説明

RFIDメディア

【課題】電池等の電源を用いることなく、ICチップが破損しているかどうかを検知するための報知手段に対して報知手段を駆動させるために十分な電力を供給する。
【解決手段】給電点121a,121bをそれぞれ具備する2つの導体部120a,120bからなるアンテナ120と、給電点121a,121bにそれぞれ接続され、アンテナ120にて生じた電力が給電点121a,121bを介して供給されることにより非接触状態にて情報の書き込み及び/または読み出しが可能なICチップ120と、2つの導体部120a,120bのうち一方の導体部120bの給電点121bの近傍に接続され、アンテナ120にて生じた電力が供給されることにより点灯する発光素子部140とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触状態にて情報の書き込みや読み出しが可能なICチップを有してなるRFIDメディアに関し、特に、ICチップが破損したりICチップとアンテナとの接続が断線したりする等の不具合を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、情報化社会の進展に伴って、情報をカードに記録し、該カードを用いた情報管理や決済等が行われている。また、商品等に貼付されるラベルやタグに情報を記録し、このラベルやタグを用いての商品等の管理も行われている。
【0003】
このようなカードやラベル、あるいはタグを用いた情報管理においては、カードやラベル、あるいはタグに対して非接触状態にて情報の書き込みや読み出しを行うことが可能なICチップが搭載された非接触型ICカードや非接触型ICラベル、あるいは非接触型ICタグがその優れた利便性から急速な普及が進みつつある。
【0004】
非接触状態にて情報の書き込みや読み出しが可能な非接触型ICカードや非接触型ICラベル、非接触型ICタグにおいては、近年、小型化及び通信可能距離を確保するために、マイクロ波帯を利用して通信を行う微細なICチップが用いられることが多くなってきている。
【0005】
このような微細なICチップを用いた場合、ICチップに導電性のアンテナを接続することにより、ICチップに対して情報の書き込みや読み出しが行われることになる。
【0006】
図4は、マイクロ波帯を利用して通信を行うICチップが搭載された非接触型ICタグの一例を示す図である。
【0007】
本構成例は図4に示すように、樹脂や紙等からなるベース基材230上に、互いに直列に並ぶように所定の間隔を有して形成された2つの帯状の導体部220a,220bからなるアンテナ220が形成されており、この2つの導体部220a,220bの一端にそれぞれ設けられた給電点(不図示)に接続されるように、非接触状態にて情報の書き込み及び読み出しが可能なICチップ210が搭載されて構成されている。
【0008】
上記のように構成された非接触型ICタグ200においては、外部に設けられた情報書込/読出装置(不図示)に近接させることにより、情報書込/読出装置からの電波に共振してアンテナ220に電流が流れてアンテナ220に電力が生じ、この電力がICチップ210に供給され、それにより、非接触状態において、情報書込/読出装置からICチップ210に情報が書き込まれたり、ICチップ210に書き込まれた情報が情報書込/読出装置にて読み出されたりする。このように情報書込/読出装置にてICチップ210に対して情報の書き込みや読み出しを行うためには、アンテナ220の長さを、ICチップ210に対して情報の書き込みや読み出しを行う周波数に応じて設定しておくとともに、ICチップ210とアンテナ220とのインピーダンス整合をとっておく必要がある。
【0009】
このような非接触型ICタグ200は、製造段階においてICチップ210が正常に動作するかどうかが検査される。また、製造後においても、ICチップ210が破損していないかどうかやICチップ210とアンテナ220との接続が断線していないかどうかを検査することで、非接触型ICタグ200を用いたアプリケーションの信頼性を向上させることができる。
【0010】
このような検査において、ICチップ210が破損したりICチップ210とアンテナ220との接続が断線したりした場合は、情報の書き込みや読み出しができなくなる。ところが、上述したように、図4に示したような非接触型ICタグ200においては、アンテナ220の長さや、ICチップ210とアンテナ部220とのインピーダンス整合がとられているかどうかによっても、情報の書き込みや読み出しができなくなる。そのため、ICチップ210が破損しているかどうかやICチップ210とアンテナ220との接続が断線しているかどうかを検査する場合に、情報書込/読出装置を用いて情報の書き込みや読み出しを行うだけでは、ICチップ210が破損しているかどうかやICチップ210とアンテナ220との接続が断線しているかどうかを判断することができるとは言い難い。
【0011】
