説明

PMS2と特異的に結合する抗体

【解決手段】 PMS2およびPMS2‐134に対する抗体および前記抗PMS2および抗PMS2−134の抗体を作り出す細胞が提供される。本発明の前記抗体は、切断されたPMS2を含むPMS2タンパク質を検出する方法、および患者に異常状態を検出する方法に使われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
これは2003年12月8日に出願された米国出願仮番号第60/528,269号の利点を請求するものであり、その内容はこの参照により本願明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
本発明はPMS2に対する抗体および抗PMS2抗体を産生する細胞に関する。本発明はまたPMS2タンパク質を検出する方法および本発明の前記抗体を用いて患者の異常状態を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
PMS2はミスマッチ修復(MMR)に関係しているタンパク質である。前記MMR、すなわちミスマッチ・プルーフリーディングとも呼ばれている過程は、バクテリアから哺乳類細胞にまで及ぶ細胞内のタンパク質複合体によって行われている。MMR遺伝子はそれがこの種のミスマッチ修復複合体のタンパク質のうちの1つをコード化する遺伝子である。前記MMR複合体はヌクレオチド塩基の非相補的対合から生じているDNAヘリックスの歪みを検出すると考えられる。新規なDNA鎖の上にある前記の非相補的塩基は切除されており、前記切除された塩基は適切な塩基によって置換され、それは古いDNA鎖に対して相補的である。このような方法で、細胞はDNA複製における誤りの結果として起こる多くの突然変異を除去する。
【0004】
ミスマッチ修復遺伝子の優性阻害対立遺伝子は同じ細胞内に野生型の対立遺伝子がある場合でさえもMMR欠損の表現型が生じることが示された。MMR遺伝子の優性阻害対立遺伝子の実施例は、コドン134において切断している突然変異があるヒトの遺伝子hPMS2−134である。前記突然変異によってこの遺伝子の前記生成物を134番目のアミノ酸の位置において異常に終結させ、N末端の133個のアミノ酸を含む短くなったポリペプチドをもたらす。そのような突然変異によって突然変異の割合の増加が生じ、その突然変異はDNA複製の後、細胞の中に蓄積する。ミスマッチ修復遺伝子の優性阻害対立遺伝子の発現は、野生型対立遺伝子がある場合でさえもミスマッチ修復活性の欠陥をもたらす。そのような効果を生じる任意の対立遺伝子が本発明において用いられることができる。MMR遺伝子の優性阻害対立遺伝子はヒト、動物、酵母、バクテリア或いは他の生物の細胞から得られることができる。
【0005】
PMS2を検出する抗体およびそれらの切断突然変異株はミスマッチ修復を研究するための生物学的検定法においておよび患者に癌の素因を作る可能性があるPMS2の形態の存在を検出するための診断的適用において有用である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は特異的にPMS2に結合する新しい抗体に関する。前記抗体は、PMS2の切断突然変異株も検出されるように、特異的にPMS2の一部のN末端部分を認識する。
【0007】
本発明の前記抗体は試料のPMS2の存在を検出するために免疫学的検定において用いられる。前記方法はPMS2の切断型を検出するためにも用いられても良い。上記の検定はラジオイムノアッセイ、ウエスタンブロット、ELISA、免疫沈降などを含むがこれらに限定されるものではない。
【0008】
発明の前記抗体は患者における癌の素因を検出する方法において用いられても良く、ここで、PMS2の切断型は、スクリーニング検定の患者の試料において検出され、さらに患者の癌の危険度と相関している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本参考資料、特許、特許出願、および本願明細書において参照されるGenBankデータベース配列の受入番号を含む科学的な文献は、当業者の知識を確立し、さらに各々が特異的にかつ独立してこの参照により組み込まれることを示唆されるように、それらは完全にこの参照により本願明細書に同程度に組み込まれる。本願明細書において引用したあらゆる参照と、本明細書の具体的な教示はとの間の不一致は、後者を支持して解決されるものとする。同様に、単語或いは用語の技術的に理解される定義と、本明細書において明確に教示されるような単語或いは用語との間のあらゆる不一致は、後者を支持して解決されるものとする。
【0010】
