説明

SDH網における中継伝送装置およびその符号誤り監視方法

【課題】BIP演算結果を用いて符号誤りを監視するSDH網の中継伝送装置およびその符号誤り監視方法を提供。
【解決手段】SDH網の中継伝送装置10は、差分検出部16がPOH処理部14による変更前データ104と変更後データ106との差分に基づいてB3エラー検出用差分情報108およびB3生成用差分情報110を生成し、B3エラー検出部18(26)がこのB3エラー検出用差分情報108に基づいてB3エラー検出を行い、B3生成部18(28)がこのB3生成用差分情報110に基づいてB3値生成を行うので、B3エラー検出部26をPOH処理の後に配置することができ、B3エラー検出部26とB3生成部28とを同一ブロック18で構成することができるので、共通のB3タイミング生成回路30を使用することができ、回路規模を削減しつつ、効率よく符号誤りを検出および監視することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BIP(Bit Interleaved Parity)演算結果を用いて符号誤りを監視するSDH(Synchronous Digital Hierarchy)網の中継伝送装置およびその符号誤り監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、SDH網における伝送装置では、BIPを用いて送信側からのデータを正常に受信したか否かを監視して、伝送装置間の符号誤りを監視するものがある。
【0003】
たとえば、STM-1(Synchronous Transfer Module Level One)のフレームデータは、セクションオーバーヘッド(SOH:Section OverHead)とVC(Virtual Container)パスとを有して構成され、SDH伝送装置がこのフレームデータを受信するとき、VCパスをBIP演算範囲として演算し、その演算結果を用いて監視することができる。
【0004】
このVCパスは、パスオーバーヘッド(POH:Path OverHead)を有し、このPOHは、その先頭の位置にPOHの先頭を示すJ1バイトを配する。POHは、たとえば、J1、B3、C2、G1、F2、H4、F3、K3およびN1バイトを有して構成される。
【0005】
SDH網でこのようなフレームデータを伝送する場合、送信側において、送信データのJ1バイトからパス内の全データをBIP演算し、その演算結果を次フレームのB3バイトに挿入する。これにより、受信側では、受信データのJ1バイトからパス内の全データをBIP演算し、所定のフレームのB3バイトと前フレームのBIP演算結果とを比較し、一致する場合にはその所定のフレームの受信が正常であり、不一致である場合にはその所定のフレームの受信が符号誤りであると判定することができる。
【0006】
しかしながら、SDH網では、送信側と受信側との間に中継伝送装置がある場合、この中継伝送装置が、送信側から受信したデータのPOHを変更して受信側へと送信することがある。これにより、受信側では、受信データに基づくBIP演算結果を得ても、それが次フレームのB3値と異なるので符号誤りを検出してしまう。これを回避するために、中継伝送装置の送信側では、再度BIP演算を実施してB3値を付け替える必要がある。
【0007】
たとえば、中継伝送装置は、ポインタ解釈部、B3エラー検出部、POH処理部、B3生成部および切替部を有して構成されるものがある。
【0008】
このポインタ解釈部は、受信データのポインタを解釈するもので、たとえば、SOHにおけるH1およびH2バイトなどのポインタ値を抽出および解釈し、VCパスの先頭であるJ1バイト位置を示すフレームパルス信号を生成する。また、POH処理部は、VCパスにおけるPOHの抽出および挿入の処理を行うものである。
【0009】
B3エラー検出部は、受信データにBIP演算を施し、その演算結果と受信データのB3値とを比較して符号誤りの検出を行い、その検出結果のエラー情報を出力するものである。B3生成部は、POH処理部からの受信データをBIP演算してB3値を生成するもので、B3エラー検出部から符号誤りを受信したときに、B3値を異常にして切替部に送信する。
【0010】
切替部は、B3タイミング信号に応じて、POH処理部からのデータにおけるB3値およびB3生成部で生成したB3値のいずれかを選択して送信データを生成する。このように、伝送装置では、受信データのPOH情報を変更した場合でも、正しいB3値に付け替えて送信することができる。
【0011】
