説明

OFDM送受信装置

【課題】OFDM方式により送信側装置1から受信側装置2へ信号を通信するOFDM送受信装置で、送信側の直交変調器12や受信側の直交復調器23で発生する振幅や位相に関する誤差を効果的に補正する。
【解決手段】送信側装置では、切り替え手段14〜16が、通常の通信信号(変調信号)を送信する状態と、テスト信号を送信する状態を切り替える。受信側装置では、補正手段33が補正係数を用いて直交復調結果の信号に対してOFDMの各サブキャリア毎に補正を行い、補正係数演算手段36、37がテスト信号の直交復調結果の信号に基づいて補正係数をOFDMの各サブキャリア毎に演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式において、送信側の直交変調器や受信側の直交復調器で発生する振幅や位相に関する誤差を効果的に補正するOFDM送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、直交変復調はそれぞれアナログで行う場合とディジタルで行う場合があるが、フィルタが簡易で済み、集積化で小型化に適している等の理由から、前者のアナログ方式が広く用いられている。しかしながら、アナログの直交変調器、直交復調器には誤差が含まれる。
【0003】
図4には、アナログ直交変調器102の構成例と局部発振器101を示してある。
本例のアナログ直交変調器102は、増幅器111、乗算器112、90度位相器113、増幅器114、乗算器115、加算器116を備えている。
【0004】
本例のアナログ直交変調器102では、局部発振器101からの信号(搬送波)が2つに分配されて、一方の分配信号が増幅器111により増幅されて乗算器112に入力され、他方の分配信号が90度位相器113により90度位相がずらされた後に増幅器114により増幅されて乗算器115に入力される。また、本例のアナログ直交変調器102では、変調信号を同相成分(I)と直交成分(Q)に分けた信号を入力する。そして、I変調信号は搬送波と乗算器112において乗算され、Q変調信号は90度位相のずれた搬送波と乗算器115において乗算され、加算器116においてこれらの乗算結果の信号が加算されて、当該加算結果がアナログ直交変調器102の出力(被変調信号)となる。
【0005】
ここで、本例のアナログ直交変調器102では、I、Qの変調信号のそれぞれが通過する乗算器112、115から加算器116までの利得差、乗算器112、115におけるそれぞれの搬送波の振幅差等の原因により、IとQの振幅誤差が生じる。また、90度位相器113の誤差、90度位相器113から加算器116までの経路差、搬送波の漏洩等の原因により、直交度の誤差が生じる。
【0006】
図5には、アナログ直交復調器122の構成例と局部発振器121を示してある。
本例のアナログ直交復調器122は、増幅器131、乗算器132、90度位相器133、増幅器134、乗算器135を備えている。
【0007】
本例のアナログ直交復調器122では、本例のアナログ直交変調器102とおおよそ反対の動作を行う。具体的には、局部発振器121からの信号(搬送波)が2つに分配されて、一方の分配信号が増幅器131により増幅されて乗算器132に入力され、他方の分配信号が90度位相器133により90度位相がずらされた後に増幅器134により増幅されて乗算器135に入力される。また、被変調信号(被変調波)が2つに分配されて各乗算器132、135に入力され、被変調信号と搬送波が乗算器132において乗算されることでI復調信号が生成され、被変調信号と90度位相のずれた搬送波が乗算器135において乗算されることでQ復調信号が生成される。
【0008】
ここで、本例のアナログ直交復調器122においても、本例のアナログ直交変調器102について述べたのと同様な理由により、IとQの振幅誤差、直交度の誤差が生じる。
これらの誤差は、例えば、アナログ直交変調器102では、変調信号の信号処理をすることで補正することが可能である。
【0009】
図6には、直交変調器の誤差を補正する構成例を示してある。
本例の誤差補正構成では、局部発振器及び直交変調器(例えば、局部発振器101及びアナログ直交変調器102)に対して、乗算器141、加算器142、乗算器143を備えている。
本例では、直交変調器のI側利得がGであり、Q側利得がGであり、G≠Gであるとし、また、直交誤差がθであるとし、また、I変調信号をi(t)と表し、Q変調信号をq(t)と表し、搬送波の各周波数をωと表す。なお、tは時刻を表す。
【0010】
この場合、誤差補正を考慮しないと、直交変調器からの出力は(式1)のように表される。
これは、変調信号だけに注目すれば、(式2)の変換が行われた信号を入力とした、誤差を持たない直交変調器の出力信号とみなすことができる。
このため、誤差を補正するためには、逆変換である(式3)の処理を直交変調器の入力前で施せばよい。
【0011】
【数1】

