説明

OSNR算出方法および装置

【課題】光伝送速度が高速であっても、誤差の少ないOSNRを算出できるようにする。
【解決手段】自己相関関数取得部11で、入力された信号光Lから、信号光に関する時間波形の自己相関関数を取得し、OSNR算出部12で、その自己相関関数のピーク値を信号強度Sと雑音強度Nの強度和S+Nとするとともに、その自己相関関数のうち信号に関する強度値に基づいて信号強度Sを推定し、強度和S+Nから信号強度Sを減算することにより雑音強度Nを求め、信号強度Sおよび雑音強度Nから信号光LのOSNRを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送技術に関し、特に信号光に含まれる信号と雑音との強度比を示すOSNR(Optical Signal-to-Noise Ratio:光信号対雑音比)を算出するOSNR算出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量伝送を経済的に実現するために、ノードでの光電気変換を介さないトランスペアレントなWDM(Wavelength Division Multiplex)光ネットワークが導入されつつある。トランスペアレント光ネットワークでは、コネクションの確立や故障区間同定を実現する上で、光信号品質をモニタリングし、ネットワークの状態を知ることが重要となる。光信号品質の中でも、OSNR(Optical Signal-to-Noise Ratio)は重要なパラメータである。
【0003】
図17は、従来のOSNR算出方法を示す説明図である。従来、OSNRは、図17に示すように、OSA(Optical Spectrum Analyzer)で取得したスペクトラムにおいて、透過帯域端の雑音レベルから周波数グリッド上の雑音レベルを推定するASE(Amplified spontaneous emission)補間法によって算出されていた(例えば、非特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】IEC 61280−2−9 Edition 2.0
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光伝送速度が高速化すると、信号スペクトラムの広がりによって隣接チャネルの信号スペクトラムとの重なりが発生し、さらには、伝送路に配置されたWSS(Wavelength Selective Switch)等の光フィルタ効果によって透過帯域端の雑音が遮断される。そのため、従来のASE補完法では正確にOSNRを算出することが困難となるという問題点があった。
【0006】
図18は、隣接チャネルの信号スペクトラムとの重なりを示す説明図である。ここでは、前述した図17と比較して、光信号の信号スペクトラムが全体的に拡がっており、隣接チャネルの信号スペクトラムと、信号スペクトラムの裾野部分で重なりが発生している。このため、信号スペクトラム間の最も強度が低い周波数で計測していた雑音強度に誤差が生じることになる。
【0007】
図19は、透過帯域端における雑音の遮断を示す説明図である。ここでは、前述した図17と比較して、伝送路に配置されたWSS等の光フィルタ効果によって、信号スペクトラム間における強度が、本来の雑音強度よりも低いレベルまで低減されている。このため、信号スペクトラム間の最も強度が低い周波数で計測していた雑音強度に誤差が生じることになる。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、光伝送速度が高速であっても、誤差の少ないOSNRを算出できるOSNR算出技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明にかかるOSNR算出方法は、入力された信号光から、信号光に関する時間波形の自己相関関数を取得する自己相関関数取得ステップと、自己相関関数のピーク値を信号強度と雑音強度の強度和とするとともに、自己相関関数のうち信号に関する強度値に基づいて信号強度を推定し、強度和から信号強度を減算することにより雑音強度を求め、信号強度および雑音強度から信号光のOSNRを算出するOSNR算出ステップとを備えている。
【0010】
この際、OSNR算出ステップで、自己相関関数のうちピーク値とは異なる設定時間位置の相関値を、OSNRが既知である基準光の自己相関関数から予め求めておいた、設定時間位置における自己相関値と基準光の信号強度との比を示す定数で除算することにより、信号強度を算出するようにしてもよい。
【0011】
また、OSNR算出ステップで、自己相関関数のうちから抽出した、ピーク値とは異なり、かつピーク値を間に挟まない複数の自己相関値から、自己相関関数の近似線を特定し、近似線のうちピーク値の時間位置における値を信号強度とするようにしてもよい。
【0012】
また、自己相関関数取得ステップに、信号光の周波数スペクトラムを測定する周波数スペクトラム測定ステップと、周波数スペクトラムのうちから、いずれか1つの通過帯域の一部またはすべてを有限区間として切り出して、有限区間の外側に仮の強度値を追加した修正スペクトラムを、逆フーリエ変換することにより、自己相関関数を算出する自己相関関数算出ステップとを設けてもよい。
【0013】
また、自己相関関数取得ステップに、信号光の周波数スペクトラムを測定する周波数スペクトラム測定ステップと、周波数スペクトラムに対して、いずれか1つの通過帯域を有限区間とする窓関数を掛けた後、逆フーリエ変換して得られたデータに窓関数の逆畳み込み演算を行うことにより、自己相関関数を算出する自己相関関数算出ステップとを設けてもよい。
【0014】
また、自己相関関数取得ステップに、信号光の周波数スペクトラムを測定する周波数スペクトラム測定ステップと、周波数スペクトラムに対して、探査範囲から選択した傾きごとに、当該傾きを持つ一次関数を乗算または除算して周波数スペクトラムの傾きを補正した後、逆フーリエ変換することにより、傾きごとに自己相関関数を算出する自己相関関数算出ステップとを設け、OSNR算出ステップで、傾きごとの自己相関関数について、OSNRをそれぞれ算出し、これらOSNRのうち極値を示すOSNRを信号光のOSNRとするようにしてもよい。
【0015】
