説明

OA機器用ロールの再生処理方法、およびそのOA機器用ロール

【課題】ロール最外層の剥離除去を効率的に行い、内側の層は残したまま、ロールの軸体を効率的に回収および再利用するのに優れたOA機器用ロールの再生処理方法、およびそのOA機器用ロールを提供する。
【解決手段】軸体1と、この軸体1の外周に形成される複数の構成層2とを備え、上記複数の構成層2における最外層(保護層22)の近赤外レーザー透過率が30%以上に設定され、上記最外層の内側に隣接する層(ベースゴム層21)の近赤外レーザー吸収率が10%以上に設定されているロール3とする。そして、このように予め設定したロール3に対し、その再生処理段階で、上記最外層に対して近赤外レーザーを照射し、上記2層の界面から最外層を剥離除去し、上記内側の層を含む軸体1を回収し再利用に供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、電子写真複写機、プリンター、ファクシミリ等のOA(オフィス・オートメイション:Office Automation )機器に用いられる、複数の構成層を備えたOA機器用ロールに対する、有用な再生処理方法、およびそのOA機器用ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機やプリンター等のOA機器に用いられるロールには、現像ロール、帯電ロール、転写ロール、定着ロール、トナー供給ロール、除電ロール、搬送ロール、クリーニングロール等の各種ロールがあり、これらの多くは、軸体となる芯金の外周に、弾性ゴムによるベースゴム層や、樹脂による保護層等を多数積層し、形成されたものである。そして、このようなロールは、その使用により、磨耗を生じたり、汚染等による外観不良を生じたりした結果、実使用に支障をきたす状態になると、メンテナンスにより、そのロール自体の交換がなされるか、あるいは、そのロールが一体化されたカートリッジの交換がなされる。このようにして取り外されたロールは、通常、そのまま廃棄処分される。
【0003】
ところで、上記のような廃棄処分の対象となったロールであっても、ロールから芯金(基材)のみを取り外しリサイクル使用することは比較的容易である。また、ロール表面を洗浄すれば再利用できる場合もあり、さらに、ロール表面の摩耗や傷がひどくて洗浄では再生不可能な場合であっても、ベースゴム層等の内側の層は、特に傷み等がみられない場合が多い。これらのことから、上記のような部分を再利用せずに廃棄処分するのは、省資源や環境保全の観点からみても好ましくない。そこで、近年、磨耗や汚染等が生じたロールの外周部分のみを除去してベースゴム層等の内側の層は残したまま芯金を回収し、これを再利用するといった方法が各種検討されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開平8−171264号公報
【特許文献2】特開平8−91616号公報
【特許文献3】特開2003−131451公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に開示されている方法には、以下のような欠点がある。すなわち、上記特許文献1および2に開示の方法は、ロールの外周部分を研磨・切削により除去する方法であるが、ロールの保護層の厚みは1〜100μm程度と非常に薄いことから、この方法で保護層のみを除去するのは非常に困難であり、しかも、上記研磨・切削により、保護層除去後のロールの表面性や外径寸法を変化させるおそれもある。また、上記特許文献3に開示の方法は、有機溶剤により保護層を剥離除去する方法であるが、有機溶剤が引火性を有するために取り扱いに注意が必要であり、さらには有機溶剤によるベースゴム層の劣化、およびそれに伴うロール物性の低下を引き起こすおそれもある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ロール最外層の剥離除去を効率的に行い、内側の層は残したまま、ロールの軸体を効率的に回収および再利用するのに優れたOA機器用ロールの再生処理方法、およびそのOA機器用ロールの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、軸体と、この軸体の外周に形成される複数の構成層とを備えたOA機器用ロールの再生処理方法であって、予め、上記複数の構成層における最外層の近赤外レーザー透過率を30%以上に設定し、上記最外層の内側に隣接する層の近赤外レーザー吸収率を10%以上に設定し、再生処理段階で、上記最外層に対して近赤外レーザーを照射し、上記2層の界面から最外層を剥離除去し、上記内側の層を含む軸体を回収し再利用に供するOA機器用ロールの再生処理方法を第1の要旨とする。また、上記再生処理方法に用いられるOA機器用ロールであり、軸体と、この軸体の外周に形成される複数の構成層とを備え、上記複数の構成層における最外層の近赤外レーザー透過率が30%以上に設定され、上記最外層の内側に隣接する層の近赤外レーザー吸収率が10%以上に設定されているOA機器用ロールを第2の要旨とする。
