説明

PONシステムのMPCP処理装置

【課題】PONにおけるMPCPで、複数の割込がバースト的に発生した場合でもCPUの処理負荷を押さえられるようにした。
【解決手段】OLTと1対多で接続される複数のONU間のアクセス制御を行うMPCPの割込み信号をCPUに出力するMPCP処理装置において、複数のONUに対応する割込み信号を入力し、MPCPフレームの最小受信間隔で発生する1つのONUの複数の割込み信号に対して割込み要因の優先順位に応じた順番で、またMPCPフレームの最小受信間隔で発生する複数のONUの同じ割込み要因の割込み信号に対してONUの優先順位に応じた順番で、各割込み信号の出力調停を行う調停回路と、調停回路の出力調停により順番に出力される割込み信号を格納し、当該割込み信号を格納順にCPUに出力する割込み表示レジスタとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PON(Passive Optical Network )システムにおいて、局に設置されるOLT(Optical Line Terminal :光加入者線終端装置)と、各ユーザ宅にそれぞれ設置される複数のONU(Optical Network Unit:光加入者線ネットワーク装置)との間で、複数のONU間のアクセス制御を行うMPCP(Multi-point Control Protocol)の割込み信号を処理するMPCP処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、PONシステムの構成例を示す(非特許文献1)。
図1において、PONシステムは、局に設置されるOLT11と、各ユーザ宅にそれぞれ設置される複数m個のONU12と、OLT11と複数m個のONU12を1:mに接続する光ファイバ13および光スプリッタ14とにより構成される。
【0003】
OLTからONUへの下り方向通信では、OLTが各ONUに割り当てたLLID(Logical Link IDentifier :論理リンク識別子)を付加した下りフレームを時分割多重して送信し、当該下りフレームが光スプリッタで分岐してすべてのONUに転送される。各ONUは、下りフレームのLLIDにより、自分宛ての下りフレームだけを抽出して受信する。
【0004】
ONUからOLTへの上り方向通信では、各ONUはOLTから割り当てられたLLIDを付加した上りフレームを、OLTから割り当てられた帯域(送信開始時刻と送信継続時間)で送信し、各ONUからの上りフレームが光スプリッタで合流してOLTに転送される。OLTは、上りフレームのLLIDにより、どのONUから送信された上りフレームであるかを判別して受信する。
【0005】
OLTのMPCPは、イーサネット(登録商標)のMAC制御層を拡張したマルチポイントMAC制御副層で、複数のONU間のアクセス制御のためのディスカバリや上り信号制御を行う。ディスカバリでは、OLTがPONシステムに接続されたONUを自動的に発見し、ONUにLLIDを付与して通信リンクを自動的に確立する制御を行う。上り信号制御では、各ONUからの上りフレームが光スプリッタで合流後に衝突しないように、各ONUに対してそれぞれの送信開始時刻と送信継続時間(送信量)を通知する帯域割当を行う。各ONUは、それぞれの帯域割当期間で上りフレームを送信する。
【0006】
MPCP処理装置は、各ONUからのMPCPフレーム受信、各ONUに対するMPCPフレーム送信完了、複数種類のタイマ満了などのイベントを契機として、通信リンクの確立・切断動作の状態遷移を実行する。このフレーム送受信やタイマカウントなどは、リアルタイム性が要求されるためにハードウェアで実行される。一方、リンク確立・切断の状態遷移については、手順が変更されたり規格に明記されていない部分があってハードウェア化に不向きなためにソフトウェアで実行される。このようなMPCP処理を行う従来のMPCP処理装置の構成例を図2に示す。
【0007】
図2において、MPCP処理装置は、各ONUに対応する複数のMAC制御部21を備え、各MAC制御部21内に通信リンクを確立維持するための各種機能が搭載される(非特許文献1)。なお、割込みイベントとして、フレーム受信、フレーム送信完了、複数種類のタイマ満了などがある。ここで、多数のONUが存在することと、イベントの発生頻度が低いことから、MPCP処理装置ではハードウェアで発生する種々のイベント発生を割込み信号によりCPU(中央処理装置)22へ通知し、ソフトウェアで処理する方法がとられる。
【0008】
