説明

PET装置及びその検出器ユニット

【目的】 ダイレクトプレーンとクロスプレーンとで均一な光子対検出感度が得られることを課題とする。
【構成】 複数の検出器52を被検体体軸CLの回りにリング状に周設した厚さwの検出器リングを、該体軸方向に複数積層してなるリング状の検出器モジュール51と、検出器モジュール51の内側に介在し、被検体体軸と略垂直な方向に飛来するγ線をコリメートするための所定のコリメート長を有する平板を該体軸の方向にピッチwで螺旋状に周設してなるセプタ53と、検出器52に入射したγ線の入射位置を特定可能な検出回路42と、被検体を挟み相対向する位置に設定した2つの検出領域で略同時に検出された一対の検出信号を抽出する同時判定抽出部33あって、一方の検出領域における体軸方向の両境界面がセプタの境界面と一致するように設定するもの、とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPET(Positron Emission Tomography)装置及びその検出器ユニットに関し、更に詳しくは、PET装置の2次元スキャン時における検出プレーン感度の均一性を改善したPET装置及びその検出器ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
PET装置は、被検体内に取り込まれた放射性医薬品(ポジトロン核種)に含まれる陽電子(positoron)が消滅するときに発生する1対のγ線(2個のフォトン)を検出して画像化する装置である。複数の検出器リングを有する多断層型PET装置で2次元スキャンを行う場合には、各検出器リングの検出面に斜めから入射するような放射線を除去するための遮蔽盤(セプタ又はスライスコリメータとも呼ばれる)が各検出器リングの境界面上に挿入される。この場合の検出断層面としては、同一検出器リング内での同時計数データを断層データとして収集するダイレクトプレーンと、隣り合うリング間での同時計数データを収集するクロスプレーンとがあり、一般に、検出器リング数がn個のPET装置では2n−1プレーンの断層データを収集できる。
【0003】
従来は、同時検出した1対の光子検出器の受光面を互いに結ぶ直線群の内、何れのスライスコリメータとも交わらない場合の同時計数情報を蓄積・生成した信号サイノグラムと、何れかがスライスコリメータと交わる同時計数情報を蓄積・生成した散乱サイノグラムとを用い、散乱サイノグラムにより散乱成分の影響を補正した信号サイノグラムに基づいて画像再構成することにより、良好な光子対検出感度を保ちつつ散乱線の影響を適切に補正するPET装置が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−330671(要約,図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の多断層型検出器ユニットは、各検出器リングの境界面上に同じくリング状のセプタを配置したものであるため、ダイレクトプレーンとクロスプレーンとでは線源の検出面に対する立体角が異なってしまい、両者間に感度差が生じる不都合があった。以下、この点を図面を参照して具体的に説明する。
【0005】
図11,図12は従来技術を説明する図(1),(2)であり、図11は従来の典型的な検出器ユニット80の斜視図を示している。図において、この検出器ユニット80は、前後2枚のシールドコリメータ84a,84bによって挟まれた検出器モージュール81を備えており、該検出器モージュール81は、複数の検出器リングR1〜R5が被検体体軸CLの方向に積層されたものとなっている。各検出器リングR1〜R5は被検体体軸CLの回りの円周上に設けられた多数の検出器82(但し、本明細書では説明の便宜上検出器ブロック82と称する)を備えており、各検出器ブロック82は、BGO等からなる複数のシンチレータ82aと複数の光電子増倍管(PMT)82bとを組み合わせた所謂シンチレーション検出器からなっている。この検出器モジュール81の内側から飛来した高エネルギー(511keV)のγ線をシンチレータ82aで可視光に変換し、該可視光をPMT82bて電気信号に変換する。2Dスキャンを行う場合には、検出器モジュール81の内側に各リング状のセプタ83が設けられる。
【0006】
挿入図(a)に検出器ユニット80のa−a断面図を示す。従来のセプタ83は各検出器リングR1〜R5の境界面上に配置された各リング状の円盤からなっており、各円盤は
、鉛やタングステン等の原子番号の大きい部材からなると共に、各円盤に対して斜めに入射するようなγ線を遮蔽することにより、境界面に対して略平行に入射するγ線のみを検出器ブロック82の側に通過させるコリメート作用を有する。これにより、各検出器リングR1〜R5は体軸CLと略垂直な方向から飛来するγ線のみを検出(2Dスキャン)することになる。なお、3Dスキャンを行う場合は、このようなセプタを備えない。
【0007】
図12は従来のPET装置による検出プレーン−感度特性を説明する図で、図12(a)に検出器ユニット80の正面図を示す。検出器モジュール81は被検体体軸CLを中心とする円周上に配列された多数の検出器ブロック82を備えており、本明細書では説明の便宜上、各検出器ブロック82の検出信号は検出チャネルCH0〜CH359に対応している。
【0008】
図12(b)に検出器ユニット80のa−a断面図を示す。各検出器リングR1〜R5の境界面上に直径方向の長さdの円盤が間隔wで配列されている。2Dスキャンで収集される断層データの検出プレーンには、同一リング内における同時計数イベントを収集するダイレクトプレーンP1,P3,…,P9と、隣り合うリング間における同時計数イベントを収集するクロスプレーンP2,P4,…,P8とが存在し、一般に、n個の検出器リングでは(2n−1)プレーン分の断層データを収集できる。
