説明

OLED電光システム、OLED電灯

【課題】本発明の課題は、1対のメタル線で色を調節できるような電光システムや電灯を提供することである。
【解決手段】本発明のOLED電光システムは、制御装置、OLED電灯、1対以上のメタル線を有する。制御装置は、複数のOLEDを制御するために、1対のメタル線に制御信号を送出する。OLED電灯は、複数のOLEDと、1対のメタル線から制御信号を受け取る入力部と、制御信号を個別制御信号に変換し、複数のOLEDを2組以上のグループごとに制御する変換部と、OLED用と変換部用の電力を生成する電源部とを有する。メタル線は、制御装置とOLED電灯とをつなぎ、制御信号と給電用の電力を送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLED(有機発光ダイオード)を有し、照明用又は競技場用の電光設備として使用されるOLED電光システム、OLED電灯に関する。
【背景技術】
【0002】
ステージの照明などでは、白色の電球の前にフィルタを付け、各電球の明るさを調整することでいろいろな色を表現している。図1は、従来の照明システムの機能構成例である。照明システム900は、DMX調光卓910、電球920(ただし、nは1〜3Nの整数)、各電球920に電力を供給するための1対のメタル線930、各電球920の色を決定するフィルタ925を備えている。DMX調光卓910は、メタル線930ごとに供給する電力を調整することで、電球920ごとの明るさを調整する。このような従来の照明システムでは、電球に赤緑青の3色のフィルタを取り付け、3個の電球を1組とし、各電球の明るさを調整することでいろいろな色を表現していた。
【0003】
最近では、発光ダイオード(LED)を用いた電灯を電球920の代わりに用いる方法もある。この場合には、1つの電灯には赤のLED、1つの電灯には緑のLED、1つの電灯には青のLEDを入れ、電球920の代わりとしている。したがって、フィルタ925は不要である。また、このLEDの明るさを調整する方法として、パルス信号を用いる方法なども提案されている(特許文献1)。また、現場での電灯設置時に色の調整ができるように、電灯に可変抵抗を付加した方法もある(特許文献2)。しかし、いずれの場合も、実際に照明システムを動作させるときには、1つの電灯の色は一定であり、色の異なる3つの電灯の明るさを組み合わせることで色を変化させている。つまり、3個の電球とフィルタの組み合わせを、3個のLEDを用いた電灯の組み合わせに変えただけで、色の異なる3個の電灯で色や明るさを表現する思想には変わりがなかった。したがって、照明システムの電灯の数を少なくすることはできていない。
【0004】
また、1つでフルカラーを表現できる競技場用の電光掲示板の電灯(パネルディスプレイ)もある。この電灯には、例えばLEDが256個(16個×16個)備えられており、制御用の端子が30本以上ある。したがって、このような電灯の背面は、膨大な量のメタル線が張り巡らされており、配線の簡素化が求められていた。
【特許文献1】特開2002−231470号公報
【特許文献2】特開2005−222750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、照明システムの電灯の数を少なくするために、1つの電灯の色と明るさを変化させるシステムや電灯を提供することである。また、フルカラーの電灯を少ない本数のメタル線(できれば1対のメタル線)で制御することである。さらに、既に多くの照明システムや電光掲示板が設置されているので、既存の設備をできるだけ利用できるシステムや電灯とすることである。
図1で説明したように、既存の設備は、1つの電灯には1対のメタル線がつながれ、1つの電灯の明るさを調整している。したがって、現在は3対のメタル線で供給する電力を調整することで色を調整している。これは、特許文献1や特許文献2の技術を用いても同じである。しかし、本発明の目的を達成するには、1対のメタル線で色を調整する必要がある。
【0006】
したがって、本発明では、1対のメタル線で色を調節できるような電光システムや電灯を提供することが、具体的な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、有機発光ダイオード(OLED)を用いたOLED電光システムとOLED電灯に関し、照明用又は競技場用の電光設備として使用される。なお、OLEDには、一般的な発光ダイオード(LED)は含まれる。