B3生成部は、たとえば、B3タイミング信号を生成するB3タイミング生成部および、受信データに基づいてBIP演算を行って補正B3値を生成するBIP演算回路を有し、エラー情報に応じて符号誤り検出時にこの補正B3値を異常B3値として切替部に出力する。
【0012】
このB3タイミング生成部は、フレームパルス信号でリセットされるカウンタを有し、そのカウンタ値に基づいてB3の位置で有効となるタイミング信号を生成する。
【0013】
また、このB3生成部は、受信データを第1の演算対象としてBIP演算回路に入力し、さらに、B3タイミング信号が有効である場合にはBIP演算回路による前回の演算結果を、また、それ以外の場合には受信データに係るB3値を、第2の演算対象としてBIP演算回路に入力する。
【0014】
このBIP演算回路は、B3演算レジスタとB3結果レジスタとを有し、フレームパルスが有効である場合には、第1の演算対象をB3演算レジスタで演算してVCパスの先頭データであるJ1データを保持し、その演算結果をB3結果レジスタで保持することにより、VCパスの全データの演算値をセットする。また、それ以外の場合には、B3演算レジスタの前回の演算結果と第2の演算対象との排他的論理和(EXOR)演算結果をB3演算レジスタに入力して保持し、挿入するB3値で演算を行う。
【0015】
同様にして、B3エラー検出部も、B3タイミング生成部およびBIP演算回路を備えて、受信データのBIP演算結果と受信データのB3値とを比較して符号誤りを検出する。
【0016】
また、たとえば、特許文献1に記載の誤り監視用BIP-N符号演算付加・照合回路は、VC-32フレームの段階でBIP-N符号を演算せず、3つのVC-32を多重化したSTM-1の段階で、チャンネル別のBIP-N符号の演算と誤り監視を行うので、回路規模を縮小することができる。
【特許文献1】特開平5-37497号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、従来のSDH網中継伝送装置では、受信データのVCパスの変更を行う場合、入力側では符号誤り検出のためのBIP演算回路を具備し、出力側では変更後のVCパスの全データをBIP演算するためのBIP演算回路を具備しなければならない。また、入力側と出力側とでは、回路処理遅延などの原因により受信タイミングが異なるので、それぞれにB3タイミング生成回路を備える必要がある。
【0018】
したがって、従来の中継伝送装置では、複数の同じような回路を備えることとなり、製造工数および製造コストの増加を招くこととなる。また、このような中継伝送装置では、変更データが少量、たとえば1または2ビットの場合でも、VCパスの全データを演算する必要があるので、回路規模が増加し、さらに全データ演算するためには、演算回路を常に動作させることになるので消費電力が増加することとなる。
【0019】
本発明は、このような従来技術の欠点を解消し、回路規模を削減しつつ、効率よく符号誤りを検出および監視することができるSDH網中継伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は上述の課題を解決するために、SDH網にて送信側の伝送装置から受信側の伝送装置へと伝送されるデータを中継する中継伝送装置は、この送信側伝送装置からの受信データに対してPOHの抽出および挿入処理を行うPOH処理手段と、このPOH処理手段による変更前のこの受信データと変更後のこの受信データとの差分情報を検出する差分検出手段と、この差分情報に基づいてこの変更後受信データの符号誤りを検出するエラー検出手段と、この差分情報およびこの変更後受信データの所定のバイトに基づいてこの所定のバイトを補正して補正バイトを生成するバイト生成手段と、この変更後受信データの所定のバイトとこのバイト生成手段で生成した補正バイトとを、所定のバイト切替タイミングで切り替える切替手段と、この所定のバイト切替タイミングとして、このエラー検出手段およびこのバイト生成手段に共通のタイミングを生成するタイミング生成手段とを含むことを特徴とする。
【0021】
また、SDH網にて送信側の伝送装置から受信側の伝送装置へと伝送されるデータを中継する中継伝送装置でこの送信側伝送装置からの受信データに対してBIP演算を施して、その演算結果に基づいてこの受信データの符号誤りを監視する監視方法は、この受信データに対してPOHの抽出および挿入処理を行うPOH処理工程と、このPOH処理工程による変更前のこの受信データと変更後のこの受信データとの差分情報を検出する差分検出工程と、このPOH処理工程の後で、この差分情報に基づいてこの変更後受信データの符号誤りを検出するエラー検出工程と、この差分情報およびこの変更後受信データの所定のバイトに基づいてこの所定のバイトを補正して補正バイトを生成するバイト生成工程と、この変更