説明

PTPシート

【課題】包装される薬剤の安定性を高めるべく遮光性の高い樹脂シートをPTPシート用包装体として採用しながらも、アルミカバーフィルムに表示された文字等の情報の可読性を確保するとともに、PTPシートの反りを簡単かつ低コストな構造で防止する。
【解決手段】縦横に複数列の薬剤収容ポケット2が形成された透明乃至半透明のPTPシート用包装体1に対し、ポケット2を塞ぐようにカバーフィルムが貼着されてなるPTPシートにおいて、PTPシート用包装体1のシート状部の所定の部位が薄肉を形成し、カバーフィルムには、シート状部の薄肉部4に対応する位置に目視可能な文字を表示し、薄肉部4に隣接して比較的厚肉のリブ5を形成して、該リブ5によりPTPシートの反りを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤やカプセルなどの薬剤を包装するためのPTPシートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、PTPシート は、錠剤等が充填されるポケット部が形成された樹脂製の包装用シートと、その包装用シートにポケット部の開口側を密封するように前記包装用シートに貼着されるアルミニウム製のカバーフィルムとから構成されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−206070号公報
【0003】
このPTPシートのカバーフィルムの表面には、厚生労働省の通知によりその製剤の販売名、規格、含量若しくは使用期限などの文字や、QRコードや二次元バーコードなどの記号からなる各種情報が表示され、透明な包装用シートを介して目視できるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、光等に対して不安定な製剤も少なくなく、PTPシートにおいても高機能化を求められており、可視光域を含めて高い遮光性が求められる場合もある。
【0005】
しかし、包装用シートの遮光性を高くすると透明性が犠牲になり、可視光も遮断するために曇りが強く、カバーフィルムに印字された製剤名や企業名等の文字等の情報が包装用シートを通して見ると鮮明さに欠けることとなる。
【0006】
また、PTPシートは熱可塑性樹脂材からなる包装用シートとアルミニウムフィルムを貼り合わせたものであり、それら素材の熱収縮率の相違に起因してPTPシートが横方向に反る傾向がある。
【0007】
そこで、本発明は、包装される薬剤の安定性を高めるべく遮光性の高い樹脂シートをPTPシート用包装体として採用しながらも、アルミカバーフィルムに表示された文字の可読性を確保し得るPTPシートを提供することを目的とする。また、本発明は、PTPシートの反りを簡単かつ低コストな構造で防止し得るPTPシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
【0009】
即ち、本発明は、縦方向並びに横方向に複数列の薬剤収容ポケットが形成された透明乃至半透明のPTPシート用包装体に対し、前記ポケットを塞ぐようにカバーフィルムが貼着されてなるPTPシートにおいて、前記ポケット部分以外のPTPシート用包装体のシート状部の所定の部位が、シート状部のその他の部位よりも薄肉に形成されていることを特徴とするものである。かかる本発明によれば、上記カバーフィルムには、前記シート状部の薄肉部に対応する位置に、薄肉部を介して目視可能な文字などの情報を表示させることができ、PTPシート包装体として遮光性の高い材料を使用しながらも、カバーフィルムに表示された文字は薄肉部を介して鮮明に読み取ることができる。
【0010】
シート状部の前記薄肉部は、横一列の複数のポケットにわたるように延びていて良い。これによれば、薄肉部をPTPシートの意匠性向上に役立てることができる。さらに、かかる薄肉部に、横一列の複数のポケットを一体としてPTPシートを切り離すための切り込みが形成されているものとすることができる。これによれば、薄肉部が軽い力で容易に折曲がるので、切り離しが容易かつ迅速に行える。
【0011】
