説明

PEDOT/PSSを固体電解質として含有するコンデンサにおける電気パラメータをポリグリセロールによって改善するための方法

【課題】低い等価直列抵抗、高い破壊電圧、特に高温での保存安定性が改善されたコンデンサを提供する。
【解決手段】電極材料2の電極体1を含むコンデンサであって、誘電体3はこの電極材料2の表面4を少なくとも部分的に覆ってアノード体5を形成し、このアノード体5は、導電性ポリマーを含む固体電解質6でコーティングされ、当該コンデンサは、ポリグリセロールを含み、当該コンデンサ中のポリグリセロールの重量による量(Mpg)および当該コンデンサ中の導電性ポリマーの重量による量(Mポリマー)の比については、Mpg/Mポリマー>0.15であり、当該ポリグリセロールは、当該ポリグリセロールの総重量に基づき50重量%超のトリグリセロールおよびテトラグリセロールの混合物を含有するコンデンサとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ、コンデンサの製造のためのプロセス、このプロセスによって得ることができるコンデンサ、電子回路、コンデンサおよび分散液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の電解コンデンサは、概して、多孔性金属電極と、金属表面上の誘電体としての役割を果たす酸化物層と、この多孔性構造体の中へと導入されている電気伝導性物質、通常は固体と、外部電極(接点接続)、例えば銀層と、さらなる電気接点と封入体とから構成される。しばしば使用される電解コンデンサは、タンタル電解コンデンサであり、このタンタル電解コンデンサのアノード電極はバルブ金属のタンタルから作製され、このタンタルの上に五酸化タンタルの均一な誘電体層がアノード酸化(「形成」とも呼ばれる)によって生成されている。液体電解質または固体電解質は、コンデンサのカソードを形成する。アノード電極がバルブ金属であるアルミニウムから作製され、このアルミニウムの上に均一な電気絶縁性の酸化アルミニウム層がアノード酸化によって誘電体として生成されている、アルミニウムコンデンサが、さらに頻繁に用いられる。ここでも、液体電解質または固体電解質がコンデンサのカソードを形成する。アルミニウムコンデンサは、通常、巻回型または積層型(stack−type)コンデンサとして構築される。
【0003】
π共役ポリマーは、それらの高い電気伝導率が理由で、上記のコンデンサにおける固体電解質として特に適切である。π共役ポリマーは、導電性ポリマーまたは合成金属とも呼ばれる。πポリマーは、加工性、重量、および化学修飾によって特性を狙った設定にできることの点で、金属に勝る利点を有するので、導電性ポリマーは、ますます経済的に重要になってきている。公知のπ共役ポリマーの例は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンおよびポリ(p−フェニレン−ビニレン)であり、工業的に使用される特に重要なポリチオフェンはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)である。なぜなら、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)は、その酸化された形態において、非常に高い電気伝導率を有するからである。
【0004】
導電性ポリマーに基づく固体電解質は、種々の方法および様態で酸化物層に付与することができる。従って、特許文献1は、例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェンからの固体電解質の調製、および電解コンデンサにおけるその使用を記載する。この刊行物の教示によれば、3,4−エチレンジオキシチオフェンは、その場で酸化物層の上へと重合される。ポリマー固体電解質の堆積後、例えば特許文献2に記載されているように、低残留電流を成し遂げるために、コンデンサの酸化物層は、従来通り、再形成される必要がある。このために、コンデンサは電解質の中で含浸され、その酸化物膜の陽極酸化電圧を超えない電圧に曝される。
【0005】
しかしながら、その場重合を使用する固体電解コンデンサの製造の短所は、中でもとりわけ、プロセスの複雑さであり、さらには、通常は、満足できないほどに高い破壊電圧が成し遂げられるに過ぎない。このように、いずれの場合も含浸、重合および洗浄の工程を含む重合プロセスは、概して数時間続く。特定の状況下では、爆発性のまたは有毒な溶媒もここで用いられる必要がある。固体電解コンデンサの製造のためのその場プロセスのさらなる欠点は、概して、酸化剤のアニオンまたは、適切な場合、他の単量体状アニオンが、導電性ポリマーについての対イオンとしての役割を果たすということである。しかしながら、それらアニオンの小さいサイズが原因で、これらは、十分に安定な様態でポリマーに結合されない。結果として、対イオンの拡散およびそれゆえコンデンサの等価直列抵抗(ESR)の上昇が、とりわけコンデンサの上昇した使用温度で起こる可能性がある。化学的なその場重合における高分子量の高分子対イオンの代替的使用は、十分な導電性のフィルムへとつながらず、それゆえ低ESR値にはつながらない。
【0006】
それゆえ、電解コンデンサにおける、導電性ポリマーに基づく固体電解質の調製のための別のプロセスが、先行技術において開発されてきた。かくして、例えば、特許文献3は、コンデンサにおける固体電解質の製造のためのプロセスであって、先行技術から公知のすでに重合したチオフェンを含む分散液、例えばPEDOT/PSS分散液が、酸化物層に付与され、次いで分散剤がエバポレーションによって除去されるプロセスを記載する。PEDOT/PSS分散液から得られるコンデンサは、その場重合を用いて得られるコンデンサと比べて、高められた破壊電圧を有する。
【0007】
しかしながら、特に高い使用電圧についての電解コンデンサの信頼性の尺度である、破壊電圧をさらに高めるというニーズがある。この破壊電圧は、コンデンサの誘電体(酸化物層)がもはや電場強度に耐えられず、電気的貫通(electrical breakthrough)がアノードとカソードとの間で起こるときの電圧であり、この電気的貫通はコンデンサにおける短絡につながる。破壊電圧が高いほど、誘電体の品質は良好であり、それゆえ、コンデンサはより信頼性が高い。コンデンサの破壊電圧が高いほど、コンデンサを使用することができる公称電圧も、より高い。
【0008】
特許文献4、特許文献5、特許文献6または特許文献7の教示によれば、アルミニウムコンデンサにおける破壊電圧の上昇は、例えば、分散液を酸化物層に付与する前に、固体電解質層を製造するために用いられるポリマー分散液にポリエチレングリコールを加えることにより、成し遂げることができる。しかしながら、当該目的を成し遂げるためのこの設定の短所は、コンデンサの電気特性、特にキャパシタンスおよび等価直列抵抗(ESR)、が高温では時間とともに悪化するので、コンデンサの長期安定性は、高温では限定的であるということである。それゆえこのようなコンデンサは、特に、自動車産業における使用のためには、特に、例えばハイブリッド推進手段または電気推進手段における中間コンデンサ(DCリンクコンデンサ)としての使用のためには適切ではない。なぜなら、この分野では、特に高い温度への曝露が起こるからである。これらの用途分野では、コンデンサは、+125℃〜+150℃の温度範囲および100V〜500Vの電圧範囲で用いられる。コンデンサは、これらの条件下で信頼性高く機能する必要があり、かつ、例えば非特許文献1に記載されているとおり、非常に低い等価直列抵抗(ESR)を有する必要がある。
【0009】
化学的重合または電気化学重合によって製造された導電性ポリマーの層を有するコンデンサにおいてポリグリセロールを使用することは、特許文献8および特許文献9から公知である。これらの両方の明細書の教示は、化学的重合または電気化学重合においてポリグリセロールが非常に少量で用いられて、導電性ポリマーのいくつかの層を有するコンデンサにおいて導電性ポリマーの外層を得る場合にのみ、高温でのコンデンサの長期の熱安定性を成し遂げることができるということである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 340 512号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0 899 757号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2005 043828号明細書
【特許文献4】国際公開第2007/097364号パンフレット
【特許文献5】特開2008−109065号公報
【特許文献6】特開2008−109068号公報
【特許文献7】特開2008−109069号公報
【特許文献8】米国特許出願公開第2009/128997号明細書
【特許文献9】特開2010−129864号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】W.Wondrakら、「Requirements on passive components for electric and hybrid vehicles」、CARTS Europe 2010,The 22nd Annual Passive Components Symposium,Proceedings、34−39頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、コンデンサに関連した、特に固体電解コンデンサに関連した、非常に特に好ましくは先行技術から公知のアルミニウム巻回型コンデンサに関連した先行技術の短所を克服するという目的に基づいていた。
【0013】
特に、特に低い等価直列抵抗、高い破壊電圧によって、特に高温での保存安定性、特に先行技術から公知のコンデンサと比べて改善されている、50℃超、さらにより好ましくは100℃超の温度での保存安定性によって際立つコンデンサが提供されるべきであった。このような高温での保存安定性の改善は、特に、保存の間にまたは上述の温度のもとでの使用の間に、コンデンサの電気特性、特にキャパシタンスおよび等価直列抵抗、ができる限りわずかしか変化しないという事実において明らかになるはずである。
【0014】
本発明は、そのような有利なコンデンサを製造することために用いることができるプロセスを提供するという目的にも基づいていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
驚くべきことに、ポリチオフェンに基づく固体電解質を有するコンデンサにおいて、特にアルミニウム巻回型コンデンサにおいて、ポリグリセロールは、先行技術から公知であるポリエチレングリコールの使用から得られる改善と同様の、コンデンサにおける破壊電圧の改善につながるだけでなく、同時に、コンデンサの熱安定性を著しく向上させるということが見出された。ポリグリセロールは、ジグリセロールと比べて、高温でのコンデンサのさらに良好な長期安定性を示す。特に、固体電解質層の中のジグリセロールの含有量が下げられても、熱安定性は、さらに良好である。このために、コンデンサの破壊電圧および熱安定性を高めるために、ポリグリセロールは、少なくとも分散液中の導電性ポリマーまたは導電性ポリマーおよびポリアニオンの錯体の固形分含量、好ましくはPEDOT/PSSの固形分含量に相当する濃度で、好ましくはより高い濃度でさえ、導電性ポリマー分散液に加えられることが好ましい。
【0016】
それゆえ、上述の目的を成し遂げることに対する寄与は、電極材料の電極体を含むコンデンサであって、誘電体は、この電極材料の表面を少なくとも部分的に覆ってアノード体を形成し、
このアノード体は、導電性ポリマーを含む固体電解質で少なくとも部分的にコーティングされ、
このコンデンサは、少なくとも1つのポリグリセロールを含み、
当該コンデンサ中のポリグリセロールの重量による量(Mpg)およびコンデンサ中の導電性ポリマーの重量による量(Mポリマー)の比については:
pg/Mポリマー>0.15
であり、当該ポリグリセロールは、いずれの場合も当該ポリグリセロールの総重量に基づき、50重量%超、好ましくは60重量%超、特に好ましくは50〜85重量%の範囲の、さらにより好ましくは60〜85重量%の範囲の、トリグリセロールおよびテトラグリセロールの混合物を含有する、コンデンサによってなされる。本発明によれば、トリグリセロールおよびテトラグリセロールの混合物が、1:1.5〜1:5.5の範囲の、テトラグリセロールに対するトリグリセロールの比を有することが、さらにいっそう好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】工程a1)〜c1)を含むプロセスによって得ることができる、本発明に係るコンデンサの一部を通る断面の略図である。
【図2】工程a2)〜e2)を含むプロセスによって得ることができる、本発明に係るコンデンサの一部を通る断面の略図である。
【図3】実施例8で得られたコンデンサについての活性化電圧の測定のための測定曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るコンデンサの1つの実施形態では、上に記載されたポリグリセロールが、固体電解質の一部であることが好ましい。従って、この固体電解質が、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも3重量%、特に好ましくは少なくとも5重量%の当該導電性ポリマー、および少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、特に好ましくは少なくとも35重量%の、1つの構成成分としてのポリグリセロールを含み、固体電解質のすべての構成成分の重量%の和が100であることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、このポリグリセロールが、20重量%未満の、好ましくは15重量%未満の、特に好ましくは12重量%未満の(いずれの場合もこのポリグリセロールに基づく)、ヘプタグリセロールおよびより高次のグリセロールを含有することがさらに好ましい。この実施形態は、より詳細に後述されるケースI)に特に適していることが判明した。このようなポリグリセロールの含有量があまりに高い場合、固体電解質上でのこれらの長鎖ポリグリセロールの堆積が、とりわけ、固体電解質の調製のために用いられる分散液の中での高ポリグリセロール含有量の場合に起こる可能性がある。
【0020】
好ましくは、Mpg/Mポリマー>0.2であり、Mpg/Mポリマーは、さらにより好ましくは0.2〜80の範囲、さらにより好ましくは0.4〜60の範囲、特に好ましくは1〜50の範囲、きわめて好ましくは1.5〜40の範囲、非常に好ましくは2.5〜30の範囲、最も好ましくは3〜25の範囲にある。本発明のさらなる実施形態では、Mpg/Mポリマーが、0.2〜20の範囲にあることが好ましく、好ましくは0.5〜15の範囲、特に好ましくは1〜10の範囲、きわめて好ましくは1.6〜8の範囲、非常に好ましくは2.5〜5の範囲にある。この実施形態は、より詳細に後述されるケースI)に特に適していることが判明した。本発明の別の実施形態では、Mpg/Mポリマーが、4〜80の範囲にあることが好ましく、好ましくは8〜50の範囲、特に好ましくは10〜20の範囲にある。この実施形態は、より詳細に後述されるケースII)およびIII)の各々に特に適していることが判明した。
【0021】
本発明に係るコンデンサは、好ましくは電極材料の多孔性電極体を含み、誘電体は、この電極材料の表面を少なくとも部分的に覆ってアノード体を形成する。
【0022】
原理上、この電極体は、高表面積のバルブ金属粉末を圧縮し、その粉末を焼結して、通常は多孔性の電極体を得ることにより、製造することができる。従来は、好ましくはバルブ金属(例えばタンタルなど)の電気接点ワイヤも、ここで、その電極体の中へと圧縮される。次いでこの電極体は、例えば電気化学的酸化によって、誘電体、すなわち酸化物層でコーティングされる。あるいは、多孔性領域を有するアノード箔を得るために、金属箔がエッチングされ、電気化学的酸化によって誘電体でコーティングされてもよい。巻回型コンデンサでは、電極体を形成する多孔性領域を有するアノード箔とカソード箔とはセパレーターにより隔てられ、そして巻き取られる。
【0023】
本発明に関しては、バルブ金属は、金属の酸化物層が両方向に等しく電流の流れを許容するわけではない、その金属を表すと理解される。電圧がアノードに印加されるときこのバルブ金属の酸化物層は電流の流れを遮断するが、他方、電圧がカソードに印加されるときその酸化物層を破壊する可能性がある大電流が流れる。バルブ金属としては、Be、Mg、Al、Ge、Si、Sn、Sb、Bi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、TaおよびWならびにこれらの金属の少なくとも1つと他の元素との合金または化合物が挙げられる。バルブ金属の最も知られた例は、Al、TaおよびNbである。バルブ金属に匹敵する電気特性を有する化合物は、酸化することができかつその酸化物層が本願明細書にこれまでに記載された特性を有する、金属的な電気伝導率を呈する化合物である。例えばNbOは金属的な電気伝導率を呈するが、一般にはバルブ金属とは考えられない。しかしながら酸化されたNbOの層はバルブ金属酸化物層の典型的な特性を呈し、そのため、NbOまたはNbOと他の元素との合金もしくは化合物はバルブ金属に匹敵する電気特性を有するそのような化合物の典型例である。タンタル、アルミニウムから構成される電極材料、およびニオブまたは酸化ニオブに基づく電極材料が好ましい。アルミニウムから構成される電極材料が特に好ましい。
【0024】
多孔性領域を有することが多い電極体の製造のために、このバルブ金属は、例えば粉末形態で焼結されて、通常は多孔性の電極体を得てもよく、または多孔性構造体が、金属体の上に刻み付けられる。後者は、例えば箔をエッチングすることにより行うことができる。
【0025】
簡単にするために、多孔性領域を有する物体は、以下では「多孔性(の)」とも呼ばれる。従って、例えば、多孔性領域を有する電極体は、多孔性電極体とも呼ばれる。一方で、多孔性の物体には複数のチャネルが広がっていてもよく、それゆえ多孔性の物体は海綿状であってもよい。これは、コンデンサの製造のためにタンタルが使用される場合に、よくある事例である。さらには、表面だけが細孔を有し、表面細孔の下に続く領域が、構造的に中実であるということが可能である。このような状況は、コンデンサの製造のためにアルミニウムが使用される場合に、多く観察される。
【0026】
このようにして製造された多孔性であることが多い電極体は、次いで、誘電体を形成するために、例えばリン酸またはアジピン酸アンモニウムの水溶液などの適切な電解質の中で、電圧の印加によって酸化される。この形成電圧のレベルは、成し遂げられるべき酸化物層の厚さまたはコンデンサの、後の使用電圧に依存する。好ましい形成電圧は、1〜2,000Vの範囲にある。低電圧コンデンサと高電圧コンデンサとの間で区別がなされることが多い。低電圧コンデンサの場合には、形成電圧は、好ましくは1〜300Vの範囲、特に好ましくは3〜250Vの範囲、さらに好ましくは5〜150Vの範囲、さらにより好ましくは6〜100Vの範囲である。高電圧コンデンサの場合には、形成電圧は、好ましくは30〜1,900Vの範囲、特に好ましくは50〜1,600Vの範囲、さらに好ましくは100〜1,500Vの範囲、さらにより好ましくは150〜1,400Vである。
【0027】
本発明に係るコンデンサの製造のために用いられる電極体は、好ましくは、10〜90%、好ましくは30〜80%、特に好ましくは50〜80%の多孔性、および10〜10,000nm、好ましくは50〜5,000nm、特に好ましくは100〜3,000nmの平均孔径を有する。
【0028】
本発明に係るコンデンサの第1の特定の実施形態によれば、当該コンデンサはアルミニウムコンデンサ、特に好ましくはアルミニウム巻回型コンデンサである。
【0029】
本発明に係るコンデンサは、アノード体を少なくとも部分的にコーティングする固体電解質をさらに有し、この固体電解質は、導電性ポリマーおよび少なくとも1つのポリグリセロールを含む。
【0030】
本発明では、特に、「導電性ポリマー」は、酸化または還元後に電気伝導率を有するπ共役ポリマーの化合物のクラスを意味するとして理解される。好ましくは、導電性ポリマーは、酸化後に、少なくとも0.1Scm−1のオーダーの電気伝導率を有するπ共役ポリマーを意味するとして理解される。特に好ましい本発明に係る実施形態によれば、当該導電性ポリマーはアニオン、好ましくはポリアニオンを含む。その場合は、アニオンおよびカチオンがこの導電性ポリマーの中に存在する。その場合、これら2つの成分は、一緒に導電性ポリマーを形成する。
【0031】
これに関して、当該導電性ポリマーが、ポリチオフェン、特に好ましくは一般式(I)もしくは(II)の繰り返し単位または一般式(I)および(II)の単位の組み合わせを有するポリチオフェン、好ましくは一般式(II)の繰り返し単位を有するポリチオフェンを含むことが特に好ましい。
【化1】

式中、
Aは、任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカルを表し、
Rは、直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC〜C18−アルキルラジカル、任意に置換されたC〜C12−シクロアルキルラジカル、任意に置換されたC〜C14−アリールラジカル、任意に置換されたC〜C18−アラルキルラジカル、任意に置換されたC〜C−ヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカルを表し、
xは、0〜8の整数を表し、
複数のラジカルRがAに結合されている場合、それらは同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0032】
一般式(I)および(II)は、x個の置換基RがアルキレンラジカルAに結合されていてもよいということを意味すると理解されるべきである。
【0033】
Aが任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカルを表し、xが0または1を表す一般式(II)の繰り返し単位を有するポリチオフェンは特に好ましい。任意に置換されているポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、当該固体電解質の導電性ポリマーとして、非常に特に好ましい。
【0034】
本発明に関しては、接頭辞「ポリ」は、ポリマーまたはポリチオフェンが、複数の同一のまたは異なる一般式(I)または(II)の繰り返し単位を含有するということを意味すると理解されたい。一般式(I)または(II)の繰り返し単位に加えて、当該ポリチオフェンは、任意に、他の繰り返し単位も含むことができるが、当該ポリチオフェンのすべての繰り返し単位のうちの少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%が一般式(I)および/または(II)、特に好ましくは(II)を有することが好ましい。このポリチオフェンは、全部でn個の一般式(I)および/または(II)の繰り返し単位を含有し、ここでnは2〜2,000、好ましくは2〜100の整数である。一般式(I)または(II)の繰り返し単位は、ポリチオフェンの範囲内で各々同じであってもよいし異なっていてもよい。いずれも同一の一般式(II)の繰り返し単位を有するポリチオフェンが好ましい。
【0035】
当該ポリチオフェンは、いずれの場合も、末端基に、Hを有することが好ましい。
【0036】
