説明

OLTおよびフレーム転送方法

【課題】回路規模の大幅増大や下り帯域に対する制限を回避しつつ、1台のOLTにより、複数のONUと複数の上位装置との間でやり取りするフレームを転送する。
【解決手段】MACアドレス検索テーブル27に、当該ONUのLLIDおよび下り出力先選択情報を、ONUと接続されたユーザ装置のMACアドレスごとに登録しておき、上位装置から下りフレームを受信した場合、フレーム転送処理部20で、当該下りフレームの宛先MACアドレスに対応するLLIDおよび下り出力先選択情報を、MACアドレス検索テーブル27から取得する。LLIDテーブル23に、当該LLIDと対応するSNI選択情報を、ONUのLLIDごとにそれぞれ登録しておき、ONUから上りフレームを受信した場合、フレーム転送処理部20で、当該上りフレームのLLIDに対応するSNI選択情報を、LLIDテーブル23から取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信技術に関し、特にPONシステムを事業者側ネットワーク(サービス網)の上位装置と接続するOLT(Optical Line Terminal)におけるフレーム転送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
2009年にIEEE802.3avにおいて10G−EPON(10 Gigabit Ethernet Passive Optical Network:Ethernetは登録商標)の標準化が完了した。10G−EPONの特徴は、既に広く普及しているGE−PON(Gigabit Ethernet Passive Optical Network:非特許文献1参照)の10倍の高速伝送が可能なことである。さらに、既存のGE−PONと10G−EPONを混在させて利用できるという特徴がある。
【0003】
GE−PONと10G−EPONを混在させて利用する場合は、1G下り信号と10G下り信号で異なる波長を使用するWDM技術を用い、1G下り信号間と10G下り信号間のそれぞれにおいてTDM技術を用いる。上り信号においては、1G上り信号と10G上り信号で同一の波長を使用し、1G上り信号と10G上り信号をまとめてTDMA技術を用いる。すなわち、1G下り信号、10G下り信号、および、上り信号で異なる3種類の波長を用いる。
【0004】
[第1の従来技術]
まず、第1の従来技術について説明する。図19は、従来の10G−EPONシステムの構成例である。図19に示すように、10G−EPONでは、GE−PONと10G−EPONを混在させて利用できるため、1台のOLTに1G−ONU(Optical Network Unit)と10G−ONUを接続することができる。
図20は、従来のOLTの構成を示すブロック図である(特許文献1参照)。図21は、従来のOLTで用いられるフレーム転送処理の要部構成を示すブロック図である。
【0005】
従来のOLTでは、フレーム転送処理部60で、下りフレームの宛先MACアドレスにより、下りフレームの宛先ONUを決定する。このため、受信した上りフレームの送信元MACアドレスを、MACアドレス登録部61Aが、送信元ONUのLLID(Logical Link ID)に括りつけてMACアドレス検索テーブル61Bへ登録しておく。そして、受信した下りフレームの宛先MACアドレスが、MACアドレス検索テーブル61Bに登録済みであれば、MACアドレス検索部61Cで、そのMACアドレスに括りつけられたLLIDを宛先ONUと判断する機能が搭載されている。
【0006】
図20のOLTにおいて、第1の送受信回路52は、PONポート51に接続されたPONを介してONUとの間でフレームを送受信するための回路である。
第2の送受信回路58は、SNI(Service Node Interface)側に設けられたSNIポート59を介して接続された事業者ネットワークNWとのインターフェースになる回路である。
フレーム分離部53は、第1の送受信回路52より受信されたフレームのうち、OLT50宛てのフレーム(PONの制御に用いられる制御フレーム)を制御フレーム処理部54へ送信するとともに、その他のフレームをフレーム転送処理部60へ送信する処理部である。
【0007】
フレーム多重部56は、フレーム転送処理部60からの下りフレームと制御フレーム処理部54からの制御フレームとを時分割的に多重し、第1の送受信回路52に対して送信する処理部である。
フレーム転送処理部60は、フレーム分離部53と第2の送受信回路58の双方から受信したフレームについて、それぞれの宛先MACアドレスに基づき、フレームの転送処理を行う処理部である。
【0008】
制御フレーム処理部54は、各ONUにLLIDを自動的に割り当てるための発見処理(Discoveryプロセス)や上り信号(ONUからOLT宛ての信号)の調停といった、PONの制御に関する処理や、各ONUのLLID等のPON−IFポート情報を帯域割当処理部55へ転送する処理を行う処理部である。
帯域割当処理部55は、制御フレーム処理部54からの要求に従い、ONUへ帯域(送信開始時刻と送信データ量)を割り当てる処理や、制御フレーム処理部54から転送されたPON−IFポート情報を管理する処理を行う処理部である。
【0009】
また、図21のフレーム転送処理部60のうち、MACアドレスの登録・検索を行うMACアドレス処理部61において、MACアドレス登録部61Aは、受信した上りフレームの送信元MACアドレスに基づいてMACアドレス検索テーブル61Bを検索し、送信元MACアドレスがMACアドレス検索テーブル61Bに登録されていない場合は新規に登録し、送信元MACアドレスが既にMACアドレス検索テーブル61Bに登録されている場合は登録情報を更新する(登録情報を変更する必要がない場合は、更新しないようにしてもよい)。
MACアドレス検索テーブル61Bには、各送信元MACアドレスに対応するONUのLLIDが登録されている。
【0010】
MACアドレス検索部61Cは、受信した下りフレームの宛先MACアドレスに基づいて、MACアドレス検索テーブル61Bから、対応するLLIDを読み出して、下りフレームに付与するLLIDを決定する。
レイテンシ吸収部61Dは、受信した下りフレームに遅延を付加して、MACアドレス検索部61CでのLLID決定処理によるレイテンシを吸収する。
出力合成部61Eは、レイテンシ吸収部61Dから出力された下りフレームのプリアンブルに、MACアドレス検索部61Cで決定したLLIDを挿入することにより、送信する下りフレームに宛先LLIDを付与する。
【0011】
10G−EPONシステムにおいて、1G−ONU宛と10G−ONU宛の下りフレームが混在した場合も同様に、宛先ONUのLLIDを決定することが可能であるが、そのLLIDがどちらの種類のONUのものなのかを別途確認して、該当のレートの下りフレーム出力から送信する必要がある。しかしながら、従来のOLTにはそのような機能は搭載されていない。
【0012】
図22は、従来のOLTで用いられるフレーム転送処理の要部構成(変更後)を示すブロック図である。従来のOLTにおいて、下りフレームの宛先MACアドレスから宛先ONUのLLIDを決定し、そのLLIDから下り送信速度情報を決定して、それらの情報を下りフレームに付加する回路を追加する場合(すなわち、10G−EPON対応とする場合)、フレーム転送処理部60において、図22のような、下り送信速度処理部62が必要となると考えられる。
【0013】
図22において、速度情報登録部62Aは、受信した上りフレームのプリアンブルから送信元ONUのLLIDを取得し、送信元ONUのLLIDに対応する、下り送信速度情報を帯域割当処理部55から読み出して、当該LLIDと下り送信速度情報とを対応付けて、下り送信速度管理テーブル62Bに登録する。
下り送信速度管理テーブル62Bには、各ONUのLLIDに対応する下り送信速度情報が登録されている。
下り送信速度検索部62Cは、下りフレームの宛先LLIDに基づいて下り送信速度管理テーブル62Bから下り送信速度情報を読み出して、送信する下りフレームの下り送信速度情報を決定する。
【0014】
第2のレイテンシ吸収部62Dは、宛先LLIDが付加された下りフレームに遅延を付加して、下り送信速度検索部62Cでの下り送信速度決定処理によるレイテンシを吸収する。
第2の出力合成部62Eは、第2のレイテンシ吸収部62Dから出力された下りフレームに、下り送信速度検索部62Cでの検索により読み出された下り送信速度情報を付与する。
下りフレームは、付与された下り送信速度情報に従って、所定の速度でPONへ送出される。
【0015】
なお、この図22では、速度情報登録部62Aに対して、上りフレームと帯域割当処理部55から下り送信速度情報が入力されているが、このような登録用の回路(速度情報登録部62A)は必ずしも必要ではない。OLT50を制御・管理するソフトウェアが、LLID毎の下り送信速度情報を把握しているので、このソフトウェアにより、下り送信速度管理テーブル62Bに必要な情報を書き込むことが可能である。
【0016】
[第2の従来技術]
次に、第2の従来技術について説明する。図23は、従来の10G−EPONシステムの他の構成例である。図24は、従来の10G−EPONシステムの他の構成例である。
