Oリング装着装置
【課題】多くのOリングを保持させることができるとともに、保持させたOリングを軸体の伸長方向に容易に推し進めることができるOリング装着装置を提供する。
【解決手段】Oリング1を拡開させるリング拡開部8と、このリング拡開部8で拡開されたOリング1が推し進められるとともに、軸体に嵌着されるスライド輸送部15とを備え、このスライド輸送部15の表面に、Oリング1を装着させる複数の凹形状部11と、これらの凹形状部11の間に配置される凸形状部13とを形成した構成にしてある。スライド輸送部15は、リング拡開部8と同一芯に形成されてリング拡開部8に連設され、Oリング1が装着される軸体の外径よりも大きな内径6Bを有する中空円筒形状から成り、凹形状部11の横幅11Aを、Oリング1の幅寸法1Cよりも大きな寸法に設定してある。
【解決手段】Oリング1を拡開させるリング拡開部8と、このリング拡開部8で拡開されたOリング1が推し進められるとともに、軸体に嵌着されるスライド輸送部15とを備え、このスライド輸送部15の表面に、Oリング1を装着させる複数の凹形状部11と、これらの凹形状部11の間に配置される凸形状部13とを形成した構成にしてある。スライド輸送部15は、リング拡開部8と同一芯に形成されてリング拡開部8に連設され、Oリング1が装着される軸体の外径よりも大きな内径6Bを有する中空円筒形状から成り、凹形状部11の横幅11Aを、Oリング1の幅寸法1Cよりも大きな寸法に設定してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンやボルト等の軸体にシール機能を有するOリングを装着させる際に用いられるOリング装着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンやボルト等の軸体の外周面に設けた溝に、環状のシール機能を有するOリングを装着させる場合、Oリングは比較的硬い材質から成り弾性変形しにくいことから、素手で前述の溝に装着させることはかなり困難であった。
【0003】
図11は、従来のOリング装着装置にあって、Oリングを軸体の溝に装着させるときの状態を示す側面図である。
【0004】
図11に示す従来のOリング装着装置は、Oリング1Aを拡開させる図示しない円錐形状のリング拡開部と、このリング拡開部で拡開されたOリング1Aが矢印20に示すように作業者の指19によって推し進められるとともに、軸体5に嵌着されるスライド輸送部29とを備えた構成になっている。軸体5にはOリング1Aが装着される溝17が形成されている。また軸体5には、例えば雄ねじ部5Aが形成されており、この雄ねじ部5Aにナット28が螺合するようになっている。
【0005】
この従来のOリング装着装置は、図示しないリング拡開部で拡開された複数のOリング1Aが、スライド輸送部29に互いに接触するように保持させ、この状態で同図11に示すように、スライド輸送部29が図示しないリング拡開部から離脱され、軸体5に嵌着される。そして、軸体5の溝17に最も近いOリング1Aが作業者の指19によって矢印20に示すように推し進められ、軸体5の溝17に装着されるようになっている。この種の従来技術として特許文献1に示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−164254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来技術にあっては、スライド輸送部29のOリング1Aを軸体5の溝17に装着させるに際し、スライド輸送部29に複数のOリング1Aが互いに接するように保持されているので、軸体5の溝17に装着させる1つのOリング1Aのみを溝17方向へ推し進めることが難しく、このために作業が煩雑になり、このOリング装着作業の能率の向上を見込めなかった。
【0008】
なお、スライド輸送部29に取り付けられる複数のOリング1Aを、互いに間隔をあけてスライド輸送部29に保持させることが考えられるが、スライド輸送部29に保持されるOリング1Aは、図示しないリング拡開部において捻れを生じやすい。したがって、スライド輸送部29において複数のOリング1Aを間隔をあけて保持させようとしても、前述した捻れを戻す力によってスライド輸送部29上でOリング1Aが移動して互いに密着しやすいのが実状である。このようなことから、スライド輸送部29に保持させるOリング1Aを単に1つとしたり、仮にスライド輸送部29に複数のOリング1Aを保持させる場合には、互いの間隔を十分に大きくすることなどが行なわれており、結局、スライド輸送部29に保持させるOリング1Aの数に制約を受けやすい。したがって、このようなことによっても従来にあっては、Oリング装着作業の能率の向上を見込めなかった。
【0009】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、スライド輸送部に比較的多くのOリングを保持させることができるとともに、スライド輸送部に保持させたOリングを軸体の伸長方向に容易に推し進めることができるOリング装着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係るOリング装着装置は、軸体にOリングを装着する際に用いられ、前記Oリングを拡開させるリング拡開部と、このリング拡開部で拡開されたOリングが推し進められるとともに、前記軸体に嵌着されるスライド輸送部とを備えたOリング装着装置において、前記スライド輸送部の表面に形成され、前記Oリングを保持させる複数の凹形状部、及びこれらの凹形状部の間に配置される凸形状部を備えたことを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明は、リング拡開部で拡開された例えば複数のOリングのそれぞれは、スライド輸送部の複数の凹形状部のそれぞれ対応するものに1つずつ保持させることができる。この場合、リング拡開部においてOリングに捻れを生じていても、その捻れの解放によるOリングの移動を凸形状部で阻止するので、Oリングを凹形状部に確実に保持させることができる。これにより、スライド輸送部に比較的多くのOリングを保持させることができる。また、凸形状部の幅寸法を作業者の指等によるOリングの推し進め作業が可能となる範囲内の小さな寸法に予め設定しておくことにより、スライド輸送部に形成する凹形状部の数を多くしてスライド輸送部に比較的多くのOリングを保持させることができるとともに、スライド輸送部に保持させたOリングを作業者の指等によって軸体の伸長方向に容易に推し進めることができる。