本発明に関しては、C〜C−アルキレンラジカルAは、好ましくは、メチレン、エチレン、n−プロピレン、n−ブチレンまたはn−ペンチレンである。C〜C18−アルキルRは、好ましくは、メチル、エチル、n−またはiso−プロピル、n−、iso−、sec−またはtert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルなどの直鎖状もしくは分枝状のC〜C18−アルキルラジカルを表し、C〜C12−シクロアルキルラジカルRは、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルまたはシクロデシルを表し、C〜C14−アリールラジカルRは、例えば、フェニルまたはナフチルを表し、C〜C18−アラルキルラジカルRは、例えば、ベンジル、o−、m−、p−トリル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−キシリルまたはメシチルを表す。上記の一覧は、本発明を例として記載する役割を果たすが、排他的なものであるとみなされるべきではない。
【0037】
本発明に関しては、ラジカルAおよび/またはラジカルRの任意の可能性のあるさらなる置換基は、多くの有機基、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カルボン酸、カーボネート、カルボキシレート、シアノ、アルキルシランおよびアルコキシシラン基、ならびにカルボキシアミド基である。
【0038】
当該導電性ポリマーの中に含有されるポリチオフェンは、電荷を帯びていなくてもよいし、またはカチオン性であってもよい。好ましい実施形態では、それらはカチオン性である。「カチオン性」は、単にこのポリチオフェン主鎖上に存在する電荷のみを指す。ラジカルRの置換基に応じて、当該ポリチオフェンは正電荷および負電荷をその構造単位の中に有することができ、この場合、この正電荷は当該ポリチオフェン主鎖上に存在し、負電荷は、存在する場合、スルホネート基またはカルボキシレート基によって置換されたラジカルR上に存在する。これに関して、当該ポリチオフェン主鎖の正電荷は、ラジカルRに任意に存在し得るアニオン性基によって部分的にまたは完全に飽和されていてもよい。全体的に見ると、このポリチオフェンは、これらの場合にはカチオン性であってもよく、電荷を帯びていなくてもよく、またはアニオン性でさえあってもよい。とはいうものの、本発明に関しては、それらは、すべてカチオン性ポリチオフェンであると考えられる。なぜなら、このポリチオフェン主鎖上の正電荷が決定因子だからである。この正電荷は、上記式の中には示されていない。なぜなら、それらの正確な数および位置は明確に特定できないからである。しかしながら正電荷の数は、少なくとも1であり、多くともnである(nは、このポリチオフェン内のすべての(同じまたは異なる)繰り返し単位の総数である)。
【0039】
任意にスルホネートまたはカルボキシレートで置換された、従って負に帯電したラジカルRによってすでにこの正電荷と均衡がとられていない限りでは、この正電荷と均衡をとるために、このカチオン性ポリチオフェンは対イオンとしてアニオンを必要とし、この対イオンは、単量体状アニオンまたは高分子アニオンであることができる。高分子アニオンは、以下ではポリアニオンとも呼ばれる。ポリアニオンが用いられる場合では、当該導電性ポリマーが、ポリチオフェンおよびポリアニオンの錯体、非常に特に好ましくはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)およびポリスチレンスルホン酸の錯体を含むことが特に好ましい。
【0040】
ポリアニオンは単量体状アニオンよりも好ましい。なぜなら、高分子アニオンは膜形成に寄与し、かつそのサイズに起因して、熱的により安定な、電気伝導性の膜を導くからである。本発明においては、ポリアニオンは、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸もしくはポリマレイン酸などの高分子カルボン酸のアニオン、またはポリスチレンスルホン酸およびポリビニルスルホン酸などの高分子スルホン酸のアニオンであってもよい。これらのポリカルボン酸およびポリスルホン酸は、ビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸と他の重合性単量体(アクリル酸エステルおよびスチレンなど)との共重合体であってもよい。特に好ましくは、当該固体電解質は、ポリチオフェンの正電荷と均衡をとるために、高分子カルボン酸または高分子スルホン酸のアニオンを含有する。
【0041】
ポリチオフェン、特にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が使用される場合は、先行技術から公知のPEDOT/PSS錯体の形態の錯体として結びついて存在することが好ましいポリスチレンスルホン酸(PSS)のアニオンは、ポリアニオンとして特に好ましい。このような錯体は、チオフェン単量体、好ましくは3,4−エチレンジオキシチオフェンを、水溶液中で、ポリスチレンスルホン酸の存在下で、酸化的に重合することにより得ることができる。
【0042】
このポリアニオンを与えるポリ酸の分子量は、好ましくは1,000〜2,000,000、より好ましくは2,000〜500,000である。このポリ酸またはそのアルカリ塩は市販されているか、または例えばポリスチレンスルホン酸およびポリアクリル酸などは、公知の方法(例えばHouben Weyl、Methoden der organischen Chemie、第E20巻、Makromolekulare Stoffe、第2部、(1987)、1141頁以下参照)によって製造することができる。
【0043】
ポリアニオンおよびポリチオフェン、特にポリスチレンスルホン酸およびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、当該導電性ポリマーの中に、および固体電解質の中にも、0.5:1〜50:1、好ましくは1:1〜30:1、特に好ましくは2:1〜20:1の重量比で存在してもよい。当該電気伝導性ポリマーの重量は、本発明においては、当該重合において完全変換があると仮定して、導電性ポリマーの調製のために用いられる単量体の重量に相当する。本発明に係るコンデンサの特定の実施形態によれば、ポリスチレンスルホン酸は、ポリチオフェン、特にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)と比べて、重量で過剰に存在する。
【0044】
使用される単量体状アニオンは、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸などのまたはより高級のスルホン酸(ドデカンスルホン酸など)などのC〜C20−アルカンスルホン酸の単量体状アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸またはペルフルオロオクタンスルホン酸などの脂肪族ペルフルオロスルホン酸の単量体状アニオン、2−エチルヘキシルカルボン酸などの脂肪族C〜C20−カルボン酸の単量体状アニオン、トリフルオロ酢酸またはペルフルオロオクタン酸などの脂肪族ペルフルオロカルボン酸の単量体状アニオン、およびベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸などのC〜C20−アルキル基によって任意に置換された芳香族スルホン酸の単量体状アニオン、およびカンファースルホン酸などのシクロアルカンスルホン酸の単量体状アニオン、またはテトラフルオロホウ酸の単量体状アニオン、ヘキサフルオロリン酸の単量体状アニオン、過塩素酸の単量体状アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸の単量体状アニオン、ヘキサフルオロひ酸の単量体状アニオンまたはヘキサクロロアンチモン酸の単量体状アニオンである。
【0045】
当該導電性ポリマーまたは導電性ポリマーおよびポリアニオンの錯体に加えて、好ましくは上記のPEDOT/PSS錯体に加えて、固体電解質の層も、少なくとも1つのポリグリセロールを含む。
【0046】
本発明によれば、用語「ポリグリセロール」は、少なくとも3つのグリセロール単位から構成されるグリセロールのオリゴマーを意味するとして理解される。しかしながら、少なくとも3つのグリセロール単位から構成されるこのようなオリゴマーに加えて、当該固体電解質は、グリセロールまたはジグリセロールをもさらに含むことができる。しかしながら、当該固体電解質中の3以上のグリセロール単位のオリゴグリセロールの量が、コンデンサ中のこれらのポリグリセロールの重量による量(Mpg)およびコンデンサ中の導電性ポリマーの重量による量(Mポリマー)の比が、上記の最小値に到達するのに十分高い場合は有利である。
【0047】
特に、当該固体電解質は、特にジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロール、ヘキサグリセロールおよび任意に6つより多いグリセロール単位のオリゴマーを含む、テクニカルグレードのポリグリセロールを含有することができる。このようなポリグリセロールは、例えば、ソルベイ・ケミカルズ(SOLVAY CHEMICALS GmbH)、ドイツ、ラインベルク(Rheinberg)から、「Polyglycerol−3」(約29重量%のジグリセロール、約42重量%のトリグリセロール、約19重量%のテトラグリセロール、約6重量%のペンタグリセロールおよび約4重量%の、6以上のグリセロール単位のポリグリセロールを含有する)または「Polyglycerol−4」(約2重量%のジグリセロール、約40重量%のトリグリセロール、約35重量%のテトラグリセロール、約20重量%のペンタグリセロールおよび約8重量%の、6以上のグリセロール単位のポリグリセロールを含有する)の名称で、入手できる。
【0048】
本発明によれば、このポリグリセロール(1種または複数種)が、含浸溶液とも呼ばれる、溶液中で用いられることが好ましい。水およびアルコール、特にメタノール、エタノール、n−およびiso−プロパノールまたはブタノール、およびこれらの混合物が、これらの溶液の溶媒として好ましい。これらの溶液は、いずれも当該溶液に基づき、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも35重量%、特に好ましくは少なくとも45重量%の溶媒、および少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも35重量%、特に好ましくは少なくとも45重量%のポリグリセロール、および任意に、これらとは異なるさらなる添加剤を含み、これら重量%の和は100である。
【0049】
固体電解質は、いずれの考えうる混合物形態にある上記導電性ポリマーおよびポリグリセロールを含むことができる。従って、I)このポリグリセロールは、当該導電性ポリマーの中に均一に混合されてもよい。これは、特に、工程a1)〜c1)を含む下記に開示されるプロセスに記載されるように、特に、当該導電性ポリマーを含む分散液の構成成分であるポリグリセロールによって成し遂げられる。他方、II)当該固体電解質層の中のポリグリセロールは、アノード体に面する領域では、この領域に続く領域(アノード体から見て外方向にある)におけるよりも、高い濃度を有することができる。これは、好ましくは、導電性ポリマーを含む分散液の付与によるか、またはその場重合によるかによらず導電性ポリマーとの接触の前に、アノード体が、例えば含浸によって、当該ポリグリセロールと接触することによって成し遂げられる。これは、工程a4)〜d4)またはa5)〜d5)を含む後に開示されるプロセスにおいて記載される。さらには、III)当該固体電解質層の中のポリグリセロールは、アノード体から見て外方向にある領域において、アノード体に面する領域におけるよりも、高い濃度を有することができる。これは、例えば、アノード体が、その場重合によるか、または導電性ポリマーを含む分散液を用いた含浸などの接触によるかによらず導電性ポリマーで最初にコーティングされ、その後にポリグリセロールで処理、好ましくは含浸されることによって成し遂げられる。これは、特に、工程a2)〜d2)を含む後に開示されるプロセスにおいて記載される。