【0009】
今、例えばダイレクトプレーンP3に着目すると、体軸CL上で平面の立体角α以内の方向に射出された各一対のγ線(L1a,L1b),(L2a,L2b)はセプタ83に遮断されることなく検出器リングR2のCH0とCH180とで同時検出されるが、αよりも大きな角度で射出された一対のγ線L3はリングR2によっては同時検出されない。また、立体角α以内であっても体軸上の点P3よりずれた位置から射出された一対のγ線L4も同じくリングR2では同時検出されない。以上のことは他のダイレクトプレーンP1,P5等についても同様である。そこで、検出器リングRの内径をD、検出器リングRの幅(即ち、セプタの間隔)をwとすると、ダイレクトプレーンについての平面の立体角αは(1)式、
【0010】
【数1】

【0011】
で表される。
【0012】
次に、クロスプレーンP8に着目すると、体軸CL上で平面の立体角β以内の方向に射出された各一対のγ線L5,L6はセプタ83に邪魔されることなく各検出器リングR4,R5のCH0とCH180とにより同時検出され、このクロスプレーンについての平面のの立体角βは(2)式、
【0013】
【数2】

【0014】
で表される。
【0015】
上記立体角αとβを比較すると、w/Dが小さいような実用的な範囲では、αとβとの間に略2倍の差があり、このためダイレクトプレーンとクロスプレーンとでは同時検出される線量が異なり、よって光子対検出感度が大幅に異なる不都合があった。
【0016】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的とする所は、ダイレクトプレーンとクロスプレーンとで均一な光子対検出感度が得られるPET装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題は例えば図2,図3の構成により解決される。即ち、本発明(1)のPET装置は、被検体内に取り込まれた放射性医薬品に含まれるポジトロンが消滅する際に発生する1対のγ線を検出して画像化するPET装置において、所定サイズの検出面を有する複数の検出器52を被検体体軸CLの回りにリング状に周設した厚さwの検出器リングを、該体軸方向に複数積層してなるリング状の検出器モジュール51と、前記検出器モジュール51の内側に介在し、被検体体軸と略垂直な方向に飛来するγ線をコリメートするための所定のコリメート長を有する平板を該体軸の方向にピッチwで螺旋状に周設してなるセプタ53と、前記検出器52の検出信号に基づきその検出面に入射したγ線の入射位置を特定可能な検出回路42と、被検体を挟み相対向する位置に設定した2つの検出領域で略同時に検出された一対の検出信号を抽出する同時判定抽出部33あって、前記一方の検出領域における体軸方向の両境界面がセプタの境界面と一致するように設定するもの、とを備えるものである。
【0018】
本発明(1)では、リング状の検出器モジュール51の内側に螺旋状のセプタ53を備える構成により、被検体体軸上のどの検出プレーンで見ても、一方の検出領域をその体軸方向の両境界面がセプタの境界面と一致するように設定できる。これを図6に従って具体的に説明する。
【0019】
例えばダイレクトプレーンP3において、一方の検出領域を検出器リングR2のチャネルCH0とすると、その体軸方向の両境界面はセプタ53の境界面と一致しており、該検出領域に混入するような散乱線を有効に遮蔽できる。一方、その対向面領域であるチャネルCH180の両境界面にはセプタ53が存在しないが、前記一方の検出領域と略同時に検出される一対の検出信号を抽出することにより、チャネルCH180側の両境界面にもセプタ53が存在するのと同様の効果が得られる。このことは他のダイレクトプレーンP1,P5,P7等についても同様である。
【0020】
次にクロスプレーンP6において、一方の検出領域を検出器リングR3のチャネルCH180後半部及び検出器リングR4のチャネル180前半部とすると、その体軸方向の両境界面はセプタ53の境界面と一致しており、該検出領域に混入するような散乱線を有効に遮蔽できる。一方、その対向面領域である検出器リングR3のチャネルCH0後半部及び検出器リングR4のチャネル0前半部の両境界面にはセプタ53が存在しないが、前記一方の検出領域と略同時に検出される一対の検出信号を抽出することにより、チャネルCH0側の両境界面にもセプタ53が存在するのと同様の効果が得られる。このことは他のクロスプレーンP2,P4,P8についても同様である。以上からして、ダイレクトプレーン及びクロスプレーンの平面的な立体角は共にαとなり、これにより体軸方向の全プレーンで均一な光子対検出感度が得られる。
【0021】
本発明(2)では、上記本発明(1)において、同時判定抽出部は、前記一方の検出領域に対向する他方の検出領域で検出された信号のうち、該一方の検出領域で検出された信号と略同時に検出された信号のみを抽出するものである。
【0022】
本発明(2)によれば、他方の検出領域で検出された信号のうち、一方の検出領域で検出された信号と略同時に検出された信号のみを抽出する簡単な方法により、画像再構成に有用な一対の検出信号を効率よく抽出できる。
【0023】
本発明(3)では、上記本発明(1)において、検出器モジュールの内側にセプタを挿抜自在に設けたものである。これによって2次元スキャンのみならず3次元スキャンを容易に行える。
【0024】