ここで、外部から加わる衝撃を感知する衝撃感知センサを備えた非接触データキャリア装置が特許文献1に記載されている。この非接触型データキャリア装置においては、衝撃によって断線する配線を有する衝撃感知センサを備え、この配線の両端部の電位を測定してICチップ内に記憶しておくことにより、衝撃が加わったかどうかの情報を保持しておくことができる。
【0012】
ところが、上述したような衝撃感知センサを用いた場合においては、外部からの衝撃が加わったかどうかを確認することができるものの、その衝撃でICチップが破損しているかどうかを認識することはできない。また、衝撃が加わったかどうかを確認する場合、ICチップ内に記憶された情報を読み出すことになるため、ICチップに対する情報の読み出し処理を行うことになってしまい、ICチップが破損している場合、その旨を検知する目的としては利用することができない。
【0013】
そこで、LED等を用いた発光素子回路をICチップと直列にアンテナに接続し、この発光素子回路の発光状態を用いて、ICチップが破損しているかどうかやICチップとアンテナとの接続が断線しているかどうかを判断することが考えられる。
【0014】
図5は、発光素子回路を用いて不具合を検出可能な非接触型ICタグの一例を示す図である。
【0015】
本構成例は図5に示すように、樹脂や紙等からなるベース基材330上に、互いに同一長さを有して直列に並ぶように形成された2つの帯状の導体部320a,320bからなるアンテナ320が形成されており、導体部320a,320bの一端にそれぞれ設けられた給電点(不図示)に接続されるように、非接触状態にて情報の書き込み及び読み出しが可能なICチップ310が搭載され、また、導体部320bの一部に、アンテナ320に生じた電力によって点灯するLEDを有する発光素子部340が接続されて構成されている。なお、2つの導体部320a,320bがICチップ310を介して接続されたアンテナ320の長さは、情報の書き込み及び読み出しに用いる周波数とベース基材330の比透磁率及び比誘電率とから求まる波長λの1/2となっている。
【0016】
以下に、上記のように構成された非接触型ICタグ300について、ICチップ310が破損した場合の動作について説明する。
【0017】
図6は、図5に示した非接触型ICタグ300においてICチップ310が破損した場合の発光素子部340の動作を説明するための図であり、(a)はICチップ310が破損していない場合のアンテナ320の接続状態を示す図、(b)はICチップ310が破損している場合のアンテナ320の接続状態を示す図である。
【0018】
図5に示した非接触型ICタグ300においてICチップ310が破損していない場合は図6(a)に示すように、アンテナ320を構成する導体部320aと導体部320bとがICチップ310を介して互いに接続された状態となっており、2つの導体部320a,320bがICチップ310を介して接続されたアンテナ320の長さは、上述したように、情報の書き込み及び読み出しに用いる周波数とベース基材330の比透磁率及び比誘電率とから求まる波長λの1/2となっている。そのため、この状態で、ICチップ310に対して情報の書き込みや読み出しを行う情報書込/読出装置に近接させると、アンテナ320において、情報書込/読出装置からの情報の書き込みや読み出しを行うための周波数を有する電波に共振して電流が流れて電力が生じ、この電力が発光素子部340に供給されて発光素子部340が点灯する。
【0019】
一方、図5に示した非接触型ICタグ300において、ICチップ310に内蔵された回路部が断線する等してICチップ310が破損している場合は図6(b)に示すように、アンテナ320を構成する導体部320aと導体部320bとがICチップ310内の回路部にて断線した状態となる。そのため、アンテナ320が、共振点における周波数がとなって共振するダイポールアンテナとして機能しなくなり、アンテナ320には電流が流れない。それにより、ICチップ310に内蔵された回路部が断線する等してICチップ310が破損している場合は、アンテナ320には電力が生じず、発光素子部340が点灯しない。
【0020】
このように、ICチップ310が破損していない場合は、ICチップ310に対して情報の書き込みや読み出しを行う情報書込/読出装置に近接させると、情報書込/読出装置からの情報の書き込みや読み出しを行うための周波数を有する電波にアンテナ320が共振してアンテナ320に電流が流れて電力が生じ、この電力によって発光素子部340が点灯し、また、ICチップ310内の回路部が断線する等、ICチップ310が破損している場合は、情報書込/読出装置に近接させても、情報書込/読出装置からの情報の書き込みや読み出しを行うための周波数を有する電波にアンテナ320が共振せず、発光素子部340に電力が供給されずに発光素子部340が点灯しないので、発光素子部340が点灯するかどうかによって、ICチップ310が破損しているかどうかを検知することができる。
【特許文献1】特開2002−150249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