当業者に周知の組換えDNA技術の一般的な原理を記載した標準的な参考資料は、Ausubel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、New York(1998)、Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Plainview、New York(1989)、Kaufman et al.,Eds.,HANDBOOK OF MOLECULAR AND CELLULAR METHODS IN BIOLOGY AND MEDICINE、CRC Press、Boca Raton(1995)、McPherson,Ed.,DIRECTED MUTAGENESIS:A PRACTICAL APPROACH、IRL Press、Oxford(1991)を含む。
【0011】
本願明細書において用いられるように、「エピトープ」という用語はモノクローナル抗体が特異的に結合する抗原の部分を指す。
【0012】
本願明細書において用いられるように、「立体構造エピトープ」という用語はアミノ酸の完全な系列以外の抗原のアミノ酸間の空間的関係によって形成される非連続的エピトープを指す。
【0013】
本願明細書において用いられるように、「約」という用語は受け入れられる範囲内の明示された値の近似を指す。好ましくは、前記範囲は明示された値の+/−で5%である。
【0014】
本発明の前記抗体はPMS2および切断されたその断片に特異的に結合する。前記抗体は配列ID番号1或いは配列ID番号2のアミノ酸配列内において見られるエピトープを含む。他の実施形態において、前記エピトープは配列ID番号1或いは配列ID番号2の配列を含む。特定の実施形態において、前記抗体は349−22.1.3である。他の実施形態において、前記抗体は349−29.5.2である。
【0015】
一部の実施形態において、前記抗体はハイブリドーマ細胞以外の宿主細胞において作り出される。これらの場合において、前記抗体遺伝子はハイブリドーマ349.22.1.3および/或いは349−29.5.2からクローン化され、発現ベクターに配置されて機能的な抗体が作り出されるように、操作可能な状態で発現調節配列とつながれる。
【0016】
好適な抗体および本発明の前記方法の用途に適している抗体は、例えば、完全なヒト抗体、ヒト抗体ホモログ、ヒト化した抗体ホモログ、キメラ抗体ホモログ、Fab、Fab’、F(ab’)2およびF(v)抗体フラグメント、単鎖抗体、及び抗体重鎖或いは軽鎖或いはその混合物の単量体或いは二量体を含む。
【0017】
本発明の前記抗体は、IgA、IgG、IgE、IgD、IgMタイプ(それらのサブタイプも同様に)を含むいかなるアイソタイプの無処置のイムノグロブリンを含む。前記イムノグロブリンの軽鎖はカッパ或いはラムダである。クラス転換は誘発されるか或いはあるハイブリドーマ細胞349−22.1.3および349−29.5.2において発現される抗体を使用した当業者に周知の組み換え技術を通じて設計され得る。
【0018】
本発明の前記抗体は、例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、F(v)フラグメント、重鎖単量体或いは二量体、軽鎖単量体または二量体、1つの重鎖と1つの軽鎖とからなる二量体およびその同類のものなど、抗原結合特性を持つ無処置抗体の一部を含む。したがって、上記の抗体に由来する全長が二量体或いは三量体のポリペプチドと同様に抗原結合性フラグメントはそれ自身で有用である。
【0019】
本発明の発現細胞は、例えば、Spodoptera frugiperda細胞など周知のいかなる昆虫発現細胞株も含む。前記発現細胞系は細菌性或いは菌類の細胞株であっても良い。前記発現細胞系は、例えばSaccharomyces cerevisiaeおよびSchizosaccharomyces pombe細胞などの酵母細胞株であっても良い。前記発現細胞は、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞、仔ハムスター腎臓細胞、ヒト胎児由来腎臓細胞株293、正常イヌ腎臓細胞株、正常ネコ腎臓細胞株、サル腎臓細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、COS細胞および非腫瘍形成性マウス筋芽細胞G8、繊維芽細胞細胞株、骨髄腫細胞株、マウスNIH/3T3細胞株、LMTK31細胞、マウスセルトリ細胞、ヒト子宮頚癌細胞バッファローラット肝細胞、ヒト肺細胞、ヒト肝細胞、マウス乳腺腫瘍細胞、TRI細胞、MRC 5細胞およびFS4細胞などの哺乳動物細胞であっても良い。
【0020】