後受信データの所定のバイトとこのバイト生成工程で生成した補正バイトとを、所定のバイト切替タイミングで切り替える切替工程とを含み、この所定のバイト切替タイミングとして、このエラー検出工程およびこのバイト生成工程に共通のタイミングを生成するタイミング生成工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のSDH網の中継伝送装置によれば、差分検出部がPOH処理部による変更前データと変更後データとの差分に基づいてB3エラー検出用差分情報およびB3生成用差分情報を生成し、B3エラー検出部がこのB3エラー検出用差分情報に基づいてB3エラー検出を行い、B3生成部がこのB3生成用差分情報に基づいてB3値生成を行うので、B3エラー検出部をPOH処理の後に配置することができ、B3エラー検出部とB3生成部とを同一ブロックで構成することができるので、共通のB3タイミング生成回路を使用することができる。
【0023】
また、この伝送装置のB3生成部は、差分情報に基づいて正しいB3値を生成することができるので、余分なBIP演算回路を備える必要がなく、簡易な回路構成で実現することができる。
【0024】
さらに、この伝送装置の差分検出部は、POH処理タイミングに応じて動作すればよいので、常に動作させる必要はなく、従来の装置よりも消費電力を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に添付図面を参照して、本発明によるSDH(Synchronous Digital Hierarchy)網の中継伝送装置の実施例を詳細に説明する。たとえば、中継伝送装置10は、図1に示すように、ポインタ解釈部12が受信データを解釈し、POH(Path OverHead)処理部14が受信データをPOH処理して主信号の変更後データを得て、また、B3エラー検出・生成部18がエラー検出およびB3値生成を行い、切替部20がPOH処理部14からのデータのB3値をB3生成部18からのB3値に切り替えて送信するもので、とくに、差分検出部16がPOH処理部14による変更前データと変更後データとの差分を検出し、B3エラー検出・生成部18がこの差分に基づいてB3エラー検出およびB3値生成を行う。なお、本発明の理解に直接関係のない部分は、図示を省略し、冗長な説明を避ける。
【0026】
本実施例の中継伝送装置10は、SDH網における送信側の伝送装置と受信側の伝送装置との間に位置して、送信側から受信側へと伝送されるデータを中継するものである。この中継伝送装置10の位置は、物理的な配置に限られず、少なくともデータ転送が可能な配置であればよい。
【0027】
ポインタ解釈部12は、SDH網を介して伝送されて本装置10で受信された受信データ102に対してポインタ終端処理を行うもので、受信データ102に基づいてJ1バイトを検出してその位置を示すフレームパルス信号を生成し、元の受信データを示す主信号および検出したフレームパルス信号を含むデータをPOH処理前データ104として出力する。ポインタ解釈部12は、POH処理前データ104をPOH処理部14および差分検出部16に供給する。
【0028】
本実施例のポインタ解釈部12は、受信データ102におけるセクションオーバーヘッド(SOH:Section OverHead)のH1およびH2バイトのポインタ値を抽出および解釈し、このポインタ値に基づいてVCパスの先頭であるJ1バイトの位置を検出し、このJ1バイト位置を示すフレームパルス信号を生成する。
【0029】
POH処理部14は、ポインタ解釈部12から供給されるPOH処理前データ104に対してPOH処理を行うもので、本実施例では、このデータ104のVCパスにおけるPOHに対して、必要があれば変更を施してPOHの抽出および挿入を行い、その処理結果としてPOH処理後データ106を出力する。このPOH処理部14は、POH処理後データ106を差分検出部16、B3エラー検出・生成部18および切替部20に供給する。
【0030】
また、POH処理部14は、差分検出部16を具備するように構成されてもよく、また、差分検出部16と一体的に構成されてもよい。POH処理部14は、変更したPOHの位置を示すPOH処理タイミング信号120を出力するとよい。
【0031】
差分検出部16は、POH処理前データ104およびPOH処理後データ106に基づいて差分情報を検出してB3エラー検出用差分情報108およびB3生成用差分情報110を生成し、B3エラー検出・生成部18に供給する。差分検出部16は、たとえば図2に示すように、POH処理部14で変更されるPOHの位置を示すPOH処理タイミング信号120をPOH処理部14から入力し、このPOH処理タイミング120に応じて、B3エラー検出用差分情報108およびB3生成用差分情報110を保持する。