【0050】
ケースII)およびIII)では、いずれの場合も、当該導電性ポリマーを含む分散液が、いずれの場合も当該導電性ポリマーを含む分散液に基づき、5重量%未満の、好ましくは1重量%未満の、特に好ましくは0.1重量%未満の、さらにより好ましくは0.01重量%未満のポリグリセロールを含有し、それゆえポリグリセロールが少ないかまたはポリグリセロールを含まないことが好ましい。従って、好ましくは、ケースII)およびIII)では、アノード体上の層構造は少なくとも2つの層から得ることができ、それらの層のうちの1つは、いずれの場合も当該導電性ポリマーに基づき5重量%未満の、好ましくは1重量%未満の、特に好ましくは0.1重量%未満のポリグリセロールを有する導電性ポリマーから構成され、そしてポリグリセロールが少ないかまたはポリグリセロールを含まない導電性ポリマーの層はこのようにして得られる。当該導電性ポリマーの層に続くポリグリセロール層が、いずれの場合も層の中のポリグリセロールに基づき5重量%未満の、好ましくは1重量%未満の、特に好ましくは0.1重量%未満の導電性ポリマーを含有することがさらに好ましく、そして導電性ポリマーが少ないかまたは導電性ポリマーを含まないことさえあるポリグリセロールの層はこのようにして得られる。
【0051】
本発明に係るコンデンサでは、誘電体層の厚さは、好ましくは30nm以上、特に好ましくは50nm以上、さらにより好ましくは100nm以上である。ある場合には、この層の厚さは、最大5,000nmである。例えば、電極材料がアルミニウムに基づくコンデンサについての好ましい酸化物膜厚は、30nm超、特に好ましくは50nm超、非常に特に好ましくは100nm超、非常に好ましくは150nm超である。例えば、電極材料がタンタルに基づくコンデンサについての好ましい酸化物膜厚は、50nm超、特に好ましくは80nm超、非常に特に好ましくは150nm超、非常に好ましくは250nm超である。例えば、電極材料がニオブまたは酸化ニオブに基づくコンデンサについての好ましい酸化物膜厚は、80nm超、特に好ましくは130nm超、非常に特に好ましくは250nm超、非常に好ましくは400nm超である。誘電体層のさらなる詳細は、国際公開第2007/031207号パンフレット、第13頁9行〜第14頁16行に見出すことができる。
【0052】
本発明に係るコンデンサの特定の実施形態によれば、これは、以下の特性のうちの少なくとも1つ、好ましくはすべてを有する:
(α1)120℃で674時間コンデンサを保存した後に等価直列抵抗が、多くとも2倍、特に好ましくは多くとも1.7倍、最も好ましくは多くとも1.3倍しか増加しないこと;
(α2)120℃で674時間コンデンサを保存した後にキャパシタンスが、多くとも6%、特に好ましくは多くとも4%、最も好ましくは多くとも2%しか減少しないこと;
(α3)活性化電圧の少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%、の破壊電圧。
【0053】
これに関して、本発明に係るコンデンサの特に好ましい実施形態は、以下の特性または特性の組み合わせを有するコンデンサである:(α1)、(α2)、(α3)、(α1)(α2)、(α1)(α3)、(α2)(α3)、(α1)(α2)(α3)。
【0054】
上述の目的を成し遂げることに対する寄与は、コンデンサの製造のためのプロセスであって、
a1)電極材料の電極体を準備する工程であって、誘電体はこの電極材料の1つの表面を少なくとも部分的に覆ってアノード体を形成する工程と;
b1)導電性ポリマーと、
少なくとも1つのポリグリセロールと、
分散剤と
を含む分散液を、当該アノード体のうちの少なくとも一部の中へと導入する工程と;
c1)当該分散剤を少なくとも部分的に除去して、コンデンサ体を得る工程とを;
または
a2)電極材料の電極体を準備する工程であって、誘電体がこの電極材料の1つの表面を少なくとも部分的に覆ってアノード体を形成する工程と;
b2)導電性ポリマーと、
分散剤と
を含む分散液を、当該アノード体のうちの少なくとも一部の中へと導入する工程と;
c2)当該分散剤を少なくとも部分的に除去して、コンデンサ体を得る工程と;
d2)含浸剤としての少なくとも1つのポリグリセロールを、当該コンデンサ体と接触させる工程とを;
または
a3)電極材料の電極体を準備する工程であって、誘電体がこの電極材料の1つの表面を少なくとも部分的に覆ってアノード体を形成する工程と;
b3)導電性ポリマーと、
少なくとも1つのポリグリセロールと、
分散剤と
を含む分散液を、当該アノード体のうちの少なくとも一部の中へと導入する工程と;
c3)当該分散剤を少なくとも部分的に除去して、コンデンサ体を得る工程と;
d3)含浸剤としての少なくとも1つのポリグリセロールを、当該コンデンサ体と接触させる工程と;
を含み、
このポリグリセロールは、コンデンサ中のポリグリセロールの重量による量(Mpg)およびコンデンサ中の導電性ポリマーの重量による量(Mポリマー)の比が:
pg/Mポリマー>0.15
であるような量で用いられ、好ましくは当該分散液の中に含有され、かつ/または工程d2)またはd3)で用いられ;
このポリグリセロールは、いずれの場合も当該ポリグリセロールの総重量に基づき50重量%超、好ましくは60重量%超、特に好ましくは50〜85重量%の範囲の、さらにより好ましくは60〜85重量%の範囲の、トリグリセロールおよびテトラグリセロールの混合物を含有するプロセスによってもなされる。本発明によれば、トリグリセロールおよびテトラグリセロールの混合物が、1:1.5〜1:5.5の範囲のテトラグリセロールに対するトリグリセロールの比を有することが、さらにいっそう好ましい。本発明によれば、このポリグリセロールが、いずれの場合も当該ポリグリセロールに基づき20重量%未満の、好ましくは15重量%未満の、特に好ましくは12重量%未満の、ヘプタグリセロールおよびより高次のグリセロールを含有することがさらに好ましい。この実施形態は、上でより詳細に記載したケースI)に特に適していることが判明した。
【0055】
好ましくはMPG/Mポリマー>0.2であり、さらにより好ましくはMPG/Mポリマーは0.2〜80の範囲、さらにより好ましくは0.4〜60の範囲、特に好ましくは1〜50の範囲、きわめて好ましくは1.5〜40の範囲、非常に好ましくは2.5〜30の範囲、最も好ましくは3〜25の範囲にある。本発明のさらなる実施形態では、Mpg/Mポリマーが、0.2〜20の範囲、好ましくは0.5〜15の範囲、特に好ましくは1〜10の範囲、きわめて好ましくは1.6〜8の範囲、非常に好ましくは2.5〜5の範囲にあることが好ましい。この実施形態は、上記のケースIに特に適していることが判明した。本発明の別の実施形態では、Mpg/Mポリマーが、4〜80の範囲、好ましくは8〜50の範囲、特に好ましくは10〜20の範囲にあることが好ましい。この実施形態は、上記のケースII)およびIII)の各々に特に適していることが判明した。
【0056】
上記のケースI)では、工程b1)の分散液は、当該分散液の総重量に基づき、好ましくは0.4〜40重量%、より好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは2〜20重量%、とりわけ好ましくは3〜15重量%、非常に好ましくは4〜13重量%のポリグリセロールを含む。
【0057】
本発明に係るプロセスのさらなる実施形態は、
a4)電極材料の電極体を準備する工程であって、誘電体がこの電極材料の1つの表面を少なくとも部分的に覆ってアノード体を形成する工程と;
b4)含浸剤としての少なくとも1つのポリグリセロールを、当該アノード体と接触させる工程と;
c4)導電性ポリマーと、
少なくとも1つのポリグリセロールと、
分散剤と
を含む分散液を、当該アノード体のうちの少なくとも一部の中へと導入する工程と;
d4)当該分散剤を少なくとも部分的に除去して、コンデンサ体を得る工程と
を含み、この実施形態においても、上記のMpg/Mポリマーの関係が当てはまる。
【0058】
本発明に係るプロセスの別の実施形態は、
a5)電極材料の電極体を準備する工程であって、誘電体がこの電極材料の1つの表面を少なくとも部分的に覆ってアノード体を形成する工程と;
b5)含浸剤としての少なくとも1つのポリグリセロールを、当該アノード体と接触させる工程と;
c5)導電性ポリマーと、
分散剤と
を含む分散液を、当該アノード体のうちの少なくとも一部の中へと導入する工程と;
d5)当該分散剤を少なくとも部分的に除去して、コンデンサ体を得る工程と
を含み、この実施形態においても、上記のMpg/Mポリマーの関係が当てはまる。
【0059】
従って、導電性ポリマーおよび少なくとも1つのポリグリセロールを含む固体電解質の層を含む本発明に係るコンデンサは、
i)当該導電性ポリマーを含む分散液、好ましくはPEDOT/PSS分散液に加えられる(工程a1)〜c1)を用いたプロセス)かまたは導電性ポリマーを含む分散液、好ましくはPEDOT/PSS分散液、の付与の前にアノード体に接触させられる(工程a4)〜d4)およびa5)〜d5)を用いたプロセス)ポリグリセロールは、固体電解質の製造の前または製造の間にすでに用いられるか;
ii)当該固体電解質の層の形成後に、ポリグリセロールは、このポリグリセロールの溶液または分散液を用いて含浸される(工程a2)〜d2)に係るプロセス)か、または
iii)i)およびii)に係るプロセスが互いに組み合わされる(工程a3)〜d3)に係るプロセス)
手順によって得ることができる。
【0060】
工程a1)、a2)、a3)、a4)およびa5)では、誘電体が電極材料の1つの表面を少なくとも部分的に覆いアノード体を形成する、電極材料の電極体が準備される。このような電極体の製造の方法および様態は、本発明に係るコンデンサに関連して上ですでに詳細に記載されており、好ましい電極体は、同様に、本発明に係るコンデンサに関連して上で記載されている電極体である。
【0061】
本発明に係るプロセスの特に好ましい実施形態によれば、工程a1)、a2)、a3)、a4)およびa5)における電極体の準備は、誘電体として生成する酸化アルミニウムコーティングである、電極材料としての多孔性アルミニウム箔の、アノードでの生成を含む。このようにして得られるアルミニウム箔(アノード箔)は、次いで、接続ワイヤが設けられ、同様に接続ワイヤが設けられたさらなる多孔性アルミニウム箔(カソード箔)とともに巻かれ、これらの2つの箔は、例えばセルロースまたは、好ましくは、合成紙に基づく1以上のセパレーター紙によって互いに隔てられる。巻かれた後、このようにして得られたアノード体は、例えば接着テープを用いて固定される。このセパレーター紙は、オーブンの中で加熱することにより炭化されてもよい。アルミニウム巻回型コンデンサについてのアノード体の製造のこの方法および様態は、十分に先行技術から公知であり、例えば米国特許第7,497,879(B2)号明細書に記載されている。
【0062】
工程b1)、b2)、b3)、c4)およびc5)では、このあと、導電性ポリマーおよび分散剤を含む分散液がこのアノード体のうちの少なくとも一部へと導入され、工程b1)およびb3)に係る分散液が、追加的に、すでに少なくとも1つのポリグリセロールを含むことが可能である。
【0063】
当該分散液は、公知のプロセス、例えば含浸、浸漬、注ぎ込み(pouring)、滴下(dripping on)、噴霧、ミスト形成(misting on)、ナイフコーティング、ブラッシングまたは印刷、例えばインクジェット印刷、スクリーン印刷またはタンポン印刷によって、当該アノード体の多孔性領域の中へと導入されることが好ましい。この導入は、工程a1)、a2)、a3)、a4)およびa5)で準備されるアノード体を当該分散液の中へと浸漬すること、従って当該アノード体にこの分散液を含浸させることにより実施されることが好ましい。この分散液の中への浸漬またはこの分散液を用いた含浸は、好ましくは1秒〜120分の範囲、特に好ましくは10秒間〜60分の範囲、最も好ましくは30秒間〜15分の範囲の時間の間、実施される。アノード体の中への当該分散液の導入は、例えば、増圧または減圧、振動、超音波または熱によって容易になる可能性がある。
