説明

RFタグシステム、RFタグリーダおよびその制御装置

【課題】キャリアの送信時間が制限されている場合でも、パッシブ型のRFタグとの間で当該送信時間よりも長い時間を要する処理を可能とする。
【解決手段】リーダライタRW1、RW2は、キャリアの送信前にキャリア検出処理を行い、キャリアが検出されなかった空チャネル領域でキャリアの送信を開始し、キャリアの送信開始後所定の送信時間T0以内にキャリアの送信を停止して、その後所定の停止時間T1以上キャリアの送信を停止する。リーダライタRW1、RW2が共通の通信範囲を持つ場合、少なくとも1つのリーダライタがキャリアを送信することにより、共通の通信範囲に存在するRFタグTAG1、TAG2に対し、送信時間T0を超える期間電力を連続して供給し続ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアの送信によりRFタグリーダからRFタグに電力を供給するRFタグシステム、RFタグリーダおよびその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のRFタグシステムでは、複数のリーダライタが互いに電波の到達可能な範囲内に設置されて使用されると、各リーダライタの送信電波が混信してRFタグとの通信ができなくなる。そこで、混信を防止する技術として国内ではLBT(Listen Before Talk)方式が採用されている。各リーダライタは、所定の周波数チャネル(以下、チャネルと称す)に対しキャリアの送信前に所定のキャリア検出時間Tc以上キャリアの検出を行い、空いているチャネルで通信を行う。
【0003】
また、複数のリーダライタが共存するためには、各リーダライタの送信時間を制限してチャネルを開放させ、他のリーダライタにも通信の機会を与える必要がある。そこで、リーダライタは、キャリアの送信開始後所定の送信時間T0以内にキャリアの送信を停止する。そして、再度キャリアを送信する場合には、送信停止後所定の停止時間T1以上キャリアの送信を停止した後、再びキャリアの検出を行い空いているチャネルでキャリアの送信を行うシステムが採用されている。
【0004】
こうした通信前のキャリア検出(キャリアセンス)は特許文献1、2にも開示されている。特許文献1に記載された空きチャネル検出方式は、送信局側で、音声情報と使用中のチャネルの番号を示すチャネル番号信号との合成信号を変調して送信し、受信局側で、複数の受信チャネルを順次スキャンしてキャリアを検出したとき復調信号中の音声情報とチャネル番号信号とを分離するようになっている。また、特許文献2に記載された無線制御信号伝送方式は、基地局、移動局間の制御用電波送出時に、事前に使用可能な制御用の周波数およびスロットの全ての電波状態を監視し、その監視電波の中から未使用電波を選択して送信を開始するようになっている。
【特許文献1】特開平5−110522号公報
【特許文献2】特開平8−256373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図9は、互いに近接して配置されたリーダライタRW1、RW2とRFタグTAG1、TAG2のキャリア送受信タイミングを示している。リーダライタRW1、RW2は、パッシブ型のRFタグTAG1、TAG2と通信するとき、電力供給のための無変調のキャリアを送信し、その間にタグ検索コマンドの送信、リード動作などを実行する。リーダライタRW1は、キャリア検出時間Tc以上キャリアの有無を検出し、空きチャネル(ch3)でキャリアの送信を開始する。RFタグTAG1、TAG2は、このキャリアにより電力の供給を受けて動作可能となり、リーダライタRW1に対する応答としてタグ識別情報ID1、ID2、データの送信等を行う。
【0006】
しかし、リーダライタRW1は、上述したようにキャリアの送信後所定の送信時間T0以内にキャリアの送信を停止し、その後所定の停止時間T1以上キャリアの送信を停止した後でなければキャリアを送信できない。RFタグTAG1、TAG2は、キャリアが途絶えると電源を失うためリセットされてしまい、処理で用いていた情報が消えてしまう。そのため、上記所定の送信時間T0内に処理を終了できない処理、例えば複数のRFタグの順次処理、大容量データのリード/ライト処理、複数のRFタグに対する一括のリード/ライト処理などを行うことができなかった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、キャリアの送信時間が制限されている場合でも、パッシブ型のRFタグとの間で当該送信時間よりも長い時間を要する処理を可能とするRFタグシステム、RFタグリーダおよびその制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載したRFタグシステムによれば、複数のRFタグリーダが共通の通信範囲を持つ場合において、これら複数のRFタグリーダのうち少なくとも1つのRFタグリーダがキャリアを送信するように制御することにより、複数のRFタグリーダに共通の通信範囲に存在するRFタグに対し何れかのRFタグリーダから電力を供給し続ける。各RFタグリーダは、他のRFタグリーダに通信の機会を与えるため、キャリアの送信開始後所定の送信時間以内にキャリアの送信を停止し、その後所定の停止時間以上キャリアの送信を停止することが必要とされている。