【0012】
また、本発明に係るOリング装着装置は、前記発明において、前記スライド輸送部は、前記リング拡開部と同一芯に形成されて前記リング拡開部に連設され、前記Oリングが装着される前記軸体の外径よりも大きな内径を有する中空円筒形状から成り、前記凹形状部の横幅を、前記Oリングの径方向と直交する方向の寸法である前記Oリングの幅寸法よりも大きな寸法に設定したことを特徴としている。このように構成した本発明は、凹形状部の外側にOリングがはみ出ないように、凹形状部内にOリングを保持させることができる。
【0013】
また、本発明に係るOリング装着装置は、前記発明において、前記凹形状部、及び前記凸形状部のそれぞれの形状を環状に形成したことを特徴としている。このように構成した本発明は、Oリングの全体を凹形状部内に保持させることができる。
【0014】
また、本発明に係るOリング装着装置は、前記発明において、前記スライド輸送部の内部に、前記Oリングが装着される前記軸体に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を形成したことを特徴としている。このように構成した本発明は、軸体の雄ねじ部とスライド輸送部の雌ねじ部とを螺合させることにより、軸体に対してスライド輸送部を確実に位置決めすることができる。
【0015】
また、本発明に係るOリング装着装置は、前記発明において、前記リング拡開部を前記スライド輸送部に対して着脱可能に設けたことを特徴としている。このように構成した本発明は、Oリングをスライド輸送部に保持させる際には、例えば軸体が存在する場所とは異なる場所において、予めリング拡開部をスライド輸送部に装着させてOリングをスライド輸送部に保持させることができる。このようにする場合には、Oリングを軸体に装着させるに際し、スライド輸送部からリング拡開部を離脱させて、軸体が存在する場所までOリングが保持されたスライド輸送部のみを持参すればよい。このようにすることにより、スライド輸送部にOリングを保持させる作業と、軸体にOリングを装着する作業とを独立させることができ、軸体にOリングを装着させる作業を能率良く行なうことができる。また、保持可能なOリングの数が異なる複数のスライド輸送部を予め設けておき、これらのスライド輸送部のいずれか好適なものにリング拡開部を着脱可能とすることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、リング拡開部で拡開されたOリングが推し進められるとともに、Oリングが装着される軸体に嵌着されるスライド輸送部の表面に形成され、Oリングを保持させる複数の凹形状部、及びこれらの凹形状部の間に配置される凸形状部を備えたことから、複数の凹形状部のそれぞれにリング拡開部における捻れの影響を受けることなく、1つずつOリングを保持させることができる。また、凸形状部の幅寸法を作業者の指等によるOリングの推し進め作業が可能となる範囲内の小さな寸法に予め設定しておくことにより、スライド輸送部に形成する凹形状部の数を多くしてスライド輸送部に比較的多くのOリングを保持させることができるとともに、スライド輸送部に保持させたOリングを作業者の指等によって軸体の伸長方向に容易に推し進めることができる。これらにより、従来に比べてOリング装着作業の能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るOリング装着装置の第1実施形態を示す図で、(A)図は分解した状態を示す側面図、(B)図は(A)図のa部拡大図である。
【図2】Oリングが装着される装置の一例として挙げたエレベータの制動装置を示す図で、(A)図は側面図、(B)図は(A)図のb部拡大図である。
【図3】第1実施形態に係るOリング装着装置を用いて行なわれるOリングの取外し、取り付け作業の手順を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態に係るOリング装着装置に、Oリングを取り付ける作業を説明する図で、(A)図はOリング取り付け前の状態を示す側面図、(B)図はOリングを取り付ける直前の状態を示す側面図、(C)図はOリングをリング拡開部に挿入した状態を示す側面図である。
【図5】第1実施形態に係るOリング装着装置に、Oリングを取り付ける作業を説明する図で、(A)図は最初のOリングをスライド輸送部に保持させた状態を示す側面図、(B)図はその後に保持されたOリングを含めて複数のOリングをスライド輸送部に保持させた状態を示す側面図、(C)図はスライド輸送部からリング拡開部を離脱させた状態を示す側面図である。
【図6】スライド輸送部を図3に示すエレベータの制動装置に備えられる軸体に嵌着させる作業を示す図で、(A)図はスライド輸送部を軸体に嵌着させる直前の状態を示す側面図、(B)図はスライド輸送部を軸体に嵌着させた状態を示す側面図である。
【図7】本実施形態のスライド輸送部に保持させたOリングを図3に示すエレベータの制動装置に備えられる軸体の溝に装着させる作業を示す図で、(A)図はOリングを軸体の溝に装着させる直前の状態を示す側面図、(B)図はOリングを軸体の溝に装着させた状態を示す側面図である。
【図8】Oリングを装着させた軸体から第1実施形態のスライド輸送部を離脱させた状態を示す側面図である。
【図9】本発明に係るOリング装着装置の第2実施形態を示す側面図である。
【図10】本発明に係るOリング装着装置の第3実施形態を示す側面図である。
【図11】従来のOリング装着装置にあって、Oリングを軸体の溝に装着させるときの状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るOリング装着装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明に係るOリング装着装置の第1実施形態を示す図で、(A)図は分解した状態を示す側面図、(B)図は(A)図のa部拡大図ある。