図5に示したように、アンテナにて生じた電力のみを用いてICチップに対して情報を書き込んだり読み出したりするとともに発光素子部のような報知手段を駆動させる場合、ICチップに対して情報を書き込んだり読み出したりするために十分な電力を供給するとともに、報知手段に対して報知手段を駆動させるために十分な電力を供給する必要がある。ところが、アンテナに生じる電力は、電池等の電源を用いたものと比べて微弱なものであるため、アンテナを構成する導体の一部に報知手段を接続するだけでは、報知手段を駆動させるために十分な電力を報知手段に供給することができるとは言い難い。特に、このようなICチップが微弱な電力によって情報の書き込みや読み出しを行うことができるものであるのに対して、発光素子等の報知手段は微弱な電力では駆動しにくく、アンテナに生じる電力を効率的に報知手段に供給することが望まれる。
【0022】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、電池等の電源を用いることなく、ICチップが破損しているかどうかを検知するための報知手段に対して報知手段を駆動させるために十分な電力を供給することができるRFIDメディアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために本発明は、
給電点をそれぞれ具備する2つの導体からなるアンテナと、前記2つの導体の給電点にそれぞれ接続され、前記アンテナにて生じた電力が前記給電点を介して供給されることにより非接触状態にて情報の書き込み及び/または読み出しが可能なICチップとを有してなるRFIDメディアにおいて、
前記2つの導体のうち一方の導体の前記給電点の近傍に接続され、前記アンテナにて生じた電力が供給されることにより駆動する報知手段を有することを特徴とする。
【0024】
上記のように構成された本発明においては、ICチップが破損したりICチップとアンテナとの接続が断線したりしていない場合は、アンテナを構成する2つの導体が給電点においてICチップを介して接続された状態となっているため、受信した電波に共振することによりアンテナに電力が生じてこの電力が給電点を介してICチップに供給され、それにより、ICチップに対して非接触状態にて情報の書き込みや読み出しが行われる。ここで、アンテナを構成する2つの導体のうち一方の導体の給電点の近傍には、アンテナにて生じた電力が供給されることにより駆動する報知手段が接続されているが、給電点は、アンテナを構成する導体のうち最も大きな電力を得ることができる領域に設けられているため、報知手段にはアンテナにて生じた電力が効率的に供給され、報知手段が駆動することになる。一方、ICチップが破損したりICチップとアンテナとの接続が断線したりしている場合は、アンテナを構成する2つの導体がICチップにて断線した状態となる。そのため、アンテナには電力が生じず、ICチップに対する情報の書き込みや読み出しが行われず、また、報知手段が駆動しない。
【0025】
このように、ICチップが破損しているかどうかを検知するための報知手段が、アンテナを構成する2つの導体のうち一方の導体の給電点の近傍に接続されているので、アンテナに生じた電力が報知手段に効率的に供給されることとなり、アンテナにて生じた電力が微弱なものであっても、電池等の電源を用いることなく、報知手段に対して報知手段を駆動させるために十分な電力を供給することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明においては、ICチップが破損しているかどうかを検知するための報知手段が、アンテナを構成する2つの導体のうち一方の導体の給電点の近傍に接続された構成としたため、アンテナに生じた電力が報知手段に効率的に供給されることとなり、アンテナにて生じた電力が微弱なものであっても、電池等の電源を用いることなく、報知手段に対して報知手段を駆動させるために十分な電力を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0028】
図1は、本発明のRFIDメディアの実施の一形態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)に示したアンテナ120の詳細な構成を示す図、(c)は(a)に示した発光素子部140の内部構成を示す回路図である。
【0029】
本形態は図1(a)に示すように、樹脂や紙等からなるベース基材130上に、2つの導体部120a,120bからなるアンテナ120が形成されるとともに、2つの導体部120a,120bの間にICチップ110が接続され、さらに、2つの導体部120a,120bのうち一方の導体部120bの一部に報知手段である発光素子部140が接続されて構成されている。
【0030】