【0009】
本手段によれば、各RFタグリーダは所定の送信時間を超えてキャリアを送信できないが、複数のRFタグリーダが代わる代わるキャリアを送信し続けるので、共通の通信範囲に存在するRFタグは、連続して電力の供給を受けることができる。これにより、RFタグは、送信時間以内ごとにリセットされることがなくなり、所定の送信時間よりも長い時間を要する連続的な処理を実行可能となる。
【0010】
請求項2に記載したRFタグシステムによれば、制御装置に複数のRFタグリーダが接続され、その制御装置は、接続された少なくとも1つのRFタグリーダによりキャリアが送信されている状態が継続するように各RFタグリーダのキャリア送信を制御する。これにより、各RFタグリーダ自体に他のRFタグリーダとのキャリア送信のタイミング調整機能を持たせる必要がない。また、制御装置は、複数のRFタグリーダを統括して制御可能であるため、キャリアの送信タイミングを容易に制御することができる。
【0011】
請求項3、7に記載したRFタグシステム、RFタグリーダの制御装置によれば、制御装置は、接続された各RFタグリーダがRFタグから受信したRFタグの識別情報を、接続された複数のRFタグリーダで共有する。これにより、各RFタグリーダは、キャリアの送信開始後その共有するRFタグの識別情報を用いて、タグ検索を行うことなく直ちにRFタグとの間でリード/ライト動作を開始できる。
【0012】
請求項4に記載したRFタグシステムによれば、複数のRFタグリーダがそれぞれ用いるキャリア周波数の差を、RFタグリーダがRFタグとの通信で用いる周波数帯域の2倍以上に設定している。これにより、RFタグが受信する2つのキャリアで生じるビート周波数を通信で使用する周波数帯域から外すことができ、RFタグリーダとRFタグとの間で安定した通信を行うことができる。
【0013】
請求項5に記載したRFタグリーダによれば、キャリアの送信前に所定の周波数帯の各チャネルについてキャリアの検出処理を行い、共通の通信範囲を持つ他のRFタグリーダがキャリアを送信している間に(つまり送信が終了する前に)、キャリアが検出されなかった空チャネル領域でキャリアの送信を開始する。これにより、キャリアの送信開始後所定の送信時間以内にキャリアの送信を停止する必要があるRFタグリーダであっても、他のRFタグリーダと連携して、共通の通信範囲に存在するRFタグに対し連続して電力を供給し続けることができる。
【0014】
請求項6に記載したRFタグリーダの制御装置によれば、接続された複数のRFタグリーダのうち少なくとも1つのRFタグリーダによりキャリアが送信され続けるように各RFタグリーダのキャリア送信タイミングを制御する。これにより、各RFタグリーダが所定の送信時間以内に一旦キャリアを停止する必要がある場合でも、共通の通信範囲に存在するRFタグに対し、何れかのRFタグリーダから連続して電力を供給することができる。その結果、RFタグは、送信時間以内ごとにリセットされることがなくなり、所定の送信時間よりも長い時間を要する連続的な処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図1ないし図8を参照しながら説明する。
図2は、RFタグとの間で非接触通信を行うリーダライタの電気的構成を示すブロック図である。リーダライタは、マイクロコンピュータにより構成される制御部1、送信回路2、送信アンテナ3、受信アンテナ4、受信回路5、周波数チャネル検出部6などから構成されている。
【0016】
送信回路2は、制御部1から指令された送信周波数に対応した搬送波信号(キャリア信号)を生成する発振器7、搬送波信号を制御部1から出力される送信データに応じて変調する変調部8、および被変調信号を増幅して送信アンテナ3を介して電波信号として送信するアンプ9から構成されている。また、受信回路5は、受信アンテナ4を介して受信した信号を復調する復調部10と、復調された受信信号から受信データを復号する復号部11とから構成されている。
【0017】
