説明

OFDM通信装置およびOFDM通信装置の制御方法

【課題】伝搬路状況および伝搬路状況の変動量を考慮して、適切なGI長を決定することができるOFDM通信装置を提供する
【解決手段】通信相手から受信する受信信号に基づいて、通信相手との間の伝搬路状況を推定するチャネル推定部208と、伝搬路状況および伝搬路状況の変動量に基づいて、通信相手に送信信号を送信する際の、ガードインターバル長を決定する制御部106とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OFDM通信装置およびOFDM通信装置の制御方法に関し、特に、ガードインターバル長を調整するOFDM通信装置およびOFDM通信装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信システムや放送システムにおける信号伝送の基本的な変調方式として、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)が採用されることが多くなっている。これは、現代の高度情報化社会において、様々な状況下で、信号伝送速度をますます高速化させる必要性に応じたものであるといえる。
【0003】
次世代の通信サービスの一つとして、XGP(eXtended Global Platform)が知られているが、XGPも、OFDMをベースとした通信方式である、OFDMA/TDMA−TDD(Orthogonal Frequency Division Multiple Access/Time Division Multiple Access-Time Division Duplex)を採用している。
【0004】
OFDMでは、マルチパス伝搬環境における信号劣化を低減するために、ガードインターバル(GI:Guard Interval)という冗長信号をシンボルに挿入している。GIは、送信データの一定時間分をコピーしてシンボルの先頭に貼り付けたものである。
【0005】
シンボルの先頭に冗長な部分を設けておくことにより、マルチパス伝搬環境において遅延波がある場合に、GIの一部を除去することで遅延波の干渉を防ぐことができる。しかし、GI長を長くするとデータ伝送量は減ってしまう。このように、GI長を長くすることは、遅延波の干渉とデータ伝送とについてトレードオフの関係となる。
【0006】
したがって、GI長は伝搬路状況に応じて、柔軟に変更できることが好ましい。しかし、XGPはGI長が固定であるため、遅延波がほとんど生じていないような良好な伝搬路状況における通信においても、必要以上に長い固定値のGI長が設定されていて、データ伝送の効率を落としているという問題があった。
【0007】
データ伝送の効率を改善するために、伝搬路状況に基づいてGI長を決定するOFDM通信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−42857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載のOFDM通信装置は、伝搬路状況を基にGI長を決定する方法を用いている。これにより、伝搬路状況が良好なときにはGI長を短くすることでデータ伝送の効率を改善することができる。
【0010】
しかしながら、無線通信においては、移動端末が移動している場合、移動端末の移動とともに伝搬路状況が大きく変動する。したがって、移動端末が移動している場合は、ある瞬間において伝搬路状況が良好であったとしても、その直後に伝搬路状況が劣悪になる場合がある。
【0011】
このように、移動端末が移動している場合は、伝搬路状況が急激に劣悪になる場合があり、伝搬路状況が良好であることから判断してGI長を短くしても、直後に伝搬路状況が劣化して、実際にGI長を短くして送信したタイミングにおいては、遅延波の影響を受けてしまうおそれがあった。
【0012】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、伝搬路状況および伝搬路状況の変動量を考慮して、適切なGI長を決定することができるOFDM通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した諸課題を解決すべく、請求項1に係るOFDM通信装置の発明は、
通信相手から受信する受信信号に基づいて、前記通信相手との間の伝搬路状況を推定するチャネル推定部と、
前記伝搬路状況および前記伝搬路状況の変動量に基づいて、前記通信相手に送信信号を送信する際の、ガードインターバル長を決定する制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
上述したように本発明の解決手段を装置として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0015】
例えば、本発明を方法として実現させた請求項2に係るOFDM通信装置の制御方法は、
通信相手から受信する受信信号に基づいて、前記通信相手との間の伝搬路状況を推定するステップと、
前記伝搬路状況および前記伝搬路状況の変動量に基づいて、前記通信相手に送信信号を送信する際の、ガードインターバル長を決定するステップと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、伝搬路状況および伝搬路状況の変動量を考慮して、適切なGI長を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るOFDM通信装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】GI長(ガードインターバル長)を説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るGI長を決定し決定したGI長で信号を送信する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るOFDM通信装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0020】
