説明

RF干渉抑制器

衛星受信器のためのRF干渉抑制器、より具体的には、MOCA標準規格を用いるRF干渉抑制器が提供される。RF干渉抑制器は、プリント回路基板に対するFコネクタの中心導体の接続点を、受信器の高速デジタル部から発するスプリアス信号から遮蔽する。更に、RF干渉抑制器は、Fコネクタのねじ切り部を囲むタブ部を有し、Fコネクタ本体と受信器の内部シールド壁との間の空隙により生じるRF干渉の経路を遮蔽するよう動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本原理は、衛星受信器に関する。より具体的には、本原理は、衛星受信器のためのRF干渉抑制器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の衛星受信器においては、950から2150MHzの周波数帯域におけるダウンコンバート信号が、屋外のアンテナ及びコンバータからユーザの住居内の1又はそれ以上の受信器へ同軸ケーブルを用いて送られる。これは、高度ではないが外部の干渉信号からの何らかの保護を必要とした。250から750MHzのBバンドを更に用いるシステムもあるが、それらの信号は全て、同軸ケーブル及び/又は受信器への入力が通常の抑制及び遮蔽技術によって満足なレベルに制御されるように、屋外ユニットにおいて相当量の増幅を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
目下、多くの用途のための不要なRFエネルギの独自且つ上質の抑制能力を備えた、特別な通信チャネルを用いる新しい衛星受信器が必要とされる。従来の衛星受信器は、二次的な通信チャネルを有さず、従って、より高度な抑制を必要としない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施に従って、衛星受信器のためのRF干渉抑制器は、前記衛星受信器のプリント回路基板に対する少なくとも1つのFコネクタのセンタコネクタの接続点を囲むように前記プリント回路基板の裏面に実装されるよう構成された金属シールドを有する。当該RF干渉抑制器は、底面と、該底面から横に延在する3つの側面と、前記底面から上方向に延在するタブとを更に有し、前記タブは、前記少なくとも1つのFコネクタのねじ切り部の周囲に合うように構成された開口を有する。前記タブは、前記3つの側面から分離される。
【0005】
他の実施に従って、衛星受信器のためのRF干渉抑制器は、前記衛星受信器のプリント回路基板に対する1よりも多いFコネクタの夫々のセンタコネクタの各接続点を囲むように前記プリント回路基板のウエラ面に実装されるよう構成された金属シールドを有する。当該RF干渉抑制器は、底面と、該底面から横に延在する3つの側面と、前記底面から上方向に延在するタブとを更に有し、前記タブは、前記1よりも多いFコネクタの各自のねじ切り部の周囲に合うよう夫々構成された1よりも多い開口を有する。前記タブは、前記3つの側面から分離される。
【0006】
本原理の上記及び他の態様、特徴及び利点は、添付の図面に関連して読まれるべきである例となる実施形態に係る以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明が適用可能なFコネクタを有するプリント回路基板(PCB)の平面図である。
【図2】本発明の実施形態に従うRF干渉抑制器の平面図である。
【図3】Fコネクタの中心導体接続を示すPC基板の裏面の平面図である。
【図4】本発明の実施形態に従って組み込まれたRF干渉抑制器を示すPC基板の底面図である。
【図5】本発明の実施形態に従ってPCB上に設置されたRF干渉抑制器の断面図である。
【図6】本発明の実施形態に従ってRF回路を囲むRF干渉抑制器シールドを示すPC基板の上面図である。
【図7】本発明の実施形態に従って図5のRF干渉抑制器シールドに加えられたカバーを示すPC基板の上面図である。
【図8A】2つのFコネクタを有する例となるPC基板の上面図である。
【図8B】2つのFコネクタを有する例となるPC基板の底面図である。
【図9A】本発明の実施形態に従うデュアルRF干渉抑制器の上面図である。
【図9B】本発明の実施形態に従うデュアルRF干渉抑制器の底面図である。
【図10A】本発明の実施形態に従って組み込まれたデュアルRF干渉抑制器を示すPC基板の上面図である。
【図10B】本発明の実施形態に従って組み込まれたデュアルRF干渉抑制器を示すPC基板の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本原理は、図面に従ってより良く理解され得る。
【0009】
本発明は、衛星受信器におけるRF干渉抑制を対象とする。