従来のPONシステムでは、非特許文献2が示すように、OLTには、SNI(Service Node Interface)側にSNIポートが1つ設けられている。
【0017】
したがって、ONU(Optical Network Unit)毎に接続するネットワーク(サービス網)を変える必要がある場合、従来のPONシステムでは、図23もしくは図24のようなシステム構成となる。このうち、図23のシステム構成は、各ネットワーク(サービス網)NWごとに、1つのOLTを設けた構成例である。また、図24のシステム構成は、OLTと複数のネットワークNWとの間にスイッチ(もしくはルータ等)を挿入し、複数のネットワークNWを1つのOLTに接続した構成例である。これらPONシステムで用いられるOLTは、前述した図19と同様のOLTが用いられる。
【0018】
図23および図24のどちらのシステム構成も、SNIとネットワークNWの間には、サービス網内の転送制御等を行う上位装置が挿入される。この際、PONシステムで実現できるサービスの内容は、OLTに接続する上位装置により制限される。例えば、OLTと接続している上位装置が1G Ethernet用の場合、このPONシステムは1G Ethernetによるサービスに制限される。
【0019】
また、図24の場合、1台のスイッチとOLTを複数の上位装置で共用する、すなわちOLT1台分の帯域を分割して使用することになる。このため、図23の場合と比較するとそれぞれの上位装置で使用できる下りフレームの帯域が小さくなってしまう。
【0020】
つまり、ONU毎に接続するネットワークNWが異なる場合、従来は2とおりの方法があったが、それらの方法は、
方法1(図23):各上位装置で使用できる下り帯域を最大にできるが、接続するネットワークNWと同数のOLTが必要
方法2(図24):各上位装置で使用できる下り帯域が方法1(図23)より小さくなる(上位装置の下り帯域を最大まで使用できない)が、OLTは1台でよい
と、どちらも長所と短所があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2009−260668号公報
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】「技術基礎講座[GE-PON技術]第1回 PONとは」、NTT技術ジャーナル、Vol.17、No.8、pp.71-74、2005
【非特許文献2】「Gigabit Ethernet-PON(GE-PON)システムの開発」、NTT技術ジャーナル、Vol.17、No.3、pp.75-80、2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
前述した第1の従来技術では、1台のOLTに1G−ONUと10G−ONUを接続する場合、送信速度決定処理を実行するためのハードウェアの追加が必要となる。しかしながら、送信速度決定処理を実行するためのハードウェアは、例えば図22に示した下り速度情報処理部62のように、LLID決定処理を実行するMACアドレス処理部61と同様の回路規模を持つものとなる。このため、OLTの回路規模が大きくなり、装置が大型化するという問題点があった。また、このような回路規模の増大に起因して、消費電力、フレーム転送遅延時間、さらには装置コストなどが増大するという問題点があった。
【0024】
前述した第2の従来技術では、1台のOLTに複数のネットワーク(サービス網)NWを接続する場合、方法1によれば、接続するネットワーク(サービス網)と同数のOLTが必要となるため、PONシステム全体のOLT数を考慮した場合、方法2が望ましい。
しかしながら、方法2によれば、OLTと各ネットワークNWの上位装置との間にスイッチ(もしくはルータ等)を挿入する必要がある。このため、各上位装置でスイッチの下り帯域を共用することになり、個々の上位装置で使用できる下り帯域が制限されるという問題点があった。
【0025】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、回路規模の大幅増大や下り帯域に対する制限を回避しつつ、1台のOLTにより、複数のONUと複数の上位装置との間でやり取りするフレームを転送することができるフレーム転送技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
このような目的を達成するために、本発明にかかるOLTは、PONを介して複数のONUと接続するとともに、複数の上位装置に当該上位装置ごとに設けられるSNIを介して接続し、これらONUと上位装置との間でやり取りするフレームを相互に転送処理するOLTであって、PONを介してONUからの上りフレームを受信する受信回路と、予め設定された伝送速度ごとに設けられて、ONUへの下りフレームを、PONを介して当該伝送速度で送信する複数の送信回路と、SNIごとに設けられて、当該SNIを介して当該上位装置へ上りフレームを送信するとともに、当該SNIを介して当該上位装置からの下りフレームを受信する複数の送受信回路と、受信回路で受信した上りフレームを送受信回路へ転送し、送信受信回路で受信した下りフレームを送信回路へ転送するフレーム転送処理部とを備え、フレーム転送処理部に、ONUに個別のLLIDごとに、当該LLIDと対応するSNI選択情報が登録されているLLIDテーブルと、ONUと接続されたユーザ装置に個別のMACアドレスごとに、当該ONUのLLIDおよび下り出力先選択情報が登録されているMACアドレス検索テーブルとを含み、受信回路で受信した上りフレームのLLIDと対応するSNI選択情報をLLIDテーブルから取得して、送受信回路のうち当該SNI選択情報と対応する送受信回路へ当該上りフレームを転送し、送受信回路で受信した下りフレームの宛先MACアドレスと対応するLLIDおよび下り出力先選択情報をMACアドレス検索テーブルから取得して、当該LLIDを当該下りフレームに付与した後、送信回路のうち当該下り出力先選択情報と対応する送信回路へ転送するようにしたものである。
【0027】
この際、フレーム転送処理部に、受信回路で受信した上りフレームのLLIDと対応するSNI選択情報をLLIDテーブルから取得する出力先判定部と、送受信回路のうち、出力先判定部で取得したSNI選択情報と対応する送受信回路へ、上りフレームを転送する上り出力先制御部とをさらに含むようにしてもよい。
【0028】
また、フレーム転送処理部に、送受信回路ごとに設けられて、当該送受信回路で受信した下りフレームの宛先MACアドレスに対応するLLIDおよび下り出力先選択情報を、MACアドレス検索テーブルから取得する複数の下り出力先判定部と、送受信回路ごとに設けられて、当該下り出力先判定部で取得したLLIDを、当該送受信回路で受信した下りフレームに付与する複数のLLID付与部と、送受信回路ごとに設けられて、送信回路のうち、当該下り出力先判定部で取得した下り出力先選択情報と対応する送信回路へ、当該LLID付与部からの下りフレームを転送する複数の下り出力先制御部とをさらに含むようにしてもよい。
【0029】
また、フレーム転送処理部に、受信回路で受信した上りフレームから送信元MACアドレスおよびLLIDを取得し、当該LLIDとこのLLIDに予め対応付けられている下り出力先選択情報とを、当該送信元MACアドレスと対応付けて、MACアドレス検索テーブルに登録するMACアドレス登録部をさらに含むようにしてもよい。
【0030】
また、受信回路で受信した上りフレームに対して、当該上りフレームのLLIDに予め対応付けられている下り出力先選択情報を当該上りフレームに付与する上り入力部をさらに備え、MACアドレス登録部で、上り入力部から出力された上りフレームから、送信元MACアドレス、LLID、および下り出力先選択情報とを取得して、MACアドレス検索テーブルに登録するようにしてもよい。
【0031】
また、MACアドレス登録部で、LLIDおよび下り出力先選択情報を登録する際、当該送信元MACアドレスに関する受信状況を含めてMACアドレス検索テーブルに登録し、一定のエージング周期ごとに、MACアドレス検索テーブルに登録されている各MACアドレスの当該受信状況を検査し、これらMACアドレスのうち当該エージング周期内に受信確認されていないMACアドレスを無効状態に設定するようにしてもよい。
【0032】
また、フレーム転送処理部に、下りフレームが属するVLANを識別するためのVIDごとに、当該下りフレームに関するLLIDおよび下り出力先選択情報が登録されているVIDテーブルをさらに含み、送受信回路で受信した下りフレームに関するLLIDおよび下り出力先選択情報を、当該下りフレームの宛先MACアドレスに基づきMACアドレス検索テーブルから取得し、あるいは当該下りフレームのVIDに基づきVIDテーブルから取得するようにしてもよい。
【0033】