【0020】
この図1に示すように、第1実施形態に係るOリング装着装置は、Oリング1を拡開させるリング拡開部8と、このリング拡開部8で拡開されたOリング1が推し進められるとともに、後述の軸体5に嵌着されるスライド輸送部15とを備えている。
【0021】
リング拡開部8は、例えばスライド輸送部15に対して着脱可能に設けられ、Oリング1が挿入される径小部2と、この径小部2から延設されOリング1の内径1aを拡開させる円錐部3と、この円錐部3の最大径部から延設される水平部4と、この水平部4の反径小部2側に設けられ、Oリング1の移動時にOリング1を傷めないように面取りした丸み部4aと、Oリング1が装着される後述の軸体5の外径6に比べて例えば同等以下の寸法の外径6Aを有する嵌合部7とを備えている。
【0022】
スライド輸送部15は、リング拡開部8の嵌合部7の外径6Aよりも大きな内径6Bを有し、例えばリング拡開部8と同一芯に形成されてリング拡開部8に連設される中空円筒形状から成っている。このスライド輸送部15の内径6Bは後述の軸体5の外径6よりも大きく設定してある。また、このスライド輸送部15の表面には、Oリング1が1つずつ装着される複数の例えば環状の凹形状部11と、これらの凹形状部11の間に配置され、Oリング1の捻れが解放された際に生じるOリング1の移動を阻止するセパレータを形成する例えば環状の凸形状部13と、同図1の(B)図に示すように、Oリング1を保持させる際にOリング1を傷めないように面取りした丸み部14とを備えている。上述した凹形状部11の横幅11Aは、例えばOリング1の径方向と直交する方向の寸法であるOリング1の幅寸法1Cよりも大きな寸法に設定してある。また凸形状部13の幅寸法、すなわち、例えばスライド輸送部15の凹形状部11のそれぞれに1つずつOリング1が保持された際に隣り合うOリング1間の間隔に相応する寸法が、作業者の指等によるOリング1の推し進め作業が可能となる範囲内の小さな寸法に設定してある。
【0023】
図2は、Oリングが装着される装置の一例として挙げたエレベータの制動装置を示す図で、(A)図は側面図、(B)図は(A)図のb部拡大図である。
【0024】
第1実施形態に係るOリング装着装置が用いられる軸体5が備えられる装置、例えばエレベータの制動装置24には保護板25,26が設けられている。保護板25には、軸体5が挿入されており、この軸体5には保護板25を挟むように一対のナット27,28が螺合している。保護板25内に位置する軸体5の部分には溝17が設けられ、この溝17にOリング1が装着され、このOリング1によって制動装置24内への浸水防止が図られている。この制動装置24は、定期的に分解清掃が行われるものである。
【0025】
図3は、第1実施形態に係るOリング装着装置を用いて行なわれるOリングの取外し、取り付け作業の手順を示すフローチャートである。
【0026】
以下に、第1実施形態に係るOリング装着装置を用いて、制動装置24の軸体5に装着されている古いOリング1を、新しいOリング1に交換する作業について、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0027】
はじめに、ナット27を軸体5から外し、保護板25を軸体5から外すことが行なわれる(手順S1)。次に、軸体5から今まで装着されていた古いOリング1を外すことが行なわれる(手順S2)。次にナット28を軸体5から外し、保護板26を軸体5から外すことが行なわれる(手順S3)。この状態において制動装置24の清掃が行われる(手順S4)。
【0028】
制動装置24の清掃が終了し、新しいOリング1を軸体5に装着するに際しては、まず、軸体5に保護板26を取り付け、次に軸体5にナット28を取り付けることが行われる(手順S5)。
【0029】
ここで例えば、図4の(A)図に示すように、スライド輸送部15にリング拡開部8を装着して、両者を一体的に組立てることが行なわれる(手順S6)。
【0030】
次に、図4の(B)(C)図の矢印16で示すように、リング拡開部8の径小部2からOリング1を挿入させ、円錐部3でOリング1を拡開することが行なわれる。次に、図5の(A)図に示すように、拡開されたOリング1をリング拡開部8からスライド輸送部15に移動させ、このスライド輸送部15の最先端に位置する凹形状部11に保持させることが行なわれる。同様にして、同図5の(B)図に示すように、他の複数のOリング1も、スライド輸送部15に形成された残りの凹形状部11に、それぞれ1つずつ保持させることが行なわれる(手順S7)。
【0031】
次に、同図5の(C)図に示すように、スライド輸送部15からリング拡開部8を離脱させることが行われる(手順S8)。
【0032】
次に、図6の(A)図の矢印18で示すように、複数のOリング1を保持させたスライド輸送部15を、軸体5に嵌着させることが行なわれる(手順S9)。このとき、同図6の(B)図に示すように、スライド輸送部15の端面15Aを、軸体5の溝17に対して位置決めすることが行なわれる(手順S10)。
【0033】
このような状態において、図7の(A)(B)図の矢印20で示すように、例えば作業者の指19によって、スライド輸送部15の凹形状部11に保持されているOリング1を推し進め、軸体5の溝17に装着させることが行なわれる(手順S11)。
【0034】
最後に、図8に示すように、軸体5からスライド輸送部15を取り外すことが行なわれ、軸体5に対するOリング1の交換作業は終了する(手順S12)。以下、Oリング1の装着が必要な箇所が別にあるときは、上述と同様にしてOリング1の装着作業が行なわれる。
【0035】