また、本発明にかかるOSNR算出装置は、入力された信号光から、信号光に関する時間波形の自己相関関数を取得する自己相関関数取得部と、自己相関関数のピーク値を信号強度と雑音強度の強度和とするとともに、自己相関関数のうち信号に関する強度値に基づいて信号強度を推定し、強度和から信号強度を減算することにより雑音強度を求め、信号強度および雑音強度から信号光のOSNRを算出するOSNR算出部とを備えている。
【0016】
この際、OSNR算出部で、自己相関関数のうちピーク値とは異なる設定時間位置の相関値を、OSNRが既知である基準光の自己相関関数から予め求めておいた、設定時間位置における自己相関値と基準光の信号強度との比を示す定数で除算することにより、信号強度を算出するようにしてもよい。
【0017】
また、OSNR算出部で、自己相関関数のうちから抽出した、ピーク値とは異なり、かつピーク値を間に挟まない複数の自己相関値から、自己相関関数の近似線を特定し、近似線のうちピーク値の時間位置における値を信号強度とするようにしてもよい。
【0018】
また、自己相関関数取得部に、信号光の周波数スペクトラムを測定する周波数スペクトラム測定部と、周波数スペクトラムのうちから、いずれか1つの通過帯域の一部またはすべてを有限区間として切り出して、有限区間の外側に仮の強度値を追加した修正スペクトラムを、逆フーリエ変換することにより、自己相関関数を算出する自己相関関数算出部とを設けてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光伝送速度が高速化されて、信号スペクトラムの広がりによって隣接チャネルの信号スペクトラムとの重なりが発生し、さらには、伝送路に配置されたWSS(Wavelength Selective Switch)等の光フィルタ効果によって透過帯域端の雑音が遮断されている場合であっても、誤差の少ないOSNRを算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施の形態にかかるOSNR算出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】信号時間波形の自己相関関数例である。
【図3】雑音時間波形の自己相関関数例である。
【図4】信号と雑音を含む信号光から得られた時間波形の自己相関関数例である。
【図5】第1の実施の形態にかかるOSNR算出処理を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態にかかる信号強度の推定例を示す説明図である。
【図7】第3の実施の形態にかかる信号強度の推定例を示す説明図である。
【図8】第4の実施の形態にかかるOSNR算出装置の構成を示すブロック図である。
【図9】自己相関値の間隔と底辺幅との関係を示す説明図である。
【図10】修正スペクトラムの説明図である。
【図11】周波数スペクトラムの傾きによるOSNRの変化を示す説明図である。
【図12】一次関数を用いた逆フーリエ変換の例を示す説明図である。
【図13】周波数スペクトラムが傾きを持つ場合における時間波形の自己相関関数を示す説明図である。
【図14】第7の実施の形態にかかるOSNR算出処理を示すフローチャートである。
【図15】第8の実施の形態にかかるOSNR算出装置10の構成を示すブロック図である。
【図16】自己相関関数測定部の構成を示すブロック図である。
【図17】従来のOSNR算出方法を示す説明図である。
【図18】隣接チャネルの信号スペクトラムとの重なりを示す説明図である。
【図19】透過帯域端における雑音の遮断を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるOSNR算出装置について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかるOSNR算出装置の構成を示すブロック図である。
【0022】
OSNR算出装置10は、入力された信号光Lに含まれる信号と雑音との強度比を示すOSNR(Optical Signal-to-Noise Ratio:光信号対雑音比)を算出する装置である。このOSNR算出装置10には、主な機能部として、自己相関関数取得部11とOSNR算出部12とが設けられている。
【0023】
自己相関関数取得部11は、入力された信号光Lから、時間波形の自己相関関数を取得する機能を有している。
OSNR算出部12は、自己相関関数取得部11で取得された時間波形の自己相関関数から信号強度および雑音強度を推定し、これら信号強度および雑音強度から信号光LのOSNRを算出する機能を有している。
【0024】
[発明の原理]
図2〜図4を参照して、本発明の原理について説明する。図2は、信号時間波形の自己相関関数例である。図3は、雑音時間波形の自己相関関数例である。図4は、信号と雑音を含む信号光から得られた時間波形の自己相関関数例である。
【0025】
本発明では信号と雑音の時間波形における自己相関関数が異なることを利用してOSNRを算出する。図2には、信号光に含まれるQPSK変調された信号に関する理想的な時間波形の自己相関関数が例として示されている。この自己相関関数は、全体として三角波形状をなしており、時間T0においてピーク値(最大値)を持ち、その強度が信号強度Sに相当する。
【0026】
一方、図3には、信号光に含まれる雑音に関する時間波形の自己相関関数が例として示されている。図3の自己相関関数は、デルタ関数である。この自己相関関数は、時間T0においてピーク値(最大値)を持ち、その強度が雑音強度Nに相当する。
【0027】
伝送路を介して受信した信号光には、このような信号と雑音が含まれているため、その時間波形の自己相関関数は、図4のように、信号と雑音に関する時間波形の自己相関関数が合成された波形となる。
ここで、図4の自己相関関数のピーク値は、信号と雑音に関する自己相関関数のピーク値の和、すなわち信号強度Sと雑音強度Nの強度和S+Nに相当している。したがって、信号に関する自己相関関数のうち信号強度Sに相当する時間T0には、雑音に関する自己相関関数のうち雑音強度Nが合成されるため、信号強度Sあるいは雑音強度Nだけを取得することはできない。
【0028】
本発明は、このように変調された信号と雑音は、時間波形の自己相関関数の波形が大きく異なり、分離可能であることに着目し、信号光から取得した時間波形の自己相関関数のうち、信号に関する時間波形の自己相関関数部分、すなわちピーク値以外の強度値(自己相関値)に基づいて信号強度Sを推定するようにしたものである。
【0029】
