説明

RFIDタグ読み取り装置および方法

【課題】RFIDタグとRFIDタグ読み取り装置間の距離である読取り距離の制限を軽減することのできる読み取り技術を提供する。
【解決手段】半導体メモリを内蔵したRFIDタグ8と交信を行い、前記RFIDタグが保有する情報の読み取りを行うRFIDタグ読み取り装置1であって、該読み取り装置は、前記RFIDタグに向けて、アンテナ7を介して所定の送信出力で電磁波を送出する送信処理部3と、前記RFIDタグからの前記送信出力に対する応答信号を、アンテナ7を介して受信して受信信号を再生する受信処理部4と、前記送信処理部および受信処理部の動作を制御するCPU2を備え、該CPUは送信処理部が送信する電磁波の送信出力を所定間隔で強、弱に切り替え、かつ、前記送信出力を弱に切り替えた際の送信出力は、前記受信処理部の受信信号が飽和するレベル以下に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグの読み取り技術にかかり、特に、RFIDタグからの信号を確実に読み取ることのできるRFIDタグの読み取り技術に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物の管理現場や工場のラインなどでは、取り扱う物品に関する種々の情報が書き込まれた記憶媒体を物品に付加しておき、前記記憶媒体の情報を読み取ることにより、前記物品のトレーサビリティを確保するシステムが導入されている。
【0003】
前記物品に付加する記憶媒体は、半導体メモリを含むICチップおよび通信用のアンテナコイルなどを内蔵したものであり、RFIDタグまたは非接触ICタグなどと呼ばれている。
【0004】
このRFIDタグの情報を非接触で読取り、読取った情報を管理するRFIDシステムに用いる従来の読み取り装置は、アンテナ部からRFIDタグに対して一定の送信出力で電磁波を送信し、該送信出力に対するRFIDタグからの応答信号を受信して、RFIDタグの情報を読み取るようにしている。
【0005】
このような読み取り装置は一般的に、RFIDタグから放射される応答信号(受信電波)の強弱により読取り率が変動する傾向にある。特に、読み取り装置とRFIDタグとの距離(読み取り距離)が近い場合、受信電波が強くなり、読み取り装置内部の回路における信号レベルが飽和状態となり、RFIDタグの情報が読取りにくくなる傾向にある。
【0006】
一般的には、このような飽和状態となることを回避するために、読み取り装置は、前記読取り距離を所定量確保して、受信電波の飽和状態とならないように運用されている。
【0007】
また、飽和状態の回避方式として、特許文献1には、数回の読取り動作を実施してRFIDタグとの交信が正常に実施できる送信出力を検出するとともに、前記読取り動作の結果をもとに最適の送信出力を導き出すことにより、送信信号レベルを調整することが示されている。また、特許文献2には、RFIDシステムにおける読み取り装置に、RFIDタグ検知用の回路を設け、RFIDタグが近傍に存在しない場合は電磁波の放射を抑えるなどして省電力化を図ることが示されている。
【特許文献1】特開2005−235180号公報
【特許文献2】特開2001−155121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、読み取り装置とRFIDタグ間の読取り距離を所定量確保して、受信電波の飽和状態とならないように運用する方法は、RFIDタグが移動している場合やハンディ型の読み取り装置などを用いてRFIDタグを読み取る場合においては、利便性を妨げる要因となる。すなわち、ベルトコンベアなどに載置されて移動する物品に付加されたRFIDタグを固定型の読み取り装置を用いて読み取る場合、あるいはハンディ型の読み取り装置を用いてRFIDタグを読み取る場合等においては、読み取り距離に制限があることは、読み取り装置の運用の利便性を低下させることになる。
【0009】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたもので、移動するRFIDタグを読み取る場合、あるいはハンディ型の読み取り装置をRFIDタグにかざすなどの方法により読取りを行う場合において、読取り距離の制限を軽減することのできる読み取り技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0011】