【数2】

【数3】

【0012】
具体的には、図6に示される誤差補正構成において、乗算器141でQ変調信号q(t)と設定された係数tanθとを乗算し、その乗算結果とI変調信号i(t)とを加算器142で加算して、その加算結果を直交変調器へI側の信号として入力し、また、乗算器143でQ変調信号q(t)と設定された係数G/(Gcosθ)とを乗算して、その乗算結果を直交変調器へQ側の信号として入力することで、直交変調器からの出力が誤差を含まない理想的な出力となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−363757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述した誤差は、変調信号の周波数に対して必ずしも一定ではない。近年のディジタル変調信号では、通信速度の高速化のために、広帯域のOFDM方式で各サブキャリアも多値変調されることが多くなっているが、こういった場合に周波数特性を有する誤差を含んだ変調器或いは復調器を使用すると、サブキャリア間で変調精度或いは復調精度の差異を生じ、その程度によっては、あるサブキャリアでは問題なく通信できる多値変調が、異なるサブキャリアで使用すると通信困難となり、それ故にレートの低い変調方式にせざるを得ない、という状況が予想され、その結果として全体のスループットの低下を引き起こすことが考えられる。
【0015】
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、例えば、OFDM方式において、送信側の直交変調器や受信側の直交復調器で発生する振幅や位相に関する誤差を効果的に補正することができるOFDM送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明では、OFDM方式により送信側装置から受信側装置へ信号を通信するOFDM送受信装置において、次のような構成とした。
すなわち、前記送信側装置では、信号に対して直交変調を行う直交変調器を備え、そして、切り替え手段が、通常の通信信号に対して前記直交変調器により直交変調を行った結果の信号を前記受信側装置へ送信する状態と、前記通常の通信信号とは別の所定のテスト信号に対して前記直交変調器により直交変調を行った結果の信号を前記受信側装置へ送信する状態と、を切り替える。
また、前記受信側装置では、直交復調器が、前記送信側装置からの信号に対して直交復調を行う。補正手段が、前記送信側装置から前記受信側装置への信号伝送において発生する振幅及び位相に関する誤差をOFDMの各サブキャリア毎に補正するための補正係数を用いて、前記直交復調器により直交復調を行った結果の信号に対してOFDMの各サブキャリア毎に補正を行う。補正係数演算手段が、前記送信側装置から前記テスト信号の直交変調結果の信号が送信される状態における前記直交復調器による直交復調結果の信号に基づいて、前記補正手段で用いられる補正係数をOFDMの各サブキャリア毎に演算する。
【0017】
従って、例えば、OFDM方式において、送信側の直交変調器や受信側の直交復調器(例えば、更に、伝搬路(伝送路))で発生する振幅や位相に関する誤差を効果的に補正することができる。具体的には、このような誤差をOFDMの各サブキャリア毎に補正することができ、また、送信側から受信側への信号伝送における全体的な誤差をまとめて受信側(のみ)で補正することができる。
また、テスト信号を用いて補正係数を求め、その補正係数を用いて通常の通信信号に対する補正を行うことができる。
【0018】
ここで、送信側装置や受信側装置としては、それぞれ、種々なものが用いられてもよく、例えば、送信機能と受信機能の両方を有する通信装置が用いられてもよい。
また、送信側装置と受信側装置との間の通信としては、例えば、無線通信が用いられてもよく、或いは、有線通信が用いられてもよい。
また、直交変調器や直交復調器としては、例えば、アナログ直交変調器やアナログ直交復調器が用いられる。
【0019】
また、テスト信号としては、種々なものが用いられてもよく、例えば、OFDMの各サブキャリア毎(各周波数毎)に異なるテスト信号が用いられ、具体例として、OFDMの各サブキャリア毎に、対応する周波数を有するテスト信号を用いることができる。