OFDM通信装置10は、受信用の機能ブロックとして、GI除去部202、FFT部204、分離部206、チャネル推定部208、チャネル等化部210およびデマッピング部212を備える。
【0021】
GI除去部202は、通信部104から受信信号を受け取り、受信信号に含まれるシンボルからGIを除去して、FFT部204に出力する。図2に、シンボルがGIとデータから構成される様子を示す。GIは、遅延波の干渉を防止するためにシンボルの先頭部分に冗長信号を挿入したものである。GIは、シンボル後半の一定時間分をコピーして、シンボルの先頭部分に貼り付けることによって作成される。
【0022】
FFT部204は、GI除去部202からGIを削除した受信信号を受け取り、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を実行して、時間波形から周波数波形に変換した受信信号を、分離部206に出力する。FFT部204は、FFTを実行することにより、各サブキャリアの振幅および位相データを計算することができる。
【0023】
分離部206は、FFT部204から周波数波形に変換された受信信号を受け取り、受け取った受信信号をトレーニングシンボルと受信データに分離する。分離部206は、トレーニングシンボルをチャネル推定部208に出力し、受信データをチャネル等化部210に出力する。
【0024】
チャネル推定部208は、分離部206から受け取ったトレーニングシンボルと既知のトレーニングシンボルとを比較し、通信相手とOFDM通信装置10との間の伝搬路状況を推定する。伝搬路状況とは、通信相手とOFDM通信装置10との間の伝搬路にて生じる位相および振幅の歪みを推定したものである。チャネル推定部208は、推定した伝搬路状況をチャネル等化部210および制御部106に出力する。
【0025】
チャネル等化部210は、分離部206からは受信データを受け取り、チャネル推定部208からは推定された伝搬路状況を受け取る。チャネル等化部210は、受け取った伝搬路状況を基に、受け取った受信データの位相および振幅の歪みを除去し、デマッピング部212に出力する。
【0026】
デマッピング部212は、チャネル等化部210から、位相および振幅の歪みが除去された受信データを受け取り、I/Q平面上にマッピング(対応づけ)されていたデータを、もとのデータ形式に変換して出力する。例えば、データ変調方式としてQPSKが採用されている場合は、デマッピング部212は、I/Q平面上にマッピングされていたデータを、マッピングされていた位置に応じて、「00」、「01」、「10」および「11」の4値のいずれかの値に変換する。
【0027】
OFDM通信装置10は、送信用の機能ブロックとして、GI付加部302、IFFT部304、マッピング部306および物理層フレーム生成部308を備える。
【0028】
物理層フレーム生成部308は、送信データを受け取り、受け取った送信データに制御データを付加した上で、符号化、インターリーブなどの処理を実行し、マッピング部306に出力する。また、物理層フレーム生成部308は、制御部106からGI長を受け取り、GI長を通信相手に知らせるために、制御データにGI長を組み込む。
【0029】
マッピング部306は、物理層フレーム生成部308から、符号化やインターリーブなどの処理がされた送信データを受け取り、受け取った送信データを採用している変調方式に応じて、対応するI/Q平面上のポイントにマッピングする。マッピング部306は、マッピングした送信データをIFFT部304に出力する。
【0030】
IFFT部304は、マッピング部306から、I/Q平面上にマッピングされた送信データを受け取り、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)を実行して、周波数波形から時間波形に変換した送信信号を、GI付加部302に出力する。
【0031】
GI付加部302は、IFFT部304から、時間波形に変換された送信信号を受け取り、受け取った送信信号にGIを付加してシンボルを生成し、通信部104に出力する。このとき、付加するGIのGI長は、制御信号106から受け取る。
【0032】
OFDM通信装置10は、送信および受信に共通する機能ブロックとして、アンテナ102、通信部104、制御部106および記憶部108を備える。
【0033】
アンテナ102は、通信相手が送信した無線信号を受信し、通信部104に出力する。また、アンテナ102は、OFDM通信装置10が送信する無線信号を通信部104から受け取り、通信相手に送信する。
【0034】
通信部104は、受信信号および送信信号の両方を処理する機能ブロックである。通信部104は、受信信号については、アンテナ102から受け取った受信信号を無線周波数からベースバンド周波数に変換し、続いて、ベースバンド周波数に変換した受信信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して、GI除去部202に出力する。
【0035】
また、通信部104は、送信信号については、GI付加部から受け取った送信信号をデジタル信号からアナログ信号に変換し、続いて、アナログ信号に変換した送信信号をベースバンド周波数から無線周波数に変換して、アンテナ102に出力する。
【0036】
制御部106は、チャネル推定部208から、チャネル推定部208が推定した伝搬路状況を受け取り、記憶部108に出力する。
【0037】
また、制御部106は、伝搬路状況および伝搬路状況の変動量に基づいて、通信相手に送信信号を送信する際の、GI長を決定する。まず、制御部106は、受け取った伝搬路状況を基にGI長を計算する。伝搬路状況が良好な場合は、GI長を短くしても所望のSINR(Signal to Interference and Noise Ratio)を満足することができるため、GI長を短くし、伝搬路状況が劣悪な場合は、GI長を短くすると所望のSINRを満足することができなくなるため、GI長を長くする。
【0038】
続いて、制御部106は、伝搬路状況の時間変動量も計算して、伝搬路状況の時間変動量もGI長の決定の際に考慮に入れる。