上記の課題は例えば図2,図8の構成により解決される。即ち、本発明(4)のPET装置は、被検体内に取り込まれた放射性医薬品に含まれるポジトロンが消滅する際に発生する1対のγ線を検出して画像化するPET装置において、所定サイズの検出面を有する複数の検出器52を被検体体軸CLの回りにピッチwで螺旋状に周設してなる螺旋状の検出器モジュール55と、前記検出器モジュール55の内側に介在し、被検体体軸と略垂直な方向に飛来するγ線をコリメートするための所定のコリメート長を有する平板を該体軸の方向にピッチwで螺旋状に周設してなるセプタ53と、前記検出器52の検出信号に基づきその検出面に入射したγ線の入射位置を特定可能な検出回路42と、被検体を挟み相対向する位置に設定した2つの検出領域で略同時に検出された一対の検出信号を抽出する同時判定抽出部33あって、前記一方の検出領域における体軸方向の両境界面がセプタの境界面と一致するように設定するもの、とを備えるものである。
【0025】
本発明(4)では、螺旋状の検出器モジュール55の内側に螺旋状のセプタ53を備える構成により、被検体体軸上のどの検出プレーンで見ても、一方の検出領域をその体軸方向の両境界面がセプタの境界面と一致するように設定できる。しかも、該一方の検出領域を常に検出器52の検出面と一致させることができるため、同時検出処理が簡単化・高信頼性化する効果がある。これを図9に従って具体的に説明する。
【0026】
例えばダイレクトプレーンP3において、一方の検出領域を検出器リングR2のチャネルCH0とすると、その体軸方向の両境界面はセプタ53の境界面と一致しており、該検出領域に混入するような散乱線を有効に遮蔽できる。一方、その対向面領域である検出器リングR1のチャネルCH180後半部及び検出器リングR2のチャネルCH180前半部からなる検出領域の両境界面上にはセプタ53が存在しないが、前記一方の検出領域と略同時に検出される一対の検出信号を抽出することにより、チャネルCH180側の両境界面にもセプタ53が存在するのと同様の効果が得られる。このことは他のダイレクトプレーンP1,P5,P7等についても同様である。
【0027】
次にクロスプレーンP6において、一方の検出領域を検出器リングR3のチャネルCH180とすると、その体軸方向の両境界面はセプタ53の境界面と一致しており、該検出領域に混入するような散乱線を有効に遮蔽できる。一方、その対向面領域である検出器リングR3のチャネルCH0後半部及び検出器リングR4のチャネル0前半部からなる検出領域の両境界面にはセプタ53が存在しないが、前記一方の検出領域と略同時に検出される一対の検出信号を抽出することにより、チャネルCH0側の両境界面にもセプタ53が存在するのと同様の効果が得られる。このことは他のクロスプレーンP2,P4,P8についても同様である。以上からして、ダイレクトプレーン及びクロスプレーンの平面的な立体角は共にαとなり、これにより体軸方向の全プレーンで均一な光子対検出感度が得られる。
【0028】
本発明(5)では、上記本発明(4)において、同時判定抽出部は、前記一方の検出領域に対向する他方の検出領域で検出された信号のうち、該一方の検出領域で検出された信号と略同時に検出された信号のみを抽出するものである。
【0029】
本発明(5)によれば、他方の検出領域で検出された信号のうち、一方の検出領域で検出された信号と略同時に検出された信号のみを抽出する簡単な方法により、画像再構成に有用な一対の検出信号を効率よく抽出できる。
【0030】
本発明(6)では、上記本発明(4)において、検出器モジュールの内側にセプタを挿抜自在に設けたものである。これによって2次元スキャンのみならず3次元スキャンを容易に行える。
【0031】
本発明(7)の検出器ユニットは、例えば図3に示す如く、被検体内に取り込まれた放射性医薬品に含まれるポジトロンが消滅する際に発生する1対のγ線を検出して画像化するPET装置の検出器ユニットにおいて、所定サイズの検出面を有する複数の検出器52を被検体体軸CLの回りにリング状に周設した厚さwの検出器リングを、該体軸方向に複数積層してなるリング状の検出器モジュール51と、前記検出器モジュール51の内側に介在し、被検体体軸と略垂直な方向に飛来するγ線をコリメートするための所定のコリメート長を有する平板を該体軸の方向にピッチwで螺旋状に周設してなるセプタ53とを備えるものである。
【0032】
また本発明(8)の検出器ユニットは、例えば図8に示す如く、被検体内に取り込まれた放射性医薬品に含まれるポジトロンが消滅する際に発生する1対のγ線を検出して画像化するPET装置の検出器ユニットにおいて、所定サイズの検出面を有する複数の検出器52を被検体体軸CLの回りにピッチwで螺旋状に周設してなる螺旋状の検出器モジュール55と、前記検出器モジュール55の内側に介在し、被検体体軸と略垂直な方向に飛来するγ線をコリメートするための所定のコリメート長を有する平板を該体軸の方向にピッチwで螺旋状に周設してなるセプタ53とを備えるものである。
【発明の効果】
【0033】
以上述べた如く本発明によれば、ダイレクトプレーンとクロスプレーンとで感度差及び散乱線混入度の差が無くなり、体軸方向の感度均一性が大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、添付図面に従って本発明に好適なる複数の実施の形態を詳細に説明する。なお、全図を通して同一符号は同一又は相当部分を示すものとする。図1は実施の形態によるPET装置の外観図であり、この装置は、γ線の検出器ユニットにより被検体断層像の作成に必要な投影データを収集するガントリ40と、被検体を天板21に搭載してガントリの空洞部内に移動させる撮影テーブル20と、ガントリ40で収集した投影データに基づき被検体のPET断層像を再構成するデータ処理部30と、これら各部の遠隔制御を行うと共に、技師等が操作をするコンソール部10とを備える。
【0035】
図2に実施の形態によるPET装置の要部構成図を示す。ガントリ40はγ線の検出器ユニット50を備えており、中央の空洞部(ボア)に被検体100が搬入される。被検体内部で発生した各一対のγ線のうち、セプタ53で遮断されないものは周囲の検出器52に入射して可視光に変換されると共に、PMTで電気信号に変換され、一対の出力パルスが形成される。