本発明のOLED電光システムは、制御装置、OLED電灯、1対以上のメタル線を有する。制御装置は、複数のOLEDを制御するために、1対のメタル線に制御信号を送出する。OLED電灯は、複数のOLEDと、1対のメタル線から制御信号を受け取る入力部と、制御信号を個別制御信号に変換し、複数のOLEDを2組以上のグループごとに制御する変換部と、OLED用と変換部用の電力を生成する電源部とを有する。メタル線は、制御装置とOLED電灯とをつなぎ、制御信号と給電用の電力を送る。
【0008】
また、個別制御信号が時間多重方式によって多重化された制御信号を用いてもよい。そして、制御信号中のOLEDを点灯させる信号も消灯させる信号も、立ち上がり又は立下りのいずれかのタイミングを同じにしてもよい。
また、制御装置が、メタル線に給電用の電力も重畳してもよい。この場合は、OLED電灯が、制御信号と電力とを分離する信号・電力分離部を備え、電源部は前記信号・電力分離部から分離された電力からOLED用と前記変換部用の電力を生成すればよい。
OLED電灯の色と明るさは、各OLEDの明るさを発光時間で調整する方法、各OLEDと直列に接続された抵抗を変更する方法、発光させるOLEDの数を調整する方法などにより変更すればよい。
【0009】
さらに、1対のメタル線で複数のOLED電灯を制御する場合は、制御信号に複数のOLED電灯を制御する信号を時間多重する。そして、OLED電灯に、制御信号から当該OLED電灯を制御するための信号を取り出す位置決回路を備えればよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のOLED発光システムやOLED電灯によれば、OLED電灯内の2つ以上のOLEDのグループごとに制御する個別制御信号の情報を、1対のメタル線に多重化して伝えるので、1対のメタル線でOLED電灯ごとの色と明るさを制御できる。また、既存の設備を流用できる。制御信号中の点灯の信号も消灯の信号も、立ち上がりまたは立下りのいずれかのタイミングを同じにすることで、OLED電灯内の回路構成を簡単にできる。さらに、OLED電灯に位置決回路を備えることで、1対のメタル線で、複数のOLED電灯の制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1実施形態]
図2に、第1実施形態のOLED発光システムの構成例を示す。OLED発光システムは100、制御装置110、N個のOLED電灯1200(nは1〜Nの整数)、N対のメタル線130を有する。ここで、「N対のメタル線」とは、2本一組のメタル線が2N本(N組)という意味だけでなく、1本のメタル線を共通のアース線とし、N本のメタル線をN個の信号用に用いたような、N+1本から構成される場合も含まれる。物理的な構成についても、フラットケーブルの場合、ツイストペアケーブルの場合、同軸ケーブルの場合などを含み、これらに限定されるものではない。図3に、既存のシステムを流用した場合のOLED発光システムの構成例を示す。このOLED発光システム200では、制御装置110の代わりに、既存のDMX調光卓910と変換・制御装置210を有する。変換・制御装置210は、DMX調光卓910からの出力を、OLED電灯1200用に変換する機能を有する。制御装置110または変換・制御装置210からは、制御信号と電力とが重畳されてメタル線に出力される。なお、制御信号には、OLED電灯1200内の複数のOLEDのグループごとに明るさを制御する信号(個別制御信号)が時間多重されている。
【0012】
図4に、OLED電灯の機能構成例を示す。OLED電灯1200は、M個のOLED1250(mは1〜Mの整数)、入力部1210、信号・電力分離部1220、変換部1230、電源部1240から構成される。入力部1210は、1対のメタル線からOLEDを制御する制御信号と電力とを受け取る。入力部1210は、具体的には電球やパネルディスプレイ用のソケットなどであって、既存の照明装置の電球と同じソケットを用いることで、既存設備に取り付けることができる。信号・電力分離部1220は、制御信号と電力とを分離する。変換部1230は、制御信号を個別制御信号に変換し、複数のOLEDを2組以上のグループごとに制御する。電源部1240は、信号・電力分離部から出力される電力から、OLED用と変換部用の電力を生成し、供給する。
【0013】