【0020】
また、送信側装置から通常の通信信号が送信される状態と、送信側装置からテスト信号が送信される状態とは、例えば、受信側装置においても把握され、具体例として、受信側装置が受信される信号を解析することにより状態を検出する態様や、或いは、送信側装置から受信側装置へ状態を示す情報を通知することで受信側装置がそれを検出する態様や、或いは、予め、各状態とする時刻等を定めて送信側装置のメモリと受信側装置のメモリに記憶しておく態様、などを用いることができる。
【0021】
また、送信側装置から受信側装置へ複数種類の異なるテスト信号を送信する場合には、例えば、送信側装置から受信側装置へ送信されるテスト信号の種類が受信側装置においても把握され、具体例として、受信側装置が受信されるテスト信号を解析(例えば、周波数を検出)することによりテスト信号の種類を検出する態様や、或いは、送信側装置から受信側装置へテスト信号の種類を示す情報を通知することで受信側装置がそれを検出する態様や、或いは、予め、各種類のテスト信号を用いる時刻又は順序等を定めて送信側装置のメモリと受信側装置のメモリに記憶しておく態様、などを用いることができる。
【0022】
また、受信側において、直交復調器により直交復調を行った結果の信号に対してOFDMの各サブキャリア毎に補正を行う態様としては、例えば、直交復調器により直交復調を行った結果の信号に対してフーリエ変換を行い、その結果に対してOFDMの各サブキャリア毎に補正を行う態様を用いることができる。
また、受信側において、テスト信号の受信結果に基づいて補正係数を演算する方法としては、種々な方法が用いられてもよく、例えば、予め、補正係数を演算するための数式等を受信側装置のメモリに記憶しておいて、その数式等に従って補正係数を演算する方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係るOFDM送受信装置によると、例えば、OFDM方式において、送信側の直交変調器や受信側の直交復調器で発生する振幅や位相に関する誤差を効果的に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例に係るOFDM送受信装置の構成例を示す図である。
【図2】送信側から受信側までの信号の流れの様子を簡略化して示す図である。
【図3】補正部の構成例を示す図である。
【図4】アナログ直交変調器の構成例と局部発振器を示す図である。
【図5】アナログ直交復調器の構成例と局部発振器を示す図である。
【図6】直交変調器の誤差を補正する構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施例に係るOFDM送受信装置の構成例を示してある。
本例のOFDM送受信装置は、送信側の装置1と、受信側の装置2と、これらの装置1、2を接続する伝搬路等(本例では、伝搬路とする)3から構成されている。
本例では、送信側装置1から無線の伝搬路3を介して受信側装置2へ信号を通信する。
【0026】
送信側装置1は、局部発振器11、直交変調器12、増幅器等(本例では、増幅器とする)13、スイッチ14、スイッチ15、制御部16、テスト信号発生部17a、17b、変調信号出力部18a、18bを備えている。
受信側装置2は、増幅器等(本例では、増幅器とする)21、局部発振器22、直交復調器23、増幅器等(本例では、増幅器とする)24、A/D(Analog to Digital)変換器25、増幅器等(本例では、増幅器とする)26、A/D変換器27、直/並列変換部31、離散フーリエ変換部32、補正部33、並/直列変換部34、OFDM復号部35、演算部36、補正係数決定部37を備えている。
【0027】
送信側装置1では、直交変調器12が、局部発振器11により発振される信号を用いて、直交変調対象となる同相成分(I)及び直交成分(Q)に対して直交変調処理を行い、そして、その結果の信号を、増幅器13を通過させて、伝搬路3を介して受信側装置2へ送信する。
また、送信側装置1では、制御部16が各スイッチ14、15の切り替え状態を制御することにより、直交変調器12に入力させる同相成分及び直交成分の信号として、テスト信号発生部17a、17bにより発生させられるテスト信号を入力させる状態と、変調信号出力部18a、18bにより出力されるOFDM方式の変調信号(実際に通信される信号)を入力させる状態とを切り替える。
