説明

PTCヒータ制御装置

【課題】本発明は、PTCヒータに通電したときの突入電流を減少させると共に、PTCヒータの温度分布が不均一となることを抑制するPTCヒータ制御装置を提供する。
【解決手段】第1モードにおいては、第1及び第2PTC素子15A,15Bが直列に接続され、第3及び第4PTC素子15C、15Dが直列に接続される。これにより合成抵抗値を大きくすることができるから、PTCヒータ11への突入電流を抑制できる。さらに、第1及び第2PTC素子15A,15Bの組と、第3及び第4PTC素子15C,15Dの組とは、電源ライン25と接地ライン26との間に並列に接続されている。これにより、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dの全てに通電できるから、PTCヒータ11の加熱効率が低下することを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTCヒータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータとして特許文献1のものが知られている。このものは、電源間に並列接続される複数列のPTC素子(通電発熱部)を備えてなる。複数列のPTC素子のそれぞれにはスイッチ手段が直列に接続されている。各スイッチ手段は、制御装置により、PTC素子に対するオン、オフのタイミングが制御されるようになっている。
【特許文献1】特開2006−327341公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図1に、PTC素子の温度と、PTC素子の抵抗値との関係を示す。図1に示すように、PTC素子は、キュリー温度Tcにおいて抵抗が急激に大きくなる性質を有している。このPTC素子に通電すると、PTC素子はジュール熱により自己発熱し、室温T1から温度Tminまで温度が上昇したときに抵抗値Rminが極小となり、PTC素子に大きな電流(いわゆる突入電流)が流れる。
【0004】
更に通電を続けると、PTC素子の温度は上昇し、Tcに到達する。すると、抵抗が急激に大きくなるためにPTC素子に通電される電流量が抑制される。すると、PTC素子の温度が下がり、抵抗値も小さくなるので、今度は電流量が増大する。このようにTcの近傍で電流量が増加、減少を繰り返すことで、PTCヒータは、Tcを含む通常の使用温度領域T2において、安定的に使用されるようになっている。
【0005】
上述したように、複数のPTC素子を有するPTCヒータにおいては、PTC素子に同時に通電すると、通電開始時における消費電力が非常に大きくなる。このため、バッテリーの電圧低下を招き、他の機器へ悪影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
上記の問題を解決するため、例えば従来技術においては、PTCヒータに電源を投入した後、制御装置は、スイッチ手段について、オンのタイミングをずらすことにより複数列のPTC素子を2個以上同時に立ち上げないようにするものがある。
【0007】
しかしながら上記の構成によると、PTCヒータへの通電開始時においては、一つのPTC素子のみに通電されるから、このPTC素子の温度は上昇するが、通電されない残りのPTC素子は室温のままとなる。このため、PTCヒータの温度分布が不均一となってしまい、加熱対象の温度分布が不均一になる。
【0008】
また、PTCヒータに流れる突入電流の大きさを、一つのPTC素子に流れる突入電流よりも小さくすることはできない。
【0009】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、PTCヒータに通電したときの突入電流を減少させると共に、PTCヒータの温度分布が不均一となることを抑制するPTCヒータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、第1、第2、第3及び第4のPTC素子が順に直列接続されてなると共に、前記第1及び第4PTC素子が電源ラインと接続された状態で、前記電源ラインと接地ラインとの間に配されるPTCヒータを制御する制御装置であって、前記第2PTC素子と前記第3PTC素子との間に設けられた第1電極に接続されて、前記第1電極と、前記電源ライン及び前記接地ラインのいずれか一方とを選択的に接続する第1スイッチ手段と、前記第1PTC素子と前記第2PTC素子との間に設けられた第2電極に接続されて、前記第2電極と前記接地ラインとを通電又は断電する第2スイッチ手段と、前記第3PTC素子と前記第4PTC素子との間に設けられた第3電極に接続されて、前記第3電極と前記接地ラインとを通電又は断電する第3スイッチ手段と、前記第1、第2及び第3スイッチ手段を制御する制御手段とを備え、前記PTCヒータに通電する際に、前記制御手段は、前記第1スイッチ手段により前記第1電極と前記接地ラインとを接続し、前記第2スイッチ手段により前記第2電極と前記接地ラインとを断電し、前記第3スイッチ手段により前記第3電極と前記接地ラインとを断電する第1モードで前記PTCヒータに通電した後、前記第1スイッチ手段により前記第1電極と前記電源ラインとを接続し、前記第2スイッチ手段により前記第2電極と前記接地ラインとを通電し、前記第3スイッチ手段により前記第3電極と前記接地ラインとを通電する第2モードで前記PTCヒータに通電することを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記第1モードにおける前記PTCヒータへの通電開始後の時間を計測する計時手段を備え、前記制御手段は、前記第1モードで前記PTCヒータに通電したときに、前記計時手段により計測された時間を取得し、前記時間が所定値に達したと判断した場合には、前記第2モードで前記PTCヒータに通電することを特徴とする。
【0012】
なお、請求項2の発明における所定値とは、第1モードでPTCヒータに通電したときに、PTCヒータの温度が通常使用時の温度領域(図1におけるT2)に到達するのに十分な時間をいう。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記制御手段は、前記第1モードで前記PTCヒータに通電したときに、前記PTCヒータの温度が所定値に達したと判断した場合には、前記第2モードで前記PTCヒータに通電することを特徴とする。
【0014】
なお、請求項3の発明における所定値とは、PTCヒータの通常使用時における温度(図1におけるT2)をいう。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記制御手段は、前記第1モードで前記PTCヒータに通電したときに、前記第1、第2、第3及び第4PTC素子を流れる電流値が所定値に達したと判断した場合には、前記第2モードで前記PTCヒータに通電することを特徴とする。
【0016】
なお、請求項4の発明における所定値とは、PTC素子の温度が通常使用時の温度領域(図1におけるT2)に到達したときにおけるPTC素子に流れる電流値をいう。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記制御手段は、前記第1モードで前記PTCヒータに通電したときに、前記第1、第2、第3及び第4PTC素子の抵抗値が所定値に達したと判断した場合には、前記第2モードで前記PTCヒータに通電することを特徴とする。
【0018】
なお、請求項5の発明における所定値とは、PTC素子の温度が通常使用時の温度領域(図1におけるT2)に到達したときにおけるPTC素子の抵抗値をいう。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のものにおいて、前記PTCヒータは車両用エアコンディショニング装置における供給空気の補助熱源とし使用されるものであって、前記制御手段は、前記第2モードで前記PTCヒータに通電したときに、エンジン冷却水の水温に基づいて前記第1、第2及び第3スイッチ手段を制御することで、前記PTCヒータへの通電量を段階的に減少させて断電する断電処理を行うことを特徴とする。
【0020】
請求項7の発明は、請求項6記載のものにおいて、前記第1又は第4PTCヒータと前記電源ラインとの間には、前記第1又は第4PTCヒータと前記電源ラインとを通電又は断電する第4スイッチ素子が接続されており、前記制御手段は、前記水温に基づいて前記第1、第2、第3及び第4スイッチ手段の制御を行うことで、前記断電処理を行うことを特徴とする。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のものにおいて、前記スイッチ手段は半導体スイッチ手段からなり、前記制御手段は、前記半導体スイッチ手段に対してPWM信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
