説明

PH計

【課題】液絡部のつまりの恐れがなく、外部からの内部液加圧装置を必要とせず、液絡部の機能のばらつきがなく、内部液の流出量が変えられるPH計を実現する。
【解決手段】測定流体に内部液を供給する内部液供給部を具備するPH計において、内部液とこの内部液を押圧する弾性体が内蔵されたケースと、このケースに設けられ前記内部液が外部に流出する内部液流路と、この内部液流路に設けられ前記内部液が外部に噴出するのを制御する噴出制御手段とを有する内部液供給部を具備したことを特徴とするPH計である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定液のPHを測定するPH計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PH計に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】実開平01−058156号公報
【特許文献2】特開平09−178698号公報
【0004】
図8は従来より一般に使用されている従来例の要部構成説明図で、(a)は底面図、(b)は(a)のA-O-B要部断面図、(c)は(a)のA-O-C要部断面図である。
図において、1はガラス電極、2は多孔セラミックスからなる液絡部、3はチタンからなる液アース、4はガラス電極1等で検出された出力信号を伝送するケーブル、5はPH計電極のボディ、6は比較電極、7はサーミスタでなる温度センサ、8はKCl溶液を収容しているKCl溶液室である。
ここで、ボディ5、KCl溶液を収容しているKCl溶液室8と液絡部2とにより内部液供給部が構成されている。
【0005】
以上の構成において、ボディ5の先端部が測定液に浸されると、ガラス電極1などによって、測定液のPHが検出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような装置においては、以下の間題点がある。
KCl溶液室8の内部液は、液絡部2を通して少量ずつ流出することでpH測定を行うことが出来る。液絡部2が汚れで詰まると上手く測定できないため、部品交換や洗浄を行い、メンテナンスを定期的に行う必要がある。
【0007】
また、測定液の圧力が高いと、内部液を流出させるために、外部から内部液に加圧する必要がある。そのための加圧機構にコストがかかる。
液絡部2は、測定液中に深く浸される場合、測定液の圧力が内部液の圧力より高くなる。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題を解決するもので、液絡部のつまりの恐れがなく、内部液加圧装置を必要とせず、液絡部の機能のばらつきがなく、内部液の流出量が変えられるPH計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を達成するために、本発明では、請求項1のPH計においては、
測定流体に内部液を供給する内部液供給部を具備するPH計において、内部液とこの内部液を押圧する弾性体が内蔵されたケースと、このケースに設けられ前記内部液が外部に流出する内部液流路と、この内部液流路に設けられ前記内部液が外部に噴出するのを制御する噴出制御手段とを有する内部液供給部を具備したことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2のPH計においては、請求項1記載のPH計において、
前記噴出制御手段は、圧電素子が使用されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3のPH計においては、請求項1記載のPH計において、
前記噴出制御手段は、気泡を発生させるヒーターが使用されたことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4のPH計においては、請求項1乃至請求項3の何れかに記載のPH計において、
前記内部液流路の外部開口部にノズルが設けられたことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5のPH計においては、請求項1乃至請求項3の何れかに記載のPH計において、
前記内部液流路の外部開口部に多孔質体が設けられたことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項6のPH計においては、請求項1乃至請求項5の何れかに記載のPH計において、
前記ケースに接続された内部液補給タンクを具備したことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項7のPH計においては、請求項1乃至請求項6の何れかに記載のPH計において、
前記弾性体は、スプリングが内蔵された蛇腹を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1によれば、次のような効果がある。
内部液を噴出、制御するようにしたので、内部液の流出量を容易に一定にすることが出来るPH計が得られる。
内部液を噴出、制御するようにしたので、汚れによる液絡部の詰まりがなくなり、指示ドリフト、応答時間が遅くなる問題が発生しないPH計が得られる。
【0017】