半導体メモリを内蔵したRFIDタグと交信を行い、前記RFIDタグが保有する情報の読み取りを行うRFIDタグ読み取り装置であって、該読み取り装置は、前記RFIDタグに向けて、アンテナを介して所定の送信出力で電磁波を送出する送信処理部と、前記RFIDタグからの前記送信出力に対する応答信号を、アンテナを介して受信して受信信号を再生する受信処理部と、前記送信処理部および受信処理部の動作を制御するCPUを備え、該CPUは送信処理部が送信する電磁波の送信出力を所定間隔で強弱の変化を設け、かつ、前記送信出力を「弱」とした際の送信出力は、前記受信処理部の受信信号が飽和するレベル以下に設定した。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上の構成を備えるため、読み取り装置の省電力化を可能とするとともにRFIDタグと読み取り装置間の距離である読取り距離の制限を軽減することのできる読み取り技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、最良の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態にかかるRFIDタグ読み取り装置を説明する図である。図1に示すように、RFIDタグ読み取り装置1は、CPU2、送信処理部3および受信処理部4を備えた送受信部5、送信用の増幅器6、およびアンテナ7を備える。なお、8は物品に付加されたRFIDタグである。
【0014】
RFIDタグ読み取り装置1は、送信処理部3を介して、RFIDタグ8に向けて、アンテナ7を介して所定の送信出力で電磁波を送出する。RFIDタグ8はアンテナから送信される送信出力(電磁波)に応答して応答信号を送出する。前記受信処理部4は、前記アンテナを介して受信した信号を再生する。CPU2は、格納されたプログラムに基づき、送信処理部3および受信処理部4による処理(交信処理)を制御するとともに、送信処理部3が送信する電磁波の送信出力を所定間隔で「強」および「弱」に切り替える。また、RFIDタグ8に格納された情報を読み取り、読み取った情報をもとに所定の処理を実行する。
【0015】
図2は、RFIDタグ読み取り装置1の送受信アンテナ7から出力される送信出力の時間変化を説明する図である。図2に示すように、送受信部5は送信処理部3による送信処理(期間t)と、送信停止(期間t)を交互に行う。なお、受信処理部4による受信処理(読み取り処理)は前記期間tで行われ、送信停止期間tにおいて読み取り結果の確認処理が行われる。また、図2(a)は、送信出力を一定に保持する従来の例を示し、図2(b)は、送信出力を「強」(1P)および「弱」(0.5P)に切り替える本発明の例を示す。なお、図2(b)の例では、送信出力を「弱」に切り替えた際の出力を「強」に切り替えた際の出力の1/2としているが、これに限られる訳ではない。
【0016】
図3は、RFIDタグ読み取り装置1の送受信アンテナ7を基準にしたRFIDタグ8との交信可能範囲を説明する図である。図3(a)において、領域Aは、送受信アンテナ7からの送信出力を「強」、すなわち1Pとしたときの受信可能範囲を示し、領域Bは、送受信アンテナ7からの送信出力を「強」、すなわち1Pとしたときの受信不可能範囲を示す。すなわち、領域BにRFIDタグが存在する場合には、受信電波が強くなりすぎて受信処理部4の内部回路の信号レベルが飽和状態となり、RFIDタグ8の情報が読み取りにくくなる。
【0017】
図3(b)は、送受信アンテナ7からの送信出力を「強」、「弱」に切り替えた際の交信可能範囲を説明する図である。図3(b)において、領域Aは、送受信アンテナ7からの送信出力を「強」に切り替えた際の交信可能範囲を示し、領域Bは、送受信アンテナ7からの送信出力を「弱」に切り替えた際の交信可能範囲を示す。
【0018】
このように、送受信アンテナ7からの送信出力を「強」、「弱」に切り替えることにより、交信可能範囲を、領域Aのみから、領域AおよびBに拡大することができる。
【0019】
図4は、RFIDタグ読み取り装置1を物品を搬送する搬送ライン9に適用した例を説明する図である。図に示すように物品(A)および物品(B)は、搬送ライン9上の任意の位置に配置されて搬送される。RFIDタグ読み取り装置1は、搬送ラインの一方の側部に配置し、送受信アンテナ7からの送信出力を「強」に切り替えた際の交信可能範囲を領域Aとなるように設定し、送受信アンテナ7からの送信出力を「弱」に切り替えた際の交信可能範囲を領域Bとなるように設定する。
【0020】
図4に示す搬送ライン9上を流れる物品(A)および物品(B)の読取りを行う場合においては、RFIDタグ読み取り装置1の送信出力が「強」のときに、領域Aを通過する物品(A)に付加されたRFIDタグ8を読み取ることができる。また、送信出力が「弱」のときに、領域Bを通過する物品(B)に付加されたRFIDタグ8を読み取ることができる。
【0021】
図5は、CPU2の送受信処理プログラムにおける設定の例を説明する図である。この例では、送信処理部3による送信処理(期間t)を0.1秒に設定し、送信停止(期間t)を0.1秒に設定し、送信処理と送信停止を交互に行う。また、RFIDタグ8が領域Aまたは領域Bを通過するに要する時間(T)を、搬送ライン9の搬送速度を調整して4秒に設定する。