<請求項1の発明>
第1モードにおいては、第1及び第2PTC素子が直列に接続され、第3及び第4PTC素子が直列に接続される。これにより合成抵抗値を大きくすることができるから、突入電流を抑制できる。
【0023】
さらに、第1及び第2PTC素子の組と、第3及び第4PTC素子の組とは、電源ラインと接地ラインとの間に並列に接続されている。これにより、第1、第2、第3及び第4PTC素子の全てに通電できるから、加熱対象の温度分布が不均一になることを抑制できる。
【0024】
しかしながら、第1モードにおいては、PTCヒータへの通電量は抑制されている。そこで請求項1の発明においては、第1モードでPTCヒータに通電した後に、第2モードで通電する構成とした。この第2モードにおいては、全てのPTC素子は、電源ラインと接地ラインとの間に並列に接続されているので、所望の発熱量を得ることができる。ここで所望の発熱量とは、例えば、一つのPTC素子に定格電圧を印加したときの発熱量をいう。
【0025】
<請求項2の発明>
請求項2の発明によれば、制御手段は、第1モードから第2モードへの切り替えを、計時手段により計測された時間に基づいて行う。これにより、PTCヒータに対するフィードバック機構が不要となるから、第1モードから第2モードへの切り替えを、簡素な構成で実現できる。
【0026】
<請求項3の発明>
請求項3の発明によれば、制御手段は、第1モードから第2モードへの切り替えを、PTCヒータの温度に基づいて行う。これにより、第1モードから第2モードへ切り替えることで、所望の発熱量を得ることができる。
【0027】
<請求項4の発明>
PTCヒータの温度が上昇し、各PTC素子に流れる電流値が十分に小さくなったにもかかわらず、第1モードでPTCヒータに通電すると、所望の発熱量を得ることができない。請求項4の発明によれば、制御手段は、第1モードから第2モードへの切り替えを、第1、第2、第3及び第4PTC素子を流れる電流値に基づいて行う。これにより、第1モードから第2モードへ切り替えることで、所望の発熱量を得ることができる。
【0028】
<請求項5の発明>
PTCヒータの温度が上昇し、各PTC素子の抵抗値が十分に大きくなったにもかかわらず、第1モードでPTCヒータに通電すると、所望の発熱量を得ることができない。請求項5の発明によれば、制御手段は、第1モードから第2モードへの切り替えを、第1、第2、第3及び第4PTC素子の抵抗値に基づいて行う。これにより、第1モードから第2モードへ切り替えることで、所望の発熱量を得ることができる。
【0029】
<請求項6の発明>
今日、車載用エアコンディショニング装置の大部分は、熱源としてエンジン冷却水(温水)を利用する温水ヒータシステムを利用している。しかし近年、エンジンの燃焼効率が改善された結果、暖房用の熱源確保が難しくなってきている。この点に鑑み、請求項6の発明によれば、PTCヒータを車載用エアコンディショニング装置の補助熱源として用いるので、車載用エアコンディショニング装置の暖房能力の向上を図ることができる。
【0030】
上述のようにPTCヒータは補助熱源として用いられるものなので、水温が十分に上昇した後にまでPTCヒータへ通電するのは無駄である。しかしながら、水温が十分に上昇する前にPTCヒータへの通電をやめてしまうと、供給空気の温度が急激に低下してしまい、車両の乗員にとって不快である。
【0031】
上記の点に鑑み、請求項6の発明によれば、制御手段は、第2モードでPTCヒータに通電したときに、エンジン冷却水の水温に基づいて第1、第2及び第3スイッチ手段を制御することで、PTCヒータへの通電量を段階的に減少させて断電する断電処理を行う構成とした。これにより、水温が十分に上昇したにもかかわらずPTCヒータに通電する状態を防止すると共に、供給空気の温度が急激に低下することを抑制できる。
【0032】
<請求項7の発明>
請求項7の発明によれば、第4スイッチ手段の制御を行うことにより、水温を反映した精度高い断電処理を行うことができる。これにより、供給空気の温度の変化を一層抑制できる。
【0033】
<請求項8の発明>
請求項8の発明によれば、半導体スイッチ手段に対してPWM信号を出力するPWM信号出力手段を設け、PTCヒータをPWM制御できる構成としたため、精度高い温度制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
<実施形態1>
本発明に係るPTCヒータ制御装置を車載用PTCヒータ制御装置に適用した実施形態1を図1ないし図13を参照して説明する。この制御装置10は、PTCヒータ11に接続されて、このPTCヒータ11の通電を制御するものであって、リレースイッチ12A,12B,12C,12D(スイッチ手段の一例)を含むスイッチユニット35と、このリレースイッチ12A,12B,12C,12Dを制御する制御部13とを備えてなる。
【0035】
PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ11は、図示しない空調ユニットから供給される供給空気の通路に配されて、補助熱源として用いられる。上述の空調ユニットは、例えば熱源としてエンジン冷却水(温水)を利用する温水ヒータシステムを利用している。PTCヒータ11は、温水ヒータシステムの暖房力不足を補助するために取り付けられている。PTCヒータ11に通電するとPTCヒータ11は自己発熱する。供給空気は発熱したPTCヒータ11と接触することで加熱されるようになっている。
【0036】
図2は、PTCヒータ11の一例を概略的に示す要部拡大模式図である。本実施形態におけるPTCヒータ11は、第1、第2、第3、第4及び第5の電極27,28,29、30、31と、第1、第2、第3及び第4のPTC素子15A,15B,15C,15Dと、金属からなる複数のフィン20とを、積層してなる。
【0037】
詳細には以下の通りである。まず、板状をなす第4の電極30の、図2における上面には第1のPTC素子15Aと、フィン20とが、電気的に接続された状態で順に積層されている。このフィン20の上方に、更に第2の電極28と、第2のPTC素子15Bと、フィン20とが電気的に接続された状態で順に積層されている。その上に、第1の電極27と、第3のPTC素子15Cと、フィン20とが電気的に接続された状態で順に積層されている。さらにその上に、第3の電極29と、第4のPTC素子15Dと、フィン20と、第5の電極31とが電気的に接続された状態で順に積層されている。これにより、第1、第2、第3及び第4PTC素子は電気的に直列に接続された状態になっている。
【0038】
PTC素子15A,15B,15C,15Dは、温度上昇に伴って電気抵抗値も増加するPTC(Positive Temperature Coefficient)特性を有している。具体的には、ある温度(キュリー温度)から急激に電気抵抗値が増大する特性を有する半導体で、例えば、イットリウム、アンチモン、ランタン等の希土類元素を微量ドープして半導体化したチタン酸バリウム系セラミックよりなる。
【0039】
本実施形態においては、PTCヒータ11は、ヒューズ23を介してバッテリー24に接続される電源ライン25と、図示しない車両のボディに接続される接地ライン26との間に配されている。
【0040】
PTCヒータ11を構成する各PTC素子15A,15B,15C,15Dのうち、第1PTC素子15Aは、電源ライン25と接続されている。また、第4PTC素子15Dには、この第4PTC素子15Dと、電源ライン25とを通電又は断電する第4リレースイッチ12D(第4スイッチ手段の一例)が接続されている。第4PTC素子15D及び電源ライン25は、第4リレースイッチ12Dの接点側端子にそれぞれ接続されている。また、第4リレースイッチ12Dのコイル側端子の一方は、制御部13に接続されて制御部13からの制御信号を受信可能となっており、他方は接地ライン26に接続されている。第4リレースイッチ12Dは、制御部13からの制御信号を受信することでオン状態となり、第4PTC素子15Dと電源ライン25とが通電される。
【0041】
第2PTC素子15Bと第3PTC素子15Cとの間に設けられた第1電極27には、この第1電極27と、電源ライン25及び接地ライン26のいずれか一方とを選択的に接続する第1リレースイッチ12A(第1スイッチ手段の一例)が接続されている。第1電極27及び接地ライン26は、第1リレースイッチ12Aの接点側端子にそれぞれ接続されている。また、第1リレースイッチ12Aのコイル側端子の一方は、制御部13に接続されて制御部13からの制御信号を受信可能となっており、他方は接地ライン26に接続されている。第1リレースイッチ12Aは、制御部13からの制御信号を受信することで、第1電極27と、電源ライン25及び接地ライン26のいずれか一方とを選択的に接続する。