【0007】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ね、その過程で、ロール表面にレーザー光を照射し、これによりロール最外層を熱昇華させて除去することを想起した。しかしながら、この方法では、レーザー光の吸収率が低い(透明性のある)最外層に対してはレーザーが反応しないため、適用が難しく、さらに、厚みのある最外層に対しての適用も難しい。そこで、このことに鑑み、本発明者らが研究に研究を重ねた結果、予め、ロール最外層の近赤外レーザー透過率を30%以上に設定し、その最外層の内側に隣接する層の近赤外レーザー吸収率を10%以上に設定し、再生処理段階で、その最外層に対して近赤外レーザーの照射を行うようにしたところ、図2に示すように、最外層である保護層22を透過した近赤外レーザー4が、上記最外層の内側の層(ベースゴム層21)との界面に到達し、そこで熱昇華がおこり、上記2層の界面での層間剥離が引き起こされるようになることを突き止めた。これにより、上記2層の界面での層間剥離が容易になされ、表面性や外径の変化のない内側の層を含む軸体を容易に回収し再利用することができるようになることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明のOA機器用ロールの再生処理方法は、その複数の構成層における最外層の近赤外レーザー透過率を30%以上に設定し、上記最外層の内側に隣接する層の近赤外レーザー吸収率を10%以上に設定し、再生処理段階で、上記最外層に対して近赤外レーザーを照射し、上記2層の界面から最外層を剥離除去し、内側の層を傷つけずに、この内側の層を含む軸体を回収し再利用に供する方法である。そのため、磨耗や汚染等が生じた最外層のみを容易に剥離除去することができ、その結果、従来、廃棄処分か、あるいは、芯金のみのリサイクル使用ぐらいしか再利用の途がなかった使用済みロールを、効率よくリサイクルすることができるようになる。また、これにより有効な資源活用を行うこともできる。しかも、回収されたものは、研磨除去のように表面性や外径の変化を生じていないことから、再利用しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
本発明のOA機器用ロール(以下、「ロール」と略す)の再生処理方法では、例えば、図1に示すように、軸体1と、この軸体1の外周に形成される構成層2(上記構成層2は、複数の層からなる。図1では、上記構成層2は、ベースゴム層21と、保護層22との、2層構造である)とを備えた、再生処理対象のロール3を、そのロール3製造時において、予め、上記構成層2における最外層(図1では保護層22)の近赤外レーザー透過率を30%に設定し、上記最外層の内側に隣接する層(図1ではベースゴム層21)の近赤外レーザー吸収率を10%以上に設定し、製造しておく。そして、上記ロール3が、磨耗や汚染等によって使用することができなくなり、再生処理が必要になったら、図示のように、上記最外層に対して、レーザー照射口6から近赤外レーザー4を照射する。この照射処理は、通常、図示のように、上記ロール3を軸中心に回転させ、その状態で軸方向に移動させながら行い、ロール3の一端から他端に向かって処理する。なお、回転および移動の方向は、図1と逆であってもよい。また、レーザー照射口6を軸方向に移動するようにしてもよい。これにより、上記近赤外レーザー4は、図2に示すように、最外層である保護層22を透過し、上記最外層の内側の層(ベースゴム層21)との界面に到達し、そこで熱昇華がおこり、上記2層の界面での層間剥離が引き起こされるようになる。したがって、この方法により、上記2層の界面で、磨耗や汚染等が生じた最外層のみを容易に剥離除去することができ、その結果、表面性や外径の変化がみられない内側の層(図1ではベースゴム層21)を含む軸体1を、効率的に回収することができるようになる。