【0010】
本明細書は、本原理を例示する。よって、当業者が、本願で記載又は図示されていないとしても、本原理を具現し且つその主旨及び適用範囲内に含まれる様々な配置に想到可能であることは明らかである。
【0011】
本願で挙げられている全ての例及び条件は、読む者が本原理を理解するのを助ける教育上の目的に向けられており、そのような具体的に挙げられている例及び条件に制限されないと解されるべきである。
【0012】
更に、本発明の原理、態様及び実施形態並びにそれらの具体例を挙げる本願における全ての記述は、その構造上及び機能上同等のものを包含するよう意図される。加えて、かかる同等のものは、現在知られているもの及び将来開発されるもの、すなわち、構造に関わらず同じ機能を果たすあらゆる開発物を含むと考えられる。
【0013】
本原理の「一実施形態」又は「実施形態」との明細書中の言及並びにその他の言い換えは、その実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、特性等が本原理の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。よって、本明細書全体を通して様々な箇所に現れる「一実施形態において」又は「実施形態において」との表現並びにその他の言い換えは、必ずしも全て同じ実施形態に言及しているわけではない。
【0014】
新しい衛星受信器システムが導入されており、475から650MHzの間の周波数の帯域におけるMOCA(Multimedia of Coax Alliance)を用いる。これは、同じ世帯にある2又はそれ以上の衛星受信器の間で双方向通信を提供することによって、新しい機能性を可能にする。そのような通信は、ビデオ信号及び制御機能の両方の交換を提供する。かかるシステムは、屋外ユニットからの衛星信号を分配するために使用されるのと同じ同軸ケーブルシステムを用いる。これは、屋外のアンテナ/コンバータからの信号と、衛星受信器の間のMOCAバンドにおける信号とを分割し弱める信号スプリッタを有する。
【0015】
そのような新しい衛星システム及びMOCAの実施の結果として、潜在的に干渉する信号は衛星受信器からシステムへ伝播されてはならないことが非常に重要になる。このために、あらゆるスプリアスRFエネルギが、個々の衛星受信器から同軸ケーブルシステムに入ることを認められてはならない。MOCAを用いるこの新しいシステムのための衛星サービスプロバイダによる仕様は、従来の製品よりも3桁低い。加えて、衛星受信器は、同時ケーブル分配システムへ接続するFコネクタから絶縁されるべき多数の高レベルクロック及び高速デジタル信号を有する。また、放送テレビ受像機、携帯電話機、等の外部源からの信号の進入を防ぐことが必要である。
【0016】
ある検討を行った後、相当量の干渉がプリント回路基板(PCB)の裏面にある入力Fコネクタ12上の露出されたセンタピン/導体14に起因することが判明した。これは、図1に示されている。基板10の底面は、Fコネクタ12のセンタピン14を除いて、設置された銅ホイル16により覆われている。
【0017】
図3に示されるように、Fコネクタ12の構成は、センタピン14がPC基板10を通り抜け、その裏面にはんだ接続を有さなければならないというものである。この小さな接続点は、PCB10の底面にあるダブルデータレート同期動的ランダムアクセスメモリ(DDR)及び他の部品から発生して、衛星受信器の金属筐体の内部で反射され、PCB10を通して突き出るFコネクタ12のセンタピン14で拾われる、受信器の高速デジタル部からのスプリアス信号のピックアップを防ぐよう遮蔽されるべきである。
【0018】
更に、受信器のデジタル部からの電流の成分が、ピン14を囲んでいる接地面に存在しうる。よって、本発明の抑制器は、反射されるピックアップを低減し且つセンタピンを囲む接地面にわたる電流差を防ぐよう、センタピンの周囲にファラデー・シールドを設ける。ファラデー遮蔽は、放送テレビ受像機及び携帯電話機等の外部干渉からの進入源も低減する。
【0019】
図2、4及び5〜7に示される本発明の一実施形態に従って、RFシールド20は、PC基板の裏面にあるセンタピン接続の上に設置される、短い側面又は側壁23を備えた金属カバー20を有する。これは、PC基板の縁でFコネクタを収容するよう、4つ全ての側面での接続を必要とし、該接続は、大きな金属取付金具を有する3つの側面(図7)上のタブ26を用いることを伴う。なお、この取付金具は、大量生産工程におけるはんだ付けにとっては大きすぎることが分かっているが、そのような接続は、適切な干渉抑制のために必要であると立証されている。
【0020】