【0042】
また、第1PTC素子15Aと第2PTC素子15Bとの間に設けられた第2電極28には、この第2電極28と、接地ライン26とを通電又は断電する第2リレースイッチ12B(第2スイッチ手段の一例)が接続されている。第2電極28及び接地ライン26は、第2リレースイッチ12Bの接点側端子にそれぞれ接続されている。また、第2リレースイッチ12Bのコイル側端子の一方は、制御部13に接続されて制御部13からの制御信号を受信可能となっており、他方は接地ライン26に接続されている。第2リレースイッチ12Bは、制御部13からの制御信号を受信することでオン状態となり、第2電極28と接地ライン26とが通電される。
【0043】
また、第3PTC素子15Cと第4PTC素子15Dとの間に設けられた第3電極29には、この第3電極29と、接地ライン26とを通電又は断電する第3リレースイッチ12C(第3スイッチ手段の一例)が接続されている。第3電極29及び接地ライン26は、第3リレースイッチ12Cの接点側端子にそれぞれ接続されている。また、第3リレースイッチ12Cのコイル側端子の一方は、制御部13に接続されて制御部13からの制御信号を受信可能となっており、他方は接地ライン26に接続されている。第3リレースイッチ12Cは、制御部13からの制御信号を受信することでオン状態となり、第3電極29と接地ライン26とが通電される。
【0044】
なお、第1、第2、第3及び第4リレースイッチ12A,12B,12C,12Dを含むスイッチユニット35は、車両の車室内に配してもよいし、また、エンジンルーム内に配してもよく、任意の場所に配することができる。また、第1スイッチ手段、第2スイッチ手段及び第3スイッチ手段はリレーに限らず、半導体スイッチング素子で構成してもよい。
【0045】
一方、空調ユニットの各空調手段を制御する制御部13には、車室内の空気温度(以下内気温度)を検出する図示しない内気温度センサや、車室外の空気温度を検出する図示しない外気温度センサなどから各センサ信号が入力されるようになっている。さらに、制御部13には、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ32からのセンサ信号が入力されるようになっている。水温センサ32は、例えばサーミスタや熱電対などの温度センサによって構成されている。
【0046】
また、制御部13には、タイマ33(計時手段の一例)が設けられており、後述する、第1モードにおけるPTCヒータ11への通電開始後の時間を計測可能になっている。なお、タイマ33は、後述するマイコン34内に設ける構成としてもよい。
【0047】
制御部13の内部には、図示しないマイコン34、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ(制御手段の一例、以下、マイコンという)34が設けられて、上記各センサからの信号は、制御部13の図示しない入力回路によってA/D変換された後、マイコン34に入力されるように構成されている。また、タイマ33により計測された時間も、マイコン34に入力可能になっている。なお、結線は省略しているが、制御部13はバッテリー24からの電力供給を受けるように接続されており、図示しないイグニッションスイッチがオンされたときに、バッテリー24から電力が供給されるようになっている。
【0048】
なお、制御部13は、車両の車室内に配してもよいし、また、エンジンルーム内に配してもよく、任意の場所に配することができる。
【0049】
図1に、PTC素子の温度と、PTC素子の抵抗値との関係を示す。図1に示すように、PTC素子は、キュリー温度Tcにおいて抵抗が急激に大きくなる性質を有している。このPTC素子に通電すると、PTC素子はジュール熱により自己発熱し、室温T1から温度Tminまで温度が上昇したときに抵抗値Rminが極小となり、PTC素子に大きな電流(いわゆる突入電流)が流れる。
【0050】
このため、複数(本実施形態では4つ)のPTC素子15A,15B,15C,15Dを有するPTCヒータ11において、PTC素子15A,15B,15C,15Dに同時に通電すると、消費電力が非常に大きくなり、バッテリー24の電圧低下を招き、他の機器へ悪影響を及ぼすおそれがある。
【0051】
上記の問題を解決するため、例えば、PTCヒータ11に通電した後、スイッチ手段のオンのタイミングをずらすことにより複数のPTC素子15A,15B,15C,15Dを2個以上同時に立ち上げないようにすることが考えられる。
【0052】
しかしながら上記の構成によると、PTCヒータ11への通電開始時においては、一つのPTC素子のみに通電され、このPTC素子の温度は上昇するが、通電されない残りのPTC素子は温度上昇しない。このため、PTCヒータ11の温度分布が不均一となってしまうことから、加熱対象である供給空気の温度分布も不均一になる。この結果、吹き出し口から吹き出す空気の温度が不均一になるという問題がある。
【0053】
上記の点に鑑み、本実施形態においては、以下のようにリレースイッチ12A,12B,12C,12Dを制御する。
【0054】
(メインルーチン)
以下に、制御装置10による制御例を説明する。図3は、制御部13内のROMに記憶されたプログラムに基づいてマイコン34により実行される制御処理のメインルーチンを例示するフローチャートである。まず、車両の乗員によって暖房が開始されると、マイコン34は、PTCヒータ11に通電する昇温処理S100を行う。
【0055】
(昇温処理)
図4に、S100にて実行される、昇温処理S100の詳細について説明する。マイコン34は昇温処理S100を開始すると、タイマ33をスタートさせる(S110)。
【0056】
(第1モード)
その後、S111において、マイコン34は、第1、第2、第3及び第4リレースイッチ12A、12B,12C,12Dのコイル側端子に制御信号を出力して、各リレースイッチ12A、12B,12C,12Dを図6に示す第1モードに制御し、PTCヒータ11に通電する。すなわち、マイコン34は、第1リレースイッチ12Aにより、第1電極27と、接地ライン26とを接続し、第2リレースイッチ12Bにより、第2電極28と、接地ライン26との間を断電し、第3リレースイッチ12Cにより、第3電極29と、接地ライン26との間を断電し、第4リレースイッチ12Dにより、第4PTC素子15Dと、電源ライン25とを接続する。この結果、PTCヒータ11には、図6において矢線で示す方向に電流が流れる。
【0057】
これにより、第1PTC素子15Aと、第2PTC素子15Bとが直列に接続されるから、第1及び第2PTC素子15A、15Bの合成抵抗が、各PTC素子15A,15Bの2倍になる。また、第3PTC素子15Cと、第4PTC素子15Dとが直列に接続されるから、第3及び第4PTC素子15C、15Dの合成抵抗は、各PTC素子15C、15Dの2倍になる。このように合成抵抗値が大きくなるから、第1、第2、第3及び第4PTD素子15A,15B,15C,15Dに流れる電流を、各PTC素子15A,15B,15C,15Dが単独で電源ライン25と接地ライン26との間に接続された場合に比べて減少させることができる。これにより、各PTC素子15A,15B,15C,15Dに突入電流が流れることを抑制できる。
【0058】
そして、第1及び第2PTC素子15A,15Bの組と、第3及び第4PTC素子15C、15Dの組とは、電源ライン25と接地ライン26の間に、並列に接続される。これにより、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dの全てに、同じ値の電流を流すことができる。これにより、各PTC素子15A,15B,15C,15Dはほぼ同じように温度上昇するから、PTCヒータ11の温度分布を均一にすることができる。
【0059】
その後、マイコン34は、S113において、タイマ33から、時間を取得する。マイコン34は、この時間が、予めROMに記憶された所定値(例えば1分)に達したと判断した場合には(S113:Y)、S114を実行し、第1モードでのPTCヒータ11への通電は終了する。上記の所定値は、PTCヒータ11に第1モードで通電した時に、PTCヒータ11の温度が図1におけるT2に達するに十分な時間であれば、任意に設定しうる。
【0060】
このように、本実施形態においては、第1モード終了のタイミングを、タイマ33により計測された時間に基づいて行う。これにより、例えば温度センサなどのフィードバック機構が不要となるから、簡素な構成で、第1モードと第2モードとを切り替えることができる。
【0061】
(第2モード)