【0032】
SDH網におけるデータ伝送において、送信側では、所定のフレームのB3値として、前回のフレームの全データをBIP(Bit Interleaved Parity)演算した結果を挿入しておく。したがって、受信側では、POH処理によるデータの変更がなければ、その所定のフレームのB3値と、前回のフレームに基づいて検出されるBIP演算結果とは等しくなるが、他方、POH処理によりデータが変更されると、その所定のフレームのB3値と、前回のフレームに基づいて検出されるBIP演算結果とは等しくならない。
【0033】
また、POH処理後データのBIP演算結果を、B3エラー検出用差分情報と排他的論理和(EXOR)演算すると、POH処理前データのBIP演算結果を生成することができるので、このPOH処理前データのBIP演算結果と受信データのB3値とを比較することにより、符号誤りを検出することができる。
【0034】
さらに、所定のフレームのB3値は、前回のフレームのPOH処理前のBIP演算結果と等しいので、前回フレームのPOH処理前のPOHとPOH処理後のPOHとの差分情報を用いて、所定のフレームのPOH処理後データのB3を補正することにより所定のフレームのB3値を生成することができる。
【0035】
本実施例の差分検出部16は、POH処理前データ104におけるPOH 122と、POH処理後データ106におけるPOH 124との差分を検出し、たとえばこれらのPOH 122および124を演算器22でEXOR演算して、その演算結果の差分情報をB3エラー検出用差分情報108として生成する。差分検出部16は、POH処理前データ104のBIP演算結果を検出するための使用に適した差分情報108を生成する。
【0036】
また、本実施例の差分検出部16は、所定のフレームのB3エラー検出用差分情報108と、前回のフレームのB3生成用差分情報110との差分を検出し、たとえば、これらの差分情報108および110を演算器24でEXOR演算して、その演算結果の差分情報をB3生成用差分情報110として生成する。差分検出部16は、受信データに挿入されるB3値を生成するための使用に適したB3生成用差分情報110を生成する。
【0037】
エラー検出・生成部18は、差分検出部16で検出された差分情報、およびPOH処理後データ106に基づいて正しい符号誤りを検出し、また、正しい符号誤りを生成するものである。
【0038】
本実施例のエラー検出・生成部18は、符号誤りとして、POHにおけるB3値を対象とするもので、このB3エラー検出・生成部18は、POH処理後データ106およびB3エラー検出用差分情報108に基づいてB3エラー検出し、また、POH処理後データ106およびB3生成用差分情報110に基づいてB3生成する。B3エラー検出・生成部18は、たとえば図2に示すように、B3エラー検出部26とB3生成部28とを有して構成されてよい。
【0039】
また、B3エラー検出・生成部18は、POH処理後データ106におけるフレームパルス信号126でリセットされるカウンタを備えるB3タイミング生成部30を有して、B3の位置で有効となるB3タイミング信号112を生成して出力する。このB3タイミング生成部30およびB3タイミング信号112は、B3エラー検出およびB3生成に共通に使用される。
【0040】
本実施例のB3エラー検出部26は、BIP演算回路32を有して構成され、BIP演算回路32がPOH処理後データ106における主信号をフレームパルス信号126に応じてBIP演算して所定のフレームのPOH処理後のBIP演算結果128を検出する。また、B3エラー検出部26は、このBIP演算結果128とB3エラー検出用差分情報108との差分を検出し、たとえばこれらを演算器32でEXOR演算して、その演算結果の差分情報を所定のフレームのPOH処理前のBIP演算結果130として生成する。さらに、B3エラー検出部26は、所定のフレームのPOH処理前のBIP演算結果130と、POH処理後データ106におけるB3値とを比較し、たとえば演算器34でEXOR演算して、その演算結果の差分情報をエラー情報132として出力する。
【0041】
また、本実施例のB3生成部28は、POH処理後データ106における主信号をB3生成用差分情報110を用いて補正してその補正結果114を出力するもので、たとえば主信号と差分情報110とを演算器36でEXOR演算してその演算結果を補正後のB3値114として生成する。
【0042】