【0011】
上記軸体1としては、特に限定されるものではなく、例えば、中空円筒体からなる芯金であっても、中実体からなる芯金であってもよい。そして、その形成材料についても、特に限定されず、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属材料等があげられる。なお、必要に応じ、軸体1上に接着剤、プライマー等を塗布してもよい。また、接着剤、プライマー等には、必要に応じて導電化を行ってもよい。
【0012】
上記軸体1の外周面に形成される構成層2は、複数の層からなるものであり、2層以上であれば、その層構成は特に限定されるものではないが、例えば、上記軸体1から、ベースゴム層,保護層の順に形成された2層構造のもの(図1参照)や、ベースゴム層,中間層,保護層の順に形成された3層構造のものがあげられる。
【0013】
そして、本発明では、先にも述べたように、上記構成層2における最外層の近赤外レーザー透過率を30%以上に設定し、上記最外層の内側に隣接する層の近赤外レーザー吸収率を10%以上に設定し、ロール3を製造する必要がある。好ましくは、上記最外層の近赤外レーザー透過率を45〜90%に設定し、上記最外層の内側に隣接する層の近赤外レーザー吸収率を50〜90%に設定することである。このように各層のレーザー特性を設定することにより、レーザー照射による最外層の剥離除去がスムーズに行われるようになる。なお、このように、上記ロール3における各層のレーザー特性を設定しても、電子写真複写機等の実機でロールを使用する際の条件等により層間剥離を生じることはないため、上記各層のレーザー特性が、直接的に、実使用時の層間密着性を損ねる要因となることはなく、上記ロール3は、本発明の処理を行うことにより、はじめて、層間剥離を生じるものとなる。
【0014】
上記ロール各層の近赤外レーザー透過率および近赤外レーザー吸収率は、具体的には、ロール各層と同じ材料からなるサンプルシート(厚みも、ロールの各層と同じもの)に対し、光入射角をシートに対して垂直入射し、分光光度計(UV−3150、SHIMAZU社製)にて、近赤外光波長領域(1064nm)で測定される。なお、近赤外レーザー吸収率は、〔100%−(近赤外レーザー反射率+近赤外レーザー透過率)〕の算出により求められる。
【0015】
なお、上記構成層2において、そのベースゴム層21の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリノルボルネンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム等があげられ、これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。また、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)等の従来公知の導電剤が、上記材料中に適宜添加される。さらに、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、架橋促進剤、オイル等を適宜添加してもよい。
【0016】
そして、上記構成層2を、図1に示すように、ベースゴム層21と保護層22との2層からなるものとし、ベースゴム層21と保護層22との界面で層間剥離が行われるようにする場合には、上記ベースゴム層21の近赤外レーザー吸収率を10%以上に設定する必要がある。なお、近赤外レーザー吸収率が高すぎると、レーザー出力によってはベースゴム層21が冒されるおそれがあるため、上記近赤外レーザー吸収率の上限を90%までに設定することが好ましい。上記ベースゴム層21は、その材料中の導電剤等により近赤外レーザー吸収率10%以上となる場合が多いが、近赤外レーザー吸収率10%未満のときは、その材料中にレーザー吸収成分が添加される。上記レーザー吸収成分としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、カラーブラック等のカーボンブラックや、フタロシアニン系色素、インモニウム系色素、アミニウム系色素、ナフタロシアニン系色素、ジオキサジン系色素等の着色剤があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。ここで、カーボンブラックによって上記ベースゴム層の近赤外レーザー吸収率を10%以上に設定する場合、ベースゴム層材料の主材料であるゴム100重量部(以下、「部」と略す)に対して、1〜50部の範囲内で配合することが好ましい。