「キメラ抗体」は、イムノグロブリン軽鎖、重鎖或いは両方のヒンジおよび定常部の全部或いは一部を他の動物のイムノグロブリン軽鎖或いは重鎖の対応する領域に置換する組換えDNA技術によって作り出される抗体である。このような方法で、親モノクローナル抗体の抗原−結合部分は、他の種の抗体の主鎖に移植される。1つの方法はWinterらによってEP 0239400において述べられており、これは例えばヒト重鎖および軽鎖イムノグロブリン可変部ドメイン由来のCDRsをマウス可変部ドメイン由来のCDRsに置換するなど、ある生物種の相補鎖決定領域(CDRs)を他の生物種に置換することを記載している。これらの変化した抗体は、その後ヒトイムノグロブリン定常領域と結合し、抗原に特異的である置換されたマウスのCDRs以外はヒトである抗体を形成する可能性がある。抗体のCDR領域を移植するための方法は、例えばRiechmann et al.,(1988)Nature 332:323−327、およびVerhoeyen et al.,(1988)Science 239:1534−1536において見出され得るものである。
【0021】
キメラ抗体は、より少ないマウスのアミノ酸配列を含む程、ヒトの免疫応答を誘発する課題を回避すると考えられていた。ヒト治療薬としての齧歯類モノクローナル抗体(MAbs)の直接使用によってヒト抗齧歯類抗体反応(HARA)を引き起こし、それは齧歯類由来抗体で治療した有意数の患者で起こったことがわかった(Khazaeli et al.,(1994)Immunother.15:42‐52)。
【0022】
限定されない実施例として、CDR移植を実行する方法は、標的抗原(例えばPMS2)に結合する目的のマウス抗体の重鎖および軽鎖の配列決定によって実行され得るものであり、遺伝的にCDR DNAの塩基配列を設計し、さらに部位特異的突然変異によって対応するヒトV領域にこれらのアミノ酸配列を強制するものである。所望の前記アイソタイプのヒト定常部遺伝子断片が加えられることにより、「ヒト化された」前記重鎖および軽鎖遺伝子は哺乳類細胞において共発現され、可溶性のヒト化された抗体を作り出す。代表的な発現細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。キメラ抗体をつくる適切な方法は、例えば、Jones et al.,(1986)Nature 321:522‐525、Riechmann(1988)Nature 332:323−327、Queen et al.,(1989)Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86:10029、およびOrlandi et al.,(1989)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:3833において見いだされ得る。
【0023】
HARA反応の問題を避けるための抗体の更なる改良によって、「ヒト化した抗体」の発展に至った。ヒト化した抗体は、抗原結合のために必要でないヒトイムノグロブリン軽鎖或いは重鎖の少なくとも1つのアミノ酸が非ヒトの哺乳類のイムノグロブリン軽鎖或いは重鎖からの対応するアミノ酸に置換される組換えDNA技術によって作り出される。例えば、イムノグロブリンがマウスモノクローナル抗体である場合、抗原結合のために必要でない少なくとも一つのアミノ酸はその位置において対応するヒト抗体に存在するアミノ酸を使用して置換される。操作のいかなる特定の理論にもよって結合されることを望まずに、モノクローナル抗体の「ヒト化」が異質のイムノグロブリン分子に対してヒトの免疫学的な反応性を抑制すると考えられる。
【0024】
Queen et al.(1989),Proc. Nat. Acad. Sci. USA 86:10029−10033および国際公開第WO90/07861号はヒト化した抗体の調製について記載している。ヒトおよびマウス可変枠組み領域は最適のタンパク質配列相同性のために選ばれた。ヒト及びマウスの可変領域の前記三次構造は、コンピュータでモデル化され、相同的なヒト枠組み上に重ね合わされ、その結果前記マウスCDRsを有するアミノ酸残基の最適な相互作用を示した。このようにして、抗原に対して改良された結合親和性を有する抗体の開発に至った(これは主としてCDR−移植したキメラ抗体の作成の減少である)。ヒト化した抗体を得るための他の方法は当業者において周知であり、例えば、Tempest(1991)Biotechnology 9:266−271に記載されている。
【0025】
「単鎖抗体」とは、イムノグロブリン重鎖および軽鎖断片が設計したアミノ酸のスパンを介してF(v)領域とつながれる組換えDNA技術によって形成される抗体を指す。単鎖抗体を生成するさまざまな方法は周知であり、米国特許第4,694,778号、Bird(1988)Science 242:423−442、Huston(1988)Proc. Natl. Acad. Sci.USA 85:5879−5883、Ward(1989)Nature 334:54454、およびSkerra(1988)Science 242:1038−1041に記載されているものを含んでいる。