S114において、マイコン34は、第1、第2、第3及び第4リレースイッチ12A、12B,12C,12Dのコイル側端子に制御信号を出力して、各リレースイッチ12A、12B,12C,12Dを図7に示す第2モードに制御し、PTCヒータ11に通電する。すなわち、マイコン34は、第1リレースイッチ12Aにより、第1電極27と、電源ライン25とを接続し、第2リレースイッチ12Bにより、第2電極28と、接地ライン26との間を通電し、第3リレースイッチ12Cにより、第3電極29と、接地ライン26との間を通電し、第4リレースイッチ12Dにより、第4PTC素子15Dと、電源ライン25とを接続する。この結果、PTCヒータ11には、図7において矢線で示す方向に電流が流れる。
【0062】
上述したように、第1モードにおいてはPTCヒータ11への通電量は抑制されている。そこで本実施形態においては、第1モードでPTCヒータ11に通電した後に、第2モードで通電する構成とした。この第2モードにおいては、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dは、電源ライン25と接地ライン26との間に並列に接続されているので、所望の発熱量を得ることができる。ここで所望の発熱量とは、例えば、一つのPTC素子に定格電圧を印加したときの発熱量をいう。
【0063】
PTCヒータ11に対し第2モードで通電が開始されると、昇温処理S100は終了する。この状態においては、エンジン冷却水を利用する温水ヒータシステムによっては供給空気の温度は十分には上昇しておらず、補助熱源たるPTCヒータ11に加熱されることで、所定の温度に加熱されている。
【0064】
ところで、エンジン冷却水温が十分に上昇した後にまでPTCヒータ11へ通電するのは無駄である。しかしながら、エンジン冷却水温が十分に上昇する前にPTCヒータ11への通電をやめてしまうと、供給空気の温度が急激に低下してしまい、車両の乗員にとって不快である。
【0065】
そこで、本実施形態においては、図3に示すように、マイコン34は、通電処理S100を実行した後、断電処理S200を実行する構成とした。以下に、詳細を説明する。
【0066】
(断電処理)
マイコン34は、昇温処理S100を実行した後、断電処理S200を開始する。図5に、S200にて実行される断線処理の詳細を示す。断線処理S200が実行されると、マイコン34は、S210にて、水温センサ32からのセンサ信号をA/D変換した信号を読み込み、エンジン冷却水温を取得する。
【0067】
(第3モード)
車両が走行を開始すると、エンジン温が上昇し、これに伴い、エンジン冷却水温も上昇する。マイコン34は、エンジン冷却水温が予めROMに記憶した所定値Tw1(例えば60℃)に達したと判断した場合には(S211:Y)、S212において、第1、第2、第3及び第4リレースイッチ12A,12B,12C,12Dを制御して、図8に示す第3モードでPTCヒータ11に通電する。すなわち、マイコン34は、第1リレースイッチ12Aにより、第1電極27と、電源ライン25とを接続し、第2リレースイッチ12Bにより、第2電極28と、接地ライン26との間を通電し、第3リレースイッチ12Cにより、第3電極29と、接地ライン26との間を通電し、第4リレースイッチ12Dにより、第4PTC素子15Dと、電源ライン25とを断電する。
【0068】
これにより、第1、第2及び第3PTC素子15A,15B,15Cは、電源ライン25と、接地ライン26との間に並列接続される。この結果、PTCヒータ11には、図8において矢線で示す方向に電流が流れる。この第3モードにおいては、第2モードに比べて、第4PTC素子15Dに電流が流れない分だけ、通電量が少なくなっている。これにより、PTCヒータ11に無駄な電流を流すことを抑制できる。
【0069】
そして、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dのうち、第4PTC素子15Dのみに通電しないだけなので、急激に供給空気の温度が変化することを抑制可能となり、乗員の不快感を抑制できる。
【0070】
以下、マイコン34は、エンジン冷却水温を取得し、このエンジン冷却水温が予めROMに記憶した所定値Tw2、Tw3,Tw4,Tw5,及びTw6に達したと判断した時には、第1、第2、第3及び第4リレースイッチ12A,12B,12C,12Dを制御して、それぞれ、第4モード(図9)、第5モード(図10)、第1モード(図6)、及び第6モード(図11)でPTCヒータ11に通電し、第7モード(図12)で、PTCヒータ11への通電を終了する。以下に詳細を説明する。
【0071】
(第4モード)
S212を実行した後、マイコン34は、S213においてエンジン冷却水温を取得し、このエンジン冷却水温が、予めROMに記憶されており、且つ、Tw1よりも高い温度である所定値Tw2(例えば63℃)に達したと判断した場合には(S214:Y)、S215において、第1、第2、第3及び第4リレースイッチ12A,12B,12C,12Dを制御して、図9に示す第4モードでPTCヒータ11に通電する。すなわち、マイコン34は、第1リレースイッチ12Aにより、第1電極27と、電源ライン25とを接続し、第2リレースイッチ12Bにより、第2電極28と、接地ライン26との間を通電し、第3リレースイッチ12Cにより、第3電極29と、接地ライン26との間を断電し、第4リレースイッチ12Dにより、第4PTC素子15Dと、電源ライン25とを断電する。
【0072】
これにより、第1及び第2PTC素子15A,15Bは、電源ライン25と、接地ライン26との間に並列接続される。この結果、PTCヒータ11には、図9において矢線で示す方向に電流が流れる。第4モードでは、図8に示す第3モードに比べて、第3PTC素子15Cに通電されていない分だけ、通電量が少なくなっている。このように、PTCヒータ11への通電量を段階的に減少させることで、供給空気の温度が急激に変化することを抑制できる。
【0073】
(第5モード)
S215を実行した後、マイコン34は、S216においてエンジン冷却水温を取得し、このエンジン冷却水温が、予めROMに記憶されており、且つ、Tw2よりも高い温度である所定値Tw3(例えば65℃)に達したと判断した場合には(S217:Y)、S218において、第1、第2、第3及び第4リレースイッチ12A,12B,12C,12Dを制御して、図10に示す第5モードでPTCヒータ11に通電する。すなわち、マイコン34は、第1リレースイッチ12Aにより、第1電極27と、接地ライン26とを接続し、第2リレースイッチ12Bにより、第2電極28と、接地ライン26との間を断電し、第3リレースイッチ12Cにより、第3電極29と、接地ライン26との間を通電し、第4リレースイッチ12Dにより、第4PTC素子15Dと、電源ライン25とを通電する。
【0074】
これにより、第1及び第2PTC素子15A、15Bは、直列接続される。これにより第1及び第2PTC素子15A,15Bの合成抵抗は各PTC素子15A,15Bの2倍になり、電流量が減少する。そして、第1及び第2PTC素子15A,15Bと、第4PTC素子15Dとは、電源ライン25と接地ライン26との間に並列接続される。この結果、PTCヒータ11には、図10において矢線で示す方向に電流が流れる。第5モードでは、図9に示す第4モードに比べて、第1及び第2PTC素子15A,15Bが直列接続されて合成抵抗が大きくなった分だけ、通電量が少なくなっている。
【0075】
(第1モード)
S218を実行した後、マイコン34は、S219においてエンジン冷却水温を取得し、このエンジン冷却水温が、予めROMに記憶されており、且つ、Tw3よりも高い温度である所定値Tw4(例えば68℃)に達したと判断した場合には(S220:Y)、S221において、第1、第2、第3及び第4リレースイッチ12A,12B,12C,12Dを制御して、図6に示す第1モードでPTCヒータ11に通電する。この結果、PTCヒータ11には、図6において矢線で示す方向に電流が流れる。第1モードでは、第1及び第2PTC素子15A,15Bが直列接続されることで合成抵抗が2倍になっている。また、第3及び第4PTC素子15C、15Dも直列接続されることで合成抵抗が2倍になっている。そして、これら第1及び第2PTC素子15A,15Bの組と、第3及び第4PTC素子15C,15Dの組とが、電源ライン25と接地ライン26との間に並列に接続されているから、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dの合成抵抗値は、一つのPTC素子15と同じ抵抗値となっている。
【0076】
一方、図10に示す第5モードでは、第1及び第2PTC素子15A,15Bが直列接続されているから、合成抵抗は2倍になっている。そして、第1及び第2PTC素子15A,15Bの組と、第4PTC素子15Dとが電源ライン25と接地ライン26との間に並列に接続されているから、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dの合成抵抗値は、一つのPTC素子15の三分のニ倍の抵抗値となっている。このように、第1モードでは、第5モードに比べて、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dの合成抵抗が大きくなった分だけ、通電量が少なくなっている。