このように構成した第1実施形態に係るOリング装着装置によれば、上述したようにリング拡開部8で拡開された複数のOリング1のそれぞれは、スライド輸送部15の複数の凹形状部11のそれぞれ対応するものに1つずつ保持させることができる。この場合、リング拡開部8においてOリング1に捻れを生じていても、その捻れの解放によるOリング1の移動を凸形状部13で阻止するので、Oリング1を凹形状部11に確実に保持させることができる。これにより、スライド輸送部15に比較的多くのOリング1を保持させることができる。また、凸形状部13の幅寸法を作業者の指19等によるOリング1の推し進め作業が可能となる範囲内の小さな寸法に予め設定してあることから、スライド輸送部15に形成する凹形状部11の数を多くしてスライド輸送部15に比較的多くのOリング1を保持させることができるとともに、スライド輸送部15に保持させたOリング1を作業者の指19等によって軸体5の伸長方向に容易に推し進めることができる。これらによりOリング1の装着作業の能率を向上させることができる。
【0036】
また、凹形状部11の横幅11Aを、Oリング1の幅寸法1Cよりも大きな寸法に設定してあることから、凹形状部11の外側にOリング1がはみ出さないように、凹形状部11内にOリング1を保持させることができる。これにより、スライド輸送部15にOリング1を安定して保持させることができる。
【0037】
また、凹形状部11及び凸形状部13のそれぞれを環状に形成してあることから、Oリング1の全体を凹形状部11内に保持させることができ、スライド輸送部15におけるOリング1の安定保持に貢献する。
【0038】
また、リング拡開部8をスライド輸送部15に対して着脱可能に設けてあるので、Oリング1をスライド輸送部15に保持させる際には、例えば軸体5が備えられる制動装置24の設置場所とは異なる場所において、予めリング拡開部8をスライド輸送部15に装着させてOリング1をスライド輸送部15に保持させることができる。このようにする場合には、Oリング1を軸体5に装着させるに際し、スライド輸送部15からリング拡開部8を離脱させて、軸体5を備えた制動装置24の設置場所までOリング1が保持されたスライド輸送部15のみを持参すればよい。このようにすることにより、スライド輸送部15にOリング1を保持させる作業と、軸体5にOリング1を装着する作業とを独立させることができ、軸体5にOリング1を装着させる作業を能率良く行なうことができる。
【0039】
また、スライド輸送部15の内径6Bを軸体5の外径6よりも大きく設定してあることから、軸体5に雄ねじ部5Aが存在していてもOリング1を傷つけることなく溝17に確実に装着させることができる。
【0040】
図9は、本発明に係るOリング装着装置の第2実施形態を示す側面図である。
【0041】
この図9に示す第2実施形態は、スライド輸送部22の内部に、前述したリング拡開部8の嵌合部7に嵌合する嵌合部7Aを有するとともに、この嵌合部7Aに連設させて、軸体5の雄ねじ部5Aに螺合する雌ねじ部5Bを形成させてある。その他の構成は、前述した第1実施形態におけるのと同様である。
【0042】
このように構成した第2実施形態も、Oリング1を保持する複数の凹形状部11と、これらの凹形状部11の間に設けられる凸形状部13とを備えていることから、前述した第1実施形態と同等の作用効果が得られる。また、スライド輸送部22が、軸体5の雄ねじ部5Aに螺合する雌ねじ部5Bを有することから、軸体5の雄ねじ部5Aとスライド輸送部22の雌ねじ部5Bとを螺合させることにより、軸体5に対してスライド輸送部22を確実に位置決めすることができ、Oリング1の装着作業の作業精度を高めることができる。
【0043】
図10は、本発明に係るOリング装着装置の第3実施形態を示す側面図である。
【0044】
この図10に示す第3実施形態は、前述した第1,第2実施形態に備えられるスライド輸送部15,22に比べて長さ寸法が長く、凹形状部11の数が多いスライド輸送部23を備えた構成にしてある。その他の構成は前述した第1実施形態におけるのと同様である。このように構成した第3実施形態も、複数の凹形状部11と、これらの凹形状部11の間に設けられる凸形状部13とを有することから、第1実施形態と同等の作用効果が得られる。また、スライド輸送部23に設ける凹形状部11の数を、第1,第2実施形態に備えられる凹形状部11の数よりも多く設定してあることから、より多くのOリング1を保持させることができる。
【0045】
なお、第1,第2実施形態に示すスライド輸送部15,22とともに、第3実施形態に示すスライド輸送部23を予め用意しておくことにより、予想される軸体5に装着されるOリング1の数に応じて、より好適と考えられるスライド輸送部を選択し、選択されたスライド輸送部に対してリング拡開部8を着脱させることができる。これにより、Oリング1の装着作業の能率をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 Oリング
1C 幅寸法
2 径小部
3 円錐部
4 水平部
5 軸体
5A 雄ねじ部
5B 雌ねじ部
6 外径
6A 外径
6B 内径
7 嵌合部
7A 嵌合部
8 リング拡開部
9 表面
11 凹形状部
11A 横幅
13 凸形状部
15 スライド輸送部
17 溝
22 スライド輸送部
23 スライド輸送部
24 エレベータの制動装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンやボルト等の軸体にシール機能を有するOリングを装着させる際に用いられるOリング装着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンやボルト等の軸体の外周面に設けた溝に、環状のシール機能を有するOリングを装着させる場合、Oリングは比較的硬い材質から成り弾性変形しにくいことから、素手で前述の溝に装着させることはかなり困難であった。
【0003】
図11は、従来のOリング装着装置にあって、Oリングを軸体の溝に装着させるときの状態を示す側面図である。
【0004】
図11に示す従来のOリング装着装置は、Oリング1Aを拡開させる図示しない円錐形状のリング拡開部と、このリング拡開部で拡開されたOリング1Aが矢印20に示すように作業者の指19によって推し進められるとともに、軸体5に嵌着されるスライド輸送部29とを備えた構成になっている。軸体5にはOリング1Aが装着される溝17が形成されている。また軸体5には、例えば雄ねじ部5Aが形成されており、この雄ねじ部5Aにナット28が螺合するようになっている。
【0005】