【0026】
本発明の前記抗体は標識を有する免疫複合体として或いは単独で使用されてもよい。そのような標識は、酵素、ビオチン、放射性核種、蛍光団、化学発光剤(chemiluminescers)、正磁性粒子などを含む。適切な標識はフルオレセイン、ローダミン、イソチオシアネート、フィコエリトリン、西洋わさびペルオキシダーゼおよびコロイド金を含むがこれらに限定されるものではない。
【0027】
本発明の前記抗体は、共有結合的付加によって抗体のそのエピトープに対する結合を妨げないように、例えば前記抗体に対する任意の種類の分子の共有結合的付加などによって、修飾される誘導体を含む。適切な誘導体の実施例は、糖鎖修飾された抗体および断片、アセチル化された抗体および断片、ペグ化された抗体および断片、リン酸化された抗体および断片およびアミド化された抗体および断片を含むが、これらに限定されるものではない。本発明の前記抗体およびその誘導体は、周知の保護/阻害基、タンパク質分解性切断、細胞のリガンド或いは他のタンパク質などによって誘導化されたものなどであっても良い。更に本発明の前記抗体およびその誘導体は、1若しくはそれ以上の古典的でないアミノ酸を含んでも良い。
【0028】
本発明のモノクローナル抗体は、PMS2、その切断された断片、或いはそのペプチド断片を動物に免疫化することによって作り出されても良い。そのように免疫化された動物は前記タンパク質に対する抗体を作り出す。標準的な方法は、周知のモノクローナル抗体の作成であり、ハイブリドーマ技術(Kohler & Milstein(1975)Nature 256:495−497を参照)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor(1983)Immunol.Today 4:72を参照)およびヒトモノクローナル抗体を作り出すEBVハイブリドーマ技術(Cole et al.,MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,1985,pp.77−96を参照)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0029】
PMS2或いはその切断した断片に特異的に結合する抗体のスクリーニングは、例えばマイクロタイタープレートを前記PMS2で塗布する酵素結合免疫測定法(ELISA)を使用して成し遂げられても良い。
【0030】
PMS2またはその切断型に対する前記抗体の反応性確認は、例えば普通の患者或いは遺伝性非ポリポ―シス大腸ガン(HNPCC)である患者由来のタンパク質を還元および非還元条件下のSDS−PAGEゲル上で泳動し、その後メンブレン上へブロッテイングするウェスタンブロットアッセイを使用して成し遂げられる。その後前記メンブレンは推定抗PMS2抗体によってプローブ化される。ウェスタン上の適切な大きさのバンドは、前記抗体の特異性およびPMS2の全長および切断された型の両方にへの結合能力を示す。
【0031】
本発明の前記抗体およびその誘導体は1×10−2未満の解離定数(K)を含む結合親和性を有する。一部の実施形態において、前記Kは、1×10−3未満である。他の実施形態において、前記Kは1×10−4未満である。一部の実施形態において、前記Kは1×10−5未満である。さらに他の実施形態において、前記Kは1×10−6未満である。他の実施形態において、前記Kは1×10−7未満である。他の実施形態において、前記Kは1×10−8未満である。他の実施形態において、前記Kは1×10−9未満である。他の実施形態において、前記Kは1×10−10未満である。さらに他の実施形態において、前記Kは1×10−11未満である。一部の実施形態において、前記Kは1×10−12未満である。他の実施形態において、前記Kは1×10−13未満である。他の実施形態において、前記Kは1×10−14未満である。さらに他の実施形態において、前記Kは1×10−15未満である。
【0032】
本発明の抗体は生体内或いは試験管内で作り出される。生体内の抗体産生に対して、動物は一般的にPMS2(PMS2の免疫原性のペプチドなど)の免疫原性部分によって免疫化される。前記抗原は一般に免疫原性を促進するアジュバントと混合される。アジュバントは免疫化のために使用される生物種によって変化する。アジュバントの実施例はフロイント完全アジュバント(「FCA」)、フロイント不完全アジュバント(「FIA」)、ミネラルゲル(例えば水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えばリゾレシチン、プルロン酸ポリオール、ポリアニオン)、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシニアン(「KLH」)、ジニトロフェノール(「DNP」)、および例えばウシ型弱毒結核菌ワクチン(BCG)およびコリネバクテリウムパルブなどの潜在的に有用なヒトアジュバントを含むが、これらに限定されるものではない。このようなアジュバントは当業者に周知のものでもある。
