説明

PMDシステム及びその作動方法

【課題】PMD素子が幾何学的または電気的に非対称である場合に、正確な混合結果、すなわち、コヒーレントな放射にのみ基づく測定信号を与えるシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの変調信号のパラメータを修正する装置を設け、そのパラメータを修正することによって、受信電磁放射信号および少なくとも1つの変調信号それぞれの変調が互いに相関を有する場合にのみ、出力信号がゼロ以外の値となるように構成されている。蓄積電極から発生して出力回路に入力する信号を変化させ、少なくとも1つの変調信号および上記変調受信電磁信号が互いに相関を有する場合にのみ、出力信号がゼロ以外の値となるようにした構成が提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射の受信および電気的な測定値への変換を行うための半導体材料からなる信号検出器を備え、上記信号検出器が、その受信信号を変調する少なくとも1つの変調入力と、出力回路に接続されるとともに、上記受信信号と変調入力に印加された少なくとも1つの変調信号の混合信号が電気信号として効果的に出力されるようにした少なくとも2つの蓄積電極とを具備してなる、変調電磁信号の受信および処理を行う電磁混合システムに関するものである。
【0002】
また、本発明は、電磁放射の受信および電気的な測定値への変換を行うための半導体材料からなる信号検出器を備え、上記信号検出器が、その受信信号を変調する少なくとも1つの変調入力と、出力回路に接続されるとともに、上記受信信号と変調入力に印加された少なくとも1つの変調信号の混合信号が電気信号として効果的に出力されるようにした少なくとも2つの蓄積電極とを具備してなり、上記信号検出器による電磁信号の検出で生成される電荷キャリアが、上記少なくとも1つの変調信号に応じて、少なくとも部分的には上記少なくとも2つの相異なる蓄積電極に対して交互に伝達されるように構成された、変調電磁信号の受信および処理を行う電磁混合システムの作動方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
上記に類似する最初の電子混合システムは、独国特許出願第19635932.5号および独国特許出願第19704496.4号に記載されている。
【0004】
さらに、上述した種類の電磁混合システムおよびその類似方法については、下記特許文献1および特許文献2に見出される。
【0005】
これらの電磁混合システムは、上述の公知文献中において、PMDシステム(光混合装置システム)とも呼ばれている。また、下記特許文献3に記載の内容が、本特許出願に最も近い従来技術と考えられる。
【0006】
上記に類似する混合システムとして、少なくとも1つの出力と少なくとも1つの変調入力とを有するものがある。この変調入力は、電磁放射(一般的には光)に感応する材料上に配置されるか、または、その材料中に埋め込まれた少なくとも1つの変調電極に接続されている。さらに、上記少なくとも1つの変調電極には、少なくとも2つの蓄積電極が割り当てられており、この蓄積電極の一方は、上記変調電極と同一とすることができるとともに、変調電極が2つ用いられている場合には、両方の蓄積電極を各変調電極と同一とすることも可能である。これらの蓄積電極は、読み出し回路および判定回路に接続されている。また、蓄積電極から発生する電荷またはそこに生じる電圧は、必要に応じて増幅された後に、出力回路の入力信号を構成するものであるが、一般的には、蓄積電極から発生する信号間の差分信号を判定することによって、上記少なくとも1つの変調信号と、入力電磁信号または印加電磁放射の変調との相関が再現される。
【0007】
複数の変調信号(例えば2つ)を用いる場合、これらの信号は同じ周波数を有しており、公知のPMD素子においては、位相が互いに180°ずれた状態、すなわち、プッシュプル方式で伝達する。
【0008】
電磁混合システム(以下、PMD素子と称する)は、センサーやセンサー材料の特性にもよるが、全電磁スペクトルからの放射に対する感度を有しており、原理上は音波に感応するPMDシステムも考えられる。ただし、説明を簡素化するため、以下では原則として光領域の放射に感応するPMD素子について言及するものとするが、これによって何らの制限が加えられるものではない。他の電磁スペクトル領域への一般化は、当業者には明らかなことである。
【0009】
電極が埋め込まれるか、または、電極が接続された感光センサー材料(半導体材料)は、電磁放射を受信して、光電効果による電荷への変換が行われる。半導体材料中で生成される電荷キャリアは、変調電極に印加される変調電圧により、現在の電圧の符号に応じて、好ましくはいずれか一方の蓄積電極に対して交互に伝達される。
