説明

RFID読み取り装置及びRFID読み取り方法

【課題】RFID応答機から情報を読み取るためのRFID読み取り装置であって、RFID信号の放射及び/又は受信のためのアンテナ、並びに、アンテナに接続され、RFID信号の放射及び/又は受信を行うための送受信ユニットを備えるものにおいて、様々なアンテナを簡単に接続できるようにする。
【解決手段】アンテナ16がアンテナパラメータの保存されたデータ保持部26を備えるとともに、送受信ユニット18が、アンテナパラメータの問い合わせを行うために、データ保持部26にアクセスして、アンテナパラメータを使用しながらRFID信号の放射及び/又は受信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は10のプレアンブルに記載の、RFID(radio-frequency identification)応答機から情報を読み取るためのRFID読み取り装置及びRFID読み取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFID読み取り装置は物品や商品の識別に利用可能であり、なかでも物流業務の自動化に広く利用されている。物品識別の際、特に商品の所有者が変わったり輸送手段が変わったりする際、その商品に取り付けられたRFID応答機(RFIDトランスポンダ)から情報を読み出したり、場合によっては逆に応答機へ情報を返信したりする。これにより、高速且つ追跡可能な物流システムができる。読み取られた情報は、物品や製品の転送及び仕分けの管理に利用される。このような自動識別技術の重要な利用場所としては、例えば小包発送業者の物流配送センターや空港の手荷物受付所がある。
【0003】
原理的には、RFID応答機を能動的な装置、つまり、それ自身がエネルギー供給機能を備え、単独で電磁波を放射することができる装置として構成することができる。しかし、実際には、このような応答機は物流での利用に余り適していない。これは、エネルギー供給機能を付けると応答機の単価が上がり、大量市場に必要とされる低価格を実現できないからである。そのため、多くの場合、自前のエネルギー供給機能を持たない受動的な応答機が用いられる。いずれの場合も、応答機が読み取り装置からの電磁波放射により活性化され、そこに記憶された情報を放射するが、受動的な応答機の場合、その動作に必要なエネルギーは読み取り装置の送出するエネルギーから取り出される。ISO18000−6(極超短波に関する国際標準規格)では、受動的な応答機からの読み取りを後方散乱法により行うことが定められている。
【0004】
RFID方式の装置は内部アンテナ又は外部アンテナを備えている。装置の使用に際しては、国内で許可された限界値の条件を確実に満たさなければならない。様々なメーカーのアンテナが接続されるため、その都度、データシートに従って装置内の固有値を調整する必要がある。更に、外部アンテナの場合、その接続ケーブルによる減衰もパラメータとして設定する必要がある。
【0005】
従来技術の場合、パラメータ設定が適切かどうかの検査は、使用開始の際にアンテナのパラメータが正しく調節されていることを確かめるというものに過ぎない。操作者は、例えば最大送信出力を超過する可能性がないことを自分で確かめなければならない。これは基礎技術の深い理解を部分的に前提としている。入力を間違えたり、更には意図的な操作であっても、最悪の場合、許可された限界値を超えて装置が作動することになる。
【0006】
このように、従来、外部アンテナの配線には専門職が必要とされ、マニュアル操作の余地が残っている。そのため、限界値を超過した場合に問題を生じさせるような誤ったパラメータ設定が行われる可能性がある。簡単且つ安価な「プラグ・アンド・プレイ」的な操作は不可能である。
【0007】
RFIDアンテナの調節及び制御を行うための装置が特許文献1に開示されている。この装置では、アンテナ特性が精確に測定された後、アンテナの調整が行われる。しかし、アンテナ特性を測定すれば当然コストが高くなる。しかも、この測定で把握されるのは重要なアンテナパラメータのごく一部に過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE 103 53 613 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ゆえに、本発明の課題は、RFID読み取り装置に様々なアンテナを簡単に接続できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に記載のRFID読み取り装置及び請求項10に記載のRFID応答機の読み取り方法により解決される。本発明の基礎を成す技術思想は、RFID信号の放射又は受信のためのアンテナ及びそれに接続された送受信ユニットを有するRFID読み取り装置において、必要なアンテナパラメータの情報を、接続されたアンテナから直接取得するというものである。そのために、アンテナにデータ保持部が設けられ、そこにアンテナパラメータが保存される。ここで、アンテナパラメータという用語の意味は広く解釈すべきである。なぜなら、データ保持部に十分な量の情報を保存し、テーブル参照やデータベースアクセス等によってそこから本来のアンテナパラメータを簡単に抽出できるようなシステムでも構わないからである。