周波数チャネル検出部6は、受信アンテナ4を介して受信した信号を入力し、各周波数チャネル(以下、チャネルと称す)におけるキャリア(搬送波信号)の有無を検出して制御部1に対し出力するものである。制御部1は、RFタグに電力を供給しつつRFタグとの間で通信を行い、RFタグからのタグ識別情報の受信、RFタグに対するデータの書き込みとデータの読み出しを行う。また、制御部1は記憶手段としてのメモリ12を備えており、周波数チャネル検出部6から入力された各チャネルのキャリアの検出有無情報をメモリ12に記憶するようになっている。
【0018】
図3は、RFタグの電気的構成を示すブロック図である。RFタグは、アンテナ13、電源生成部14、復調部15、変調部16、CPUを主体とする制御部17、不揮発性メモリ18、揮発性メモリ19などから構成されている。電源生成部14は、アンテナ13を介して受信したリーダライタからのキャリア信号を整流、平滑して動作用電源を生成するもので、その動作用電源を制御部17をはじめとする各構成要素に供給するようになっている。
【0019】
復調部15は、キャリア信号に重畳されている受信データを復調して制御部17に出力する。不揮発性メモリ18は、ROM、EEPROMなどから構成されており、制御プログラム、RFタグを識別するためのタグ識別情報(タグID)、RFタグの用途に応じてユーザが設定したデータ(商品データ、物流データ等)が記憶されている。ただし、タグ検索コマンドを受信した時に乱数を発生し、その乱数をタグ識別情報(タグID)として揮発性メモリ19に格納する構成としてもよい。制御部17は、不揮発性メモリ18から上記情報やデータを読み出し、それを送信データとして変調部16に出力する。変調部16は、キャリア信号を送信データで負荷変調してアンテナ13から送信する。
【0020】
次に、本実施形態の作用について図1、図4ないし図8も参照しながら説明する。
図4は、上述の構成を持つリーダライタRW1、RW2が互いに近接して配置され、これらリーダライタRW1、RW2がその共通する通信範囲に置かれたRFタグTAG1、TAG2と通信を行うRFタグシステムの構成例を示している。リーダライタRW1、RW2に接する円は、それぞれリーダライタRW1、RW2からRFタグに対し通信および電力供給が可能な範囲を示している。図4に示す配置では、リーダライタRW1、RW2は、RFタグTAG1、TAG2に対し通信および電力供給が可能である。
【0021】
図4(a)は、上位制御装置20がリーダライタRW1、RW2を連携してキャリアの送信タイミングを制御する実施形態であり、図4(b)は、リーダライタRW1、RW2が、他のリーダライタのキャリア送信状況を自ら検出し或いは相互に通信を行って、キャリアの送信タイミングを制御する実施形態である。図4(a)に示す上位制御装置20(本発明でいう制御装置に相当)はマイコンを搭載しており、USBインターフェース等により接続されたリーダライタRW1、RW2を統括して制御するようになっている。
【0022】
図5(a)は、このRFタグシステムにおいて使用するDSB方式の周波数チャネルを示している。図5(a)の縦軸は、送信電波の信号レベルを表している。通信で使用可能なチャネルはch1からch11であり、リーダライタRW1、RW2がRFタグTAG1、TAG2への電力供給に用いるチャネル幅(周波数帯域)は1であり、リーダライタRW1、RW2とRFタグTAG1、TAG2との通信に使用するチャネル幅(周波数帯域)は3である。ただし、これは一例であって、信号送受信に用いるチャネル幅(周波数帯域)は通信速度に応じて適宜設定すればよい。一般に、通信速度が速いほど広いチャネル幅が必要になる。
【0023】
図5(b)は、リーダライタRW1、RW2がそれぞれch3、ch9を中心として3チャネル分の周波数帯域(BW:Band Width)を用いて通信を行っている図5(a)に対応した周波数スペクトルを表している。f3、f9はそれぞれch3、ch9の中心周波数であり、以下の3つのビート周波数で干渉波が生じる。
(f3+f9)/2
(f3+f9)/2+(f9−f3)
(f3+f9)/2−(f9−f3)
【0024】
この干渉波が通信に用いる周波数帯域(f3を中心とする3チャネル幅、f9を中心とする3チャネル幅)に生じないように、リーダライタRW1、RW2が用いるキャリア周波数の差(Δf=f9−f3)は、リーダライタRW1、RW2がRFタグTAG1、TAG2との通信で用いる3チャネル幅の周波数帯域(BW)の2倍以上に設定する必要がある。
【0025】
図1は、図4(a)に示すRFタグシステムのリーダライタRW1、RW2とRFタグTAG1、TAG2のキャリア送受信タイミングを示しており、図6は、上位制御装置20が実行するリード処理のフローチャートを示している。また、図7は、図6のステップS1、S2からなるリーダライタRW1のキャリア送信開始処理およびステップU1、U2からなるリーダライタRW2のキャリア送信開始処理のフローチャートを示している。
【0026】