【0010】
PMD素子に対する印加放射強度が、変調電圧の周波数と干渉関係にある変調関数によって変化する場合、読み出し電極間の差分信号は、入射する電磁放射の強度および変調電圧の相関関数に対応する。
【0011】
感光性半導体の場合、例えば強度変調光は、対応するレンズを通してPMDシステムにより記録が行われる領域を照射するのに用いられる。照射の強度変調が変調電極の変調周波数と相関を有する場合は、PMD素子の差動出力により、照射源から照射域を経てPMDセンサーに戻る光の伝達時間に関するデータが与えられる。照射域の画像に加えて、PMD素子から照射域の画像要素までの距離に関するデータも同時に得られる(対応する複数のPMD素子がピクセルアレイとして接続されている場合)。
【0012】
非コヒーレント光の場合(この場合における「コヒーレント」とは、各PMD素子の変調入力における強度変調の周波数と変調電圧との関係を意味する)、出力回路の差動出力には信号が与えられない。言い換えれば、PMD素子は、いかなる非コヒーレントな変調バックグラウンド照射をも、(その差動出力において)自動的に除去するようになっている。
【0013】
さらに、蓄積電極と変調電極とが必ずしも異なる構成要素ではない例として、両蓄積電極または少なくとも一方の蓄積電極が両変調電極または少なくとも一方の変調電極と同一である構成とした変形例が考えられる。
【0014】
上述の特許文献3には、互いに相関する強度変調照射信号と変調信号との間で変化する新たな位相ずれを発生させる方法が記載されているが、この位相ずれは、伝達時間または距離の測定精度を改善するために、閉ループ制御回路における補正変数として用いられるものである。
【0015】
本発明は、当初記載された構成要素と同様または同一の構成要素から本質的に構成されるPMDシステムを起点とする。
【0016】
変調信号と干渉関係にない放射のみがPMD素子に印加されている場合、変調電圧の正負の部分または半波により、一方そして他方の蓄積電極に対してそれぞれ交互に移動する電荷は、統計平均的に互いに異なるものであってはならず、その結果として、各蓄積電極における電圧の積算値の差は、原則としてゼロでなければならない。
【0017】
しかし、特定のPMD素子の場合、不可避の製造公差が時として、異なる蓄積電極間および/または変調電極間に一定の非対称性をもたらすことになる。また、これら電極の幾何学的寸法や電極間の距離が、一定の公差範囲内で変動する可能性もある。
【0018】
光混合装置の出力信号は、強度変調出力信号と、同様に変調された電気信号(変調電圧)とを混合することによって装置内で生成される。混合過程において正確な結果を得るために必須の前提条件は、光混合装置の構造における高い対称性である。光混合装置の形状や2つの出力チャンネルにおける電気的パラメータの不平衡によって、混合結果に系統的誤差が発生してしまう(Buxbaumの論文(189頁)参照)。
【0019】
さらに、光混合装置の産業上の利用においても、光信号の強度によって系統的誤差が決まることが多い。この点において、いわゆるルックアップテーブルを用いるような他の検出器に見出される補正方法は、多大な時間を必要とするものであり、多次元的な問題が発生することから、高速処理分野にはとても利用できるものではない。このことは、多数の光混合装置を接続してライン構成またはアレイ構成を形成する場合に、特に当てはまることである。
【0020】
この従来技術との比較により、本発明の目的は、PMD素子が幾何学的または電気的に非対称である場合に、正確な混合結果、すなわち、コヒーレントな放射にのみ基づく測定信号を与えるシステムおよび方法を創造することにある。
【0021】
システムに関して言えば、上記目的は、一方の変調電圧の少なくとも1つのパラメータを、少なくとも1つの他方の変調電圧における対応するパラメータと無関係に修正する装置を設けることによって達成される。
【0022】
この点について、修正可能な変調電圧のパラメータとしては、例えば、相対位相位置、変調電圧の振幅、パルスデューティ比、および新たに印加されるオフセット電圧等が考えられる。
【0023】