【0017】
また、上記構成層2において、上記ベースゴム層21の外周面に、中間層を形成し、その後、上記中間層の外周面に保護層22を形成してもよい。上記中間層の形成材料としては、例えば、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、NBR、EPDM、SBR、H−NBR、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル、N−メトキシメチル化ナイロン等が、単独であるいは二種以上併せて用いられる。また、ベースゴム層と同様、カーボンブラック、イオン導電剤等の導電剤が、上記材料中に適宜添加される。
【0018】
そして、上記のように、構成層2を、ベースゴム層と中間層と保護層との3層からなるものとし、中間層と保護層との界面で層間剥離が行われるようにする場合には、上記中間層の近赤外レーザー吸収率を10%以上に設定する必要があるため、上記ベースゴム層21のときと同様、前記のレーザー吸収成分が上記中間層材料中に適宜添加される。ここで、カーボンブラックによって上記中間層の近赤外レーザー吸収率を10%以上に設定する場合、中間層材料の主材料(ゴム等)100部に対して、0.005〜50部の範囲内で配合することが好ましい。
【0019】
さらに、上記構成層2において、最外層として形成される保護層22の形成材料としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂(PVB)等があげられ、これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、塗工性の点で、ポリアミド樹脂が好適に用いられる。なお、上記成分以外に、必要により、導電剤、帯電制御剤等を適宜に添加してもよい。
【0020】
そして、上記保護層(最外層)の近赤外レーザー透過率は、先にも述べたように、30%以上に設定する必要がある。そのため、この層の形成材料中に用いられる導電剤は、主に、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)等が用いられる。
【0021】
そして、上記ロール3は、例えば、つぎのようにして製造することができる。
【0022】
すなわち、まず、上記ベースゴム層形成用の各成分材料をニーダーやロール等の混練機を用いて混練し、ベースゴム層用材料(コンパウンド)を調製する。また、中間層を形成する場合、その各成分材料をMEK等の溶剤に溶解し、中間層用材料(コーティング液)を調製する。保護層用材料(コーティング液)も、その各成分材料をMEK等の溶剤に溶解し、サンドミル等で分散することにより調製する。
【0023】
ついで、円筒状金型の中空部に、金属製の軸体1をセットし、上記円筒状金型と軸体1との空隙部に、上記ベースゴム層用材料を注型した後、金型を蓋し、加熱して、ベースゴム層用材料を架橋させる。その後、上記円筒状金型から脱型することにより、軸体1の外周面にベースゴム層が形成されたものを取り出す。ついで、上記ベースゴム層の外周面に、中間層形成用溶液や保護層形成用溶液を塗工(中間層形成用溶液の塗工は任意)し、層形成を行う。なお、この塗工法は、特に制限するものではなく、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等の従来の方法が適用できる。また、上記塗工後の層形成は、その塗工部分の乾燥および加熱処理(加硫処理、条件:120〜200℃×20〜90分)によりなされる。このようにして、軸体1の外周に複数の層が形成されたロール3を作製することができる。なお、上記各層の形成方法は、この製法に特に限定されるものではなく、例えば、押出形成等により形成してもよい。そして、このロール3において、ベースゴム層の厚みは1〜10mmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは2〜6mmである。また、中間層(任意)の厚みは3〜30μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜20μmである。そして、保護層の厚みは3〜30μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜20μmである。