図4に示すRFタグシステムでは、自身以外のリーダライタにも通信の機会を与える必要から、リーダライタRW1、RW2は、キャリアの送信を開始してから所定の送信時間T0(例えば4s)以内にキャリアの送信を停止し、その後は所定の停止時間T1(例えば50ms)以上キャリアの送信を停止した後でなければ再びキャリアを送信できない。また、混信を防止するため、リーダライタRW1、RW2は、キャリアの送信前に所定のキャリア検出時間Tc(例えば5ms)以上、ch1からch11についてキャリアの有無を検出し、キャリアが検出されない空チャネルを用いてキャリアの送信を開始する。
【0027】
こうした共用化のための技術的条件の下で、上位制御装置20は、はじめにリーダライタRW1のキャリア送信を開始してRFタグTAG1、TAG2からタグ識別情報ID1、ID2を受信し、その後、リーダライタRW2のキャリア送信を開始するとともにデータリードを実行する。つまり、リーダライタRW1とRW2のキャリア送信開始タイミングをずらすことにより、何れかのリーダライタRW1、RW2からキャリアが送信されている時間、すなわちRFタグTAG1、TAG2が連続的に動作可能となる時間が上記送信時間T0よりも長くなるように制御する。
【0028】
上位制御装置20は、はじめに、リーダライタRW1に図6に示すステップS1、S2に相当するキャリア送信開始処理を実行させる。図7において、リーダライタRW1の制御部1は、少なくともキャリア検出時間Tcの期間、周波数チャネル検出部6から各チャネルのキャリアの検出結果を入力しそれをメモリ12に記憶する(ステップR1、R2)。この場合、1チャネルごとに順に検出してもよいし、複数チャネルをまとめて検出してもよい。
【0029】
キャリア検出時間Tcが経過すると(ステップR2;YES)ステップR3に移行し、使用可能なチャネル幅(本実施形態では11チャネル)からキャリアが検出されたチャネル数を減算し、連続して存在する空きチャネル幅を算出する。そして、ステップR4に移行して、空きチャネル中に通信に必要なチャネル幅を確保できるか否かを判断する。通信に必要なチャネル幅とは、上述した電力供給に用いるチャネル、信号送信に用いるチャネル、信号受信に用いるチャネルの全チャネルを合わせたチャネル幅(本実施形態では図5(a)に示すように3チャネル)である。
【0030】
通信に必要なチャネル幅を確保できる場合には、ステップR5において送信周波数を設定し、ステップR6(図6に示すステップS2)で当該周波数を発振器7に対して指令してキャリアの送信を開始する。一方、通信に必要なチャネル幅を確保できない場合には、ステップR5、R6を実行することなく(つまりキャリアの送信を行うことなく)当該キャリア送信開始処理を終了する。
【0031】
上位制御装置20は、ステップS3でリーダライタRW1のキャリア送信時間T0(1)(キャリア送信開始からの経過時間)を0に初期化し、ステップS4でリーダライタRW1がタグ検索コマンドを送信する。このタグ検索コマンドは、図8(a)に示すようにコマンドとチェックコードから構成されている。続いて、ステップS5においてRFタグからの応答信号があるか否かを判断し、応答信号がある場合にはステップS6に移行してリーダライタRW1により応答信号を受信してタグ識別情報ID1、ID2を得る。RFタグからの応答信号は、図8(c)に示すように、ステータス、データおよびチェックコードから構成されている。なお、複数のRFタグTAG1、TAG2からのタグ識別情報の取得は、タイムスロットなどの混信防止処理が用いられる。
【0032】
続いて、ステップS7でキャリア送信時間T0(1)が所定の送信時間T0未満であるかを判断し、送信時間T0未満(YES)であればステップS8でリーダライタRW1がRFタグTAG1に対してリードコマンドを送信する。リード、ライトなどの制御コマンドは、図8(b)に示すようにタグ識別情報(タグID)、コマンド、データおよびチェックコードから構成されている。なお、キャリア送信時間T0(1)が送信時間T0未満であるか否かの判定処理は、リーダライタRW1が自ら行うようにしてもよい。
【0033】
上位制御装置20は、これとともに並行してリーダライタRW2にステップU1、U2に相当するキャリア送信開始処理(図7)を実行させる。リーダライタRW2は、通信に必要なチャネル幅を確保できる場合には送信周波数を設定し、その周波数でキャリアの送信を開始する。上位制御装置20は、ステップU3でリーダライタRW2のキャリア送信時間T0(2)を0に初期化し、既に取得したRFタグTAG1、TAG2のタグ識別情報ID1、ID2をリーダライタRW2に送る。
【0034】