上述したように、PMD素子の幾何学的および/または電気的パラメータの非対称性によって、測定結果に誤差が生じるとともに、特に、PMD素子に対して変調電極の変調周波数と干渉関係にある放射が印加されていない場合であっても、各PMD蓄積電極における積算値の差分信号が相殺されずに残ることになる。また、同じく上述したように、PMD素子が対称である理想的な場合であって、変調電極に対称な変調電圧がプッシュプル方式で印加されている場合、好ましくは交互に発生する電荷移動の影響は、十分長い時間にわたる積算によって無効化されなければならない。しかし、上述したように、このことが当てはまるのは、PMD素子が完全に対称である場合のみであり、さらに当然のことながら、プッシュプル方式で作動する変調電圧も完全に対称である必要がある。
【0024】
言い換えれば、PMD素子に対して、強度変調放射ではなく自然放射またはバックグラウンド放射のみが印加されている場合は、PMD素子そのものの幾何学的および電気的非対称性のみならず変調電圧の非対称性によっても、ゼロ以外のPMD素子出力の差分信号が生成される可能性がある。上記ゼロ以外の差分信号は、非対称性の特性に応じて、正負いずれかの値を取り得る。
【0025】
したがって、PMD素子の幾何学的パラメータの非対称性によって、PMD素子の出力においてゼロ以外の差分信号がもたらされる場合は、本発明者の知るところによれば、変調電圧の非対称性を通して逆の効果が実現可能でなければならない。すなわち、変調電圧の非対称性を通して、幾何学的パラメータの非対称性を補正可能でなければならない。
【0026】
このため、受信した電磁放射および変調信号それぞれの変調が互いに相関を持たない場合、蓄積電極から発生する信号の差に対応する出力信号が、(不完全な雑音抑制に起因するわずかな誤差は別として)常にゼロとなるように、本発明の装置は、変調信号の修正に適するとともに、それを意図した設計となっている。逆の見方をすると、出力信号は、当該の変調が相関を有する場合、またその場合に限って、ゼロ以外の値を取ると言うことができる。
【0027】
【特許文献1】国際公開第WO02/33817号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO02/33922号パンフレット
【特許文献3】独国特許出願公開第10047170C2号明細書
【発明の開示】
【0028】
上記の方法に関して言えば、本発明の基礎をなす上記目的は、上記少なくとも1つの変調信号を修正するとともに、出力信号が、上記少なくとも1つの変調信号および変調受信電磁信号が互いに相関を有する場合にのみゼロ以外の値となることによって達成される。
【0029】
本発明によれば、この点については種々の可能性がある。まず、変調信号が2つ存在する場合、従来のPMD素子においては厳密に180°であった変調電圧の相対位相位置が変更可能であり、相対的な位相位置の変化は一般的に±30°までで十分であるが、本発明によれば、プッシュプル位置を起点として、変調電圧の相対的な位相ずれは最大90°に規定される。
【0030】
さらに、変調電圧を非対称に設計することにより、例えば、振幅比の修正および改変が可能となる。また、一方の変調電圧のパルスデューティ比に対して、他方の変調電圧のパルスデューティ比を修正可能であり、最終的には、各変調電圧に一定の直流オフセット電圧値を与えることも考えられる。一般的には、2つの変調電圧の振幅比さらにはパルスデューティ比がおよそ0.3〜3の係数で変化すれば十分である。
【0031】
特に、変調電極が蓄積電極と同一である場合に、単一の変調信号のみをその一方の変調電極にのみ印加することもまた同様に可能であることが分かる。この一方の蓄積電極の電位は、他の隣接蓄積電極または空間的に配置された蓄積電極に対して、上記変調信号により交互に上下する。その結果、電磁放射により当該材料中に発生した電荷は、変調蓄積電極の電位が上下いずれの状態にあるかに応じて、上記と同様に好ましくは交互に一方の蓄積電極または他方の蓄積電極に向けて流れる。この場合、波形の修正または所定の方法による正負半波の非対称設定によって、パラメータを修正する必要がある。
【0032】
上記は、本質的にプッシュプル方式で伝達する2つの変調信号が、それぞれ直接的に、または、付加的な変調電極によって両蓄積電極に印加された状態と考えられる。上述の手順は、2つの変調電極を用いる場合の2つの変調信号と同様に特定のパラメータによって定まる単一の変調信号の場合にも、全く同様に適用可能であることが分かる。
【0033】
当然ながら、(コヒーレント放射がない限りは)PMD素子の差分信号が厳密にゼロとなるように、変調電圧のパラメータを正しく修正する必要はないが、PMD素子の出力において、出力信号または差分信号の特定の出力値または基準値を所定の方法で生成することも、また同様に十分可能である。
【0034】