また、本発明にかかるフレーム転送方法は、PONを介して複数のONUと接続するとともに、複数の上位装置に当該上位装置ごとに設けられるSNIを介して接続し、これらONUと上位装置との間でやり取りするフレームを相互に転送処理するOLTで用いられるフレーム転送方法であって、ONUに個別のLLIDごとに、当該LLIDと対応するSNI選択情報をLLIDテーブルで記憶するステップと、ONUと接続されたユーザ装置に個別のMACアドレスごとに、当該ONUのLLIDおよび下り出力先選択情報をMACアドレス検索テーブルで記憶するステップと、PONを介してONUから受信した上りフレームのLLIDと対応するSNI選択情報をLLIDテーブルから取得し、SNIごとに設けられて当該SNIを介して当該上位装置との間でフレームを送受信する送受信回路のうち、当該SNI選択情報と対応する送受信回路へ当該上りフレームを転送するステップと、送受信回路で受信した下りフレームの宛先MACアドレスと対応するLLIDおよび下り出力先選択情報をMACアドレス検索テーブルから取得し、当該LLIDを当該下りフレームに付与した後、予め設定された伝送速度ごとに設けられてONUへの下りフレームをPONを介して当該伝送速度で送信する複数の送信回路のうち、当該下り出力先選択情報と対応する送信回路へ転送するステップとを備えている。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、MACアドレス検索テーブルからの読み出し(検索)だけで、下りフレームの宛先LLIDと下り出力先選択情報(送信速度)を判定することができるので、OLTの回路規模をほとんど増大させることなく、下りフレームの出力系統を特定することができる。
また、OLTが複数の上位装置に当該上位装置ごとに設けられるSNIを介して接続される場合に、PONシステムに接続されている任意のONUから受信した上りフレームを、各SNIポートに接続されているそれぞれの上位装置のうち、当該ONUと対応する上位装置へ転送することができる。また、複数のSNIポートを経由して入力される下りフレームを、入力SNIポートごとに並行して処理して宛先ONUへ転送することができる。したがって、PONシステムの各ONUと各上位装置、さらにはその先の各ネットワークの間で、OLTと複数のSNIの間にスイッチ等を介すことなく、SNIごとのポートを備えた1つのOLTで、フレームを転送処理することができる。このため、各上位装置でスイッチの下り帯域を共用することがなくなり、個々の上位装置で使用できる下り帯域に対する制限を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1の実施の形態にかかるPONシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】PON区間で伝送されるフレームの構成例である。
【図3】第1の実施の形態にかかるOLTの構成を示すブロック図である。
【図4】フレーム転送処理部の構成例を示すブロック図である。
【図5】MACアドレス検索テーブルの構成例である。
【図6】下りフレームの出力先決定手順を示すフローチャートである。
【図7】LLIDテーブルの構成例である。
【図8】上りフレームの出力先SNI決定手順を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態にかかるOLTの構成を示すブロック図である。
【図10】上り入力部から出力される上りフレームの構成例である。
【図11】MACアドレス登録処理を示すフローチャートである。
【図12】MACアドレス検索テーブルの他の構成例である。
【図13】MACアドレス登録手順を示す他のフローチャートである。
【図14】エージング処理手順を示すフローチャートである。
【図15】MACアドレス検索テーブルにおけるエントリの変遷を示すタイムチャートである。
【図16】第4の実施の形態にかかるフレーム転送処理部の構成を示すブロック図である。
【図17】VIDテーブルの構成例である。
【図18】下りフレームの出力先決定手順を示すフローチャートである。
【図19】従来の10G−EPONシステムの構成例である。
【図20】従来のOLTの構成を示すブロック図である。
【図21】従来のOLTで用いられるフレーム転送処理の要部構成を示すブロック図である。
【図22】従来のOLTで用いられるフレーム転送処理の要部構成(変更後)を示すブロック図である。
【図23】従来の10G−EPONシステムの他の構成例である。
【図24】従来の10G−EPONシステムの他の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[PONシステム]
まず、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるPONシステム100について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかるPONシステムの構成を示すブロック図である。図2は、PON区間で伝送されるフレームの構成例である。
【0037】
図1に示すように、このPONシステム100において、ONUn(n=1〜6)は、UNI(User Network Interface)を介してユーザ装置nと接続されている。
各ONUは、光通信路を介して1つの光スプリッタに共通接続されており、さらにこの光スプリッタは、1つの光通信路と光多重分離装置とを介して、1つのOLT10と接続されている。
【0038】
このOLT10には、SNI側に2つのSNIポートが設けられており、これらSNIポートごとに、SNIを介して上位装置1および上位装置2が個別に接続されている。
また、上位装置1には、事業者側のネットワーク(サービス網)NW1が接続されており、上位装置2には、事業者側のネットワーク(サービス網)NW2が接続されている。
【0039】
このPONシステム100のPON区間、すなわちONUnとOLT10との間の区間では、図2に示すような構成のフレームでデータがやり取りされる。
図2において、プリアンブルは、EthernetのプリアンブルにLLIDを埋め込んだものである。
【0040】
LLID(Logical Link ID)は、各ONUと1対1に対応する識別子である。ONU登録(ONUがOLTの配下となる)時にOLTで決定され、OLTは自分の配下のONUでLLIDの重複が起こらないように管理している。
【0041】
VLANタグは、VLAN情報を含むタグである。タグがついていない場合やタグが複数ついている場合もある。このVLANタグは、TPID、TCIを含んでいる。
TPID(Tag Protocol ID)は、VLANタグが続くことを示すEther Type値である。通常は0x8100である。
TCI(Tag Control Information)は、VLANタグ情報である。このTCIは、PCP、CFI、VIDを含んでいる。
【0042】
PCP(Priority Code Point)は、当該フレームの優先度である。
CFI(Canonical Format Indicator)は、MACヘッダ内のMACアドレスが標準フォーマットに従っているかどうかを示す値である。
VIDまたはVLAN ID(VLAN Identifier)は、フレームが属するVLANを指定する値である。
Typeは、上位プロトコルの種別を示すEther Type値である。
【0043】
[OLT]
次に、図3を参照して、本実施の形態にかかるOLT10の構成について説明する。図3は、第1の実施の形態にかかるOLTの構成を示すブロック図である。
本実施の形態にかかるOLT10における、従来のOLTとの構成上の違いは、SNIポート、送受信回路、フレーム多重部、送信回路が、伝送速度の異なる伝送系統ごとに設けられ、さらにこれら異なる伝送系統ごとに設けられたSNIポート、送受信回路、フレーム多重部、送信回路に対応する構成のフレーム転送処理部を備えていることである。
【0044】
図3を参照して、本実施の形態にかかるOLT10の各処理部について説明する。
PONポート11は、PONを介してONUとの間でフレームをやり取りするための回路である。
受信回路12は、PONおよびPONポート11を介してONUからの上りフレームを受信するための回路である。
送信回路(0系)17Aおよび送信回路(1系)17Bは、予め設定された伝送速度ごとに設けられて、PONポート11およびPONを介して、それぞれ、ONU(0系)およびONU(1系)へ、下りフレームを当該伝送速度で送信するための回路である。本発明において、0系は、伝送速度が1Gbpsの伝送系統を示し、1系は、伝送速度が10Gbpsの伝送系統を示している。
【0045】
SNIポート(0系)19AおよびSNIポート19B(1系)は、上位装置ごとに設けられて、SNIを介して当該上位装置との間でフレームをやり取りする回路部である。
送受信回路(0系)18Aおよび送受信回路(1系)18Bは、上位装置ごとすなわちSNIごとに設けられて、それぞれSNIポート19A,19B、さらには対応する上位装置1,2を介して、事業者ネットワーク(0系)NW1および事業者ネットワーク(1系)NW2との間でフレームを送受信する回路部である。
【0046】
フレーム分離部13は、受信回路12より入力されたフレームのうち、OLT10宛てのフレーム(PONの制御に用いられる制御フレーム)を制御フレーム処理部14へ送信するとともに、その他のフレームをフレーム転送処理部20へ送信する処理部である。