切替部20は、B3エラー検出・生成部18のB3タイミング生成部30から供給されるB3タイミング信号112に応じて、POH処理部14からのPOH処理後データ106におけるB3値をB3生成部28からの補正後のB3値114に切り替え、すなわちPOH処理後データ106のB3の位置に補正後のB3値114を挿入して、送信データ116を生成して出力する。
【0043】
次に、本実施例における中継伝送装置10の差分検出部16およびB3エラー検出・生成部18の動作例を説明する。
【0044】
本装置10を備えたSDH網では、たとえば図3に示すように、SOH、POHおよびVC-4パスなどのペイロードを含んで1フレームを構成するデータ102が伝送される。このSOHは、H1、H2およびH3などのポインタ値を有し、H1およびH2ポインタがPOHにおけるJ1バイトの位置を示している。また、このPOHは、J1、B3、C2、G1、F2、H4、F3、K3およびN1バイトを有し、J1がVC-4パスの先頭を示している。
【0045】
本実施例では、図4に示すように、複数のフレームデータが連続的に伝送されて、1番目のフレームデータ202、2番目のフレームデータ204、3番目のフレームデータ206、4番目のフレームデータ208が、順次、本装置10で受信され、ここでは、2番目のフレームデータ204のPOHがPOH処理部14で変更された場合の動作を説明する。
【0046】
本装置10の差分検出部16では、まず、1番目のフレーム202の受信データ102に係るPOH処理前データ104がポインタ解釈部12から供給され、また、このフレーム202の受信データ102に係るPOH処理後データ106がPOH処理部14から供給されて演算器22に入力する。
【0047】
演算器22では、POH処理前データ104およびPOH処理後データ106がPOH処理タイミング120に応じてEXOR演算され、すなわちこれらのデータ104および106のPOH 122および124がEXOR演算されて、その演算結果に応じてB3エラー検出用差分情報108が生成されて出力される。
【0048】
ここで、1番目のフレーム202は、POH変更されないので、1番目のフレーム202に係るB3エラー検出用差分情報108は、POHの変更がないことを示して生成される。
【0049】
このB3エラー検出用差分情報108は、差分検出部16の演算器24に供給され、また、この演算器24には、前回のフレームに係るB3生成用差分情報110も供給されて、演算器24において、1番目のフレーム202に係る差分情報108と前回のフレームに係る差分情報110とがEXOR演算されて、その演算結果に応じて1番目のフレーム202に係るB3生成用差分情報110が生成されて出力される。
【0050】
ただし、1番目のフレーム202に関する処理では、前回フレームの差分情報110が存在しないので、1番目のフレーム202に係るB3生成用差分情報110は、POH処理後データ106のB3値を変更しないように生成されてよい。
【0051】
また、B3エラー検出用差分情報108は、B3エラー検出・生成部18のB3エラー検出部26にも供給され、また、B3エラー検出部26では、POH処理後データ106も供給される。
【0052】
B3エラー検出部26において、POH処理後データ106の主信号は、BIP演算回路30に入力して、POH処理後データ106のフレームパルス信号126に応じてBIP演算されて、1番目のフレーム202に係るPOH処理後のBIP演算結果128が生成される。
【0053】
このBIP演算結果128は、B3エラー検出部26の演算器32に供給され、この演算器32には、差分検出部16からのB3エラー検出用差分情報108も供給されて、演算結果128および差分情報108が演算器32でEXOR演算され、その演算結果として1番目のフレーム202に係るPOH処理前のBIP演算結果130が生成される。
【0054】
このBIP演算結果130は、B3エラー検出部26の演算器34に供給され、また、この演算器34には、POH処理後データ106も供給されて、演算結果130およびデータ106のB3値が演算器34でEXOR演算され、その演算結果として1番目のフレーム202に係るエラー情報132が生成される。1番目のフレーム202は、POH処理部14でPOHが変更されていないので、このエラー情報132は、1番目のフレーム202の受信において誤りがないことを示す。
【0055】
また、差分検出部16で生成した1番目のフレーム202に係るB3生成用差分情報110は、B3エラー検出・生成部18のB3生成部28に供給され、また、このB3生成部28にはPOH処理後データ106も供給されて、データ106のB3値が演算器34で差分情報110を用いてEXOR演算されることにより補正され、その補正結果として1番目のフレーム202に係る補正後のB3値114が生成される。1番目のフレーム202に係るPOH処理後データ106のB3値は、変更されたPOHに基づいて生成されたものではないので、この補正後B3値114は、POH処理後データ106のB3値と等しくなる。