上位制御装置20は、ステップS9においてリードコマンドに対するRFタグからの応答信号があるか否かを判断し、応答信号がある場合にはステップS10に移行して、リーダライタRW1により応答信号を受信してデータを得る。その後、ステップS11でキャリア送信時間T0(1)が所定の送信時間T0未満であるかを再び判断し、送信時間T0未満(YES)であればステップS12で2回目のリードコマンドを送信し、ステップS9、S10と同様にステップS13、S14で応答信号を受信してデータを得る。
【0035】
一方、ステップS11で送信時間T0が経過した(NO)と判断すると、上位制御装置20は、並行処理としてステップU3からステップU4に移行してキャリア送信時間T0(2)が所定の送信時間T0未満であるかを判断し、送信時間T0未満(YES)であればステップU5でリーダライタRW2がRFタグTAG2に対してリードコマンドを送信する。その後、ステップS9、S10と同様にステップU6、U7で応答信号を受信してデータを得る。
【0036】
以上の処理において、リーダライタRW1の送信に対してRFタグからの応答がない場合(S5、S9、S13;NO)、送信時間T0が経過した場合(S7、S11;NO)、およびステップS14の実行を完了した場合に、リーダライタRW1はキャリア送信を停止する(ステップS15)。同様に、リーダライタRW2の送信に対してRFタグからの応答がない場合(U6;NO)、送信時間T0が経過した場合(U4;NO)、およびステップU7の実行を完了した場合に、リーダライタRW2はキャリア送信を停止する(ステップU8)。
【0037】
図1に示す例では、リーダライタRW1は、キャリア送信を停止して停止時間T1(厳密にはT1−Tc)が経過した後に再びキャリア送信開始処理を実行し、リーダライタRW2がキャリア送信を停止する前に再びキャリア送信を開始する。このときのキャリアの送信周波数は、前回と同じ周波数である必要はなく、キャリア検出により空いているチャネルの周波数であればよい。リーダライタRW1は、連続動作しているRFタグTAG1、TAG2のタグ識別情報ID1、ID2を既に得ているため、キャリア送信開始後タグ検索を行うことなく直ちにリード/ライト動作を開始できる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の上位制御装置20は、リーダライタRW1とRW2のキャリア送信開始時期をずらすとともに、一方がキャリアを送信している間に(つまりキャリア送信開始から送信時間T0が経過する前に)他方がキャリアの送信を開始するように制御する。この連携制御により、リーダライタRW1とRW2の共通の通信範囲にあるRFタグTAG1、TAG2は、送信時間T0(4s)よりも長い期間、連続して電力供給を受けることができ、その間リセットされることがなくなり、送信時間T0よりも長い時間を要する連続的な処理、例えばRFタグTAG1、TAG2の順次処理、大容量データのリード/ライト処理、複数のRFタグTAG1、TAG2に対する一括のリード/ライト処理などを実行可能となる。
【0039】
上位制御装置20は、RFタグTAG1、TAG2のタグ識別情報ID1、ID2をリーダライタRW1とRW2とで共有している。従って、最初に何れかのリーダライタを用いてタグ識別情報ID1、ID2を得れば、その後はタグ検索を行うことなく直ちにリード/ライト動作を開始できる。また、乱数をタグ識別情報として揮発性メモリ19に格納する構成を採用する場合、RFタグTAG1、TAG2に連続して電源供給を行う本実施形態によれば、その間タグ識別情報が消えないためタグ検索の実行回数を減らすことができ、効率的なデータ通信を行うことができる。
【0040】
リーダライタRW1、RW2がそれぞれ用いるキャリア周波数の差Δfを、リーダライタRW1、RW2がRFタグTAG1、TAG2との通信で用いる周波数帯域(BW)の2倍以上に設定している。これにより、RFタグTAG1、TAG2が受信する2つのキャリアで生じるビート周波数を通信で使用する周波数帯域から外すことができ、リーダライタRW1、RW2とRFタグTAG1、TAG2との間で安定した通信を行うことができる。
【0041】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように変形または拡張が可能である。
上位制御装置20を持たない図4(b)に示すRFタグシステムでは、リーダライタRW1、RW2は、キャリアの検出結果に基づいて共通の通信範囲を持つ他のリーダライタがキャリアを送信中に、キャリアが検出されなかった空チャネル領域でキャリアの送信を開始すればよい。また、共通の通信範囲を持つリーダライタRW1、RW2が相互に通信を行って、リーダライタRW1、RW2の何れかからキャリアを送信するように連携制御を実行してもよい。
【0042】
各実施形態ではRFタグのリーダライタを例に説明したが、RFタグリーダについても同様に適用できる。また、共通の通信範囲を持つリーダライタが3台以上存在する場合には、少なくとも1つのリーダライタがキャリアを送信するように制御すればよい。