フレーム多重部(0系)16Aは、フレーム転送処理部20からのONU(0系)宛の下りフレームと制御フレーム処理部14からのONU(0系)宛の制御フレームとを時分割的に多重し、送信回路(0系)17Aに対して送信する処理部である。
フレーム多重部(1系)16Bは、フレーム転送処理部20からのONU(1系)宛の下りフレームと制御フレーム処理部14からのONU(1系)宛の制御フレームとを時分割的に多重し、送信回路(1系)17Bに対して送信する処理部である。
【0047】
フレーム転送処理部20は、受信回路12で受信されてフレーム分離部13から入力された上りフレームを、LLIDテーブル23から取得した当該上りフレームのLLIDと対応するSNI選択情報に基づいて、送受信回路18A,18B(0系または1系)のいずれかへ転送処理し、送受信回路18A,18Bで受信された下りフレームを、MACアドレス検索テーブル27から取得した当該下りフレームの宛先MACアドレスと対応する下り出力先選択情報に基づいて、フレーム多重部16A,16B(0系または1系)のいずれかへ転送処理する処理部である。
【0048】
制御フレーム処理部14は、各ONUにLLIDを自動的に割り当てるための発見処理(Discoveryプロセス)や上り信号(ONUからOLT宛ての信号)の調停といった、PONの制御に関する処理を行う処理部である。
帯域割当処理部15は、制御フレーム処理部14からの要求に従い、ONUへの帯域(送信開始時刻と送信データ量)割当や、制御フレーム処理部14から転送されたPON−IFポート情報の管理を行う処理部である。
【0049】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図4−図8を参照して、本実施の形態にかかるOLT10のフレーム転送処理について詳細に説明する。図4は、フレーム転送処理部の構成例を示すブロック図である。図5は、MACアドレス検索テーブルの構成例である。図6は、下りフレームの出力先決定手順を示すフローチャートである。図7は、LLIDテーブルの構成例である。図8は、上りフレームの出力先SNI決定手順を示すフローチャートである。
【0050】
まず、フレーム転送処理部20が、下りフレームの出力先を決定する動作について説明する。
フレーム転送処理部20は、受信した下りフレームをどの送信回路17A,17Bから送信するのか、すなわち速度の異なるどの下り系統へ出力するのかを、次のようにして決定する。
【0051】
フレーム転送処理部20は、図5に示すMACアドレス検索テーブル27を備えている。MACアドレス検索テーブル27には、ONUと接続されたユーザ装置のMACアドレスごとに、下り出力先選択情報、LLID、およびエントリ有効/無効が登録されている。エントリ有効/無効は、当該エントリの有効/無効を示す情報である。「エントリ無効」の場合は、このエントリのMACアドレス、下り出力先選択情報、LLIDになんらかの値が記載されていても「このエントリは空いている」ということを表す。
【0052】
下り出力先判定部34A,34Bは、送受信回路18A,18Bごとに設けられており、受信した下りフレームの宛先MACアドレスに基づいて、MACアドレス検索テーブル27からLLIDと下り出力先選択情報を読み出して、下りフレームの宛先LLIDと出力先を、図6の手順により決定する。決定されたLLIDの情報は、宛先LLIDとして、対応する系統であるLLID付与部(0系)32AまたはLLID付与部(1系)32Bへ与えられる。
【0053】
図6における下りフレームの下り出力先決定手順において、下り出力先判定部34A,34Bは、まず、MACアドレス検索テーブル27のうち、受信した下りフレームの宛先MACアドレスのエントリ有効/無効に基づいて、当該宛先MACアドレスがMACアドレス検索テーブル27に登録されているかどうか確認する(ステップ100)。
【0054】
ここで、エントリ有効/無効として「有効」状態が設定されており、当該宛先MACアドレスが登録されている場合(ステップ100:YES)、下り出力先判定部34A,34Bは、MACアドレス検索テーブル27から当該宛先MACアドレスに対応するLLIDを取得し、下りフレームの宛先LLIDとして特定する(ステップ101)。
続いて、下り出力先判定部34A,34Bは、MACアドレス検索テーブル27から当該宛先MACアドレスに対応する下り出力先選択情報を取得して、当該下りフレームの出力系統を特定し(ステップ102)、一連の処理を終了する。
【0055】
一方、エントリ有効/無効として「有効」状態が設定されているどのエントリにおいても、MACアドレス欄が当該宛先MACアドレスに一致しない場合(ステップ100:NO)、下り出力先判定部34A,34Bは、当該下りフレームの破棄を決定し(ステップ103)、一連の処理を終了する。
【0056】
このような下りフレームの下り出力先決定手順と並行して、送受信回路18A,18Bごとに設けられている下りレイテンシ吸収部31A,31Bは、受信した下りフレームに遅延を付加して、下り出力先判定部34A,34Bでの下り出力先決定処理によるレイテンシを吸収する。
LLID付与部32A,32Bは、送受信回路18A,18Bごとに設けられており、下り出力先判定部34A,34Bで決定したLLIDに従って、下りレイテンシ吸収部31A,31Bからの下りフレームに宛先LLIDを付与する。
【0057】
下り出力先制御部33A,33Bは、送受信回路18A,18Bごとに設けられており、下り出力先判定部34A,34Bで決定した下り出力先選択情報に従って、該当する0系の下り出力タイミング調整部36Aまたは1系の下り出力タイミング調整部36Bを介して、下り出力先選択情報と対応する送信回路17A,17Bへ、LLID付与部32A,32Bからの下りフレームを転送する。
【0058】
下り出力タイミング調整部36A,36Bは、伝送速度(伝送系統)ごとに設けられており、下りフレームに含まれているPCPなどで決まる優先度に基づいて、各下りフレームの出力順序を調整して、該当するフレーム多重部16A,16Bを介して対応する送信回路17A,17Bへ、下りフレームを転送する。例えば、10G−ONUと1G−ONUが混在するシステムであれば、10G−ONUについては10G(802.3av仕様)出力、1G−ONUについては1G(802.3ah仕様)出力を指定すれば良い。
下り出力先判定部34A,34Bで破棄と判定された場合、下り出力先制御部33A,33Bは、当該下りフレームの廃棄処理を行う。
【0059】
0系の下り出力先制御部33Aから1系の下り出力タイミング調整部36Aへ下りフレームが転送される場合、あるいは、1系の下り出力先制御部33Bから1系の下り出力タイミング調整部36Bへ下りフレームが転送される場合の例としては、GE−PONと10G−EPONが共存するシステムがある。本発明において、0系は、伝送速度が1Gbpsの伝送系統を示し、1系は、伝送速度が10Gbpsの伝送系統を示している。
【0060】
このようなケースでは、SNIポート(1系)から入力された伝送速度10Gbpsの下りフレームの宛先ユーザ装置がGE−PON用ONUの配下にある場合、OLT10において、PONポート11から伝送速度1GbpsのGE−PON用フレームとして出力する必要がある。
そのためには、フレーム転送処理部20で、1系から受信した下りフレームを0系から出力する必要がある。GE−PONから10G−EPONへと移行する過渡期においては、このような技術が必要である。
【0061】
MACアドレス検索テーブル27については、MACアドレス登録部26が、受信した上りフレームから送信元MACアドレスおよびLLIDを取得し、当該LLIDとこのLLIDに予め対応付けられている下り出力先選択情報とを、当該送信元MACアドレスと対応付けて、MACアドレス検索テーブル27に登録する。下り出力先選択情報は、例えば、通信開始時にONUから通知された制御フレームにより、ONUの下り出力先選択情報を取得しておけばよい。
【0062】
本実施例の構成では、MACアドレス検索テーブル27の値は、OLT10を制御・管理するソフトウェアにより設定する。具体的には、MACアドレス登録部26が、図5に示したような、MACアドレス検索テーブル27に登録しようとする情報を、レジスタにセットして、MACアドレス設定要求フラグを立てると、ソフトウェアがMACアドレス検索テーブル27に情報を書き込んで、MACアドレス設定完了フラグを立てる。このようにして、LLID毎に、下りフレームの宛先MACアドレスと下り出力先選択情報を管理して、必要な情報をMACアドレス検索テーブル27に登録する。
【0063】
次に、フレーム転送処理部20が、上りフレームの出力先を決定する動作について説明する。
PONポート11で受信した上りフレームがPON制御フレームでない場合、フレーム転送処理部20は、受信した上りフレームをどの事業者ネットワークNWへ出力するのかを、次のようにして決定する。
【0064】
フレーム転送処理部20は、図7に示すようなLLIDテーブル23を備えている。LLIDテーブル23には、ONUのLLIDごとに、エントリの有効/無効とSNI選択情報とが登録されている。エントリ有効/無効は、当該エントリの有効/無効、すなわち、当該LLIDの登録済/未登録を示す情報である。