【0033】
免疫化は周知の手順を使用して成し遂げられる。前記供与量および免疫化措置は免疫性を与えられる哺乳類の種、その免疫状態、体重および/或いは算出表面積などに依存する。一般的には、血清は、免疫性を与えられた哺乳類からサンプル化され、例えば下記のように適切なスクリーニングアッセイを用いて抗PMS2抗体を分析する。
【0034】
免疫性を与えられた動物からの脾細胞は、骨髄腫株のような不死の細胞株と前記脾細胞(前記抗体-産生性B細胞を含むこと)を融合させることによって不死化される。一般的に、骨髄腫細胞株は、前記脾細胞ドナーと同じ生物種由来である。ある実施形態において、前記不死の細胞株は、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(HAT培地)を含む培地に感受性がある。一部の実施形態において、前記骨髄腫細胞はEBウィルス(EBV)感染に対して陰性である。好適な実施例において、前記骨髄腫細胞は、HAT感受性があり、EBV陰性および免疫グロブリン発現陰性である。いかなる適切な骨髄腫が使用されても良い。マウスのハイブリドーマはマウス骨髄腫細胞株(例えば前記P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653或いはSp2/O−Ag14骨髄腫株)を使用して作り出されても良い。これらのマウスの骨髄腫株はATCCから入手可能である。これらの骨髄腫細胞はドナー脾細胞ポリエチレングリコール(「PEG」)、好ましくは分子量1500のポリエチレングリコール(「PEG1500」)と融合される。非融合および非生産的な融合骨髄腫細胞を死滅させるHAT培地において、前記融合から生じているハイブリドーマ細胞は選択される。非融合の脾細胞は短期間の培養で死滅する。一部の実施形態において、前記骨髄腫細胞は免疫グロブリン遺伝子を発現しない。
【0035】
後述するものなどのスクリーニングアッセイによって検出される所望の抗体を作り出しているハイブリドーマは、培養或いは動物において抗体を作り出すために用いられても良い。例えば、前記ハイブリドーマ細胞は、条件下の栄養培地において、そして前記ハイブリドーマ細胞が前記培地に前記モノクローナル抗体を分泌することができるのに十分な時間培養される。これらの手技および培地は当業者において周知である。別の方法として、前記ハイブリドーマ細胞は、非免疫化動物の腹膜に注射されても良い。前記細胞は前記腹膜腔において増殖し、腹水液として蓄積した抗体を分泌する。前記腹水液は前記モノクローナル抗体の豊富な原料としてシリンジで前記腹膜腔から回収される。
【0036】
ヒト抗体を産生する別の限定されない方法は、米国特許第5,789,650号に記載されており、これは不活性化されている自身の内因性の免疫グロブリン遺伝子を有する他の生物種(例えばヒト)の抗体を作り出すトランスジェニック哺乳類の特徴を述べている。前記異種抗体の遺伝子は、ヒト免疫グロブリン遺伝子によってコード化される。再配列されていないイムノグロブリンのコード化領域を含む導入遺伝子は、非ヒト動物に導入される。得られたトランスジェニック動物は、機能的に前記トランスジェニックのイムノグロブリン配列を再配置して、ヒト免疫グロブリン遺伝子によってコード化されたさまざまなアイソタイプの抗体のレパートリーを作り出すことができる。前記トランスジェニック動物由来のB細胞は、その後不死化している細胞系(例えば骨髄腫細胞)との融合を含むいかなる様々な方法によっても不死化される。
【0037】
PMS2に対する抗体は、当業者に周知の様々な方法を用いて試験管内でも調製され手も良い。例えば、この方法に限定しないが、PMS2に対する完全なヒトモノクローナル抗体は、試験管内で抗原刺激を受けたヒト脾細胞を使用することによって調製されても良い(Boerner et al.,(1991)J.Immunol.147:86−95)。
【0038】
別の方法として、例えば、本発明の抗体は「レパートリークローニング」によって調製されても良い(Persson et al.,(1991)Proc. Nat. Acad. Sci. USA 88:2432‐2436、およびHuang and Stollar(1991)J.Immunol.Methods 141:227−236)。更に、米国特許第5,798,230号は、Epstein−Barrウィルス核抗原2(EBNA2)を発現するEpstein−Barrウィルスの感染によって不死化されたヒトB抗体−産生性B細胞からのヒトモノクローナル抗体の調製を記載しているる。EBNA2は、不死化のために必要であり、その後不活性化され、増加する抗体価をもたらす。