本実施形態では、制御信号と給電用の電力を重畳した場合を示しているが、電力を制御信号とは別に電源部に供給してもよい。この場合は、制御装置110または変換・制御装置210からは制御信号のみがメタル線に出力される。また、信号・電力分離部1220は不要である。
図5に、3つのOLEDのグループを有するOLED電灯の具体例を示す。OLED1250は、複数個の青色OLEDが直列に接続されている。OLED1250は、複数個の緑色OLEDが直列に接続されている。OLED1250は、複数個の赤色OLEDが直列に接続されている。入力部1210は、ソケットなどである。既存の照明システムに取り付けられるソケットにすれば、既存の設備(電灯を取り付ける台やメタル線など)を利用できる。信号・電力分離部1220は、ハイパスフィルタやフォトカプラを用いて、制御信号を電力(直流や、50Hzあるいは60Hzの交流)から取り出せばよい。また、電力は、直流48Vの場合や交流100Vの場合が多いが、これに限らなくてもよい。電源部1240は、変換部1230の電子回路用の電圧(直流5Vが多いがこれに限られない)とOLED1250を発光させるための電圧(直流12Vが多いがこれに限られない)とを供給する電源である。
【0014】
変換部1230は、Dラッチ1231−1〜3(IC1〜IC3)、Dラッチ1235−1〜3(IC4〜IC6)、PLL同期回路1237、ドライバ回路1238B、1238G、1238R、抵抗1239B、1239G、1239Rから構成されている。PLL同期回路1237は、Dラッチを動作させるクロック1、クロック2を生成する回路である。図5では、PLL同期回路を示しているが、水晶を用いた同期回路などでもよい。
図6に、制御装置110または変換・制御装置210からの制御信号の具体例を示す。図6には、すべてのOLEDを消灯させる信号とすべてのOLEDを点灯させる信号が示されている。そして、図6Aには、立ち上がりのタイミングが、どちらの信号でも一致する場合が示されている。図6Bには、立下りのタイミングが、どちらの信号でも一致する場合が示されている。図6Aの信号は、消灯の信号も点灯の信号も同じタイミングで立ち上がるが、消灯の信号の方が早く立ち下がる(点灯の方が、立ち下がるタイミングが遅い)。図6Bの信号は、消灯の信号も点灯の信号も同じタイミングで立ち下がるが、消灯の信号の方が早く立ち上がる(点灯の方が、立ち上がるタイミングが遅い)。
【0015】
図7に、立ち上がりのタイミングが一致する信号(図6Aの信号)が、入力された場合のOLED電灯1200の動作を示す。図5のPLL同期回路は、制御信号の立ち上がりのタイミングを利用して、クロック1とクロック2とを生成する。クロック1の立ち上がりは、制御信号が消灯させる信号の時にはL(Low)状態、点灯させる信号の時にはH(High)状態となるタイミングである。クロック2は、クロック1が3回に対して1回である。また、クロック2の立ち上がりは、3回目のクロック1の立ち上がりによるDラッチ1231−1〜3(IC1〜IC3)の動作が安定したタイミングである。
【0016】
図7に示すような制御信号が、OLED電灯1200に入力された場合、制御信号は、信号・電力分離部1220で取り出され、変換部1230に入力される。変換部1230に入力された制御信号は、PLL同期回路1237とDラッチ1231−1(IC1)に入力される。PLL同期回路1237は、クロック1とクロック2とを生成する。
クロック1の1回目の立ち上がりのタイミングで、Dラッチ123−1は、制御信号の状態(赤色OLEDに対する信号)をラッチし、出力する。出力はDラッチ1231−2とDラッチ1235−1に入力される。
【0017】
クロック1の2回目の立ち上がりのタイミングで、Dラッチ1231−2は、Dラッチ123−1からの入力(赤色OLEDに対する信号)をラッチし、出力する。出力はDラッチ1231−3とDラッチ1235−2に入力される。また、Dラッチ1231−1は、制御信号の状態(緑色OLEDに対する信号)をラッチし、出力する。出力はDラッチ1231−2とDラッチ1235−1に入力される。
クロック1の3回目の立ち上がりのタイミングで、Dラッチ1231−3は、Dラッチ1231−2からの入力(赤色OLEDに対する信号)をラッチし、出力する。出力はDラッチ1235−3に入力される。Dラッチ1231−2は、Dラッチ1231−1からの入力(緑色OLEDに対する信号)をラッチし、出力する。出力はDラッチ1231−3とDラッチ1235−2に入力される。Dラッチ1231−1は、制御信号の状態(青色OLEDに対する信号)をラッチし、出力する。出力はDラッチ1231−2とDラッチ1235−1に入力される。