しかし、MPCPフレームの最小受信間隔で各ONUにそれぞれ複数の割込み信号が発生する可能性があり、またONU間でも複数の割込み信号が発生する可能性があるため、各ONUに対応するMAC制御部21内に割込み表示レジスタ(割込み処理に必要な情報も含む)23が割込み信号ごとに用意される。また、CPU22は割込み処理を即時実行する保障がないため、表示されている複数の割込みを処理する順番を決める手段が必要になる。例えば、各ONUに対応する割込み表示レジスタ23に割込み発生順序を記憶し、割込みを処理するCPU22から割込み表示レジスタ23をスキャンして処理順序を判断する方法をとる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】IEEE802.3ah
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のMPCP処理装置では、各ONUで複数種類の割込みがバースト的に発生することに対応するため、割込み要因(イベント)ごとにその割込み信号を記憶する割込み表示レジスタを用意し、発生時刻の記録と発生順に処理するための手段が必要になっている。そのため、ハードウェア規模が大きくなるとともに、割込み処理するCPUは割込み表示レジスタをスキャンして処理順序を判断するために効率が悪かった。
【0011】
本発明は、割込み信号の記憶に必要なバッファ量を削減し、簡単な構成で各ONUに対応する割込み信号を所定の順番で処理させることができるPONシステムのMPCP処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、OLTと1対多で接続される複数のONU間のアクセス制御を行うMPCPの割込み信号をCPUに出力するMPCP処理装置において、複数のONUに対応する割込み信号を入力し、MPCPフレームの最小受信間隔で発生する1つのONUの複数の割込み信号に対して割込み要因の優先順位に応じた順番で、またMPCPフレームの最小受信間隔で発生する複数のONUの同じ割込み要因の割込み信号に対してONUの優先順位に応じた順番で、各割込み信号の出力調停を行う調停回路と、調停回路の出力調停により順番に出力される割込み信号を格納し、当該割込み信号を格納順にCPUに出力する割込み表示レジスタとを備える。
【0013】
また、調停回路は、MPCPフレームの最小受信間隔で発生する1つのONUの複数の割込み信号を、当該最小受信間隔で割込み表示レジスタへ格納する機能を有する構成である。
【0014】
また、調停回路は、ONUの優先順位として、通信リンクを確立した際にMPCP処理装置において付与する識別番号の若番の順番に設定する構成である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のMPCP処理装置は、1つのONUに対応する複数の割込み信号を調停し、さらに複数のONUから発生する割込み信号を調停して割込み表示レジスタに格納し、割込み信号を格納順にCPUに出力して割込み処理を行うことにより、CPUにおける割込み信号の処理順序を決定する処理が不要になり、処理効率を向上させることができる。また、割込み信号のもとになるイベントの発生頻度が低いため統計多重効果が期待でき、1つの割込み表示レジスタで対応できるとともに、小さなメモリ容量で対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】PONシステムの構成例を示す図である。
【図2】従来のMPCP処理装置の構成例を示す図である。
【図3】本発明のMPCP処理装置の実施例構成を示す図である。
【図4】MPCPフレームの送受信間隔を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図3は、本発明のMPCP処理装置の実施例構成を示す。
図3において、MPCP処理装置は、ONU1,ONU2,…に対応する割込み信号を入力し、1つのONUにおける異なる割込み要因1〜nの複数の割込み信号に対して、また複数のONU1〜mにおける同じ割込み要因の複数の割込み信号に対して出力調停を行う調停回路31と、調停回路31から出力される各割込み信号を順番に記憶しながらCPUに割込み処理要求を行う割込み表示レジスタ(FIFO:First In First Out)32とを備える。このような調停回路31としては、例えば各ONUに対応する割込み信号を割込み要因ごとに集約し、複数のONUの同じ割込み要因に対してONUの優先順位に応じた順番で各割込み信号を出力する割込み信号集約部33と、各割込み信号集約部33から出力される割込み信号を割込み要因の優先順位に応じた順番で出力する割込み信号出力制御部34により構成することができる。
【0018】