【0056】
さらにB3エラー検出・生成部18では、POH処理後データ106のフレームパルス信号126がB3タイミング生成部30に供給されてB3タイミング信号112が生成される。
【0057】
B3生成部28からの補正後B3値114は、切替部20に供給され、また、この切替部20には、POH処理後データ106も供給される。切替部20において、POH処理後データ106は、B3タイミング生成部30からのB3タイミング信号112に応じて補正後B3値114が挿入され、すなわち、POH処理後データ106のB3の位置に補正後B3値114が挿入されて送信データ116が生成される。
【0058】
1番目のフレーム202では、その前のフレームでPOH変更がないのでPOH処理前データ104およびPOH処理後データ106のB3値は等しく、さらに、これらのB3値は補正後B3値114とも等しくなることになる。
【0059】
次に、本装置10の差分検出部16では、2番目のフレーム204の受信データ102に係るPOH処理前データ104およびPOH処理後データ106が演算器22に入力してPOH処理タイミング120に応じてEXOR演算され、2番目のフレーム204に係るB3エラー検出用差分情報108が生成されて出力される。
【0060】
ここで、2番目のフレーム204は、POH変更されているので、2番目のフレーム204に係るB3エラー検出用差分情報108は、POHが変更されたことを示し、たとえば変更されたバイトを示して生成される。
【0061】
この2番目のフレーム204に係るB3エラー検出用差分情報108は、差分検出部16の演算器24において、1番目のフレーム202に係るB3生成用差分情報110とEXOR演算されて、2番目のフレーム204に係るB3生成用差分情報110が生成されて出力される。
【0062】
ここで、2番目のフレーム204に関する処理では、前回の差分情報110として1番目のフレーム202の差分情報110が存在するが、1番目のフレーム202のPOHは変更されていないので、2番目のフレーム204に係るB3生成用差分情報110は、POH処理後データ106のB3値を変更しないように生成されてよい。
【0063】
また、B3エラー検出用差分情報108は、B3エラー検出部26にも供給され、ここでは、まず、POH処理後データ106の主信号がBIP演算回路30に入力してフレームパルス信号126に応じてBIP演算され、2番目のフレーム204に係るPOH処理後のBIP演算結果128が生成される。
【0064】
このBIP演算結果128は、演算器32において、2番目のフレーム204に係るB3エラー検出用差分情報108とEXOR演算されて、2番目のフレーム204に係るPOH処理前のBIP演算結果130が生成される。
【0065】
このBIP演算結果130は、演算器34において、2番目のフレーム204に係るPOH処理後データ106のB3値とEXOR演算されて、2番目のフレーム204に係るエラー情報132が生成される。2番目のフレーム204は、POH処理部14でPOHが変更されているので、BIP演算結果130とPOH処理後データ106のB3値との比較結果が不一致である場合に、このエラー情報132は、2番目のフレーム204の受信において誤りがあることを示す。
【0066】
また、差分検出部16で生成した2番目のフレーム204に係るB3生成用差分情報110は、B3生成部28に供給され、その演算器36において、POH処理後データ106のB3値が差分情報110を用いたEXOR演算により補正されて、2番目のフレーム204に係る補正後のB3値114が生成される。2番目のフレーム204に係るB3値は、1番目のフレーム202のPOHに基づいて生成されたものであるが、1番目のフレーム202のPOH変更がないので、この補正後B3値114は、POH処理後データ106のB3値と等しくなる。
【0067】
さらに、この2番目のフレーム204に係る補正後B3値114は、切替部20に供給され、ここで、2番目のフレーム204に係るPOH処理後データ106のB3値に対して補正後B3値114が挿入されて送信データ116が生成される。
【0068】
同様にして、本装置10の差分検出部16では、3番目のフレーム206の受信データ102に係るPOH処理前データ104およびPOH処理後データ106が入力し、演算器22で3番目のフレーム206に係るB3エラー検出用差分情報108が生成される。ここで、3番目のフレーム206は、POH変更されていないので、3番目のフレーム206に係るB3エラー検出用差分情報108は、POH変更がないことを示す。