そして、強度和S+Nから信号強度Sを減算することにより雑音強度Nを算出し、これら信号強度Sと雑音強度Nの比を求めることで、入力された信号光のOSNRを算出するようにしたものである。
なお、本発明では、QPSK変調信号を例にとって説明するが、一般的に理想的な信号と雑音の時間波形の自己相関関数は形状が異なるため、他の変調フォーマットでも同様の効果が期待できる。
【0030】
[OSNR算出装置]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかるOSNR算出装置10の構成について詳細に説明する。
このOSNR算出装置10は、全体としてサーバ装置などの演算処理装置からなり、主な機能部として、自己相関関数取得部11およびOSNR算出部12が設けられている。なお、OSNR算出装置10には、この他、データ通信機能、操作入力機能、画面表示機能、データ記憶機能など、一般的なサーバ装置などの演算処理装置に設けられている機能が設けられている。
【0031】
自己相関関数取得部11は、入力された信号光Lから、この信号光Lに関する時間波形の自己相関関数を取得する機能を有している。
OSNR算出部12は、自己相関関数取得部11で得られた自己相関関数のピーク値を信号強度と雑音強度の強度和S+Nとする機能と、自己相関関数取得部11で得られた自己相関関数のうち信号に関する強度値に基づいて信号強度とを推定する機能と、強度和S+Nから信号強度Sを減算することにより雑音強度Nを求める機能と、信号強度Sおよび雑音強度Nから信号光LのOSNRを算出する機能とを有している。
【0032】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図5を参照して、本実施の形態にかかるOSNR算出装置10の動作について説明する。図5は、第1の実施の形態にかかるOSNR算出処理を示すフローチャートである。
OSNR算出装置10は、オペレータからの処理開始指示や信号光Lの入力に応じて、図5のOSNR算出処理を実行する。
【0033】
まず、自己相関関数取得部11は、入力された信号光Lから信号光Lに関する時間波形の自己相関関数を取得する(ステップ100)。
次に、OSNR算出部12は、自己相関関数取得部11で得られた自己相関関数のピーク値を信号強度と雑音強度の強度和S+Nとして算出し(ステップ101)、自己相関関数取得部11で得られた自己相関関数のうち信号に関する強度値に基づいて信号強度とを推定する(ステップ102)。
【0034】
この後、OSNR算出部12は、強度和S+Nから信号強度Sを減算することにより雑音強度Nを算出し(ステップ103)、これら信号強度Sおよび雑音強度Nから、次の式(1)に基づいて、信号光LのOSNRを算出する(ステップ104)。
【数1】

【0035】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、自己相関関数取得部11で、入力された信号光Lから、信号光に関する時間波形の自己相関関数を取得し、OSNR算出部12で、その自己相関関数のピーク値を信号強度Sと雑音強度Nの強度和S+Nとするとともに、その自己相関関数のうち信号に関する強度値に基づいて信号強度Sを推定し、強度和S+Nから信号強度Sを減算することにより雑音強度Nを求め、信号強度Sおよび雑音強度Nから信号光LのOSNRを算出するようにしたものである。
【0036】
これにより、光伝送速度が高速化されて、信号スペクトラムの広がりによって隣接チャネルの信号スペクトラムとの重なりが発生し、さらには、伝送路に配置されたWSS(Wavelength Selective Switch)等の光フィルタ効果によって透過帯域端の雑音が遮断されている場合であっても、誤差の少ないOSNRを算出することができる。
【0037】
[第2の実施の形態]
次に、図6を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるOSNR算出装置10について説明する。図6は、第2の実施の形態にかかる信号強度の推定例を示す説明図である。
【0038】
本実施の形態では、OSNR算出部12の具体的構成について説明する。
本実施の形態において、OSNR算出部12は、自己相関関数取得部11で得られた信号光に関する時間波形の自己相関関数のうち、ピーク値とは異なる設定時間位置の相関値を、OSNRが既知である基準光の自己相関関数から予め求めておいた、設定時間位置における自己相関値と基準光の信号強度との比を示す定数αで除算することにより、信号強度を算出する機能を有している。
【0039】
図6に示すように、信号光Lに含まれる信号に関する時間波形の自己相関関数は、三角波形状をなしており、その頂点が信号強度Sに相当する。実際には、ピーク値の時間位置である時間T0において、信号と雑音に関する2つの自己相関関数が合成されるため、自己相関関数から信号強度Sそのものだけを取得することはできない。
【0040】
ここで、信号に関する自己相関関数が三角波形状をなすことから、その斜辺において時間と自己相関値(強度)とが比例関係にあると見なすことができる。したがって、斜辺を近似する近似線が求まれば、設定した時間位置における自己相関値に基づいて、時間T0におけるピーク値、すなわち信号強度Sを推定できる。
【0041】
一般に、信号に関する時間波形の自己相関関数の形状は、多重化通信方式や伝送路の伝送特性などの光伝送条件に依存する。このため、当該光伝送条件で伝送して得られた、OSNRが既知の基準光について、時間波形の自己相関関数を予め取得しておけば、その斜辺に関する時間と自己相関値との比、すなわち斜辺の傾きを求めることができる。
【0042】
本実施の形態では、図6に示すように、時間T0から単位時間tだけ離れた設定時間位置T1における自己相関値が、頂点に相当する信号強度Sのα倍(0<α<1)であると、斜辺の傾きがより具体的に定義されている。この定数αは、基準光から得た自己相関関数の斜辺に関する傾きの逆数に相当する。
【0043】
したがって、図5のステップ102において、OSNR算出部12では、入力された信号光Lに関する時間波形の自己相関関数のうちから、ピーク値とは異なる自己相関値であって、ピーク値の時間T0から単位時間Tだけ離れた設定時間位置T1における自己相関値C1=αSを取得し、この自己相関値C1を予め基準光から求めておいた定数αで除算することにより、信号強度Sを求めることができる。これにより、時間T0における自己相関値をC0(=S+N)とした場合、信号光LのOSNRは、次の(2)式により算出される。