【0011】
本発明には、RFID読み取り装置の配線が非常に簡単になるという利点がある。操作者がアンテナに関する情報を知る必要は全くない。アンテナパラメータが自動的に正しく選択され、それによりRFID読み取り装置が有効な規格の範囲内で駆動される。
【0012】
規格で定められた各種の限界値は、電磁波信号の受信ではなく放射に関して適用される。ただし、データ保持部に保存されるアンテナパラメータを受信にも同様に適用することができる。その他に、後方散乱方式のRFID読み取り装置の場合、RFID信号(つまり、RFID応答機との通信に利用される変調信号)だけでなくエネルギー供給のための搬送信号も放射される。この搬送信号にもアンテナ及びアンテナパラメータが用いられる。
【0013】
送受信ユニットに接続された、RFID情報の読み取り及び/又は符号化のための解析ユニットが設けられていると有利である。このようにすると、RFID信号から真に重要なRFID情報を取り出したり、そのような情報を示すパターンを前記信号に刻印したりすることができる。
【0014】
送受信ユニットは、アンテナと接続されたときに自動的にアンテナパラメータを問い合わせるように構成されることが好ましい。このようにすると、アンテナ又はアンテナケーブルの差し込みと同時に正しいアンテナパラメータが直接設定される。また、装置の動作中に繰り返し、例えば規則的なサイクルで、アンテナパラメータを問い合わせることも可能である。更に、操作者からの要求、又はRFID読み取り装置を統括する上位システムからの要求に応じて、アンテナパラメータを問い合わせることも考えられる。通例、アンテナパラメータは、データ保持部から読み出され、場合によっては換算や適合化が行われた後、RFID読み取り装置側のメモリへ転送される。あるいは、RFID読み取り装置がメモリとしてのデータ保持部に直接アクセスする、という構成も考えられる。
【0015】
データ保持部にアンテナの識別情報のみが保存され、送受信ユニットが該識別情報を利用してアンテナパラメータを特定するようにすると有利である。この場合、アンテナパラメータそのものは、例えばRFID読み取り装置又はその上位システムにテーブルの形で保存しておく。このようにすれば、アンテナ側のメモリの容量が非常に小さくて済むとともに、RFID読み取り装置に必要なアンテナパラメータを規格に適合させたり最適化したりするという操作の柔軟性がはるかに高くなる。
【0016】
アンテナは外部アンテナであることが好ましい。つまりこのアンテナは、RFID読み取り装置の内部の構成要素であったり、装置のケーシングと一体化していたり、それに固定されていたりしない。外部アンテナを用いる装置では、アンテナの交換があり得ることが予め想定されている。従って、本発明に従ってアンテナパラメータを明確に割り当てることが特に有利である。
【0017】
その場合、アンテナはアンテナケーブルを介してRFID読み取り装置に接続されることが好ましい。このアンテナケーブルは、いずれもアンテナに接続可能であり、長さは異なるが同一の減衰作用を示す複数のアンテナケーブルの1つであることが特に好ましい。この場合、規格化された複数のアンテナケーブルを有するRFID読み取り装置用ケーブルセットが用意される。操作者はもはや適正な減衰作用を示すアンテナケーブルの使用や減衰作用を決めるパラメータの設定に注意を払う必要はない。あるいは、減衰作用の異なる複数のアンテナケーブルを使用し、それらの減衰特性をデータ保持部に記憶されるアンテナパラメータの1つとすることも可能である。この場合、アンテナケーブルをアンテナから取り外せないようにするか、少なくとも接続用の識別符号を付与することにより、同じアンテナに対しては常に同じアンテナケーブルだけが接続され、しかもそのケーブルが該当のアンテナに記憶された減衰作用を示すことが必要である。
【0018】
データ保持部はRFID応答機であることが好ましい。この応答機は、最初は一般的なアンテナパラメータを持った状態で読み取られ、その後、直ちに適切なアンテナパラメータが利用可能になる。その後の駆動においては、このRFID応答機を考慮せずに済むようにするため、例えば解析用ソフトウェアによりフィルタ処理を行う。なお、RFID応答機の代わりに、従来より知られているいずれの記憶媒体でも利用可能である。
