発明者は鋭意研究の末、NOx濃度検出性能の低下と相関のあるパラメータないし特性を新たに見出した。本発明の目的は、そのような新規なパラメータないし特性を利用してNOxセンサの異常診断を行えるNOxセンサの異常診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
内燃機関の排気通路に設けられたNOxセンサの異常診断装置であって、
前記NOxセンサのセンサセルにおける酸素吸着能を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された酸素吸着能に基づき、前記NOxセンサの異常を判定する判定手段と
を備えたことを特徴とするNOxセンサの異常診断装置が提供される。
【0009】
本発明者は、鋭意研究の末、NOxセンサのセンサ出力を発するセンサセルに酸素吸着能があること、及びこの酸素吸着能がNOxセンサの劣化に伴って低下してくることを見出した。そこで本発明では、かかる新規なパラメータないし特性としてのセンサセルの酸素吸着能と、NOxセンサ劣化度との相関性を利用し、NOxセンサの異常診断を行うこととしている。
【0010】
好ましくは、前記計測手段は、前記内燃機関の始動前に前記NOxセンサのヒータをオンし、このヒータオン実行中における前記NOxセンサの出力に基づいて前記酸素吸着能を計測する。
【0011】
内燃機関の始動前にNOxセンサのヒータをオンし、NOxセンサの暖機を開始すると、内燃機関が始動されておらず排気ガス及びこれに含まれるNOxが無い状態であるにも拘わらず、暫くしてセンサ出力が一時的に立ち上がり、あたかもNOx濃度が一時的に増大したかのような挙動を示す。これは、センサ放置中にセンサセルの電極上に吸着された酸素が当該電極上において分解され、センサセルにおいて酸素イオン電流が流れることに起因する。このとき、センサセルにおける酸素吸着量に応じてセンサ出力の立ち上がり方が相違するので、これを利用してNOxセンサの酸素吸着能が計測される。
【0012】
また好ましくは、前記計測手段は、前記内燃機関のフューエルカット中に前記NOxセンサの酸素ポンプセルに対し所定時間の印加電圧の減少、停止及び逆転のいずれかを実行し、その後印加電圧を元の既定状態に復帰させ、当該復帰後のNOxセンサ出力に基づいて、前記酸素吸着能を計測する。
【0013】
エンジンの燃料噴射を停止するフューエルカット中には、NOxセンサ及びそのセンサセルに空気が供給されるが、これに加えてNOxセンサの酸素ポンプセルに対し、所定時間の印加電圧の減少、停止及び逆転のいずれかを実行すると、センサセルの電極に対しより一層積極的に酸素を供給し、酸素を吸着させることができる。この後、フューエルカット継続中に酸素ポンプセルの印加電圧を元の既定状態に復帰させることにより、前記同様の、センサセルの酸素吸着量に応じたセンサ出力挙動が得られ、これを利用してNOxセンサの酸素吸着能が計測される。
【0014】
好ましくは、前記NOxセンサの異常診断装置は、前記判定手段により前記NOxセンサが正常と判定されたとき、少なくとも前記計測手段により計測された酸素吸着能に基づき、前記NOxセンサの出力を補正する補正手段を備える。
【0015】
前述したように、センサセルの酸素吸着能とNOxセンサ劣化度との間には相関関係がある。よって計測された酸素吸着能に基づき、NOxセンサの劣化度を一定に保つよう、NOxセンサの出力が補正される。これによりNOxセンサ出力を用いた各種制御を精度良く安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、NOx濃度検出性能の低下と相関のある新規なパラメータないし特性を利用してNOxセンサの異常診断を行えるという、優れた効果が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関の概略的なシステム図である。図中、10は、自動車に搭載された圧縮着火式内燃機関即ちディーゼルエンジンであり、11は吸気ポートに連通されている吸気マニフォルド、12は排気ポートに連通されている排気マニフォルド、13は燃焼室である。本実施形態では、不図示の燃料タンクから高圧ポンプ17に供給された燃料が、高圧ポンプ17によりコモンレール18に圧送されて高圧状態で蓄圧され、このコモンレール18内の高圧燃料がインジェクタ14から燃焼室13内に直接噴射供給される。エンジン10からの排気ガスは、排気マニフォルド12からターボチャージャ19を経た後にその下流の排気通路15に流され、後述のように浄化処理された後、大気に排出される。なお、ディーゼルエンジンの形態としてはこのようなコモンレール式燃料噴射装置を備えたものに限らない。またEGR装置などの他の排気浄化デバイスを含むことも任意である。