便宜上、変調電圧のパラメータを修正するための装置は、相異なるパラメータ修正が互いに独立して行われるように設計されている。したがって、一方の変調電圧のパルスデューティ比および振幅のいずれも、他方の変調電圧に対して、手間を増やすことなく修正可能である。さらに、位相位置の修正、または、直流オフセット電圧の印加もまた可能である。言い換えれば、各パラメータは、単独としても、また、いかなる組み合わせであっても変更可能である。上述のパラメータの変更は、個別の変調信号と同様に実施することができるが、対応するパラメータは、2つの独立した変調信号間の相対的なパラメータの置換が行われるわけではなく、その代わりとして、例えば1つの変調信号の正負半波を非対称に構成したものである。そして、2つの変調信号を用いる場合と同様に、正負半波間のパルスデューティ比、さらには、半波の対応する振幅もまた変更可能であり、いずれも、直流オフセット電圧を単独で印加することにより行われる。位相の修正と同様に、単一の変調信号を用いる場合は、変調信号の立ち上がりおよび立下りを互いに非対称に構成することができる。
【0035】
出力信号がゼロとなるようにフィードバック調整を行う本発明の方法は、PMD素子に非コヒーレント放射が印加されている場合にのみ使用する(「コヒーレント」とは常に、放射強度の変調と変調電圧の周波数との干渉関係を意味する)。この場合、上述したように理想的なPMDシステムでは、差分信号がゼロとならなければならず、変調電圧のパラメータについては、好ましくはPMDシステムの差動出力がゼロとなるように、必要に応じて厳密に修正される。PMD素子にコヒーレント放射が印加されている場合は、例えば、このコヒーレント放射を時折短時間にわたって中断し、その間に変調電圧のパラメータの再調整を行うことも可能である。この操作は、便宜上、制御ループを用いて行われるが、この制御ループは、PMDシステムにコヒーレント放射が印加されていない場合に、その差分入力に現れる「無負荷信号」を、無負荷状態の差動出力値がゼロ調整されるように変調電圧のパラメータを修正する調節装置に対して、入力変数として入力するためのものである。
【0036】
PMD素子がコヒーレントな強度変調放射を受信する実際の測定段階においては、予め確定または調整された変調電圧パラメータの非対称設定は、当然ながら変更されることはなく、次の校正段階によってのみ、必要に応じて再度修正されることになる。
【0037】
本発明のより好適な態様にあっては、上記のような校正段階において、好ましくは測定段階におけるコヒーレント放射部分の平均強度に概ね相当する放射強度を有する新たな非コヒーレント放射がPMD素子に印加される。このように、無負荷信号の強度に依存した変動が、校正によって考慮に入れられることになる。
【0038】
変調信号のパラメータ修正の代替として、出力回路の入力に接続された蓄積電極から発生する、一般的には比較的弱い電流または電圧である電気信号を変更すること、すなわち、受信した電磁放射信号および上記少なくとも1つの変調信号それぞれの変調が互いに相関を持たない場合に、上記電気信号が厳密に同一となる(つまり、その差がなくなる)ように増幅または減衰することも考えられる。このことは、例えば混合システムに対して、自然光やその他所定の方法によって変調されていない照射等、特別な変調が加えられていない電磁放射が印加されている場合に行うことができる。一方同時に、1つまたは2つの変調信号が、1つの変調入力または2つの変調入力(相互にプッシュプル方式で伝達する2つの変調信号を用いる場合)に与えられると、出力回路の上記入力信号は互いに比較されるとともに、少なくともその一方が他方の入力信号と一致するように増幅または減衰される。その結果、蓄積電極から発生する上記2つの信号の差は、ゼロに等しくなる。出力回路における上記2つの入力信号の差が電磁放射の強度に依存する場合は、相異なる電磁放射強度に対して上記操作がそれぞれ必要となる可能性がある。この場合、上記2つのうち一方の信号について、その増幅量または減衰量も強度に応じて変化させることになる。一方、変調放射信号を新たに印加する場合、出力回路における一方の入力信号の減衰および増幅は、変調電圧の印加がない場合と同様に行われるが、全強度が結果的に変化してしまうことから、この際の補正は多くて一回である。放射信号と上記1つまたは複数の変調信号との相関により、変調放射がない場合に実施した減衰または増幅の後においても、蓄積電極から発生する出力回路の2つの入力信号は同一とはならず、その結果として、上記2つの信号の差は相殺されずに残ることになる。
【0039】