【0018】
このように、3回のクロック1の立ち上がりによって、赤色OLEDに対する信号はDラッチ1235−3(IC6)に、緑色OLEDに対する信号はDラッチ1235−2(IC5)に、青色OLEDに対する信号はDラッチ1235−1(IC4)に入力された状態となる。つまり、消灯の信号の場合はL(Low)状態が入力され、点灯の信号の場合はH(High)状態が入力されている。
Dラッチ1231−1〜3(IC1〜IC3)の動作が安定するタイミングで、クロック2が立ち上がると、Dラッチ1235−1〜3(IC4〜IC6)は、入力された状態をラッチし、ドライバ回路1238B、1238G、1238Rに出力する。Dラッチ1235−3からの出力がHならば、ドライバ回路1238Rの出力はLとなるので、OLED1250と抵抗1239Rとの間には12Vの電圧が印加され、赤色OLEDに電流が流れる。Dラッチ1235−3からの出力がLならば、ドライバ回路1238Rの出力はHとなるので、OLED1250と抵抗1239Rとの間には電圧が印加されず、赤色OLEDには電流が流れない。また、他のOLED1250、1250も同じように駆動される。
【0019】
このように動作するので、赤色OLEDへの信号、緑色OLEDへの信号、青色OLEDへの信号を順番に並べた制御信号(時間多重された制御信号)で、3つのOLEDのグループを独立に制御できる。また、通信用のLSIを用いることなく、単純な電子回路のみで制御できる。
図8は、OLEDの明るさを、発光する時間で制御する方法を示す図である。すべての信号を消灯の信号とすれば、OLEDが消えた状態である。すべての信号を点灯の信号とすれば、最も明るい状態である。OLEDへの信号をT回に1回の割合で点灯とすれば、最も明るい状態の1/Tの明るさとなる。またT回に2回の割合で点灯とすれば、最も明るい状態の2/Tの明るさにできる。
【0020】
さらに、本発明の制御信号の特徴を説明する。この制御信号では、図7に示したように制御信号の立ち上がりを利用してクロックを生成しているので、制御信号の周波数の何倍ものクロックを使う必要がない。また、制御信号の先頭が分かれば制御できるので、制御信号に付加しなければならないビットは、ヘッダーの1ビットだけである。したがって、制御信号のビットレートを高くできると共に、ビット列中の各OLEDを制御するビットの割合も高くしやすい。したがって、OLEDの明るさの階調(図8の場合の階調はT)を多くすることができる。もしくは、OLEDの状態の変更頻度を高くできる。例えば、1組のRGBが256階調(8ビット)で、1秒間に60回状態を変えるとすると、
3(RBG)×8(ビット)×60(回/秒)=1440(ビット/秒)
となり、1440ビット/秒のビットレートが必要である。本発明の制御信号であれば、付加しなければならないビットが少ないので、メタル線内を伝わるビットレートもほぼ同じでよい。
【0021】
このような構造と動作なので、OLED電灯内の2つ以上のOLEDのグループごとに制御する個別制御信号の情報を、1対のメタル線に多重化して伝えることができ、1対のメタル線でOLED電灯ごとの色と明るさを制御できる。また、既存の設備を流用できる。制御信号中の点灯の信号も消灯の信号も、立ち上がりまたは立下りのいずれかのタイミングを同じにすることで、OLED電灯内の回路構成を簡単にできる。
【0022】
[変形例1]
図9に、OLEDの明るさを、抵抗の選択によって制御するOLED電灯の構成例を示す。OLED電灯2200の変換部2230は、3M個のDラッチ2231−1〜3M(IC1〜IC3M)、ラッチ回路2235、3M個のドライバ回路2238B1、2238G1、2238R1、…、2238RM、3M個の抵抗2239B1、2239G1、2239R1、…、2239RMから構成される。図9のOLED電灯では、PLL同期回路1237は、3M個のクロック1に対して、1個のクロック2を生成する。図7で説明した方法と同じ方法で、3M個のクロック1によって、制御信号の3M個の信号(パルス)の情報が、3M個のDラッチ2231−1〜3M(IC1〜IC3M)の出力に反映される。そして、クロック2によって、ラッチ回路2235は、各Dラッチ2231−1〜3Mの状態を保持する。例えば、ラッチ回路2235からの出力がHの抵抗2239B1〜Mのいくつかが、OLED1250に直列に接続される。印加されている電圧は一定(例えば12V)なので、どの抵抗が接続された状態になるかで、OLEDに流れる電流を調整できる。したがって、抵抗を選択することで、OLEDの明るさを調整できる。