多孔セラミックスからなる液絡部は、流出量にばらつきがあり、原料ロットによっては、流出量が規格値に入らない場合があり、破棄する必要があったが、本発明では、流出量を一定にコントロールできるため、性能にばらつきのないPH計が得られる。
【0018】
内部液の流出量を積極的にコントロールできるために、アプリケーションに合わせて内部液の流出量を最適にすることができるPH計が得られる。
測定液圧力が内部液の圧力より高い場合には、従来は、内部液の加圧装置が必要であったが、本発明では、噴出するようにしたので、加圧装置が不要になるPH計が得られる。
なお、内部液補充部分をカートリッジ化することでメンテナンスがより容易になるPH計が得られる。
【0019】
本発明の請求項2によれば、次のような効果がある。
噴出制御手段は、圧電素子が使用されたので、構成が簡単にでき、故障が少なく、堅牢で容易に小型化が出来るPH計が得られる。
【0020】
本発明の請求項3によれば、次のような効果がある。
制御手段は、気泡を発生させるヒーターが使用されたので、更に構成が簡単にでき、故障が少なく、堅牢なPH計が得られる。
【0021】
本発明の請求項4によれば、次のような効果がある。
内部液流路の外部開口部にノズルが設けられたので、噴射形状を種々な形態にすることが容易に出来るPH計が得られる。
【0022】
本発明の請求項5によれば、次のような効果がある。
内部液流路の外部開口部に多孔質体が設けられたので、内部液の極微少量を分散させることが出来るPH計が得られる。
【0023】
本発明の請求項6によれば、次のような効果がある。
ケースに接続された内部液補給タンクが設けられたので、内部液を長期間補給しないで良い。しかも、内部液が減少しても、空間が出来ることがないので、内部液を補給時に、加圧する加圧装置が必要でなく、安価に、内部液の補給期間を長く出来るPH計が得られる。
【0024】
本発明の請求項7によれば、次のような効果がある。
弾性体は、スプリングが内蔵された蛇腹が設けられたので、構成が簡単となり安価なPH計が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の要部構成説明図、図2は図1の要部構成説明図、図3,図4は図1の動作説明図である。
図において、図8と同一記号の構成は同一機能を表す。
以下、図8との相違部分のみ説明する。
【0026】
本発明は、図8従来例の、内部液を液絡部2からしみ出させる構造から、内部液を連続的に微量噴射する構造にしたものである。
【0027】
図1において、内部液供給部11は、ケース12と内部液流路13と噴出制御手段14とを有する。
図2に示す如く、ケース12は、内部液121とこの内部液を押圧する弾性体122が内蔵されている。
この場合は、弾性体122は、スプリング124が内蔵された蛇腹123を有する。
内部液流路13は、ケース12に取り付けられ、内部液121が外部に流出する。
なお、内部液流路13は、1個でなく数個から構成されても良いことは勿論である。
【0028】
噴出制御手段14は、内部液流路13に設けられ、内部液121が外部に噴出するのを制御する。
この場合は、噴出制御手段14は、圧電素子が使用されている。
なお、噴出制御手段14は、気泡を発生させるヒーターが使用されても良い。
【0029】
なお、図2は、内部液供給部11を分かり易く、模式図的に示したものであり、ボディ5に組み込まれた場合に、ケース12と内部液流路13,噴出制御手段14等の配置関係は種々異なって来ることは勿論である。
【0030】
以上の構成において、図2に示す如く、内部液121を加圧してケース12内に補給する。このときの圧力で弾性体122は縮む。
図2に示す如く、内部液121の圧入後は、内部液流路13は噴出制御手段14、この場合は、圧電素子により閉じた状態になっている。
噴出制御手段14である圧電素子が伸縮することで、内部液121が連続的に微小量噴出される。これによりガラス膜に生じたpH起電力を測定可能になり、pH測定が行える。
【0031】
内部液121が減少してくると弾性体122が延びてくるので、内部液貯蔵部に空間ができない。これにより内部液121に気泡が混入することを防止できる。
なお、噴出制御手段14は、圧電素子の代わりに、ヒーターを使用し気泡を発生させ内部液121を噴射させても良い。
【0032】
この結果、内部液を121噴出、制御するようにしたので、内部液121の流出量を容易に一定にすることが出来るPH計が得られる。
内部液121を噴出、制御するようにしたので、汚れによる内部液供給部11の詰まりがなくなり、指示ドリフト、応答時間が遅くなる問題が発生しないPH計が得られる。
【0033】
多孔セラミックスからなる液絡部2は、流出量にばらつきがあり、原料ロットによっては、流出量が規格値に入らない場合があり、破棄する必要があったが、本発明では、流出量を一定に積極的にコントロールできるため、性能にばらつきのないPH計が得られる。
内部液121の流出量を積極的にコントロールできるために、アプリケーションに合わせて内部液121の流出量を最適にすることができるPH計が得られる。
【0034】
測定液圧力が内部液121の圧力より高い場合には、従来は、外部からの内部液121の加圧装置が必要であったが、本発明では、噴出するようにしたので、加圧装置が不要になるPH計が得られる。