【0069】
この3番目のフレーム206に係るB3エラー検出用差分情報108は、演算器24で2番目のフレーム204に係るB3生成用差分情報110を用いて演算されて、3番目のフレーム206に係るB3生成用差分情報110が生成される。
【0070】
ここで、3番目のフレーム206に関する処理では、前回の差分情報110として2番目のフレーム204の差分情報110が存在し、2番目のフレーム204のPOHは変更されているので、3番目のフレーム206に係るB3生成用差分情報110は、POH処理後データ106のB3値を補正するように生成される。
【0071】
次に、B3エラー検出部26において、3番目のフレーム206に係るPOH処理後データ106の主信号がBIP演算回路30でBIP演算されて、3番目のフレーム206に係るPOH処理後のBIP演算結果128が生成される。このBIP演算結果128は、演算器32で3番目のフレーム206に係るB3エラー検出用差分情報108を用いて演算されて、3番目のフレーム206に係るPOH処理前のBIP演算結果130が生成される。
【0072】
このBIP演算結果130は、演算器34で3番目のフレーム206に係るPOH処理後データ106のB3値を用いて演算されて、3番目のフレーム206に係るエラー情報132が生成される。3番目のフレーム206は、POH変更がないが、BIP演算結果130とPOH処理後データ106のB3値とが不一致である場合に、このエラー情報132は、3番目のフレーム206の受信において誤りがないことを示す。
【0073】
また、3番目のフレーム206に係るB3生成用差分情報110は、B3生成部28に供給されて、その演算器34において、POH処理後データ106のB3値が差分情報110を用いて演算されて補正され、3番目のフレーム206に係る補正後のB3値114が生成される。3番目のフレーム206に係るB3値は、2番目のフレーム204のPOHに基づいて生成されたもので、2番目のフレーム204のPOHが変更されているので、この補正後B3値114は、差分情報で補正された新たなB3値となり、2番目のフレーム204のPOH処理後データ106のBIP演算結果と等しくなる。
【0074】
さらに、この3番目のフレーム206に係る補正後B3値114は、切替部20に供給され、ここで、3番目のフレーム206に係るPOH処理後データ106のB3値に対して補正後B3値114が挿入されて送信データ116が生成される。
【0075】
SDH伝送装置10では、受信したデータ102が、順次、同様にして処理されるので、4番目のフレームデータ208以降に関する動作説明は省略する。
【0076】
本実施例のSDH網の中継伝送装置10では、VCパスのB3バイトについて、中継伝送装置による処理後のBIP演算結果と異なる場合に、符号誤りを検出しないように処理前後の差分情報を用いてB3値を補正しているが、本発明の伝送装置10は、他のバイトについて同様に補正するように構成されてもよく、たとえば、SOHのB1バイトについて処理前後の差分情報を用いて補正して中継セクションの誤り監視を行うように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係るSDH網の中継伝送装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1に示す実施例のSDH伝送装置における差分検出部およびB3エラー検出・生成部を示すブロック図である。
【図3】図1に示す実施例のSDH伝送装置で用いるフレームデータを概要的に示す図である。
【図4】図1に示す実施例のSDH伝送装置で用いるフレームデータを概要的に示す図である。
【符号の説明】
【0078】
10 中継伝送装置
12 ポインタ解釈部
14 POH処理部
16 差分検出部
18 B3エラー検出・生成部
20 切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SDH(Synchronous Digital Hierarchy)網にて送信側の伝送装置から受信側の伝送装置へと伝送されるデータを中継する中継伝送装置において、該装置は、
前記送信側伝送装置からの受信データに対してパスオーバーヘッド(POH:Path OverHead)の抽出および挿入処理を行うPOH処理手段と、
該POH処理手段による変更前の前記受信データと変更後の前記受信データとの差分情報を検出する差分検出手段と、
前記差分情報に基づいて前記変更後受信データの符号誤りを検出するエラー検出手段と、