【0064】
アノード体の中への分散液の導入は、直接的に、または接着促進剤、例えば有機官能性シランもしくはその加水分解生成物、例えば3−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランまたはオクチルトリエトキシシラン、および/または1以上の他の機能層を使用して、実施することができる。
【0065】
この導入の結果として、分散液は、当該多孔性領域の細孔を層で覆うことがかなり少ないことが好ましい。むしろ、この細孔の空洞の表面が、この分散液で少なくとも部分的に覆われる。従って、この分散液の中に好ましくは粒子として存在する導電性ポリマーは、細孔の開口部を覆う層を形成するだけでなく;細孔の表面の少なくとも一部(すべての領域であることも多い)も分散液の粒子の層で覆われる。
【0066】
好ましい導電性ポリマーは、ここでも本発明に係るコンデンサに関連して好ましい導電性ポリマーとしてすでに上に記載されているポリマーであり、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)およびポリスチレンスルホン酸を含む導電性ポリマーの使用が非常に特に好ましい。これに関して、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)およびポリスチレンスルホン酸の錯体を含み、かつ好ましくは粒子含有分散液の形態で存在する導電性ポリマーの使用が、非常に特に好ましい。
【0067】
当該分散液の粒子、特に当該導電性ポリマーの粒子は、100S/cm超の比電気伝導率を有する。これに関して、当該粒子の比電気伝導率は、当該分散液の乾燥によって当該粒子から生成する、乾燥状態にある膜の比電気伝導率である。好ましくは、粒子が150S/cm超、特に好ましくは250S/cm超、非常に特に好ましくは400S/cm超、非常に好ましくは750S/cm超の比電気伝導率を有する分散液が用いられる。ある場合には、最大5,000S/cmの比電気伝導率を有する粒子も用いられる。
【0068】
本発明に係るプロセスの特定の実施形態によれば、当該分散液の粒子、特に当該導電性ポリマーの粒子は、1〜70nmの範囲、好ましくは1nmから40nm未満の直径d50を、好ましくは1〜35nmの範囲、特に好ましくは1〜30nmの範囲、非常に特に好ましくは5〜25nmの範囲の直径d50を有することができる。
【0069】
本発明に係るプロセスの特定の実施形態によれば、当該分散液中の当該導電性ポリマーの粒子は、さらに、100nm未満、特に好ましくは70nm未満、非常に特に好ましくは50nm未満の直径分布のd90値を有することができる。本発明に係るプロセスの別の特定の実施形態によれば、当該分散液中の当該導電性ポリマーの粒子は、1nm超、特に好ましくは3nm超、非常に特に好ましくは5nm超の直径分布のd10値を有する。
【0070】
当該分散液は、国際公開第2010/003874(A2)号パンフレットの第6頁10〜29行に記載されているような、金属および遷移金属に関してある純度を有することが好ましい。当該分散液の中で金属の濃度が低いことは、固体電解質の形成の際におよびコンデンサの、後の動作において誘電体が損傷を受けないという大きな利点を有する。
【0071】
当該分散液は、1以上の分散剤を含有し、好ましい分散剤は、水、有機溶媒または有機溶媒および水の混合物である。言及されてもよい分散剤は、例えば、以下の溶媒である:メタノール、エタノール、i−プロパノールおよびブタノールなどの脂肪族アルコール;アセトンおよびメチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン;酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル;トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;塩化メチレンおよびジクロロエタンなどの塩素化炭化水素;アセトニトリルなどの脂肪族ニトリル;ジメチルスルホキシドおよびスルホランなどの脂肪族スルホキシドおよびスルホン;メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドなどの脂肪族カルボン酸アミド;ジエチルエーテルおよびアニソールなどの脂肪族エーテルおよび芳香族脂肪族エーテル。さらに、水また水と上述の有機溶媒との混合物も分散剤として用いてもよい。
【0072】
好ましい分散剤は、水、またはアルコール(例えばメタノール、エタノール、i−プロパノールおよびブタノール)などの他のプロトン性溶媒、ならびに水とこれらのアルコールとの混合物であり、水は特に好ましい溶媒である。
【0073】
当該分散液は、上記導電性ポリマー、分散剤ならびに、工程b1)およびb3)の場合には、少なくとも1つのポリグリセロールのほかに、ポリグリセロールとは異なる表面活性物質、例えばイオン性および/または非イオン性の界面活性剤;または接着促進剤、例えば有機官能性シランまたはその加水分解生成物、例えば3−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランまたはオクチルトリエトキシシラン;メラミン化合物、ブロック化イソシアネート、官能性シラン −例えばテトラエトキシシラン、(例えばテトラエトキシシランに基づく)アルコキシシラン加水分解生成物、エポキシシラン(3−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン)−、ポリウレタン、ポリアクリレートもしくはポリオレフィン分散液などの架橋剤、などのさらなる物質をさらに含有することができる。
【0074】
当該導電性ポリマーを含む分散液は、電気伝導率を増大させるさらなる添加剤、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン(NMP)、N−オクチルピロリドン、ピロリドンなど);スルホンおよびスルホキシド(例えばスルホラン(テトラメチレンスルホン)、ジメチルスルホキシド(DMSO));糖類または糖誘導体(例えばスクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース)、糖アルコール(例えばソルビトール、マンニトール、エリスリトール);フラン誘導体(例えば2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸)、および/またはジアルコールまたはポリアルコール(例えばエチレングリコール、グリセロールまたはジエチレングリコールまたはトリエチレングリコール)を含有することが好ましい。電気伝導率増大添加剤として、N−メチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシドまたはソルビトールを使用することが特に好ましい。
【0075】
導電性ポリマーを含む分散液は、国際公開第2009/141209(A1)号パンフレットの第12頁16〜34行に記載されているように、有機溶媒に可溶である1以上の有機結合剤をさらに含有することができる。この分散液は、1〜14のpH、好ましくは2〜11のpH、特に好ましくは2から4未満または4〜9のpHを有することができる。腐食に敏感な誘電体、例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ニオブなどについては、当該誘電体が損傷を受けないように、2.5〜8のpHを有する分散液が好ましい。
【0076】
pHを調整するために、国際公開第2010/003874(A2)号パンフレットの第4頁13〜32行に記載されているように、例えば、塩基または酸を、導電性ポリマーを含む分散液に加えることができる。当該分散液の膜形成を損なわず、かつより高い温度、例えばはんだ付け温度、でも揮発性ではなく、これらの条件下で当該固体電解質の中に留まる添加物、例えば2−ジメチルアミノエタノール、アンモニア、2,2’−イミノジエタノールまたは2,2’,2”−ニトリロトリエタノールなどの塩基が好ましく、アンモニアが特に好ましい。
【0077】
当該導電性ポリマーを含む分散液の粘度は、付与の方法に応じて、0.1〜1,000mPas(20℃および100s−1のせん断速度で、レオメータを用いて測定される)であることができる。好ましくは、この粘度は、1〜500mPas、特に好ましくは10〜200mPas、非常に特に好ましくは40〜150mPasである。
【0078】
当該導電性ポリマーおよび分散剤に加えて少なくとも1つのポリグリセロールも含む分散液が、工程a1)〜c1)を用いる変法、工程a3)〜d3)を用いる変法または、工程a4)〜d4)を用いる変法に従って、工程b1)、b3)またはc4)で用いられる場合、このような分散液は、原理上は、従来のPEDOT/PSS分散液、例えばヘレウス・クレビオス・ゲーエムベーハー(HERAEUS CLEVIOS GmbH)、レーバークーゼン(Leverkusen)からClevios(登録商標)Pの名称で入手できる分散液を、ポリグリセロールと混合することにより得ることができ、例えば、上記のソルベイ・ケミカルズ(SOLVAY CHEMICALS GmbH)のテクニカルグレードのポリグリセロールをこの場合に用いることが可能である。ポリグリセロールの存在下で当該導電性ポリマーを調製することによりポリグリセロールを含む分散液を調製することも、想定できる。PEDOT/PSS分散液の場合には、これは、例えば、ポリグリセロールを含む溶媒の中での、ポリスチレンスルホン酸の存在下でのチオフェン単量体の重合によって実現することができる。当該分散液の中のポリグリセロールの量は、これに関して、工程c1)またはc3)で形成される固体電解質層の中の導電性ポリマーの重量による量に対するポリグリセロールの重量による量の比が上記の範囲にあるように選ばれるべきである。
【0079】
工程b1)、b2)、b3)、c4)およびc5)で用いられる導電性ポリマーを含む分散液の固形分含量は、好ましくは、いずれの場合も当該導電性ポリマーを含む分散液の総重量に基づき、0.1〜20重量%の範囲、特に好ましくは0.5〜10重量%の範囲、最も好ましくは1〜5重量%の範囲にある。この固形分含量は、分散剤を除去するのに十分高いが、乾燥により固形分を分解することがない温度での、分散液の乾燥を通して決定される。
【0080】
アノード体が上記の分散液で含浸された後、工程c1)、c2)、c3)、d4)およびd5)において、当該分散液の中に含有される分散剤は、少なくとも部分的に除去されるかまたは硬化され、その結果、誘電体を、それゆえコンデンサ体を完全にまたは部分的に覆う固体電解質が形成される。これに関して、この固体電解質による誘電体の被覆が、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%であることが好ましく、この被覆の割合は、独国特許出願公開第10 2005 043 828(A)号明細書に記載されているように、乾燥状態での、および乾燥前の状態でのコンデンサのキャパシタンスの測定によって決定することができる。
【0081】
この除去または硬化は、電極体を分散液から取り出して電極体を乾燥することにより実施されることが好ましく、この乾燥は、20℃〜200℃の範囲、特に好ましくは50℃〜175℃の範囲、最も好ましくは80℃〜150℃の範囲の温度で実施されることが好ましい。工程b1)、b2)、b3)、c4)およびc5)、c1)、c2)、c3)、d4)およびd5)は、この様態において、誘電体上に堆積される固体電解質の層の厚さまたは電極体の中の固体電解質の充填の程度を特定の必要条件に合わせるために、1回または数回繰り返されてもよい。