【0019】
他方、エアクリーナ20から吸気通路21内に導入された吸入空気は、エアフローメータ22、ターボチャージャ19、インタークーラ23、スロットルバルブ24を順に通過して吸気マニフォルド11に至る。エアフローメータ22は吸入空気量を検出するためのセンサであり、具体的には吸入空気の流量に応じた信号を出力する。スロットルバルブ24には電子制御式のものが採用されている。
【0020】
排気通路15には、排気ガス中のNOxを還元して浄化するNOx触媒、特に選択還元型NOx触媒34が設けられている。なお排気ガス中の未燃成分(特にHC)を酸化して浄化する酸化触媒や、排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集して燃焼除去するDPR(Diesel Particulate Reduction)触媒が追加して設けられてもよい。また、NOx触媒34に還元剤としての尿素水を添加するための尿素添加装置48が設けられている。具体的には、NOx触媒34の上流側の排気通路15に、尿素水を噴射するための尿素添加弁40が設けられている。尿素添加弁40には供給ライン41を通じて尿素供給ポンプ42から尿素水が供給され、尿素供給ポンプ42は尿素タンク44に貯留された尿素水を吸引して吐出する。
【0021】
また、エンジン全体の制御を司る制御手段としての電子制御ユニット(以下ECUと称す)100が設けられる。ECU100は、CPU、ROM、RAM、入出力ポート、および記憶装置等を含むものである。ECU100は、各種センサ類の検出値等に基づいて、所望のエンジン制御が実行されるように、インジェクタ14、高圧ポンプ17、スロットルバルブ24等を制御する。またECU100は、尿素添加量を制御すべく、尿素添加弁40及び尿素供給ポンプ42を制御する。ECU100に接続されるセンサ類としては、前述のエアフローメータ22の他、NOx触媒34の下流側に設けられたNOxセンサ50、NOx触媒34の上流側と下流側にそれぞれ設けられた触媒前排気温センサ52及び触媒後排気温センサ54が含まれる。NOxセンサ50は排気ガスのNOx濃度に比例した大きさの出力信号を発する所謂限界電流式NOxセンサである。その構造については後に詳しく述べる。
【0022】
他のセンサ類として、クランク角センサ26、アクセル開度センサ27及びエンジンスイッチ28がECU100に接続されている。クランク角センサ26はクランク角の回転時にクランクパルス信号をECU100に出力し、ECU100はそのクランクパルス信号に基づきエンジン10のクランク角を検出すると共に、エンジン10の回転速度を計算する。アクセル開度センサ27は、ユーザによって操作されるアクセルペダルの開度(アクセル開度)に応じた信号をECU100に出力する。エンジンスイッチ28はユーザによってエンジン始動時にオン、エンジン停止時にオフされる。
【0023】
選択還元型NOx触媒(SCR: Selective Catalytic Reduction)34は、ゼオライト又はアルミナなどの基材表面にPtなどの貴金属を担持したものや、その基材表面にCu等の遷移金属をイオン交換して担持させたもの、その基材表面にチタニヤ/バナジウム触媒(V25/WO3/TiO2)を担持させたもの等が例示できる。選択還元型NOx触媒34は、その触媒温度が活性温度域にあり、且つ、還元剤としての尿素が添加されているときにNOxを還元浄化する。尿素が触媒に添加されると、触媒上でアンモニアが生成され、このアンモニアがNOxと反応してNOxが還元される。
【0024】
NOx触媒34の温度は、触媒に埋設した温度センサにより直接検出することもできるが、本実施形態ではそれを推定することとしている。具体的には、ECU100が、触媒前排気温センサ52及び触媒後排気温センサ54によりそれぞれ検出された触媒前排気温及び触媒後排気温に基づき、触媒温度を推定する。なお推定方法はこのような例に限られない。
【0025】
NOx触媒34に対する尿素添加量は、NOxセンサ50により検出されるNOx濃度に基づき制御される。具体的には、検出NOx濃度の値が常にゼロになるように尿素添加弁40からの尿素噴射量が制御される。この場合、検出NOx濃度の値のみに基づいて尿素噴射量を設定してもよいし、或いは、エンジン運転状態(例えばエンジン回転速度とアクセル開度)に基づいてNOx濃度をゼロとするような基本尿素噴射量を設定し、且つ、この基本尿素噴射量を検出NOx濃度の値がゼロになるようにフィードバック補正してもよい。NOx触媒34が尿素添加時のみNOxを還元可能なので、基本的に尿素は、エンジン運転中且つ燃料噴射実行時に常時添加される。また、NOx還元に必要な最小限の量しか尿素が添加されないよう、制御が行われる。過剰に尿素を添加するとアンモニアが触媒下流に排出されてしまい(所謂NH3スリップ)、異臭等の原因となるからである。