導体部120a,120bはそれぞれ図1(b)に示すように、ICチップ110に電力を供給するための給電点121a,121bが互いに空隙を有して設けられ、この給電点121a,121bから互いに離れる方向に延び、放射状に広がるボウタイアンテナ形状を有している。そして、ICチップ110が、給電点121a,121bに接続されることにより、2つの導体部120a,120bが、ICチップ110を介して接続された状態となっている。また、導体部120bのうち、給電点121bの近傍が電気的に開放され、その開放部分に発光素子部140が接続されている。なお、給電点121bと発光素子部140との距離はできるだけ短いことが好ましい。すなわち、導体部120bのうち電気的に開放される領域は、導体部120bの形状に合わせて可能な限り給電点121bに近いことが好ましい。また、2つの導体部120a,120bは、給電点120aから図中B点までの長さと給電点120bから図中B’点までの長さとが互いに異なることにより、アンテナ120がICチップ110を介して左右非対称となっている。
【0031】
ICチップ110は、内部に情報の書き込み及び読み出しが可能なメモリや制御回路等の回路部(不図示)を有し、この回路部を挟んで2つの接続端子(不図示)が設けられており、この2つの接続端子の一方が導体部120aの給電点121aと接続され、他方が導体部120bの給電点121bと接続されている。そして、アンテナ120に生じた電力が給電点121a,121bを介して回路部に供給されることにより、非接触状態にて情報が書き込まれたり読み出されたりする。
【0032】
発光素子部140は図1(c)に示すように、ブリッジ部142を構成する4つのダイオード142a〜142dと、その他の2つのダイオード144a,144bと、3つのコンデンサ143a〜143cと、LED141とから構成されており、ダイオード142a〜142d,144a,144bとコンデンサ143a〜143cとによって整流回路が構成されている。そして、2つの外部接続端子145が、導体部120bの電気的に開放された部分にそれぞれ接続されている。2つの導体部120a,120bからなるアンテナ120には、外部に設けられた情報書込/読出装置に非接触型ICタグ100が近接した場合に交流電流が流れるが、この交流電流は、コンデンサ143a〜143c及びダイオード142a〜142d,144a,144bからなる整流回路によって直流電流に変換され、LED141に供給される。LED141は、供給された直流電流によって点灯する。
【0033】
ここで、導体部120a,120bの長さについて説明する。
【0034】
図2は、図1に示した非接触型ICタグ100の周波数特性を説明するための図であり、ICチップ110への情報の書き込み及び読み出しに用いる周波数に対する非接触型ICタグ100のリターンロスを示す。
【0035】
図1に示した非接触型ICタグ100においては、図2に示すように、情報の書き込み及び読み出しに用いる周波数によってリターンロスが変化するため、リターンロスが最も低くなるアンテナ120における共振点であるピークポイントAにおける周波数を、情報の書き込み及び読み出しに用いる周波数faに設定する必要がある。ここで、導体部120a,120bにおいては、ICチップ110を介して接続された長さが、情報の書き込み及び読み出しに用いる周波数faとベース基材130の比透磁率及び比誘電率とから求まる波長λの1/4の倍数である場合に、その共振点における周波数がfaとなって共振するダイポールアンテナとして機能し、ICチップ110に対する情報の書き込みや読み出しが可能となる。
【0036】
そのため、アンテナ120の図中左右方向の長さ、すなわち、2つの導体部120a,120bがICチップ110を介して接続された長さは、情報の書き込み及び読み出しに用いる周波数faとベース基材130の比透磁率及び比誘電率とから求まる波長λの1/4となっている。なお、本形態にて示した導体部120a,120bは、それぞれボウタイアンテナ形状となっており、それにより、2つの導体部120a,120bがICチップ110を介して接続された長さは、図中B点からICチップ110を介して図中B’点までの長さが最も短く、図中A点からICチップ110を介して図中A’点までの長さが最も長くなっているが、この図中B点からICチップ110を介して図中B’点までの長さから、図中A点からICチップ110を介して図中A’点までの長さまでの間に、情報の書き込み及び読み出しに用いる周波数faとベース基材130の比透磁率及び比誘電率とから求まる波長λの1/4が存在するようになっている。
【0037】
上記のように構成された非接触型ICタグ100においては、外部に設けられた情報書込/読出装置(不図示)に近接させることにより、情報書込/読出装置からの周波数faを有する電波に共振して2つの導体部120a,120bからなるアンテナ120に電流が流れて電力が生じ、この電力がICチップ110に供給され、それにより、非接触状態において、情報書込/読出装置からICチップ110に情報が書き込まれたり、ICチップ110に書き込まれた情報が情報書込/読出装置にて読み出されたりする。ここで、導体部120bにおいては、給電点121bの近傍が電気的に開放され、この開放部分に発光素子部140が接続されている。給電点121bは、情報書込/読出装置に近接させた場合に導体部120bのうち最も大きな電力を得ることができる領域に設けられているため、アンテナ120に生じた電力が発光素子部140に効率的に供給され、発光素子部140が駆動してLED141が点灯する。