【0077】
(第6モード)
S221を実行した後、マイコン34は、S222においてエンジン冷却水温を取得し、このエンジン冷却水温が、予めROMに記憶されており、且つ、Tw4よりも高い温度である所定値Tw5(例えば75℃)に達したと判断した場合には(S223:Y)、S224において、第1、第2、第3及び第4リレースイッチ12A,12B,12C,12Dを制御して、図11に示す第6モードでPTCヒータ11に通電する。すなわち、マイコン34は、第1リレースイッチ12Aにより、第1電極27と、接地ライン26とを接続し、第2リレースイッチ12Bにより、第2電極28と、接地ライン26との間を断電し、第3リレースイッチ12Cにより、第3電極29と、接地ライン26との間を断電し、第4リレースイッチ12Dにより、第4PTC素子15Dと、電源ライン25とを断電する。
【0078】
これにより、第1及び第2PTC素子15A,15Bは、電源ライン25と接地ライン26との間で直列接続される。これにより第1及び第2PTC素子15A,15Bの合成抵抗は各PTC素子15A,15Bの2倍になり、電流量が減少する。この結果、PTCヒータ11には、図11において矢線で示す方向に電流が流れる。第6モードでは、図6に示す第1モードに比べて、第3及び第4PTC素子15C,15Dに通電されない分だけ、通電量が少なくなっている。
【0079】
(第7モード)
S224を実行した後、マイコン34は、S225においてエンジン冷却水温を取得し、このエンジン冷却水温が、予めROMに記憶されており、且つ、Tw5よりも高い温度である所定値Tw6(例えば80℃)に達したと判断した場合には(S226:Y)、S227において、第1、第2、第3及び第4リレースイッチ12A,12B,12C,12Dを制御して、図12に示す第7モードとし、PTCヒータ11への通電を終了する。すなわち、マイコン34は、第1リレースイッチ12Aにより、第1電極27と、電源ライン25とを接続し、第2リレースイッチ12Bにより、第2電極28と、接地ライン26との間を断電し、第3リレースイッチ12Cにより、第3電極29と、接地ライン26との間を断電し、第4リレースイッチ12Dにより、第4PTC素子15Dと、電源ライン25とを断電する。この状態においては、エンジン冷却水の温度は十分に上昇しているので、補助熱源であるPTCヒータ11により供給空気を再加熱する必要はなくなっている。
【0080】
S227が終了すると、マイコン34は断電処理200を終了する(図3参照)。これにより、PTCヒータ11による、供給空気の補助過熱に関する処理が終了する。
【0081】
以上、説明したように、本実施形態によれば、第1モードにおいては、第1及び第2PTC素子15A,15Bが直列に接続され、第3及び第4PTC素子15C、15Dが直列に接続される。これにより合成抵抗値を大きくすることができるから、突入電流を抑制できる。
【0082】
さらに、第1及び第2PTC素子15A,15Bの組と、第3及び第4PTC素子15C,15Dの組とは、電源ライン25と接地ライン26との間に並列に接続されている。これにより、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dの全てに通電できるから、PTCヒータ11の温度分布を均一にすることができる。
【0083】
しかしながら、第1モードにおいては、PTCヒータ11への通電量は抑制されている。そこで本実施形態においては、第1モードでPTCヒータ11に通電した後に、第2モードで通電する構成とした。この第2モードにおいては、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dは、電源ライン25と接地ライン26との間に並列に接続されているので、所望の発熱量を得ることができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、マイコン34は、第1モードから第2モードへの切り替えを、タイマ33により計測された時間に基づいて行う。これにより、第1モードから第2モードへの切り替えを簡素な構成で実現できる。
【0085】
また、本実施形態のPTCヒータ11は、車載用エアコンディショニング装置の補助熱源として用いられるものなので、水温が十分に上昇した後にまでPTCヒータ11へ通電するのは無駄である。しかしながら、水温が十分に上昇する前にPTCヒータ11への通電をやめてしまうと、供給空気の温度が急激に低下してしまい、車両の乗員にとって不快である。
【0086】
上記の点に鑑み、本実施形態によれば、マイコン34は、第2モードでPTCヒータ11に通電したときに、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ32により検出された水温を取得し、この水温に基づいて第1、第2、第3及び第4リレースイッチ12A,12B,12C,12Dを制御することで、PTCヒータ11への通電量を段階的に減少させて断電する断電処理を行う構成とした。これにより、水温が十分に上昇したにもかかわらずPTCヒータ11に通電する状態を防止すると共に、供給空気の温度が急激に低下することを抑制できる。
【0087】
しかも、本実施形態においては、第4リレースイッチ12Dを、第4PTC素子15Dと、電源ライン25との間に配設することにより、断電処理において、第3モード→第4モード→第5モード→第1モード→第6モードと、5段階に分けて段階的に通電量を減少させることができる。これにより、PTCヒータ11のきめ細かな温度調節が可能となる。
【0088】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図13及び図14を参照して説明する。実施形態2においては、制御部13には、PTCヒータ11の温度を検出する温度センサ40からのセンサ信号が入力されるようになっている。実施形態2は、上記構成以外は実施形態1とほぼ同様の構成なので、同一構造については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0089】
実施形態2においては、マイコン34は昇温処理S100を開始すると、第1モードによりPTCヒータ11に通電する(S111)。
【0090】
その後、マイコン34は、S120において、温度センサ40から、PTCヒータ11の温度を取得する。マイコン34は、この温度が、予めROMに記憶された所定値に達したと判断した場合には(S121:Y)、第1モードによる通電を終了して、PTCヒータ11を第2モードで通電する(S114)。上記の所定値は、PTCヒータ11に突入電流が流れなくなる程度にまでPTCヒータ11の抵抗が上昇するに十分な温度であれば、任意に設定しうる。
【0091】
その後、マイコン34は、図5に示す断電処理S200を実行し、PTCヒータ11による供給空気の補助過熱に関する処理が終了する。
【0092】
PTCヒータ11の温度が十分に高くなって、例えば通常使用温度(図1におけるT2)にまで達したにもかかわらず、通電量が抑制された第1モードでPTCヒータ11に通電するのは加熱効率がよくない。PTCヒータ11の温度がT2にまで上昇すれば、各PTC素子15A,15B,15C,15Dの抵抗はR2にまで上昇し、所望の発熱量を得ることができないためである。そこで、本実施形態においては、マイコン34は、第1モードから第2モードへの切り替えを、PTCヒータ11の温度に基づいて行うこととした。これにより、第1モードから第2モードへ切り替えることで所望の発熱量を得ることができる。
【0093】
<実施形態3>
図15及び図16は本発明の実施形態3を示す。実施形態3においては、制御部13には、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dに流れる電流を検出する電流センサ50が接続されており、この電流センサ50からのセンサ信号が入力されるようになっている。この電流センサ50は、例えば公知のセンスMOSFETを用いることで実現される。実施形態3は、上記構成以外は実施形態1とほぼ同様の構成なので、同一構造については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0094】
実施形態3においては、マイコン34は昇温処理S100を開始すると、第1モードによりPTCヒータ11に通電する(S111)。
【0095】