【数2】

【0044】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、OSNR算出部12において、自己相関関数取得部11で得られた信号光に関する時間波形の自己相関関数のうち、ピーク値とは異なる設定時間位置T1の相関値C1を、OSNRが既知である基準光の自己相関関数から予め求めておいた定数αで除算することにより、信号強度Sを算出するようにしたものである。
これにより、OSNRの算出する演算が非常に簡潔になり、例えば本演算を計測器などのハードウェアに実装する場合、メモリなどのハードウェアリソースを節約することができる。また演算時間の短縮化が可能になり高速にOSNRを算出することができるといった効果が得られる。
【0045】
また、本実施の形態では、信号に関する自己相関関数が三角波形状をなすものと仮定した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、三角波形状とは異なり、伝送路特性などに起因して信号の時間波形の自己相関関数が歪んでいる場合も、OSNRが分かっている伝送路特性を含んだ時間波形の自己相関関数から、定数αを求めておくことで、OSNRを算出することが可能となる。
【0046】
[第3の実施の形態]
次に、図7を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかるOSNR算出装置10について説明する。図7は、第3の実施の形態にかかる信号強度の推定例を示す説明図である。
【0047】
第2の実施の形態では、OSNRが既知の基準光から求めた定数αを用いて、信号強度Sを推定する場合を例として説明した。本実施の形態では、自己相関関数取得部11で得られた信号光に関する時間波形の自己相関関数のうちから抽出した複数の自己相関値から、自己相関関数の近似線を生成し、この近似線から信号強度を推定する場合について説明する。
【0048】
本実施の形態において、OSNR算出部12は、自己相関関数取得部11で得られた信号光に関する時間波形の自己相関関数のうちから、ピーク値とは異なり、かつそのピーク値を間に挟まない複数の自己相関値を抽出する機能と、抽出したこれら自己相関値から、自己相関関数の近似線FRを特定する機能と、得られた近似線FRのうちピーク値の時間位置T0における値を信号強度Sとして推定する機能とを有している。
【0049】
図7に示すように、信号光Lに含まれる信号に関する時間波形の自己相関関数は、三角波形状をなしており、その頂点が信号強度Sに相当する。実際には、ピーク値の時間位置である時間T0において、信号と雑音に関する2つの自己相関関数が合成されるため、自己相関関数から信号強度Sそのものだけを取得することはできない。
【0050】
ここで、信号に関する自己相関関数が三角波形状をなすことから、その斜辺における複数の自己相関値(強度)から斜辺に関する近似線FRを、回帰直線として特定することができる。この際、近似線FRは、時間T0から見て左または右のいずれか一方の斜辺を近似すればよい。このため、近似線FRの特定に用いる自己相関値は、ピーク値を間に挟まないように抽出すればよい。
【0051】
図7では、2つの自己相関値C1,C2が抽出されている。したがって、これら自己相関値C1,C2と、これら自己相関値C1,C2の時間間隔とから、近似線FRの関数式を特定できる。なお、自己相関値の間隔は、信号光Lに関する時間波形の自己相関関数を取得した時点で決定される。例えば、信号光Lの周波数スペクトラムの帯域幅をBとしたとき、周波数スペクトラムを逆フーリエ変換して得られる時間波形の自己相関関数上において、自己相関値の間隔は1/Bとなる。
【0052】
したがって、図5のステップ102において、OSNR算出部12では、入力された信号光Lに関する時間波形の自己相関関数のうちから、ピーク値とは異なり、かつそのピーク値を間に挟まない複数の自己相関値C1,C2を抽出し、これら自己相関値から、内挿、外挿、あるいは最小自乗法などを用いた回帰直線により、自己相関関数の近似線FRを特定し、得られた近似線FRにより、ピーク値の時間T0における値を補間することにより、信号強度Sを求めることができる。これにより、時間T0における自己相関値をC0(=S+N)とした場合、信号光LのOSNRは、次の(3)式により算出される。
【数3】

【0053】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、OSNR算出部12において、自己相関関数取得部11で得られた信号光に関する時間波形の自己相関関数のうちから、ピーク値とは異なり、かつそのピーク値を間に挟まない複数の自己相関値を抽出し、これら自己相関値から、自己相関関数の近似線FRを特定し、この近似線FRのうちピーク値の時間位置T0における値を信号強度Sとして推定するようにしたものである。
これにより、第2の実施の形態のように、基準光を用いて事前に定数αを取得しておく必要がなくなり、OSNR算出に要する前処理負担を回避することができる。
【0054】
[第4の実施の形態]
次に、図8を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかるOSNR算出装置10について説明する。図8は、第4の実施の形態にかかるOSNR算出装置の構成を示すブロック図であり、前述した図1と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0055】
本実施の形態では、自己相関関数取得部11の具体的構成について説明する。
本実施の形態において、自己相関関数取得部11には、主な機能部として、スペクトラム測定部11Aと自己相関関数算出部11Bが設けられている。
【0056】
スペクトラム測定部11Aは、入力された信号光Lの周波数スペクトラムを測定する機能を有している。このスペクトラム測定部11Aは、光学フィルタ、分散型分光器、フーリエ変換型分光器、アダマール変換分光器等で構成することができる。
【0057】
自己相関関数算出部11Bは、スペクトラム測定部11Aで得られた周波数スペクトラムのうちから、いずれか1つの通過帯域の一部またはすべてを有限区間として切り出す機能と、得られた部分スペクトラムの有限区間の外側に仮の強度値を追加した修正スペクトラムを生成する機能と、得られた修正スペクトラムを逆フーリエ変換することにより自己相関関数を算出する機能とを有している。