【0019】
アンテナパラメータには様々なものがあり、必ずしもその全てを保存する必要はなく、用途に応じて全てのパラメータを保存するか、そのうちの一部を保存しておけばよい。それから、データ保存部に保存された全てのアンテナパラメータについて問い合わせを行う必要はない。アンテナパラメータとしては、偏波、放射抵抗、インピーダンス、効率、指向性、アンテナ利得(ゲイン)、吸収面又は作用面、帯域幅、等が挙げられる。アンテナパラメータそのものの代わりに、加工されたパラメータ、つまりRFID読み取り装置とそれに対応するアンテナを組み合わせて使用する際に読み取り装置内で用いられる量や値を記憶させてもよい。あるいは、RFID読み取り装置がアンテナパラメータそのものからそのような量や値を算出する。
【0020】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に記載されているが、それらに限定されるものではない。
【0021】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照ながら詳しく説明する。図面の内容は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るRFID読み取り装置のブロック図。
【図2】図1に示したRFID読み取り装置をベルトコンベヤに取り付けた様子を示す立体図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本発明に係るRFID読み取り装置10(以下、RFIDリーダ10)の構成をブロック図で示している。多くの場合、RFIDリーダ10はRFID応答機への書き込みも行うことができる。なぜなら、そもそも通常の通信手順(プロトコル)では、RFID応答機との通信を確立するために双方向に情報交換を行うことが前提とされているからである。
【0024】
ケーシング12内には解析・制御用の電子装置が入っている。アンテナケーブル14を介してアンテナ16が接続されている。送受信ユニット18は、アンテナ16からRFID信号を受信したり、アンテナ16を介してRFID信号を放射したりするための発信器20及び受信器22を備えている。
【0025】
送受信ユニット18には制御・解析ユニット24が接続されている。このユニット24は、RFID信号に対応する電子信号を受信器22から受け取ったり、発信器20を介してRFID信号を放射したりする。制御・解析ユニット24は、情報を符号化してRFID信号に変換したり、RFID信号から情報を読み出したりするために使用すべきRFIDプロトコルを知っている。このようなRFID通信の技術は公知である。従って、以下では、制御・解析ユニット24に必要な構成要素及びRFID通信に必要な手順について詳しくは説明しない。
【0026】
アンテナ16内にあるデータ保持部26はアンテナ16の重要な特性値を保持している。RFIDリーダ10は、初期化の際、又は逐次、通信相手側のアンテナ16の種類を調べ、そのアンテナ16に対応した調整を送受信ユニット18に対して自動的に行う。そのためにデータ保持部26の信号が解析され、アンテナケーブル14を通じて転送される。データ保持部26には、例えば任意の技術で使われている公知のメモリチップが利用できる。特に、RFIDリーダ10が複数のアンテナを有し、それらが相互の検知領域内に配置されている場合は、データ保持部26そのものをRFID応答機として構成することもできる。あるいは、データ保持部26がアンテナ16の検知領域に来るように、アンテナ16の幾何学的な構造を決めることも考えられる。実際の駆動時には、データ保持部26の信号は徐々に弱まる。これは、その信号をRFID情報として出力する場合でも、あるいは他のメモリ技術によってアンテナケーブル14経由で転送する場合でも同様である。
【0027】
RFIDリーダ10又はその送受信ユニット18のパラメータがアンテナ16のデータ保持部26を通じて直接設定されるため、RFIDリーダ10とアンテナ16が期待通りに共同して作動し、特に法的な規格に準拠して作動する。
【0028】
図2は、補足例として、RFIDリーダ10をベルトコンベヤ28に静的に取り付けた典型的な応用形態を示す立体図である。コンベヤ28の上に載置された物品30が矢印32で示した方向に運ばれ、読み取り領域34を通過する。物品30にはRFID応答機36が取り付けられており、それが読み取り領域34内にあるときに、RFIDリーダ10により読み取られる。
【0029】