【0022】
また、送信出力は、出力を「強」に切り替えたときの出力を1P、「弱」に切り替えたときの出力を0.5Pとする。また、切り替えのパターンは「強」「弱」交互に切り替えるパターンとする。
【0023】
この例の場合には、RFIDタグ8がRFIDタグ読み取り装置1の交信可能領域を通過する時間(T)において、電磁波を20回(送信出力が「強」での送信が10回、「弱」での送信出力が10回)放射することができる。
【0024】
なお、送信出力を「強」のみに設定して読み取りを行う場合、RFIDタグの通過時間(T)における総消費電力は20Pであるが、本発明のように送信出力を切り替えた場合の総消費電力は15Pとなる。すなわち、5Pの省電力化を図ることができる。
【0025】
また、本実施形態では、出力の「強」「弱」を交互に切り替えて出力するよう設定したが、RFIDタグ読み取り装置を使用するRFIDシステムに合わせ、例えば「強」「弱」「弱」「強」など、送信出力のタイミングやパターンをカスタマイズすることで、本発明の効果をより大きくすることができる。なお、RFIDタグ読み取り装置は工場の前記ラインなどに設置する装置だけでなく、ハンディ型のRFIDタグ読み取り装置においても有効である。
【0026】
以上、説明したように、本実施形態によれば、読取り距離の制限を軽減することが可能となり、読取り距離が近距離の場合や、読取り距離が変動する場合においてもRFIDタグの読取りが可能となる。更に、一定の出力の電磁波を出力する場合と比して消費電力を低減することができる。このためハンディ型などのRFIDタグ読み取り装置の電池寿命を延ばすことが可能となる。また、従来のように、読取り動作を実施してRFIDタグとの交信が正常に実施できる送信出力を検出するための回路を追加する必要がないため、RFIDタグ読み取り装置の小型化に際して有利である。また、使い勝手を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態にかかるRFIDタグ読み取り装置を説明する図である。
【図2】RFIDタグ読み取り装置1のアンテナ7から出力される送信出力の時間変化を説明する図である。
【図3】RFIDタグ読み取り装置1のアンテナ7を基準にしたRFIDタグ8との交信可能範囲を説明する図である。
【図4】RFIDタグ読み取り装置1を物品を搬送する搬送ライン9に適用した例を説明する図である。
【図5】CPU2の送受信処理プログラムにおける設定の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0028】
1 RFIDタグ読み取り装置
2 CPU
3 送信処理部
4 受信処理部
5 送受信部
6 増幅器
7 アンテナ
8 RFIDタグ
9 搬送ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体メモリを内蔵したRFIDタグと交信を行い、前記RFIDタグが保有する情報の読み取りを行うRFIDタグ読み取り装置であって、該読み取り装置は、
前記RFIDタグに向けて、アンテナを介して所定の送信出力で電磁波を送出する送信処理部と、
前記RFIDタグからの前記送信出力に対する応答信号を、アンテナを介して受信して受信信号を再生する受信処理部と、
前記送信処理部および受信処理部の動作を制御するCPUを備え、
該CPUは送信処理部が送信する電磁波の送信出力を所定間隔で強、弱に切り替えたことを特徴とするRFIDタグ読み取り装置。
【請求項2】
請求項1記載のRFIDタグ読み取り装置において、前記電磁波の送信出力の切り替えは、強、弱を交互に行うことを特徴とするRFIDタグ読み取り装置。
【請求項3】
半導体メモリを内蔵したRFIDタグと交信を行い、前記RFIDタグが保有する情報の読み取りを行うRFIDタグ読み取り方法において、
出力を所定間隔で強、弱に切り替えた電磁波をアンテナを介して前記RFIDタグに向けて送信し、前記RFIDタグからの前記送信出力に対する応答信号を、アンテナを介して受信して受信信号を再生すると共に前記送信出力を弱に切り替えた際の送信出力は、前記受信処理部の受信信号が飽和するレベル以下に設定したことを特徴とするRFIDタグ読み取り方法。
【請求項4】
請求項1記載のRFIDタグ読み取り方法において、前記電磁波の送信出力の切り替えは、強、弱を交互に行うことを特徴とするRFIDタグ読み取り方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−188418(P2007−188418A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7534(P2006−7534)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】