【0028】
受信側装置2では、送信側装置1から伝搬路3を介して伝送されてきた信号(被変調信号)を受信して、増幅器21を通過させて、直交復調器23に入力する。直交復調器23は、局部発振器22により発振される信号を用いて、入力信号(受信信号)に対して直交復調処理を行い、そして、その結果の同相成分の信号を、増幅器24を通過させて、A/D変換器25に入力するとともに、その結果の直交成分の信号を、増幅器26を通過させて、A/D変換器27に入力する。各A/D変換器25、27は、入力信号をアナログ信号からディジタル信号へ変換して、直/並列変換部31及び演算部36へ出力する。
【0029】
データ通信用の経路では、直/並列変換部31が入力信号を直列から並列に変換し、その結果に対して離散フーリエ変換部32が離散フーリエ変換処理を行い、その結果に対して補正部33が補正処理を行い、その結果に対して並/直列変換部34が並列から直列に変換し、その結果に対してOFDM復号部35がOFDM復号処理を行う。
また、補正係数算出用の経路では、演算部36が入力信号に基づいて振幅等に関する演算を行い、その結果に基づいて補正係数決定部37が補正係数を決定して補正部33へ出力する。
【0030】
このように、本例では、送信側装置1は、直交変調器12への変調信号の入力として、データ通信用の通常の変調信号出力部18a、18bと補正係数算出用のテスト信号発生部17a、17bとを切り替えることが可能であり、これらを切り替えるための制御部16を有している。
また、受信側装置2は、直交復調器23から出力される復調信号をA/D変換した後のディジタルデータが、データ通信用の処理部へ行く経路と、補正係数算出のための演算部36へ行く経路を持っている。
【0031】
送受信部(送信側装置1及び受信側装置2)では、それぞれ、通常のデータ通信を行う動作モードと、テスト信号の送受信を行う動作モードを有している。
テスト信号の送受信を行う動作モードである場合には、送信側装置1では、直交変調器12への入力としてテスト信号発生部17a、17bからの出力を選択し、また、受信側装置2では、A/D変換器25、27からの出力により演算部36にて振幅等の算出が行われた後に、補正係数決定部37にて補正部33におけるデータ補正に使用する補正係数の算出が行われる。
【0032】
また、データ通信を行う動作モードである場合には、送信側装置1では、直交変調器12への入力として変調信号出力部18a、18bからの変調信号を選択し、また、受信側装置2では、直/並列変換部31から例えばFFT(Fast Fourier Transform)演算を用いる離散フーリエ変換部32を経た信号に対して、テスト信号の送受信を行う動作モードで作成された補正係数を使用して補正部33にて補正を行い、並/直列変換部34を経てOFDM復号部35にてOFDM復号することで、OFDM受信処理する経路により、データの受信動作を行う。
【0033】
次に、図2を参照して、テスト信号の送受信を行う動作モードにおいて補正係数を作成(算出)する過程を説明する。
図2には、送信側から受信側までの信号の流れの様子を簡略化して示してある。
本例では、送信側装置1において変調信号により直交変調された搬送波が、伝搬路3を経て、受信側装置2において直交復調器23により復調される場合を考える。
【0034】
ここで、直交変調器12に入力される変調信号の同相成分をiin(t)と表し、その直交成分をqin(t)と表し、また、直交変調器12におけるI側利得をGimと表し、それにおけるQ側利得をGqmと表し、それにおける直交誤差をθemと表す。
また、直交変調器12から直交復調器23までの伝搬路3における利得をρと表し、それにおける位相回転をφと表す。
また、直交復調器23におけるI側利得をGidと表し、それにおけるQ側利得をGqdと表し、それにおける直交誤差をθedと表し、また、直交復調器23からの出力信号について、同相成分の復調信号をiout(t)と表し、直交成分の復調信号をqout(t)と表す。
この場合、(式4)が成り立つ。
【0035】
【数4】