本発明のその他の利点、特徴、および利用可能性については、以下に示す好適な実施形態の説明および添付の図面を用いて明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下の説明においては、実施例として、可視領域の電磁放射に感応するPMD素子を考える。また、2つの変調入力およびそれに対応する2つの変調電極、さらには、互いに独立して変更可能なパラメータを有する2つの変調信号を混合システムに用いた場合を説明する。
【0041】
一般的に、変調信号は純粋な調波信号(正弦波または余弦波)ではないが、便宜上、変調信号とそれに相関する自然信号からの電磁放射の変調とを十分に分離・識別可能なように、より複雑な波形を有するものとする。
【0042】
上述したように、例えば、蓄積電極および変調電極、または、それぞれの場合に対で設けられた2つの蓄積電極の一方が変調電極と同一である場合には、単一の変調信号のパラメータについても、単一の変調入力のみを用いる場合と同様に変更可能である。
【0043】
図1に、変調装置10による変調の結果として変調強度を有する光を放射するように構成された光送信機11を示す。従来のPMDシステムにおいては、PMD素子1の変調入力4、5についても、変調装置10で同時に変調されて、図2に示すように、各入力4、5に印加される入力電圧U、Uの位相が厳密にはプッシュプル方式、すなわち、互いに180°ずれた状態となるように構成されていた。
【0044】
しかし、本発明の場合には、変調装置10とPMD素子1の変調入力4、5との間に校正装置8が接続されている。さらに、変調装置10および校正装置8は、PMDシステム全体の作動シーケンスを制御する制御回路7によって制御される。
【0045】
PMD素子1の読み出し電極において読み出される電圧または電流は、出力2、3における信号として与えられるようになっている。また、出力回路6は、便宜上、出力2、3の出力信号を入力変数として入力する差動増幅器として構成されている。出力回路6の出力9に現れる差分信号は、校正装置8に入力される。
【0046】
PMD素子が幾何学的および電気的に対称である理想的な構成の場合、変調電圧U、Uは、図2に示すように、位相が互いに180°ずれた状態で同一である。これは、光送信機の放射または光送信機の照射領域からの反射光の放射によってPMD素子内に生成される電荷が、電圧U、Uの現在の符号に応じて、好ましくは出力2、3の一方に伝達されることを意味する。このように蓄積電極で生成され、出力2、3において積算された電荷の信号は、差動増幅器6によって互いに減算されるが、PMD素子に印加される光の強度が変調電圧U、Uの周波数と相関を持たない場合は、差動増幅器出力9においてゼロ信号(以下「無負荷」信号とも称する)となる理想の状態が得られる。
【0047】
このことは、光送信機11の変調がオフとなって、自然光またはバックグラウンド光のみがPMD素子に印加されるような特別な場合にも当てはまる。
【0048】
ただし、PMD素子に印加される光の強度が変調電圧U、Uと相関を有する場合、すなわち、特に同じ周波数を有する場合で、一定の伝達時間によってのみ位相のずれがもたらされている場合には、差動増幅器6の出力に、相殺されない相関信号が生成されることになる。この場合、校正装置のフィードバックループ(差動出力9への接続)はオフとされるため、直前に選定されたパラメータ設定を用いて、変調入力4、5に変調信号が送られる。
【0049】
しかし、PMD素子1の個々の電極における幾何学的または電気的な構成および構造が完全な対称性となっていない場合は、光送信機11の変調がオフとなっている場合であっても、通常、差動増幅器6の出力9において、相殺されない信号が測定されることになる。
【0050】
ただし、本発明の校正装置は、変調周波数と干渉関係にない光がPMD素子に放射されている場合でも、相殺されない信号が差動増幅器6の出力9にもたらされる上記のような非対称性を補償可能となっている。このことは、仮想信号レベルに対する異なるオフセット電圧UOFFA、UOFFBによって、電圧U、Uを変化させる構成とした最後の変形例において示されている。
【0051】
PMD素子に対して変調光が印加されておらず、また、差動増幅器6の出力9における出力信号が相殺されない値を有する場合、校正装置は、図3〜6に示した変調電圧の変形例のうち少なくとも1つを用いて、差動増幅器6の出力9にゼロ信号が現れるように、PMD素子の非対称性の補償を実施する。この目的で、図3〜6に示した変形例のいくつかを同時に実施することも可能である。
【0052】
測定や受信の最中に、PMDシステムの実行動作におけるシーケンス要求制御によって、光送信機11の変調を簡単にオフ可能とすれば、同期間中に校正装置8を作動させるとともに、PMD素子の各入力4、5における変調電圧U、Uの適当な変形例を用いて、システムの校正を実施することができるため特に都合がよい。