【0082】
本発明に係るプロセスの工程d2)およびd3)では、少なくとも1つのポリグリセロールが、それぞれ工程c2)およびc3)で得られたコンデンサ体に接触させられ、少なくとも1つのポリグリセロールが、溶媒およびポリグリセロールを含む溶液の形態で用いられることが好ましく、そして、さらなる工程e2)またはe3)では、溶媒が、コンデンサ体の中へと導入された溶液から、少なくとも部分的に、好ましくは50重量%超の程度まで、好ましくは90重量%超の程度まで、特に好ましくは98重量%超の程度まで除去されることが好ましい。
【0083】
当該ポリグリセロールは、公知のプロセス、例えば含浸、浸漬、注ぎ込み、滴下、噴霧、ミスト形成、ナイフコーティング、ブラッシングまたは印刷、例えばインクジェット、スクリーンまたはタンポン印刷によって、当該コンデンサ体に、より正確に言えば当該固体電解質の層に接触させられる。この接触させることは、工程c2)またはc3)で得られたコンデンサ体を、ポリグリセロールを含有する溶液の中へと浸漬すること、従って当該コンデンサ体にポリグリセロールを含浸させることより実施されることが好ましい。この溶液の中への浸漬またはこの溶液を用いた含浸は、1秒間〜120分の範囲、特に好ましくは10秒間〜60分の範囲、最も好ましくは30秒間〜15分の範囲の時間の間実施されることが好ましい。このポリグリセロールを含む溶液をコンデンサ体と、または固体電解質の層と接触させることは、例えば、増圧または減圧、振動、超音波または熱によって容易になる可能性がある。
【0084】
ポリグリセロールを溶解または分散させることができ、かつ当該コンデンサ体を含浸させるために用いることができる当業者に公知のすべての溶媒を、このポリグリセロールのための溶媒として使用することができる。水もしくはアルコールまたはそれらの混合物をこの溶媒として使用することが、本発明によれば特に好ましい。
【0085】
この含浸溶液の中のポリグリセロールの濃度は、いずれの場合もこの含浸溶液の総重量に基づき、例えば、1〜99重量%の範囲、好ましくは5〜95重量%の範囲、特に好ましくは10〜80重量%の範囲、最も好ましくは25〜60重量%の範囲にあることができる。
【0086】
溶媒およびポリグリセロールを含む溶液が、それぞれ工程d2)またはd3)で、およびさらなる工程e2)またはe3)で用いられる場合、溶媒は、当該コンデンサ体の中へと導入された溶液から少なくとも部分的に除去され、この除去が、好ましくは、コンデンサ体をこの溶液から取り出してコンデンサ体を乾燥することにより実施されることが好ましい。この乾燥は、好ましくは20℃〜200℃の範囲の、特に好ましくは50℃〜175℃の範囲の、最も好ましくは75℃〜150℃の範囲の温度で、1分間〜120分の範囲の、特に好ましくは5分間〜90分の範囲の、最も好ましくは10分間〜60分の範囲の時間の間、実施される。
【0087】
乾燥前に、ポリグリセロールとともにコンデンサ体の外部表面に付着している溶液を除去するために、このプロセス段階で、コンデンサ体を液体で、例えば水で、洗い流すことが有利であることが判明する可能性がある。
【0088】
工程c1)、d2)およびe2)、d3)およびe3)、d4)およびd5)の最後に、当該電解コンデンサは、当業者に公知の方法および様態によって仕上げることができる。タンタル電解コンデンサの場合には、独国特許出願公開第10 2005 043 828(A)号明細書から公知であるように、コンデンサ体を、例えばグラファイト層および銀層で覆うことができ、他方で、アルミニウム巻回型コンデンサの場合には、米国特許第7,497,879(B2)号明細書の教示に従って、コンデンサ体はアルミニウムビーカーの中に取り込まれ、封止用の検査グラス(sealing inspection glass)が取り付けられ、そして圧着によりしっかりと機械的に閉鎖される。次いでこのコンデンサは、エージングにより、公知の様式で誘電体の中の欠陥がないものにすることができる。
【0089】
本発明によれば、当該コンデンサが、活性化電圧の少なくとも50%の破壊電圧、および以下の特性のうちの少なくとも1つ、好ましくはそれらの各々を有することがさらに好ましい:
(α1)120℃で674時間コンデンサを保存した後に等価直列抵抗が、多くとも2倍しか増加しないこと;
(α2)120℃で674時間コンデンサを保存した後にキャパシタンスが、多くとも6%しか減少しないこと。
【0090】
上述の目的を成し遂げることに対する寄与は、上記のプロセスによって得ることができるコンデンサによってもなされる。特定の実施形態によれば、本発明に係るプロセスによって得ることができるコンデンサは、活性化電圧の少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%、の破壊電圧、および加えて、以下の特性のうちの少なくとも1つ、好ましくはすべてを有する:
(α1)120℃で674時間コンデンサを保存した後に等価直列抵抗が、多くとも2倍、特に好ましくは多くとも1.7倍、最も好ましくは多くとも1.3倍しか増加しないこと;
(α2)120℃で674時間コンデンサを保存した後にキャパシタンスが、多くとも6%、特に好ましくは多くとも4%、最も好ましくは多くとも2%しか減少しないこと。
【0091】
上述の目的を成し遂げることに対するさらなる寄与は、本発明に係るコンデンサまたは本発明に係るプロセスによって得ることができるコンデンサを含む電子回路によってもなされる。これに関して、例えば、コンピューター(デスクトップ、ラップトップ、サーバー)の中に、コンピューター周辺機器(例えばPCカード)の中に、携帯用電子装置、例えば携帯電話、デジタルカメラまたは娯楽用電子システムの中に、娯楽用電子機器用システムの中に、例えばCD/DVDプレーヤおよびコンピューターゲーム用コンソールの中に、ナビゲーションシステムの中に、電気通信設備の中に、家電製品の中に、医療技術、例えば除細動器用の医療技術の中に、再生可能エネルギーに基づく電力供給装置などの電力供給装置の中に、または例えばハイブリッド自動車もしくは電気自動車用などのカー・エレクトロニクスの中に、見出されるものなどの電子回路が言及されるべきである。しかしながら、本発明によれば、自動車用のハイブリッド推進手段または電気推進手段における電子回路の中の電子回路が特に好ましい。この用途では、コンデンサは、特に中間コンデンサ(DCリンクコンデンサ)としての役割を果たすことができる。
【0092】
上述の目的を成し遂げることに対する寄与は、電子回路における、特に、自動車用のハイブリッド推進手段または電気推進手段における電子回路における中間コンデンサとしての、本発明に係るコンデンサまたは本発明に係るプロセスによって得ることができるコンデンサの使用によってもなされる。
【0093】
上述の目的を成し遂げることに対する寄与は、導電性ポリマー、好ましくはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)と、少なくとも1つのポリグリセロールとを含む分散液であって、このポリグリセロールは、いずれの場合も当該ポリグリセロールの総重量に基づき50重量%超、好ましくは60重量%超、特に好ましくは50〜85重量%の範囲、さらにより好ましくは60〜85重量%の範囲の、トリグリセロールおよびテトラグリセロールの混合物を含有する分散液によってもなされる。本発明によれば、トリグリセロールおよびテトラグリセロールの混合物が、1:1.5〜1:5.5の範囲のテトラグリセロールに対するトリグリセロールの比を有することがさらにいっそう好ましい。本発明に係る特に好ましいポリグリセロールは、本発明に係るコンデンサに関連して初めに好ましいポリグリセロールとしてすでに言及されたポリグリセロールである。
【0094】
当該分散液が、当該分散液の総重量に基づき0.4〜40重量%、より好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは2〜20重量%、とりわけ好ましくは3〜15重量%、非常に好ましくは4〜13重量%のポリグリセロールを含むことが、好ましい。
【0095】
本発明は、これより、非限定的な図面および実施例を用いてより詳細に説明される。
【0096】
図1は、工程a1)〜c1)を含むプロセスによって得ることができる本発明に係るコンデンサの一部を通る断面の略図である。これは、通常はアルミニウムなどの多孔性電極材料2から作製される電極体1を有する。電極材料2の表面4の上に、誘電体3が薄層として形成され、その結果、未だ多孔性でありかつ電極材料2の電極体1および誘電体3を含むアノード体5が形成される。誘電体3の次に、任意にさらなる層の後に、(例えばPEDOT/PSS粒子を含む)固体電解質6の層が続き、これにより電極材料2の電極体1、誘電体3および固体電解質6を含むコンデンサ体7が形成される。固体電解質6の層はポリグリセロールを含有する。
【0097】
図2は、工程a2)〜e2)を含むプロセスによって得ることができる、本発明に係るコンデンサの一部を通る断面の略図である。コンデンサ体は、ここで、含浸剤8としてのポリグリセロールおよび溶媒を含む溶液で含浸され、その結果、溶媒が除去されたときに、このポリグリセロールは、細孔9を完全にまたは部分的に充填する。含浸剤8が、溶液としてではなく、それ自体が、細孔9の中へと導入されるということも、さらに同様に想定できる。
【0098】
図3は、実施例8で得られたコンデンサについての活性化電圧の測定のための測定曲線を示す。活性化電圧の測定についての試験方法に従う電流が、電圧に対してここにプロットされる。10で示される形成電圧と測定曲線11との比較から、活性化電圧を特徴付ける電流の増加が、コンデンサの製造の間に印加された形成電圧と一致することを見ることができる。
【0099】
測定方法
等価直列抵抗
等価直列抵抗(mΩ単位)は、LCRメーター(Agilent 4284A)を用いて、20℃で、100kHzで測定した。いずれの場合も10個のコンデンサを製造し、平均を求めた。
【0100】
キャパシタンス
キャパシタンス(マイクロファラド単位)は、LCRメーター(Agilent 4284A)を用いて、20℃で、120kHzで測定した。いずれの場合も10個のコンデンサを製造し、平均を求めた。
【0101】
破壊電圧
破壊電圧の測定のために、コンデンサに印加される電圧を0Vで始めて1V/sずつ増やし、同時にKeithley 199 System DMMを用いて電流を測定した。破壊電圧は、コンデンサの電流が1mAを超えるときの最初の電圧値として定義される。
【0102】
活性化電圧
9gのアジピン酸アンモニウム(99.0%、CAS 3385−41−9)を91gの水(蒸留水)に溶解させる。コンデンサを、封入せずに接触させ、半分までこのアジピン酸塩溶液の中に浸漬し、封入されていないコンデンサの細孔の中へのアジピン酸アンモニウムの浸透が、できるだけ完全なものとなるように、そのまま24時間放置した。この含浸の結果として、このアジピン酸塩溶液は、酸化物層の上に存在する層に、酸化物層に至るまで浸透する。次いで活性化電圧を測定する。活性化電圧は、この酸化物層が再び成長し始める電圧である。活性化電圧の測定のために、(破壊電圧の測定と同様にして)コンデンサに印加される電圧を0Vで始めて1V/sずつ増やし、同時にKeithley 199 System DMMを用いて電流を測定する。活性化電圧は、コンデンサの電流が5mAを超えるときの最初の電圧値として定義される。酸化物の形成の更新は、従来から、活性化電圧に到達すると開始する。従って、酸化物層の厚さは、主に、活性化電圧によって特徴付けられる。
【0103】
平均
本願明細書中では、特段の記載がない限り、平均は算術平均である。
【実施例】
【0104】
実施例1