【0024】
そして、このようにして作製したロール3が、実機使用により磨耗や汚染等が生じ、そのままでは継続して使用することができない状態になったら、図1に示すように、このロール3の保護層22(最外層)に対して近赤外レーザー4を照射する。これにより、上記近赤外レーザー4は、図2に示すように、保護層22を透過し、上記保護層22の内側の層(図ではベースゴム層21)との界面に到達し、そこで熱昇華がおこり、上記2層の界面での層間剥離が引き起こされるようになる。このようにして、磨耗や汚染等が生じた保護層22のみを除去し、表面性や外径の変化がみられない内側の層(図ではベースゴム層21)を含む軸体1を、効率的に回収することができるようになる。
【0025】
上記近赤外レーザー4の照射条件は、保護層22を剥離除去させるために必要な出力が要求される。その具体例としては、下記のような条件でのレーザー照射があげられる。
レーザー装置:サマック社製、CL500Q
レーザー照射条件:波長1064nm、パルス周波数44kHz、出力23A
レーザー照射時ロール回転数(図1参照):60rpm
レーザー照射時ロール軸方向送り速度(図1参照):10mm/sec
【0026】
このようにして、上記保護層22を剥離除去し、回収されたロール体は、前述のように、表面性や外径の変化を生じておらず、そのため、新たに保護層22のみを形成することにより、新品同様のものとして再度、使用および販売することができる。したがって、本発明の再生処理方法は、有効な資源活用を行うことができるとともに、リサイクル率がよいことから、全体的に製造コストをダウンさせることもできる。
【0027】
なお、本発明の再生処理方法が適用できるOA機器用ロールは、前記のような2層構造および3層構造のものに限定されるものではなく、その最外層の近赤外レーザー透過率と上記最外層の内側に隣接する層の近赤外レーザー吸収率とが特定範囲内になっておれば、それ以上の数の層を構成しても差し支えない。
【0028】
そして、上記OA機器用ロールは、電子写真複写機、プリンター、ファクシミリ等のOA機器における、現像ロール、帯電ロール、転写ロール、定着ロール、トナー供給ロール、除電ロール、搬送ロール、クリーニングロール等の各種ロールとして用いることができる。
【0029】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
〔ベースゴム層形成材料の調製〕
SBR(旭化成社製、タフデン1000)100部と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS−100)20部と、加硫促進剤であるノクセラーCZ(大内新興科学社製)0.5部と、加硫促進剤であるノクセラーBZ(大内新興科学社製)0.5部とを混合・攪拌することにより、ベースゴム層形成用のゴムコンパウンドを調製した。
【0031】
〔保護層形成用溶液の調製〕
アクリル樹脂(住友化学社製、スミベックスLG6A)100部と、カーボンブラック(昭和キャボット社製、ショウブラックN234)0.005部とを、溶剤(MEK)に溶解した後、混合・攪拌することにより、保護層形成用溶液を調製した。
【0032】
〔ロールの作製〕
まず、芯金としてアルミニウム製芯金を準備し、上記芯金の外周面に接着剤を塗布した。ついで、円筒状金型の中空部に、上記芯金をセットし、円筒状金型と芯金との空隙部に、上記ベースゴム層形成用のゴムコンパウンドを注型した後、金型に蓋をし、これを加熱(170℃×30分)して、ゴムコンパウンドを加硫し、その後脱型して、ベースゴム層付き芯金(ベースロール)を作製した。続いて、上記ベースロールの外周面に、上記調製の保護層形成用溶液をロールコート法により塗工し、乾燥処理を行ない、保護層を形成した。このようにして、2層構造のロール(ベースゴム層の厚み2mm。保護層の厚み10μm。)を作製した。
【実施例2】
【0033】
保護層形成用溶液中のカーボンブラックの配合量を0.0001部にした。それ以外は、実施例1と同様にして、同寸法の2層構造のロールを作製した。
【実施例3】
【0034】
保護層形成用溶液中のカーボンブラックの配合量を0部にした。それ以外は、実施例1と同様にして、同寸法の2層構造のロールを作製した。
【実施例4】
【0035】