このような構成と動作にすることで、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0023】
[変形例2]
図10に、OLED電灯の明るさを、点灯するOLEDの数によって制御するOLED電灯の構成例を示す。OLED電灯3200は、M個の赤色OLED3250R1〜3250RM、M個の緑色OLED3250G1〜3250GM、M個の青色OLED3250B1〜3250BMを有している。各OLED3250R1〜3250RMを構成するOLEDの数(直列に接続されているOLEDの数)は、同じでも異なっていてもよい。
【0024】
本変形例でも、変形例1と同じように、PLL同期回路1237は、3M個のクロック1に対して、1個のクロック2を生成する。そして、3M個のクロック1によって、制御信号の3M個の信号(パルス)の情報が、3M個のDラッチ2231−1〜3M(IC1〜IC3M)の出力に反映される。クロック2によって、ラッチ回路2235は、各Dラッチ2231−1〜3Mの状態を保持する。ラッチ回路2235の出力がHの場合には、OLEDに電流が流れるので、ラッチ回路2235の出力によって、電流を流すOLEDの数を制御でき、OLED電灯の明るさの制御が可能である。
このような構成と動作にすることで、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0025】
[第2実施形態]
図11に、第2実施形態のOLED発光システムの構成例を示す。OLED発光システム500は、制御装置510、K×N個のOLED電灯5200k−n(kは1〜Kの整数、nは1〜Nの整数)、K対のメタル線530を有する。N個のOLED電灯52001−nは、同じ1対のメタル線530に接続されている。制御装置510からは、メタル線530に、N個のOLED電灯52001−nへの制御信号が時間多重されて送信される。例えば、最初の3つの信号(パルス)はOLED電灯52001−1への信号、次の3つの信号(パルス)はOLED電灯52001−2への信号、3N−2番目から3N番目の信号(パルス)はOLED電灯52001−Nへの信号のように多重化し、繰り返せばよい。
【0026】
図12に、OLED電灯の機能構成例を示す。図4のOLED電灯1200との違いは、変換部5230が位置決回路5236を有していることである。位置決回路5236は、OLED電灯5200が取り付けられる位置(何番目の信号で制御されるのか)に従って、制御信号からそのOLED電灯用の信号を取り出す。
図13に、OLED電灯の具体的な機能構成例を示す。位置決回路5236は、ゲート回路などによって、そのOLED電灯用の信号のタイミングだけ信号が通過するようにすればよい。また、タイミングの設定は、OLED電灯5200をOLED発光システム500に取り付けるときに行えばよい。さらに、PLL同期回路1237は、3N個のクロック1に対して1個のクロック2を生成する。このように、位置決回路5236は、所定の信号(パルス)のみを通過させるので、クロック1が通過したタイミングの制御信号をDラッチ1231−1〜3が保持する。したがって、N個のOLED電灯5200への制御信号を多重化しても、各OLED電灯を独立に制御できる。
【0027】
また、本発明の制御信号であれば、第1実施形態で示したように、ビットレートを高くしやすい。例えば、100個のOLED電灯が256階調(8ビット)で、1秒間に60回状態を変えるとすると、
100(個)×3(RBG)×8(ビット)×60(回/秒)=144000(ビット/秒)
となる。OLED電灯の数を増やしたり、階調を高くしたり、状態の変更頻度を高くすれば、より高いビットレートが求められる。このような場合に本発明の制御方法は適しており、周りのノイズなどにもよるが、数Mビット/秒〜数10Mビット/秒まで対応できる。
【0028】
このような構成と動作なので、OLED電灯内の2つ以上のOLEDのグループごとに制御する個別制御信号の情報を、1対のメタル線に多重化して伝え、1対のメタル線でOLED電灯ごとの色と明るさを制御できる。さらに、1対のメタル線で、複数のOLED電灯の制御が可能となる。したがって、競技場用の電光掲示板のように、電灯(パネルディスプレイ)が多数ある場合に、少ない本数のメタル線で配線することができ、配線の簡素化が実現できる。
【0029】
[第3実施形態]