また、シート用包装体は熱可塑性樹脂材からなり、シート状部の前記薄肉部は、シート状部を加熱圧縮することにより形成されたものであり、加熱圧縮により押し出された樹脂材によって比較的厚肉のリブが前記薄肉部に隣接して形成されており、該リブは、前記シート状部の薄肉部並びにリブを除くシート状部のその他の部位よりも厚肉に形成されているものとすることができる。これによれば、製造工程の簡素化を図りつつ、比較的厚肉のリブをPTPシート用包装体に形成させることができ、該リブによってシートの補強を行うことができる。さらに、前記リブは、横一列の複数のポケットにわたるように延びており、該リブがPTPシートの横方向の反りを防止するものであってよい。また、当該リブに、横一列の複数のポケットを一体としてPTPシートを切り離すための切り込みが形成されていてよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、包装される薬剤の安定性を高めるべく遮光性の高い樹脂シートをPTPシート用包装体として採用しながらも、アルミカバーフィルムに表示された文字等の情報部分においては透明性を確保することにより十分な可読性を得ることができる。
したがって、従来はアルミカバーフィルムに表示された情報の確認ができなかったために製品に採用されることが殆どなかった結晶性樹脂シート、例えば、防湿性を優先してPEHD層を含んだ結晶性樹脂を用いてPTPシート用包装体を成形した場合でも、ポケット部は圧空されて肉が延びることにより薄肉化して内部が透けるようになるためにポケット内の錠剤を目視確認することができるとともに、文字等の情報部分においても薄肉化することで透明性を確保しているため十分に情報が確認できる。
また、赤・オレンジ等の遮光が必要な製剤に用いるPTPシートでも上記と同様の効果を発揮できる。
また、着色された薄肉部を有するシートと着色されたカバーフィルムとの組み合わせにより、色彩上の視覚的効果を与えるため、医療過誤を防止する役割も果たす。
さらに、薄肉にするべく押し出された樹脂材によって形成したリブによりPTPシートを補強し、PTPシートの反りを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1はPTPシート用包装体1の第1実施例を示し、該包装体1は半透明の熱可塑性樹脂材からなり、縦方向に5列、横方向に2列の薬剤収容ポケット2が形成されている。後述するように、ポケット2に錠剤を収容した後、上記包装体1の裏面にはポケット2を塞ぐようにアルミニウム製のカバーフィルム3が貼着されて、PTPシートが構成される。
【0015】
包装体1は、縦方向の各ポケット2の間の部位が、シート状部のその他の部位よりも薄肉に形成されて薄肉部4となされている。当該薄肉部4は、横一列の2つのポケット2にわたるように横幅全長にわたって形成されている。さらに、薄肉部4の前後縁部には、比較的厚肉のリブ5が薄肉部4に隣接して形成されており、該リブ5もPTPシートの横幅全長にわたって形成されている。このリブ5の肉厚は、包装体1のシート状部の薄肉部4並びにリブ5を除くシート状部のその他の部位よりも厚肉に形成されている。
【0016】
前記カバーフィルム3には、前記シート状部の薄肉部4に対応する位置に、薄肉部4を介して目視可能な文字、例えば製剤の販売名、規格、含量や使用期限などの情報を表示できる。
【0017】
また、上記薄肉部4に、横一列の2つのポケット2を一体としてPTPシートを切り離すための切り込み6が形成されている。該切り込み6は、表面側に横幅方向全長にわたって形成されたものであってもよいし、ミシン目状に形成することもできる。
【0018】
図2はPTPシート包装体1の第2実施例を示し、上記第1実施例と異なるところは、各薄肉部4の縦方向(前後方向)の中央部にリブ5が形成されている点であり、その他の構成は同様であるので同符号を付して詳細説明を省略する。
【0019】
図3並びに図4はPTPシート包装体1’の第3、第4実施例を示し、該包装体1’は半透明の熱可塑性樹脂材からなり、縦方向に5列、横方向に2列の薬剤収容ポケット2が形成されて、縦方向のポケット2の間には、横幅全長にわたる切り込み6が形成されている。後述するように、ポケット2に錠剤を収容した後、上記包装体1の裏面にはポケット2を塞ぐようにアルミニウム製のカバーフィルム3が貼着されて、PTPシートが構成される。
【0020】
包装体1’は、デザイン性、並びに、カバーフィルム3に表示される文字等の情報の位置などに鑑みて所定の部位が、シート状部のその他の部位よりも薄肉に形成されて薄肉部4となされている。この薄肉部4の位置、形状は任意に設計することができ、薄肉部4を介してカバーフィルム3に表示された文字を目視可能にすることができる。
【0021】
図5は、PTPシートの製造装置を説明する概略構成図であり、PTPシート包装体の原反供給部10から供給される原反Sは、加熱部11によってポケット形成位置が加熱され、成形金型12によってポケット2が成形される。冷却後に錠剤充填装置13において各ポケット2に錠剤が充填・検査され、その後包装体1,1’の裏面にカバーシート3が加熱溶着ロール14により加熱溶着される。なお、ロール14にはポケット2を変形させないようにポケット2が収容される凹部が形成されたものを使用できる。