出力先SNI判定部22では、上りフレームのLLIDに基づいて、LLIDテーブル23からSNI選択情報を読み出して、出力先SNIを、図8の手順により決定し、そのSNI選択情報を上り出力先制御部24に与える。
【0065】
図8における上りフレームの出力先SNI決定手順において、出力先SNI判定部22は、まず、LLIDテーブル23のうち、受信した上りフレームのLLIDのエントリ有効/無効に基づいて、当該LLIDがLLIDテーブル23に登録されているか確認する(ステップ110)。
ここで、エントリ有効/無効として「有効」状態が設定されている場合、すなわち、当該LLIDが登録されている場合(ステップ110:YES)、出力先SNI判定部22は、LLIDテーブル23から当該LLIDに対応するSNI選択情報を取得し、下りフレームの出力先として特定し(ステップ111)、一連の処理を終了する。
【0066】
一方、エントリ有効/無効として「無効」状態が設定されている場合、すなわち、受信した上りフレームのLLIDがLLIDテーブル23に登録されていない場合(ステップ110:NO)、出力先SNI判定部22は、当該上りフレームの破棄を決定し(ステップ112)、一連の処理を終了する。
【0067】
このような上りフレームの出力先SNI決定手順と並行して、上りレイテンシ吸収部21は、受信した上りフレームに遅延を付加して、出力先SNI判定部22における出力先SNI決定処理によるレイテンシを吸収する。
上り出力先制御部24は、出力先SNI判定部22で決定したSNI選択情報に従って、該当する上り出力タイミング調整部25A,25Bへ、上りレイテンシ吸収部21からの上りフレームを転送する。
【0068】
上り出力タイミング調整部25A,25Bは、送受信回路18A,18Bごとに設けられており、各上りフレームに含まれているPCPなどで決まる優先度に基づいて、各上りフレームの出力順序を調整して、該当する送受信回路18A,18Bへ、上り出力先制御部24からの上りフレームを転送する。
出力先SNI判定部22からフレーム廃棄が通知された場合、上り出力先制御部24は、当該上りフレームの廃棄処理を行う。
【0069】
LLIDテーブル23の値は、制御フレーム処理部14でのONU登録時に、外部のハードウェアまたはソフトウェア(図3に記載せず)により、どのネットワークNW1,NW2(図3では、事業者NW(0系)、事業者NW(1系))に接続するのかを決めて設定される。例えば、10G−ONUと1G−ONUが混在するシステムで、SNIの一方が10G−Ethernet用、他方が1G−Ethernet用の場合であれば、10G−ONUについては10G−Ethernet用のSNI、1G−ONUについては1G−Ethernet用のSNIを指定することができる。
【0070】
なお、下りの処理は、2つの送受信回路18A,18Bから入力されるフレームを並行して処理する必要があるが、図4の構成のように、系統間で並行処理することにより、各SNIへのフレーム入力のスループットを上限まで使用することができる。この際、10G出力が802.3av仕様の場合のスループットの上限は約8.7Gbpsなので、その場合の10G出力用のSNI入力のスループットの上限は約8.7Gbpsとなる。
【0071】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、MACアドレス検索テーブル27に、ONUのLLIDおよび下り出力先選択情報を、ONUと接続されたユーザ装置のMACアドレスごとに登録しておき、上位装置から下りフレームを受信した場合、フレーム転送処理部20で、入力SNIポートごとに並行して、当該下りフレームの宛先MACアドレスに対応するLLIDおよび下り出力先選択情報を、MACアドレス検索テーブル27から取得するようにしたものである。
【0072】
前述した第1の従来技術のように、下りフレームの宛先LLIDを決定した後に送信レートの判断を行う場合、MACアドレス検索テーブル27以外に、LLID毎の下り送信速度を管理するテーブルを読み出す回路が必要となり、OLTの回路規模が増大する。
本実施の形態によれば、MACアドレス検索テーブル27からの読み出し(検索)だけで、下りフレームの宛先LLIDおよび下り出力先選択情報(送信速度)を特定することができるため、OLTの回路規模をほとんど増大させることなく、下りフレームの出力系統を特定することができる。
【0073】
また、本実施の形態は、LLIDテーブル23に、当該LLIDと対応するSNI選択情報を、ONUのLLIDごとに登録しておき、ONUから上りフレームを受信した場合、フレーム転送処理部20で、当該上りフレームのLLIDに対応するSNI選択情報を、LLIDテーブル23から取得するようにしたものである。
【0074】
これにより、OLTが複数の上位装置に当該上位装置ごとに設けられるSNIを介して接続される場合に、PONシステムに接続されている任意のONUから受信した上りフレームを、当該ONUと対応する上位装置へ転送することができる。また、複数のSNIポートを経由して入力される下りフレームを、入力SNIポートごとに並行して処理して宛先ONUへ転送することができる。
したがって、PONシステムの各ONUと各上位装置、さらにはその先の各事業者ネットワークの間で、OLT複数のSNIとの間にスイッチを介すことなく、SNIごとのポートを備えた1つのOLTでフレームを転送処理することができる。このため、各上位装置でスイッチの下り帯域を共用することがなくなり、個々の上位装置で使用できる下り帯域に対する制限を回避することが可能となる。
【0075】
また、本実施の形態では、10G−ONUと1G−ONUが混在するシステムで、SNIの一方が10G−Ethernet用、他方が1G−Ethernet用の場合、10G−ONUについては10G−Ethernet用のSNI、1G−ONUについては1G−Ethernet用のSNIを使用できる。
【0076】
この場合、下りフレームは、10G−Ethernet用のSNIから入力されるフレームはすべて10G−ONU宛てのフレームとなり、1G−Ethernet用のSNIから入力されるフレームはすべて1G−ONU宛てのフレームとなり、PON区間の下りの転送能力(伝送速度)を上限まで使用することができる。これにより、従来の図24の構成のように、下りの帯域を2台の上位装置で共用することがなくなる。
【0077】
10G−ONU宛ての下り出力が802.3av仕様の場合、PON区間の下りのスループットの上限は約8.7Gbpsなので、その場合の10G−ONU用のSNI入力のスループットの上限は約8.7Gbpsとなり、10G−ONU用の上位装置で下りの帯域制限が必要である。しかし、この帯域制限は接続する上位装置が10G−ONU用1台のみの場合でも同じであり、本発明の有効性を否定するものではない。
【0078】
仮に、従来技術で10G−Ethernet用のSNI 1個のみを搭載したOLTを構成した場合、802.3av仕様と802.3ah仕様混在時の下りのスループットの上限については本発明と同じ、約8.7Gbps+1Gbps=約9.7Gbpsであるが、複数の上位装置に接続するためにスイッチ等が必要となる。
また、本実施の形態において、10G−ONU宛ての下り出力の仕様を、802.3av仕様ではなく、10Gbpsのスループットが可能となる仕様に変更すれば、10G−ONUと1G−ONUが混在した場合の下りの最大スループットが10Gbps+1Gbps=11Gbps となり、上位装置での下りの帯域制限は不要となる。
【0079】
なお、フレーム転送処理部20を図4の構成とした場合、1G−ONU用のSNIとして10G−Ethernet用のSNIを使用することも可能である。ただし、この場合は上位装置で下りの帯域を1Gbps以下に制限してもらう必要が有る。逆に、10G−ONU用のSNIとして1G−Ethernet用のSNIを使用することも可能である。この場合は、PON区間の下りの転送能力を上限まで使用することはできない。
【0080】
また、本実施の形態では、10G−ONUと1G−ONUが混在するシステムを例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、収容するONUは10G−ONUのみであるが、ONU毎に異なるネットワークに接続する場合にも適用できる。この場合のOLTは、10G−Ethernet用のSNIを複数搭載し、802.3av仕様と同等の下りPON出力を複数搭載すれば良い。ただし、下りの波長を下り出力ポート毎に変え、必要に応じて、ONUに搭載するWDMフィルタを接続する上位ネットワーク毎に変えればよい。
【0081】
また、本実施の形態では、MACアドレス登録部26において、受信した上りフレームから送信元MACアドレスおよびLLIDを取得し、当該LLIDとこのLLIDに対応する下り出力先選択情報とを、当該送信元MACアドレスと対応付けて、MACアドレス検索テーブル27に登録するようにしたので、受信した上りフレームに基づいてMACアドレス検索テーブル27を登録・更新することができる。
【0082】
[第2の実施の形態]