【0026】
次に、NOxセンサ50の詳細について説明する。図2にはNOxセンサ50のセンサ部の構造を示す。NOxセンサ50のセンサ部は互いに積層された6つの酸化ジルコニア等の酸素イオン伝導性固体電解質層からなり、これら6つの固体電解質層を以下、上から順に第1層L1、第2層L2、第3層L3、第4層L4、第5層L5、第6層L6と称する。
【0027】
第1層L1と第3層L3との間には、例えば、多孔質材料または細孔を形成されている材料からなる第1の拡散律速部材62と第2の拡散律速部材63とが配置されている。これら拡散律速部材62,63間には、第1室64が形成される。第2の拡散律速部材63と第2層L2との間には、第2室65が形成されている。また、第3層L3と第5層L5との間には、外気に連通している大気室66が形成されている。一方、第1の拡散律速部材62の外端面は雰囲気ガスとしての排気ガスと接触されている。したがって排気ガスは第1の拡散律速部材62を通じて第1室64内に流入する。
【0028】
一方、第1室64に面する第1層L1の内周面上には、陰極側第1ポンプ電極67が形成されている。第1層L1の外周面上には、陽極側第1ポンプ電極68が形成されている。これら第1ポンプ電極67,68間には第1ポンプ電圧源69により電圧が印加される。第1ポンプ電極67,68間に電圧が印加されると、第1室64内の排気ガス中に含まれる酸素が陰極側第1ポンプ電極67と接触して酸素イオンとなる。この酸素イオンは、陽極側第1ポンプ電極68に向かって第1層L1内を流れる。したがって、第1室64内の排気ガス中に含まれる酸素は第1層L1内を移動して室外に汲み出されることになる。このとき汲み出される酸素量は第1ポンプ電圧源69の電圧が高くなるほど多くなる。
【0029】
このように、本実施形態では、陰極側第1ポンプ電極67および陽極側第1ポンプ電極68が、それぞれ、第1室64内の排気ガスから酸素を排出するための第1の酸素ポンプセルの対面する2つの電極板を構成する。
【0030】
一方、大気室66に面する第3層L3の内周面上には、基準電極70が形成されている。ところで酸素イオン伝導性のある固体電解質からなる層(以下、固体電解質層と称す)では、固体電解質層の両側において酸素濃度に差があると、酸素濃度の高い側から酸素濃度の低い側に向かって酸素イオンが固体電解質層内を移動する。図2に示されている例では、大気室66内の酸素濃度の方が第1室64内の酸素濃度よりも高いので、大気室66内の酸素は基準電極70と接触することによって電荷を受け取って酸素イオンとなる。この酸素イオンは第3層L3、第2層L2および第1層L1内を移動し、陰極側第1ポンプ電極67において電荷を放出する。この結果、基準電極70と陰極側第1ポンプ電極67との間に符号11で示した電圧(起電力)V0が発生する。この電圧V0は大気室66内と第1室64内との酸素濃度差に比例する。
【0031】
図2に示されている例では、排気ガス中のNOx濃度を検出するときには、この電圧V0が、第1室64内の酸素濃度が1ppmのときに生ずる電圧に一致するように、第1ポンプ電圧源69の電圧がフィードバック制御される。すなわち、第1室64内の酸素は第1室64内の酸素濃度が1ppmとなるように第1層L1を通って汲み出され、それによって、第1室64内の酸素濃度が1ppmに維持される。
【0032】
このように、本実施形態では、基準電極70および陰極側第1ポンプ電極67が、それぞれ、第1室64内の排気ガス中の酸素濃度を監視するための第1酸素濃度監視セルの対面する2つの電極板を構成する。
【0033】
なお、陰極側第1ポンプ電極67は、NOxに対しては還元性の低い材料、例えば、金(Au)と白金(Pt)との合金から形成されている。したがって、第1室64内では、排気ガス中に含まれるNO2がNOに還元されることはあるものの、NOはそれ以上還元されない。したがって、第1室64内でNOxがNOにほぼ単ガス化され、このNOxを含む排気ガスが第2の拡散律速部材63を通って第2室65内に流入する。
【0034】
一方、第2室65に面する第1層L1の内周面上には、陰極側第2ポンプ電極72が形成されている。陰極側第2ポンプ電極72と陽極側第1ポンプ電極68との間には、第2ポンプ電圧源73によって電圧が印加される。これらポンプ電極72,68間に電圧が印加されると、第2室65内の排気ガス中に含まれる酸素が陰極側第2ポンプ電極72と接触して酸素イオンとなる。この酸素イオンは第1層L1内を陽極側第1ポンプ電極68に向かって流れる。したがって、第2室65内の排気ガス中に含まれる酸素は第1層L1内を移動して室外に汲み出されることになる。このときに室外に汲み出される酸素量は第2ポンプ電圧源73の電圧が高くなるほど多くなる。