図14に、図3中のDMX変換・制御装置の機能構成例を示す。なお、図3は、既存のシステムを流用した場合のOLED発光システムの構成例を示す図である。DMX変換・制御装置210は、A−DコンバータまたはD−Dコンバータ211、ミキシング回路212、重畳回路213、AC−DC電源回路214から構成されている。DMX変換・制御装置210への入力は、既存のDMX調光卓910からの出力である。A−DコンバータまたはD−Dコンバータ211は、DMX調光卓910からの出力が送出されるメタル線930(n=1〜3N)と接続されている。既存のDMX調光卓910には、いろいろな種類がある。例えば、出力が交流100Vや200Vの場合もあるし、直流の場合もある。また、既存のDMX調光卓910には、アナログ的に電灯を制御するものや、デジタル的に電灯を制御するものがあり。アナログ的に電灯を制御する方法の例としては、電灯への印加電圧を変化させ、電灯の明るさを調整する方法がある。デジタル的に電灯を制御する方法の例としては、電圧を印加する時間と印加しない時間の割合を調整することで、電灯の明るさを制御する方法がある。これらの方法は、既存のDMX調光卓910の例であり、電灯を制御する方法にはいろいろある。A−DコンバータまたはD−Dコンバータ211は、既存のDMX調光卓910の信号を、ミキシング回路212の入力インターフェースに適合するように変換する。
【0030】
ミキシング回路212は、電灯ごとまたは複数の電灯用のR、G、Bの信号を時間多重した制御信号を生成する。この制御信号は、図6に示すように、立ち上がりまたは立下りが、点灯の場合も消灯の場合も同じタイミングである。AC−DC電源回路214は、商用電源からDMX変換・制御装置210の各構成部を駆動させる電力と電灯を点灯させるための電力を生成する。重畳回路213は、ミキシング回路212からの制御信号と、AC−DC電源回路214からの電力を重畳し、メタル線130(n=1〜N)に出力する。なお、電灯への電力を別のメタル線で供給する場合には、重畳回路は不要である。また、AC−DC電源装置は、電灯用の電力を生成する必要はない。
【0031】
DMX変換・制御装置210は、このような構成なので、既存のシステムを流用してOLED発光システムを構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来の照明システムの機能構成例を示す図。
【図2】第1実施形態のOLED発光システムの構成例を示す図。
【図3】既存のシステムを流用した場合のOLED発光システムの構成例を示す図。
【図4】第1実施形態のOLED電灯の機能構成例を示す図。
【図5】3つのOLEDのグループを有するOLED電灯の具体例を示す図。
【図6】制御装置または変換・制御装置からの制御信号の具体例を示す図。
【図7】立ち上がりのタイミングが一致する信号が、入力された場合のOLED電灯の動作を示す図。
【図8】OLEDの明るさを、発光する時間で制御する方法を示す図。
【図9】OLEDの明るさを、抵抗の選択によって制御するOLED電灯の構成例を示す図。
【図10】OLED電灯の明るさを、点灯するOLEDの数によって制御するOLED電灯の構成例を示す図。
【図11】第2実施形態のOLED発光システムの構成例を示す図。
【図12】第2実施形態のOLED電灯の機能構成例を示す図。
【図13】第2実施形態のOLED電灯の具体的な機能構成例を示す図。
【図14】DMX変換・制御装置の機能構成例を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OLED(有機発光ダイオード)を有し、照明用又は競技場用の電光設備として使用されるOLED電光システムであって、
複数のOLEDを制御するために、1対のメタル線で制御信号を送出する制御装置と、
複数のOLEDと、1対のメタル線から前記制御信号を受け取る入力部と、前記制御信号を個別制御信号に変換し、複数のOLEDを2組以上のグループごとに制御する変換部と、OLED用と前記変換部用の電力を生成する電源部とを有するOLED電灯と、
前記制御装置と前記OLED電灯とをつなぎ、前記制御信号と給電用の電力を送る1対以上のメタル線と
を有するOLED電光システム。
【請求項2】
OLED(有機発光ダイオード)を有し、照明用又は競技場用の電光設備として使用されるOLED電光システムであって、
複数のOLEDに対して、1対のメタル線で制御信号を送出する制御装置と、