その後、マイコン34は、S130において、電流センサ50から、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dに流れる電流値を取得する。マイコン34は、この電流値が、予めROMに記憶された所定値I2(例えば10A)に達したと判断した場合には(S131:Y)、第1モードによる通電を終了して、PTCヒータ11を第2モードで通電する(S114)。上記の所定値I2は、通常使用時の温度領域(図1におけるT2)において、各PTC素子15A,15B,15C,15Dに、バッテリーの電源電圧を印加したときに流れる電流とされる。
【0096】
その後、マイコン34は、図5に示す断電処理S200を実行し、PTCヒータ11による供給空気の補助過熱に関する処理が終了する。
【0097】
PTCヒータ11の温度が十分に高くなって、例えば通常使用温度(図1におけるT2)にまで達したにもかかわらず、通電量が抑制された第1モードでPTCヒータ11に通電していたのでは、所望の発熱量を得ることができない。そこで、本実施形態においては、マイコン34は、第1モードから第2モードへの切り替えを、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dに流れる電流を直接に測定し、この電流値に基づいて行うこととした。これにより、第1モードから第2モードへ切り替えることで所望の発熱量を得ることができる。
【0098】
<実施形態4>
図17及び図18は本発明の実施形態4を示す。実施形態4においては、制御部13には、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dの抵抗を検出する抵抗検出手段70が接続されており、この抵抗検出手段70からのセンサ信号が入力されるようになっている。この抵抗検出手段70は、例えば公知の電流センサと、電圧センサと、電流センサにより検出された電流及び電圧センサにより検出された電圧に基づいて抵抗を算出する算出手段とから構成されている。実施形態4は、上記構成以外は実施形態1とほぼ同様の構成なので、同一構造については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0099】
実施形態4においては、マイコン34は昇温処理S100を開始すると、第1モードによりPTCヒータ11に通電する(S111)。
【0100】
その後、マイコン34は、S140において、抵抗検出手段70から、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dの抵抗値を取得する。マイコン34は、この抵抗値が、予めROMに記憶された所定値R2(例えば2Ω)に達したと判断した場合には(S141:Y)、第1モードによる通電を終了して、PTCヒータ11を第2モードで通電する(S114)。上記の所定値R2は、所定値とは、PTCヒータ11の通常使用時の温度領域(図1におけるT2)において、各PTC素子15A,15B,15C,15Dが示す抵抗値R2とされる。
【0101】
その後、マイコン34は、図5に示す断電処理S200を実行し、PTCヒータ11による供給空気の補助過熱に関する処理が終了する。
【0102】
PTCヒータ11の温度が十分に高くなって、例えば通常使用温度(図1におけるT2)にまで達したにもかかわらず、通電量が抑制された第1モードでPTCヒータ11に通電しても所望の発熱量を得ることはできない。そこで、本実施形態においては、マイコン34は、第1モードから第2モードへの切り替えを、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dの抵抗値を直接に測定し、この抵抗値に基づいて行うこととした。これにより、第1モードから第2モードへ切り替えることで所望の発熱量を得ることができる。
【0103】
<実施形態5>
図19ないし図22は本発明の実施形態4を示す。本実施形態に係る制御装置10は、PTCヒータ11に接続されて、このPTCヒータ11の通電を制御するものであって、第1リレースイッチ12A及びパワーMOSFET(半導体スイッチ手段の一例)60A,60Bと、これら第1リレースイッチ12A及びパワーMOSFET60A,60Bを制御する制御部13とを備えてなる。
【0104】
本実施形態においては、PTCヒータ11を構成する各PTC素子15A〜15Dのうち、第1PTC素子15A及び第4PTC素子15Dは、電源ライン25と接続されている。
【0105】
また、第1PTC素子15Aと第2PTC素子15Bとの間に設けられた第2電極28には、この第2電極28と、接地ライン26とを通電又は断電する第1パワーMOSFET(第2スイッチ手段の一例)60Aが接続されている。第1パワーMOSFET60Aは、第2電極28に接続されるドレイン端子と、接地ライン26に接続されるソース端子と、マイコン34からゲート駆動回路61を経て制御信号(PWM信号を含む)が入力されるゲート端子とを備える。第1パワーMOSFET60Aは、ゲート端子に制御部13からの制御信号を受信することでオン状態となり、第2電極28と接地ライン26とが通電される。
【0106】
また、第3PTC素子15Cと第4PTC素子15Dとの間に設けられた第3電極29には、この第3電極29と、接地ライン26とを通電又は断電する第2パワーMOSFET(第3スイッチ手段の一例)60Bが接続されている。第2パワーMOSFET60Bは、第3電極29に接続されるドレイン端子と、接地ライン26に接続されるソース端子と、マイコン34からゲート駆動回路61を経て制御信号が入力されるゲート端子とを備える。第2パワーMOSFET60Bは、ゲート端子に制御部13からの制御信号を受信することでオン状態となり、第3電極29と接地ライン26とが通電される。第2パワーMOSFET60Bは、制御部13からの制御信号を受信することでオン状態となり、第3電極29と接地ライン26とが通電される。
【0107】
制御部13と、第1及び第2パワーMOSFET60A,60Bとの間には、ゲート駆動回路61が設けられている。このゲート駆動回路61は、例えばチャージポンプ回路等の昇圧回路を備えており、マイコン34から出力された制御信号を昇圧して第1及び2MOSFET60A,60Bに与えるようになっている。なお、本実施形態においては、第1及び第2パワーMOSFET60A,60BはPTCヒータ11の下流側に配設されているので、充分にゲートソース間の電位差を確保することが可能であるため、チャージポンプ回路等の昇圧回路は省略可能である。
【0108】
上記以外の構成については実施形態1とほぼ同一であるので、同一の構成については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0109】
実施形態5においては、マイコン34は昇温処理S100を開始すると、タイマ33をスタートさせる(S110)。
【0110】
(第1モード)
その後、S150において、マイコン34は、第1リレースイッチ12Aコイル側端子に制御信号を出力して、第1リレースイッチ12Aに、第1電極27と、接地ライン26とを接続させる。また、マイコン34は、第1及び第2パワーMOSFET60A,60Bに制御信号を出力する。具体的には、マイコン34からの制御信号がゲート駆動回路61を介して第1及び第2パワーMOSFET60A,60Bのゲート端子に与えられる。これにより、第1パワーMOSFET60Aは、第2電極28と、接地ライン26との間を断電し、第2パワーMOSFET60Bは、第3電極29と、接地ライン26との間を断電する。この結果、PTCヒータ11には、図19において矢線で示す方向に電流が流れる。
【0111】
これにより、第1PTC素子15Aと、第2PTC素子15Bとが直列に接続されるから、第1及び第2PTC素子15A、15Bの合成抵抗が、各PTC素子15A,15Bの2倍になる。また、第3PTC素子15Cと、第4PTC素子15Dとが直列に接続されるから、第3及び第4PTC素子15C、15Dの合成抵抗は、各PTC素子15C,15Dの2倍になる。このように合成抵抗値が大きくなるから、第1、第2、第3及び第4PTD素子15A,15B,15C,15Dに流れる電流を、各PTC素子15A,15B,15C,15Dが単独で電源ライン25と接地ライン26との間に接続された場合に比べて減少させることができる。これにより、各PTC素子15A,15B,15C,15Dに突入電流が流れることを抑制できる。
【0112】
そして、第1及び第2PTC素子15A,15Bの組と、第3及び第4PTC素子15C、15Dの組とは、電源ライン25と接地ライン26の間に、並列に接続される。これにより、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dの全てに、同じ値の電流を流すことができる。これにより、各PTC素子15A,15B,15C,15Dはほぼ同じように温度上昇するから、PTCヒータ11の温度分布を均一にすることができる。
【0113】