【0038】
以下に、上述した非接触型ICタグ100において、ICチップ110が破損したりICチップ110とアンテナ120との接続が断線したりしている場合の発光素子部140の動作について説明する。
【0039】
図3は、図1に示した非接触型ICタグ100においてICチップ110が破損したりICチップ110とアンテナ120との接続が断線したりしている場合の発光素子部140の動作を説明するための図であり、(a)はICチップ110が破損したりICチップ110とアンテナ120との接続が断線したりしていない場合のアンテナ120の接続状態を示す図、(b)はICチップ110が破損したりICチップ110とアンテナ120との接続が断線したりしている場合のアンテナ120の接続状態を示す図である。
【0040】
図1に示した非接触型ICタグ100においてICチップ110が破損したりICチップ110とアンテナ120との接続が断線したりしていない場合は図3(a)に示すように、アンテナ120を構成する導体部120aと導体部120bとがICチップ110を介して互いに接続された状態となっており、2つの導体部120a,120bがICチップ110を介して接続されたアンテナ120の長さは、上述したように、情報の書き込み及び読み出しに用いる周波数faとベース基材130の比透磁率及び比誘電率とから求まる波長λの1/4の倍数となっている。そのため、この状態で、ICチップ110に対して情報の書き込みや読み出しを行う情報書込/読出装置に近接させると、アンテナ120において、情報書込/読出装置からの情報の書き込みや読み出しを行うための周波数faを有する電波に共振して電流が流れて電力が生じ、この電力が給電点121a,121bを介してICチップ110に供給され、ICチップ110に対する情報の書き込みや読み出しが行われることになる。またこの際、導体部120bには、給電点121bの近傍に発光素子部140が接続されているが、給電点121bは、情報書込/読出装置に近接させた場合に導体部120bのうち最も大きな電力を得ることができる領域に設けられているため、アンテナ120に生じた電力が発光素子部140に効率的に供給され、発光素子部140が駆動してLED141が点灯する。
【0041】
一方、図1に示した非接触型ICタグ100において、ICチップ110が破損したりICチップ110とアンテナ120との接続が断線したりしている場合は図3(b)に示すように、アンテナ120を構成する導体部120aと導体部120bとがICチップ110が接続された点にて断線した状態となる。そのため、アンテナ120が、共振点における周波数がfaとなって共振するダイポールアンテナとして機能しなくなり、この状態で、ICチップ110に対して情報の書き込みや読み出しを行う情報書込/読出装置に近接させても、アンテナ120には電流が流れず、ICチップ110に対する情報の書き込みや読み出しは行われず、また、発光素子部140が駆動せず、発光素子部140内のLED141は点灯しない。
【0042】
このように、ICチップ110が破損したりICチップ110とアンテナ120との接続が断線したりしていない場合は、ICチップ110に対して情報の書き込みや読み出しを行う情報書込/読出装置に近接させると、情報書込/読出装置からの情報の書き込みや読み出しを行うための周波数faを有する電波にアンテナ120が共振してアンテナ120に電流が流れて電力が生じ、この電力によって発光素子部140内のLED141が点灯し、また、ICチップ110が破損したりICチップ110とアンテナ120との接続が断線したりしている場合は、情報書込/読出装置に近接させても、情報書込/読出装置からの情報の書き込みや読み出しを行うための周波数faを有する電波にアンテナ120が共振せず、発光素子部140に電力が供給されずに発光素子部140内のLED141が点灯しないので、LED141が点灯するかどうかによって、ICチップ110が破損したりICチップ110とアンテナ120との接続が断線したりしているかどうかを検知することができる。そして、ICチップ110が破損したりICチップ110とアンテナ120との接続が断線したりしているかどうかを検知するための発光素子部140を、アンテナ120を構成する導体部120bのうちICチップ110が接続されてICチップ110に電力を供給するための給電点121bの近傍に接続することにより、アンテナ120に生じた電力が効率的に発光素子部140に供給され、発光素子部141内のLED141を点灯しやすくすることができる。
【0043】
これにより、発光素子部140の起電力を、発光素子部141内のLED141を点灯しやすくすることができながらも、情報書込/読出装置からの電波にアンテナ120が共振することによりアンテナ120に生じる電力によるものとすることができ、発光素子部141内のLED141を点灯させるための電池等の電源を非接触型ICタグ100に内蔵しておく必要がなく、電池切れ等のメンテナンスが不要となる。
【0044】