【0035】
すなわち、本実施形態では、陰極側第2ポンプ電極72および陽極側第1ポンプ電極68が、それぞれ、第2室65内の排気ガスから酸素を排出するための第2の酸素ポンプセルの対面する2つの電極板を構成する。
【0036】
一方、上述したように、固体電解質層の両側において酸素濃度に差があると、酸素濃度の高い側から酸素濃度の低い側に向けて固体電解質層内を酸素イオンが移動する。図2に示されている例では、第2室65内の酸素濃度よりも大気室66内の酸素濃度のほうが高いので、大気室66内の酸素は基準電極70と接触することによって電荷を受け取って酸素イオンとなる。この酸素イオンは第3層L3、第2層L2および第1層L1内を移動し、陰極側第2ポンプ電極72において電荷を放出する。その結果、基準電極70と陰極側第2ポンプ電極72との間に符号74で示した電圧(起電力)V1が発生する。この電圧V1は大気室66内と第2室65内との酸素濃度差に比例する。
【0037】
図2に示されている例では、排気ガス中のNOx濃度を検出するときには、この電圧V1が、第2室65内の酸素濃度が0.01ppmのときに生ずる電圧に一致するように、第2ポンプ電圧源73の電圧がフィードバック制御される。すなわち、第2室65内の酸素は第2室65内の酸素濃度が0.01ppmとなるように第1層L1を通って汲み出され、それによって第2室65内の酸素濃度が0.01ppmに維持される。
【0038】
すなわち、本実施形態では、基準電極70および陰極側第2ポンプ電極72が、それぞれ、第2室65内の排気ガス中の酸素濃度を監視するための第2酸素濃度監視セルの対面する2つの電極板を構成する。
【0039】
なお、陰極側第2ポンプ電極72もNOxに対しては還元性の低い材料、例えば、金(Au)と白金(Pt)との合金から形成されている。したがって、排気ガス中に含まれるNOxは陰極側第2ポンプ電極72と接触しても還元されない。
【0040】
一方、第2室65に面する第3層L3の内周面上には、NOx検出用の陰極側ポンプ電極75が形成されている。陰極側ポンプ電極75はNOxに対して強い還元性を有する材料、例えば、ロジウム(Rh)と白金(Pt)との合金から形成されている。したがって、第2室65内のNOx、実際には大部分を占めるNOが陰極側ポンプ電極75上においてN2とO2とに分解される。図2に示されているように、陰極側ポンプ電極75と基準電極70との間には、一定電圧76が印加されており、したがって、陰極側ポンプ電極75上において分解生成されたO2は酸素イオンとなって第3層L3内を基準電極70に向けて移動する。このとき、陰極側ポンプ電極75と基準電極70との間には、この酸素イオン量に比例した符号77で示した電流I1が流れる。
【0041】
すなわち、本実施形態では、陰極側ポンプ電極75および基準電極70が、それぞれ、排気ガス中のNOxを分解して新たに酸素を生成するための酸素生成セルの対面する2つの電極板を構成する。さらに、これら陰極側ポンプ電極75および基準電極70は、それぞれ、酸素生成セルによって生成された酸素濃度を検出するためのセンサセルの対面する2つの電極板をも構成する。
【0042】
上述したように、第1室64内ではNOxがNOにほぼ単ガス化され、また、第2室65内には酸素はほとんど存在しない。したがって電流I1は排気ガス中に含まれるNOx濃度に比例することになり、電流I1から排気ガス中のNOx濃度を検出できることになる。
【0043】
なお、第5層L5と第6層L6との間には、NOxセンサ50のセンサ部を加熱するための電気式ヒータ79が配置されている。このヒータ79は、NOxセンサ50による通常のNOx検出時に約750〜800℃に加熱制御される。
【0044】
次に、NOxセンサ50の異常診断について説明する。
【0045】
本発明者は、鋭意研究の末、陰極側ポンプ電極75および基準電極70を備えたセンサセルに酸素吸着能があること、及びNOxセンサ50の劣化に伴って当該酸素吸着能が低下してくることを見出した。
【0046】
センサセルのうち、第2室65内に位置する陰極側ポンプ電極75は、詳しくは、ロジウム(Rh)と白金(Pt)の合金およびセラミックとしての酸化ジルコニア(ZrO2)から形成された多孔質サーメットにて構成されている。このうちロジウムが、NOをも還元し得る比較的強い触媒能と、酸素を吸着するといった酸素吸着能とを陰極側ポンプ電極75に与える主成分となる。
【0047】