複数のOLEDを有し、前記制御信号を受信して個別制御信号に変換するとともに、当該個別制御信号に基づいてOLEDを2組以上のグループごとに点灯、消灯させるOLED電灯と、
前記制御装置と前記OLED電灯とをつなぎ、前記制御信号を伝える1対以上のメタル線と
を有し、
前記制御信号中のOLEDを点灯させる信号も消灯させる信号も、立ち上がり又は立下りのいずれかのタイミングが同じである
ことを特徴とするOLED電光システム。
【請求項3】
請求項1または2記載のOLED電光システムであって、
前記制御装置が、前記メタル線で給電用の電力も送り、
前記OLED電灯が、前記制御信号と電力とを分離する信号・電力分離部を備え、前記電源部は前記信号・電力分離部から分離された電力からOLED用と前記変換部用の電力を生成する
ことを特徴とするOLED電光システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のOLED電光システムであって、
前記制御装置は、電灯ごとの明るさのみを制御する調光卓と、前記調光卓からの出力を前記制御信号に変換する変換・制御装置から構成される
ことを特徴とするOLED電光システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のOLED電光システムであって、
各OLEDの明るさを、各OLEDの発光時間によって制御する
ことを特徴とするOLED電光システム。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載のOLED電光システムであって、
各OLEDの明るさを、各OLEDと直列に接続された抵抗の値によって制御する
ことを特徴とするOLED電光システム。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載のOLED電光システムであって、
前記OLED電灯の色と明るさを、発光させるOLEDの数によって制御する
ことを特徴とするOLED電光システム。
【請求項8】
請求項1または2記載のOLED電光システムであって、
複数の前記電灯を有し、
前記制御装置が1対のメタル線に出力する制御信号は、複数の前記電灯を制御する信号であり、
前記制御信号は、OLED電灯ごと、OLEDのグループごとの制御情報が時間多重方式によって多重化されており、
前記OLED電灯は、前記制御信号から当該OLED電灯を制御するための信号を取り出す位置決回路を有している
ことを特徴とするOLED電光システム。
【請求項9】
複数のOLED(有機発光ダイオード)を有するOLED電灯であって、
複数のOLEDと、
1対のメタル線からOLEDを制御する制御信号を受け取る入力部と、
前記制御信号を個別制御信号に変換し、複数のOLEDを2組以上のグループごとに制御する変換部と、
OLED用と前記変換部用の電力を生成する電源部と
を有するOLED電灯。
【請求項10】
請求項9記載のOLED電灯であって、
前記制御信号中のOLEDを点灯させる信号も消灯させる信号も、立ち上がり又は立下りのいずれかのタイミングが同じである
ことを特徴とするOLED電灯。
【請求項11】
請求項9または10記載のOLED電灯であって、
前記制御信号と電力とを分離する信号・電力分離部を備え、
前記電源部は、前記信号・電力分離部から分離された電力からOLED用と前記変換部用の電力を生成する
ことを特徴とするOLED電灯。
【請求項12】
請求項9から11のいずれかに記載のOLED電灯であって、
各OLEDの明るさを、各OLEDの発光時間によって制御する
ことを特徴とするOLED電灯。
【請求項13】
請求項9から11のいずれかに記載のOLED電灯であって、
各OLEDの明るさを、各OLEDと直列に接続された抵抗の値によって制御する
ことを特徴とするOLED電灯。
【請求項14】
請求項9から11のいずれかに記載のOLED電灯であって、
色と明るさを、発光させるOLEDの数によって制御する
ことを特徴とするOLED電灯。
【請求項15】
請求項9から11のいずれかに記載のOLED電灯であって、
前記制御信号に複数のOLED電灯を制御する信号が含まれている場合に、前記制御信号から当該OLED電灯を制御するための信号を取り出す位置決回路
を備えるOLED電灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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