次に、図9を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるOLT10について説明する。図9は、第2の実施の形態にかかるOLTの構成を示すブロック図である。
第1の実施の形態と比較して、本実施の形態にかかるOLT10には、上り入力部12Aが追加されている。
【0083】
本実施の形態において、帯域割当処理部15は、第1の実施の形態で説明した機能に加え、予め帯域割当処理部15が割り当てた上りフレームのタイミングに合わせて、予定されている上りフレームのLLIDに対応した下り出力先選択情報を、予め帯域割当処理部15に登録されているPON−IFポート情報から読み出して、下り出力先選択情報を上り入力部12Aに指示する機能を有している。
上り入力部12Aは、帯域割当処理部15から指示された下り出力先選択情報を、上りフレームのプリアンブルに挿入する処理部である。
【0084】
MACアドレス登録部26(図4参照)は、上り入力部12Aからの上りフレームから、送信元MACアドレス、LLID、および下り出力先選択情報を取得し、当該LLIDおよび当該下り出力先選択情報を当該送信元MACアドレスと対応付けて、MACアドレス検索テーブル27に登録する機能を有している。
本実施の形態にかかるこの他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0085】
[第2の実施の形態の動作]
帯域割当処理部15は、予め割り当てた上りフレームの受信タイミングに合わせて、予定されている上りフレームのLLIDに対応した下り出力先選択情報をPON−IFポート情報から読み出し、この下り出力先選択情報を上り入力部12Aに指示する。下り出力先選択情報は、例えば、通信開始時にONUから通知された制御フレームにより、ONUの下り出力先選択情報を取得しておく。
【0086】
この際、上りフレームのLLIDが1G−ONU(上り速度が1G、下り速度が1G)に割り当てられている場合には、下り出力先選択情報として「0系」を指示し、上りフレームのLLIDが10G−ONU(上り速度が10G、下り速度が10G)に割り当てられている場合には、下り出力先選択情報として「1系」を指示する。なお、上りフレームのLLIDが非対称ONU(上り速度が1Gで下り速度が10G)に割り当てられている場合には、下り出力先選択情報として「1系」を指示する。
【0087】
上り入力部12Aは、帯域割当処理部15から指示された下り出力先選択情報を、上りフレームのプリアンブルに挿入する。図10は、上り入力部12Aから出力される上りフレームの構成例である。前述の図2に示したPON区間で伝送されるフレームとの違いは、プリアンブルに下り出力先選択情報が挿入されている点である。
上り入力部12Aは、例えば、帯域割当処理部15からの指示が「0系」であれば、上りフレームのプリアンブルの下り出力先選択情報に「0」を挿入し、帯域割当処理部15からの指示が「1系」であれば、上りフレームのプリアンブルの下り出力先選択情報に「1」を挿入する。
【0088】
本実施の形態にかかるOLT構成では、フレーム転送処理部20内のMACアドレス検索テーブル27の値を、上りフレーム受信時に自動的に設定することが可能となる。以下に、フレーム転送処理部20が、受信した上りフレームの送信元MACアドレスと出力先選択情報を、自動的に登録する方法を説明する。図11は、MACアドレス登録処理を示すフローチャートである。
MACアドレス登録部26は、受信した上りフレームがPON制御フレームでない場合、上りフレームの送信元MACアドレスに基づいて、図11のMACアドレス登録処理を行う。
【0089】
MACアドレス登録部26は、まず、上りフレームの送信元MACアドレスに基づいてMACアドレス検索テーブル27を検索し(ステップ200)、送信元MACアドレスが既にMACアドレス検索テーブル27に登録されている場合(ステップ200:YES)、当該MACアドレスと対応する下り出力先選択情報およびLLIDを更新し(ステップ201)、一連の処理を終了する。なお、ステップ201を実行せず、更新しないようにしてもよい。
【0090】
MACアドレス検索テーブル27に登録する下り出力先選択情報は、図10に示すように、上り入力部12Aで上りフレームのプリアンブルに挿入された下り出力先選択情報が、MACアドレス登録部26で取得されたものである。また、LLIDは、予め上りフレームのプリアンブルに挿入されているLLIDが、MACアドレス登録部26で取得されたものである。
【0091】
一方、MACアドレスがMACアドレス検索テーブル27に登録されていない場合(ステップ200:NO)、MACアドレス登録部26は、MACアドレス検索テーブル27に空きがあるか確認する(ステップ202)。「空きがある」とは、エントリ有効/無効として「無効」状態が設定されているエントリがあることを表す。
ここで、空きがある場合(ステップ202:YES)、当該MACアドレスに対応付けて、下り出力先選択情報およびLLIDを空きエントリに新規に登録し(ステップ203)、一連の処理を終了する。また、空きがない場合(ステップ202:NO)、一連の処理を終了する。
【0092】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、上り入力部12Aで、受信した上りフレームの送信元ONUに関する下り出力先選択情報を当該上りフレームに付与し、MACアドレス登録部26で、上り入力部12Aからの上りフレームから送信元MACアドレスおよびLLIDと下り出力先選択情報とを取得し、これらLLIDおよび下り出力先選択情報を当該送信元MACアドレスと対応付けて、MACアドレス検索テーブル27に登録するようにしたものである。
【0093】
これにより、非対称ONU(上り速度が1Gで下り速度が10G)の場合を含めて、MACアドレス登録部26は、MACアドレスおよびLLIDと下り出力選択情報を自動的にMACアドレス検索テーブル27に登録することができる。
また、上りフレームを利用して、MACアドレス登録部26へ下り出力先選択情報を通知するようにしたので、これと同時にMACアドレス検索テーブル27に登録する送信元MACアドレスやLLIDと同様にして、同一タイミングでMACアドレス登録部26が下り出力先選択情報を取得することが可能となる。これにより、下り出力先選択情報を送信元MACアドレスやLLIDと同期させて取得するための回路や制御の追加を必要とせず、極めて簡素な構成で下り出力先選択情報を通知することができる。
【0094】
なお、本実施形態の構成は、実施例1の構成と比較すると、上りの処理で下り出力先選択情報を挿入する上り入力部12Aの追加が必要となる。この際、上り帯域割当を行う帯域割当処理部15から下り出力先選択情報(Gateフレームと呼ばれる制御フレームの送信速度に対応)をもらうことにより、上りフレームのプリアンブルに下り出力先選択情報を容易に挿入することができる。
【0095】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態にかかるOLT10について説明する。
本実施の形態において、OLT10のMACアドレス登録部26は、一定周期毎に登録済みMACアドレスの受信履歴を確認して、一定期間内に受信履歴がない登録済みMACアドレスをMACアドレス検索テーブル27で無効状態とする(エージング処理)手段を追加している。エージング処理の周期を「エージング周期」とし、エージング周期をカウントするためのタイマを「エージングタイマ」とする。
【0096】
図12は、MACアドレス検索テーブルの他の構成例である。前述した図5と比較して、「エージング後受信状況」の項目が追加されている。「エージング後受信状況」とは、前回のエージング処理から現在までに該当のMACアドレスのフレームを受信したかどうかを表す情報である。
【0097】
図13は、MACアドレス登録手順を示す他のフローチャートである。このMACアドレス登録手順は、前述した図11のMACアドレス登録手順の最後に、当該MACアドレスに対応するエージング後受信状況を「受信あり」に設定する(ステップ304)ようにしたものである。これにより、MACアドレスが新規登録または登録更新される度に、エージング後受信状況は「受信あり」となる。
【0098】
図14は、エージング処理手順を示すフローチャートである。MACアドレス登録部26は、一定周期毎に図14のエージング処理手順を実行する。
まず、MACアドレス登録部26は、MACアドレス検索テーブル27から今回未処理のエントリを1つ選択し(ステップ310)、この選択エントリのエントリが「有効」状態に設定されているかどうか確認する(ステップ311)。ここで、選択エントリが「有効」状態である場合(ステップ311:YES)、選択エントリのエージング後受信状況が「受信有り」に設定されているかどうか確認する(ステップ312)。
【0099】
ここで、「受信有り」に設定されている場合(ステップ312:YES)、選択エントリのエージング後受信状況を「受信なし」に設定し(ステップ313)、すべてのエントリの処理が終了したか確認し(ステップ315)、未処理のエントリがある場合には(ステップ315:NO)、ステップ310へ戻る。また、すべてのエントリの処理が終了した場合(ステップ315:YES)、一連の処理を終了する。