読み取り領域34の上にはカバー38が設けられている(図では概略的に描かれている)。このカバー38は外部のノイズからRFIDリーダ10を防護するとともに、周囲の人や物をRFID10の電磁波放射から保護する。図1とは異なり、図2のRFIDリーダ10は、こうして形成された読み取り用トンネルに配置された2つのアンテナ16a及びbを備えている。更に、別の位置で別の方向からRFID信号を取得するために、別のRFIDリーダ又はアンテナを用いることも考えられる。これには、RFIDリーダ10に内部アンテナを設ける形態も含まれる。同様に、他の種類のセンサを設けて、物品30に関する追加的な情報を取得することも可能である。例えば、物品30が読み取り領域へ入ったことや該領域から出たことを検知したり、物品30の大きさ又は重さを測定したりすることが考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFID応答機(36)から情報を読み取るためのRFID読み取り装置(10)であって、RFID信号の放射及び/又は受信のためのアンテナ(16)、並びに、前記アンテナ(16)に接続され、アンテナパラメータを使用しながらRFID信号の放射及び/又は受信を行うための送受信ユニット(18)を備えるものにおいて、
前記アンテナ(16)が、前記アンテナパラメータが保存されたデータ保持部(26)を備えること、及び、
前記送受信ユニット(18)が、前記アンテナパラメータの問い合わせを行うために、前記データ保持部(26)にアクセスするように構成されていること
を特徴とするRFID読み取り装置(10)。
【請求項2】
前記送受信ユニット(18)に接続された、RFID情報の読み取り及び/又は符号化のための解析ユニット(24)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のRFID読み取り装置(10)。
【請求項3】
前記送受信ユニット(18)が、前記アンテナ(16)と接続されたときに自動的に前記アンテナパラメータを問い合わせるか、装置の動作中に繰り返し前記アンテナパラメータを問い合わせるように構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のRFID読み取り装置(10)。
【請求項4】
前記データ保持部(26)に前記アンテナ(16)の識別情報のみが保存され、前記送受信ユニット(18)が該識別情報を利用して前記アンテナパラメータを特定することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のRFID読み取り装置(10)。
【請求項5】
前記アンテナ(16)が外部アンテナであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のRFID読み取り装置(10)。
【請求項6】
前記アンテナ(16)がアンテナケーブル(14)を介してRFID読み取り装置(10)に接続されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のRFID読み取り装置(10)。
【請求項7】
前記アンテナケーブル(14)が、いずれもアンテナ(16)に接続可能であり、長さは異なるが同一の減衰作用を示す複数のアンテナケーブル(14)の1つであることを特徴とする、請求項6に記載のRFID読み取り装置(10)。
【請求項8】
前記データ保持部(26)がRFID応答機であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のRFID読み取り装置(10)。
【請求項9】
前記アンテナパラメータが、偏波、放射抵抗、インピーダンス、効率、指向性、アンテナ利得(ゲイン)、吸収面又は作用面、及び帯域幅のうちの1つ又は複数であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のRFID読み取り装置(10)。
【請求項10】
アンテナパラメータを使用しながらRFID信号の受信及び/又は放射を行うためのアンテナ(16)を有するRFID読み取り装置(10)を用いてRFID応答器(36)から情報を読み取る方法であって、
前記アンテナパラメータが前記アンテナ(16)のデータ保持部(26)に保存され、前記RFID読み取り装置(10)が前記アンテナパラメータの問い合わせのために該データ保持部(26)にアクセスすること
を特徴とするRFID読み取り方法。

【図1】
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【図2】
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