送信アンテナ3と受信アンテナ4は共通化(一体化)してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態であってリーダライタのキャリア送信タイミングを示す図
【図2】リーダライタの電気的構成を示すブロック図
【図3】RFタグの電気的構成を示すブロック図
【図4】RFタグシステムの構成例を示す図
【図5】RFタグシステムにおいて使用する周波数チャネルと信号レベルを示す図
【図6】上位制御装置が実行するリード処理のフローチャート
【図7】キャリア送信開始処理を示すフローチャート
【図8】コマンドおよび応答信号の形式を示す図
【図9】従来技術を示す図1相当図
【符号の説明】
【0044】
図面中、20は上位制御装置(制御装置)、RW1、RW2はリーダライタ(RFタグリーダ)、TAG1、TAG2はRFタグを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のRFタグリーダと、これらRFタグリーダから送信されるキャリアにより電力の供給を受けて前記RFタグリーダと通信するRFタグとからなるRFタグシステムにおいて、
前記RFタグリーダは、それぞれキャリアの送信前に所定の周波数帯の各チャネルについてキャリアの検出処理を行い、キャリアが検出されなかった空チャネル領域でキャリアの送信を開始し、キャリアの送信開始後所定の送信時間以内にキャリアの送信を停止してその後所定の停止時間以上キャリアの送信を停止し続けるように構成され、
前記複数のRFタグリーダが共通の通信範囲を持つ場合、これら複数のRFタグリーダのうち少なくとも1つのRFタグリーダがキャリアを送信することにより、前記共通の通信範囲に存在するRFタグに対し何れかのRFタグリーダから電力を供給し続けるように構成されていることを特徴とするRFタグシステム。
【請求項2】
前記複数のRFタグリーダが接続された制御装置を備え、
この制御装置は、接続された少なくとも1つのRFタグリーダによりキャリアが送信されている状態が継続するように、前記接続された各RFタグリーダのキャリア送信を制御することを特徴とする請求項1記載のRFタグシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記接続された各RFタグリーダが前記RFタグから受信したRFタグの識別情報を、前記接続された複数のRFタグリーダで共有することを特徴とする請求項2記載のRFタグシステム。
【請求項4】
前記複数のRFタグリーダがそれぞれ用いるキャリア周波数の差は、前記RFタグリーダが前記RFタグとの通信で用いる周波数帯域の2倍以上に設定されることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のRFタグシステム。
【請求項5】
キャリアの送信によりRFタグに電力を供給するとともにRFタグと通信を行うRFタグリーダにおいて、
キャリアの送信前に所定の周波数帯の各チャネルについてキャリアの検出処理を行い、共通の通信範囲を持つ他のRFタグリーダがキャリアを送信中に、キャリアが検出されなかった空チャネル領域でキャリアの送信を開始し、キャリアの送信開始後所定の送信時間以内にキャリアの送信を停止してその後所定の停止時間以上キャリアの送信を停止し続けるように構成されていることを特徴とするRFタグリーダ。
【請求項6】
キャリアの送信前に所定の周波数帯の各チャネルについてキャリアの検出処理を行い、キャリアが検出されなかった空チャネル領域でキャリアを送信することによりRFタグへの電力供給とRFタグとの通信を行い、キャリアの送信開始後所定の送信時間以内にキャリアの送信を停止してその後所定の停止時間以上キャリアの送信を停止し続ける複数のRFタグリーダが接続可能に構成され、
接続された複数のRFタグリーダのうち少なくとも1つのRFタグリーダによりキャリアが送信され続けるように、接続された各RFタグリーダのキャリア送信タイミングを制御することを特徴とするRFタグリーダの制御装置。
【請求項7】
前記接続された各RFタグリーダが前記RFタグから受信したRFタグの識別情報を、前記接続された複数のRFタグリーダで共有することを特徴とする請求項6記載のRFタグリーダの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−90729(P2008−90729A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273000(P2006−273000)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】