ここで、MPCPに従って動作する各ONUが送信するMPCPフレームは、図4に示すように、フレーム長オーダの最小受信間隔で順番に受信されるが、個々のONUがMPCPフレームを送信する間隔(最小送信間隔)は、最小受信間隔よりも十分に長い時間(最小受信間隔の32〜280 倍以上)に設定される。このようなMPCPフレームの送受信間隔において、各ONUに対応する割込み信号には、各ONUが送信するMPCPフレームの受信時に発生するMPCPフレーム受信通知や、MPCPフレームの受信間隔監視タイマのタイムアウト通知など、MPCPフレームの最小受信間隔で数個(4〜5個)の割込み信号が発生する可能性がある。また、MPCPフレームの最小受信間隔で、複数のONUから同じ割込み要因の割込み信号が発生する可能性もある。したがって、調停回路31は、MPCPフレーム最小受信間隔で数個の割込み信号を割込み表示レジスタ32へ格納する機能をもっている。
【0019】
調停回路31の動作例を示す。(1) 各ONUに対応する割込み信号は、割込み要因ごとに対応する割込み信号集約部33に集約される。(2) 割込み信号集約部33は、1つの割込み信号を割込み信号出力制御部34に出力する。ここで、1つの割込み信号集約部33に異なるONUに対応する複数の割込み信号があれば、例えば通信リンクを確立した際にMPCP処理装置において付与する識別番号の若番順による優先順位に従い、高優先順位のONUに対応する割込み信号が出力される。(3) 割込み信号出力制御部34は、各割込み要因に応じた割込み信号集約部33から入力する割込み信号のうち、高優先順位の割込み要因の割込み信号を割込み表示レジスタ32に出力するとともに、当該割込み信号集約部33に割込みクリアを指示し、当該割込み信号をクリアする。(4) 以上の処理を割込み信号集約部33と割込み信号出力制御部34との間で繰り返す。
【0020】
これにより、MPCPフレームの最小受信間隔で1つのONUに複数の割込み信号が発生し、また複数のONUから同じ割込み要因の割込み信号が発生しても、調停回路31が割込み要因の優先順位およびONUの優先順位に従って順番に割込み表示レジスタ32に出力することができる。なお、MPCPフレームの最小受信間隔で発生する各ONUの割込み信号のすべては、MPCPフレームの最小受信間隔で調停回路31から割込み表示レジスタ32に出力されるので、割込み信号の発生順の多少の入れ替えは起こるが大きな入れ替えは生じない。また、同一のONUで同じ割込み要因の割込み信号が再度発生する前に、発生したすべての割込み信号を取りこぼすことなく割込み表示レジスタ32に格納することができる。CPUは、割込み表示レジスタ32から出力される割込み信号を順番に処理するだけでよく、複数のONUに対応する複数の割込み信号の処理順序を決定する処理が不要となり、処理効率が向上する。
【0021】
また、割込み信号のもとになるイベントの発生頻度が低いため統計多重効果が期待できるので、1つの割込み表示レジスタ32で対応でき、しかも小さなメモリ容量で対応することができる。
【符号の説明】
【0022】
11 OLT(光加入者線終端装置)
12 ONU(光加入者線ネットワーク装置)
13 光ファイバ
14 光スプリッタ
21 MAC制御部
22 CPU(中央処理装置)
23 割込み表示レジスタ
31 調停回路
32 割込み表示レジスタ
33 割込み信号集約部
34 割込み信号出力制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OLTと1対多で接続される複数のONU間のアクセス制御を行うMPCP(Multi-point Control Protocol)の割込み信号をCPUに出力するMPCP処理装置において、
前記複数のONUに対応する割込み信号を入力し、MPCPフレームの最小受信間隔で発生する1つのONUの複数の割込み信号に対して割込み要因の優先順位に応じた順番で、またMPCPフレームの最小受信間隔で発生する前記複数のONUの同じ割込み要因の割込み信号に対してONUの優先順位に応じた順番で、各割込み信号の出力調停を行う調停回路と、
前記調停回路の出力調停により順番に出力される割込み信号を格納し、当該割込み信号を格納順に前記CPUに出力する割込み表示レジスタと
を備えたことを特徴とするMPCP処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のMPCP処理装置において、
前記調停回路は、MPCPフレームの最小受信間隔で発生する1つのONUの複数の割込み信号を、当該最小受信間隔で前記割込み表示レジスタへ格納する機能を有する構成である
ことを特徴とするMPCP処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のMPCP処理装置において、
前記調停回路は、前記ONUの優先順位として、通信リンクを確立した際にMPCP処理装置において付与する識別番号の若番の順番に設定する構成である
ことを特徴とするMPCP処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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