【0058】
一般に、信号の時間波形の自己相関関数は、その信号の周波数スペクトラムに含まれる通過帯域の一部またはすべてを、例えば窓関数を掛けることにより部分スペクトラムとして切り出して、逆フーリエ変換することにより求めることができる。
このようにして逆フーリエ変換で自己相関関数を求める場合、部分スペクトラムの帯域幅をBとしたとき、逆フーリエ変換して求められる時間波形の自己相関関数における自己相関値の間隔は1/Bとなる。
【0059】
一方、信号はシンボルレートをfsとすると、逆フーリエ変換後の三角波形の低辺の幅は、2/fsとなる。図9は、自己相関値の間隔と底辺幅との関係を示す説明図である。このため、1/B<1/fsとなる十分に広い帯域の部分スペクトラムを用いないと、三角波形を表す点がなくなってしまう。
【0060】
本実施の形態では、図5のステップ101において、スペクトラム測定部11Aにより、信号光Lから周波数スペクトラムを測定し、自己相関関数算出部11Bにより、この周波数スペクトラムのうちから切り出し、得られた部分スペクトラムの有効区間の外側に仮の強度値(0点)Dを追加して修正スペクトラムを生成し、この修正スペクトラムを逆フーリエ変換することにより、自己相関関数を算出している。
【0061】
図10は、修正スペクトラムの説明図である。ここでは、部分スペクトラムの帯域幅Bが有効区間であり、この有効区間の外側に仮の強度値Dが追加されて、帯域幅Bが疑似的にB’まで広げられている。したがって、自己相関値の間隔を1/B’(<1/B)と縮めることが可能となるため、三角波形上により多くの点を設けることができる。
【0062】
[第4の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、自己相関関数取得部11の周波数スペクトラム測定部11Aで、入力された信号光Lの周波数スペクトラムを測定し、自己相関関数算出部11Bで、この周波数スペクトラムのうちから、いずれか1つの通過帯域の一部またはすべてを有限区間とする部分スペクトラムを切り出して、その有限区間の外側に仮の強度値を追加した修正スペクトラムを生成し、この修正スペクトラムを逆フーリエ変換することにより、自己相関関数を算出するようにしたものである。
これにより、疑似的に部分スペクトラムの帯域幅をBからB’に広げることができるため、1/B>1/fsの場合である帯域幅が狭い周波数スペクトラムから、高精度でOSNRを算出することができる。
【0063】
なお、本実施の形態では、部分スペクトラムに対して仮の強度値Dを追加する場合、通過帯域の中心周波数f0を中心として左右対称に仮の強度値Dを追加する例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、左右いずれか一方のみなど、左右非対称に仮の強度値Dを追加しても、同様の効果が得られる。
【0064】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態にかかるOSNR算出装置10について説明する。
第4の実施の形態では、信号光の周波数スペクトラムを逆フーリエ変換して時間波形の自己相関関数を算出する場合を例として説明した。本実施の形態では、周波数スペクトラムを逆フーリエ変換して自己相関関数を算出する場合における、自己相関関数の歪み補償について説明する。
【0065】
本実施の形態において、自己相関関数取得部11には、前述した図8と同様に、主な機能部として、スペクトラム測定部11Aと自己相関関数算出部11Bが設けられている。
スペクトラム測定部11Aは、入力された信号光Lの周波数スペクトラムを測定する機能を有している。
自己相関関数算出部11Bは、スペクトラム測定部11Aで得られた周波数スペクトラムに凸型の窓関数を掛けることにより、その周波数スペクトラムのうちから、いずれか1つの通過帯域の一部またはすべてを有限区間として切り出す機能と、得られた部分スペクトラムを逆フーリエ変換することにより自己相関関数を算出する機能とを有している。
【0066】
信号光の周波数スペクトラムを逆フーリエ変換して時間波形の自己相関関数を算出する場合、自己相関関数算出部11Bにおいて、周波数スペクトラムから窓関数を用いてある帯域幅のデータを部分スペクトラムを切り出すことになる。この際、矩形の窓関数により切り出しを行った場合、その処理の影響で、逆フーリエ変換により得られた自己相関関数に歪みが発生する。
【0067】
本実施の形態では、図5のステップ101において、スペクトラム測定部11Aにより、信号光Lから周波数スペクトラムを測定し、自己相関関数算出部11Bにより、この周波数スペクトラムに凸型の窓関数を掛けることにより、任意の帯域幅を有効区間として切り出し、得られた部分スペクトラムを逆フーリエ変換することにより、自己相関関数を算出している。
この凸型の窓関数としては、いくつか存在するが、ハン、ハミング、ブラックマン等の窓関数を用いることにより、自己相関関数の歪みによるOSNRの誤差低減が確認された。
【0068】
[第5の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、自己相関関数算出部11Bにおいて、スペクトラム測定部11Aで得られた周波数スペクトラムに凸型の窓関数を掛けることにより、その周波数スペクトラムのうちから、いずれか1つの通過帯域の一部またはすべてを有限区間として切り出し、得られた部分スペクトラムを逆フーリエ変換することにより自己相関関数を算出するようにしたものである。
これにより、窓関数による切り出し処理の影響で、逆フーリエ変換により得られた自己相関関数に発生する歪みを抑制でき、OSNRの誤差を低減することが可能となる。
【0069】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態にかかるOSNR算出装置10について説明する。
周波数スペクトラムを逆フーリエ変換して自己相関関数を算出する場合、凸型の窓関数を用いて部分スペクトラムを切り出すことにより、自己相関関数の歪みを補償する場合を例として説明した。本実施の形態では、逆フーリエ変換して得られた自己相関関数に窓関数で逆畳み込み演算を行うことにより、自己相関関数の歪みを補償する場合について説明する。