その後、マイコン34は、S113において、タイマ33から、時間を取得し、この時間が、予めROMに記憶された所定値(例えば1分)に達したと判断した場合には(S113:Y)、S151を実行し、第1モードでのPTCヒータ11への通電は終了する。
【0114】
(第2モード)
S151において、マイコン34は、第1、第2、第3及び第4リレースイッチ12Aのコイル側端子に制御信号を出力して、第1電極27と、電源ライン25とを接続させる。また、マイコン34は、第1及び第2パワーMOSFET60A,60Bに制御信号を出力する。この制御信号を受けて、第1パワーMOSFET60Aは、第2電極28と、接地ライン26との間を通電し、第2パワーMOSFET60Bは、第3電極29と、接地ライン26との間を通電する。この結果、PTCヒータ11には、図20において矢線で示す方向に電流が流れる。
【0115】
上述したように、第1モードにおいてはPTCヒータ11への通電量は抑制されているそこで本実施形態においては、第1モードでPTCヒータ11に通電した後に、第2モードで通電する構成とした。この第2モードにおいては、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dは、電源ライン25と接地ライン26との間に並列に接続されているので、所望の発熱量を得ることができる。
【0116】
PTCヒータ11に対し第2モードで通電が開始されると、昇温処理S100は終了する。
【0117】
(断電処理)
マイコン34は、昇温処理S100を実行した後、断電処理S200を開始する。図22に、S200にて実行される断線処理の詳細を示す。断線処理S200が実行されると、マイコン34は、S240にて、水温センサ32からのセンサ信号をA/D変換した信号を読み込み、エンジン冷却水温を取得する。
【0118】
(第8モード)
車両が走行を開始すると、エンジン温が上昇し、これに伴い、エンジン冷却水温も上昇する。マイコン34は、エンジン冷却水温が予めROMに記憶した所定値Tw7(例えば70℃)に達したと判断した場合には(S241:Y)、S242において、マイコン34は、ROMに記憶された記憶内容に基いて、取得したエンジン冷却水温に応じたPTCヒータ11の制御量(すなわちPWM信号のデューティ比)を決定する。本実施形態では、第1パワーMOSFET60Aに対して制御部13内のマイコン34からPWM信号を出力する構成をなしている。そして、S242の制御量決定処理では、このPWM信号のデューティ比を決定する処理を行う。マイコン34は、ROMに記憶された記憶内容に基づき、エンジン冷却水温に応じたデューティ比を定め、このデューティ比のPWM信号を第1パワーMOSFET60Aに対して出力する(S243)。
【0119】
次に、マイコン34は、S244にて、第1リレースイッチ12Aを制御し、第1パワーMOSFET60AをPWM制御し、第2パワーMOSFET60Bをオンオフ制御して、第8モードでPTCヒータ11に通電する。すなわち、マイコン34は、第1リレースイッチ12Aにより、第1電極27と、電源ライン25とを接続し、第1パワーMOSFET60Aに対し、第2電極28と、接地ライン26との間を間欠的に通電及び断電を繰り返すPWM制御を実行し、第2パワーMOSFET60Bにより、第3電極29と、接地ライン26との間を通電する。
【0120】
これにより、第1、第2、第3及び第4PTC素子15A,15B,15C,15Dは、電源ライン25と、接地ライン26との間に並列接続され、且つ、第1及び第2PTC素子15A,15Bは、PWM制御される。この第8モードにおいては、第2モードに比べて、第1及び第2PTC素子15A,15BがPWM制御されている分だけ、通電量が少なくなっている。これにより、PTCヒータ11に無駄な電流を流すことを抑制できる。
【0121】
マイコン34は、S244を実行すると、水温センサ32からエンジン冷却水温を取得する(S245)。このエンジン冷却水温が、予めROMに記憶されており、且つ、Tw7よりも高い温度である所定値Tw8(例えば75℃)に達したと判断した場合には(S246:Y)、S247において、マイコン34は、ROMに記憶された記憶内容に基いて、取得したエンジン冷却水温に応じたPTCヒータ11の制御量(すなわちPWM信号のデューティ比)を決定し、このデューティ比のPWM信号を第1パワーMOSFET60Aに対して出力する(S248)。
【0122】
(第9モード)
次に、マイコン34は、S249にて、第1リレースイッチ12Aを制御し、第1パワーMOSFET60AをPWM制御し、第2パワーMOSFET60Bをオンオフ制御して、第9モードでPTCヒータ11に通電する。すなわち、マイコン34は、マイコン34は、第1リレースイッチ12Aにより、第1電極27と、電源ライン25とを接続し、第1パワーMOSFET60Aに対し、第2電極28と、接地ライン26との間を間欠的に通電及び断電を繰り返すPWM制御し、第2パワーMOSFET60Bにより、第3電極29と、接地ライン26との間を断電する。
【0123】
これにより、第1及び第2PTC素子15A,15Bは電源ライン25と、接地ライン26との間に並列に接続された状態で、マイコン34によりPWM制御される。また、第3及び第4PTC素子15C,15Dには電流が流れないようになっている。この結果、第9モードでは、第8モードに比べて、第3及び第4PTC素子15C,15Dに電流が流れない分だけ、通電量が少なくなっている。
【0124】
マイコン34は、S249を実行すると、水温センサ32からエンジン冷却水温を取得する(S250)。このエンジン冷却水温が、予めROMに記憶されており、且つ、Tw8よりも高い温度である所定値Tw9(例えば80℃)に達したと判断した場合には(S251:Y)、S252において、マイコン34は、ROMに記憶された記憶内容に基いて、取得したエンジン冷却水温に応じたPTCヒータ11の制御量(すなわちPWM信号のデューティ比)を決定し、このデューティ比のPWM信号を第1パワーMOSFET60Aに対して出力する(S252)。
【0125】
(第10モード)
次に、マイコン34は、S253にて、第1リレースイッチ12Aを制御し、第1及び第2パワーMOSFET60Bをオンオフ制御して、第8モードとしPTCヒータ11への通電を終了する。すなわち、マイコン34は、第1リレースイッチ12Aにより、第1電極27と、電源ライン25とを接続し、第1パワーMOSFET60Aにより、第2電極28と、接地ライン26との間を断電し、第2パワーMOSFET60Bにより、第3電極29と、接地ライン26との間を断電する。
【0126】
S253が終了すると、断電処理200が終了する。これにより、PTCヒータ11による、供給空気の補助過熱に関する処理が終了する。
【0127】
一方、S246において、エンジン冷却水温がTw8に達していないと判断された場合には(S246:N)、マイコン34はS242を実行し、取得したエンジン冷却水温に基いて、上記と同様にしてPTCヒータ11の制御量(すなわちPWM信号のデューティ比)を決定する。以下の処理は上記と同様なので、重複する説明を省略する。
【0128】
また、S251において、エンジン冷却水温がTw9に達していないと判断された場合には(S251:N)、マイコン34はS247を実行し、取得したエンジン冷却水温に基いて、上記と同様にしてPTCヒータ11の制御量(すなわちPWM信号のデューティ比)を決定する。以下の処理は上記と同様なので、重複する説明を省略する。
【0129】
以上説明したように、本実施形態においては、制御部13からパワーMOSFET60Aに対して、エンジン冷却水温に応じたPWM制御が可能となるので、PTCヒータ11について、精度高い、きめ細かな温度制御が可能となる。
【0130】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0131】
(1)実施形態1においては、断電処理において、PTCヒータ11に対し、第3モード→第4モード→第5モード→第1モード→第6モード→第7モードで通電することで、PTCヒータ11への通電量を段階的に減少させる構成としたが、PTCヒータ11に通電する際の各リレースイッチ12A,12B,12C,12Dの通電、断電の態様は上述した各モードに限られず、例えば、図23に示すように、各リレースイッチ12A,12B,12C,12Dの通電、断電の態様を制御してもよい。
(2)実施形態1では、第4リレースイッチ12Dは、第4PTC素子15Dと、電源ライン25との間に配設される構成としたが、これに限られず、第1PTC素子15Aと、電源ライン25との間に配設される構成としてもよい。
【0132】