なお、本明細書では、一例の検出器52の部分を他の各種構成要素(検出器ユニット50,検出器モジュール51,検出器リングR1〜R5等)との間で明瞭に呼び分けるため、以後は説明の便宜上、検出器52を検出器ブロック52と称し、その検出面をブロック検出面と称する。但し、本発明の検出器52はブロック形状のものに限定されない。
そして、上記形成された一対の検出パルスは各検出器ブロック52の対応に設けられた前処理回路(ACEM)42に入力し、ここで、γ線の検出位置(検出器ブロック52のチャネル番号CH及び該ブロック内の検出位置情報),検出タイミング及び検出エネルギ
ー等からなる所定の信号が生成される。以下に、検出器ユニット50と前処理回路42の一例を詳細に説明する。
【0036】
図3は第1の実施の形態による検出器ユニット50の外観斜視図であり、リング状の検出器モジュール51の内側に螺旋状のセプタ53を備える場合を示している。この検出器ユニット50は前後2枚のシールドコリメータ54a,54bに挟まれたリング状の検出器モージュール51を備え、該検出器モージュール51は複数の検出器リングR1〜R5が被検体体軸CLの方向に積層されたものとなっている。各検出器リングR1〜R5は、被検体体軸CLの回りの円周上に配列された多数の検出器ブロック52を備えており、各検出器ブロック52は検出器モジュール51の内側から飛来した高エネルギー(511keV)のγ線を検出する。更に、このリング状検出器モジュール51の内側には、原子番号の大きい部材(鉛,タングステン等)により形成された螺旋状の遮蔽盤(セプタ)53が設けられている。
【0037】
挿入図(a)に検出器ユニット50のa−a断面図を示す。セプタ53は検出器リング幅と同一のピッチ幅で螺旋状に構成されているため、その一方の側(例えば図の上面側)では、各セプタ盤面が検出器リングR1〜R5の丁度境界面上に配置されるが、その対向位置(図の下面側)では、各セプタ盤面が検出器リングR1〜R5の丁度中間位置に配置されており、このようなセプタ盤面に対して略平行に入射するγ線のみを検出器ブロック52の側に通過させる所謂コリメート作用を有する。
【0038】
図4は第1の実施の形態による検出器ブロック52を説明する図であり、図4(a)に検出器ブロック52の外観斜視図を示す。検出器ブロック52は、任意複数のシンチレータ52aと光電子増倍管(PMT)52bとの組み合わせをマトリクス状に配置した構造を備えるが、図4(a)は、説明の簡単のため、2×2の合計4つの検出系A〜Dが存在する場合を示している。
【0039】
図4(b)に検出器ブロック52の一側面図を示す。図の下側から入射したγ線はシンチレータ52aで可視光に変換され、該光が放射されて複数のPMT52bに入射し、各PMT52bからは入射光量に応じた検出信号B,Dが出力される。検出信号A,Cについても同様である。前処理回路42は検出信号A〜Dに基づき検出器ブロック52のどのブロック検出面位置にγ線が入射したのかを特定するための信号を生成する。
【0040】
図5は第1の実施の形態による前処理回路42を説明する図であり、図5(a)に前処理回路42のブロック図を示す。図において、エッジ検出回路(EGD)43は検出信号A〜Dの合成信号に基づき信号発生のエッジを検出し、同タイミングにエッジパルス信号EPを出力する。また、前処理回路42は本回路が接続する検出器ブロック52に固有のブロックアドレス情報BAを生成する。更に、エネルギーエンコーダ(EE)44は検出信号A〜Dの総和(A+B+C+D)を増幅かつA/D変換してエネルギー信号Eを生成する。また、X位置エンコーダ(XE)45は検出信号A,Cの和(A+C)を増幅・A/D変換して当該検出ブロック中におけるX軸方向の検出位置を示すための信号Xを生成する。そして、Z位置エンコーダ(ZE)46は検出信号C,Dの和(C+D)を増幅・A/D変換して当該検出ブロック中におけるZ軸(体軸)方向の検出位置を示すための信号Zを生成する。これらの各信号EP,BA,E,X,Zはパラレル−シリアル変換器(P/S)47によりシリアル信号に変換され、リアルタイムでデータ処理部30のアドレス生成回路32に送られる。
【0041】
図5(b)にブロック検出面中のγ線入射位置を特定する一例の方法を示す。この処理は、各前処理回路42の対応に設けられた各アドレス生成回路(DCEM)32で行われる。図において、ブロック検出面中のX軸方向に対応するロウアドレスROWは例えば(
3)式、
【0042】
【数3】

【0043】
により求められ、またZ軸(体軸)方向に対応するカラムアドレスCOLは例えば(4)式、
【0044】
【数4】

【0045】
により求められる。各アドレスROW,COLは検出エネルギーEによって0〜1の範囲内の値に正規化されており、検出器ブロック中のγ線入射位置を所要精度で特定するのに十分な分解能を持っている。
【0046】
図2に戻り、ガントリ40の各前処理回路42で生成された信号は、対応する各アドレス生成回路(DCEM)32で所定のアドレス信号POSやγ線が検出されたタイミングを表すタイムスタンプ信号TS等に変換される。アドレス信号POSには検出器ブロック52のブロックアドレス信号BA、該ブロック中におけるγ線の検出位置を表すアドレス信号ROW,COLが含まれる。同時判定抽出部33は被検体100を挟んで相対向する(即ち、2つのγ線の飛跡の結合が直線をなすような)2つの検出チャネルi,jの各検出信号(POSi,TSi),(POSj,TSj)を比較し、所定のゲート時間幅内に含まれるような同時条件を満足するアドレス信号対PAIRを抽出して、メモリ34に蓄積する。
【0047】