【0070】
本実施の形態において、自己相関関数取得部11には、前述した図8と同様に、主な機能部として、スペクトラム測定部11Aと自己相関関数算出部11Bが設けられている。
スペクトラム測定部11Aは、入力された信号光Lの周波数スペクトラムを測定する機能を有している。
自己相関関数算出部11Bは、スペクトラム測定部11Aで得られた周波数スペクトラムに窓関数を掛けることにより、その周波数スペクトラムのうちから、いずれか1つの通過帯域の一部またはすべてを有限区間として切り出す機能と、得られた部分スペクトラムを逆フーリエ変換することにより自己相関関数を算出する機能と、得られた自己相関関数に対して窓関数で逆畳み込み演算を行う機能とを有している。
【0071】
前述したように、信号光の周波数スペクトラムを逆フーリエ変換して時間波形の自己相関関数を算出する場合、自己相関関数算出部11Bにおいて、周波数スペクトラムから窓関数を用いてある帯域幅のデータを部分スペクトラムを切り出すことになる。この際、窓関数により切り出しを行った場合、その処理の影響で、逆フーリエ変換により得られた自己相関関数に歪みが発生する。
【0072】
本実施の形態では、図5のステップ101において、スペクトラム測定部11Aにより、信号光Lから周波数スペクトラムを測定し、自己相関関数算出部11Bにより、この周波数スペクトラムに窓関数を掛けることにより、任意の帯域幅を有効区間として切り出し、得られた部分スペクトラムを逆フーリエ変換することにより自己相関関数を算出し、この自己相関関数に同一の窓関数を用いて逆畳み込み演算を行う。
【0073】
[第6の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、自己相関関数算出部11Bにおいて、スペクトラム測定部11Aで得られた周波数スペクトラムに窓関数を掛けることにより、その周波数スペクトラムのうちから、いずれか1つの通過帯域の一部またはすべてを有限区間として切り出し、得られた部分スペクトラムを逆フーリエ変換することにより自己相関関数を算出し、得られた自己相関関数に対して窓関数で逆畳み込み演算を行うようにしたものである。
これにより、窓関数を用いたことによる歪みに起因するOSNRの誤差が低減でき、OSNR算出精度が向上することができる。また、矩形窓を用いても精度向上が可能になり、より簡単な演算でOSNRを算出することが可能になる。
【0074】
[第7の実施の形態]
次に、図11〜図13を参照して、本発明の第7の実施の形態にかかるOSNR算出装置10について説明する。図11は、周波数スペクトラムの傾きによるOSNRの変化を示す説明図である。図12は、一次関数を用いた逆フーリエ変換の例を示す説明図である。図13は、周波数スペクトラムが傾きを持つ場合における時間波形の自己相関関数を示す説明図である。
【0075】
第5および第6の実施の形態では、周波数スペクトラムを逆フーリエ変換して自己相関関数を算出する場合における、自己相関関数の歪み補償について説明した。本実施の形態では、周波数スペクトラムの傾き補正について説明する。
【0076】
本実施の形態において、自己相関関数取得部11には、前述した図8と同様に、主な機能部として、スペクトラム測定部11Aと自己相関関数算出部11Bが設けられている。
スペクトラム測定部11Aは、入力された信号光Lの周波数スペクトラムを測定する機能を有している。
自己相関関数算出部11Bは、スペクトラム測定部11Aで得られた周波数スペクトラムに対して、探査範囲から選択した傾きごとに、当該傾きを持つ一次関数を乗算または除算して周波数スペクトラムの傾きを補正する機能と、これら補正後の周波数スペクトラムをそれぞれ逆フーリエ変換することにより、傾きごとに自己相関関数を算出する機能とを有している。
【0077】
また、OSNR算出部12は、自己相関関数取得部11で得られた傾きごとの自己相関関数についてOSNRをそれぞれ試算する機能と、これらOSNRのうち極値を示すOSNRを信号光LのOSNRとして算出する機能とを有している。
【0078】
自己相関関数の算出に用いる周波数スペクトラムが傾いていると、図11に示すように、その自己相関関数から求めたOSNRが変化する。例えば、傾きsl=0のときOSNRが−10dBであった周波数スペクトラムについて、傾きsl=−10mw/THzを加えた場合、その周波数スペクトラムから算出されたOSNRは−16dBまで変化しており、傾きの増加に応じてOSNRの誤差が大きくなることが示されている。
【0079】
一般に、伝送路に設けられた増幅器における周波数依存特性などの要因で、信号光の周波数スペクトラムに傾きが生じる。このような周波数スペクトラムの傾きは、周波数スペクトラムに一次関数の窓関数を掛けたことと同等とみなせる。つまり、周波数スペクトラムの逆フーリエ変換が、周波数スペクトラムが傾いていない信号の時間波形の自己相関関数と一次関数の逆フーリエ変換の畳込みとなる。
【0080】
一次関数を逆フーリエ変換すると、図12に示すように、0点をピークとして、裾が広がった波形となる。この結果より、信号の時間波形の自己相関関数が広がることが分かる。この広がりを考慮すると、第1の実施の形態で説明したOSNR算出方法によれば、図13に示すように、三角波形状のピーク値である自己相関値C0’と、抽出した点の自己相関値C1’とは、次の式(4)のように変化する。
【数4】

【0081】
式(4)において、aは傾きにより発生する信号強度の変化を表す係数、bは傾きにより発生する雑音強度の変化を表す係数、α’は抽出した点での傾きにより発生する信号強度の変化を表す係数、βは抽出した点での傾きにより発生する雑音強度の変化を表す係数である。
このとき、OSNRは、次の式(5)で求められる。
【数5】

【0082】
傾きのない周波数スペクトラムのピークとなる周波数を中心として、周波数スペクトラムが傾くとすると、周波数スペクトラムの傾きは、周波数スペクトラムに(1+sl・f)を乗算することにより表現できる。一般的に、周波数スペクトラムはピークを中心として対称になる。ここで、slは一次関数の傾きを示し、fは周波数スペクトラムのピークを0とした相対周波数を示している。
【0083】
対称である周波数スペクトラムに一次関数を掛けることで、非対称な周波数スペクトラムとなる。一次関数の傾きの絶対値が同じで、符号が異なる場合、2つのスペクトラムは鏡像の関係になる。これらのスペクトラムは逆フーリエ変換すると、同じ形状となる。このため、一次関数の傾きの絶対値が同じ場合、前述した式(5)から算出されるOSNRは同じ値となる。