【0039】
他の実施形態において、PMS2に対する抗体は、末しょう血液単核細胞(「PBMCs」)のin vitroによる免疫化によって形成される。これは、例えば文献(Zafiropoulos et al.,(1997)J.Immunological Methods 200:181−190)に記載されている方法を使用するなど、当業者において周知のいかなる手段にもよっても達成され得るものである。
【0040】
本発明のある実施形態において、in vitro免疫化のための手順は、PMS1、PMS2、PMS2‐134、PMSR2、PMSR3、MLH1、MLH2、MLH3、MHL4、MLH5、MLH6、PMSL9、MSH1およびMSH2などのミスマッチ修復遺伝子の優性阻害対立遺伝子が、脾細胞の融合後ハイブリドーマ細胞に、或いは融合前に骨髄腫細胞に導入される前記ハイブリドーマ細胞の直接的な進化を伴って補足される。前記優性阻害突然変異株を含む細胞は、過剰に変化するよう(hypermutative)になり、形質導入されなかった対照細胞より高い割合で突然変異を蓄積する。前記突然変異細胞の貯蔵によって、より高い親和性抗体を生産する、或いは抗体のより高い力価を生産する、或いは特定の条件下でより速く或いははより良く単に増殖するクローンが選別されても良い。ミスマッチ修復遺伝子の優性阻害対立遺伝子を使用している高易変な細胞を作り出すための前記手技は、2000年11月14日公開の米国特許第6,146,894号に記載されている。別の方法として、ミスマッチ修復は、Nicolaidesらによる2002年7月18日公開の国際出願番号第02/054856号「Chemical Inhibitors of Mismatch Repair」において記載されているのミスマッチ修復の化学的阻害剤を使用して抑制されても良い。前記ミスマッチ修復遺伝子の優性阻害対立遺伝子或いはミスマッチ修復の化学阻害剤を用いた抗体の増強技術は、クローン化した免疫グロブリン遺伝子も発現している哺乳類の発現細胞に適用される。前記優性阻害対立遺伝子を発現している細胞は、この細胞が再び遺伝的に安定している状態になり、もはや異常に高い割合で突然変異が蓄積しないように、誘導性である場合は前記優性阻害対立遺伝子を遮断し前記細胞から削除するなどして、「矯正する(cured)」することも可能である。
【0041】
前記免疫原はいかなるPMS2でもよいが、哺乳類のPMS2が好ましい。PMS2の切断型が使用されても良い。PMS2の前記N末端が生物種わたってより高度に保存されている場合、一部の実施形態においては、ある生物種のPMS2を認識する抗体は他の種もまた認識することが予期される。例えば、この方法に限定しないが、前記N末端領域におけるヒトPMS2(配列ID番号:2)に結合するモノクローナル抗体は、マウスPMS2(配列ID番号5)において、さらにシロイヌナズナPMS2(配列ID番号6)及び切断されたヒトPMS2−134(配列ID番号1)においてさえ、前記同じ領域と結合することも可能である。前記免疫原は、また、PMS2の免疫原性ペプチド或いはPMS2の高度に保存されたペプチドであっても良い。そのような使用され得る2つのペプチドは、IQEFADLTQVETFGFR(配列ID番号3)およびELVENSLDAGATNIDLK(配列ID番号4)であっても良い。
【0042】
本発明は、切断されたPMS2を発現している患者における異常状態を検出する方法も提供する。前記方法は、ミスマッチ修復の欠陥を有すると疑われる患者からの検体細胞溶解物を、ハイブリドーマ細胞349−29.5.2或いは349−22.1.3によって分泌されるモノクローナル抗体と接触させる工程と、PMS2の切断型の有無を検出する工程とを有する。PMS2の切断型の存在は、癌にかかり易い患者のミスマッチ修復の異常状態を表す。そのような癌は、遺伝性の遺伝性非ポリポ ー シス大腸ガンを含むが、これに限定されるものではない。PMS2の前記切断型の存在は。免疫沈降、ウエスタンブロットおよびELISAを含むさまざまな手段によって検出可能である。
【0043】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供されるものであり、これらを限定するものとして解釈されるものではない。
【実施例1】
【0044】
免疫原の発現