挿入図(a)にメモリ34に蓄積された2次元投影データ(サイノグラム)の例を示す。横軸は検出機器ブロックのチャネル番号CH(ブロック内アドレスROW,COLを含む)、縦軸は被検体の投影角度θ、奥行きはダイレクト及びクロスの検出プレーン番号Pである。CPU35はメモリ34に蓄積された投影データに基づいて被検体のPET断層像を例えばバックプロジェクション法等により再構成し、コンソール10に表示する。次に第1の実施の形態による検出プレーン−感度特性を具体的に説明する。
【0048】
図6,図7は第1の実施の形態によるPET装置の検出プレーン−感度特性を説明する図(1),(2)であり、図6は検出器モジュール51をCH0とCH180を含む断面で見た場合の検出動作を示している。図6(a)に検出器ユニットの正面図、図6(b)に検出器ユニットのa−a断面図を示す。本第1の実施の形態ではリング状検出器モジュール51の内側に螺旋状のセプタ53を挿入したため、例えば検出器モジュール51の上側(CH0側)では各検出器リングR1〜R5の丁度境界面上に直径方向の長さdのセプタ盤が間隔wで配列され、一方、該モジュール51の下側(CH180側)では各検出器リングR1〜R5の丁度中心面上に同じく長さdのセプタ盤が間隔wで配列される関係となる。係る構成により、従来と同様に、同一リング内の同時計数イベントを収集するダイレクトプレーンP1,P3,…,P9と、隣り合うリング間の同時計数イベントを収集するクロスプレーンP2,P4,…,P8における各計数を考える。
【0049】
例えばダイレクトプレーンP3のデータ収集では、他方の検出領域(検出器リングR2のCH180)で検出されるγ線のうち、これに対向する一方の検出領域(リングR2のCH0)で検出されるγ線との間で同時検出条件を満足する一対のγ線のみを抽出する。こうすれば、体軸上の点P3で平面の立体角α以内の方向に射出された各一対のγ線(L1a,L1b),(L2a,L2b)等は、セプタ53に遮断されることなく、リングR2のCH0とCH180とで同時検出されるが、それよりも大きな角度で射出された一対のγ線L3はリングR2では同時検出されない。また、立体角αであっても点P3よりずれた位置から射出された一対のγ線L4a,L4bもリングR2によっては同時検出されない。
【0050】
この場合に、リングR2のCH0に入射するγ線については、該CH0検出面の両端部に位置する各セプタ53によって十分にコリメートされるため、散乱線の混入をその検出時点で有効に防止できる。一方、リングR2のCH180に入射するγ線については、セプタ53が検出面の中間点に位置するため、その検出時点では散乱線の混入を除去できないが、上記リングR2のCH0に入射するγ線との間で同時検出条件を満足するもののみを抽出することにより、同様にして散乱線の混入を有効に防止できる。以上からして、ダイレクトプレーンP3における検出の立体角はαであり、該立体角に応じた検出感度が得られる。このことは他のダイレクトプレーンP1,P5,P7等についても同様である。
【0051】
次に例えばクロスプレーンP6のデータ収集では、他方の検出領域(検出器リングR3のCH0後半部w/2及びリングR4のCH0前半部w/2)で検出されるγ線のうち、これに対向する一方の検出領域(リングR3のCH180後半部w/2及びリングR4のCH180前半部w/2)で検出されるγ線との間で略同時に検出されるもののみを抽出する。こうすれば、体軸上の点P6より平面の立体角α以内の方向に射出された各一対のγ線L5,L6等は、セプタ53に遮断されることなく、リングR3のCH0後半部及びリングR4のCH0前半部と、リングR3のCH180後半部及びリングR4のCH180前半部とからなる各検出面で略同時に検出されるが、それよりも大きな角度で射出された一対のγ線や、体軸上の点P6よりずれた位置から射出された一対のγ線については該検出面によっては同時検出されない。
【0052】
この場合に、上記リングR3,R4のCH180側に入射するγ線については、該CH180側の検出領域の両端部に位置する各セプタ53によって十分にコリメートされるため、散乱線の混入をその検出時点で有効に防止できる。一方、上記リングR3,R4のCH0側に入射するγ線については、セプタ53が該CH0側の検出領域の中間点に位置するため、その検出時点では散乱線の混入を除去できないが、上記CH180側に入射するγ線との間で略同時に検出されるもののみを抽出することにより、同様にして散乱線の混入を有効に防止できる。以上からして、クロスプレーンP6における検出の立体角もαであり、このことは他のクロスプレーンP2,P4等についても同様である。
【0053】
図7は検出器モジュール51をCH90とCH270を含む断面で見た場合の検出動作を示している。図7(a)に検出器ユニットの正面図、図7(b)に検出器ユニットのb−b断面図を示す。検出器モジュール51はリング状であるため、CH90とCH270を含む切断面は、上記CH0とCH180を含む切断面と同様である。一方、セプタ53は螺旋状であるため、セプタ盤はどのCHで見ても1回転する度に検出リング幅wだけ体軸方向にシフトする関係にある。従って、CH90とCH270を含む切断面で見ると、図示の如くCH90では境界面よりw/4だけずれており、CH270では境界面より3w/4だけずれている。これに伴ってダイレクト及びクロスの各検出プレーンP1’〜P9’も上記図6の場合の基準位置よりw/4だけずらして考える。
【0054】
例えばダイレクトプレーンP3’のデータ収集では、他方の検出領域(検出器リングR
2のCH270後半部3W/4及びリングR3のCH270前半部w/4)で検出されるγ線のうち、これに対向する一方の検出領域(リングR2のCH90後半部3W/4及びリングR3のCH90前半部w/4)で検出されるγ線との間で同時条件を満足するもののみを抽出すれば良い。
【0055】