なお、本形態においては、2つの導体部120a,120bの給電点121a,121bからボウタイアンテナ形状の他方の端部までの長さが互いに異なることにより、アンテナ120がICチップ110を介して左右非対称となっているが、本発明は、2つの導体部120a,120bが互いに同一の形状となっていることにより、アンテナ120がICチップ110を介して左右対称となっているものであってもよい。ただし、アンテナ120がICチップ110を介して左右非対称となっているものの方が、導体部120bの給電点121bからボウタイアンテナ形状の他方の端部までの長さが、情報の書き込み及び読み出しに用いる周波数faとベース基材130の比透磁率及び比誘電率とから求まる波長λの1/2n(nは自然数)にはならないことから、導体部120bがその共振点における周波数がfaとなって共振するモノポールアンテナとして機能せず、それにより、ICチップ110が破損したりICチップ110とアンテナ120との接続が断線したりしている場合に、発光素子部140内のLED141が点灯してしまう誤動作を確実に防止することができる。
【0045】
また、本形態においては、2つの導体部120a,120bがICチップ110を介して接続された長さが、情報の書き込み及び読み出しに用いる周波数faとベース基材130の比透磁率及び比誘電率とから求まる波長λの1/4となっているが、情報の書き込み及び読み出しに用いる周波数faとベース基材130の比透磁率及び比誘電率とから求まる波長λの1/4の倍数であればよい。
【0046】
また、本形態においては、ICチップ110に対して情報の書き込みや読み出しが行われる際にその旨を報知する手段として、アンテナ120にて生じる電力によって点灯するLED141を例に挙げて説明したが、アンテナ120にて生じる電力によって振動するバイブレータや、アンテナ120にて生じる電力によって音を発生させるブザー等を報知手段として用いることも考えられる。
【0047】
また、アンテナ120を構成する2つの導体部120a,120bにおいては、その形状がボウタイアンテナの形状に限らず、その長さについて上述した条件を満たすものであれば直線状のものやメアンダ状のもの等であってもよい。
【0048】
また、本形態においては、RFIDメディアとして非接触型ICタグを例に挙げて説明したが、本発明は、非接触型ICカードや非接触型ICラベルにも適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のRFIDメディアの実施の一形態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)に示したアンテナの詳細な構成を示す図、(c)は(a)に示した発光素子部の内部構成を示す回路図である。
【図2】図1に示した非接触型ICタグの周波数特性を説明するための図である。
【図3】図1に示した非接触型ICタグにおいてICチップが破損したりICチップとアンテナとの接続が断線したりしている場合の発光素子部の動作を説明するための図であり、(a)はICチップが破損したりICチップとアンテナとの接続が断線したりしていない場合のアンテナの接続状態を示す図、(b)はICチップが破損したりICチップとアンテナとの接続が断線したりしている場合のアンテナの接続状態を示す図である。
【図4】マイクロ波帯を利用して通信を行うICチップが搭載された非接触型ICタグの一例を示す図である。
【図5】発光素子回路を用いて不具合を検出可能な非接触型ICタグの一例を示す図である。
【図6】図5に示した非接触型ICタグにおいてICチップが破損した場合の発光素子部の動作を説明するための図であり、(a)はICチップが破損していない場合のアンテナの接続状態を示す図、(b)はICチップが破損している場合のアンテナの接続状態を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
100 非接触型ICタグ
110 ICチップ
120 アンテナ
120a,120b 導体部
121a,121b 給電点
130 ベース基材
140 発光素子部
141 LED
142 ブリッジ部
143a〜143c コンデンサ
142a〜142d,144a,144b ダイオード
145 外部接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電点をそれぞれ具備する2つの導体からなるアンテナと、前記2つの導体の給電点にそれぞれ接続され、前記アンテナにて生じた電力が前記給電点を介して供給されることにより非接触状態にて情報の書き込み及び/または読み出しが可能なICチップとを有してなるRFIDメディアにおいて、
前記2つの導体のうち一方の導体の前記給電点の近傍に接続され、前記アンテナにて生じた電力が供給されることにより駆動する報知手段を有することを特徴とするRFIDメディア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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