【0039】
伝搬路状況が時間とともに大きく変動している場合は、通信相手が移動している可能性が高い。このような場合は、突然、伝搬路状況が劣化する可能性が高いため、たとえ、その瞬間の伝搬路状況が良好であったとしても、制御部106は、GI長を短くしない。伝搬路状況が時間とともに大きく変動していない場合は、通信相手が静止している可能性が高い。このような場合は、現状の伝搬路状況が継続する可能性が高いと考えられるため、その瞬間の伝搬路状況が良好であった場合は、制御部106は、GI長を短くする。
【0040】
制御部106は、伝搬路状況の時間変動量を計算する際は、記憶部108から、所定の期間の伝搬路状況を読み込む。制御部106は、時間変動量について予め閾値を定めておき、当該閾値より大きいか否かで時間変動量が大きいか否かを判定する。
【0041】
制御部106は、伝搬路状況および伝搬路状況に基づいて決定したGI長を、GI付加部302に出力し、当該GI長分のGIを送信データに付加させる。
【0042】
また、制御部106は、伝搬路状況および伝搬路状況に基づいて決定したGI長を、物理層フレーム生成部308に出力し、制御信号に当該GI長の情報を組み込む。通信相手は、組み込まれたGI長の情報から、OFDM通信装置10から受信したシンボルのGI長を判断することができる。
【0043】
記憶部108は、制御部106から、チャネル推定部208が推定した、OFDM通信装置10と通信相手との間の伝搬路状況のデータを受け取って記憶する。また、記憶部108は、制御部106に用いられる各種プログラム等も記憶する。
【0044】
図3に示すフローチャートを参照しながら、伝搬路状況に応じてGI長を決定する手順を説明する。
【0045】
チャネル推定部208は、分離部206から受け取ったトレーニングシンボルおよび既知のトレーニングシンボルに基づいて、通信相手とOFDM通信装置10との間の伝搬路状況を推定する(ステップS101)。
【0046】
制御部106は、チャネル推定部208から伝搬路状況を受け取り、受け取った伝搬路状況を基に、GI長を計算する(ステップS102)。
【0047】
制御部106は、記憶部108から、以前の伝搬路状況のデータを所定の期間分だけ読み込む(ステップS103)。所定の期間は、予め定めておいた値である。
【0048】
制御部106は、読み込んだ以前の伝搬路状況のデータをもとに、伝搬路状況の時間変動量を計算する(ステップS104)。
【0049】
制御部106は、計算した伝搬路状況の時間変動量を、予め定めておいた閾値と比較する(ステップS105)。
【0050】
ステップS105において、計算した伝搬路状況の時間変動量が閾値より小さいと判定した場合は、通信相手が移動していないと推定される。したがって、制御部106は、ステップS104において計算したGI長をGI付加部302に通知する(ステップS106)。
【0051】
通信部104は、制御部106が計算したGI長が付加されたシンボルからなる送信信号をGI付加部302から受け取り、アンテナ102を通して出力する(ステップS107)。
【0052】
ステップS105において、計算した伝搬路状況の時間変動量が閾値より大きいと判定した場合は、通信相手が移動していると推定される。したがって、伝搬路状況が急激に劣化する可能性が高いので、制御部106は、ステップS104において計算したGI長ではなく、最大のGI長をGI付加部302に通知する(ステップS108)。
【0053】
通信部104は、制御部106が計算したGI長ではなく最大のGI長が付加されたシンボルからなる送信信号をGI付加部302から受け取り、アンテナ102を通して出力する(ステップS109)。
【0054】
このように、本実施形態によれば、OFDM通信装置10は、通信相手とOFDM通信装置10との間の伝搬路状況および伝搬路状況の変動量に基づいて、適切なGI長を決定することができる。これによって、OFDM通信装置10は、効率よくデータを送信することができる。
【0055】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0056】
また、上述の実施例では、移動体通信システムとしてXGPを想定して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、OFDM通信システムを採用し、データにGIを付加してシンボルとするシンボル構成をとる無線通信システムであれば、本発明を同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 OFDM通信装置
102 アンテナ
104 通信部
106 制御部
108 記憶部
202 GI除去部
204 FFT部
206 分離部
208 チャネル推定部
210 チャネル等化部
212 デマッピング部
302 GI付加部
304 IFFT部
306 マッピング部
308 物理層フレーム生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信相手から受信する受信信号に基づいて、前記通信相手との間の伝搬路状況を推定するチャネル推定部と、
前記伝搬路状況および前記伝搬路状況の変動量に基づいて、前記通信相手に送信信号を送信する際の、ガードインターバル長を決定する制御部と、
を備えることを特徴とするOFDM通信装置。
【請求項2】
通信相手から受信する受信信号に基づいて、前記通信相手との間の伝搬路状況を推定するステップと、
前記伝搬路状況および前記伝搬路状況の変動量に基づいて、前記通信相手に送信信号を送信する際の、ガードインターバル長を決定するステップと、
を備えることを特徴とするOFDM通信装置を制御する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−175519(P2012−175519A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37073(P2011−37073)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】