【0036】
(iin(t),qin(t))を(iout(t),qout(t))へ変換する行列をEとおくと、(式5)のように表される。
受信側装置2では、送信側装置1の変調信号を誤差なく受信することが理想であり、本例では、受信側装置2において出力されるiout(t)、qout(t)に対してEの逆変換処理を行うことにより、送信側装置1の変調信号をそのまま得ることができる。このことが(式6)に示されている。
【0037】
【数5】

【数6】

【0038】
すると、Eの4要素E11、E12、E21、E22を知ることができれば良いことになる。
例えば、送信側装置1からのテスト信号として(式7)に示される信号を用いた場合には、(式8)が成り立つ。
また、送信側装置1からのテスト信号として(式9)に示される信号を用いた場合には、(式10)が成り立つ。
【0039】
【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【0040】
これらにより、受信側装置2で受信されたiout(t)、qout(t)のそれぞれの振幅或いは実効値を測定することで、Eの各要素の値E11、E12、E21、E22を決定することができる。
そして、(式11)によりEの逆行列C=E−1を求め、(式12)に示されるようにiout(t)、qout(t)に対してEの逆変換処理を計算することで、直交変調器12の誤差、直交変調器12から直交復調器23までの位相回転、直交復調器23の誤差を補正することができ、(式13)に示されるように受信側装置2で送信側装置1の変調信号を誤差なく受信することができる。
【0041】
【数11】

【数12】

【数13】

【0042】
上記と同様に、n(n=0、1、2、・・・)を種々な値に変えて、複数の異なる周波数ωについて、(式14)に示されるようなテスト信号を用いて、それぞれのω、θについて送受信を行うことで、各ωに対する補正行列C(ω)=E−1(ω)を求めることができる。
【0043】
【数14】

【0044】
本例では、補正行列C(ω)は、OFDMに使用するサブキャリア間隔でサブキャリア数分だけ必要であり、テスト信号の送受信も同間隔で同数行って必要な補正行列を全て算出することが望ましいが、例えば、周波数特性が緩やかな変動である等のように全部の補正行列を取得せずともある程度取得すれば前後の数値から未取得周波数での値も推測することが可能である場合には、全部の数量を取得せずに、必要な数よりも少ない量を適切に選択して取得し、適切な補間方法を用いて本来必要な数量の補正行列を作成する構成としてもよい。なお、この選択の仕方や補間方法としては、それぞれ、種々なものが用いられてもよい。
また、本例では、テスト信号として、Asin(ωt+θ)を使用したが、他の様々なものが使用されてもよい。
【0045】
上記のようにして、直接的に或いは補間により、OFDMサブキャリア間隔のサブキャリア数(本例では、N個とする)分だけ、補正行列C(ω)を演算して、これらから構成される補正行列群C(k)(k=0、1、2、・・・、N−1)を取得する。
そして、このような補正行列群C(k)(k=0、1、2、・・・、N−1)を用いて、補正部33により、離散フーリエ変換部32(例えば、FFT処理)からの出力の実数部Fre(k)及び虚数部Fim(k)に対して、全てのkについて(式15)の演算を行うことで、送受信の過程で含まれる誤差を、変調信号の周波数特性も含めて、補正することができる。
【0046】
【数15】