また、上述の各セルのうち、劣化に伴ってNOx検出性能に最も大きく影響をもたらすのは、センサセルである。その理由は、センサセルの陰極側ポンプ電極75が最終的にNOを分解し、直接的にNOxを検出する電極だからであり、また、当該電極75がNOを分解する触媒能を有するRh−Pt電極であるため、劣化に伴って触媒能が低下するというように、他のPt−Au電極に比べて安定性に欠けるからである。
【0048】
一方、本発明者の研究結果によれば、NOxセンサひいては陰極側ポンプ電極75が劣化するにつれ、陰極側ポンプ電極75の酸素吸着能が低下していくことが判明した。その理由は、陰極側ポンプ電極75を構成するロジウム及び白金の粒子群が熱の影響で次第に凝集し、電極内でのガス拡散性が低下したり、活性点が減少したりするからと考えられる。
【0049】
よって、センサセルないし陰極側ポンプ電極75の酸素吸着能はNOxセンサ50の劣化度と相関することになり、本実施形態ではこのことを利用してNOxセンサ50の異常診断を行うこととしている。
【0050】
センサセルの酸素吸着能は、例えば以下のようにして計測される。図3は、NOxセンサ50の暖機中におけるセンサ出力I1の変化を示す試験結果である。ここでは、エンジン停止状態でNOxセンサ50を空気中に常温で所定時間放置し、陰極側ポンプ電極75上に酸素を吸着させ、その後、エンジンを始動させずに、NOxセンサ50のヒータ79をオンすると共にNOxセンサ50をオン(第1及び第2の酸素ポンプセル並びにセンサセルに電圧を印加)し、ヒータ79のみでNOxセンサ50を暖機している。図中、実線で示すのが新品センサの場合、破線で示すのが耐久試験後の劣化センサの場合である。なお、陰極側ポンプ電極75における酸素吸着は当該電極が低温であるほど起こりやすく、常温程度ではそれが確実に起こること、またNOxセンサ50の暖機後にはそれが起こらないことが分かっている。例えばNOxセンサ50のヒータ79が約750〜800℃の範囲の一定温度に制御されているような場合には酸素吸着は起こらない。
【0051】
時刻t0からヒータ79による加熱を開始すると、内燃機関が始動されておらず排ガス及びこれに含まれるNOxが無い状態であるにも拘わらず、暫くしてセンサ出力I1がNOx濃度ゼロ相当の値I10から立ち上がり、あたかもNOx濃度が増大したかのような挙動を示す。これは、センサ放置中に陰極側ポンプ電極75上に吸着された酸素O2が、陰極側ポンプ電極75上において分解され、酸素イオンとなって基準電極70に向かって移動し、陰極側ポンプ電極75と基準電極70との間に酸素イオン量に比例した電流I1が流れるからである。この立ち上がったセンサ出力I1は、陰極側ポンプ電極75上における吸着酸素の分解、脱離と共にやがてNOx濃度ゼロ相当の値I10に復帰する。
【0052】
このとき、図から分かるように、NOxセンサ50が劣化するほど、吸着酸素量が減少し、センサ出力I1の挙動が小さくなる。即ち、センサ出力I1のピーク値I1Pが小さくなり、吸着酸素に基づくセンサ出力I1が現れる時間も短くなる。
【0053】
そこで、本実施形態では、かかるセンサ出力I1の挙動を利用してセンサセルの酸素吸着能、より言えばその指標値たる酸素吸着能パラメータを計測する。
【0054】
酸素吸着能計測の第1例は、センサ出力I1のピーク値I1Pに基づきセンサセルの酸素吸着能を計測するものである。即ち、ECU100によりセンサ出力I1が立ち上がったときのピーク値I1Pを取得し、その取得した値をセンサセルの酸素吸着能とするものである。
【0055】
酸素吸着能計測の第2例は、センサ出力I1の積算値に基づきセンサセルの酸素吸着能を計測するものである。即ち、ECU100により、センサ出力I1が立ち上がっている間の所定のサンプリング周期毎のセンサ出力I1nを順次積算し、その最終積算値ΣI1nをセンサセルの酸素吸着能とするものである。なおここでいうセンサ出力I1nとは、実際のセンサ出力I1からNOx濃度ゼロ相当の値I10を減じた差をいう。
【0056】
酸素吸着能計測の第3例は、センサ出力I1の立ち上がり時間に基づきセンサセルの酸素吸着能を計測するものである。即ち、ECU100により、センサ出力I1が、NOx濃度ゼロ相当の値I10より若干大きい所定値I1s以上となっている時間Δtを計測し、この立ち上がり時間Δtをセンサセルの酸素吸着能とするものである。
【0057】
これらいずれの計測方法を採用した場合でも、NOxセンサ50が劣化するほど、各パラメータ値I1P、ΣI1n、Δtは小さくなっていく。よってこれら各パラメータ値が、予め定められた異常判定値以下であるとき、NOxセンサ50が異常である(劣化している)と判定される。
【0058】