プラスミドp−ET−k−134(フレームの外にヒスチジン標識NB37p46を有しT7プロモータからhPMS2−134を発現するプラスミド)によって形質転換した大腸菌BL21(DE3)細胞の5ミリリットルのIPTG−誘発(100mM)培養液を得た。発現は45mlのLB−Kan(50mg/ml)に1ml(OD600=0.5)を植菌することによって誘発した。前記細胞はB−PER細菌蛋白抽出試薬の添加によって溶解して、製造業者の規定につき封入体を溶解物から精製した。前記封入体ペレットを400μlの2×LDS検体バッファーに溶解し、5分間沸騰させて、12%のMESバッファーのBis−トリス2次元ゲルを還元する際、可溶化した封入体を4つのゲルを125μl/ゲルで電気泳動にかけた。前記ゲルをGelcode Blueコロイド性クーマシーブルー(Pierce)で染色した。15キロダルトン・バンドを切除し、セントルイス大学ハイブリドーマ施設に送った。1つのゲル切片はアミノ酸分析にかけた。アミノ酸分析はhPMS2‐134のポリペプチドと一致していた。他のゲル切片をトリプシンペプチド(NB37p72)のMALDI−TOF MS解析のために処理した。hPMS2−134に対する2つのペプチド・マッチは、データベース検索で見つけた(IQEFADLTQVETFGFR(配列ID番号3)およびELVENSLDAGATNIDLK(配列ID番号4))。ハイブリドーマを生成するために、4匹のマウスに免疫性を与えた。4匹すべては、マウス血清を用いたウエスタンブロッティングによって最初の免疫原に対する反応性を示した。マウス#464はリンパ球融合(NB70p3)のために選択された。
【実施例2】
【0045】
第二の細菌性の発現コンストラクトのクローニングおよびHis−hPMS2−134のIMAC精製
第二のアラビノース-誘導性の細菌性の発現コンストラクトは、プラスミドpBAD−HisAにおいて作成し、今回はhPMS2−134(NB37p1)を伴ったフレーム内にN末端に6個のヒスチジン標識用いて作成した。このプラスミドをp0126と指定した。ヒスチジン標識hPMS2−134をTalonコバルト親和性樹脂の固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(Clontech,NB37p93)によって、p0126を持っているBL21の誘発培地から精製した。精製したhPMS2‐134(クローン349−1)に特異的に反応した単一のハイブリドーマを同定した。
【実施例3】
【0046】
マウスのハイブリドーマのスクリーニングおよびエピトープマッピング
クローン349−1は更に限界希釈によってサブクローニングして、再びスクリーニングした(NB70p8)。349−1からの12個のサブクローンの反応性をウエスタンブロッティングによって調べた。12クローン全ては細菌で作られたhPMS2−134(NB70p12)に特異的に反応した。クローン349−1.1だけはCHO−124或いはCHO−125から発現したhPMS2‐134に反応した(hPMS2−134を発現しているCHOトランスフェクタント或いはC末端にV5−標識をつけたhPMS2−134、各々NB70p14)。349−1から4つの2回サブクローンしたハイブリドーマ(349−1.1.1から349−1.1.4)と同様に、349−1からの3つの2回サブクローンしたハイブリドーマの第2セット(349−1.2.1から349−1.2.3)を得て、全てを細菌で発現したhPMS2‐134に対して調べた。全てhPMS2‐134に対して反応性を持っていた。しかし、クローン349−1.2.2だけはCHO−発現したhPMS2−134に特異的な反応性を示した。このmAbもCHO溶解物(ハムスターPMS2と推定)から分子量120kDの第2のバンドを同定した。2つのハイブリドーマはこのスクリーン(349−1.1.3および349−1.2.2)から維持した。IgGはタンパク質Gクロマトグラフィー(NB70p44)によって35mlの各々の培養上清から精製した。どちらの精製されたmAbも特異的にCHOにおいて発現するhPMS2‐134に反応しなかった。
【0047】
マウス#480を用いて2回目の融合およびスクリーニングを始めた(NB70p48)。17個のハイブリドーマを選択して(前記Yaciukグループによる細菌で発現したhPMS2‐134へのそれらの反応性に基づいて)、CHO−発現したhPMS2‐134の反応性を調べた。いずれもhPMS2‐134に特異的に反応性を示さなかった。細菌性のhPMS2‐134に対するスクリーニングを繰り返した。4つのハイブリドーマ(349−22,349−25,349−29,349−36)が反応した(NB70p52)。
【0048】
欠失研究は、C末端から残基81までのエピトープを共有している初めに分離したmAbs(349−1.1.3および349−1.2.2)がC末端から残基81までのエピトープを共有していることを示し、その一方で、第二世代mAbsはアミノ酸55から81の間に位置するエピトープを共有していた。重なり合う15merペプチドを用いたエピトープマッピング研究は、重要なエピトープを同定することに失敗した。