この場合に、上記リングR2,R3のCH90側に入射するγ線については、該CH90側の検出領域の両端部に位置する各セプタ53によって十分にコリメートされるため、散乱線の混入をその検出時点で有効に防止できる。一方、上記リングR2,R3のCH270側に入射するγ線については、セプタ53が該CH270側の検出領域の中間点に位置するため、その検出時点では散乱線の混入を除去できないが、上記リングR2,R3のCH90側に入射するγ線との間で略同時に検出されるもののみを抽出することにより、同様にして散乱線の混入を有効に防止できる。以上からして、ダイレクトプレーンP3’における検出の立体角もαであり、このことは他のダイレクトプレーンP1’,P5’,P9’等についても同様である。
【0056】
次に、例えばクロスプレーンP6’のデータ収集では、他方の検出領域(検出器リングR3のCH90後半部w/4及びリングR4のCH90前半部3w/4)で検出されるγ線のうち、これに対向する一方の検出領域(リングR3のCH270後半部w/4及びリングR4のCH270前半部3w/4)で検出されるγ線との間で同時検出の条件を満足するもののみを抽出すれば良い。
【0057】
この場合に、上記リングR3,R4のCH270側に入射するγ線については、該CH270側の検出領域の両端部に位置する各セプタ53によって十分にコリメートされるため、散乱線の混入をその検出時点で有効に防止できる。一方、上記リングR3,R4のCH90側に入射するγ線については、セプタ53が該CH90側の検出面の中間点に位置するため、その検出時点では散乱線の混入を除去できないが、上記CH270側に入射するγ線との間で略同時に検出されるもののみを抽出することにより、同様にして散乱線の混入を有効に防止できる。以上からして、クロスプレーンP6’における検出の立体角もαであり、このことは他のクロスプレーンP2’,P4’等についても同様である。
【0058】
なお、上記γ線が体軸上を通過する場合の検出を中心に述べたが、γ線が体軸上を通過しない場合の検出についても同様である。例えば図6(a),図7(a)に示すγ線L10,L11の検出についても、各検出器リングR1〜R5と螺旋状セプタ盤53との間の位置関係はどの検出プレーンについても既知であるから、各検出プレーン毎にその一方の検出領域と、被検体を挟んでこれに対向するような他方の検出領域とを適正に設定することが常に可能であり、よって上記と同様に散乱線を排除した品質の良いデータの収集を効率良く行える。
【0059】
かくして、本第1の実施の形態によれば、各投影角におけるダイレクト及びクロスの各検出プレーンで均一(所要品質及び感度)の投影データを収集でき、これらをバックプロジェクション法等により再構成することで、高品質の2次元PET断層像が得られる。
【0060】
図8は第2の実施の形態による検出器ユニット50の外観斜視図であり、ここではセプタ53のみならず、検出器モジュール55も螺旋状に構成した場合を示している。本第2の実施の形態では検出器ブロック52とセプタ盤53との位置関係が常に一定となるため、γ線の同時検出処理が上記第1の実施の形態のものに比べて大幅に簡略化される。
【0061】
この検出器モージュール55では、被検体体軸CLの回りの円周上に配列された多数の検出器ブロック52が、被検体体軸の方向にピッチwで螺旋状に展開している。更に、この螺旋状検出器モジュール55の内側には、同じくピッチWで展開する螺旋状のセプタ5
3が設けられている。その他の構成については上記図3で述べたものと同様で良い。
【0062】
挿入図(a)に検出器ユニット50のa−a断面図を示す。セプタ53のみならず、検出器モジュール55の各検出器ブロッック52も螺旋状に展開しているため、セプタ盤面はどの検出器ブロック52との関係でも丁度検出器ブロック52の境界面上に位置している。
【0063】
図9,図10は第2の実施の形態によるPET装置の検出プレーン−感度特性を説明する図(1),(2)であり、図9は検出器モジュール55をCH0とCH180を含む断面で見た場合の検出動作を示している。図9(a)に検出器ユニットの正面図、図9(b)に検出器ユニットのa−a断面図を示す。本第2の実施の形態では螺旋状の検出器モジュール55の内側に同じく螺旋状のセプタ53を挿入したため、検出器ブロック52とセプタ盤53との位置関係は全ての検出器ブロック52について同一である。即ち、セプタ盤53は常に検出器ブロック52の境界面上に位置する。係る構成により、従来と同様のダイレクト及びクロスの各検出プレーンP1〜P9における投影データの収集を考える。なお、本明細書では説明の簡単のために各螺旋1回転分に属する検出器ブロックの集まりをリングR1〜R5と呼ぶ。
【0064】
例えばダイレクトプレーンP3のデータ収集では、他方の検出領域(リングR1のCH180後半部w/2及びリングR2のCH180前半部w/2)で検出されるγ線のうち、これに対向する一方の検出領域(リングR2のCH0)で検出されるγ線との間で同時検出の条件を満足するもののみを抽出すれば良い。この場合に、リングR2のCH0に入射するγ線については、該CH0の検出面の両端部に位置する各セプタ53によって十分にコリメートされるため、散乱線の混入をその検出時点で有効に防止できる。一方、上記リングR1,R2の各CH180の側に入射するγ線については、セプタ53が上記CH180側の検出領域の中間点に位置するため、その検出時点では散乱線の混入を除去できないが、上記リングR2のCH0に入射するγ線との間で略同時に検出されるもののみを抽出することにより、同様にして散乱線の混入を有効に防止できる。以上からして、ダイレクトプレーンP3における平面の検出立体角はαであり、所要品質及び感度の投影データを収集できる。このことは他のダイレクトプレーンP1,P5,P9等についても同様である。
【0065】