図4〜図6には、センサセルの酸素吸着能パラメータとしてセンサ出力ピーク値I1P、センサ出力積算値ΣI1n及びセンサ出力立ち上がり時間Δtをそれぞれ用いた場合の、各パラメータとNOxセンサ劣化度との相関を表すグラフを示す。図示するように、NOxセンサ劣化度が大きくなるほど各パラメータ値は次第に減少していく。そして各パラメータ値が、対応する異常判定値I1Ps、ΣI1ns、Δtsと比較され、異常判定値以下ならばNOxセンサ50は異常と判定される。この異常判定と同時にチェックランプ等の警告装置がオンされ、NOxセンサ50の交換がユーザに促される。
【0059】
ところで、図示されるような各パラメータ値とNOxセンサ劣化度との相関性を利用して、本実施形態では、NOxセンサ50が正常と判定された場合に、NOxセンサ出力I1が補正される。具体的には、実際のNOxセンサ出力I1に基づいて得られる検出NOx濃度Cが、一定の劣化度のNOxセンサ、本実施形態では新品のNOxセンサ50のときに得られるようなNOx濃度となるように、検出NOx濃度Cが補正される。図7には補正マップの一例を示し、実際に得られたNOxセンサ出力I1とパラメータ値とに基づいてマップからNOx濃度補正量ΔCが算出され、このNOx濃度補正量ΔCが、実際のNOxセンサ出力I1から換算された検出NOx濃度Cに加算され、新品のNOxセンサで得られるような補正後NOx濃度C’が求められる。この補正後NOx濃度C’が前述したようなNOx触媒への還元剤添加量制御等といった各種制御に用いられる。NOx濃度補正量ΔCは、実際のNOxセンサ出力I1が大きいほど、またパラメータ値が小さいほど、大きな値となるよう設定される。なお、パラメータ値が新品NOxセンサ相当の大きな値であれば、NOx濃度補正量ΔCは当然にゼロとなる。補正方法についてはこのような補正量を加算する方法以外も可能であり、例えば補正量を乗算する方法も可能である。
【0060】
次に、具体的な異常診断処理を図8に基づいて説明する。図示されるルーチンはECU100により所定周期(例えば16msec)毎に繰り返し実行される。
【0061】
最初のステップS101では、異常診断を行うのに適した所定条件、特にエンジン始動前にNOxセンサ50のヒータ79をオンするのに適した所定条件が成立しているか否かが判断される。なお、このようなエンジン始動前のヒータオンをプレヒートという。例えば、エンジン停止状態の車両に乗員が乗り込むためドアが開放され、このドア開放と同時にドアスイッチがオンとなり、プレヒートが開始されるような車両の場合には、ドアスイッチがオンとなることが条件の一つである。また、バッテリ電圧がプレヒートに耐え得るだけの十分に高い値であることを条件の一つとするのも好ましい。このほか、エンジンスイッチ28がセルスタータオン位置手前のアクセサリオン位置にあることを条件の一つとしてもよい。
【0062】
所定条件が成立していないと判断された場合、本ルーチンが終了される。他方、所定条件が成立していると判断された場合、ステップS102においてヒータ79がオンされ、NOxセンサ50の暖機が実行される。なおヒータオンと同時に各セルへの電圧印加が開始され、NOxセンサ50自体が作動開始となる。
【0063】
次のステップS103においては、エンジンが始動されたか否か、具体的にはセルスタータがオンされたか否かが判断される。エンジンが始動された場合、本ルーチンが終了される。他方、エンジンがまだ始動されてない場合、ステップS104に進んで、センサセルの酸素吸着能を示すパラメータ、即ち、センサ出力ピーク値I1P、センサ出力積算値ΣI1n及びセンサ出力立ち上がり時間Δtのいずれかの計測が実行される。
【0064】
次いでステップS105では当該パラメータの計測が終了したか否かが判断される。計測がまだ終了していない場合には本ルーチンが終了され、他方、計測が終了した場合にはステップS106に進んで、NOxセンサ50の異常判定が実行される。即ち、計測されたパラメータとこれに対応する劣化判定値とが比較され、パラメータが劣化判定値より大きいときはNOxセンサ50は正常、パラメータが劣化判定値以下のときはNOxセンサ50は異常と判定される。
【0065】
次に、ステップS107において、判定結果が異常か否かが判断される。判定結果が異常の場合にはステップS108においてチェックランプ等の警告装置がオンされ、ユーザに警告がなされ、本ルーチンが終了される。他方、判定結果が正常の場合には、ステップS109に進んで、パラメータの計測値が更新記憶され、本ルーチンが終了される。このパラメータ計測値は、前に述べたように、以降のNOx濃度検出時にNOxセンサ出力I1を補正するための補正量を算出する際に利用される。
【0066】