【0084】
したがって、一次関数の傾きが変化したときのOSNRは、一次関数の傾き0を中心として対称となる。これにより、一次関数の傾きが0のときOSNRが極値となる。前述した図11の特性は、このようにして算出したものである。
このことから、周波数スペクトラムの傾きを探査範囲で変化させ、これら傾きごとに得られたOSNRのうち極値を示すOSNRが、傾きのない周波数スペクトラムから求めたOSNRと見なすことができる。
【0085】
[第7の実施の形態の動作]
次に、図14を参照して、本実施の形態にかかるOSNR算出装置10の動作について説明する。図14は、第7の実施の形態にかかるOSNR算出処理を示すフローチャートである。
OSNR算出装置10は、オペレータからの処理開始指示や信号光Lの入力に応じて、図5のOSNR算出処理を実行する。
【0086】
まず、自己相関関数取得部11のスペクトラム測定部11Aは、入力された信号光Lから信号光Lに関する周波数スペクトラムを測定する(ステップ200)。
続いて、自己相関関数取得部11の自己相関関数算出部11Bは、予め設定されている傾きの探査範囲から複数の傾きslを選択し(ステップ201)、スペクトラム測定部11Aで得られた周波数スペクトラムに対して、傾きslごとに、当該傾きslを持つ一次関数を乗算または除算して周波数スペクトラムの傾きを補正する(ステップ202)。
【0087】
次に、自己相関関数算出部11Bは、傾きslごとに得られた補正スペクトラムを、それぞれ逆フーリエ変換することにより、傾きslごとに自己相関関数を算出する(ステップ203)。
この後、OSNR算出部12は、自己相関関数取得部11で得られた傾きslごとの自己相関関数についてOSNRをそれぞれ試算し(ステップ204)、これらOSNRのうち極値を示すOSNRを信号光LのOSNRとして算出する(ステップ205)。
【0088】
[第7の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、自己相関関数取得部11の自己相関関数算出部11Bにおいて、スペクトラム測定部11Aで測定された周波数スペクトラムに対して、探査範囲から選択した傾きslごとに、当該傾きslを持つ一次関数を乗算または除算して周波数スペクトラムの傾きを補正し、得られた補正スペクトラムをそれぞれ逆フーリエ変換することにより、傾きslごとに自己相関関数を算出し、OSNR算出部12において、自己相関関数取得部11で得られた傾きごとの自己相関関数についてOSNRをそれぞれ試算し、これらOSNRのうち極値を示すOSNRを信号光LのOSNRとして算出するようにしたものである。
【0089】
これにより、伝送路に設けられた増幅器における周波数依存特性などの要因で、入力された信号光Lの周波数スペクトラムに傾きが生じている場合でも、この傾きが補正された周波数スペクトラムに基づいて、周波数スペクトラムの傾きに起因する誤差が抑制された、より正確なOSNRを算出することができる。
【0090】
[第8の実施の形態]
次に、図15および図16を参照して、本発明の第8の実施の形態にかかるOSNR算出装置10について説明する。図15は、第8の実施の形態にかかるOSNR算出装置10の構成を示すブロック図である。図16は、自己相関関数測定部の構成を示すブロック図である。
【0091】
第4の実施の形態の形態では、自己相関関数取得部11の具体例として、入力された信号光Lから測定した周波数スペクトラムを逆フーリエ変換することにより、時間波形の自己相関関数を算出する場合について説明した。本実施の形態では、入力された信号光Lから時間波形の自己相関関数を、直接測定する場合について説明する。
【0092】
本実施の形態において、自己相関関数取得部11には、入力された信号光Lから時間波形の自己相関関数を、直接測定する自己相関関数測定部20が設けられている。この自己相関関数測定部20は、マイケルソン、マッハチェンダ干渉計等で構成することができる。以下では、自己相関関数測定部20としてマイケルソン干渉計を用いた場合を例として説明する。
【0093】
図16に示すように、自己相関関数測定部20には、主な機能部として、ハーフミラー21、ミラー22、ミラー23、および受光部24が設けられている。
ハーフミラー21は、入射光を所定の割合で反射光と透過光にスプリットするミラーからなり、入力された信号光Lの一部を反射してミラー22を導く機能と、入力された信号光Lの一部を透過させてミラー23へ導く機能と、ミラー22からの反射光を受光部24へ透過させる機能と、ミラー23からの反射光を受光部24へ反射させる機能とを有している。
【0094】
ミラー22は、ハーフミラー21との距離が固定されたミラーからなり、ハーフミラー21からの反射光をハーフミラー21へ反射する機能を有している。
ミラー23は、ハーフミラー21との距離が調節可能な可動式のミラーからなり、ハーフミラー21からの透過光をハーフミラー21へ反射する機能を有している。
受光部24は、入射光を受光してその強度を検出する受光センサからなり、ハーフミラー21から届いた、ミラー22からの反射光およびミラー22からの反射光により生じる干渉の強度を検出する機能を有している。
【0095】
[第8の実施の形態の動作]
次に、図16を参照して、本実施の形態にかかる自己相関関数測定部20の動作について説明する。
入力された信号光Lは、ハーフミラー21で反射光と透過光にスプリットされる。このうち反射光はミラー22で反射された後、その一部がハーフミラー21を透過して受光部24に入射する。一方、ハーフミラー21からの透過光はミラー23で反射された後、その一部がハーフミラー21で反射されて、受光部24に入射する。
【0096】
受光部24では、ハーフミラー21から届いた、ミラー22からの反射光およびミラー22からの反射光からなる2つの光が干渉した強度が測定される。この際、ハーフミラー21に対するミラー23の距離を変化させることで、2つの光の光路長差を変えることができる。したがって、この光路長差を変化させたときの光強度をプロットすると時間波形の自己相関関数が得られる。この自己相関関数は、次の式(6)で表される。
【数6】

【0097】