ベースゴム層形成用のゴムコンパウンドを、EPDM(デュポンダウエラストマー社製、NordellP5565)100部と、ステアリン酸1部と、酸化亜鉛5部と、酸化チタン(石原産業社製、ET−300W)30部と、プロセスオイル30部と、硫黄1部と、加硫促進剤であるジベンゾチアゾールスルフィド2部と、加硫促進剤であるテトラメチルチウラムモノサルファイド1部とを混合・攪拌することにより調製した。それ以外は、実施例1と同様にして、同寸法の2層構造のロールを作製した。
【実施例5】
【0036】
ベースゴム層形成用のゴムコンパウンドを、EPDM(デュポンダウエラストマー社製、NordellP5565)100部と、ステアリン酸1部と、酸化亜鉛5部と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS−100)20部と、プロセスオイル30部と、硫黄1部と、加硫促進剤であるジベンゾチアゾールスルフィド2部と、加硫促進剤であるテトラメチルチウラムモノサルファイド1部とを混合・攪拌することにより調製した。それ以外は、実施例1と同様にして、同寸法の2層構造のロールを作製した。
【実施例6】
【0037】
まず、芯金としてアルミニウム製芯金を準備し、上記芯金の外周面に接着剤を塗布した。ついで、円筒状金型の中空部に、上記芯金をセットし、円筒状金型と芯金との空隙部に、シリコーンゴム(信越化学社製、X−34−387 A/B)を注型した後、金型に蓋をし、これを加熱(180℃×20分)して、シリコーンゴムを加硫し、その後脱型して、ベースゴム層付き芯金(ベースロール)を作製した。一方、H−NBR(日本ゼオン社製、ゼットポール2020)100部と、ステアリン酸0.5部と、亜鉛華5部と、アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS−100)30部と、酸化チタン(石原産業社製、ET−300W)30部と、加硫促進剤であるノクセラーCZ(大内新興科学社製)0.5部と、加硫促進剤であるノクセラーBZ(大内新興科学社製)0.5部とを、溶剤(MEK)に溶解した後、混合・攪拌することにより、中間層形成用溶液を調製した。また、アクリル樹脂(住友化学社製、スミベックスLG6A)100部と、カーボンブラック(昭和キャボット社製、ショウブラックN234)0.005部とを、溶剤(MEK)に溶解した後、混合・攪拌することにより、保護層形成用溶液を調製した。そして、上記ベースロールの外周面に、上記中間層形成用溶液をロールコート法により塗工した後、乾燥および加熱処理を行ない、ベースゴム層の外周面に中間層を形成し、さらに、上記中間層の外周面に、上記保護層形成用溶液をロールコート法により塗工した後、乾燥および加熱処理を行ない、中間層の外周面に保護層を形成した。このようにして、3層構造のロール(ベースゴム層の厚み2mm。中間層の厚み15μm。保護層の厚み10μm。)を作製した。
【実施例7】
【0038】
中間層形成用溶液中の酸化チタンの配合量を0.1部にした。それ以外は、実施例6と同様にして、同寸法の3層構造のロールを作製した。
【実施例8】
【0039】
中間層形成用溶液中の酸化チタンの配合量を0.01部にした。それ以外は、実施例6と同様にして、同寸法の3層構造のロールを作製した。
【実施例9】
【0040】
中間層形成用溶液中の酸化チタンの配合量を0部にした。それ以外は、実施例6と同様にして、同寸法の3層構造のロールを作製した。
【実施例10】
【0041】
中間層形成用溶液中の酸化チタンの配合量を0.1部にした。そして、保護層形成用溶液中のカーボンブラックの配合量を0.0001部にした。それ以外は、実施例6と同様にして、同寸法の3層構造のロールを作製した。
【実施例11】
【0042】
中間層形成用溶液中の酸化チタンの配合量を0.1部にした。そして、保護層形成用溶液中のカーボンブラックの配合量を0部にした。それ以外は、実施例6と同様にして、同寸法の3層構造のロールを作製した。
【0043】
〔比較例1〕
ベースゴム層形成用のゴムコンパウンドを、SBR(旭化成社製、タフデン1000)100部と、酸化チタン(石原産業社製、ET−300W)30部と、加硫促進剤であるノクセラーCZ(大内新興科学社製)0.5部と、加硫促進剤であるノクセラーBZ(大内新興科学社製)0.5部とを混合・攪拌することにより、ベースゴム層形成用のゴムコンパウンドを調製した。そして、保護層形成用溶液中のカーボンブラックの配合量を30部にした。それ以外は、実施例1と同様にして、同寸法の2層構造のロールを作製した。
【0044】
〔比較例2〕
ベースゴム層形成用のゴムコンパウンドを、SBR(旭化成社製、タフデン1000)100部と、酸化チタン(石原産業社製、ET−300W)30部と、加硫促進剤であるノクセラーCZ(大内新興科学社製)0.5部と、加硫促進剤であるノクセラーBZ(大内新興科学社製)0.5部とを混合・攪拌することにより、ベースゴム層形成用のゴムコンパウンドを調製した。それ以外は、実施例1と同様にして、同寸法の2層構造のロールを作製した。
【0045】
〔比較例3〕
ベースゴム層形成用のゴムコンパウンドを、SBR(旭化成社製、タフデン1000)100部と、酸化チタン(石原産業社製、ET−300W)30部と、加硫促進剤であるノクセラーCZ(大内新興科学社製)0.5部と、加硫促進剤であるノクセラーBZ(大内新興科学社製)0.5部とを混合・攪拌することにより、ベースゴム層形成用のゴムコンパウンドを調製した。そして、保護層形成用溶液中のカーボンブラックの配合量を0.0001部にした。それ以外は、実施例1と同様にして、同寸法の2層構造のロールを作製した。
【0046】
〔比較例4〕
ベースゴム層形成用のゴムコンパウンドを、SBR(旭化成社製、タフデン1000)100部と、酸化チタン(石原産業社製、ET−300W)30部と、加硫促進剤であるノクセラーCZ(大内新興科学社製)0.5部と、加硫促進剤であるノクセラーBZ(大内新興科学社製)0.5部とを混合・攪拌することにより、ベースゴム層形成用のゴムコンパウンドを調製した。そして、保護層形成用溶液中のカーボンブラックの配合量を0部にした。それ以外は、実施例1と同様にして、同寸法の2層構造のロールを作製した。
【0047】
〔比較例5〕
ベースゴム層形成用のゴムコンパウンドを、SBR(旭化成社製、タフデン1000)100部と、酸化チタン(石原産業社製、ET−300W)30部と、加硫促進剤であるノクセラーCZ(大内新興科学社製)0.5部と、加硫促進剤であるノクセラーBZ(大内新興科学社製)0.5部とを混合・攪拌することにより、ベースゴム層形成用のゴムコンパウンドを調製した。そして、保護層形成用溶液中のカーボンブラックの配合量を0.01部にした。それ以外は、実施例1と同様にして、同寸法の2層構造のロールを作製した。
【0048】
〔比較例6〕
保護層形成用溶液中のカーボンブラックの配合量を30部にした。それ以外は、実施例1と同様にして、同寸法の2層構造のロールを作製した。
【0049】
〔比較例7〕
保護層形成用溶液中のカーボンブラックの配合量を0.01部にした。それ以外は、実施例1と同様にして、同寸法の2層構造のロールを作製した。
【0050】
〔比較例8〕
中間層形成用溶液中のアセチレンブラックの配合量を0部にした。それ以外は、実施例6と同様にして、同寸法の3層構造のロールを作製した。
【0051】
〔比較例9〕
中間層形成用溶液中の酸化チタンの配合量を0.1部にした。そして、保護層形成用溶液中のカーボンブラックの配合量を30部にした。それ以外は、実施例6と同様にして、同寸法の3層構造のロールを作製した。
【0052】
〔比較例10〕
中間層形成用溶液中の酸化チタンの配合量を0.1部にした。そして、保護層形成用溶液中のカーボンブラックの配合量を0.01部にした。それ以外は、実施例6と同様にして、同寸法の3層構造のロールを作製した。
【0053】
このようにして得られた各ロールに関し、その最外層(保護層)の近赤外レーザー透過率、および上記最外層の内側に隣接する内面層(ベースゴム層または中間層)の近赤外レーザー吸収率を、その各層と同じ材料からなるサンプルシート(厚みも、ロールの各層と同じもの)に対し、光入射角をシートに対して垂直入射し、分光光度計(UV−3150、SHIMAZU社製)にて、近赤外光波長領域(1064nm)で測定した。なお、近赤外レーザー吸収率は、〔100%−(近赤外レーザー反射率+近赤外レーザー透過率)〕の算出により求めた。
【0054】
また、上記各ロールを用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表1〜表3に併せて示した。
【0055】
〔剥離状態〕
まず、上記各ロールの保護層に対し、レーザー装置(サマック社製、CL500Q)により、下記の条件で近赤外線レーザーを照射し、保護層の剥離除去を行った。
・レーザー波長1064nm、パルス周波数44kHz、出力23A
