説明

RI合成装置

【課題】 RI/RI化合物の外部漏洩の可能性が減らされ、信頼性が十分に向上されたRI合成装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 電磁弁設置部の電磁弁設置面18と電磁弁V5,V6の設置面12とを密着させ、電磁弁V5,V6の流入口、流出口と電磁弁設置面部の接続口P25,P27とを連通させると共に、台座6内部に分岐点を有する孔経路L8〜L10を形成し、配管継手を不要とし、螺合部を無くすと共に接続部自体も減らすことで、RI/RI化合物の外部漏洩の可能性を減らす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RI合成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば病院等のPET検査(陽電子断層撮影検査)等に使用される放射性同位元素標識化合物(RI化合物)は、放射性同位元素(RI)を所定の原料試薬と化学反応させるRI合成装置で合成される。このようなRI合成装置として、例えば、原料試薬を充填する試薬槽、原料試薬を用いてRI化合物を合成する反応器、RI化合物を回収する回収容器、電磁弁等の部品から構成されるものが知られている。
【0003】
このようなRI合成装置では、電磁弁の流入・流出ポートに対して、配管継手を介して各配管が接続され(特許文献1参照)、さらに、これらの配管の分岐点は、例えばT字型、Y字型等の配管継手が採用されて配管同士が接続され、これらの接続部は螺合されているのが一般的である。
【特許文献1】実開平6−22678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、上記装置にあっては、配管継手を介して螺合による接続部が多く、この螺合による接続部の隙間を通じてRI/RI化合物が外部に漏洩する虞がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、RI/RI化合物の外部漏洩の可能性が減らされ、信頼性が十分に向上されたRI合成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるRI合成装置は、放射性同位元素、試薬が導入され、放射性同位元素標識化合物を得るRI合成装置であって、電磁弁を密着して設置する設置面が設けられた電磁弁設置部を有する台座を具備し、この台座は、内部に形成された孔経路と、外面に当該孔経路に連通する接続口と、を有し、電磁弁の設置面と電磁弁設置部の設置面とを密着させることにより、接続口と電磁弁の出入口部とが連通されることを特徴としている。
【0007】
このように構成されたRI合成装置によれば、電磁弁設置部と電磁弁の設置面同士が密着し、電磁弁の出入口部と電磁弁設置部の接続口とが連通されると共に、台座内部にも孔経路が形成されて、配管継手が不要とされ、螺合部が無くされると共に接続部自体も減らされる。
【0008】
ここで、台座が耐薬品性の樹脂製であると、RI/RI化合物、試薬等による孔経路の腐食損傷が防止される。
【発明の効果】
【0009】
このように本発明によるRI合成装置によれば、配管継手が不要とされ、螺合部が無くされると共に接続部自体も減らされているため、RI/RI化合物の外部漏洩の可能性が減らされ、信頼性が十分に向上されたRI合成装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明によるRI合成装置の好適な実施形態について図1〜図10を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るRI合成装置を示す斜視図、図2〜図8は、図1に示すRI合成装置の各図、図9は、図1に示すRI合成装置の概略系統図、図10は、図1中の電磁弁の部分断面図である。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、図面の位置関係に基づくものとする。
【0011】
図1〜図9に示すように、本実施形態のRI合成装置1は、例えば、病院等のPET検査(陽電子断層撮影検査)等に使用されるコリン、メチオニン等の放射性同位元素標識化合物である放射性薬剤(放射性医薬品を含む)を合成するRI合成装置である。
【0012】
このRI合成装置1は、図1、図2、図5及び図6に示すように、電磁弁V1〜V6(以下これらの電磁弁を総じてVと呼ぶ)、試薬等を充填する試薬槽4a〜4c、RI化合物を合成する反応カラム30(図2及び図6参照)、この反応カラム30で反応されたRI化合物を製品として回収する製品回収槽5を各々備える台座6を具備している。
【0013】
電磁弁Vは、耐食性を有したダイアフラム式の電磁弁であり、図10に示すように、その内部に、コイル31、このコイル31により開方向に駆動される弁棒32、この弁棒32を閉方向に付勢する弁バネ33、弁棒32の先端に設けられた弁体34、この弁体34の動作に連動すると共に下部に弁室を画成するダイアフラム35を具備し、その底板22の設置面(底面)12が平坦面を成している。この底板22は、設置面12に連通し弁室に通じる流入口(電磁弁の入口部)14、流出口(電磁弁の出口部)15を各々備えている。電磁弁Vを開状態とする場合には、コイル31に通電し弁体34を流入口14と離間する方向に移動させ、流入口14と流出口15と連通させる。電磁弁Vを閉状態とする場合には、コイル31の通電を解除し、弁バネ33により弁体34を流入口14に接近する方向に移動させ、流入口14を閉じる。
【0014】
台座6は、図1〜図3及び図5〜図8に示すように、基板2上に、電磁弁Vが設置される第1マニホールド7及び第2マニホールド8、試薬槽4a〜4cが設置される第3マニホールド10を備え、これらのマニホールド7,8,10は、例えば耐薬品性を有するフッ素樹脂等から構成され、これらのマニホールド7,8,10には、図2、図3及び図6に示すように、内部に分岐点を有する所定の孔経路L1〜L10が形成されて、図1〜図3及び図5〜図7に示すように、外面にこの孔経路L1〜L10に連通する接続口P1〜P27が設けられている。
【0015】
第1マニホールド7は、図1〜図8に示すように、略矩形状を成し、基板2の略中央に長手方向に延びるように立設され、図2に示すように、図示右下側の側面が、複数の電磁弁V1〜V4(図5参照)が近接して設置される電磁弁設置部の電磁弁設置面(詳しくは後述)16とされている。また、第1マニホールド7の正面7aには、接続口P1,P2及びP13が、上面7bには、接続口P3〜P9が、左側面7cには、接続口P12が、背面7dには、接続口P15が、電磁弁設置面16には、接続口P16〜P23(図8参照)が各々設けられている。
【0016】
そして、第1マニホールド7の内部には、接続口P1と接続口P16とを連通する孔経路L1、接続口P9と接続口P17,P23,P21,P19とを連通する孔経路L2、接続口P6と接続口P18とを連通する孔経路L3、接続口P7と接続口P20とを連通する孔経路L4、接続口P8と接続口P22とを連通する孔経路L5、図3に示すように、接続口P2と接続口P3〜P5とを連通する孔経路L6、接続口P12と接続口P13とを連通する孔経路L7を備えている。
【0017】
第2マニホールド8は、略T字状を成し(図6参照)、基板2上に第1マニホールド7の図2に示す左側面に連設されて立設されている。そして、第2マニホールド8のT字を構成する水平部はその上面に、製品回収槽5が設置される円形凹状の槽設置部17、接続口P10,P11,P14を有している。接続口P10の上方には、図2及び図6に示すように、反応カラム30が配置され、T字を構成する垂直部は、図1、図2、図6及び図7に示すように、基板2の長手方向の対向する面に、電磁弁V5及びV6が設置される電磁弁設置部の電磁弁設置面18を備えている。
【0018】
電磁弁設置面16,18は、図10に示すように、電磁弁Vの設置面12が密着するように平坦面を成し、この電磁弁Vの流入口14、流出口15に連通する接続口P16,P18,P20,P22,P24,P26(以下これらの接続口を総じてPiと呼ぶ),P17,P19,P21,P23,P25,P27(以下これらの接続口を総じてPoと呼ぶ)を各々備えている。
【0019】
そして、第2マニホールド8の内部には、図3に示すように、接続口P10と接続口P24,P26とを連通する孔経路L8が、接続口P11と接続口P25とを連通する孔経路L9が、接続口P14と接続口P27とを連通する孔経路L10が各々設けられている。
【0020】
第3マニホールド10は、図1〜図3、図5及び図7に示すように、略矩形状を成し、第1マニホールド7の所定の高さ位置に連設されて水平に延在し、その上面に試薬槽4a〜4cが設置される円形凹状の試薬槽設置部19を有している。
【0021】
そして、電磁弁Vは、そのフランジ部が台座6に螺子固定されて、図10に示すように、その設置面12が電磁弁設置面16,18と密着し、電磁弁Vの流入口14、流出口15と電磁弁設置部の接続口Pi,Poとが各々連通された状態とされている。
【0022】
試薬槽4a〜4cは、試薬槽設置部19に、製品回収槽5は、槽設置部17に各々設置されている。試薬槽4aには、洗浄試薬であるエタノールが、試薬槽4bには、洗浄試薬である水が、試薬槽4cには、反応生成物を回収する生理食塩水が、反応カラム30には、Accell CM単体、又はSep−PakC18とAccell CMの2種類が利用されている。
【0023】
また、各試薬槽4a〜4c、反応カラム30、製品回収槽5、及び接続口P3〜P12,P14は、例えば耐食性を有したチューブ等により接続されている。すなわち、図9に示すように、接続口P3と試薬槽4aとが接続されて管経路L11が、試薬槽4aと接続口P6とが接続されて管経路L12が、接続口P4と試薬槽4bとが接続されて管経路L13が、試薬槽4bと接続口P7とが接続されて管経路L14が、接続口P5と試薬槽4cとが接続されて管経路L15が、試薬槽4cと接続口P8とが接続されて管経路L16が、接続口P9と反応カラム30とが接続されて管経路L17が、反応カラム30と接続口P10とが接続されて管経路L18が、接続口P11と接続口P12とが接続されて管経路L19が、接続口P14と製品回収槽5とが接続されて管経路L20が各々形成されている。
【0024】
さらに、RI合成装置1にあっては、系外からRI/RI化合物を導入するRI/RI化合物供給配管が接続口P1に、Heガスを始めとしたキャリアガス等を導入するキャリアガス供給配管が接続口P2に、系内のガスを系外に排出する排気配管が接続口P13に各々接続されている。
【0025】
次に、このように構成されたRI合成装置1を用いて、コリンを製造するRI合成方法について図9を参照しながら説明する。先ず、電磁弁V1,V5を開状態として、経路L1,L2,L17,L18,L8,L19及びL7を連通させる。この状態で、標識前駆体であるヨウ化メチル(11CHI)を接続口P1から導入する。導入された11CHIは、反応カラム30に吸着されると共に、この反応カラム30内の原料試薬と反応してメチル化反応が行われる。
【0026】
次いで、電磁弁V1を閉状態とすると共に電磁弁V2を開状態として、経路L6,L11,L12,L3,L2,L17,L18,L8,L9,L19及びL7を連通させる。この状態で、Heガスを接続口P2から導入する。このHeガスにより、試薬槽4a内のエタノールが移送され、経路内が洗浄されると共に、反応カラム30内の反応生成物から不純物が除去され反応生成物が精製される。不純物を含んだエタノールは、接続口P13を通り系外に排出される。
【0027】
次いで、電磁弁V2を閉状態とすると共に電磁弁V3を開状態として、経路L6,L13,L14,L4,L2,L17,L18,L8,L9,L19及びL7を連通させる。Heガスにより、試薬槽4b内の水が移送され、経路内が洗浄されると共に、反応カラム30内の反応生成物から不純物が除去され反応生成物が精製される。不純物を含んだ水は、接続口P13を通り系外に排出される。
【0028】
次いで、電磁弁V3,V5を閉状態とすると共に電磁弁V4,V6を開状態として、経路L6,L15,L16,L5,L2,L17,L18,L8,L10及びL20を連通させる。Heガスにより、試薬槽4c内の生理食塩水が移送され、反応カラム30内の反応生成物が生理食塩水に溶解する。反応生成物が溶解した生理食塩水は、コリンとして製品回収槽5に回収される。これにより、標識前駆体である11CHIを用いて、コリンが得られる。
【0029】
このように、本実施形態においては、電磁弁設置面16,18と電磁弁Vの設置面12とが密着し、電磁弁Vの流入口14、流出口15と電磁弁設置部の接続口Pi,Poとが連通されると共に、台座6内部にも孔経路L1〜L10が形成されて、配管継手が不要とされ、螺合部が無くされると共に接続部自体も減らされる。その結果、RI/RI化合物の外部漏洩の可能性が減らされ、信頼性が十分に向上されたRI合成装置1を提供することが可能となる。
【0030】
また、本実施形態においては、台座6が複数の電磁弁V1〜V4を近接して備える電磁弁設置面16を具備する構成とされ、台座6が小型化される。
【0031】
また、台座6が耐薬品性の樹脂製であるため、RI/RI化合物、試薬等による孔経路L1〜L10の腐食損傷が防止される。その結果、RI/RI化合物の外部漏洩の可能性が一層減らされる。
【0032】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態にあっては、電磁弁設置面16、18は、基板2に対して垂直な面とされて、電磁弁Vを設置する構成としているが、電磁弁設置面16,18の向きは限定されない。
【0033】
また、電磁弁Vに例えば三方弁等の多方弁等を採用して、電磁弁設置面16,18に設置しても良い。
【0034】
また、上記実施形態にあっては、コリン、メチオニン等の放射性薬剤を製造するRI合成装置1としているが、その他の放射性薬剤、放射性医薬品、RI化合物を製造するRI合成装置としても良く、必要に応じて、加熱・冷却装置、ろ過器、イオン交換樹脂、吸着器、RIモニター、反応器等を備える構成としても良い。
【0035】
また、標識前駆体、試薬及び反応カラムは、11CHI、エタノール、水、生理食塩水、Accell CMに限定されず、11CHOTf、Sep−PakC18、CAX、SCX等を始めとしたその他の標識前駆体、試薬及び反応カラム等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係るRI合成装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示すRI合成装置の正面図である。
【図3】図1に示すRI合成装置の上面図である。
【図4】図1に示すRI合成装置の下面図である。
【図5】図1に示すRI合成装置の右側面図である。
【図6】図1に示すRI合成装置の左側面図である。
【図7】図1に示すRI合成装置の背面図である。
【図8】図1に示すRI合成装置の右側面図(電磁弁、試薬槽装着前)である。
【図9】図1に示すRI合成装置の概略系統図である。
【図10】図1中の電磁弁の部分断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…RI合成装置、6…台座、12…電磁弁の底面(電磁弁の設置面)、14…電磁弁流入口(電磁弁の入口部)、15…電磁弁流出口(電磁弁の出口部)、16,18…電磁弁設置面(電磁弁設置部)、P1〜P27,Pi,Po…接続口、L1〜L10…孔経路、V,V1〜V6…電磁弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位元素、試薬が導入され、放射性同位元素標識化合物を得るRI合成装置であって、
電磁弁を密着して設置する設置面が設けられた電磁弁設置部を有する台座を具備し、
前記台座は、内部に形成された所定の孔経路と、
外面に前記孔経路に連通する接続口と、を有し、
前記電磁弁の設置面と前記電磁弁設置部の設置面とを密着させることにより、前記接続口と前記電磁弁の出入口部とが連通されることを特徴とするRI合成装置。
【請求項2】
前記台座は、耐薬品性の樹脂製であることを特徴とする請求項1記載のRI合成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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