(3)実施形態1においては、第2、第3及び第4スイッチ手段として第2、第3及び第4リレースイッチ12B,12C,12Dを用いる構成としてが、これに限られず、図24に示すように、第2、第3及び第4スイッチ手段として、第1、第2及び第3パワーMOSFET60A,60B,60Cを用いる構成としてもよい。この場合、制御部13と、パワーMOSFETとの間には、ゲート駆動回路61が設けられる。
【0133】
(4)本実施形態では、断電処理においては、エンジン冷却水温に基づいてPTCヒータ11への通電量を制御する構成としたが、エンジン冷却水温に加えて、エンジン回転数、オルタネータ発電量等に基づいて通電量を制御する構成としてもよい。
(5)スイッチユニット35は、制御部13の内部に収容される構成としてもよい。
(6)実施形態5においては、PWM制御は、第1パワーMOSFET60Aのみに対して行ったが、第2パワーMOSFET60Bのみに対して行ってもよく、また、第1及び第2パワーMOSFET60A,60Bの双方に対して行ってもよい。
【0134】
(7)実施形態5においては、ゲート駆動回路をユニットの外に配置した例を示したが、ゲート駆動回路をパワーMOSFETが設けられたユニット内に設けるようにしてもよい。
(8)実施形態5においては、パワーMOSFETの過熱保護を行う過熱保護回路などを設けるようにしてもよい。
(9)実施形態5においては、半導体スイッチ素子はMOSFETとしたが、トランジスタ、IGBT等でもよい。
【0135】
(10)本実施形態においては、PTCヒータ制御装置は、車載用PTCヒータ制御装置に適用する構成としたが、これに限られず、任意の対象を加熱するためのPTCヒータ制御装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】PTC素子の抵抗値と、温度との関係を示す概略模式図
【図2】PTCヒータの要部拡大模式図
【図3】本発明の実施形態1に係るPTCヒータ制御装置において、エアコンECUによる制御処理のメインルーチンを概念的に例示するフローチャート
【図4】昇温処理を例示するフローチャート
【図5】断電処理を例示するフローチャート
【図6】第1モードにおけるPTCヒータへの通電状態を示すブロック図
【図7】第2モードにおけるPTCヒータへの通電状態を示すブロック図
【図8】第3モードにおけるPTCヒータへの通電状態を示すブロック図
【図9】第4モードにおけるPTCヒータへの通電状態を示すブロック図
【図10】第5モードにおけるPTCヒータへの通電状態を示すブロック図
【図11】第6モードにおけるPTCヒータへの通電状態を示すブロック図
【図12】第7モードにおける各リレースイッチの接続状態を示すブロック図
【図13】実施形態2に係るPTCヒータ制御装置を概念的に示すブロック図
【図14】昇温処理を例示するフローチャート
【図15】実施形態3に係るPTCヒータ制御装置を概念的に示すブロック図
【図16】昇温処理を例示するフローチャート
【図17】実施形態4に係るPTCヒータ制御装置を概念的に示すブロック図
【図18】昇温処理を例示するフローチャート
【図19】実施形態5に係るPTCヒータ制御装置において、第1モードにおけるPTCヒータへの通電状態を示すブロック図
【図20】第2モードにおけるPTCヒータへの通電状態を示すブロック図
【図21】昇温処理を例示するフローチャート
【図22】断電処理を例示するフローチャート
【図23】他の実施形態(1)に例示したPTCヒータ制御装置を示すブロック図
【図24】他の実施形態(3)に例示したPTCヒータ制御装置を示すブロック図
【符号の説明】
【0137】
10…制御装置
11…PTCヒータ
12A…第1リレースイッチ(第1スイッチ手段)
12B…第2リレースイッチ(第2スイッチ手段)
12C…第3リレースイッチ(第3スイッチ手段)
12D…第4リレースイッチ(第4スイッチ手段)
15A…第1PTC素子
15B…第2PTC素子
15C…第3PTC素子
15D…第4PTC素子
25…電源ライン
26…接地ライン
27…第1電極
28…第2電極
29…第3電極
33…タイマ(計時手段)
34…マイコン(制御手段)
60A…第1パワーMOSFET(第2スイッチ手段、半導体スイッチ手段)
60B…第2パワーMOSFET(第3スイッチ手段、半導体スイッチ手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2、第3及び第4のPTC素子が順に直列接続されてなると共に、前記第1及び第4PTC素子が電源ラインと接続された状態で、前記電源ラインと接地ラインとの間に配されるPTCヒータを制御する制御装置であって、
前記第2PTC素子と前記第3PTC素子との間に設けられた第1電極に接続されて、前記第1電極と、前記電源ライン及び前記接地ラインのいずれか一方とを選択的に接続する第1スイッチ手段と、前記第1PTC素子と前記第2PTC素子との間に設けられた第2電極に接続されて、前記第2電極と前記接地ラインとを通電又は断電する第2スイッチ手段と、前記第3PTC素子と前記第4PTC素子との間に設けられた第3電極に接続されて、前記第3電極と前記接地ラインとを通電又は断電する第3スイッチ手段と、前記第1、第2及び第3スイッチ手段を制御する制御手段とを備え、
前記PTCヒータに通電する際に、前記制御手段は、前記第1スイッチ手段により前記第1電極と前記接地ラインとを接続し、前記第2スイッチ手段により前記第2電極と前記接地ラインとを断電し、前記第3スイッチ手段により前記第3電極と前記接地ラインとを断電する第1モードで前記PTCヒータに通電した後、前記第1スイッチ手段により前記第1電極と前記電源ラインとを接続し、前記第2スイッチ手段により前記第2電極と前記接地ラインとを通電し、前記第3スイッチ手段により前記第3電極と前記接地ラインとを通電する第2モードで前記PTCヒータに通電することを特徴とするPTCヒータ制御装置。
【請求項2】
前記第1モードにおける前記PTCヒータへの通電開始後の時間を計測する計時手段を備え、
前記制御手段は、前記第1モードで前記PTCヒータに通電したときに、前記計時手段により計測された時間を取得し、前記時間が所定値に達したと判断した場合には、前記第2モードで前記PTCヒータに通電することを特徴とする請求項1記載のPTCヒータ制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1モードで前記PTCヒータに通電したときに、前記PTCヒータの温度が所定値に達したと判断した場合には、前記第2モードで前記PTCヒータに通電することを特徴とする請求項1記載のPTCヒータ制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1モードで前記PTCヒータに通電したときに、前記第1、第2、第3及び第4PTC素子を流れる電流値が所定値に達したと判断した場合には、前記第2モードで前記PTCヒータに通電することを特徴とする請求項1記載のPTCヒータ制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1モードで前記PTCヒータに通電したときに、前記第1、第2、第3及び第4PTC素子の抵抗値が所定値に達したと判断した場合には、前記第2モードで前記PTCヒータに通電することを特徴とする請求項1記載のPTCヒータ制御装置。
【請求項6】
前記PTCヒータは車両用エアコンディショニング装置における供給空気の補助熱源として使用されるものであって、
前記制御手段は、前記第2モードで前記PTCヒータに通電したときに、エンジン冷却水の水温に基づいて前記第1、第2及び第3スイッチ手段を制御することで、前記PTCヒータへの通電量を段階的に減少させて断電する断電処理を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のPTCヒータ制御装置。
【請求項7】
前記第1又は第4PTCヒータと前記電源ラインとの間には、前記第1又は第4PTCヒータと前記電源ラインとを通電又は断電する第4スイッチ素子が接続されており、
前記制御手段は、前記水温に基づいて前記第1、第2、第3及び第4スイッチ手段の制御を行うことで、前記断電処理を行うことを特徴とする請求項6記載のPTCヒータ制御装置。
【請求項8】
前記スイッチ手段は半導体スイッチ手段からなり、
前記制御手段は、前記半導体スイッチ手段に対してPWM信号を出力することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のPTCヒータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−277351(P2008−277351A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116114(P2007−116114)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】