この従来のOリング装着装置は、図示しないリング拡開部で拡開された複数のOリング1Aが、スライド輸送部29に互いに接触するように保持させ、この状態で同図11に示すように、スライド輸送部29が図示しないリング拡開部から離脱され、軸体5に嵌着される。そして、軸体5の溝17に最も近いOリング1Aが作業者の指19によって矢印20に示すように推し進められ、軸体5の溝17に装着されるようになっている。この種の従来技術として特許文献1に示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−164254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来技術にあっては、スライド輸送部29のOリング1Aを軸体5の溝17に装着させるに際し、スライド輸送部29に複数のOリング1Aが互いに接するように保持されているので、軸体5の溝17に装着させる1つのOリング1Aのみを溝17方向へ推し進めることが難しく、このために作業が煩雑になり、このOリング装着作業の能率の向上を見込めなかった。
【0008】
なお、スライド輸送部29に取り付けられる複数のOリング1Aを、互いに間隔をあけてスライド輸送部29に保持させることが考えられるが、スライド輸送部29に保持されるOリング1Aは、図示しないリング拡開部において捻れを生じやすい。したがって、スライド輸送部29において複数のOリング1Aを間隔をあけて保持させようとしても、前述した捻れを戻す力によってスライド輸送部29上でOリング1Aが移動して互いに密着しやすいのが実状である。このようなことから、スライド輸送部29に保持させるOリング1Aを単に1つとしたり、仮にスライド輸送部29に複数のOリング1Aを保持させる場合には、互いの間隔を十分に大きくすることなどが行なわれており、結局、スライド輸送部29に保持させるOリング1Aの数に制約を受けやすい。したがって、このようなことによっても従来にあっては、Oリング装着作業の能率の向上を見込めなかった。
【0009】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、スライド輸送部に比較的多くのOリングを保持させることができるとともに、スライド輸送部に保持させたOリングを軸体の伸長方向に容易に推し進めることができるOリング装着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係るOリング装着装置は、軸体にOリングを装着する際に用いられ、前記Oリングを拡開させるリング拡開部と、このリング拡開部で拡開されたOリングが推し進められるとともに、前記軸体に嵌着されるスライド輸送部とを備えたOリング装着装置において、前記スライド輸送部の表面に形成され、前記Oリングを保持させる複数の凹形状部、及びこれらの凹形状部の間に配置される凸形状部を備えたことを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明は、リング拡開部で拡開された例えば複数のOリングのそれぞれは、スライド輸送部の複数の凹形状部のそれぞれ対応するものに1つずつ保持させることができる。この場合、リング拡開部においてOリングに捻れを生じていても、その捻れの解放によるOリングの移動を凸形状部で阻止するので、Oリングを凹形状部に確実に保持させることができる。これにより、スライド輸送部に比較的多くのOリングを保持させることができる。また、凸形状部の幅寸法を作業者の指等によるOリングの推し進め作業が可能となる範囲内の小さな寸法に予め設定しておくことにより、スライド輸送部に形成する凹形状部の数を多くしてスライド輸送部に比較的多くのOリングを保持させることができるとともに、スライド輸送部に保持させたOリングを作業者の指等によって軸体の伸長方向に容易に推し進めることができる。
【0012】
また、本発明に係るOリング装着装置は、前記発明において、前記スライド輸送部は、前記リング拡開部と同一芯に形成されて前記リング拡開部に連設され、前記Oリングが装着される前記軸体の外径よりも大きな内径を有する中空円筒形状から成り、前記凹形状部の横幅を、前記Oリングの径方向と直交する方向の寸法である前記Oリングの幅寸法よりも大きな寸法に設定したことを特徴としている。このように構成した本発明は、凹形状部の外側にOリングがはみ出ないように、凹形状部内にOリングを保持させることができる。
【0013】
また、本発明に係るOリング装着装置は、前記発明において、前記凹形状部、及び前記凸形状部のそれぞれの形状を環状に形成したことを特徴としている。このように構成した本発明は、Oリングの全体を凹形状部内に保持させることができる。
【0014】
また、本発明に係るOリング装着装置は、前記発明において、前記スライド輸送部の内部に、前記Oリングが装着される前記軸体に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を形成したことを特徴としている。このように構成した本発明は、軸体の雄ねじ部とスライド輸送部の雌ねじ部とを螺合させることにより、軸体に対してスライド輸送部を確実に位置決めすることができる。
【0015】
また、本発明に係るOリング装着装置は、前記発明において、前記リング拡開部を前記スライド輸送部に対して着脱可能に設けたことを特徴としている。このように構成した本発明は、Oリングをスライド輸送部に保持させる際には、例えば軸体が存在する場所とは異なる場所において、予めリング拡開部をスライド輸送部に装着させてOリングをスライド輸送部に保持させることができる。このようにする場合には、Oリングを軸体に装着させるに際し、スライド輸送部からリング拡開部を離脱させて、軸体が存在する場所までOリングが保持されたスライド輸送部のみを持参すればよい。このようにすることにより、スライド輸送部にOリングを保持させる作業と、軸体にOリングを装着する作業とを独立させることができ、軸体にOリングを装着させる作業を能率良く行なうことができる。