次に、異常診断の別の態様について説明する。上記で述べた異常診断の一態様は、エンジン始動前のヒータのプレヒート中におけるNOxセンサ出力に基づいて酸素吸着能を計測し、異常を診断するものであった。これに対し、この別の態様は、エンジン始動後のフューエルカット中にNOxセンサの酸素ポンプセルに対し、所定時間の印加電圧の減少、停止及び逆転のいずれかを実行し、その後印加電圧を元の既定状態に復帰させ、当該復帰後のNOxセンサ出力に基づいて酸素吸着能を計測し、異常を診断するものである。
【0067】
エンジンの燃料噴射を停止するフューエルカット中には、NOxセンサ50に空気が供給され、この空気が、第1室64及び第2室65内に侵入する。そしてこれに加え、NOxセンサの酸素ポンプセルに対し、所定時間の印加電圧の減少、停止及び逆転のいずれかを実行すると、印加電圧減少の場合には酸素ポンプセルによる第1室64及び第2室65からの酸素の汲み出し(排出)量が減少し、印加電圧停止の場合には酸素ポンプセルによる第1室64及び第2室65からの酸素の汲み出し量がゼロとなり、印加電圧逆転の場合には酸素ポンプセルにより第1室64及び第2室65に酸素が汲み入れられるようになり、いずれの場合も、陰極側ポンプ電極75に対し積極的に酸素を供給し、陰極側ポンプ電極75に酸素を吸着させることができるようになる。特に、フューエルカットと併せて酸素ポンプセル印加電圧の減少、停止及び逆転のいずれかを実行することで、フューエルカット時間が短いような場合でも陰極側ポンプ電極75に積極的に酸素を吸着させることができる。この後、フューエルカット継続中に酸素ポンプセルの印加電圧を元の既定状態に復帰させることにより、前記一態様と同様の図3で示したようなセンサ出力挙動が得られ、これを利用してNOxセンサ50の酸素吸着能を計測し、NOxセンサ50の異常診断を実行することができる。
【0068】
なお、ここでいう酸素ポンプセルとは、本実施形態の場合、陰極側第1ポンプ電極67および陽極側第1ポンプ電極68を備える第1の酸素ポンプセルと、陰極側第2ポンプ電極72および陽極側第1ポンプ電極68を備える第2の酸素ポンプセルとの少なくとも一方をいう。従って、両方の酸素ポンプセルに対し印加電圧の減少、停止及び逆転のいずれかを実行してもよいし、何れか一方の酸素ポンプセルに対し印加電圧の減少、停止及び逆転のいずれかを実行してもよい。一方の酸素ポンプセルに対しては印加電圧を逆転し、他方の酸素ポンプセルに対しては印加電圧を停止するといったように、一方と他方とで印加電圧の印加の仕方を変えてもよい。勿論、陰極側ポンプ電極75に酸素をできるだけ吸着させるためには、両方の酸素ポンプセルの印加電圧を逆転させるのが最も好ましい。
【0069】
この別の態様に係る具体的な異常診断処理を図9に基づいて説明する。図示されるルーチンはECU100により所定周期(例えば16msec)毎に繰り返し実行される。
【0070】
最初のステップS201では、異常診断を行うのに適した所定条件が成立しているか否かが判断される。ここではエンジンがフューエルカット中であることが所定条件成立のための必須条件である。なおアクセル開度センサ27によって検出されるアクセル開度が略全閉であり、且つ、クランク角センサ16の出力に基づいて計算されるエンジン回転速度がアイドルより若干高い所定速度以上であるとき、フューエルカット(減速フューエルカット)が実行される。このほか、エンジンが暖機後であること、NOxセンサ50が活性済みであることなどを条件に含めるのが好ましい。
【0071】
所定条件が成立していないと判断された場合、本ルーチンが終了される。他方、所定条件が成立していると判断された場合、ステップS202に進んで、陰極側ポンプ電極75に酸素を積極的に吸着させるべく、酸素ポンプセルの印加電圧が減少、停止又は逆転させられる。なお、このときより積極的に酸素を吸着させるため、陰極側ポンプ電極75の温度を低下させるべく、NOxセンサ50のヒータ79の加熱を減少又は停止するのが好ましい。
【0072】
次いで、ステップS203において、この酸素ポンプセルの印加電圧の減少、停止又は逆転開始から所定時間が経過したか否かが判断される。この所定時間は、陰極側ポンプ電極75に必要量の酸素が吸着されるような時間として設定される。
【0073】
所定時間がまだ経過していない場合、本ルーチンが終了される。他方、所定時間が経過した場合には、ステップS204に進んで、酸素ポンプセルの印加電圧が元の既定状態に復帰させられる。
【0074】
この後は、前記ステップS104〜S109と同様のステップS205〜S210が実行され、即ち、センサセルの酸素吸着能を示すパラメータが計測され、この計測されたパラメータに基づいてNOxセンサ50の異常判定等が実行される。
【0075】