次に、例えばクロスプレーンP6のデータ収集では、他方の検出領域(検出器リングR3のCH0後半部w/2及びリングR4のCH0前半部w/2)で検出されるγ線のうち、これに対向する一方の検出領域(リングR3のCH180)で検出されるγ線との間で略同時に検出されるもののみを抽出すれば良い。この場合に、上記リングR3のCH180に入射するγ線については、該CH180の検出面の両端部に位置する各セプタ53によって十分にコリメートされるため、散乱線の混入をその検出時点で有効に防止できる。一方、上記リングR3,R4の各CH0側に入射するγ線については、セプタ53が該CH0側の検出領域の中間点に位置するため、その検出時点では散乱線の混入を除去できないが、上記CH180に入射するγ線との間で略同時に検出されるもののみを抽出することにより、同様にして散乱線の混入を有効に防止できる。以上からして、クロスプレーンP6における検出立体角もαであり、上記ダイレクトプレーンの場合と同様に所要品質及び感度の投影データを収集できる。このことは他のクロスプレーンP2,P4等についても同様である。
【0066】
図10は検出器モジュール55をCH90とCH270を含む断面で見た場合の検出動作を示している。図10(a)に検出器ユニットの正面図、図10(b)に検出器ユニットのb−b断面図を示す。検出器モジュール55及びセプタ53は共に螺旋状であるため、どのCHで見ても1回転する度に検出リング幅wだけ体軸方向にシフトずると共に、こ
れをCH90とCH270を含む切断面で見ると、図示の如くCH90はCH0よりw/4だけずれており、CH270はCH0より3w/4だけずれている。これに伴ってダイレクト及びクロスの各検出プレーンP1’〜P9’も上記図6に示す基準位置よりw/4だけずらして考える。
【0067】
例えばダイレクトプレーンP3’のデータ収集では、他方の検出領域(検出器リングR1のCH270後半部W/2及びリングR2のCH270前半部w/2)で検出されるγ線のうち、これに対向する一方の検出領域(リングR2のCH90)で検出されるγ線との間で同一条件を満足するもののみを抽出すれば良い。この場合に、上記リングR2のCH90に入射するγ線については、該CH90の検出面の両端部に位置する各セプタ53によって十分にコリメートされるため、散乱線の混入をその検出時点で有効に防止できる。一方、上記リングR1,R2の各CH270側に入射するγ線については、セプタ53が該CH270側の検出領域の中間点に位置するため、その検出時点では散乱線の混入を除去できないが、上記リングR2のCH90に入射するγ線との間で略同時に検出されるもののみを抽出することにより、同様にして散乱線の混入を有効に防止できる。以上からして、ダイレクトプレーンP3’における検出立体角もαであり、所要品質及び感度の投影データを収集できる。このことは他のダイレクトプレーンP1’,P5’,P9’等についても同様である。
【0068】
次に、例えばクロスプレーンP6’のデータ収集では、他方の検出領域(検出器リングR3のCH90後半部w/2及びリングR4のCH90前半部w/2)で検出されるγ線のうち、これに対向する一方の検出領域(リングR3のCH270)で検出されるγ線との間で同時検出の条件を満足するもののみを抽出すれば良い。この場合に、上記リングR3のCH270に入射するγ線については、該CH270の検出面の両端部に位置する各セプタ53によって十分にコリメートされるため、散乱線の混入をその検出時点で有効に防止できる。一方、上記リングR3,R4の各CH90側に入射するγ線については、セプタ53が該CH90側の検出領域の中間点に位置するため、その検出時点では散乱線の混入を除去できないが、上記CH270側に入射するγ線との間で略同時に検出されるもののみを抽出することにより、同様にして散乱線の混入を有効に防止できる。以上からして、クロスプレーンP6’における検出立体角もαであり、上記ダイレクトプレーンの場合と同様の所要品質及び感度の投影データを収集できる。このことは他のクロスプレーンP2’,P4’等についても同様である。
【0069】
なお、上記γ線が体軸上を通過する場合の検出を中心に述べたが、γ線が体軸上を通過しない場合の検出についても同様である。例えば図9(a),図10(a)に示すγ線L10,L11の検出についても、検出器モジュール55と螺旋状セプタ盤53との間の位置関係はどの検出プレーンについても既知であるから、各検出プレーン毎にその一方の検出領域と、被検体を挟んでこれに対向するような他方の検出領域とを適正に設定することが常に可能であり、よって上記と同様に散乱線を排除した品質の良いデータの収集を効率良く行える。
【0070】
かくして、本第2の実施の形態によれば、各投影角に対応するダイレクト及びクロスの各プレーンで均一(所要の品質及び感度)の投影データを収集でき、これらをバックプロジェクション法等により再構成することで、高品質の2次元PET断層像が得られる。
【0071】
なお、上記両検出プレーン間での感度差および散乱線混入度の差が無くなる事により、もし従来のクロスプレーンにおける散乱線混入度が許容できるものであるならば、セプタ間隔をwとしたまま、検出器モジュール51/55のリング径Dを例えば1/2、セプタ長をd/2とすることも可能となるので、検出器リング径縮小による感度向上が期待できる。さらに装置自体の小型化も可能となる。
【0072】
また、上記各実施の形態では検出器モジュール51/55の内側にセプタ53が固定されている場合を述べたがこれに限らない。検出器モジュール51/55の内側にセプタ53を挿抜自在に設けることにより、2次元スキャンのみならず、3次元スキャンも行える。
【0073】
また、上記本発明に好適なる複数の実施の形態を述べたが、本発明思想を逸脱しない範囲内で各部の構成、制御、処理及びこれらの組み合わせの様々な変更が行えることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施の形態によるPET装置の外観図である。