また、保持可能なOリングの数が異なる複数のスライド輸送部を予め設けておき、これらのスライド輸送部のいずれか好適なものにリング拡開部を着脱可能とすることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、リング拡開部で拡開されたOリングが推し進められるとともに、Oリングが装着される軸体に嵌着されるスライド輸送部の表面に形成され、Oリングを保持させる複数の凹形状部、及びこれらの凹形状部の間に配置される凸形状部を備えたことから、複数の凹形状部のそれぞれにリング拡開部における捻れの影響を受けることなく、1つずつOリングを保持させることができる。また、凸形状部の幅寸法を作業者の指等によるOリングの推し進め作業が可能となる範囲内の小さな寸法に予め設定しておくことにより、スライド輸送部に形成する凹形状部の数を多くしてスライド輸送部に比較的多くのOリングを保持させることができるとともに、スライド輸送部に保持させたOリングを作業者の指等によって軸体の伸長方向に容易に推し進めることができる。これらにより、従来に比べてOリング装着作業の能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るOリング装着装置の第1実施形態を示す図で、(A)図は分解した状態を示す側面図、(B)図は(A)図のa部拡大図である。
【図2】Oリングが装着される装置の一例として挙げたエレベータの制動装置を示す図で、(A)図は側面図、(B)図は(A)図のb部拡大図である。
【図3】第1実施形態に係るOリング装着装置を用いて行なわれるOリングの取外し、取り付け作業の手順を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態に係るOリング装着装置に、Oリングを取り付ける作業を説明する図で、(A)図はOリング取り付け前の状態を示す側面図、(B)図はOリングを取り付ける直前の状態を示す側面図、(C)図はOリングをリング拡開部に挿入した状態を示す側面図である。
【図5】第1実施形態に係るOリング装着装置に、Oリングを取り付ける作業を説明する図で、(A)図は最初のOリングをスライド輸送部に保持させた状態を示す側面図、(B)図はその後に保持されたOリングを含めて複数のOリングをスライド輸送部に保持させた状態を示す側面図、(C)図はスライド輸送部からリング拡開部を離脱させた状態を示す側面図である。
【図6】スライド輸送部を図3に示すエレベータの制動装置に備えられる軸体に嵌着させる作業を示す図で、(A)図はスライド輸送部を軸体に嵌着させる直前の状態を示す側面図、(B)図はスライド輸送部を軸体に嵌着させた状態を示す側面図である。
【図7】本実施形態のスライド輸送部に保持させたOリングを図3に示すエレベータの制動装置に備えられる軸体の溝に装着させる作業を示す図で、(A)図はOリングを軸体の溝に装着させる直前の状態を示す側面図、(B)図はOリングを軸体の溝に装着させた状態を示す側面図である。
【図8】Oリングを装着させた軸体から第1実施形態のスライド輸送部を離脱させた状態を示す側面図である。
【図9】本発明に係るOリング装着装置の第2実施形態を示す側面図である。
【図10】本発明に係るOリング装着装置の第3実施形態を示す側面図である。
【図11】従来のOリング装着装置にあって、Oリングを軸体の溝に装着させるときの状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るOリング装着装置の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明に係るOリング装着装置の第1実施形態を示す図で、(A)図は分解した状態を示す側面図、(B)図は(A)図のa部拡大図ある。
【0020】
この図1に示すように、第1実施形態に係るOリング装着装置は、Oリング1を拡開させるリング拡開部8と、このリング拡開部8で拡開されたOリング1が推し進められるとともに、後述の軸体5に嵌着されるスライド輸送部15とを備えている。
【0021】
リング拡開部8は、例えばスライド輸送部15に対して着脱可能に設けられ、Oリング1が挿入される径小部2と、この径小部2から延設されOリング1の内径1aを拡開させる円錐部3と、この円錐部3の最大径部から延設される水平部4と、この水平部4の反径小部2側に設けられ、Oリング1の移動時にOリング1を傷めないように面取りした丸み部4aと、Oリング1が装着される後述の軸体5の外径6に比べて例えば同等以下の寸法の外径6Aを有する嵌合部7とを備えている。
【0022】
スライド輸送部15は、リング拡開部8の嵌合部7の外径6Aよりも大きな内径6Bを有し、例えばリング拡開部8と同一芯に形成されてリング拡開部8に連設される中空円筒形状から成っている。このスライド輸送部15の内径6Bは後述の軸体5の外径6よりも大きく設定してある。また、このスライド輸送部15の表面には、Oリング1が1つずつ装着される複数の例えば環状の凹形状部11と、これらの凹形状部11の間に配置され、Oリング1の捻れが解放された際に生じるOリング1の移動を阻止するセパレータを形成する例えば環状の凸形状部13と、同図1の(B)図に示すように、Oリング1を保持させる際にOリング1を傷めないように面取りした丸み部14とを備えている。上述した凹形状部11の横幅11Aは、例えばOリング1の径方向と直交する方向の寸法であるOリング1の幅寸法1Cよりも大きな寸法に設定してある。また凸形状部13の幅寸法、すなわち、例えばスライド輸送部15の凹形状部11のそれぞれに1つずつOリング1が保持された際に隣り合うOリング1間の間隔に相応する寸法が、作業者の指等によるOリング1の推し進め作業が可能となる範囲内の小さな寸法に設定してある。
【0023】
図2は、Oリングが装着される装置の一例として挙げたエレベータの制動装置を示す図で、(A)図は側面図、(B)図は(A)図のb部拡大図である。
【0024】
第1実施形態に係るOリング装着装置が用いられる軸体5が備えられる装置、例えばエレベータの制動装置24には保護板25,26が設けられている。保護板25には、軸体5が挿入されており、この軸体5には保護板25を挟むように一対のナット27,28が螺合している。保護板25内に位置する軸体5の部分には溝17が設けられ、この溝17にOリング1が装着され、このOリング1によって制動装置24内への浸水防止が図られている。この制動装置24は、定期的に分解清掃が行われるものである。