本発明の実施形態に従う改善された解決法は、金属カバー22を伸ばし、Fコネクタ12のねじ切り部に合うような適切な穴25を有する部分又はFコネクタタブ24を曲げることである。これは、図2、4、6及び8に示されている。次いで、これは第1の解決法よりもずっと効果があると判断されている。更なる検討により、Fコネクタ本端13と内部シールド壁との間の空隙は干渉のための経路を提供することが分かった。内部シールド30は図6及び7に示されており、一般的に、PCBに実装されたRF回路部品を更に収容/遮蔽するために使用される。抑制は、空隙が覆われることのみならず、有効な接続が開口の全ての側面でFコネクタから内部シールドへ形成されることを必要とする。この工程は、Fコネクタ及びセンタピンを囲む領域に対するファラデー・シールドの被覆を広げる。
【0021】
図4及び5に示されるように、RFシールド又は抑制器20の部分24にある穴25は、Fコネクタ12に合わせられ、側面23のタブ26は、PC基板の底面にはんだ付けされる。次いで、PC基板10及び抑制器のアセンブリは、ぴったり合った穴42を通って突き出るFコネクタを有する衛星受信器の金属ケース40に嵌め込まれる(図5参照)。次いで、ナット44がFコネクタ12に載せられ、抑制器の部分24が内部シールド30、外部金属ケース40及びFコネクタ本体13に押しつけられるように締め付けられる。これは、あらゆる放射性妨害波が直接の進入を妨げられるような構造を形成する。それはまた、極めて低いインピーダンス接続を提供し、それにより、金属ケースを流れる電流は、内部シールド及びFコネクタへ接続される関連回路において干渉を引き起こさない。
【0022】
金属RF干渉抑制器の独特の構成及びアセンブリは、内部シールド及び金属ケースのための既存の設計である標準的なFコネクタの使用を可能にし、且つ、標準的な工場組み立て技術が使用されることを可能にする。大量生産のための対策を含む詳細は図5に示されている。
【0023】
既存のFコネクタを使用する困難性の1つは、それらが締め付けられるよう、ケース40のジャックパネルの外側にあって、完全な封を提供するよう内部シールド、抑制器シールド、Fコネクタ及びケース壁の部品を機械的に締め上げるナット44に依存することである。Fコネクタナット44の締め付けは、シールドの底面及び側面部に大きな軸力を与えて、はんだ付けタブ26をPC基板上のはんだパッドからはぎ取らせうる。
【0024】
本発明の実施形態は、2つの重要な特徴により、この問題を解消する。第1に、Fコネクタタブ24は、PC基板10の底縁の直下で始まるオフセット28を有する。これは、Fコネクタタブ24が曲がって、シールドの底面22に対して変位することを可能にする。第2に、Fコネクタタブ24は、シールドの側壁23から分離され、シールドの側壁23は、PC基板の縁とぴったり重なる。これは、シールドの側壁23が、ケースフレーム又は金属ケース40の内壁との接触によって取り付けられないようにするとともに、更に、ナットが衛星受信器の金属ケーシングの外側でFコネクタのねじ切り部上に固定される場合にタブが内部シールドと外部金属ケーシングとの間で押しつけられることを可能にする。
【0025】
本発明によって解決される他の問題は、はんだ付けタブ26がはんだ付けされる前及びその間の定位置におけるシールド20の固定である。これを解決するよう、シールド設計は、Fコネクタタブ24に対向する小さなかぎ付きタブラッチ27を有し、PC基板10内での正の保持力、従って、整合的且つ正確な設置を可能にする。Fコネクタ上のタブは1.8+0.0〜0.1mmの厚さを有し、1.90±0.125mmの幅を有する小さなPC基板スロットに合う。これはタイトフィットをもたらす。
【0026】
図5は、次のように定義される様々な空隙A〜Eを示す:
A=通常0.05mmであるFコネクタの段部とフレームの間の空隙、
B=0.25mmから0.5mmの間にあるシールド壁28の厚さ、
C=通常0.5mmであるPC基板縁からフレームの間の空隙、
D=1.90±0.125mmである、PC基板にFコネクタの本端を取り付けるためのPC基板スロットサイド、及び
E=スロットDに挿入される、1.8+0.0〜0.1mmであるFコネクタ本体タブサイズ。
【0027】
上記の例となる実施形態において記載されるように、本発明は、衛星受信器の単一Fコネクタ設計において使用され得る。他の実施形態に従って、本発明は、複数の横並びのFコネクタ212が用いられる電子機器のための複数の開口を備えた単一の干渉抑制器を用いて実施され得る。図8a及び8bは夫々、横並びに2つのFコネクタを有するPC基板210の上面及び底面を示す。図9a及び9bは、2つの横並びのFコネクタを受容し遮蔽するよう構成された長さ及び2つの穴を有する例となる単一RF干渉抑制器200の上面及び底面を示す。図10a及び10bは、2つの横並びのFコネクタを収容する単一干渉抑制器の上面図及び底面図を示す。