【0100】
一方、選択エントリのエージング後受信状況が「受信なし」に設定されている場合(ステップ312:NO)、選択エントリのエントリを、未使用である旨を示す「無効」状態に設定し(ステップ314)、ステップ315へ移行する。
また、ステップ311において、選択エントリのエントリが「無効」状態である場合も(ステップ311:NO)、ステップ315へ移行する。
【0101】
図15は、MACアドレス検索テーブルにおける、あるエントリに格納される情報の変遷を示すタイムチャートである。
時刻T1から時刻T2までのエージング周期T内における時刻T11において、OLT10が未登録の送信元MACアドレスを持つ上りフレームを受信した場合、この送信元MACアドレスが空いているエントリに新規登録され、当該エントリが「有効」状態および「受信あり」に設定され、時刻T2における次のエージング処理で「受信なし」に設定される。
【0102】
続いて、時刻T2から時刻T3までのエージング周期T内における時刻T12において再度この送信元MACアドレスを持つ上りフレームを受信すると、当該エントリに同じMACアドレスが登録更新されて「有効」状態および「受信あり」となり、時刻T3における次のエージング処理で「受信なし」に設定される。
【0103】
このようにして、「有効」状態および「受信なし」に設定された後、時刻T3から時刻T4までのエージング周期T内に、この送信元MACアドレスを持つフレームを受信しなかった場合、時刻T4における次のエージング処理で、当該エントリは「無効」状態に設定される。
【0104】
したがって、当該エントリは、時刻T2,T3におけるエージング処理で「受信なし」と設定されても「有効」状態のままなので、MACアドレス検索テーブル27には、時刻T4まで、この送信元MACアドレスが継続して登録されているが、時刻T4では「無効」状態に設定される。エントリが「無効」状態に設定されるということは、すなわち、このMACアドレスがMACアドレス検索テーブル27から削除されて、このエントリが空いているということである(エントリ無効になった時点でテーブルから削除されたとみなす)。
エントリが無効状態に設定されている記憶領域には、他のMACアドレスを新規登録することができる。
【0105】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、MACアドレス登録部26において、受信した上りフレームごとに、当該上りフレームの送信元MACアドレスに関する受信状況をMACアドレス検索テーブル27に登録し、MACアドレス検索テーブル27に登録されている各MACアドレスの当該受信状況を検査し、これらMACアドレスのうち一定期間内に受信確認されていないMACアドレスを無効状態に設定するようにしたものである。
【0106】
これにより、ある送信元MACアドレスを持つフレームを最後に受信してから2回のエージング処理を行うまでに、同じ送信元MACアドレスを持つフレームを受信しないと、その後、当該送信元MACアドレスは無効状態に設定される。したがって、登録情報が無効状態である記憶領域には他のMACアドレスを新規登録することができるので、限られたサイズ(エントリ)のMACアドレス検索テーブル27を有効に使うことができる。
【0107】
例えば、48bitのMACアドレスがとりうる全ての値に対してエントリを用意しようとすると、248個のエントリが必要となり、MACアドレス検索テーブル27が非常に大きくなり、回路規模も大きくなってしまう。そこで、小規模のMACアドレス検索テーブル27を用意しておいて、使われなくなったMACアドレスをMACアドレス検索テーブル27から削除し、新規登録の際は空きエントリに格納することで、回路規模の増大を抑制することができる。このように、空きエントリを探して新規登録MACアドレスを格納する方法では、MACアドレスは不規則に並んで登録される。
【0108】
[第4の実施の形態]
次に、図16および図17を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかるOLT10について説明する。図16は、第4の実施の形態にかかるフレーム転送処理部の構成を示すブロック図である。図17は、VIDテーブルの構成例である。
第1の実施の形態と比較して、本実施の形態にかかるフレーム転送処理部20には、VIDテーブル35が追加されている。
【0109】
本実施の形態において、フレーム転送処理部20は、MACアドレス検索テーブル27またはVIDテーブル35の登録内容に基づいて、受信した下りフレームをどの送信回路17A,17Bから送信するのか、すなわち速度の異なるどの下り系統へ出力するのかを決定する。以下に、フレーム転送処理部20が、下りフレームの出力先を決定する動作について説明する。
【0110】
下り出力先判定部34A,34Bは、受信した下りフレームの宛先MACアドレスまたはVIDに基づいてフレーム転送処理を行う。この際、MACアドレス検索テーブル27には、前述の図5に示したように、MACアドレスごとに、下り出力先選択情報とLLIDとが登録されている。また、VIDテーブル35には、図17に示すように、VIDごとに、LLIDと下り出力先選択情報とが予め登録されている。VID(VLAN Identifier)は、当該下りフレームが属するVLANを指定する値である。
【0111】
下り出力先判定部34A,34Bでは、以下の方法Aまたは方法Bで、LLIDと下り出力先選択情報を読み出してLLIDと出力先を決定する。
方法A:受信した下りフレームの宛先MACアドレスに基づいてMACアドレス検索テーブル27からLLIDと下り出力先選択情報を読み出す。
方法B:受信した下りフレームのVIDに基づいてVIDテーブル35からLLIDと下り出力先選択情報を読み出す。
【0112】
決定されたLLIDの情報は、下りフレームの宛先LLIDとしてLLID付与部32A,32Bへ与えられる。また、決定された出力先の情報は、下り出力先情報として下り出力先制御部33A,33Bへ与えられる。
【0113】
図18は、下りフレームの出力先決定手順を示すフローチャートである。
まず、下り出力先判定部34A,34Bは、予め設定されている処理方法選択情報に基づいて、方法AによりMACアドレス検索テーブル27を用いるか否か確認する(ステップ400)。
【0114】
ここで、方法Aが指定されている場合(ステップ400:YES)、下り出力先判定部34A,34Bは、MACアドレス検索テーブル27のうち、受信した下りフレームの宛先MACアドレスのエントリ有効/無効に基づいて、当該宛先MACアドレスがMACアドレス検索テーブル27に登録されているか確認する(ステップ401)。
【0115】
ここで、エントリ有効/無効として「有効」状態が設定されており、当該宛先MACアドレスが登録されている場合(ステップ401:YES)、下り出力先判定部34A,34Bは、MACアドレス検索テーブル27から検索したLLIDを、当該下りフレームの宛先LLIDとして決定するとともに(ステップ402)、検索した下り出力先選択情報により当該下りフレームの出力系統を決定し(ステップ403)、一連の処理を終了する。
【0116】
一方、エントリ有効/無効として「有効」状態が設定されているどのエントリにおいても、MACアドレス欄が当該宛先MACアドレスに一致しない場合(ステップ401:NO)、下り出力先判定部34A,34Bは、当該下りフレームの破棄を決定し(ステップ421)、一連の処理を終了する。
【0117】
また、ステップ400において、VIDテーブル35を用いる方法Bが指定されている場合(ステップ400:NO)、下り出力先判定部34A,34Bは、受信した下りフレームにVLANタグが含まれているかどうか確認する(ステップ410)。
ここで、VLANタグが含まれている場合(ステップ410:YES)、下り出力先判定部34A,34Bは、VIDテーブル35のうち、受信した下りフレームのVIDのエントリ有効/無効に基づいて、当該VIDがVIDテーブル35に登録されているかどうか確認する(ステップ411)。
【0118】
ここで、エントリ有効/無効として「有効」状態が設定されている場合、すなわち、当該VIDが登録されている場合(ステップ411:YES)、下り出力先判定部34A,34Bは、VIDテーブル35から当該VIDに対応するLLIDを取得し、下りフレームの宛先LLIDとして特定するとともに(ステップ412)、VIDテーブル35から当該VIDに対応する下り出力先選択情報を取得して、当該下りフレームの出力系統を特定し(ステップ413)、一連の処理を終了する。
【0119】
一方、エントリ有効/無効として「無効」状態が設定されている場合、すなわち、受信した下りフレームのVIDがVIDテーブル35に登録されていない場合(ステップ411:NO)、下り出力先判定部34A,34Bは、当該下りフレームの破棄を決定し(ステップ421)、一連の処理を終了する。
また、ステップ410において、VLANタグが含まれていない場合(ステップ410:NO)、タグ無しフレームが許可されているか確認し(ステップ420)、許可の場合には(ステップ420:YES)、ステップ401へ移行し、未許可の場合には(ステップ420:NO)、ステップ421へ移行する。