【0022】
その後、刻印押印部15において必要に応じてシートの所定部位に刻印や押印を行い、打ち抜き部16において、切り込み6(分割線)を形成した後に横2列、縦5列にカット打ち抜きされ、ベルトコンベア17により排出される。
【0023】
上記薄肉部4は、成形金型12による溶融加圧圧縮により形成することもできるし、加熱溶着ロール14による加熱圧縮により形成することもできるし、刻印押印部15での加熱圧縮により形成することもできるし、また、その他、薄肉部形成用の加熱圧縮装置を別途適宜の位置に設けても良い。このようなシート用包装体1,1’のシート状部の加熱圧縮による薄肉部4の形成によれば、加熱圧縮により押し出された樹脂材によって比較的厚肉のリブ5を薄肉部4に隣接して形成することができるので、リブ5形成の簡素化とコスト低減を図ることができる。
【0024】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更できる。例えば、各PTPシートにおけるポケット4の配置や列数は適宜必要に応じて変更することができ、横方向の列数が縦方向の列数よりも多くても良い。また、薄肉部4やリブ5は横幅全長にわたっていなくてもよく、例えば横方向にポケットが4つある場合には、左右の2つのポケットを一つの分割単位として、2つのポケット2にわたるように薄肉部4やリブ5が形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施例に係るPTPシート用包装体を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】本発明の第2実施例に係るPTPシート用包装体を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図3】本発明の第3実施例に係るPTPシート用包装体の平面図である。
【図4】本発明の第4実施例に係るPTPシート用包装体の平面図である。
【図5】本発明のPTPシートを製造する製造装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0026】
1 PTPシート用包装体
2 ポケット
3 カバーフィルム
4 薄肉部
5 リブ
6 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向並びに横方向に複数列の薬剤収容ポケットが形成された透明乃至半透明のPTPシート用包装体に対し、前記ポケットを塞ぐようにカバーフィルムが貼着されてなるPTPシートにおいて、前記ポケット部分以外のPTPシート用包装体のシート状部の所定の部位が、シート状部のその他の部位よりも薄肉に形成されていることを特徴とするPTPシート。
【請求項2】
カバーフィルムには、前記シート状部の薄肉部に対応する位置に、薄肉部を介して目視可能な文字などの情報が表示されていることを特徴とする請求項1に記載のPTPシート。
【請求項3】
シート状部の前記薄肉部は、横一列の複数のポケットにわたるように延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載のPTPシート。
【請求項4】
シート用包装体は熱可塑性樹脂材からなり、シート状部の前記薄肉部は、シート状部を加熱圧縮することにより形成されたものであり、加熱圧縮により押し出された樹脂材によって比較的厚肉のリブが前記薄肉部に隣接して形成されており、該リブは、前記シート状部の薄肉部並びにリブを除くシート状部のその他の部位よりも厚肉に形成されていることを特徴とする請求項1,2又は3に記載のPTPシート。
【請求項5】
前記リブは、横一列の複数のポケットにわたるように延びており、該リブがPTPシートの横方向の反りを防止することを特徴とする請求項4に記載のPTPシート。
【請求項6】
前記薄肉部に、横一列の複数のポケットを一体としてPTPシートを切り離すための切り込みが形成されていることを特徴とする請求項3に記載のPTPシート。
【請求項7】
前記リブに、横一列の複数のポケットを一体としてPTPシートを切り離すための切り込みが形成されていることを特徴とする請求項5に記載のPTPシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−290739(P2008−290739A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137300(P2007−137300)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【Fターム(参考)】