868gの脱イオン水、ならびに330gの、70,000の平均分子量および3.8重量%の固形分含量を有するポリスチレンスルホン酸の水溶液を、撹拌機および内部温度計を具える2リットルの3つ口フラスコの中へと最初に導入した。反応温度を20〜25℃に保った。撹拌しながら5.1gの3,4−エチレンジオキシチオフェンを加えた。この溶液を30分間撹拌した。次いで0.03gの硫酸鉄(III)および9.5gの過硫酸ナトリウムを加え、この溶液をさらに24時間撹拌した。反応が終了した後、無機塩の除去のために、100mLの強酸性カチオン交換体および250mLの弱塩基性アニオン交換体を加え、この溶液をさらに2時間撹拌した。これらのイオン交換体を濾別した。このポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート分散液を、高圧ホモジナイザーを用いて、700barの圧力下で10回均質にした。その後この分散液を、2.5%の固形分含量まで濃縮し、次いで1,500barの圧力下でさらに5回、さらに均質にした。
【0105】
この分散液を、脱イオン水を加えることによって2.2%の濃度まで希釈し、次いでアンモニア水を用いてpH 3に調整した。
【0106】
実施例2
100gの実施例1から得た分散液を、10gのポリグリセロール(Mw=330、2% ジグリセロール含有量)(ソルベイ・ケミカルズ(SOLVAY CHEMICALS GmbH)製の「Polyglycerol−4」)とともに撹拌した。
【0107】
実施例3
100gの実施例1から得た分散液を、10gのポリグリセロール(Mw=270、29% ジグリセロール含有量)(ソルベイ・ケミカルズ(SOLVAY CHEMICALS GmbH)製の「Polyglycerol−3」)とともに撹拌した。
【0108】
実施例4
100gの実施例1から得た分散液を、5gのポリグリセロール(Mw=270、29% ジグリセロール含有量)(ソルベイ・ケミカルズ(SOLVAY CHEMICALS GmbH)製の「Polyglycerol−3」)とともに撹拌した。
【0109】
実施例5
80gの実施例1から得た分散液を、20gのポリグリセロール(Mw=270、29% ジグリセロール含有量)(ソルベイ・ケミカルズ(SOLVAY CHEMICALS GmbH)製の「Polyglycerol−3」)とともに撹拌した。
【0110】
実施例6
70gの実施例1から得た分散液を、30gのポリグリセロール(Mw=270、29% ジグリセロール含有量)(ソルベイ・ケミカルズ(SOLVAY CHEMICALS GmbH)製の「Polyglycerol−3」)とともに撹拌した。
【0111】
実施例7
65gの実施例1から得た分散液を、35gのポリグリセロール(Mw=270、29% ジグリセロール含有量)(ソルベイ・ケミカルズ(SOLVAY CHEMICALS GmbH)製の「Polyglycerol−3」)とともに撹拌した。
【0112】
比較例1
100gの実施例1から得た分散液を、10gのエチレングリコールとともに撹拌した。
【0113】
比較例2
100gの実施例1から得た分散液を、10gのポリエチレングリコール 400(シグマ・アルドリッチ(SIGMA ALDRICH))とともに撹拌した。
【0114】
実施例8
8.1. 酸化された電極体の製造
214Vで生成した、131mm×5mmの寸法を有する多孔性アルミニウム箔(アノード箔)および145mm×5mmの寸法を有する多孔性アルミニウム箔(カソード箔)に、各々、接続ワイヤを取り付け、次いで2枚のセルロースセパレーター紙と一緒に巻き、接着テープで固定した。これらの酸化された電極体20個を製造した。次いで、酸化された電極体のセパレーター紙を、300℃のオーブンの中で炭化させた。
【0115】
8.2 固体電解質の製造(10部のポリグリセロール、Mw 330)
当該酸化された電極体を、実施例2から得た分散液に、50mbar下の真空中で5分間、含浸させた。その後、120℃で20分間、次いで150℃で20分間、乾燥を実施した。この含浸および乾燥を再び実施した。いずれの場合も10個の上に記載したようにして製造したコンデンサを保存する前に、および120℃で450時間または674時間保存した後に測定した平均の電気値を、表1に示す。このようにして製造されたコンデンサの平均の活性化電圧は216Vである。
【0116】
実施例9:(10部のポリグリセロール、Mw 270)
コンデンサを実施例3から得た分散液に含浸したこと以外は実施例8と同様にして、コンデンサを製造した。このようにして製造したコンデンサの平均の電気値は、表1に見出すことができる。このようにして製造されたコンデンサの平均の活性化電圧は216Vである。
【0117】
比較例3:(ポリグリセロールを伴わないコンデンサ)
コンデンサを比較例1から得た分散液に含浸したこと以外は実施例8と同様にして、コンデンサを製造した。このようにして製造したコンデンサの平均の電気値は、表1に見出すことができる。このようにして製造されたコンデンサの平均の活性化電圧は216Vである。
【0118】
比較例4:(10部のポリエチレングリコール 400)
コンデンサを比較例2から得た分散液に含浸したこと以外は実施例8と同様にして、コンデンサを製造した。このようにして製造したコンデンサの平均の電気値は表1に、ならびに対応する破壊電圧、および活性化電圧に対するそれらの比(α3)は表2に見出すことができる。このようにして製造されたコンデンサの平均の活性化電圧は216Vである。
【0119】
【表1】

【0120】
表1から、PEDOT/PSS分散液にポリグリセロールを添加することで、コンデンサの破壊電圧(BDV)の著しい上昇が導かれるということがわかる。コンデンサを120℃で674時間保存した後のキャパシタンスの低下(ΔCAP)およびESRの増加(ΔESR)は、ともに小さく、それゆえ、ポリグリセロールを用いたコンデンサは、熱に対してより安定である。より低い含有量のジグリセロールとともにポリグリセロールを含有するコンデンサ(実施例8)は、より高いジグリセロール含有量を有するコンデンサ(実施例9)よりも、良好な高温での長期安定性を示す。
【0121】
【表2】

【0122】
表2から、ポリグリセロールを用いたコンデンサの破壊電圧は、ポリエチレングリコール(PEG)を用いたコンデンサの破壊電圧と同等であるが、エチレングリコールを含むコンデンサの破壊電圧よりも著しく良好であるということがわかる。
【0123】
実施例10:(50%濃度のポリグリセロール水溶液、Mw 270中での後含浸)
コンデンサを比較例3と同様にして製造し、次いでそれらのコンデンサを、50重量%のポリグリセロール(ソルベイ・ケミカルズ(SOLVAY CHEMICALS GmbH)製の「Polyglycerol−3」)を含有する水溶液の中に5分間含浸し、次いで120℃で30分間乾燥した。測定値を表3に要約する。このようにして製造されたコンデンサの平均の活性化電圧は216Vである。
【0124】
実施例11:(50%濃度のポリグリセロール水溶液、Mw 330中での後含浸)
コンデンサを比較例3と同様にして製造し、次いでそれらのコンデンサを、50重量%のポリグリセロール(ソルベイ・ケミカルズ(SOLVAY CHEMICALS GmbH)製の「Polyglycerol−4」)を含有する水溶液の中に5分間含浸し、次いで120℃で30分間乾燥した。測定値を表3に要約する。このようにして製造されたコンデンサの平均の活性化電圧は216Vである。
【0125】
比較例5(PEG後含浸)
コンデンサを比較例3と同様にして製造し、次いでそれらのコンデンサを、50重量%のポリエチレングリコール(シグマ・アルドリッチ(SIGMA ALDRICH)製の「PEG−400」)を含有する水溶液の中に5分間含浸し、次いで120℃で30分間乾燥した。測定値を表3に要約する。このようにして製造されたコンデンサの平均の活性化電圧は216Vである。
【0126】
【表3】

【0127】
表3から、(相対的に大量の)ポリグリセロールを後含浸の形態でコンデンサに導入すれば、破壊電圧をいっそうさらに高めることができるということがわかる。PEG−400を用いた比較例5は、ポリグリセロールの場合におけるよりも、長期安定性はかなり劣るということをさらに示す。
【0128】
比較例6
100gの実施例1から得た分散液を、10gのジグリセロール(ソルベイ・ケミカルズ(SOLVAY CHEMICALS GmbH))とともに撹拌した。
【0129】
実施例12
12.1 酸化された電極体の製造
36Vで形成した、200mm×3mmの寸法を有する多孔性アルミニウム箔(アノード箔)および210mm×3mmの寸法を有する多孔性アルミニウム箔(カソード箔)に、各々、接続ワイヤを取り付け、次いで2枚のセルロースセパレーター紙と一緒に巻き、接着テープで固定した。これらの酸化された電極体20個を製造した。次いで、酸化された電極体のセパレーター紙を、300℃のオーブンの中で炭化させた。
【0130】
12.2 固体電解質の製造(10部のポリグリセロール、Mw 270)
当該酸化された電極体を、実施例3から得た分散液に、15分間含浸させた。その後、120℃で20分間、次いで150℃で20分間、乾燥を実施した。この含浸および乾燥を再び実施した。
【0131】
上に記載したようにして製造したコンデンサの平均の電気値は、表4に見出すことができる。
【0132】
比較例7
コンデンサを比較例6から得た分散液に含浸したこと以外は実施例12と同様にして、コンデンサを製造した。このようにして製造したコンデンサの平均の電気値は、表4に見出すことができる。
【0133】
【表4】

【0134】
表4から、120℃で450時間後のキャパシタンスの低下は、ジグリセロールを用いた場合よりも、ポリグリセロールを用いた場合のほうが小さいということがわかる。それゆえ、ポリグリセロールを用いたコンデンサは、より良好な高温での長期安定性を示す。
【0135】
実施例13
13.1 酸化された電極体の製造
190Vで生成した、131mm×5mmの寸法を有する多孔性アルミニウム箔(アノード箔)および145mm×5mmの寸法を有する多孔性アルミニウム箔(カソード箔)に、各々、接続ワイヤを取り付け、次いで2枚のセルロースセパレーター紙と一緒に巻き、接着テープで固定した。これらの酸化された電極体20個を製造した。次いで、酸化された電極体のセパレーター紙を、300℃のオーブンの中で炭化させた。
【0136】
13.2 固体電解質の製造
当該酸化された電極体を、実施例5から得た分散液に、15分間、含浸させた。その後、120℃で20分間、次いで150℃で20分間、乾燥を実施した。この含浸および乾燥を再び実施した。
【0137】
上に記載したようにして製造したコンデンサの平均の電気値は、表5に見出すことができる。
【0138】
実施例14
コンデンサを実施例6から得た分散液に含浸したこと以外は実施例13と同様にして、コンデンサを製造した。このようにして製造したコンデンサの平均の電気値は、表5に見出すことができる。
【0139】
実施例15
コンデンサを実施例7から得た分散液に含浸したこと以外は実施例13と同様にして、コンデンサを製造した。このようにして製造したコンデンサの平均の電気値は、表5に見出すことができる。
【0140】
比較例8
コンデンサを比較例6から得た分散液に含浸したこと以外は実施例13と同様にして、コンデンサを製造した。このようにして製造したコンデンサの平均の電気値は、表5に見出すことができる。
【0141】
【表5】

【0142】
表5から、(比較的大量の)ポリグリセロールを分散液とともにコンデンサの中へと導入する場合は、破壊電圧は、添加によってまださらに高めることができるということは明らかである。ESRは、さらに、顕著に低下する。
【0143】
実施例16
分散液の調製を、実施例1にあるように繰り返したが、pHは、アンモニア水を用いてpH 7に調整した。
【0144】
実施例17
実施例16から得た分散液を使用したこと以外は、実施例2を繰り返した。
【0145】
実施例18
実施例16から得た分散液を使用したこと以外は、実施例3を繰り返した。