【0025】
図3は、第1実施形態に係るOリング装着装置を用いて行なわれるOリングの取外し、取り付け作業の手順を示すフローチャートである。
【0026】
以下に、第1実施形態に係るOリング装着装置を用いて、制動装置24の軸体5に装着されている古いOリング1を、新しいOリング1に交換する作業について、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0027】
はじめに、ナット27を軸体5から外し、保護板25を軸体5から外すことが行なわれる(手順S1)。次に、軸体5から今まで装着されていた古いOリング1を外すことが行なわれる(手順S2)。次にナット28を軸体5から外し、保護板26を軸体5から外すことが行なわれる(手順S3)。この状態において制動装置24の清掃が行われる(手順S4)。
【0028】
制動装置24の清掃が終了し、新しいOリング1を軸体5に装着するに際しては、まず、軸体5に保護板26を取り付け、次に軸体5にナット28を取り付けることが行われる(手順S5)。
【0029】
ここで例えば、図4の(A)図に示すように、スライド輸送部15にリング拡開部8を装着して、両者を一体的に組立てることが行なわれる(手順S6)。
【0030】
次に、図4の(B)(C)図の矢印16で示すように、リング拡開部8の径小部2からOリング1を挿入させ、円錐部3でOリング1を拡開することが行なわれる。次に、図5の(A)図に示すように、拡開されたOリング1をリング拡開部8からスライド輸送部15に移動させ、このスライド輸送部15の最先端に位置する凹形状部11に保持させることが行なわれる。同様にして、同図5の(B)図に示すように、他の複数のOリング1も、スライド輸送部15に形成された残りの凹形状部11に、それぞれ1つずつ保持させることが行なわれる(手順S7)。
【0031】
次に、同図5の(C)図に示すように、スライド輸送部15からリング拡開部8を離脱させることが行われる(手順S8)。
【0032】
次に、図6の(A)図の矢印18で示すように、複数のOリング1を保持させたスライド輸送部15を、軸体5に嵌着させることが行なわれる(手順S9)。このとき、同図6の(B)図に示すように、スライド輸送部15の端面15Aを、軸体5の溝17に対して位置決めすることが行なわれる(手順S10)。
【0033】
このような状態において、図7の(A)(B)図の矢印20で示すように、例えば作業者の指19によって、スライド輸送部15の凹形状部11に保持されているOリング1を推し進め、軸体5の溝17に装着させることが行なわれる(手順S11)。
【0034】
最後に、図8に示すように、軸体5からスライド輸送部15を取り外すことが行なわれ、軸体5に対するOリング1の交換作業は終了する(手順S12)。以下、Oリング1の装着が必要な箇所が別にあるときは、上述と同様にしてOリング1の装着作業が行なわれる。
【0035】
このように構成した第1実施形態に係るOリング装着装置によれば、上述したようにリング拡開部8で拡開された複数のOリング1のそれぞれは、スライド輸送部15の複数の凹形状部11のそれぞれ対応するものに1つずつ保持させることができる。この場合、リング拡開部8においてOリング1に捻れを生じていても、その捻れの解放によるOリング1の移動を凸形状部13で阻止するので、Oリング1を凹形状部11に確実に保持させることができる。これにより、スライド輸送部15に比較的多くのOリング1を保持させることができる。また、凸形状部13の幅寸法を作業者の指19等によるOリング1の推し進め作業が可能となる範囲内の小さな寸法に予め設定してあることから、スライド輸送部15に形成する凹形状部11の数を多くしてスライド輸送部15に比較的多くのOリング1を保持させることができるとともに、スライド輸送部15に保持させたOリング1を作業者の指19等によって軸体5の伸長方向に容易に推し進めることができる。これらによりOリング1の装着作業の能率を向上させることができる。
【0036】
また、凹形状部11の横幅11Aを、Oリング1の幅寸法1Cよりも大きな寸法に設定してあることから、凹形状部11の外側にOリング1がはみ出さないように、凹形状部11内にOリング1を保持させることができる。これにより、スライド輸送部15にOリング1を安定して保持させることができる。
【0037】
また、凹形状部11及び凸形状部13のそれぞれを環状に形成してあることから、Oリング1の全体を凹形状部11内に保持させることができ、スライド輸送部15におけるOリング1の安定保持に貢献する。
【0038】
また、リング拡開部8をスライド輸送部15に対して着脱可能に設けてあるので、Oリング1をスライド輸送部15に保持させる際には、例えば軸体5が備えられる制動装置24の設置場所とは異なる場所において、予めリング拡開部8をスライド輸送部15に装着させてOリング1をスライド輸送部15に保持させることができる。このようにする場合には、Oリング1を軸体5に装着させるに際し、スライド輸送部15からリング拡開部8を離脱させて、軸体5を備えた制動装置24の設置場所までOリング1が保持されたスライド輸送部15のみを持参すればよい。このようにすることにより、スライド輸送部15にOリング1を保持させる作業と、軸体5にOリング1を装着する作業とを独立させることができ、軸体5にOリング1を装着させる作業を能率良く行なうことができる。
【0039】
また、スライド輸送部15の内径6Bを軸体5の外径6よりも大きく設定してあることから、軸体5に雄ねじ部5Aが存在していてもOリング1を傷つけることなく溝17に確実に装着させることができる。
【0040】
図9は、本発明に係るOリング装着装置の第2実施形態を示す側面図である。
【0041】
この図9に示す第2実施形態は、スライド輸送部22の内部に、前述したリング拡開部8の嵌合部7に嵌合する嵌合部7Aを有するとともに、この嵌合部7Aに連設させて、軸体5の雄ねじ部5Aに螺合する雌ねじ部5Bを形成させてある。その他の構成は、前述した第1実施形態におけるのと同様である。