【0120】
下り出力先判定部34A,34Bの下り出力先判定処理、および、VIDテーブル35以外は、第1の実施の形態の動作と同じである。
【0121】
VIDテーブル35の値は、制御フレーム処理部14でのONU登録時に、外部のハードウェアまたはソフトウェア(図16に図示せず)により、使用するVIDを決めて設定する。
【0122】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0123】
100…PONシステム、10…OLT、11…PONポート、12…受信回路、12A…上り入力部、13…フレーム分離部、14…制御フレーム処理部、15…帯域割当処理部、16A…フレーム多重部(0系)、16B…フレーム多重部(1系)、17A…送信回路(0系)、17B…送信回路(1系)、18A…送受信回路(0系)、18B…送受信回路(1系)、19A…SNIポート(0系)、19B…SNIポート(1系)、20…フレーム転送処理部、21…上りレイテンシ吸収部、22…出力先SNI判定部、23…LLIDテーブル、24…上り出力先制御部、25A…上り出力タイミング調整部(0系)、25B…上り出力タイミング調整部(1系)、26…MACアドレス登録部、27…MACアドレス検索テーブル、31A…下りレイテンシ吸収部(0系)、31B…下りレイテンシ吸収部(1系)、32A…LLID付与部(0系)、32B…LLID付与部(1系)、33A…下り出力先制御部(0系)、33B…下り出力先制御部(1系)、34A…下り出力先判定部(0系)、34B…下り出力先判定部(1系)、35…VIDテーブル、36A…下り出力タイミング調整部(0系)、36B…下り出力タイミング調整部(1系)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PONを介して複数のONUと接続するとともに、複数の上位装置に当該上位装置ごとに設けられるSNI(Service Node Interface)を介して接続し、これらONUと上位装置との間でやり取りするフレームを相互に転送処理するOLTであって、
前記PONを介して前記ONUからの上りフレームを受信する受信回路と、
予め設定された伝送速度ごとに設けられて、前記ONUへの下りフレームを、前記PONを介して当該伝送速度で送信する複数の送信回路と、
前記SNIごとに設けられて、当該SNIを介して当該上位装置へ前記上りフレームを送信するとともに、当該SNIを介して当該上位装置からの前記下りフレームを受信する複数の送受信回路と、
前記受信回路で受信した前記上りフレームを前記送受信回路へ転送し、前記送信受信回路で受信した前記下りフレームを前記送信回路へ転送するフレーム転送処理部と
を備え、
前記フレーム転送処理部は、
前記ONUに個別のLLID(Logical Link ID)ごとに、当該LLIDと対応するSNI選択情報が登録されているLLIDテーブルと、
前記ONUと接続されたユーザ装置に個別のMACアドレスごとに、当該ONUのLLIDおよび下り出力先選択情報が登録されているMACアドレス検索テーブルと
を含み、
前記受信回路で受信した前記上りフレームのLLIDと対応するSNI選択情報を前記LLIDテーブルから取得して、前記送受信回路のうち当該SNI選択情報と対応する送受信回路へ当該上りフレームを転送し、
前記送受信回路で受信した前記下りフレームの宛先MACアドレスと対応するLLIDおよび下り出力先選択情報を前記MACアドレス検索テーブルから取得して、当該LLIDを当該下りフレームに付与した後、前記送信回路のうち当該下り出力先選択情報と対応する送信回路へ転送する
ことを特徴とするOLT。
【請求項2】
請求項1に記載のOLTにおいて、
前記フレーム転送処理部は、
前記受信回路で受信した前記上りフレームのLLIDと対応するSNI選択情報を前記LLIDテーブルから取得する出力先判定部と、
前記送受信回路のうち、前記出力先判定部で取得した前記SNI選択情報と対応する送受信回路へ、前記上りフレームを転送する上り出力先制御部と
をさらに含むことを特徴とするOLT。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のOLTにおいて、
前記フレーム転送処理部は、
前記送受信回路ごとに設けられて、当該送受信回路で受信した前記下りフレームの宛先MACアドレスに対応するLLIDおよび下り出力先選択情報を、前記MACアドレス検索テーブルから取得する複数の下り出力先判定部と、
前記送受信回路ごとに設けられて、当該下り出力先判定部で取得した前記LLIDを、当該送受信回路で受信した前記下りフレームに付与する複数のLLID付与部と、
前記送受信回路ごとに設けられて、前記送信回路のうち、当該下り出力先判定部で取得した前記下り出力先選択情報と対応する送信回路へ、当該LLID付与部からの前記下りフレームを転送する複数の下り出力先制御部と
をさらに含むことを特徴とするOLT。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のOLTにおいて、
前記フレーム転送処理部は、前記受信回路で受信した前記上りフレームから送信元MACアドレスおよびLLIDを取得し、当該LLIDとこのLLIDに予め対応付けられている下り出力先選択情報とを、当該送信元MACアドレスと対応付けて、前記MACアドレス検索テーブルに登録するMACアドレス登録部をさらに含むことを特徴とするOLT。
【請求項5】
請求項4に記載のOLTにおいて、
前記受信回路で受信した前記上りフレームに対して、当該上りフレームのLLIDに予め対応付けられている下り出力先選択情報を当該上りフレームに付与する上り入力部をさらに備え、
前記MACアドレス登録部は、前記上り入力部から出力された前記上りフレームから、前記送信元MACアドレス、前記LLID、および前記下り出力先選択情報とを取得して、前記MACアドレス検索テーブルに登録する
ことを特徴とするOLT。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のOLTにおいて、
前記MACアドレス登録部は、
前記LLIDおよび前記下り出力先選択情報を登録する際、当該送信元MACアドレスに関する受信状況を含めて前記MACアドレス検索テーブルに登録し、
一定のエージング周期ごとに、前記MACアドレス検索テーブルに登録されている前記各MACアドレスの当該受信状況を検査し、これらMACアドレスのうち当該エージング周期内に受信確認されていないMACアドレスを無効状態に設定する
ことを特徴とするOLT。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載のOLTにおいて、
前記フレーム転送処理部は、
前記下りフレームが属するVLANを識別するためのVID(VLAN Identifier)ごとに、当該下りフレームに関するLLIDおよび下り出力先選択情報が登録されているVIDテーブルをさらに含み、
前記送受信回路で受信した前記下りフレームに関する前記LLIDおよび前記下り出力先選択情報を、当該下りフレームの宛先MACアドレスに基づき前記MACアドレス検索テーブルから取得し、あるいは当該下りフレームのVIDに基づき前記VIDテーブルから取得する
ことを特徴とするOLT。
【請求項8】
PONを介して複数のONUを接続するとともに、複数の上位装置に当該上位装置ごとに設けられるSNI(Service Node Interface)を介して接続し、これらONUと上位装置との間でやり取りするフレームを相互に転送処理するOLTで用いられるフレーム転送方法であって、
前記ONUに個別のLLID(Logical Link ID)ごとに、当該LLIDと対応するSNI選択情報をLLIDテーブルで記憶するステップと、
前記ONUと接続されたユーザ装置に個別のMACアドレスごとに、当該ONUのLLIDおよび下り出力先選択情報をMACアドレス検索テーブルで記憶するステップと、
前記PONを介して前記ONUから受信した上りフレームのLLIDと対応するSNI選択情報を前記LLIDテーブルから取得し、前記SNIごとに設けられて当該SNIを介して当該上位装置との間でフレームを送受信する送受信回路のうち、当該SNI選択情報と対応する送受信回路へ当該上りフレームを転送するステップと、
前記送受信回路で受信した下りフレームの宛先MACアドレスと対応するLLIDおよび下り出力先選択情報を前記MACアドレス検索テーブルから取得し、当該LLIDを当該下りフレームに付与した後、予め設定された伝送速度ごとに設けられて前記ONUへの下りフレームを前記PONを介して当該伝送速度で送信する複数の送信回路のうち、当該下り出力先選択情報と対応する送信回路へ転送するステップと
を備えることを特徴とするフレーム転送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−9271(P2013−9271A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142186(P2011−142186)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】