【0053】
ただし、光送信機11の変調をオフとしている間にも、その強度は一定の平均レベルに維持されており、これが光送信機の変調動作における平均照射強度にも相当することから、光送信機11を通して新たな照射が発生してしまう。このように、特に強度に依存したPMDの平衡障害についても考慮に入れられている。
【0054】
本発明の方法によれば、差動増幅器6の出力9において測定される信号が、常に、相関信号と厳密に対応していることから、PMDシステムの校正が可能となり、その結果、非常に高い精度が実現されるとともに、他の放射源の影響や非対称性の影響についても完全に無視することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の校正装置を含むブロック図である。
【図2】厳密に対称なPMDシステムに印加される変調信号を示した概略図である。
【図3】一方の変調信号のパルスデューティ比を他方の変調信号に対して変化させた状態を示す図である。
【図4】位相がずれた変調信号を示した図である。
【図5】振幅が異なる変調信号を示した図である。
【図6】オフセット電圧が異なる変調信号を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射の受信および電気的な測定値への変換を行うための半導体材料からなる信号検出器を備え、前記信号検出器が、その受信信号を変調する少なくとも1つの変調入力と、出力回路に接続されるとともに、前記受信信号と前記変調入力に印加された少なくとも1つの変調信号の混合信号が電気信号として効果的に出力されるようにした少なくとも2つの蓄積電極とを具備してなる、変調電磁信号の受信および処理を行う電磁混合システムであって、前記少なくとも1つの変調信号のパラメータを修正する装置を設け、該パラメータを修正することによって、前記受信電磁放射信号および前記少なくとも1つの変調信号それぞれの変調が互いに相関を有する場合にのみ、出力信号がゼロ以外の値となるようにしたことを特徴とする電磁混合システム。
【請求項2】
前記装置(8)は、前記変調信号の正負半波を非対称に構成するように設計されたことを特徴とする、請求項1に記載の混合システム。
【請求項3】
前記装置(8)は、前記変調信号の正負半波を異なる振幅で構成するように設計されたことを特徴とする、請求項2に記載の混合システム。
【請求項4】
前記装置(8)は、前記変調信号の正負半波を異なるパルスデューティ比で構成するように設計されたことを特徴とする請求項2または3に記載の混合システム。
【請求項5】
前記装置(8)は、対称な変調信号に対して、直流電圧値をオフセットとして重畳するように設計されたことを特徴とする、請求項2ないし4のいずれかに記載の混合システム。
【請求項6】
同じ変調周波数を有する一方、別様に設定可能な絶対設定パラメータおよび/または相対設定パラメータを有する2つの独立した変調信号に対して、2つの変調入力を設けたことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の混合システム。
【請求項7】
前記設定可能なパラメータは、前記変調信号の振幅、位相位置、パルスデューティ比、および任意のオフセット電圧を含むことを特徴とする、請求項6に記載の混合システム。
【請求項8】
前記装置(8)は、前記変調電圧の相対位相位置をプッシュプル位置から最大±90°までずらすように設計されたことを特徴とする、請求項6または7のいずれかに記載の混合システム。
【請求項9】
前記変調電圧の振幅比またはパルスデューティ比の変化は、原則として、およそ0.3〜およそ3の係数の範囲内に限られることを特徴とする、請求項6ないし8のいずれかに記載の混合システム。
【請求項10】
前記装置(8)は、各種パラメータの修正が互いに独立して行われるように設計されたことを特徴とする、請求項1ないし9のいずれかに記載の混合システム。
【請求項11】
電磁放射の受信および電気的な測定値への変換を行うための半導体材料からなる信号検出器を備え、前記信号検出器が、その受信信号を変調する少なくとも1つの変調入力と、出力回路に接続されるとともに、前記受信信号と前記変調入力に印加された少なくとも1つの変調信号の混合信号が電気信号として効果的に出力されるようにした少なくとも2つの蓄積電極とを具備してなり、前記信号検出器による電磁信号の検出で生成される電荷キャリアが、前記少なくとも1つの変調信号に応じて、少なくとも部分的には前記少なくとも2つの相異なる蓄積電極に対して交互に伝達されるように構成された、変調電磁信号の受信および処理を行う電磁混合システムの作動方法であって、前記少なくとも1つの変調信号を変化させ、前記少なくとも1つの変調信号および前記変調受信電磁信号が互いに相関を有する場合にのみ、出力信号がゼロ以外の値となるようにしたことを特徴とする電磁混合システムの作動方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの変調電圧の可変パラメータが、