【図2】実施の形態によるによるPET装置の要部構成図である。
【図3】第1の実施の形態による検出器ユニットの外観斜視図である。
【図4】第1の実施の形態による検出器ブロックを説明する図である。
【図5】第1の実施の形態による前処理回路を説明する図である。
【図6】第1の実施の形態によるPET装置の検出プレーン−感度特性を説明する図(1)である。
【図7】第1の実施の形態によるPET装置の検出プレーン−感度特性を説明する図(2)である。
【図8】第2の実施の形態による検出器ユニットの外観斜視図である。
【図9】第2の実施の形態によるPET装置の検出プレーン−感度特性を説明する図(1)である。
【図10】第2の実施の形態によるPET装置の検出プレーン−感度特性を説明する図(2)である。
【図11】従来技術を説明する図(1)である。
【図12】従来技術を説明する図(2)である。
【符号の説明】
【0075】
10 コンソール部
20 撮影テーブル
21 天板
30 データ処理部
31 アドレス生成部
32 アドレス生成回路(DCEM)
33 同時判定抽出部
40 ガントリ
41 前処理部
42 前処理回路(ACEM)
50 検出器ユニット
51 検出器モジュール
52 検出器(検出器ブロック)
53 セプタ(コリメータ)
54a,54b シールドコリメータ
R1〜R5 検出器リング
100 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に取り込まれた放射性医薬品に含まれるポジトロンが消滅する際に発生する1対のγ線を検出して画像化するPET装置において、
所定サイズの検出面を有する複数の検出器を被検体体軸の回りにリング状に周設した厚さwの検出器リングを、該体軸方向に複数積層してなるリング状の検出器モジュールと、
前記検出器モジュールの内側に介在し、被検体体軸と略垂直な方向に飛来するγ線をコリメートするための所定のコリメート長を有する平板を該体軸の方向にピッチwで螺旋状に周設してなるセプタと、
前記検出器の検出信号に基づきその検出面に入射したγ線の入射位置を特定可能な検出回路と、
被検体を挟み相対向する位置に設定した2つの検出領域で略同時に検出された一対の検出信号を抽出する同時判定抽出部あって、前記一方の検出領域における体軸方向の両境界面がセプタの境界面と一致するように設定するもの、とを備えることを特徴とするPET装置。
【請求項2】
同時判定抽出部は、前記一方の検出領域に対向する他方の検出領域で検出された信号のうち、該一方の検出領域で検出された信号と略同時に検出された信号のみを抽出することを特徴とする請求項1記載のPET装置。
【請求項3】
検出器モジュールの内側にセプタを挿抜自在に設けたことを特徴とする請求項1記載のPET装置。
【請求項4】
被検体内に取り込まれた放射性医薬品に含まれるポジトロンが消滅する際に発生する1対のγ線を検出して画像化するPET装置において、
所定サイズの検出面を有する複数の検出器を被検体体軸の回りにピッチwで螺旋状に周設してなる螺旋状の検出器モジュールと、
前記検出器モジュールの内側に介在し、被検体体軸と略垂直な方向に飛来するγ線をコリメートするための所定のコリメート長を有する平板を該体軸の方向にピッチwで螺旋状に周設してなるセプタと、
前記検出器の検出信号に基づきその検出面に入射したγ線の入射位置を特定可能な検出回路と、
被検体を挟み相対向する位置に設定した2つの検出領域で略同時に検出された一対の検出信号を抽出する同時判定抽出部あって、前記一方の検出領域における体軸方向の両境界面がセプタの境界面と一致するように設定するもの、とを備えることを特徴とするPET装置。
【請求項5】
同時判定抽出部は、前記一方の検出領域に対向する他方の検出領域で検出された信号のうち、該一方の検出領域で検出された信号と略同時に検出された信号のみを抽出することを特徴とする請求項4記載のPET装置。
【請求項6】
検出器モジュールの内側にセプタを挿抜自在に設けたことを特徴とする請求項4記載のPET装置。
【請求項7】
被検体内に取り込まれた放射性医薬品に含まれるポジトロンが消滅する際に発生する1対のγ線を検出して画像化するPET装置の検出器ユニットにおいて、
所定サイズの検出面を有する複数の検出器を被検体体軸の回りにリング状に周設した厚さwの検出器リングを、該体軸方向に複数積層してなるリング状の検出器モジュールと、
前記検出器モジュールの内側に介在し、被検体体軸と略垂直な方向に飛来するγ線をコリメートするための所定のコリメート長を有する平板を該体軸の方向にピッチwで螺旋状に周設してなるセプタとを備えることを特徴とするPET装置の検出器ユニット。
【請求項8】
被検体内に取り込まれた放射性医薬品に含まれるポジトロンが消滅する際に発生する1対のγ線を検出して画像化するPET装置の検出器ユニットにおいて、
所定サイズの検出面を有する複数の検出器を被検体体軸の回りにピッチwで螺旋状に周設してなる螺旋状の検出器モジュールと、
前記検出器モジュールの内側に介在し、被検体体軸と略垂直な方向に飛来するγ線をコリメートするための所定のコリメート長を有する平板を該体軸の方向にピッチwで螺旋状
に周設してなるセプタとを備えることを特徴とするPET装置の検出器ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−17532(P2006−17532A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194133(P2004−194133)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】