前記差分情報および前記変更後受信データの所定のバイトに基づいて該所定のバイトを補正して補正バイトを生成するバイト生成手段と、
前記変更後受信データの所定のバイトと前記バイト生成手段で生成した補正バイトとを、所定のバイト切替タイミングで切り替える切替手段と、
前記所定のバイト切替タイミングとして、前記エラー検出手段および前記バイト生成手段に共通のタイミングを生成するタイミング生成手段とを含むことを特徴とする中継伝送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の中継伝送装置において、前記差分検出手段は、前記差分情報に基づいて、前記変更後受信データのPOHにおけるB3値のエラーを検出するために用いられるB3エラー検出用差分情報を生成し、
前記エラー検出手段は、前記変更後受信データをBIP(Bit Interleaved Parity)演算し、その演算結果および前記B3エラー検出用差分情報に基づいて前記変更前受信データのBIP演算結果を検出し、その検出結果と前記変更後受信データのPOHにおけるB3値とを比較して該B3値の符号誤りを検出することを特徴とする中継伝送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の中継伝送装置において、前記差分検出手段は、所定のフレームの前記変更後受信データのPOHにおけるB3値を補正するために用いられるB3生成用差分情報を生成し、このとき、前記所定のフレームに係る前記差分情報と、その前回のフレームに係る前記B3生成用差分情報とに基づいて、前記B3生成用差分情報を生成し、
前記バイト生成手段は、前記B3生成用差分情報および前記変更後受信データのPOHにおけるB3値に基づいて、該B3値を補正して前記補正バイトとして補正B3値を生成することを特徴とする中継伝送装置。
【請求項4】
請求項1に記載の中継伝送装置において、該装置は、前記エラー検出手段と前記バイト生成手段とを同一のブロックで構成することを特徴とする中継伝送装置。
【請求項5】
SDH網にて送信側の伝送装置から受信側の伝送装置へと伝送されるデータを中継する中継伝送装置で前記送信側伝送装置からの受信データに対してBIP演算を施して、その演算結果に基づいて前記受信データの符号誤りを監視する監視方法において、該方法は、
前記受信データに対してPOHの抽出および挿入処理を行うPOH処理工程と、
該POH処理工程による変更前の前記受信データと変更後の前記受信データとの差分情報を検出する差分検出工程と、
前記POH処理工程の後で、前記差分情報に基づいて前記変更後受信データの符号誤りを検出するエラー検出工程と、
前記差分情報および前記変更後受信データの所定のバイトに基づいて該所定のバイトを補正して補正バイトを生成するバイト生成工程と、
前記変更後受信データの所定のバイトと前記バイト生成工程で生成した補正バイトとを、所定のバイト切替タイミングで切り替える切替工程とを含み、
前記所定のバイト切替タイミングとして、前記エラー検出工程および前記バイト生成工程に共通のタイミングを生成するタイミング生成工程とを含むことを特徴とする監視方法。
【請求項6】
請求項5に記載の監視方法において、前記差分検出工程は、前記差分情報に基づいて、前記変更後受信データのPOHにおけるB3値のエラーを検出するために用いられるB3エラー検出用差分情報を生成し、
前記エラー検出工程は、前記変更後受信データをBIP演算し、その演算結果および前記B3エラー検出用差分情報に基づいて前記変更前受信データのBIP演算結果を検出し、その検出結果と前記変更後受信データのPOHにおけるB3値とを比較して該B3値の符号誤りを検出することを特徴とする監視方法。
【請求項7】
請求項5に記載の監視方法において、前記差分検出工程は、所定のフレームの前記変更後受信データのPOHにおけるB3値を補正するために用いられるB3生成用差分情報を生成し、このとき、前記所定のフレームに係る前記差分情報と、その前回のフレームに係る前記B3生成用差分情報とに基づいて、前記B3生成用差分情報を生成し、
前記バイト生成工程は、前記B3生成用差分情報および前記変更後受信データのPOHにおけるB3値に基づいて、該B3値を補正して前記補正バイトとして補正B3値を生成することを特徴とする監視方法。
【請求項8】
請求項5に記載の監視方法において、該方法は、前記エラー検出工程と前記バイト生成工程とを前記中継伝送装置における同一のブロック内で動作させることを特徴とする監視方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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