なお、内部液補充部分をカートリッジ化することでメンテナンスがより容易になるPH計が得られる。
【0035】
噴出制御手段14は、圧電素子が使用されたので、構成が簡単にでき、故障が少なく、堅牢で容易に小型化が出来るPH計が得られる。
【0036】
噴出制御手段14は、気泡を発生させるヒーターが使用されれば、更に構成が簡単にでき、故障が少なく、堅牢なPH計が得られる。
弾性体は、スプリング124が内蔵された蛇腹123が設けられたので、構成が簡単となり安価なPH計が得られる。
【0037】
図5は、本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
図5において、内部液流路13の外部開口部にノズル15が設けられている。
【0038】
この結果、内部液流路13の外部開口部にノズル15が設けられたので、噴射形状を種々な形態にすることが容易に出来るPH計が得られる。
【0039】
図6は、本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
図6において、内部液流路13の外部開口部に多孔質体16が設けられている。
【0040】
この結果、内部液流路13の外部開口部に多孔質体16が設けられたので、内部液121の極微小流量を正確に供給することが出来るPH計が得られる。
【0041】
図7は、本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
図7において、内部液補給タンク17が、ケース12に接続されている。
【0042】
この結果、ケース12に接続された内部液補給タンク17が設けられたので、内部液121を長期間補給しないで良い。しかも、内部液121が減少しても、空間が出来ることがないので、内部液121を補給時に、外部から加圧する加圧装置が必要でなく、安価に、内部液121の補給期間を長く出来るPH計が得られる。
【0043】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。
したがって本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形をも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施例の要部構成説明図である。
【図2】図1の要部構成説明図である。
【図3】図1の動作説明図である。
【図4】図1の動作説明図である。
【図5】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図6】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図7】本発明の他の実施例の要部構成説明図である。
【図8】従来より一般に使用されている従来例の構成説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ガラス電極
2 液絡部
3 液アース
4 ケーブル
5 ボディ
6 比較電極
7 温度センサ
8 KCl溶液室
11 内部液供給部
12 ケース
121 内部液
122 弾性体
123 蛇腹
124 スプリング
13 内部液流路
14 噴出制御手段
15 ノズル
16 多孔質体
17 内部液補給タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定流体に内部液を供給する内部液供給部を具備するPH計において、
内部液とこの内部液を押圧する弾性体が内蔵されたケースと、
このケースに設けられ前記内部液が外部に流出する内部液流路と、
この内部液流路に設けられ前記内部液が外部に噴出するのを制御する噴出制御手段と
を有する内部液供給部
を具備したことを特徴とするPH計。
【請求項2】
前記噴出制御手段は、圧電素子が使用されたこと
を特徴とする請求項1記載のPH計。
【請求項3】
前記噴出制御手段は、気泡を発生させるヒーターが使用されたこと
を特徴とする請求項1記載のPH計。
【請求項4】
前記内部液流路の外部開口部にノズルが設けられたこと
を特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のPH計。
【請求項5】
前記内部液流路の外部開口部に多孔質体が設けられたこと
を特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のPH計。
【請求項6】
前記ケースに接続された内部液補給タンク
を具備したことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載のPH計。
【請求項7】
前記弾性体は、スプリングが内蔵された蛇腹
を具備したことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載のPH計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−222559(P2009−222559A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67492(P2008−67492)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)