【0042】
このように構成した第2実施形態も、Oリング1を保持する複数の凹形状部11と、これらの凹形状部11の間に設けられる凸形状部13とを備えていることから、前述した第1実施形態と同等の作用効果が得られる。また、スライド輸送部22が、軸体5の雄ねじ部5Aに螺合する雌ねじ部5Bを有することから、軸体5の雄ねじ部5Aとスライド輸送部22の雌ねじ部5Bとを螺合させることにより、軸体5に対してスライド輸送部22を確実に位置決めすることができ、Oリング1の装着作業の作業精度を高めることができる。
【0043】
図10は、本発明に係るOリング装着装置の第3実施形態を示す側面図である。
【0044】
この図10に示す第3実施形態は、前述した第1,第2実施形態に備えられるスライド輸送部15,22に比べて長さ寸法が長く、凹形状部11の数が多いスライド輸送部23を備えた構成にしてある。その他の構成は前述した第1実施形態におけるのと同様である。このように構成した第3実施形態も、複数の凹形状部11と、これらの凹形状部11の間に設けられる凸形状部13とを有することから、第1実施形態と同等の作用効果が得られる。また、スライド輸送部23に設ける凹形状部11の数を、第1,第2実施形態に備えられる凹形状部11の数よりも多く設定してあることから、より多くのOリング1を保持させることができる。
【0045】
なお、第1,第2実施形態に示すスライド輸送部15,22とともに、第3実施形態に示すスライド輸送部23を予め用意しておくことにより、予想される軸体5に装着されるOリング1の数に応じて、より好適と考えられるスライド輸送部を選択し、選択されたスライド輸送部に対してリング拡開部8を着脱させることができる。これにより、Oリング1の装着作業の能率をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 Oリング
1C 幅寸法
2 径小部
3 円錐部
4 水平部
5 軸体
5A 雄ねじ部
5B 雌ねじ部
6 外径
6A 外径
6B 内径
7 嵌合部
7A 嵌合部
8 リング拡開部
9 表面
11 凹形状部
11A 横幅
13 凸形状部
15 スライド輸送部
17 溝
22 スライド輸送部
23 スライド輸送部
24 エレベータの制動装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体にOリングを装着する際に用いられ、
前記Oリングを拡開させるリング拡開部と、このリング拡開部で拡開されたOリングが推し進められるとともに、前記軸体に嵌着されるスライド輸送部とを備えたOリング装着装置において、
前記スライド輸送部の表面に形成され、前記Oリングを保持させる複数の凹形状部、及びこれらの凹形状部の間に配置される凸形状部を備えたことを特徴とするOリング装着装置。
【請求項2】
請求項1に記載のOリング装着装置において、
前記スライド輸送部は、前記リング拡開部と同一芯に形成されて前記リング拡開部に連設され、前記Oリングが装着される前記軸体の外径よりも大きな内径を有する中空円筒形状から成り、
前記凹形状部の横幅を、前記Oリングの径方向と直交する方向の寸法である前記Oリングの幅寸法よりも大きな寸法に設定したことを特徴とするOリング装着装置。
【請求項3】
請求項1に記載のOリング装着装置において、
前記凹形状部、及び前記凸形状部のそれぞれの形状を環状に形成したことを特徴とするOリング装着装置。
【請求項4】
請求項1に記載のOリング装着装置において、
前記スライド輸送部の内部に、前記Oリングが装着される前記軸体に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を形成したことを特徴とするOリング装着装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のOリング装着装置において、
前記リング拡開部を前記スライド輸送部に対して着脱可能に設けたことを特徴とするOリング装着装置。
【請求項1】
軸体にOリングを装着する際に用いられ、
前記Oリングを拡開させるリング拡開部と、このリング拡開部で拡開されたOリングが推し進められるとともに、前記軸体に嵌着されるスライド輸送部とを備えたOリング装着装置において、
前記スライド輸送部の表面に形成され、前記Oリングを保持させる複数の凹形状部、及びこれらの凹形状部の間に配置される凸形状部を備えたことを特徴とするOリング装着装置。
【請求項2】
請求項1に記載のOリング装着装置において、
前記スライド輸送部は、前記リング拡開部と同一芯に形成されて前記リング拡開部に連設され、前記Oリングが装着される前記軸体の外径よりも大きな内径を有する中空円筒形状から成り、
前記凹形状部の横幅を、前記Oリングの径方向と直交する方向の寸法である前記Oリングの幅寸法よりも大きな寸法に設定したことを特徴とするOリング装着装置。
【請求項3】
請求項1に記載のOリング装着装置において、
前記凹形状部、及び前記凸形状部のそれぞれの形状を環状に形成したことを特徴とするOリング装着装置。
【請求項4】
請求項1に記載のOリング装着装置において、
前記スライド輸送部の内部に、前記Oリングが装着される前記軸体に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を形成したことを特徴とするOリング装着装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のOリング装着装置において、
前記リング拡開部を前記スライド輸送部に対して着脱可能に設けたことを特徴とするOリング装着装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−115883(P2011−115883A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274608(P2009−274608)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】
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