【0049】
第二世代ハイブリドーマ(マウス#480由来)を2回の限界希釈によってサブクローニングした。培養上清の細菌性hPMS2‐134に対する反応性に関して調べた。この大部分は、ウエスタンブロッティング(NB71p7)で反応性を示した。これらに対して、クローン349−22.1.3および349−29.5.2を拡大のために選択した。更なる確認を実行した。349−29.5.2に対する西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)の接合を行い、ウエスタンブロットの前記結果はクローン349−29.5.2の上清液で確かめて、HRP−接合化349−29.5.2抗体については図1に示す。各々のウェルはPMS2‐134を発現しているヒト細胞株の増加した量を含んでいた。示した前記ウェルはレーン1、2、3および4において各々30,000、60,000、90,000および120,000の細胞/ウェルを含んでいた。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、ヒト細胞株において発現するヒトPMS2−134に対する、349−29.5.2細胞上清由来の抗体および349−29.5.2から精製されHRP−接合抗体のウエスタンブロットの反応性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PMS2或いは切断したPMS2に特異的に結合する抗体。
【請求項2】
請求項1の抗体において、前記抗体に結合する前記エピトープは配列ID番号3或いは配列ID番号4のアミノ酸配列を有するものである。
【請求項3】
請求項2の抗体において、前記エピトープは配列ID番号1或いは配列ID番号2のアミノ酸配列を有するものである。
【請求項4】
請求項1の抗体において、前記PMS2は配列ID番号5或いは配列ID番号6を有するものである。
【請求項5】
請求項1の抗体において、前記抗体はモノクローナル抗体である。
【請求項6】
請求項1の抗体において、前記抗体はクローン349−22.1.3或いは349−29.5.2のハイブリドーマ細胞によって作り出されるものである。
【請求項7】
請求項1の抗体において、前記抗体は検出可能な標識に接合されるものである。
【請求項8】
請求項7の抗体において、前記標識は酵素、ビオチン、放射性核種、蛍光団、化学発光剤(chemiluminescers)或いは常磁性粒子である。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5或いは6の抗体を産生する抗体産生細胞。
【請求項10】
請求項9の細胞において、前記細胞はクローン349−22.1.3或いは349−29.5.2のハイブリドーマ細胞である。
【請求項11】
PMS2タンパク質質の切断型を検出する方法であって、被検細胞から細胞溶解物を調製する工程と、前記溶解物を請求項1の抗体に暴露する工程と、前記抗体を検出する工程とを含む方法。
【請求項12】
請求項11の方法において、前記PMS2タンパク質の前記切断型はウエスタンブロットによって検出されるものである。
【請求項13】
請求項11の方法において、前記PMS2タンパク質の前記切断型はELISAによって検出されるものである。
【請求項14】
請求項11の方法において、前記PMS2タンパク質の前記切断型は免疫沈降によって検出されるものである。
【請求項15】
切断されたPMS2を発現している患者の異常状態を検出する方法であって、前記方法は前記患者の被検細胞溶解物をクローン349−22.1.3或いはクローン349−29.5.2のハイブリドーマ細胞によって分泌されたモノクローナル抗体に接触させる工程と、PMS2の切断型の有無を検出する工程とを有するものであって、ここで、前記PMS2の切断型の存在は異常状態を示すものである方法。
【請求項16】
請求項15の方法であって、前記異常状態は癌である。

【図1】
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【公表番号】特表2008−504218(P2008−504218A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543981(P2006−543981)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/041260
【国際公開番号】WO2005/056599
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506031948)モルフォテック、インク. (16)
【Fターム(参考)】