【0047】
ここで、演算部36及び補正係数決定部37では、補正部33に設定するための補正係数を決定することができれば、それぞれ種々な演算が行われてもよく、本例では、一例として、演算部36がEの各要素の値E11、E12、E21、E22を演算し、その結果に基づいて補正係数決定部37が補正係数C11(k)、C12(k)、C21(k)、C22(k)を演算して決定するような構成を用いることができる。
【0048】
図3には、離散フーリエ変換部32と並/直列変換部34との間に設けられた、補正部33の構成例を示してある。
本例の補正部33は、4個の乗算器41〜44と2個の加算器45、46を用いて構成されている。そして、補正係数決定部37から入力される補正係数C11、C12、C21、C22を用いて、上記した誤差補正を行うための演算を実行する。
【0049】
ここで、本例では、誤差を受信側でまとめて補正する構成及び方法を示したが、他の例として、送信側に補正する機能を備えておいて、受信側から送信側へテスト信号の受信結果を報告して、送信側が補正機能を用いて予め送受で生じる誤差分を補正した信号を送出するような構成としてもよく、本例と同様な効果が期待できる。
【0050】
以上のように、本例では、OFDM方式の変復調を行う送受信装置において、直交変調器12の変調信号として通常の変調信号とは別にテスト信号を発生する発生器17a、17bを持ちこれらの入力を切り替える制御部16を持つ送信部(送信側装置1)と、直交復調器23からA/D変換器25、27を経た出力をOFDM復調するための離散フーリエ変換部32と並/直列変換部34との間に変復調誤差の補正部33を持つとともにA/D変換器25、27の出力から信号振幅を算出する演算部36とその結果から補正部33の補正係数を算出する補正係数決定部37を持つ受信部(受信側装置2)を有する。そして、送受信装置全体として送信機からのテスト信号を受け、受信部において変復調誤差を補正するための係数を算出する機能を持ち、送受信装置全体の変復調誤差を補正することで、サブキャリア毎に高精度な変復調を実現することができる。
【0051】
このように、本例では、OFDM変調を使用した通信において、送受信部のそれぞれに含まれる直交変調器12、直交復調器23の誤差補正を送受信部全体で実施することができ、例えば、送信側と受信側のそれぞれの誤差(及び伝送上での誤差)を合わせて受信側で補正することができる。
また、本例では、誤差補正を変調周波数にも対応させて、OFDM通信におけるサブキャリア間の位相、振幅の誤差についても補正することができるため、OFDM方式において変調精度或いは復調精度についてサブキャリア間で生じることもある差を軽減し、高速データ通信を実現することができる。
【0052】
従って、本例では、変調信号の周波数によって直交変調器12或いは直交復調器23に含まれる誤差が変化する場合に、変調信号の周波数に応じた補正値を作成して、作成された補正値を用いて直交変調器12、直交復調器23に含まれる誤差を補正することで、OFDM方式の広帯域変調信号において全てのサブキャリアで等しく変調精度、復調精度を向上させることができ、結果として高速データ通信を実現することができる。
【0053】
また、本来、これらの補正は変調器側、復調器側でそれぞれ行うことで実現可能であるが、本例では、これらの補正を変調器を含む送信部と復調器を含む受信部とで合わせてまとめて補正することで、より精度の高い補正が可能となり、また、一方にのみ補正の仕組みを組み込めばよく、送受信部全体として簡易な構成を実現することができる。
【0054】
なお、本例のOFDM送受信装置では、送信側装置1において、制御部16やスイッチ14、15が通常の通信信号(変調信号)を送信する状態とテスト信号を送信する状態とを切り替える機能により切り替え手段が構成されており、また、受信側装置2において、補正部33の機能により補正手段が構成されており、演算部36や補正係数決定部37の機能により補正係数演算手段が構成されている。
【0055】
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【符号の説明】
【0056】
1・・送信側装置、 2・・受信側装置、 3・・伝搬路等、 11、22、101、121・・局部発振器、 12・・直交変調器、 13、21、24、26・・増幅器等、 14、15・・スイッチ、 16・・制御部、 17a、17b・・テスト信号発生部、 18a、18b・・変調信号出力部、 23・・直交復調器、 25、27・・A/D変換器、 31・・直/並列変換部、 32・・離散フーリエ変換部、 33・・補正部、 34・・並/直列変換部、 35・・OFDM復号部、 36・・演算部、 37・・補正係数決定部、 41〜44、112、115、132、135、141、143・・乗算器、 45、46、116、142・・加算器、 102・・アナログ直交変調器、 111、114、131、134・・増幅器、 113、133・・90度位相器、 122・・アナログ直交復調器、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OFDM方式により送信側装置から受信側装置へ信号を通信するOFDM送受信装置において、
前記送信側装置は、信号に対して直交変調を行う直交変調器と、
通常の通信信号に対して前記直交変調器により直交変調を行った結果の信号を前記受信側装置へ送信する状態と、前記通常の通信信号とは別の所定のテスト信号に対して前記直交変調器により直交変調を行った結果の信号を前記受信側装置へ送信する状態とを切り替える切り替え手段と、を備え、
前記受信側装置は、前記送信側装置からの信号に対して直交復調を行う直交復調器と、
前記送信側装置から前記受信側装置への信号伝送において発生する振幅及び位相に関する誤差をOFDMの各サブキャリア毎に補正するための補正係数を用いて、前記直交復調器により直交復調を行った結果の信号に対してOFDMの各サブキャリア毎に補正を行う補正手段と、
前記送信側装置から前記テスト信号の直交変調結果の信号が送信される状態における前記直交復調器による直交復調結果の信号に基づいて、前記補正手段で用いられる補正係数をOFDMの各サブキャリア毎に演算する補正係数演算手段と、を備えた、
ことを特徴とするOFDM送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−160332(P2011−160332A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22159(P2010−22159)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】