・レーザー照射時ロール回転数(図1参照):60rpm
・レーザー照射時ロール軸方向送り速度(図1参照):10mm/sec
【0056】
そして、上記照射後、ロール表面の目視評価により、保護層が良好に剥離されたもの(保護層の剥離率がロール表面積の95%を超えるもの)を○、保護層の剥離率がロール表面積の80%以上95%未満のものを△、保護層の剥離率がロール表面積の80%未満のものを×と評価した。
【0057】
〔再生特性〕
各ロールにおいて、その初期製品の表面粗さ(Ra)と、上記条件で保護層の剥離除去を行った後、再度保護層の形成を行った再生製品の表面粗さ(Ra)とを測定した。そして、表面粗さの変化量〔再生製品の表面粗さ(Ra)−初期製品の表面粗さ(Ra)〕が、0.3μm未満であるものを○、0.3μm以上0.5μm未満であるものを△、0.5μmを超えるものを×と評価した。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
上記の結果から、実施例のロールは、本発明の再生処理方法により、保護層(最外層)の層間剥離が良好になされ、その後の再生特性も良好であることがわかる。なお、これら実施例のロールは、現像ロールや帯電ロールとして使用することが可能であることが試験により確認されている。
【0062】
これに対し、比較例1,6および9のロールは、最外層(保護層)レーザー透過率が低すぎるため、剥離除去が良好になされなかった。また、その他の比較例のロールに関しては、たとえ最外層レーザー透過率が所望のレベルに達している場合であっても、その最外層の内側に隣接する内面層のレーザー吸収率が10%未満であるため、最外層の良好な剥離除去がなされず、再生特性の評価にも悪影響を及ぼした。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のロールの再生処理方法は、電子写真複写機等のOA機器用のロール(帯電ロール、現像ロール等)の再生処理に有用であるが、これ以外にも、あらゆる分野において使用される、積層構造を備えたロールの再生処理に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のロールの再生処理方法の一例を示す説明図である。
【図2】上記再生処理方法のメカニズムを詳細に示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1 軸体
2 構成層
3 ロール
4 近赤外線レーザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、この軸体の外周に形成される複数の構成層とを備えたOA機器用ロールの再生処理方法であって、予め、上記複数の構成層における最外層の近赤外レーザー透過率を30%以上に設定し、上記最外層の内側に隣接する層の近赤外レーザー吸収率を10%以上に設定し、再生処理段階で、上記最外層に対して近赤外レーザーを照射し、上記2層の界面から最外層を剥離除去し、上記内側の層を含む軸体を回収し再利用に供することを特徴とするOA機器用ロールの再生処理方法。
【請求項2】
上記複数の構成層が、ベースゴム層と保護層との2層からなり、ベースゴム層と保護層との界面で層間剥離が行われる、請求項1記載のOA機器用ロールの再生処理方法。
【請求項3】
上記複数の構成層が、ベースゴム層と中間層と保護層との3層からなり、中間層と保護層との界面で層間剥離が行われる、請求項1記載のOA機器用ロールの再生処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の再生処理方法に用いられるOA機器用ロールであり、軸体と、この軸体の外周に形成される複数の構成層とを備え、上記複数の構成層における最外層の近赤外レーザー透過率が30%以上に設定され、上記最外層の内側に隣接する層の近赤外レーザー吸収率が10%以上に設定されていることを特徴とするOA機器用ロール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−145711(P2008−145711A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332376(P2006−332376)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】