【0146】
実施例19
コンデンサを実施例17から得た分散液に含浸したこと以外は実施例8と同様にして、コンデンサを製造した。このようにして製造したコンデンサの平均の電気値は、表6に見出すことができる。
【0147】
実施例20
コンデンサを実施例18から得た分散液に含浸したこと以外は実施例8と同様にして、コンデンサを製造した。このようにして製造したコンデンサの平均の電気値は、表6に見出すことができる。
【0148】
実施例21
コンデンサを実施例4から得た分散液に含浸したこと以外は実施例8と同様にして、コンデンサを製造した。このようにして製造したコンデンサの平均の電気値は、表6に見出すことができる。
【0149】
【表6】

【符号の説明】
【0150】
1 電極体
2 電極材料
3 誘電体
4 表面
5 アノード体
6 固体電解質
7 コンデンサ体
8 含浸剤
9 細孔
10 形成電圧
11 活性化電圧の測定のための測定曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極材料(2)の電極体(1)を含むコンデンサであって、誘電体(3)はこの電極材料(2)の表面(4)を少なくとも部分的に覆ってアノード体(5)を形成し、
前記アノード体(5)は、導電性ポリマーを含む固体電解質(6)で少なくとも部分的にコーティングされ、
前記コンデンサは少なくとも1つのポリグリセロールを含み;
前記コンデンサ中のポリグリセロールの重量による量(Mpg)および前記コンデンサ中の導電性ポリマーの重量による量(Mポリマー)の比については:
pg/Mポリマー>0.15
であり、前記ポリグリセロールは、前記ポリグリセロールの総重量に基づき50重量%超のトリグリセロールおよびテトラグリセロールの混合物を含有する、コンデンサ。
【請求項2】
前記Mpg/Mポリマー比について:
pg/Mポリマー>0.2
である、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記Mpg/Mポリマー比について:
pg/Mポリマーは0.2〜80の範囲にある、
請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記Mpg/Mポリマー比について:
pg/Mポリマーは2.5〜30の範囲にある、
請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記コンデンサはアルミニウムコンデンサである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記導電性ポリマーはポリチオフェンを含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記導電性ポリマーは、一般式(I)または(II)の繰り返し単位を有するポリチオフェンを含み、
【化1】

式中、
Aは、任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカルを表し、
Rは、直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC〜C18−アルキルラジカル、任意に置換されたC〜C12−シクロアルキルラジカル、任意に置換されたC〜C14−アリールラジカル、任意に置換されたC〜C18−アラルキルラジカル、任意に置換されたC〜C−ヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカルを表し、
xは、0〜8の整数を表し、
複数のラジカルRがAに結合されている場合、それらは同一であってもよいし異なっていてもよい、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコンデンサ。
【請求項8】
前記ポリチオフェンはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項6または請求項7に記載のコンデンサ。
【請求項9】
前記導電性ポリマーはポリアニオンを含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のコンデンサ。
【請求項10】
前記ポリアニオンはポリスチレンスルホン酸である、請求項9に記載のコンデンサ。
【請求項11】
前記導電性ポリマーは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)およびポリスチレンスルホン酸の錯体を含む、請求項6から請求項10のいずれか1項に記載のコンデンサ。
【請求項12】
コンデンサの製造のためのプロセスであって、
a1)電極材料(2)の電極体(1)を準備する工程であって、誘電体(3)は、この電極材料(2)の1つの表面(4)を少なくとも部分的に覆ってアノード体(5)を形成する工程と;
b1)導電性ポリマーと、
少なくとも1つのポリグリセロールと、
分散剤と
を含む分散液を、前記アノード体(5)のうちの少なくとも一部の中へと導入する工程と;
c1)前記分散剤を少なくとも部分的に除去して、コンデンサ体を得る工程とを;
または
a2)電極材料(2)の電極体(1)を準備する工程であって、誘電体(3)は、この電極材料(2)の1つの表面(4)を少なくとも部分的に覆ってアノード体(5)を形成する工程と;
b2)導電性ポリマーと、
分散剤と
を含む分散液を、前記アノード体(5)のうちの少なくとも一部の中へと導入する工程と;
c2)前記分散剤を少なくとも部分的に除去して、コンデンサ体を得る工程と;
d2)含浸剤(8)としての少なくとも1つのポリグリセロールを、前記コンデンサ体と接触させる工程とを;
または
a3)電極材料(2)の電極体(1)を準備する工程であって、誘電体(3)は、この電極材料(2)の1つの表面(4)を少なくとも部分的に覆ってアノード体(5)を形成する工程と;
b3)導電性ポリマーと、
少なくとも1つのポリグリセロールと、
分散剤と
を含む分散液を、前記アノード体(5)のうちの少なくとも一部の中へと導入する工程と;
c3)前記分散剤を少なくとも部分的に除去して、コンデンサ体を得る工程と;
d3)含浸剤(8)としての少なくとも1つのポリグリセロールを、前記コンデンサ体と接触させる工程と;
を含み、
前記ポリグリセロールは、前記コンデンサ中のポリグリセロールの重量による量(Mpg)および前記コンデンサ中の導電性ポリマーの重量による量(Mポリマー)の比が:
pg/Mポリマー>0.15
であるような量で用いられ、
前記ポリグリセロールは、前記ポリグリセロールの総重量に基づき50重量%超のトリグリセロールおよびテトラグリセロールの混合物を含有する、プロセス。
【請求項13】
前記ポリグリセロールは、前記Mpg/Mポリマー比について:
pg/Mポリマー>0.2
であるような量で用いられる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ポリグリセロールは、前記Mpg/Mポリマー比について:
pg/Mポリマーは0.2〜80の範囲にある
ような量で用いられる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ポリグリセロールは、前記Mpg/Mポリマー比について:
pg/Mポリマーは2.5〜30の範囲にある
ような量で用いられる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項16】
前記導電性ポリマーはポリチオフェンを含む、請求項12から請求項15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記導電性ポリマーは、一般式(I)または(II)の繰り返し単位を有するポリチオフェンを含み
【化2】

式中、
Aは、任意に置換されたC〜C−アルキレンラジカルを表し、
Rは、直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC〜C18−アルキルラジカル、任意に置換されたC〜C12−シクロアルキルラジカル、任意に置換されたC〜C14−アリールラジカル、任意に置換されたC〜C18−アラルキルラジカル、任意に置換されたC〜C−ヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカルを表し、
xは、0〜8の整数を表し、
複数のラジカルRがAに結合されている場合、それらは同一であってもよいし異なっていてもよい、
請求項12から請求項16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記ポリチオフェンはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項16または請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記導電性ポリマーはポリアニオンを含む、請求項12から請求項18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記ポリアニオンはポリスチレンスルホン酸である、請求項16から請求項19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記導電性ポリマーは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)およびポリスチレンスルホン酸の錯体を含む、請求項16から請求項20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記含浸剤(8)は、工程d2)およびd3)において、溶媒および前記含浸剤(8)を含む溶液の形態で用いられ、さらなる工程e2)またはe3)において、前記溶媒は、前記電極体(1)から少なくとも部分的に除去される、請求項12から請求項21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項23】
請求項12から請求項22のいずれか1項に記載のプロセスによって得ることができるコンデンサ。
【請求項24】
前記コンデンサは、活性化電圧の少なくとも50%の破壊電圧、および以下の特性:
(α1)120℃で674時間コンデンサを保存した後に等価直列抵抗が、多くとも2倍しか増加しないこと;
(α2)120℃で674時間コンデンサを保存した後にキャパシタンスが、多くとも6%しか減少しないこと
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1から請求項11および請求項23のいずれか1項に記載のコンデンサ。
【請求項25】
請求項1から請求項11、請求項23および請求項24のいずれか1項に記載のコンデンサを含む電子回路。
【請求項26】
電子回路における、請求項1から請求項11、請求項23および請求項24のいずれか1項に記載のコンデンサの使用。
【請求項27】
導電性ポリマー、好ましくはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)と、少なくとも1つのポリグリセロールとを含む分散液であって、前記ポリグリセロールは、いずれの場合も前記ポリグリセロールの総重量に基づき、50重量%超のトリグリセロールおよびテトラグリセロールの混合物を含有する、分散液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−186452(P2012−186452A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−23877(P2012−23877)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【出願人】(511221998)ヘレウス プレシャス メタルズ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (8)