【0028】
実施形態は添付の図面を参照して本願において記載されてきたが、当然、本原理はそれらの厳密な実施形態に制限されず、種々の変更及び改良が本原理の主旨及び適用範囲から逸脱することなしに当業者によってそれらにおいて行われてよい。全てのそのような変更及び改良は、添付の特許請求の範囲に記載される本原理の適用範囲内に含まれるよう意図される。
【0029】
[関連手段の相互参照]
本願は、2010年1月21日付けで出願された米国特許仮出願第61/336351号に基づく優先権を主張するものである。なお、当該米国出願は、その全文を参照により本願に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ケース内に収容されるプリント回路基板と、該プリント回路基板に接続され、前記金属ケースの外へ延在する少なくとも1つのFコネクタとを有する衛星受信器と、
前記プリント回路基板に対する前記少なくとも1つのFコネクタのセンタコネクタの接続点を囲むように前記プリント回路基板の側部に実装されるよう構成された金属シールドを有するRF干渉抑制部と
を有し、
前記金属シールドは、底面と、該底面から横に延在する3つの側面と、前記底面から上方向に延在するタブとを有し、前記タブは、前記少なくとも1つのFコネクタのねじ切り部の周囲に合うように構成された開口を有する、アセンブリ。
【請求項2】
前記タブは、該タブが前記金属シールドの前記底面に対してずらされるように、前記プリント回路基板の底縁の点で前記タブの底に位置するオフセットを更に有する、
請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記シールドに組み込まれ、該シールドの位置をはんだ付けの前に前記プリント回路基板の裏面に固定するよう構成された位置決め手段
を更に有する請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記位置決め手段は、前記タブに対向する前記3つの側面のうちの1つに位置するタブ留め具を有する、
請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記3つの側面は互いに接続されている、
請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記3つの側面の夫々は、それから延在し、前記プリント回路基板にはんだ付けされるよう構成されたはんだタブを更に有する、
請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記タブは、前記Fコネクタの段部と前記衛星受信器の前記金属ケースとの間に位置付けられるよう構成される、
請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記タブは、ナットが前記金属ケースの外側から前記Fコネクタの前記ねじ切り部上に固定される場合に、前記Fコネクタの段部と前記金属ケースとの間に挟まれる、
請求項7に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記衛星受信器は、前記プリント回路基板へ接続され、前記金属ケースの外へ延在する1よりも多いFコネクタを有する、
請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記タブは、前記1よりも多いFコネクタの各自のねじ切り部の周りに合うように夫々構成された1よりも多い開口を有する、
請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記タブは、前記3つの側面から分離される、
請求項1に記載のアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【公表番号】特表2013−518409(P2013−518409A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550011(P2012−550011)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2011/000105
【国際公開番号】WO2011/090788
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】1−5, rue Jeanne d’Arc, 92130 ISSY LES MOULINEAUX, France
【Fターム(参考)】