以上で述べた異常診断は、いずれの態様も、NOxセンサ50の上流側に位置するNOx触媒34の影響を受けない。即ち、NOxセンサ50のヒータ79のプレヒート中に行う異常診断の一態様の場合、エンジン始動前、即ちエンジン停止中に酸素吸着能の計測を行うため、エンジンの燃焼室から排気ガスは排出されておらず、NOxセンサ50の雰囲気ガスが空気であるときに計測が行われる。また、エンジンのフューエルカット中に行う異常診断の別の態様の場合も、エンジンの燃焼室から排出されNOx触媒34を素通りした空気がNOxセンサ50に供給されているときに酸素吸着能の計測が行われる。よって、一般的には困難なエンジン搭載状態或いは車載状態での診断も好適に行える利点がある。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は他の実施形態を採ることも可能である。例えば、本発明は任意の内燃機関に適用可能であり、圧縮着火式内燃機関のほか、例えば火花点火式内燃機関、特に直噴リーンバーンガソリンエンジンにも適用可能である。また排気浄化システムとして前記尿素SCRシステムの他、任意の形態の排気浄化システムに本発明は適用可能である。NOxセンサについても図2に示したような構造以外のものに本発明は適用可能である。
【0077】
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施形態に係る内燃機関の概略的なシステム図である。
【図2】NOxセンサのセンサ部の構造を示す断面図である。
【図3】NOxセンサの暖機中におけるセンサ出力の変化を示すグラフである。
【図4】センサセルの酸素吸着能パラメータとNOxセンサ劣化度との相関を示すグラフであり、パラメータとしてセンサ出力ピーク値を用いた場合である。
【図5】センサセルの酸素吸着能パラメータとNOxセンサ劣化度との相関を示すグラフであり、パラメータとしてセンサ出力積算値を用いた場合である。
【図6】センサセルの酸素吸着能パラメータとNOxセンサ劣化度との相関を示すグラフであり、パラメータとしてセンサ出力立ち上がり時間を用いた場合である。
【図7】補正マップの一例を示す図である。
【図8】異常診断の一態様に係る異常診断処理を示すフローチャートである。
【図9】異常診断の別の態様に係る異常診断処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0079】
10 エンジン
15 排気通路
26 クランク角センサ
27 アクセル開度センサ
34 選択還元型NOx触媒
40 尿素添加弁
50 NOxセンサ
67 陰極側第1ポンプ電極
68 陽極側第1ポンプ電極
70 基準電極
72 陰極側第2ポンプ電極
75 陰極側ポンプ電極
79 ヒータ
100 電子制御ユニット(ECU)
1 NOxセンサ出力
1P NOxセンサ出力ピーク値
ΣI1n NOxセンサ出力積算値
Δt NOxセンサ出力立ち上がり時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられたNOxセンサの異常診断装置であって、
前記NOxセンサのセンサセルにおける酸素吸着能を計測する計測手段と、
前記計測手段により計測された酸素吸着能に基づき、前記NOxセンサの異常を判定する判定手段と
を備えたことを特徴とするNOxセンサの異常診断装置。
【請求項2】
前記計測手段は、前記内燃機関の始動前に前記NOxセンサのヒータをオンし、このヒータオン実行中における前記NOxセンサの出力に基づいて前記酸素吸着能を計測する
ことを特徴とする請求項1記載のNOxセンサの異常診断装置。
【請求項3】
前記計測手段は、前記内燃機関のフューエルカット中に前記NOxセンサの酸素ポンプセルに対し所定時間の印加電圧の減少、停止及び逆転のいずれかを実行し、その後印加電圧を元の既定状態に復帰させ、当該復帰後のNOxセンサ出力に基づいて、前記酸素吸着能を計測する
ことを特徴とする請求項1記載のNOxセンサの異常診断装置。
【請求項4】
前記判定手段により前記NOxセンサが正常と判定されたとき、少なくとも前記計測手段により計測された酸素吸着能に基づき、前記NOxセンサの出力を補正する補正手段を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のNOxセンサの異常診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−168617(P2009−168617A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7096(P2008−7096)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)