a)正負半波のパルスデューティ比、
b)正負半波の振幅、
c)印加直流オフセット電圧、
からなる選択群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記混合システムの出力信号が校正装置(8)に供給されるとともに、該校正装置(8)は、前記混合システムに電磁放射が印加され、該電磁放射の強度変動が少なくとも1つの変調電圧と相関を持たない場合に、前記出力信号の値が無負荷レベルとなるように、前記少なくとも1つの変調電圧の少なくとも1つのパラメータを、その校正動作時に修正するように構成されたことを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記無負荷値は、ゼロ電圧または現在の出力信号値に相当することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも2つの変調信号を用いる場合には、該変調信号の少なくとも1つのパラメータの相対値を変化させることを特徴とする、請求項11から14のいずれかに記載の混合システムの作動方法。
【請求項16】
一方の前記変調電圧のパラメータに対する修正が行われる他方の前記変調電圧の対応するパラメータは、
a)パルスデューティ比、
b)前記2つの変調電圧の相対位相位置、
c)前記2つの変調電圧の相対振幅、
d)前記変調電圧の一方または両者に印加されるオフセット電圧、
からなる選択群から選択されるパラメータのうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
電磁放射の受信および電気的な測定値への変換を行うための半導体材料からなる信号検出器を備え、前記信号検出器が、その受信信号を変調する少なくとも1つの変調入力と、出力回路に接続されるとともに、前記受信信号と前記変調入力に印加された少なくとも1つの変調信号の混合信号が電気信号として効果的に出力されるようにした少なくとも2つの蓄積電極とを具備してなる、変調電磁信号の受信および処理を行う電磁混合システムであって、前記蓄積電極から発生する信号に作用する装置を設け、該装置は、前記受信電磁放射信号および前記少なくとも1つの変調信号それぞれの変調が互いに相関を持たない場合には常に、出力信号が減衰してゼロとなるように前記信号に作用することを特徴とする電磁混合システム。
【請求項18】
電磁放射の受信および電気的な測定値への変換を行うための半導体材料からなる信号検出器を備え、前記信号検出器が、その受信信号を変調する少なくとも1つの変調入力と、出力回路に接続されるとともに、前記受信信号と前記変調入力に印加された少なくとも1つの変調信号の混合信号が電気信号として効果的に出力されるようにした少なくとも2つの蓄積電極とを具備してなり、前記信号検出器による電磁信号の検出で生成される電荷キャリアが、前記少なくとも1つの変調信号に応じて、少なくとも部分的には前記少なくとも2つの相異なる蓄積電極に対して交互に伝達されるように構成された、変調電磁信号の受信および処理を行う電磁混合システムの作動方法であって、前記蓄積電極から発生して前記出力回路に入力する信号を変化させ、前記少なくとも1つの変調信号および前記変調受信電磁信号が互いに相関を有する場合にのみ、出力信号がゼロ以外の値となるようにしたことを特徴とする電磁混合システムの作動方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−14278(P2006−14278A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−107081(P2005−107081)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(505123538)ピーエムディー テクノロジーズ ゲーエムベーハー (3)
【氏名又は名称原語表記】PMD Technologies GmbH
【出願人】(505123549)アウディ エレクトロニクス ヴェンチャー ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】Audi Electronics Venture GmbH
【Fターム(参考)】