式(6)において、Rは自己相関値、Pは信号の振幅、tは時間であり、τは光の速度を光路長差で割った値、つまり、光路長差を時間に換算した値である。マッハチェンダ干渉計、サニャック干渉計等でも同様の効果が得られる。
【0098】
[第8の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態では、自己相関関数取得部11を、入力された信号光Lから時間波形の自己相関関数を、直接測定する自己相関関数測定部20で構成したので、周波数スペクトラムから時間波形の自己相関関数を算出するための逆フーリエ変換を実行する必要がなくなる。このため、OSNR算出装置10での演算処理負担を大幅に軽減できる。
【0099】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0100】
10…OSNR算出装置、11…自己相関関数取得部、11A…周波数スペクトラム測定部、11B…自己相関関数算出部、12…OSNR算出部、20…自己相関関数測定部、21…ハーフミラー、22…ミラー、23…ミラー(可動式)、24…受光部、S…信号強度、N…雑音強度、OSNR…光信号対雑音比。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された信号光から、前記信号光に関する時間波形の自己相関関数を取得する自己相関関数取得ステップと、
前記自己相関関数のピーク値を信号強度と雑音強度の強度和とするとともに、前記自己相関関数のうち信号に関する強度値に基づいて前記信号強度を推定し、前記強度和から前記信号強度を減算することにより前記雑音強度を求め、前記信号強度および前記雑音強度から前記信号光のOSNRを算出するOSNR算出ステップと
を備えることを特徴とするOSNR算出方法。
【請求項2】
請求項1に記載のOSNR算出方法において、
前記OSNR算出ステップは、前記自己相関関数のうち前記ピーク値とは異なる設定時間位置の相関値を、OSNRが既知である基準光の自己相関関数から予め求めておいた、前記設定時間位置における自己相関値と前記基準光の信号強度との比を示す定数で除算することにより、前記信号強度を算出することを特徴とするOSNR算出方法。
【請求項3】
請求項1に記載のOSNR算出方法において、
前記OSNR算出ステップは、前記自己相関関数のうちから抽出した、前記ピーク値とは異なり、かつ前記ピーク値を間に挟まない複数の自己相関値から、前記自己相関関数の近似線を特定し、前記近似線のうち前記ピーク値の時間位置における値を前記信号強度とすることを特徴とするOSNR算出方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のOSNR算出方法において、
前記自己相関関数取得ステップは、
前記信号光の周波数スペクトラムを測定する周波数スペクトラム測定ステップと、
前記周波数スペクトラムのうちから、いずれか1つの通過帯域の一部またはすべてを有限区間として切り出して、前記有限区間の外側に仮の強度値を追加した修正スペクトラムを、逆フーリエ変換することにより、前記自己相関関数を算出する自己相関関数算出ステップと
を備えることを特徴とするOSNR算出方法。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載のOSNR算出方法において、
前記自己相関関数取得ステップは、
前記信号光の周波数スペクトラムを測定する周波数スペクトラム測定ステップと、
前記周波数スペクトラムに対して、いずれか1つの通過帯域を有限区間とする窓関数を掛けた後、逆フーリエ変換して得られたデータに前記窓関数の逆畳み込み演算を行うことにより、前記自己相関関数を算出する自己相関関数算出ステップと
を備えることを特徴とするOSNR算出方法。
【請求項6】
請求項2または請求項3に記載のOSNR算出方法において、
前記自己相関関数取得ステップは、
前記信号光の周波数スペクトラムを測定する周波数スペクトラム測定ステップと、
前記周波数スペクトラムに対して、探査範囲から選択した傾きごとに、当該傾きを持つ一次関数を乗算または除算して前記周波数スペクトラムの傾きを補正した後、逆フーリエ変換することにより、前記傾きごとに前記自己相関関数を算出する自己相関関数算出ステップと
を備え、
前記OSNR算出ステップは、前記傾きごとの前記自己相関関数について、前記OSNRをそれぞれ算出し、これらOSNRのうち極値を示すOSNRを前記信号光のOSNRとする
ことを特徴とするOSNR算出方法。
【請求項7】
入力された信号光から、前記信号光に関する時間波形の自己相関関数を取得する自己相関関数取得部と、
前記自己相関関数のピーク値を信号強度と雑音強度の強度和とするとともに、前記自己相関関数のうち信号に関する強度値に基づいて前記信号強度を推定し、前記強度和から前記信号強度を減算することにより前記雑音強度を求め、前記信号強度および前記雑音強度から前記信号光のOSNRを算出するOSNR算出部と
を備えることを特徴とするOSNR算出装置。
【請求項8】
請求項7に記載のOSNR算出装置において、
前記OSNR算出部は、前記自己相関関数のうち前記ピーク値とは異なる設定時間位置の相関値を、OSNRが既知である基準光の自己相関関数から予め求めておいた、前記設定時間位置における自己相関値と前記基準光の信号強度との比を示す定数で除算することにより、前記信号強度を算出することを特徴とするOSNR算出装置。
【請求項9】
請求項7に記載のOSNR算出装置において、
前記OSNR算出部は、前記自己相関関数のうちから抽出した、前記ピーク値とは異なり、かつ前記ピーク値を間に挟まない複数の自己相関値から、前記自己相関関数の近似線を特定し、前記近似線のうち前記ピーク値の時間位置における値を前記信号強度とすることを特徴とするOSNR算出装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のOSNR算出装置において、
前記自己相関関数取得部は、
前記信号光の周波数スペクトラムを測定する周波数スペクトラム測定部と、
前記周波数スペクトラムのうちから、いずれか1つの通過帯域の一部またはすべてを有限区間として切り出して、前記有限区間の外側に仮の強度値を追加した修正スペクトラムを、逆フーリエ変換することにより、前記自己相関関数を算出する自己相関関数算出部と
を備えることを特徴とするOSNR算出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate